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2026-07-29

AI 聴診器の研究から

TRICORDER 試験 👀 Lancet 2026;407(10529):704-15
  • 背景: 心血管疾患の早期発見は、世界的な公衆衛生上の優先事項である。人工知能(AI)搭載聴診器は、心不全、心房細動、弁膜症(VHD)のポイントオブケア検出において、優れた性能特性を発揮する。
  • 方法:英国のプライマリケア診療所を、介入群(日常診療におけるAI聴診器の使用に関するトレーニングと導入)または対照群(日常診療)に1:1でクラスター無作為化した。心臓検査中、AI聴診器は15秒間の単誘導心電図と心音図信号を記録し、3つのAIアルゴリズムに入力して、左室駆出率低下(≤40%)、心房細動、およびVHDの有無に関する二値予測を返した。
  • 結果:205の診療所がランダムに割り当てられた (介入群に96施設 [登録患者 701,933人]、対照群に109施設 [登録患者851,242人])。介入群の診療所では、心不全の検出はグループ間で差がなかった (IRR 0.94 [95% CI 0.86-1.02])。地域ベースまたは病院ベースの診断に差はなかった (p>0.05)。 
  • 解釈: AI聴診器を日常的なプライマリケアに導入しても、導入後12か月経過しても心不全の検出率や地域ベースの診断率は有意に増加しなかった。ただしAI聴診器の使用は、心不全、心房細動、弁膜症の検出率の有意な上昇と独立して関連していた。


😑 独り言
  • 少し分かりにくい結果かな~と思います。特に「AI聴診器の使用は、心不全、心房細動、弁膜症の検出率の上昇と関連するが、心不全の検出率や地域ベースの診断率は有意に増加しなかった」という点です。抄録の解析はIntention-to-treat analysisですが、図のPer-protocol adjusted incidenceでは差がありそうです(両解析法の違い
  • これに関する筆者らのコメントAI訳 →「アルゴリズムの性能は良好であったにもかかわらず、3疾患の検出率の向上は集団規模では達成されず、使用状況に依存することが明らかになった。また、実世界での導入において克服すべき大きな課題、例えば低い利用率や関連するワークフローの不整合なども明らかになった。」…なるほど(!?)

💁 AI(人工知能)に関する過去投稿は コチラ(PC版なら右下欄から選択可能)

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(投稿者 川崎)

2026-07-21

奇脈(Pulsus Paradoxus)の生理学

📧 N Engl J Med 2026;394:2487 に掲載されたレターより
  • 奇脈は吸気時に収縮期血圧が10mmHgを超えて低下する現象と定義され、しばしば重篤な疾患を疑う手がかりである。収縮性心膜炎心タンポナーデといった心疾患との関連でよく知られているが、喘息やCOPDなどの肺疾患でも見られる。
  • その機序として、吸気時の全身静脈還流増加、肺血管系への血液プーリング、心室間相互依存性、胸腔内圧の変動の誇張など、複数の要因が示唆されている。なおこの現象は奇脈という名称にもかかわらず、正常な生理反応の誇張に過ぎない
  • 奇脈は、他に異常のない肥満患者でもよく見られる所見である。これは腹囲増大が胸壁・横隔膜を圧迫し、呼吸仕事量を増加させる効果によるものと考えられている。従来からストロー呼吸(気道閉塞の模擬)を用いて、教育されてきた。
  • しかし呼吸速度を遅くするだけで奇脈は有意に増大する。特に注目すべき点として、10秒/呼吸という遅い呼吸だけで、ストローなしでも血圧低下が20mmHgを超えた(下図)。再現性の高いこのプロトコルは教育的に有用である。
  • 肥満や心肺疾患のない健常者でも、遅い呼吸だけで容易に10mmHgを超える奇脈が生じうるということは、呼吸速度の変化が、重篤な疾患を見分けるトリアージツールとしての奇脈の臨床的有用性に影響しうる可能性を示唆している。

- 奇脈に対する呼吸の影響 -
@NEJM

(投稿者 川崎)

2026-07-14

論文 🏆

  • 2026 FIFAワールドカップもそろそろ4チームに絞られてきました(今朝は6時からで、イングランドがノルウェーに勝利)。予想通りフランスが圧倒的な強さで順当に駒を進めています(本投稿作成時)。
  • 循環器内科のメンバーでサッカーの話をしているときに、2018年ロシア大会の時に、当院で経験した心筋梗塞の症例が話題になりました。本ブログにアップされていないようなので投稿しておきます。
  • 日本 vs ベルギー戦(ベスト16)で、午前3時にキックオフでした。日本が(奇跡的?)に2点リードしたのですが、同点に追いつかれました。まさにそのタイミングで胸痛が出現した中年男性です。
  • 確か午前5時前に呼び出しの電話があって、病院に向かいました。心電図変化も典型的なST上昇ではなかったため、「MIじゃなくて、蛸だな~」と思っていました。でも冠動脈が閉塞していました。


裏話
  • ちょうど先日、この患者さんが外来を受診されました。ワールドカップの最中でもあるため、「8年前、懐かしいですね~」と談笑しました。もっとも今回の北米大会も、早朝の試合が多いので、油断はできませんが…😅
  • 本例を論文にしてくれた初期研修の先生が、2019年4月の医学生・研修医の日本内科学会ことはじめで発表してくれました。その時にSNSでともてバズっていました。(本例は後にアップ済だったことが判明しました)

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-07-03

👀これから眼にも着目

  • 重度の三尖弁逆流(TR)による眼球の収縮期突出の報告を読みました(Open Med (Wars) 2026 Mar 20;21(1):20261395)。これまでの文献上の報告はわずか7例で、本稿では新たに2例を報告しています。
  • この所見の初報は、エモリー大学のJ. Willis Hurst(1920 – 2011)らのようです(Am J Cardiol 1970 Oct;26(4):351-4)。重鎮ハースト先生は心臓病学のテキスト(通称Hurst's The Heart)などで高名
  • 同眼球所見の機序は、頚静脈の収縮期陽性波(Lancisi徴候)と同様に、TRによるCV波と思われます。大動脈弁逆流症に伴う収縮期眼球突出(Pulsatile pseudo-proptosis)の方が少しだけ有名?
  • 個人的にはTRに伴う”こめかみ”の拍動を経験しています(勝手に命名:こめかみサイン)。論文で前額静脈の拍動を見たことがあります(過去の投稿)。これからはTRがあれば眼にも着目しなくては…

心不全で入院した44歳男性(平均右房圧23 mmHg)

Open Med (Wars) 2026 Mar 20;21(1):20261395/残念ながら動画なし)

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(投稿者 川崎)

2026-06-24

腋窩は診てませんでした😔

  • 重症の大動脈弁逆流症によるフィジカルの短報を見かけました(Eur Heart J Case Rep. 2026 Feb 6;10(2):ytag074)。大脈(速脈)を反映する身体所見で、水槌脈(Water-hammer pulse)や反跳脈(Bounding pulse)、コリガン脈(Corrigan pulse)などと呼ばれています。
  • これは特に目新しい所見ではなくて、このブログにも何度も登場しています(ココ)。本例がEur Heart J Case Repに掲載された理由は、場所が腋窩だからかな~と予想します。そういえば僕自身も腋窩を確認したことはありませんでした...... ( 〃..)ノ  ハンセイです

📗全文(AI訳)と図
  • 78歳の男性が、長期間にわたる進行性の呼吸困難の既往歴の後、起坐呼吸と安静時の呼吸困難を主訴として救急外来を受診した。身体診察では、うっ血性心不全の兆候、広い脈圧(144/43 mmHg)、心尖拍動の側方偏位、および大動脈弁逆流を示唆する高音の漸減性早期拡張期雑音が認められた。特に腋窩動脈において、顕著で規則的な末梢動脈拍動が認められ(ビデオSA)、急速な上昇と突然の虚脱を示した。この目に見える水槌脈(ワトソン脈とも呼ばれる)は、大動脈弁逆流の特徴である。これは、大動脈の急激な拡張を伴う一回拍出量の増加、それに続く大動脈から左心室への血液の逆流による拡張期虚脱の誇張によって生じる。心エコー検査により、重度の大動脈弁逆流に加え、著明な左心室拡張および収縮機能障害が確認された。

(投稿者 川崎)

2026-04-17

論文 🏆

  • 当院の初期研修医の先生が循環器内科で経験された症例が出版されました
  • 心不全で入院し,その後の精査で大動脈弁逸脱による重症の逆流症と診断
  • 左主冠動脈が右冠動脈洞から起始し中隔内走行を示した先天性冠動脈奇形
  • 同所見は”ハンモックサイン”として知られているようです(下図2D 矢頭)
  • 意外にも予後は悪くないようなので、本例も弁置換術のみを実施しました


💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-03-20

論文 🏆 低灌流の身体所見パート2

  • 当院で行った臨床研究が論文になりました.Kasai K, Kawasaki T. Peripheral Perfusion Index as a Marker of Hypoperfusion in Heart Failure. Cardiology 2026 Feb 9:1-10. Epub ahead of print. (PMID: 41662304
  • 以前に当科から,心不全症例の低灌流を反映する身体所見の中で,腋窩と指先の温度差および指先の冷感の有無はいずれも,Nohria-Stevenson分類と同程度のリスク分類に利用できることを報告(Cardiology 2025 May 5:1-11
  • 今回は簡便かつ客観性のある指標 Perfusion Index (PI) を用いた検討です.PIはパルスオキシメータの拍動性血流成分と非拍動性血流成分の比から算出される指標で,心不全例でのリスク評価は初めてと思われます.

- 心不全例の末梢PIと心血管事故 -

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-03-18

論文 🏆 低灌流の身体所見パート1

  • 当院の臨床研究が論文になりました.Kasai K, Kanehiro C, Honda S, Sakai C, Shindo A, Harimoto K, Kawasaki T. Physical Assessment of Congestion and Perfusion Status in Heart Failure. Cardiology 2025 May 5:1-11. Epub ahead of print.(PMID: 40324360
  • 現在の心不全ガイドラインでは,血行動態評価を4つの臨床プロファイル(すなわち dry-warm,wet-warm,dry-cold,wet-cold )に基づいて行うことが推奨されています.そこで活用されるのがノリアスティーブンソン分類ですが,必ずしも簡便とは言えません.
  • 本検討では心不全症例の低灌流を反映する身体所見の中で,腋窩と指先の温度差および指先の冷感の有無は共に,予後予測に有用であることを示しました.そして頚静脈所見と組み合わせた場合,Nohria-Stevenson分類と同程度の診断能を有していました.

- 心不全例の末梢所見と心血管事故 -

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-12-05

これは世界記録

  • びっくりする論文を眼にしたので本ページで共有します(N Engl J Med 2025;393:e33
  • インフルエンザの感染後に悪化した心房細動を伴う心不全(HFpEF)の89歳女性です
  • 三尖弁逆流による前額静脈の拍動(ランチシ徴候)には驚き(特に動画がすごい😮)


💀 独り言
  • 上記報告では体位が記載されていないため中心静脈圧の推定値は不明ですが,半坐位としても30㎝水柱は超えていそうです.右心不全が主体でなければ出現しない身体所見?
  • 自験例で静脈拍動の最上縁記録は側頭部(立位)です(こめかみサイン/Temple sign of JVP).同症例を臥位にしてもNEJM症例のような前額での拍動はありませんでした.
  • 前額静脈の拍動はTRの長い病歴や皮下組織のルーズさなど様々な要因が組み合わされないと出現しないのではと思います.頭部の表在静脈の解剖を引用しておきます(下図).


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(投稿者 川崎)

2025-11-21

論文 🏆 NEJM

  • 当院で経験した症例がN Engl J Medに掲載されました
  • 意識障害でER搬入された若者で甲状腺クリーゼでした
  • 甲状腺腫大と頚部のコリガン脈甲状腺雑音が特徴的
  • 動画や音声はコチラで確認できます(無料登録が必要)


🐔 独り言
  • 甲状腺クリーゼの身体所見は、いつか遭遇するだろうと長年待っていました。また本例は当初 EHJ - Case Reports に投稿する予定でした。でも投稿直前に「ダメもとでNEJMいってみるか」と送ったら――まさかの採択🎉準備と挑戦って大切。なお当院でのNEJM Images in Clinical Medicine の戦績は32投稿4採択です。本邦でトップクラスだったら嬉しいな…😉


👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-11-03

なるほどの説得力

  • ちょっと面白い論文を眼にしたので本ページでも共有します(US Cardiol 2025:19:e16
  • 座位から前屈すると内頚静脈のサイズが拡大することをエコーで確認(下の図と動画)
  • 臨床的意義がある心不全症例ではエコーを使わなくても身体所見で判定可能(自験例


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(投稿者 川崎)

2025-09-30

薬剤性低血糖

  • 薬剤性低血糖はERで頻回に遭遇する病態です.今回,糖尿病薬と関連しない薬剤性低血糖が疑われた症例を経験したのでまとめてみました.
  • 参考は霧島市立医師会医療センター 薬剤部DIニュース No.325 (2025.9) ですが,その元論文「肥満と糖尿病 2009;Vol.8」には辿り着けず😔
  • 下記薬剤のうちジソピラミドの低血糖は経験あり.当時,循環器内科をローテート中だった初期研修医の先生が論文化 ➜ 心臓 2006;38:824-8

💊 薬剤の相互作用による低血糖症
  1. 肝のシトクロムP450多型によるSU剤の代謝阻害
    • 抗凝固薬 ➜ ワルファリン
    • ニューキノロン系抗菌薬 ➜ ガチフロキサシン、シプロフロキサシン
    • ST合剤 ➜ バクトラミン配合錠
    • ヒスタミンH₂受容体拮抗薬 ➜ シメチジン、ラニチジン
    • アゾール系抗真菌薬 ➜ フルコナゾール

  2. 薬剤同士が競合してSU剤の遊離血中濃度が上昇
    • ヘリコバクターピロリの除菌 ➜ クラリスロマイシン、PPI
    • 消炎鎮痛剤 ➜ フェニルブタゾン

  3. 薬剤が腎排泄を阻害しSU剤の排泄遅延
    • フィブラート系高脂血症治療薬 ➜ ベザフィブラート、フェノフィブラート、クロフィブラート
    • 尿酸排泄促進薬 ➜ プロベネシド

🍷 糖代謝へ直接影響を及ぼす薬剤による低血糖症
  1. インスリンの増加
    • 抗不整脈薬 ➜ ジソピラミド、シベンゾリン
    • ニューキノロン系抗菌薬 ➜ ガチフロキサシン
    • 切迫早産治療薬 ➜ リトドリン
    • 抗結核薬 ➜ イソニアジド

  2. インスリン感受性の亢進
    • アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ARB)
    • 非選択性βアドレナリン受容体遮断薬

  3. 肝臓での糖放出の低下
    • エタノール ➜ アルコール飲料

(投稿者 川﨑)

2025-09-12

頚静脈波形

  • 頚静脈拍動と中心静脈圧、ドプラ波形の関連を概説する論文(Ther Adv Pulm Crit Care Med 2025 Jul 16;20:29768675251359700)を眼にしました。
  • 頚静脈の波形の分かりやすいイラストがあったのでアップしておきます。なお図の説明文はAIによる自動翻訳を活用(説明文中の引用論文は割愛)

頸静脈拍動(JVP)および頸静脈血流速度(JVFV)の生理学
(A) 心電図(ECG)、心音図(PCG)、および右心房圧(PRA)の時間的関係を示す。PCG の SX は心音を表す。PRA または JVP の上昇波は本文で説明される a波、c波、v波 である。下降波は x下降、x′下降、y下降 と呼ばれる。IC は等容収縮ノッチを示す。灰色で塗られた領域は JVFV を表し、s波(収縮期) および d波(拡張期) を含む。図解は心周期における右心の変化を示し、RA は右心房、RV は右心室を意味する。 (B) JVP の波形記録は19世紀半ばに初めて発表され、12 世紀末から20世紀初頭にかけて Mackenzie によりさらに詳細に発展した。JVP の陽性波は、その解剖学的・生理学的な起源に基づいて命名され、a波は右心房、c波は総頸動脈、v波は右心室 を反映するとされた。Mackenzie はまた、三尖弁逆流症における JVP の病的変化を記載しており、初期には a(心房型) から v(心室型) へと移行することを示した。疾患の初期段階では、顕著な v波 は心房細動(すなわち「心房性」)により生じる。心房収縮が失われることで右心房がうっ血し、右心房圧(PRA)が収縮後期に上昇するため、機能している三尖弁(TV)が心基部方向へ戻る際に高い v波が発生するためである。しかし疾患が進行すると、v波はさらに顕著になり、収縮期の早期に出現するようになる。これは逆流性の血液量が機能不全の三尖弁から逆流するためであり、いわゆる「心室型 v波優位」と呼ばれる。 同様の進行は、肺高血圧患者において Ranganathan と Sivaciyan によって内頸静脈(IJV)ドプラ超音波で記録された JVFV でも報告されており、以下で述べる。(C) JVFV は 装着型ドプラ超音波 によって測定され、これについても以下で記載する。

Sivaciyan と Ranganathan が提唱した頸静脈血流速度(JVFV)の分類システムの模式図
詳細は本文を参照のこと。ここおよび図1において、右心房方向への JVFV は y軸の下向きに、頭部方向への血流速度は y軸の上向きに示されている。 仰臥位では、最上段のパターン(s > d)が正常であり、持続的な逆行性 a波は認められない。大きな逆行性 a波および v波は、単相性拡張期パターン(ここでは表示されていない)で観察されることがある。 逆行性収縮期速度(最下段のパターン)は、臨床的に重要な**三尖弁逆流(TR)**を示す典型的な所見であるが、房室解離において心房収縮が閉じた三尖弁に対して生じる場合にもみられる。この場合、逆行性収縮期速度は不規則である。 略語: RA = 右心房 RV = 右心室 TAPSE = 三尖弁輪収縮期移動量(tricuspid annular plane systolic excursion)

😇 おまけ

上記論文では当院で行った頚静脈の臨床研究を4編も引用してもらいました 😊 謝謝
  1. Kasai K, Kawasaki T, Hashimoto S, Inami S, Shindo A, Shiraishi H, Matoba S. Response of Jugular Venous Pressure to Exercise in Patients With Heart Failure and Its Prognostic Usefulness. Am J Cardiol 2020;125:1524-1528 ➜ 日本語の解説
  2. Shako D, Kawasaki T, Kasai K, Sato Y, Honda S, Sakai C, Harimoto K, Shiraishi H, Matoba S. Jugular Venous Pressure Response to Inspiration for Risk Assessment of Heart Failure. Am J Cardiol 2022;170:71-75 ➜ 日本語の解説
  3. Kasai K, Kawasaki T, Hashimoto S, Kanehiro C, Yabu S, Shindo A, Matoba S. Jugular Venous Pressure and Kussmaul's Sign as Predictors of Outcome in Heart Failure. Int Heart J 2023;64:1088-1094 ➜ 日本語の解説
  4. Noguchi M, Kasai K, Honda S, Sakai C, Harimoto K, Kawasaki T. Jugular Venous Response for Risk Stratification in Heart Failure. Cureus 2024;16:e58423 日本語の解説

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(投稿者 川崎)

2025-08-30

論文 🏆

  • 近隣クリニックから当院へ紹介例が論文になりました
  • 労作時の動悸がありマスター負荷で2:1伝導ブロック
  • 心エコー図や運動負荷タリウム、ホルターに問題なし
  • その後に目薬(β遮断薬含む)の使用(片眼)が判明
  • 目薬の中止後は安定するも1年後に完全房室ブロック
  • なんと今度は両眼に点眼 → 中止後にブロックは消失
  • その後に眼科で閉塞 隅角ぐうかく緑内障に対して手術を実施

- 3度房室ブロックが出現時の心電図 -

😀 知識の整理
  • ベータ遮断薬を含む点眼薬の全身的な影響は,正常な心血管機能を有する個人では極めて軽微で無視できる.
  • しかし房室ブロックを呈した243症例の検討では,その内12症例でβ遮断薬を含む点眼薬を処方されていた.
  • 点眼薬の中止後この12例中7例では洞調律が回復したが,5例では最終的にペースメーカ植込み術を要した.
💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-08-29

🏆 論文

  • 当院循環器内科の症例報告が出版されました🎉
  • 動悸で来院されて最終的に肥大型心筋症と診断
  • 通常の心エコー図で心尖のポーチは検出されず
  • ハンドグリップ負荷も特に異常所見は出現せず
  • ただし運動負荷後では奇異性ジェットフロー
  • 心臓MRで明らかな心尖部ポーチは描出できず

🙈 本例の抄録です
  • An early diastolic flow from the apex toward the base of the left ventricle-known as diastolic paradoxical jet flow-is associated with adverse cardiovascular events in patients with hypertrophic cardiomyopathy. This subtle flow, indicative of a concealed apical pouch, can be unmasked by exercise stress echocardiography even when no pouch is visualized on cardiac magnetic resonance imaging.
  • 左室心尖部から心室基部に向かう拡張期早期血流(拡張期奇異性ジェットフロー)は、肥大型心筋症患者における心血管イベントの有害事象と関連している。この微細な血流は、心尖部ポーチの存在を示唆しており、心臓磁気共鳴画像検査でポーチが描出されない場合でも、運動負荷心エコー検査で検出できる可能性がある。(AIの自動翻訳)

💫「Paradoxic Jet Flow: PJF(奇異性血流)」の過去の投稿は コチラ

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(投稿者 川崎)

2025-08-01

The efficacy and effectiveness of...

  • 英語論文で多用されているフレーズで,基本的には共に有効性を意味
  • しかし医学など科学の特定の分野では,そのニュアンスは少し異なる

efficacy
  • 理想的な条件下で得られる効果の高さ(例:計画された臨床試験

effectiveness
  • 現実的な条件下で得られる効果の程度(例:実際の日常臨床現場)

💁 おまけ

(投稿者 川崎)

2025-06-30

夢叶う2 Dreams come true 2

  • 心不全臨床では負荷を併用した頚静脈の座位定性法がとても有用です
  • 5-ステップで学ぶ無料アプリ「シンプル頚静脈」を昨年公開しました
  • 日本語版は総説やSNS,講演などで宣伝する機会がある程度ありました
  • 実は海外展開を念頭に英語版も同時にリリースしていました(コチラ
  • 今回,国際誌にアプリが掲載されました(ESC Heart Fail 2025 May 27

😎 舞台裏
  • はじめに米国の雑誌に投稿しましたが,あっさりreject.でもこれは想定内でした.(内容はともかく)アプリの掲載はとてもリスクがあるからです(スパムを組み込むことも技術的に可能).今回の雑誌にも期待せずに投稿しました.3日後に返事があったので「やっぱりダメだな」と思っていたら,ともて高評価.実際にその1週間後(投稿10日後)に出版されました.
  • 本邦の心不全ガイドライン(2025.3更新)への収載が一つ目「夢叶う Dreams come true」で,今回の海外展開が二つ目の「夢叶う Dreams come true」です.そしていつか,海外のガイドライン収載へ…これは三つ目の「夢叶う Dreams come true」になるでしょうか😃

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(投稿者 川崎)

2025-05-17

🏆 論文

  • 当院の初期研修医の江上先生が循環器内科で経験した症例報告が出版🎉
  • 主訴は安静時の胸部違和感で身体所見や心電図(),胸部X線は正常
  • 心エコーも正常 ➜ 運動負荷Tl心筋シンチとホルター心電図を予約した
  • 検査当日,負荷前の問診で「数日前から強い息切れがある」ことが判明
  • 心電図()ではST-T変化はないが,負荷は中止して循環器外来を受診
  • 頚静脈所見に異常はなかったが左胸部で呼吸音と音声振盪の減弱を確認
  • 画像で左側気胸 ➜ 心電図を見直すと気胸部位の誘導でR波減高(矢印)
  • 左側にトロッカーを挿入して気胸は改善 ➜ 直後の心電図も改善(
  • 退院後に行った冠動脈CTは正常,ホルターで発作性心房細動が判明した

🙈 本論文の考察より
  • 気胸による心電図異常所見の発生率は,自然気胸を呈した57人の青年のうち21%で,心エコー検査で異常所見を示した患者は4%のみであった.
  • 気胸は電気軸の変化やST部分の変化,T波の異常,不整脈などの心電図変化を引き起こすが,これらの変化は気胸の重症度や部位によって異なる.
  • 自然気胸連続40人の心電図解析では,左気胸ではV2からV6誘導のQRS振幅が有意に減少し,右気胸ではV5およびV6誘導のQRS振幅が増大した.

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(投稿者 川崎)

2025-05-16

🏆 論文

  • 当院初期研修医の角本先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
  • 狭心症に対するPCIでステント留置40分後に前胸部の皮疹と咽頭部の違和感
  • 本例の様々なものに対するアレルギー歴を考慮し速やかにアドレナリン筋注
  • アレルギー症状は改善したがその約50分後に留置したステント内が血栓閉塞
  • バルーンの拡張を繰り返して最終的には改善(その後の経過でHITは否定的)
  • 銀アレルギーの既往が判明 ➜ ステント金属に対する3型Kounis症候群の疑い

🙈 補足
  • Kounis症候群は,アレルギー反応に伴う急性冠動脈イベントを特徴とする稀な病態です.当初はヒスタミン誘発性冠動脈攣縮として報告されましたが,その後にプラーク破裂や血栓症を引き起こすことが分かりました.
  • コーニス症候群は現在では,プラークのびらんや破裂を伴わない冠攣縮タイプ(I型),プラークのびらんや破裂を伴う冠攣縮タイプ(II型),ステント血栓症を生じたタイプ(III型)の3つの型に分類されています.
  • 本例にはほこりや花粉,猫などさまざまなアレルギーがありましたが,金属アレルギーは共有されていませんでした.もっとも患者さん自身も我々の問診でようやく思い出した程度の軽いもの(銀アクセサリーで発赤)

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(投稿者 川崎)

2025-04-07

🏆 論文

  • 循環器内科の本田先生が執筆されたケースレポートが出版されました
  • 収縮期雑音を呈した動脈管開存(PDA)の一例です(連続雑音なし)
  • 軽度肺高血圧のみでEisenmenger(アイゼンメンジャー)症候群なし
  • 心エコー図では拡張期にも短絡シグナルが描出されますが雑音なし

🎉 PDA雑音
  • PDA患者の典型的な雑音といえばもちろん(第2音で途切れることなく持続する)連続性雑音です。本例のような大動脈-肺動脈シャントに加えて、動静脈シャント(冠動脈動静脈瘻、右心室へのバルサルバ洞動脈瘤破裂など)や動脈および静脈の流れの変化(静脈雑音乳腺雑音甲状腺雑音など)があります。
  • 肺高血圧を伴うと拡張期雑音が消失することは理にかなっています。ただし本例の肺高血圧は軽度でした(平均圧28 mmHg、1.4~2.1 WU)。本例では収縮期雑音のみを聴取かつ記録した正確な原因は不明ですが、貧血や肝硬変などの併存疾患が非典型的なPDA雑音に変化させたと考えるのが妥当でしょうか?
  • Eisenmenger患者にみられるように、大動脈圧と肺動脈圧の平衡例では、雑音が完全に消失し無音性PDAになります(一部の症例では拡張期雑音のみ)。PDA雑音の性状は、肺動脈内のジェットの方向によっても変化するようです。本論文の考察ではこの辺りを(少し)深堀したので興味がある方はご覧ください。

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(投稿者 川崎)