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2019-10-30

腹部X線:臥位 vs 立位

☆「腹部単純撮影:立位か,臥位か?」より
  • 腹部単純写真の基本は,背臥位正面撮影(前後撮影) (Supine position, AP view) である.CTのscout画像は腹部単純写真の背臥位像である。背臥位になることで,各臓器があるべき位置におさまる.すなわち肝脾腫大の有無は肋骨弓下にでているかどうかで判定する.消化管も腹部全体に分布し,腹部の濃淡が均等になり,骨盤内の腫瘤や石灰化の有無の判定が可能である.立位写真では,臓器,腹腔内や腹壁の脂肪が下に降下し,さらに消化管が骨盤内に落ち込む.そのため,下腹部が白く,上腹部は黒い,診断しにくい写真になる.立位写真のメリットはフリーエアー(Free air;遊離ガス) とニボー(Niveau, Air-fluid level:鏡面像)ぐらいである.

★「腹部X線写真の読み方 臥位でもイレウスは診断できる」より
  • 一般的にイレウスは立位で撮影し、ニボー(鏡面像)を診断すべしと教えられる。だが病態は、腸管閉塞によるガスや腸液の停滞に伴う腸管内圧の上昇なので、腸管拡張を指摘できれば、臥位でも十分に診断が可能だ。腹部X線撮影は、もちろん立位と臥位の両方が好ましい。だが、どちらか一方なら臥位を選択すべきだろう。なぜなら、触診時の臓器イメージに近いからである。立位では実質臓器は重力に従い下方へ、空気は上方へ移動し、触診時のイメージとずれてしまう。

(投稿者 川崎)

2019-10-29

橈骨神経麻痺 Radial Nerve Palsy

  • 起床時に左手の麻痺を訴え当院を受診した症例
  • 指を動かすことはできたが手首は持ち上げられず
  • 昨夜は枕の下に患肢を置いて寝ていたと本人弁
  • 最終診断は(予想通り)圧迫による橈骨神経麻痺


🚑 臨床現場
  • コップに入った水を下から持ち上げることはできたが,上から掴むことはできなかった
  • 初診医は感覚は障害はないと判断したが,専門医の再評価で拇指と示指間の痺れが判明

👌 橈骨神経麻痺
  • 原因 通常は外部からの圧迫(上腕中央部で骨の外側を通るため)
  • 別名 下垂手,ハネムーン症候群や土曜夜のマヒ(腕枕のため)など
  • 診断 問診と特徴的な所見(補助検査としてX線撮影や頸椎MRI他)
  • 治療 ビタミンB12投与(回復に1~3ヵ月要),補助具,手術など

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(投稿者 川崎)

2019-10-28

栄養指標 "Conut score" の読み方

  • CONUT scoreControlling Nutritional Status Score(赤字は予想)
  • 本邦では英語風のコナットスコアと呼ばれることが多かったと思います
  • でも開発者であるゴンザレス先生の発音は「コニュート」(参考資料

復習 👀
  • 2003年の欧州静脈経腸栄養学会(ESPEN)で発表された簡易的な栄養評価法
  • 血清アルブミン値,総リンパ球数,総コレステロール値に基づいて算出する
  • 合計スコア:0-1➜正常,2-4➜軽度異常,5-8➜中等度異常,9-12➜高度異常

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(投稿者 川崎) 

2019-10-27

心電図クイズ

  • 心肺停止(初期波形は心静止)してER搬入後にROSCが得られた症例




(投稿者 川崎)

2019-10-26

UACR 尿中アルブミン/クレアチニン比

  • UACR=Urine Albumin-to-Creatinine Ratio
  • 随時尿Alb(mg/dL)を尿Cr(mg/dL)で除した値(正常は通常30未満)
  • 糖尿病における糸球体病変の早期検出のため測定されることが多い

🔬 検体の採取と評価法 
  • 随時尿における定量試験では,同時に尿中Crを測定してアルブミン・蛋白/Cr比を求めて評価する(1gのCr当たりの量).アルブミン/Cr比が30~299mg/gCrであれば微量アルブミン尿と診断する.起立性蛋白尿を除外するために随時尿では一度は早朝第一尿を用いて検査をする.

👻 おまけ
  • 随時尿蛋白/クレアチニン比(俗称グラム・クレアチニン)と混同しないように.こちらは1日の尿蛋白量を推定するための指標で,正常値は0.15g/gCr未満です.

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(投稿者 川崎)

2019-10-25

簡易懸濁法

  • 錠剤を粉砕や開封せずに55℃の温湯20mLに入れて崩壊懸濁後に経管投与する方法
  • 昭和大学薬学部の倉田なおみ先生が開発(臨床栄養別冊JCN経腸栄養 2010;131-6)
  • 55℃の理由は10分間放置しても37度以下にならない最低温度が55℃であったため


メリット 🍵
  • 粉砕時に発生する諸問題を解決
  • 投与前に薬の確認が可能である
  • 薬剤の中止・変更の対応が容易
  • 栄養チュ-ブの閉塞を回避可能
  • 汚染や誤投与などのリスク回避


🍼 55度のお湯(※厳密でなくてOK)
  • ポットのお湯:水を2:1で入れると約55℃になる
  • 60℃に設定できる電気ポットを用いて少し冷ます
  • 病院や施設の蛇口のお湯の最高温度は概ね55℃


🍥 もっと詳しく知りたい方 ➜ 日本服薬支援研究会「簡易懸濁法とは」

(投稿者 川崎)

2019-10-24

サルモネラ腸炎の診断

  • 症状と患者背景により臨床診断をし、並行して確定診断を行う。
  • 38℃以上の発熱、1日10回以上の水様性下痢、血便、腹痛などを呈する重症例では、まず本症が疑われることが多い。
  • 検査所見では、炎症の程度に応じて白血球数、CRP等の炎症反応の増加が見られる。
  • 菌血症や胃腸炎でもトランスアミラーゼが上昇することがある。
  • 確定診断は糞便、血液、穿刺液、リンパ液等より菌の検出を行う。
  • サルモネラの特異的な迅速診断法はない。

(投稿者 渡邉)

忘備録:循環器疾患の漢方

状態漢方薬
器質的心疾患のない胸痛(心臓神経症)桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
または
半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
冠攣縮性狭心症の補助療法木防已湯(モクボウイトウ)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
心不全や浮腫などの水滞状態五苓散(ゴレイサン)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
閉塞性動脈疾患(冷え性)の補助療法桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
※参考)北村 順先生.続・循環器医が知っておくべき漢方薬(文光堂)

🍶 おまけ
  • 悪酔い予防には黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)1-2包(2.5-5.0g)飲酒前屯用,二日酔いには五苓散(ゴレイサン)2-3包(5.0-7.5g)飲酒後屯用がいいようです.投稿者はまだ試していませんが・・・

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(投稿者 川崎)

2019-10-23

画像クイズ(右下腹部:女性)





(投稿者 川崎)

2019-10-22

克山病(ケシャン病) Keshan disease

  • 心筋障害を主徴とする中国黒竜江省克山県で発見された風土病の一つ
  • 初報は(おそらく)本邦の原 亨先生(日本循環雑誌 1937;3:98-108)
  • 男性より若女性や男児に多く頻度は経年的減少(1995年頃は10/10万)
  • 当初はCO中毒やウイルス感染が疑われたが現在ではセレン欠乏の疑い
  • 病態は拡張型心筋症に類似して心拡張と壁運動低下からうっ血を発症

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(投稿者 川崎)

2019-10-21

輸血に伴う予測値の計算

予測上昇Hb値(g/dl)=投与Hb量(g)/循環血液量(dl)
循環血液量:70 ml/kg〔→循環血液量(dl)=体重(kg)×70 ml/kg/100〕
〔例〕体重50 kgの成人(循環血液量35 dl)にRBC-LR-2(Hb量=26.5 g×2=53 g)投与することにより, Hb値は約1.5 g/dl上昇することになる.

予測上昇凝固因子活性値(%)=新鮮凍結血漿の投与量(ml)×血中回収率(%)/循環血漿量(ml)
循環血漿量:40 ml/kg〔70 ml/kg×(1-Ht/100)〕

血小板輸血直後の予測血小板増加数(/μl)=輸血血小板総数/循環血液量(ml)×10³ × 2/3
循環血液量:70 ml/kg
〔例〕体重50kgの成人(循環血液量3500ml)に照射血小板濃厚液5単位(1.0×10¹¹個以上の血小板を含有)を投与すると, 直後には輸血前の血小板数より19000/μl以上増加することが見込まれる.

(投稿者 田嶋)

グラム染色クイズ

  • 咳嗽が持続する乳児の鼻腔ぬぐい液のグラム染色(強拡大)




(投稿者 川崎)

2019-10-20

「心大血管疾患リハビリテーション料」の対象疾患

心不全の心臓リハビリテーション標準プログラム(2017年版)より(6ページを一部改変:平成26年度診療報酬改定)

急性の病態(術後を含む)
  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 開心術後
  • 大血管疾患(大動脈解離,解離性大動脈瘤,大血管術後)

慢性の疾患
  • 慢性心不全:LVEF≦40%,peakVO2≦80%,BNP≧80pg/mL のいずれかを満たす
  • 末梢動脈閉塞性疾患:間歇性跛行を呈する状態

👶 おまけ
  • 心不全の心臓リハビリ適応にNT-proBNPのカットオフ値は(なぜか)記載されていない.一方,急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)の図6には『NT-proBNP≧400pg/mLまたはBNP≧100pg/mLなら治療対象となる心不全の可能性があるので精査あるいは専門医に紹介』と記載されている.NT-proBNPとBNPの比が4倍であることを考慮すると,心不全に対する心臓リハビリはNT-proBNP≧320pg/mLあたりが妥当かも・・・

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(投稿者 川崎) 

2019-10-19

心電図クイズ

  • 突然の動悸を自覚してERを受診した妊娠中期の女性 




ATP
(投稿者 川崎)

2019-10-18

遺伝性血管性浮腫 HAE (hereditary angioedema)

  • 病態 血管透過性の亢進による血管性浮腫をきたす常染色体優性遺伝疾患
  • 機序 C1インヒビター欠損・活性低下よるによりブラジキニンの過剰産生
  • 疫学 有病率は5万人に1人と稀であらゆる年齢で発症しうる(家族歴あり)
  • 特徴 真皮・皮下粘膜下組織の境界不明瞭な非圧痕性浮腫で痒みと伴わない
  • 部位 四肢・顔面(結膜は稀)・腸管・喉頭(致死的)など全身に生じえる
  • 誘因 ストレス,妊娠,月経,薬物など(24時間でピーク/72時間で改善)
  • 診断 C1インヒビター活性測定/除外目的なら血清C4(正常ならほぼ否定)
  • 治療 C1インヒビター著効(エピネフリンや抗ヒスタミン薬は無効が多い)



💋 おまけ
  • クインケ浮腫血管性浮腫の別名で遺伝性(遺伝性血管性浮腫:HAE)と後天性(特発性,アレルギー性,ACE阻害薬など)に大別できる.命名はドイツの内科医かつ外科医クインケ(Heinrich Irenaeus Quincke: 1842–1922)で,大動脈弁逆流などで認める爪床拍動のクインケ徴候(Quincke's sign)にも名前が残っている.クインケ先生は腰椎穿刺法(Quincke's puncture)も確立している.命名のハットトリックだね!

(投稿者 川崎)

2019-10-16

QT延長の原因薬剤

*原因薬剤

・抗不整脈薬:I 群薬(キニジン,プロカインアミド,ジソピラミドなど)
       III 群薬(アミオダロン,ソタロール,ニフェカラントなど)
・向精神薬:フェノチアジン系(クロルプロマジンなど),三環系抗うつ薬など
・抗生物質,抗ウイルス薬:エリスロマイシン,アマンタジンなど
・抗潰瘍薬:H2 受容体拮抗薬(シメチジンなど)
・消化管運動促進薬:シサプリドなど
・抗アレルギー薬:テルフェナジンなど
・脂質異常症治療薬:プロブコールなど
・有機リン中毒

*薬剤性torsade de pointesの危険因子

・女性
・低K 血症
・徐脈
・最近洞調律化された心房細動例
・心不全
・ジギタリス投与
・薬の血中濃度の上昇(薬物の相互作用による)
・薬物の急速な静注投与
・薬物投与前のQT 延長
・先天性QT 延長症候群
・イオンチャネルの多型性
・重度の低Mg 血症
・QT 延長作用のある薬物の併用

(投稿者 春名)

🎊 論文

  • 当院の総合診療科と救急科で対応した症例が論文として出版されました
  • 鎖骨下動脈盗血症候群と腹部大動脈瘤の併存で血圧管理に難渋した症例


👴 つぶやき
  • 臨床現場は本例のように悩ましい症例ばかりです.症例報告は貴重な臨床経験を共有するだけでなく,自分たちの行なっている医療を世に問うためでもあります.臨床医の大切な役割である執筆活動を今後も続けていって下さい.

(投稿者 川崎)

2019-10-15

二峰性拍動 Biphasic pulse

  • 検診で心電図異常を指摘された症例の頸動脈(舌圧子は収縮期に上方に移動)

😶 解説
  • 舌圧子の鋭い上昇(spike)➜ 急峻な衝撃波(percussion wave)
  • その後の小さな隆起(dome)➜ 二峰性拍動(spike and dome型)
  • 同波形は閉塞性肥大型心筋症に特徴的 ➜ 心エコー図で確定診断
(本例の心機図:頸動脈波 👶 各要素の時間的な関連がとても美しい)

おまけ 👅 Pulsus bisferiensはBiphasic pulse(二峰性拍動)の別名です

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2019-10-14

睡眠相後退症候群 DSPS (Delayed sleep-phase syndrome)

  • 慢性的な入眠困難と覚醒困難を特徴とする概日リズム睡眠障害
  • 思春期から青年期に好発して社会生活に不適応・不利益となる
  • 二次的な抑うつ状態やアルコール・薬物乱用を生じることがある
  • 治療は朝の高照度光療法や夜のメラトニン投与(下図APZ)など


  • 反する病態は夕方眠気と早朝覚醒を示す睡眠相前進症候群
  • 英名はAdvanced sleep phase syndrome, ASPS
  • 高齢者に多く原因は加齢に伴う生体リズム周期短縮の疑い
  • 治療は入眠前の高照度光療法による生体リズムの位相後退


(投稿者 川崎)

2019-10-13

第4相ブロック Phase-4 block

  • 潜在的自動能細胞で周期延長に伴い拡張期膜電位が浅くなり興奮性が抑制されるため
  • 第4相ブロックの背景には虚血性心疾患や心筋症などの基礎疾患を有することが多い
  • アルゼンチンの循環器内科医 Rosenbaumらが初めて提唱した(Chest 1973;63:666-77
  • 通常の心拍依存性ブロックは第0相からの脱分極速度の遅延による(Ashman現象など)


心室筋の活動電位 💥
  • 第0相(Phase 0)➜ 脱分極相
  • 第1相(Phase 1)➜ スパイク
  • 第2相(Phase 2)➜ プラトー相
  • 第3相(Phase 3)➜ 再分極相
  • 第4相(Phase 4)➜ 静止電位

(標準的な心筋の活動電位遷移モデル by User:Quasar


(投稿者 川崎)

2019-10-12

3P-MACE

  • MACE=Major Adverse Cardiovascular Events=主要心血管イベント
  • 3P-MACE=3-point MACE(スリーポイントメイスと読むことが多い)
  • MACEや3P-MACEは臨床試験で用いる(複合)エンドポイントの一つ

3P-MACE 💦
  1. 心血管死 Cardiovascular death
  2. 非致死性心筋梗塞 Nonfatal myocardial infarction
  3. 非致死性脳卒中 Nonfatal stroke

🉐 おまけ
  • 循環器疾患の他のエンドポイントには全死亡(all-cause mortality)や心不全入院(hospitalization for heart failure)がある
  • 3P-MACEに不安定狭心症による入院(hospitalization for unstable angina)を加えた4P-MACEなどを用いることもある
  • ランダム化比較試験(RCT:Randomized controlled trial)ではエンドポイントだけではなくて,解析方法にも注目 ➜ 解析 ITT vs PP

(投稿者 川崎) 

2019-10-11

鉄錆痰 Rusty colored sputum

  • 発熱と呼吸器症状を訴え来院した症例の喀痰




(投稿者 川崎)

2019-10-10

PERM パーム

PERMProgressive Encephalomyelitis with Rigidity and Myoclonus
  • 全身硬直症候群(Stiff person syndrome, SPS)の亜型
  • 亜急性に筋強剛やミオクローヌスなどを呈する脳脊髄炎
  • 抑制性シナプス伝達への抗体が関与(抗GlyR抗体など)
  • 英国の医師Brownらが提唱(J Neurol 1999;246:648-52


👶 おまけ
  • 当院で経験した症例では難治性の激しい硬直性痙攣が持続したが,最終的にプレセデックスが著効した

(投稿者 川崎)

2019-10-09

逆なら逆!

  • 上部尿路系感染と診断され入院した症例の左右の頸静脈(臥床+枕あり)

通常なら頸静脈は右側でより明瞭に認識される(実例1実例2).これは右房との位置関係に起因する(直線性+距離)➜ 解剖図.では本例で外頸静脈が右側よりも左側で目立っている理由は?



(投稿者 川崎)

2019-10-08

MAGGIC risk score

  • MAGGIC=Meta-analysis Global Group in Chronic Heart Failure
  • 5万人余のスウェーデン登録データに基づく慢性心不全の死亡リスク
  • カロリンスカ大学のSartipyらが報告(Eur J Heart Fail 2014;16:173-9
  • 年齢や性別,収縮期血圧,BMI,駆出率など13変数から計算 ➜ 自動計算



(投稿者 川崎) 

2019-10-07

好奇心!

  • 本を読んでいたら1mm位の小さい点が動いていたのでセロテープで確保して検鏡(弱拡大100倍,無染色)




(投稿者 江後/川崎)

2019-10-06

Ventriculophasic sinus arrhythmia

  • 2対1房室ブロックでPP間隔に不整がみられる状態で邦名は心室[時]相性洞不整脈
  • 典型例はQRSを伴うPP間隔がQRSを欠くPP間隔よりも短縮(下の図は非典型例)
  • 初報は1910年で犬の動物実験(J Erlanger, JR Blackman. Heart 1910;1:177-230)


🐧 おまけ
  • Ventriculophasic sinus arrhythmiaの正確な機序は不明ですが,「心室収縮に伴う心房の伸展が洞結節の発火を早める」あるいは「心室収縮に伴う駆出血流が洞結節の灌流を改善し発火を早める」などが推測されているようです.同様のRR間隔の変動は完全房室ブロック症例の40%以上に認められ,2度房室ブロックでも観察されると報告されています.

(投稿者 川崎)

2019-10-05

ヒューリスティック & 認知バイアス

医学ジャーナルにおけるclinical problem-solvingのスタイルで主な特徴は,診断名が伏せられていること,エキスパート診断医(ディスカッサント)の暗黙知(タシット・ナレッジ)が時系列的にそれぞれの臨床場面において記述されることである.エキスパート診断医が迅速な推論を行う場合には,ヒューリスティックを用いており,その主要なルールにはオッカムの剃刀等がある.診断遅延または診断エラーの原因には認知バイアスもあり,行うべきワークアップを途中で止めてしまうことをプリマチュア・クロージャー(早期閉鎖)という.
※徳田安春先生の文言

臨床推論におけるヒューリスティックの主要なルール
名称意味
オッカムの剃刀比較的若年者で単一の疾患を仮説として挙げること
ヒッカムの格言高齢者等で複数のコモン疾患を仮説として挙げること
サットンの法則病変部位を直接的に検査する方針(病理診断等)
オーバーコンフィデンス他者の仮説をそのまま受け入れる
前後即因果稀な事象が続くときには発生順で因果関係を考えること
日内会誌 2017;106:2559-61


臨床推論における主要な認知バイアス
邦名英名代表的な疾患
アベイラビリティavailability最近遭遇した疾患を考える
アンカーリングanchoring最初に考えた仮説に固執する
コンファメーションconfirmation仮説に適合する事実のみを探して,不適合な事実は無視する
オーバーコンフィデンスoverconfidence他者の仮説をそのまま受け入れる
ハッスルhassle心理的プレッシャーのなかで早く処理をしてしまう
日内会誌 2017;106:2559-61

👴 おまけ
  • Visceral bias(本能的バイアス)とは,患者に対する感情が決断に影響を与えること.つまり感情が乱されると適切な判断が困難になる.その他のバイアスに関して一読をおすすめ ➜ 診断に関連するエラー - 地方厚生局

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(投稿者 川崎)

2019-10-04

グラム染色クイズ

  • 肺炎が疑われる症例の喀痰のグラム染色(ちょっと不鮮明ですが・・・右図は別部位の拡大)




(投稿者 川崎)

2019-10-03

新型うつ病

  • 従来型のうつ病とは異なり,若者に多く他罰的な性格で休日は元気に過ごせ,薬の効果は限定的
  • ただし学術的にコンセンサスを得た用語ではなく,従来とは異なる抑うつ症候群の総称として使用



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(投稿者 川崎)

2019-10-02

頸静脈と不整脈

  • 頸静脈拍動のa波は心電図のP波に対応 ➜ 下図の心房収縮(AS)
  • 頸静脈拍動のx下降は右房の拡張に対応 ➜ 下図の心室収縮(VS)
  • よって理論的には頸静脈拍動から不整脈を類推することができる


😶 頭の整理
  1. a波が消失 ➜ 心房細動や洞停止
  2. a波とx下降の関係 ➜ ウェンケバッハ型2度房室ブロックやモビッツII型2度房室ブロック,2:1房室ブロック
  3. 間欠的に巨大a波(cannon wave) ➜ 3度房室ブロック

👶 おまけ
  • 頻脈になると波形解析は困難であるが,房室結節リエントリー性頻拍で出現するフロッグ・サイン 🐸 は覚えておきたい ➜ 自験例1自験例2

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

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(投稿者 川崎)

2019-10-01

プリセプターシップ Preceptorship

  • preceptor 【名】教師,指導者,指導教官/[発音] priséptər/[分節] pre・cep・tor

指導者(プリセプター)が新人(プリセプティー/preceptee)に対してマンツーマンの指導を現場で直接行うオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT=On-the-Job Training/現任訓練)のこと.本邦の医療現場では病院での看護教育で使用されることが多い.

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(投稿者 川崎)