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2017-04-30

グラム染色クイズ

人工呼吸器管理中に発生した肺炎.診断は?

多数のグラム陰性菌が出現し,一部は好中球に貪食されている.フィブリンも目立つ.
双球菌のモラクセラなどの球菌とは形態が異なり,短桿菌のヘモフィルスにしては明瞭すぎる.

最終診断はムコイド非産生の緑膿菌

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「発熱」

発熱のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 高熱(>41℃) ⇒ 中枢神経系感染症,神経弛緩薬悪性症候群,熱中症
  2. 発疹 ⇒ 髄膜炎,敗血症性ショックの菌血症,リケッチア症
  3. 精神状態や感覚の変化 ⇒ 髄膜炎,脳炎,神経弛緩薬悪性症候群,熱中症,敗血症性ショックの細菌感染
  4. めまいやふらつき感 ⇒ 敗血症性ショックの細菌感染,迷路炎を伴うウイルス感染,副腎機能不全,肺塞栓
  5. 直近の化学療法 ⇒ 発熱性好中球減少症
  6. 息切れおよび胸痛 ⇒ 肺塞栓,肺炎,蓄膿症
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-04-29

アルコールは1日20gまで

厚生労働省「健康日本21」によると節度ある適度な飲酒としては1日平均純アルコールで約20g程度まで



肝硬変の発生頻度
 日本酒7合(アルコール140g)/日×10年以上⇒約20%,15年以上⇒約50%(厚生労働省のe-ヘルスネットより

(投稿者 川崎)

外傷パンスキャン

外傷例で行われる頭部~骨盤(大腿骨骨折時には膝まで)の64列以上のマルチスライスCT撮影
一般的なプロトコールは頭部単純CT後に頸部~骨盤の造影CT(動脈相と平衡相)を一気に撮影

外傷4621例の後ろ向き多施設検討で外傷パンスキャンは生存率を上昇 Lancet 2009;373:1455-1461
お薦め ⇒ 日常の救急診療においてCT検査(3D 画像)が果たす役割 頭頸部外傷 2014;24:9-14

(投稿者 川崎)

2017-04-28

CTクイズ(強い頸部痛)


同疾患に対する以前の投稿(サマリー) ⇒ コチラ

(投稿者 川崎)

下血と血便

下血=黒色便=上部消化管出血

血便=鮮血便=下部消化管出血

消化管出血は見た目が全てなので、必ず直腸診をして自分の目で確認!

(投稿者 堀田)

健診 vs 検診

健診 (健康診断あるいは健康診査の略)
危険因子の存在を早期に把握するため = 対象は健常者 ⇒ 一次予防
(例:学校健診,職場健診,乳児健診,基本健診)

検診
特定の疾患を早期発見するため = 対象は危険因子の保有者 ⇒ 二次予防
(例:乳癌検診,大腸癌検診,肺癌検診,歯科検診)

おまけ メタボは健診が正解,ドックはどちらも可(内容により異なる)

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

若年女性のバルトリン腺の分泌液をグラム染色した.診断は?


好中球に貪食されたグラム陰性球菌を認める.培養およびPCRから淋菌 Neisseria gonorrhoeae と同定

グラム陰性球菌の基本パターンは喀痰⇒モラクセラ髄液⇒髄膜炎菌性器⇒淋菌(いずれも双球菌)
髄膜炎菌と淋菌はナイセリア属.ナイセリア属で病原性があるのはこの2菌種のみ(他は口腔内の常在菌)

(投稿者 川崎)

2017-04-27

子宮留膿腫 しきゅう りゅうのうしゅ

子宮頸管や膣が閉塞し子宮腔内に膿が貯留した状態
  • 原因 子宮頸癌や大腸癌,老人性頸管委縮による頸管狭窄など
  • 症状 膿性帯下,性器出血,下腹部痛,発熱,穿孔による腹膜炎など
  • 細菌 E.coli,Klebsiella,Pseudomonas,Clostridium,Bacteroideなど
  • 治療 経膣的子宮洗浄およびドレナージと抗菌薬,穿孔時は開腹手術

参考論文 急性腹症で発症した子宮留膿腫の2例.日臨外会誌 2010;71:533-536

※高齢女性に多い疾患であるが若年女性なら処女膜閉鎖症を疑う必要がある
(投稿者 川崎)

2017-04-26

第20回 松下バイリンガルカンファレンスより

アセトアミノフェン acetaminophen 【əˌsiːt̬əmɪn.ə.fen / アシィトゥァミィナァファン】
実際の音声はコチラ ⇒ 英単語 acetaminophen 発音と読み方
  • アセトアミノフェンが処方された ⇒ Acetaminophen was prescribed.
  • アセトアミノフェンの発熱時頓用 ⇒ acetaminophen as needed for fever

(投稿者 川崎)

2017-04-25

 Q  胸鎖乳突筋が発達していたら…

 A  慢性閉塞性肺疾患COPDを疑う

胸鎖乳突筋とは胸骨および鎖骨~側頭骨の乳様突起をつなぎ,頸部の回転を担当する筋肉
横隔膜による通常呼吸では不十分な時に,胸鎖乳突筋や斜角筋などの呼吸補助筋が発達


(投稿者 川崎)

肉芽腫性疾患 Granulomatous disease

炎症細胞が集まり周囲をリンパ球や形質細胞,線維組織が取り囲んでいる巣状病変のこと
組織に侵入した異物を貪食・分解できない時,隔離するため形成される炎症反応のひとつ

代表的疾患
  • サルコイドーシス,結核,ヒストプラスマ症(真菌感染症の1つ)

その他の疾患
  • 感染症(梅毒・住血吸虫症・アメーバ赤痢・回虫症・腸チフス・野兎病・猫ひっかき病・心内膜炎・ウィップル病・ノカルジア症・非定型抗酸菌症・アスペルギルス症・Q熱・ハンセン病など),鼠径リンパ肉芽腫,リンパ腫,炎症性腸疾患,血管炎および結合組織病(多発血管炎性肉芽腫症・結節性多発動脈炎・巨細胞性動脈炎・アレルギー性血管炎など),結節性紅斑,薬剤性,異物(硫酸バリウム・造影剤・脂質・縫合糸など),肝胆道疾患(原発性胆汁性胆管炎・脂肪肝・脂肪肉芽腫など)

(投稿者 川崎)

2017-04-24

カリニ改めイロベチイ

旧名 ニューモシスチス・カリニ Pneumocystis carinii
新名 ニューモシスチス・イロベチイ Pneumocystis jirovecii

イタリア人医師・細菌学者アントニオ・カリニ(Antonio Carini 1872–1950)がカリニを発見し,カリニ肺炎と長らく呼ばれていた.しかしヒトに病原性をもつニューモシスチスはカリニではなくイロベチイであることが判明した.命名はチェコの細菌学者・寄生虫学者オットー・イーロヴェッツ(Otto Jírovec 1907-1972)に由来する.

トリビア
  • 現在はニューモシスチス・カリニ肺炎の代わりにニューモシスチス肺炎と呼ぶ
  • 略語は昔と同じでPCP (Pneumocystis cariniii pneumonia ⇒ Pneumocystis pneumonia)
  • ニューモシスティスは原虫と考えられていたが実は真菌の一種(子嚢菌門タフリナ菌亜門)

(投稿者 川崎)

サイコパス

psychopath=反社会的人格(心理学用語)で,精神病ではなくてパーソナリティ障害
  • 特徴 口達者,利己的,人を騙す,冷淡,衝動的,易刺激性,無神経など
  • 頻度 男性に多く全人口の4%?(東アジアでは0.1%?),犯罪者の20%?

ウィキぺディアの「精神病質」に詳しく記載されています ⇒ コチラ からどうぞ

(投稿者 川崎)

2017-04-23

喀痰の蛍光染色

肺結核が疑われる症例の喀痰の蛍光染色(400倍)です.


星のように光っている部分は抗酸菌の存在が疑われる.次に抗酸染色(チール・ネールゼン法) を行い抗酸菌の有無を確認.蛍光染色法はチール・ネールゼン法と比較して感度は高いが特異度は低い.当院では蛍光染色が陰性ならチール・ネールゼン法は行っていない.

(投稿者 川崎)

辺縁系脳炎

大脳辺縁系(limbic system)=海馬,乳頭体,扁桃体,帯状回,側坐核などからなる
情動,意欲,記憶,本能,性欲,自律神経活動などを司る最も古い脳の一部である

辺縁系脳炎
  • 症状 意識障害に加えて,けいれんや精神症状など多彩
  • 頻度 人口100万人あたり0.33人(本邦からの報告)
  • 原因 単純ヘルぺス(最多),他のウイルス,自己抗体(傍腫瘍性),薬物,妊娠など

トリビア 1973年の米映画「エクソシスト」は自己抗体による辺縁系脳炎がモデル


※当院で経験した症例は中枢性塩喪失症候群(cerebral salt-wasting: CSW)を合併していた

(投稿者 川崎)

2017-04-22

PS パフォーマンスステータス

PSはPerformance Statusの略で,全身症状を表す医学的指標

概略
  • グレード0 無症状で社会活動に制限なし
  • グレード1 激しい肉体労働は制限される
  • グレード2 歩行や身の回りのことは可能
  • グレード3 限られた身の回りのことのみ
  • グレード4 終日臥床で常に介助を要する

オリジナルは著作権フリーで1999年4月に公開された Common Toxicity Criteria, Version2.0 のAppendix III(30ページ目)にある

(投稿者 川崎)

日本リビングウィル協会

延命治療を望まない決断をサポートするために活動している特定非営利活動法人
  • 延命処置,死,葬送,遺影撮影,墓,相続,生前整理などに関する情報提供
  • 延命処置拒否のリヴィングウィル(意思証明書)作成の補助および保管業務

年会費は1人3,000円  詳しくは 日本リビングウィル協会ホームページ

(投稿者 川崎)

2017-04-21

キャブレラ配列 Cabrera sequence

肢誘導をaVL,Ⅰ,-aVR,Ⅱ,aVF,Ⅲの順に配列した心電図
下図に示す如く誘導と心臓の位置関係が連続性を持つようになる


急性下壁梗塞の1例 通常の心電図⇒下壁誘導 II,aVF,III が離れている

同じ症例のキャブレラ配列⇒下壁誘導 II,aVF,III が並んでいて分かりやすい

トリビア Institute of Cardiology of Mexicoの医師キャブレラが50年以上前に考案したのが初報
Cabrera CE. Bases électrophysiologiques de l'electrocardiographie; ses applications cliniques. Masson & Cie, Paris (1948)

(投稿者 川崎)

双極性障害

躁状態と鬱状態を繰り返す精神疾患/英名 bipolar disorder
躁鬱病や双極性感情障害,双極症と呼ばれることもある

分類
  • I 型障害 うつ状態と躁状態が寛解期を経て平均数年間隔で繰り返す病態
  • II 型障害 うつ状態と躁状態が短期間(数日~数ヶ月)で繰り返す病態
要約
  • 全人口の約1%が生涯に一度は双極性障害を発症する
  • 鬱病と診断された症例の10%が最終的に双極性障害
  • 好発年齢は30代(ただしどの年代でもあり得る)で男女差なし

分かりやすい資料はコチラ ⇒ 双極性障害(躁うつ病)とつきあうために (日本うつ病学会編)

(投稿者 川崎)

2017-04-20

画像クイズ(嘔吐)


(投稿者 川崎)

POLST ポルスト

Physician Orders for Life-Sustaining Treatmentの略
人生の終末期が近づいた患者に対して医師が処方する医療処置に関する指示書
POLST(ポルスト)は適宜更新される必要があると考えられる(例,半年ごと)

5つの要素から成る
  • セクションA 心肺停止の場合 【心肺蘇生術(CPR)について】
  • セクションB 心肺停止の状態ではない場合 【苦痛緩和・非侵襲的医療処置・侵襲的医療処置】
  • セクションC その他の医療処置 【人工的水分栄養補給・抗生物質・血液製剤・人工透析など】
  • セクションD 患者による事前指示 【リビングウィル・医療に関する代理判断者の指名など】
  • セクションE 変更・更新(確認)した日 【初回作成日・更新日】

日本臨床倫理学会による「POLST(DNAR指示を含む)作成指針」 作成の経緯と今後の展望 日本臨床麻酔学会誌.2016;36:308-312 より

(投稿者 川崎)

2017-04-19

薬物中毒が疑われたら・・・

当院採用の尿中薬物検査キットはインスタントビューM-1(他にトライエージやメディカルスタットがある)
覚せい剤・大麻・コカイン系麻薬・ベンゾジアゼピン系・バルビツール酸系・三環系抗うつ薬を評価可能


尿を滴下後に線が2本出現したら陰性(薬物は未検出)である点に注意
現時点では当院ではコストは病院負担で運営している(1キット3000円余)

(投稿者 川崎)

パレコウイルス3型

松下ERランチカンファレンスで議論していた症例が論文化されました
パレコウイルス3型に感染中に出産した妊婦の症例報告(世界初)です

Shinomoto M, Kawasaki T, Sugahara T, Nakata K, Kotani T, Yoshitake H, Yuasa K, Saeki M, Fujiwara Y. First report of human parechovirus type 3 infection in a pregnant woman. Int J Infect Dis. 2017;59:22–24

(投稿者 川崎)

2017-04-18

機能性MRに対する外科療法

高度の僧帽弁逆流MRかつ左室機能が低下した心不全例の治療は容易ではない
機能性MRに対する僧帽弁単独の外科的治療はクラスIIa~IIbながら選択枝の1つ



(投稿者 川崎)

※追記(2018年2月)
2017年のAHA/ACC弁膜症ガイドラインでは一部が変更されています ➜ コチラ

成人用Optiflow

ニュージーランドのFisher & Paykel Healthcareが販売しているネーザルハイフロー
意識清明で1型呼吸不全を呈する症例で侵襲的換気を回避したいときに考慮

特徴
  • 上気道内CO2の洗い流し(死腔が約50ml減少)
  • 気道陽圧(PEEPで5mmHg程度)
  • 加温と加湿(粘膜線毛運動の正常化)
  • 飲水や食事,会話,口腔ケアが可能

BiPAPやASV (Adaptive-servo Ventilator) より快適性は確実に向上していると考えられる
しかし予後の改善効果はまだ確立されていない ⇒ レビュー論文 Lung. 2016;194:705-714

(投稿者 川崎)

2017-04-17

胸部X線クイズ(無症状)


(投稿者 川崎)

障害者差別解消法

障害の有無によって分け隔てられることなく,互いの人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のために作られた法律(2013年6月成立・公布/2016年4月施行)

厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領
 ⇒ 日常臨床で遭遇する様々な具体例とその対処法が提示され一見の価値があります ❗

(投稿者 川崎)

2017-04-16

最近耳にした名言

  • 痰培や尿培は臨床指標,血培は臨床保険 (総診の個人的師匠の言葉)
  • 主治医として,患者さんと一緒に迷い悩む (卓越した医局先輩の発言)

(投稿者 川崎)

MoCA-J

Japanese version of Montreal Cognitive Assessmentの略
認知機能を評価する モントリオール認知評価検査MoCA の日本語版
軽度認知障害のスクリーニングに有用でアンケート形式(所要約10分)
(当院では心臓リハビリテーションの導入時などに活用している)

日本語版MoCA(MoCA-J)の使い方はコチラ

  • 合計点数で評価(30点中26点以上であれば健常範囲と考えられる)
  • 25点以下なら軽度認知症と診断(感度80-100%,特異度50-87%)
  • 糖尿病例ではミニメンタルステート検査MMSEより有用という報告あり
(参照 一般社団法人 日本老年医学会 認知機能の評価法と認知症の診断

(投稿者 川崎)

2017-04-15

腹臥位呼吸療法 Prone positioning theraphy

呼吸不全に対して行う治療法の一つで腹臥位で呼吸を行う
  • 適応 背側肺障害の病態(誤嚥やARDS,肺水腫など)
  • 機序 死腔減少や換気血流比改善,気道分泌物排出など
  • 注意 気道閉塞や四肢圧迫による神経障害が生じうる

急性肺障害304例による多施設ランダム化試験 N Engl J Med 2001;345:568-573
 ⇒ 腹臥位呼吸療法は,通常の仰臥位と比べて酸素化を改善したが予後を改善せず

人工呼吸管理中の1559例によるメタアナリシス CMAJ. 2008;178:1153–1161
 ⇒ 酸素化に有用で肺炎のリスクを減らしたが,予後や挿管期間は減少せず

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

咳嗽が続く症例のグラム染色.モラクセラ以外にも菌が存在する.診断は?

グラム陰性の短桿菌であり当初はインフルエンザ菌 (Haemophilus influenzae) を疑った
しかし激しい咳嗽があったためPCRを行ったこところ百日咳菌 (Bordetella pertussis) であった
百日咳菌はインフルエンザ菌と異なり通常の培地では発育しないことも両者の鑑別に使える

(投稿者 川崎)

2017-04-14

CURB-65

英国胸部疾患学会が提唱する成人市中肺炎の重症度スコア

参考
アメリカ胸部疾患学会の推奨はPneumonia severity index (PSI) ⇦ 質問項目が多い
日本呼吸器学会はCURB-65を参考にA-DROPシステムを作成 ⇦ CURB-65と同じく簡便

※成人市中肺炎例の30日死亡に対する予測能はPSI>A-DROP>CURB-65の順

(投稿者 川崎)

除脳硬直 vs 除皮質硬直

除脳硬直上肢伸展+下肢伸展
 延髄よりも中枢側(中脳や橋)の損傷で,除皮質硬直よりも重症な病態が多い
ウィキペディア 除脳硬直より/public domain)


除皮質硬直上肢屈曲+下肢伸展(ミイラ姿勢)
 内包から大脳脚にかけて皮質脊髄路の広汎な大脳障害で,長期植物状態などで出現
ウィキペディア 異常肢位より/public domain)

(投稿者 川崎)

2017-04-13

NSAIDsの注射

Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略/邦名は非ステロイド性抗炎症薬
経口薬・坐薬・経皮吸収薬・皮膚外用薬として多くの薬剤が使用可能
ただしNSAIDsの注射薬は下記の2種のみ
  • 筋注 ケトプロフェン(商品名カピステン/当院採用)
  • 静注 フルルビプロフェンアキセチル(商品名ロピオン/当院採用)

皮下または筋肉注のスルピリン(商品名メチロン/当院採用)や静注のアセトアミノフェン(商品名アセリオ/当院採用)は抗炎症(Anti-Inflammatory)作用を有しないため厳密にはNSAIDsでないと考える

NSAIDsの詳しくページ ⇒ 痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief ーNSAIDs/ピリン系/ステロイド性抗炎症薬

(投稿者 川崎)

負荷心電図のST-HRループ

負荷中から回復期の心拍数(横軸)とST下降度(縦軸)の関係
ST-HRループのST下降度はV5誘導で判定することが多い

ST下降が有意でも偽陽性の可能性が高い場合
  • HR-STループの回転が時計方向でない場合
  • ST/HRスロープの傾きが小さい(平坦に近い)

自験例:運動負荷心電図で陽性と判断された3症例
ST-HRループは青線が負荷中,緑線が負荷後(赤矢印はイメージ)

上段例 ST-HRループは時計回転かつ青線の傾きも平坦でない ⇒ 偽陽性の可能性は低い
中段例 ST-HRループは時計回転でない(ねじれている) ⇒ 偽陽性の可能性が高い
下段例 ST-HRループは時計回転であるが青線の傾きが平坦 ⇒ 偽陽性の可能性は高い

(投稿者 川崎)

2017-04-12

VE & 兵頭2010

VE=video endoscopic examination of swallowing
日本語名は嚥下内視鏡検査=経鼻内視鏡を使って行う嚥下機能の検査方法
兵頭2010は高知大学医学部耳鼻咽喉科の兵頭先生が開発したVEスコア


合計点数で判定(以下は目安)
  • 0点 正常
  • 1~4点 軽度障害 ⇒ 経口摂取は概ね問題なし
  • 5~8点 中等度障害 ⇒ リスクあるが経口摂取可能
  • 9点以上 高度障害 ⇒ 経口摂取は困難

(投稿者 川崎)

胸部X線クイズ(息切れ)

(投稿者 川崎)

パラパック paraPAC

緊急時や移送時,CT/MRI検査中に用いるガス駆動型人工呼吸器
小型軽量の簡易型であり設定可能なパラメータは以下に限定される
  • モード CMVあるいはSIMV
  • O2濃度 45%と100%の切替
  • 呼吸回数 8~40回/分
  • 一回換気量 70~1300mL

販売会社のページ ⇒ 搬送用人工呼吸器パラパック - Smiths Medical

(投稿者 川崎)

2017-04-11

デパケン(バルプロ酸Na)の相互作用

1.併用禁忌
薬剤名(一般名) 臨床症状 機序・危険因子
カルバペネム系抗菌薬
 メロペン(メロペネム)
 フィニバックス(ドリペネム)
 チエナム(イミペネム・シラスタチン)
 カルベニン(パニペネム・ベタミプロン)
 オラペネム(テビペネム)
てんかんの発作が再発することがある。 バルプロ酸の血中濃度が低下する。


2.併用注意(頻用薬のみ抜粋)
薬剤名(一般名) 臨床症状 機序・危険因子
ワーファリン(ワルファリンカリウム) 左記薬剤の作用が増強することがある。 遊離型の左記薬剤の血中濃度を上昇させる。
サリチル酸系薬剤
 バイアスピリン(アスピリン)等
バルプロ酸の作用が増強されることがある。 遊離型バルプロ酸濃度が上昇する。また、バルプロ酸の代謝が阻害される。
エリスロシン(エリスロマイシン)
タガメット(シメチジン)
バルプロ酸の作用が増強されることがある。 左記薬剤が肝チトクロームP-450による薬物代謝を抑制し、バルプロ酸の血中濃度が上昇する。
ベンゾジアセピン系薬剤
 セルシン(ジアゼパム)等
左記薬剤の作用が増強することがある。 遊離型の左記薬剤の血中濃度を上昇させる。

(投稿者 小森)

さようなら ガフキー?

ガフキー号数とは喀痰中の結核菌量を反映した指標
号数 菌量 号数 菌量
0号 全視野に0 6号 毎視野に7-12
1号 全視野に1-4 7号 毎視野に13-25
2号 数視野に1 8号 毎視野に26-50
3号 毎視野に1 9号 毎視野に51-100
4号 毎視野に2-3 10号 毎視野に101以上
5号 毎視野に4-6


ガフキーの問題点は標本の作り方(喀痰の採取部位や標本の厚み)などで号数が変化する
よって新しい指針ではガフキー号数の表記から-~3+のシンプルな記載法に変更された

チール・ネールゼン法染色

肺炎症例で喀痰の蛍光塗抹検査が陽性であったためチール・ネールゼン染色を追加した
強拡大(×1000倍)で赤く染まる構造物(右上と左下)を認め抗酸菌と診断
その後PCRを追加して結核菌と同定,培養で死菌でないことを確認した

追記
抗酸菌は1つでもいれば異常であるため必死に探す(便カンピロバクターも同じ)
本例はガフキー1号(全視野で1-4個)であったため見つけるのに10分ほど要した
(投稿者 川崎)

2017-04-10

周期性嘔吐症

血中にケトン体(アセトン)が増加するため生じる嘔吐
自家中毒症やアセトン血性嘔吐症と呼ばれることもある
  • 診断 尿中ケトンや血中3-OHBAの上昇+器質的疾患の除外
  • 機序 ブドウ糖不足⇒体脂肪消費⇒遊離脂肪酸⇒ケトン体増加
  • 誘引 過労,ストレス,感染,自律神経失調など
  • 年齢 2-10歳の小児で多いが,成人例での報告もあり
  • 特徴  空腹時(特に朝食前)の嘔吐,成人例では痩せ型
  • 治療 食事指導(炭水化物◎,ビタミン〇,脂肪×),ストレス回避など

成人例の頻度は不明ですが,女子大生926 名中10 名(≒1%)という報告あり(東京家政大学研究紀要.2015;55:103-111

(投稿者 川崎)

陥没呼吸 retractive breathing

胸壁の一部が吸気時に陥没する呼吸
  • 機序 肺の拡張障害や気道閉塞などで生じた局所的な過剰陰圧
  • 部位 肋骨弓下,肋間,胸骨上窩,鎖骨上窩など(重症例では肋間)
  • 疾患 喘息,喉頭蓋炎,異物吸入,呼吸窮迫症候群,アナフィラキシー他

実際の動画 ⇒ 努力性呼吸(陥没呼吸) (YouTube)
ERで陥没呼吸を見たら挿管できる準備をしておく

(投稿者 川崎)

テオフィリン中毒

意識障害と間欠的な痙攣,期外収縮を呈する喘息女性が当院ERに搬入された
テオフィリンの血中濃度が34.8μg/ml で最終的にテオフィリン中毒と診断した


テオフィリンは有効域が狭く要注意.痙攣=てんかんと安易に診断しないことも大切.

(投稿者 川崎)

2017-04-09

急性心筋梗塞のバイオマーカー


具体例
  • 心筋梗塞発症1時間後 ⇒ H-FABP上昇,トロポニンT正常
  • 心筋梗塞発症5日後 ⇒ H-FABP正常,トロポニンT上昇

(投稿者 川崎)

iSTAT アイ・スタット

救急現場で使用する携帯型の血液分析装置
数敵の血液(全血)から下記項目を数分で測定
  • pH,Lac,BE,PCO2,PO2,HCO2,Glu,Hb,BUN,Cre,Na,K,cTnl,ACTなど

実物はコチラからどうぞ ⇒ i-STAT 1血液アナライザー | Abbott Point of Care

(投稿者 川崎)

2017-04-08

心内膜下虚血

高度の大動脈弁狭窄例の胸痛時(冠動脈造影で狭窄病変なし)

  • V5, V6でST低下を伴う高電位差 ⇒ 大動脈弁狭窄による左室肥大で説明可能
  • 多誘導でST低下+aVR誘導でST上昇 ⇒ 心肥大に関連した心内膜下虚血の疑い

(投稿者 川崎)

Gregg phenomenon & garden hose effect

原則 『冠動脈の灌流圧は心筋の酸素消費量によって決定される』

Gregg phenomenon
 冠動脈の灌流圧が増加すれが心筋の酸素消費量が増加する現象(上記原則の逆)

garden hose effect
 冠動脈の灌流圧が増加すれが心筋がより伸展される現象(庭の水撒ホースと同じ)

Gregg phenomenonを説明する機序の1つとして,フランク・スターリングの心臓の法則を介したgarden hose effectが提唱されているが未だに十分には解明されていないと思われる領域

トコトン知りたい方はコチラへ ⇒ Iwamoto, et al. Cardiovascular research 1994;28:1331-1336

(投稿者 川崎)

2017-04-07

胎児~新生児~幼児

  1. 胎芽(embryo) ⇔ 受精~妊娠第8週目まで
  2. 胎児(fetus) ⇔  妊娠第8週目から出産まで
  3. 早期新生児(preterm neonate) ⇔ 出生から7日未満の新生児
  4. 新生児(neonate) ⇔ 出生から出生後28日未満の乳児
  5. 乳児(infant) ⇔ 出生から1歳に満たない子供
  6. 幼児(baby) ⇔ 1歳から学齢(小学校就学)
※英語には厳密に一致しない部分がある点に要注意

雑学 小児,小人,児童,子供は厳密に定義されていないあるいは状況に応じて異なるようです
赤ちゃんの語源 皮膚が赤く見えるから,泣くと赤くなるから,陣痛の圧力で多血症気味だから他

お薦めの解説 ⇒ 今村榮一.「こども」 をめぐる用語.小児耳 1996;17:57-59

(投稿者 川崎)

Kounis syndrome

肥満細胞の活性化により種々のアレルギー症状と急性冠症候群が同時に惹起された状態
初めて報告したギリシャの循環器医Nicholas G Kounisに由来 Br J Clin Pract. 1991;45:121-128

正確な発音はコチラ ⇒ How To Pronounce Kounis (日本語ではコーニスでいいような・・・)

要約
  • 原因:ヒスタミンや中性プロテアーゼ,アラキドン酸生成物,血小板活性化因子,種々のサイトカインやケモカインなど
  • 分類:タイプ1 冠動脈に動脈硬化なし+冠攣縮,タイプ2 冠動脈に動脈硬化あり+冠攣縮あるいは冠動脈プラークのびらんまたは破裂,タイプ3 血栓が関与し冠動脈の吸引物に好酸球と肥満細胞が存在
  • 治療:抗ヒスタミン薬やステロイド,肥満細胞安定化薬+通常の虚血性心疾患治療

注意点 通常アナフィラキシー例ではアドレナリン(エピネフリン,ボスミン)を用いるが,Kounis症候群では急性冠症候群が悪化する可能性がある

(投稿者 川崎)

2017-04-06

MRSA腸炎?

問題 先日,担当した下痢症例の便からMRSAが検出されました.診断は?治療は??
答え 神戸大学 岩田健太郎先生の感染症TODAY 「MRSA腸炎はあるか?」 にあります

つぶやき
便グラム染色で臨床的に意義ある所見はクロストリジウム・ディフィシルカンピロバクターの検出くらいかも・・・

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

関節痛を訴えた症例で関節液を採取してグラム染色した.
好中球は増加しているが細菌は認められない.診断は?
偽痛風
(投稿者 川崎)

2017-04-05

アシクロビル脳症

アシクロビル医薬品インタビューフォームの重大な副作用欄4番目に以下の記載
「精神神経症状:意識障害(昏睡)、せん妄、妄想、幻覚、錯乱、痙攣、てんかん発作、麻痺、脳症等」

  • 定義 アシクロビル投与で生じた脳症(ガンシクロビル,バラシクロビルでも生じる)
  • 機序 アシクロビルの直接神経毒性あるいは代謝産物の神経毒性の2説あり
  • 頻度 稀であるが維持透析中の腎不全患者や免疫抑制状態の症例で多い
  • 代謝 肝代謝8~14%,腎排泄68~76%(主に未変化体),髄液濃度は血中の約半分
  • 症状 意識障害や昏睡,錯乱,痙攣,幻覚,失調など(発熱や頭痛はない)
  • 検査 CTやMRIは正常,髄液で細胞増多なく培養陰性,脳波で時に徐波化
  • 濃度 SRLLSIなど外注会社では測定できない(製薬会社では概ね可能)
  • 治療 薬剤中止と全身管理(1週間程度で改善),必要に応じて血液透析

加療開始時に正常腎機能でも生じうるから要注意 ⇒ 洛和会病院医学雑誌 2010;21:65−67
(投稿者 川崎)

Crowned Dens Syndrome クラウンド・デンス症候群

先日の内科学会で聞きなれない症候群が発表されていたので調べてみました
クラウンド・デンス症候群とは環軸関節に生じた偽痛風発作(crown=王冠,dens=歯状突起)
  • 症状 首の周囲の激しい疼痛(ほとんど動かせない)
  • 疫学 平均年齢は78歳,男女比は1:2.5で女性に多い
  • 診断 CTで軸椎歯突起周囲の石灰化(MRIは無力)
  • 治療 NSAIDs (難治例はステロイドやコルヒチン)

分かりやすい解説 ⇒ 黒坂大太郎.Crowned dens syndrome(CDS)
多数例の報告論文 ⇒ Crowned dens症候群46症例の検討.洛和会病院医学雑誌2016;27:43−46

(投稿者 川崎)

2017-04-04

心エコー図の左室壁運動

心エコ―図で壁運動を判定する時は壁の動きそのものに眼が行きがち
しかし梗塞心筋でも周囲の健常心筋が牽引するから一見動いて見える
そこで定量的に壁運動を判定する時には収縮期の壁厚増加率にも注目

判断基準の参考値(月間心エコー 2017;18:336-343より)
  • 40%以上 ⇒ 正常 normokinesis
  • 10~30% ⇒ 低収縮 hypokinesis
  • 10%以下 ⇒ 無収縮 akinesis
  • 収縮期に伸展 ⇒ 奇異性収縮 dyskinesis

(投稿者 川崎)

心電図クイズ(検診)

(投稿者 川崎)

2017-04-03

S状結腸軸捻転 vs 精神疾患

S状結腸捻転症手術35例の検討(日本腹部救急医学会雑誌2012;32:583-586
  1. 下剤服用 51%
  2. 脳血管障害 51%
  3. 歩行不能例 45%
  4. 向精神病薬 34%

S状結腸捻転症20例の検討(日本腹部救急医学会雑誌2014;34:1089-1094
  1. 神経筋疾患 60%
  2. 腹部手術歴 35%
  3. 下剤常用例 30%
  4. 精神疾患 25%

抗精神病薬による慢性的な腸管運動障害のため,腸管拡張および腸間膜過長から大腸の可動性が増大して捻転を発症すると考えられている.同様の機序でHirschsprung病や長期臥床,便秘もS状結腸軸捻転のリスクである.

(投稿者 川崎)

2017-04-02

ライター症候群 Reiter's syndrome

HLA-B27関連脊椎関節症を伴う微生物が関与した関節炎(国際ワークショップ定義)
三徴は関節炎・尿道炎・結膜炎で,現在では反応性関節炎と呼ばれることの方が多い

初報はHans Reiterの「赤痢後に関節炎・尿道炎・結膜炎を示した1例」
Reiter H. Deutsche medizinische Wochenschrift. 1916;42:1535–1536
  • 頻度 欧米白人で人口10万人当たり年間4~6人(本邦ではもっと稀)
  • 疫学 好発年令は20代が最多で,男女比は5~6:1で男性に多い
  • 感染 赤痢,サルモネラ,エルシニア,クラミジア,キャンピロバクターなど
  • 治療 NSAIDs,ステロイド局注(難治例はメトトレキサートやアザチオプリン)
  • 予後 多くは自然治癒するが,一部は慢性の脊椎関節症に移行(20%程度)

2017-04-01

問題:骨盤を構成する骨の数は?

 答え:年齢,個人により異なる

骨盤は仙骨(1),尾骨(8),左右の腸骨(2)・坐骨(3)・恥骨(4)から成る ※番号は右図に対応
  • 寛骨=腸骨+坐骨+恥骨(成人前に癒合)
  • 仙骨=5個の仙椎(壮年期までに癒合)
  • 尾骨=おおむね3-6個の尾椎が癒合

ちなみに5=恥骨結合, 6=寛骨臼,7=閉鎖孔,赤線=骨盤縁また分界線

(参考ページ ウィキペディア 骨盤

(投稿者 川崎)

バクテリアルトランスロケーション

bacterial 【形】 細菌の / translocation 【名】 転位,転座,移行
腸管内の細菌が粘膜バリアーを突破して他臓器に侵入した状態
  • 機序 腸内細菌の異常増殖,腸管壁バリアー機能の障害,免疫機能の低下
  • 原因 栄養不良,消化管疾患,抗菌薬投与,敗血症,SIRS,ストレス,放射線照射など

1979年にBergとGarlingtonが提唱した観念 Infect Immun. 1979;23:403-411

🙅 抗菌薬投与による腸内細菌の菌交代現象microbial substitutionと混同しないでね

(投稿者 川崎)