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2024-10-31

今週の一枚 🎯

前かがみが苦しいと訴える緻密化障害例

🐤 前屈時呼吸困難症
  • 安静座位で鎖骨上に頸静脈の拍動なし
  • 吸気負荷を追加したが拍動は出現せず
  • 前屈位で頚静脈の拍動が出現(矢印)
  • それと同時に主訴の苦しさが出現した
🐥 系統的レビュー(6研究/891名)
  • ベンドプネアは呼吸困難 [オッズ比(OR)69.70(17.35-280.07); p <0.001],起座呼吸 [OR 3.02(2.02-4.52); p <0.001],発作性夜間呼吸困難 [OR 2.76(1.76-4.32); p <0.001],腹部膨満感 [OR 7.50(4.15-13.58); p <0.001] と関連
  • ニューヨーク心臓協会(NYHA)機能クラスIVは.ベンドプネア患者でより多く [OR 7.58(4.35-13.22); p <0.001],下図の様に死亡率の上昇とも関連 [OR 2.21(1.34-3.66); p <0.002].2つの研究では頸静脈圧の上昇とも関連あり.


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(投稿者 川崎)

2024-10-30

心音クイズ(Q5・Q6)

  • 持田製薬さんと作成している心音クイズの第三弾です(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏).今回は拡張期雑音を呈した2症例で,5領域(2R, 2L, 3L, 4L, 心尖部)の心音+2領域の心音図です.心音の高みを目指してかなり攻めてみました.
  • 今後も3ヵ月毎に2症例ずつアップする予定です(次回は2025年1月の予定).無料なのでよろしければご覧ください(※Q3以降は簡単な登録が必要).一緒に聴診学の楽しさと奥深さを共有できれば作成者としては嬉しい限りです 😁


(投稿者 川崎)

2024-10-29

オミックス解析 Omics analysis

  • 生体を構成する様々な分子を網羅的に解析する手法
  • 接尾辞でギリシャ語のすべて(ome)+学問(ics)
  • 例えば遺伝子を扱う学問はgenomics=gene+omics
  • マルチオミクスとは各オミクス解析を複合的に統合
  • 例:ゲノミクスとプロテオミクスの関係性(下図上)
  • 具体的には加熱式たばこの健康リスク評価(下図下)

- オミックス解析 -


オーミクス
(投稿者 川崎)

2024-10-28

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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(投稿者 川崎)

2024-10-27

Trifecta valve トライフェクタ弁

  • 他の生体弁と比較し早期に構造的弁劣化を生じやすい(米国で販売停止
  • 息切れなどの症状が現れた場合は医師の診察を受けるよう患者に指示する
  • 移植1年目から心エコーを含む生涯のフォローアップを少なくとも年1回

- Trifecta弁とMagna Ease弁の心事故回避曲線 -

留置2年後に tear を生じた Trifecta 生体弁

Ann Thorac Cardiovasc Surg 2017;23:157-60


💁 人工弁に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-10-26

聞き間違い? 言い間違い?

👤 先日の講演より
  • 演者の先生が「疫学ではしつがい性(?)が大切なので...」と話されていました.意味はなんとなく分かるのですが漢字が浮かんできません(を含む?)
  • もちろん膝蓋ではありません.”必蓋性”の聞き間違いかな〜とも思いました.聞き間違いを含めて後で調べました(下記).いまだにしっくりきません 😑 

  • 必蓋性 ➜ Google検索で結果ゼロ(ココ
  • 信蓋性 ➜ Google検索で結果ゼロ(ココ
  • 蓋然がいぜん ➜ 事象が生じる確率(probability

(投稿者 川崎)

2024-10-25

オルガネラ Organelle

  • 細胞内部で分化した機能形態を有する構造の総称(細胞小器官)
  • 核やミトコンドリア,小胞体,ゴルジ体,リソソーム他が相当
  • 固有タンパク質を構造内に隔離濃縮することで独自機能を発揮
  • オルガネラの発達は真核細胞と原核細胞を区別する特徴的所見
  • ドイツの動物学者 Möbius(1825–1908)が1884年に初めて使用
  • 各オルガネラは近接性や異質性,双方向性などの制御下にある
  • そのコミュニケーション変化は多くの疾患の発生と関連(下図)


- オルガネラ間コミュニケーションの目的 -

(投稿者 川崎)

2024-10-24

今週の一枚 🎯 頻脈は止めたいが...

動悸を訴える症例(モニター音に注目

😎 解説
  • 座位で鎖骨上に周期の短い陥凹(外頚静脈)
  • モニター音と拍動が一致(陥凹は多分 x谷
  • 吸気負荷で静脈膨隆(クスマウル徴候陽性)
  • 突然生じた動悸が約2週間持続していた様子
  • 本例の最終診断は頻脈の持続による心不全
😑 独り言
  • PSVTなど頻脈性不整脈を停止すること自体はそれほど難しいことはありません.しかし本例のように頻脈誘発性心筋症などから心不全に至った例には注意が必要です.徐脈化に伴い血行動態が破綻することがあります(ショックに陥った自験例あり).
  • よって本例のように中心静脈圧の上昇が疑われる症例(座位で頚静脈視認あるいはクスマウル徴候陽性など)では不整脈の停止よりも心不全加療が優先されると思われます.もちろん類似した頻脈の心房粗動などでは左房血栓の有無の検索も重要です.
  • 頚静脈拍動から各種不整脈の診断は可能です(a波=P波,x谷=収縮期など:過去の報告).ただし頻脈時にはフロック・サインを除き不整脈の鑑別は容易ではありません.むしろ中心静脈圧上昇の有無に注視してもいいように個人的には思っています 😐

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(投稿者 川崎)

2024-10-23

ソモジー効果 Somogyi effect

  • 低血糖に対する生体反応(対抗調節ホルモンの活性化など)で高血糖を生じる現象
  • 原因ホルモンはアドレナリン,コルチコステロイド,成長ホルモン,グルカゴンなど
  • 別名はchronic Somogyi reboundやposthypoglycemic hyperglycemia(低血糖後高血糖)
  • ハンガリー系アメリカ人の生化学者 Michael Somogyi(1883–1971)が提唱した(
  • ただし最近の持続血糖測定(CGM)による研究ではソモジー効果に対する異論あり


ソモジー効果のシェーマ

(投稿者 川崎)

2024-10-22

責任インスリン法

  • インスリン量の調節方法で後ろ向きに用量を決定
  • 例えば昼食前の血糖値で朝食前量を決定(下記)
  • 適応は慢性期で合併を伴わない安定した糖尿病例
  • スライディングスケール法は前向き調節法である
  • 前向き用量調節は急性期で手術前後などの入院例

💉 責任インスリン
  • 朝食前 ➜ 眠前他の持効型インスリン
  • 昼食前 ➜ 朝食前の速効型インスリン
  • 夕食前 ➜ 昼食前の速効型インスリン
  • 就寝前 ➜ 夕食前の速効型インスリン

🉐 インスリンに関する過去の投稿 ➜ ココ

(投稿者 川崎)

2024-10-21

S3:ASとMR

  • 先日の学会(フィジカル教育セッション)で大動脈弁狭窄(AS)ではⅢ音(S3)があまり聴取されないことを知りました.演者の施設では40余例でS3は1例のみでした.同様の結果を示す論文(下図左)も提示されていました.あまり考えたことはなかったのですが,確かに心不全を発症したASでS3を耳にした記憶は乏しいかもしれません.
  • やはりS3といえば僧帽弁逆流(MR)でしょうか.その重症度に伴ってS3の頻度は増加する様です(下図右).ただし発表の結論の一つに「MRではS3を認めても必ずしも左房圧が上昇しているとは限らない」というものがありました.また「HFrEFではS3の大きさとPAWP値と相関する」とも述べられていました.とても勉強になります.
  • 座長をされていた先生(フィジカルの匠)が興味深い表現をされていました.思い出せる範囲で記録しておきます.「S3はバチと太鼓の関係です.バチが鋭く太鼓の皮が薄いほど響く.つまり左室の急速流入血(E波)が高くて左室肥大がないMRでは出現しやすい.一方,ASではバチは鋭くないし,おまけに太鼓の皮もぶ厚い」 なるほどです😐

- 弁膜症とS3の頻度 -

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(投稿者 川崎)

2024-10-20

プロテオーム Proteome

  • 細胞内で発現しているタンパク質の集合体(=全タンパク質)のこと 
  • イギリスのM. Wilkinsが提唱(Expert Rev Proteomics 2009;6:599-603) 
  • protein(タンパク質)とgenome(ゲノム)を組み合わせ作られた用語
  • 例:ミトコンドリアプロテオームは3000を超える異なる蛋白質で構成
  • プロテオーム解析では生物の全蛋白質の構造や機能を網羅的に解析する
  • このプロテオーム解析で生物のゲノム情報が産業的に利用しやすくなる
  • 例:癌マーカーを質量分析法に基づくプロテオーム解析によって発見


- がんの液体生検におけるプロテオミクス技術の概要 -

(投稿者 川崎)

2024-10-19

鎮痛消炎貼付剤:パップ剤やテープ剤

  • どちらも支持体+膏体(粘着剤+薬物)+ライナー(剥離紙)の3つの層から成る貼付剤
  • パップ剤は主に水溶性高分子の膏体が厚く塗布されて多量の水分を保有し冷却作用がある
  • テープ剤は主に親油性高分子の膏体が薄く塗布されて伸縮・粘着性が高く可動部にも適合
  • パップ剤やテープ剤は年間に(多分日本だけで)約40億枚処方され地球約14.1周分の長さ


(投稿者 川崎)

2024-10-18

嗜銀しぎん顆粒性認知症 Argyrophilic Grain Disease

  • 概略 嗜銀顆粒を特徴とする病理学的に定義された脳疾患
  • 初報 独のH BraakとE Braak(Neurosci Lett 1987;76:124-7
  • 疫学 高齢者に多くて65歳で9.3%,100歳以上で31.3%と報告
  • 症状 緩徐進行の健忘性軽度認知障害(ドネペジルには不応)
  • 合併 高頻度に神経精神症状(易怒性,頑固,自発低下など)
  • 画像 左右差のある側頭葉内側前方の萎縮,機能・血流低下
  • 所見 髄液バイオマーカーやアミロイドPETは原則として正常
  • 診断 確定には病理学的評価が必要(通常は死後にのみ可能)


好銀性粒子病の神経病理学的特徴

(投稿者 川崎)

2024-10-17

今週の一枚 🎯

慢性左心不全の高齢者

💙 解説
  • 3ヵ月ぶりの受診でご本人は変わりないと述べた
  • 安静座位で頸部に明らかな拍動は認められない
  • しかし吸気時には鎖骨上窩に陥凹が出現(矢頭)
  • 吸気保持を解除した後には拍動は消失している
  • 採血でBNPは前値197から362に上昇していた

😶 独り言
  • 本例には明らかな息切れはなかったが,中心静脈圧は少し上昇していると考えられる.このような場合,安易な利尿薬投与は慎みたいかも...特に高齢者で今回のような夏場では容易に脱水.減塩指導も有効であるが食欲低下のリスクもある.
  • どういう対応が正解かは分からないが,ご本人と付き添いの娘さんに心不全の増悪が疑われることをお伝えた.次回予約を早めるのと同時に,撮影した動画を見ていただき増悪時(特に安静座位で出現時)には早期受診していただくよう指導

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(投稿者 川崎)

2024-10-16

Coronary cameral fistula

  • cameral はあまり耳にしない英単語(【形】判事や議員の私室の,国家財政の,他)
  • 単に冠動脈から心内腔への短絡のこと(冠動脈瘻 coronary artery fistula のひとつ)
  • 日本語では右冠動脈-左室瘻や左冠動脈-左房短絡などと表記(用語集への記載なし)

Coronary cameral fistula(右冠動脈-右心房瘻)の45歳男性

(投稿者 川崎)

2024-10-15

Cat tongue sign 猫舌徴候

  • 開いた毛包に入り込んだ鱗屑を伴う境界明瞭な紅斑性丘疹を特徴とする皮膚病変のこと
  • 円板状エリテマトーデスに伴うことが多い(熱い食べ物が苦手なことではありません😅)
  • 別名は carpet tack sign(カーペット鋲サイン)や tin tack sign(錫メッキ鋲徴候)など
  • 脂漏性皮膚炎(seborrheic dermatitis)や落葉状天疱瘡(pemphigus foliaceous)でも有

 円板状エリテマトーデスで認めた皮膚病変(下図の左上)

(投稿者 川崎)

2024-10-14

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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(投稿者 川崎)

2024-10-13

ATTR心アミロイドーシス(ATTR-CM)の治療薬

  • ATTR心アミロイドーシスを診断する機会がグッと増えてきました.本邦で使用できる薬剤はビンダケル®(DI)とビンマック®(DI)です.
  • いずれもTTRの四量体に結合して安定化させます. ビンマック®はビンダケル®の改良版で1日1回1カプセルなのでアドヒアランス向上に期待

ビンダケルとビンマックの違い(参考:コチラ,他)
ビンダケル®カプセル 20mg ビンマック®カプセル 61mg
一般名
  • タファジスメグルミン
  • タファミジス
効能又は効果
  • ATTR家族性アミロイドポリニューロパチーの末梢神経障害の進行抑制
  • ATTR心アミロイドーシス(野生型及び変異型)
  • ATTR心アミロイドーシス(野生型及び変異型) 
収載および薬価
  • 2013年末梢神経障害
  • 2019年ATTR-CM
  • 1カプセル9,716.5円(2023年6月時点)
  • 2021年11月25日
  • 1カプセル36,021.6円(2023年6月時点)
用法及び用量
  • ニューロパチー:通常,成人には1回20mgを1日1回
  • ATTR心アミロイドーシス:通常,成人には1回80mgを1日1回(つまり1日4錠)
  • 通常,成人には1回61mgを1日1回(つまり1日1錠)


(投稿者 川崎)

2024-10-12

👴 歴史クイズ

CC BY 4.0



(投稿者 川崎)

2024-10-11

心エコー図による肺高血圧

肺高血圧の確定診断は右心カテーテル検査で行われます.ただしその前に通常は心エコー図で 'あたり' をつけます.三尖弁逆流の最高速度2.8 m/sが目安ですが,他のエコー所見と組み合わせて判定する必要があります.個人的にこの点が少し曖昧だったので整理しておきます.



👉 肺高血圧に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2024-10-10

今週の一枚 🎯

慢性心不全増悪で入院中の症例(座位)

👿 解説
  • 頸部に明瞭な拍動(陥凹ではなく隆起)を視認する
  • 下から上への緩徐な陽性波 ➜ 静脈性(ランチシ徴候)
  • 外頚より内頚静脈の拍動上縁が高い(内頚を信頼!)
  • 左上肢の挙上に伴い内頸静脈の拍動上縁は上昇
  • 耳垂に揺れはないがその背面には拍動あり(矢印)
  • 本例の心エコー図は重症の三尖弁逆流+肺高血圧

💀 広義の耳ウインクサイン
  • 狭義の winking earlobe sign といえば耳たぶの揺れが必要です(英語の文言通り).でも本例のように耳朶後方の皮膚面が拍動していれば広義の耳ウインクサインとしてもいいと思います.
  • 本例には明瞭な三尖弁逆流がありました.しかし三尖弁逆流がほとんどないにも関わらず,明瞭な内頸静脈の陽性波を認めることが少なからずあります.特に開心術後の症例に多く経験します.
  • 心臓病診断学の実際(吉川純一著)には,その機序として「心膜の閉鎖にからんだ三尖弁輪下降の制限」が提案されています.左心膜完全欠損でも同様の所見が観察されると記載されています.
  • 個人的には,静脈コンンプライアンスの低下あるいは静脈キャパシティーの限界を反映している症例も散見されるのではと思います.よってv波が容易に圧上昇につながるのではないのかな~😐

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(投稿者 川崎)

2024-10-09

CBRマトリックス

  • CBRとはCommunity-based rehabilitation(地域に根ざしたリハビリテーション)
  • CBRガイドラインが2010年にWHO,ILO,UNESCO,IDDCにより発表(日本語訳
  • 問題を抱える人や少数派でも暮らしやすい地域を作るための包括的な評価ツール
  • CBRマトリックスは保健・教育・生計・社会、エンパワメント(権限)の5要素
  • 具体的には下図の中から関連項目を着色して,個人や地域のニーズを視覚化する
  • 分野を問わずに使えるため医療分野でも活用することができる(例:ひきこもり)



(投稿者 川崎)

2024-10-08

肝予備能評価:ALBIスコア

  • 肝硬変の肝予備能を評価するChild-Pugh分類はBil・Alb・INRと肝性脳症・腹水で判定
  • ALBIは Albumin-Bilirubinの略で血液生化学的検査データ(T-BilとAlb)のみから算出
  • 英国のJohnson PJや大垣市民病院のToyoda Hらが提唱(J Clin Oncol 2015;33:550-8
  • ALBIグレードは従来のChild-Pugh分類よりも肝細胞癌の治療成績予測に有用であった
  • (log10(17.1×bil)×0.66) + (10×Alb×-0.085)で計算して,通常スコアは3グレードに分類
  • 最近はより細分化したmodified ALBI(mALBI)分類も利用されている(計算ページ) 

肝障害とALBIの変化FIB-4 indexやMELD scoreとの比較)

(投稿者 川崎)

2024-10-07

シンプル頚静脈© Simple JVP©

  • 頚静脈評価が心不全管理に役立つことは疑いありませんが,あまり現場では活用されていません.その大きな理由に複雑な方法論の問題があると思われます.本邦のガイドラインには「45度の半座位で内頸静脈の拍動上縁と胸骨角の垂直距離が3cm以上で静脈圧上昇」と記載されています.しかし臨床現場では患者さんに45度の半座位という姿勢をとってもらうことは容易ではありません.さらに内頸静脈は深部静脈であるため,その拍動上縁を見極めることも難しいと思われます.
  • 当院では頚静脈のシンプルな評価方法を追求してきました.まぁこれ位でいいかな〜という段階に達したので,その手法を「シンプルJVP」としてアプリ化(WEB版)してみました.ポイントは,座位の姿勢で頸静脈拍動が視認できるか否かの定性法です.そして軽度〜中等度の中心静脈圧上昇を見逃さないために各種負荷を併用します.当院では患者さん自身やそのご家族にも活用していただいています.将来,ガイドラインに記載されたらすてきだな〜なんて思っています 😊

(シンプルJVP:日本語版 / English edition

(投稿者 川崎)

2024-10-06

Rhupus syndrome ルゥーパス症候群(邦名未確定)

  • 概略 全身性エリテマトーデス(SLE)と関節リウマチ(RA)の併存状態
  • 命名 米リウマチ医 PH Schur(Cecil-loeb Textbook of Medicine, 1971 p821)
  • 頻度 SLE連続103名のスクリーニングで10名(9.7%)がルゥーパス症候群
  • 経過 その10名中5名はSLEが先行,3名は関節炎が先行,2名は同時に出現
  • 特徴 SLE患者と比較で腎障害は少ないが神経精神・皮膚・漿膜炎は差なし
  • 採血 CRP陽性およびESRはSLE患者より有意に高いが,RA患者とは差なし


Rhupus syndromeの症状と徴候

(投稿者 川崎)

2024-10-05

アフェレシス:リクセル®

  • 先日,整形外科の先生とアミロイドーシスの治療薬の話をしているときに,透析症例ではリクセル®でアフェレシスを行うことがあることを教えていただきました.ちなみにその適応に骨嚢胞像というものがあります(下記の赤文字).関節症などで損傷した軟骨部から関節液などが侵入し骨溶解が生じるようです.手根骨や大腿骨に多く,周囲にアミロイドの沈着を認めるそうです.

💧 アフェレシス(aphaeresis)
  • 定義 体外循環を用い血中から特定の液性因子や細胞を除去して病態の改善を図る治療法
  • 物質 液性因子は有害代謝物質,中毒物質など,細胞はリンパ球,顆粒球,ウイルスなど
  • 歴史 1914年に初めて plasmaphaeresis という用語が登場(日本の歴史は1977年~下図)
  • 類似 血液浄化療法とほぼ同義←厳密には遠心分離装置やCARTは含まずに腹膜透析は含む



💦 リクセル®(Lixelle®)
  • 概略 透析アミロイドーシスの原因であるβ2ミクログロブリンを除去能する吸着カラム
  • 適応 病理でアミロイド沈着 & 透析歴≧10年+手根管開放術 & 画像診断で骨嚢胞像
  • 頻度 血液透析と併用し初回使用日を起算として1年間を上限(病態に応じて延長可能)
  • 実際 通常はダイアライザ上流に直列にリクセルを設置し吸着・除去する(下図参照)


アフェレーシス

(投稿者 川崎)

2024-10-04

信書開封罪?

🚑 ERカンファレンスで
  • 先日,救急搬入された患者さんが今回の疾患に関連すると思われる他院への紹介状を持っていました.深夜だったため作成元のクリニックへ問い合わせることはできません.封がされた紹介状を宛名以外の方が開封すると信書開封罪に問われるようです(下記).結局,当直医はその紹介状を開封せずに診療を完結しました. 
  • しかし正当な理由がある場合,信書開封罪は成立しません.確実なことはいえませんが,未開封では患者不利益が生じると思われる今回の救急現場では,患者さんの了承さえあれば開封しても大丈夫と予想します.診療情報提供書に関しては医師と弁護士による問答集があるので興味のある方は参考にしてください(ココ

刑法第133条(信書開封)
  • 正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 

注意点 💥
  • 封がされた信書を開けた場合でも正当な理由があるときには信書開封罪は成立しない
  • 自分宛と思い込んで開封したが他人宛のものだったときも故意でないため成立しない
  • メールやLINE他は物理的に封をすることはできず信書には当たらないため成立しない


💁 法律に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-10-03

今週の一枚 🎯 偽クスマウル徴候

脳神経内科に通院中の症例(以前と同一症例

😗 解説
  1. 安静時には頚静脈の拍動を座位で視認せず
  2. 吸気後での胸鎖乳突筋の萎縮に注目(矢印)
  3. その後は外頚静脈が視認可能である(矢頭)
  4. 本例はBNPと心エコーも正常で心不全なし
  5. 診断は筋強直性(筋緊張性)ジストロフィー

👥 偽クスマウル徴候
  • 胸鎖乳突筋が目立つことによる偽クスマウル徴候の症例は経験済みです(安静時吸気後).ただし筋肉は拍動しないのでその鑑別は容易と思われます.
  • 今回,胸鎖乳突筋が萎縮する病態でも偽クスマウル徴候が出現することを初めて知りました.こちらは実際の静脈なので拍動があり,触診でも静脈です.
  • 本例はクスマウル徴候が陽性から心不全(≠重症)と誤診される可能性があります.その意味でも筋萎縮による偽クスマウル徴候を覚えておきたいです.

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(投稿者 川崎)

2024-10-02

病院でも5S

  • ビジネスの現場で行われている効率的かつ安全な作業環境を作り出すための管理技法.もちろん医療の世界でも活用できない(活用しない)理由はありません.
  • 現に先日の院内会議でも5Sの重要性が示されていました.医師やメディカルスタッフ,事務職など皆で5Sを日常的に実践する環境を作り出すことが大切です.

5S 💡
  • Seiri ➜ 整理
  • Seiton ➜ 整頓
  • Seiso ➜ 清掃
  • Seiketsu ➜ 清潔
  • Shitsuke ➜ 躾

💁 ビジネスに関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2024-10-01

大阪府24時間多言語遠隔医療通訳サービス

👥 雑談から
  • ある日,ベトナムの方が来院されました(ベトナム語以外はしゃべれず).この時はスマホの音声翻訳アプリで対応できました.
  • 後日はペルーの方が来院されました(スペイン語以外はしゃべれず).この時はアプリがうまく働かずに診察がほぼ不能でした.
  • 当院では日中は外国語を話せる方のリストを作成しています.その後,大阪ではナイスなサービスが利用できることを知りました.

📣大阪府24時間多言語遠隔医療通訳サービス
  • 概略 大阪府が提供する医療現場で外国人の受入れが円滑に進むための24時間サービス
  • 対象 府内全医療機関および薬局(ただし薬局においては調剤業務における対応に限る)
  • 言語 英語,中国語,韓国語,スペイン語,ポルトガル語,ベトナム語,タイ語,仏語
  • 実際 診療場面等で利用可能(下図)(通話・通信料は各施設の負担:利用登録が必要)

(投稿者 川崎)