このブログを検索

2025-03-08

死体遺棄罪・死体損壊等罪

  • 刑法第190条「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者」を、死体損壊等の罪で処罰する
  • 死体遺棄罪・死体損壊等罪には、3年以下の懲役(罰金の規定はなく刑事裁判で有罪になればかならず懲役が選択される重罪)
  • 近い行為として挙げられるのが刑法第189条に定められている「墳墓発掘罪」や「墳墓発掘死体損壊等罪」(2年以下の懲役)


医師でも死体にメスを入れる行為は上記の死体損壊罪にあたったが,1949年に死体解剖保存法が制定され仕組みが整備された(死体損壊の違法性の阻却).以下の行為が該当すると思われる.
  •  (a)病理解剖:「死体の解剖に関し相当の学識技能を有する医師、歯科医師その他の者であって、厚生労働大臣が適当と認定したものが解剖する場合」(2条1項1号)。病因解明を目的とする解剖を想定している。原則として、遺族の承諾が必要であるため(7条)、「承諾解剖」といわれることもある。
  • (b)系統解剖:医学・歯学に関する大学・大学学部の「解剖学、病理学又は法医学の教授又は准教授が解剖する場合」(同2号)であり、遺族から提供された死体(献体)、引き取り手のいない死体(12条、13条)について「身体の正常な構造を明らかにするための解剖」(10条)。(a)と対応させる意味で「正常解剖」と呼ばれることもある。献体法(医学及び歯学の教育のための献体に関する法律)は、これを「医学又は歯学の教育として行われる身体の正常な構造を明らかにするための解剖」として、この呼称を用いている(2条)。
  • (c)行政解剖:行政機関の行う死因究明のための解剖監察医が死因を明らかにするために行う解剖(同3号、8条)、食品衛生法・検疫法による解剖(同5号、6号)。
  • (d)司法解剖:警察・検察・裁判所が行う解剖。刑事訴訟法、「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」による解剖による解剖(同4号、7号)。 法律に規定のない行為であっても、違法性が阻却されることはある。海上への散骨は墓埋法に、組織移植は臓器移植法に、いずれも明文で規定されていないが、これが違法であって死体損壊罪を成立させるものとは考えられてはいない。

死体解剖についても,死体解剖保存法の規定する上記(a)~(d)以外の解剖であっても許されるものがある.サージカルトレーニング(遺体を用いた手術手技の研修,cadaver training)はその例である.


😐 おまけ
  • 死後の処置(いわゆるエンゼルケア)は主に看護師が行っていますが,医師や看護師以外でも問題はないようです.死体損壊罪(刑法190条)に対しては,仮にエンゼルケア中に死体に傷をつけたとしても,意図的ではないので「損壊行為」には当たらないと考えられるためだそうです.


(投稿者 川崎)

0 件のコメント:

コメントを投稿