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2021-04-03

侮るなかれ:右脚ブロックの急性心筋梗塞

🚑 臨床現場
  • 2時間前からの胸痛でERに搬入された患者さんの心電図が右脚ブロックでした.心電図は迫力に欠けたのですが,緊急カテーテルでは左前下行枝近位部の完全閉塞(側副血行路なし)でした.

👿 急性心筋梗塞を疑う例で心電図の左脚ブロックは予後不良のサインですが,右脚ブロックは現場であまり注目されていないと思います.あらためて急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)を「右脚」で検索すると,以下の3文がこそっと記載されているだけでした.
  1. 他にLAD 近位部閉塞の指標として,新規の完全右脚ブロックの合併やaVR誘導のST上昇も報告されているが,いずれも特異度は高いが,感度が低い(22ページ)
  2. LAD の近位部閉塞の指標としては,下壁誘導のST下降が最も有用とされ,他に新規の完全右脚ブロックの合併や aVR 誘導のST上昇が報告されている(29ページ)
  3. また,脚ブロック合併患者における STEMI の診断は二次性 ST-T 変化のため容易でないが,右脚ブロックや左脚ブロック合併患者(とくに後者)の予後は不良であり,再灌流療法の適応を迅速に判断することが重要である(29ページ)

👾 しかし右脚ブロックをなめてはいけないようです

研究1J Am Coll Cardiol 1999;34:389-95
  • 100症例の急性前壁心筋梗塞の検討では,完全右脚ブロックの頻度は6例(6%)で全例が近位部(前下行枝〜第一中隔枝)の閉塞(感度100%,特異度100%)
研究2J Am Coll Cardiol 1991;17:858-63
  • 急性心筋梗塞では,右脚ブロック伴う178例の予後は脚ブロックを伴わない754例よりも不良(院内死亡率32% 対 8%,退院後1年死亡率17% 対 7%)
研究3Eur Heart J 2012;33:86-95
  • 急性心筋梗塞6742例の検討で右脚ブロックの頻度は6.3%(2.8%は右脚ブロック以外の所見なし)で予後不要(院内死亡率は右脚ブロック14.3%,左脚ブロック13.1%,その他2.9%)

(投稿者 川崎)

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