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2017-11-30

クモ膜下出血のオタワルール Ottawa SAH Rule

神経障害のない急性頭痛症例でクモ膜下出血の可能性を判定するのに有用な基準
カナダ10ヵ所のERで行われたコホート試験(JAMA. 2013;310:1248-55)の結果による

対象
  • 1時間以内に痛みのピークを迎えた頭痛があり、神経障害は認められない成人患者2,131例
項目
  • 40歳以上 age 40 years or older
  • 首の痛みや硬直 neck pain or stiffness
  • 目撃者のいる意識消失あり witnessed loss of consciousness
  • 労作時の発症 onset during exertion
  • 雷鳴頭痛(発症直後に痛みがピークに達する頭痛) thunderclap headache (ie, instantly peaking pain)
  • 診察時の頸部屈曲制限 limited neck flexion on examination
結果
  • 132人がクモ膜下出血と診断された
  • 上記の一つでもあれば感度100% (97.2~100.0),特異度15.3% (13.8~16.9)

極めて良好な感度を考慮すると,1時間以内に痛みのピークを迎えた頭痛があり神経障害がない成人では上記の6項目のいずれも有さない場合のクモ膜下出血は概ね否定できる

(投稿者 川崎)

2017-11-29

僧帽弁逸脱

僧帽弁逸脱は明瞭な心雑音を呈するためERでも聞き逃したくない(口真似 ド・ド~ ド・ド~)

※大動脈弁狭窄との基本的な違いは僧帽弁逸脱ではⅡ音が聴取できない


※収縮中期~後期に僧帽弁前尖が左房側へ逸脱し僧帽弁逆流が生じている

🙉 騒がしいERであっても聞き逃したくない他の心音・心雑音 ➔ ギャロップ大動脈弁狭窄

(投稿者 川崎)

キシロカイン vs 心房細動

先日,(一見)regular wide QRS tachycardiaの症例にリドカイン100mgを静注し頻脈停止に成功
その後の心電図で,心室頻拍ではなくて左脚ブロック+発作性心房細動であったことが判明

臨床現場で発作性心房細動の停止目的でキシロカインを使用することは(ほぼ)ない

ただし動物実験ではリドカインが発作性心房細動の停止に著効するというデータあり(Am Heart J 1990;119:1061-8
  • 対象 心房細動が15分以上持続している犬30匹(26匹では迷走神経亢進状態)
  • 方法 リドカインを静脈内にボーラス投与(2~3 mg/kg)
  • 結果 洞調律への回復率は100%(101エピソードで101回成功)

その後,ヒトに対して前向き無作為研究が行われている(Am Heart J 2000;139:E8-11
  • 対象 電気的徐細動が予定された心房細動23例(平均持続期間187日:0~1140日)
  • 方法 リドカイン(1.5~2.5 mg/kg) or 生食プラセボの静脈内ボーラス投与をクロスオーバー
  • 結果 いずれの治療群でも洞調律へ回復した症例はなし(95%信頼区間:0~14%)

※上記の動物実験とヒト臨床研究では種の違い以外に心房細動の条件が大きく異なる点に要注意

(投稿者 川崎)

グラム染色

血尿(下図の左)をグラム染色した

診断はもちろんグラム陰性桿菌による尿路系感染症
  • 通常の火炎固定グラム染色(上図中央)では赤血球が観察困難である点に注意(ギムザ染色が必要)
  • 尿検体をスライド上に厚め塗布してアルコール固定すると多数の赤血球がうっすら見えてくる(上図右)

(投稿者 川崎)

2017-11-28

カーネット徴候 Carnett's sign

腹痛を訴える症例で腹壁を緊張させたときに圧痛が増悪すれば陽性
米国の外科医/軍医J.B. Carnettが報告(J Surg Gynecol Obstet. 1926;42:625-632)

方法の一例
  • 仰臥位に寝てもらい圧痛点に指を置く
  • 首と肩を少し持ち上げてもらう(または膝を進展して両下肢を挙上)
  • 挙上に伴う圧痛の変化を確認する


解釈
  • 陽性 ➜ 腹壁由来の疼痛を示唆(例,腹直筋血腫)
  • 陰性 ➜ 腹腔内臓器由来の疼痛を示唆(例,虫垂炎)

(投稿者 川崎)

血ガス クイズ

救急室ERにショック状態で搬入された症例の静脈血のガス分析
  • アシデミアがありPaCO2が低下しているため代謝性アシドーシス(Lacも上昇している)
  • アニオンギャップAG=Na+-(Cl-+HCO3-)=144-(128+8.6)=7.4(増加なし:ただし静脈)
貧血やtBil=0など多くの異常値がありますが・・・特に気になる点は?


😲😲😲 アシデミアにもかかわらずカリウムが極めて低値

基本原則 アシデミア ➜ カリウム高値 & アルカレミア ➜ カリウム低値
もしアシデミア+カリウム低値なら尿細管性アシドーシスを考えたい(もちろん激しい下痢でも生じえる)

※血ガスの動脈 vs 静脈は コチラ
※血ガスの大まかな解釈は コチラ

(投稿者 川崎)

2017-11-27

祝:三好先生 ご出演

本日 Live Symposium for Resident が開催され全国にWeb中継されました
当院総合診療科の三好友樹先生が出演されました(とてもかっこよかったッス)

テーマ ケースで学ぶ診断エラー 指導医にも役立つクリニカルパール
  • 司会 : 群星沖縄臨床研修センター長 徳田安春先生(右)
  • 東日本代表 : 順天堂大学 総合診療科 石山敏也先生(中央)
  • 西日本代表 : 松下記念病院 総合診療科 三好友樹先生(左)

※妊娠初期の症例で身体所見(カーネット徴候)が診断にとても有用なケースでした

(投稿者 川崎)

食餌性イレウス

食物が原因で引き起こされたイレウスのこと
  • 食餌性イレウスは全イレウスの原因の約4%,手術症例の0.3~2.1%
  • 原因はコンニャク,餅,海藻類,線維の多い野菜など(84例の検討)
  • 種子も10例が報告がある(梅6例,びわ・桃・マンゴー・柿が各1例)
  • 治療はイレウス管,無効なら手術(ミルキングを試み不可能なら腸切開)

イレウスや腸閉塞の再発予防には,早食いや過食の禁止に加えて,上記食物の過剰摂取も避けたい
用語的には「食餌性腸閉塞」が正しいと思われるが,学術的にも「食餌性イレウス」が多用されている 
➜ イレウスと腸閉塞の違いは コチラ からどうぞ

(投稿者 川崎)

2017-11-26

FIB-4 index

HIVとHCVの混合感染症例における肝線維化の予測式(Hepatology 2006;43:1317-1325
現在ではNAFLDやNASHをはじめ多くの肝疾患で線維化の指標として利用されている
  • NAFLD(ナッフルディー)=Non-alcoholic fatty liver disease/非アルコール性脂肪性肝疾患
  • NASH(ナッシュ)=Non-alcoholic steatohepatitis/非アルコール性脂肪肝炎

方法 FIB-4 index=(年齢XAST)÷(血小板数X√ALT)
※血小板数の単位は109/L ➜ 15万/mm3なら150になる

カットオフ値は疾患毎に異なるが,スクリーニング(NAFLD症例など)に用いるなら,2.67以上で肝線維化の陽性的中率80%,1.30以下で陰性的中率90%(Clin Gastroenterol Hepatol. 2009;7:1104-12

当院では採血検査時に自動的に計算され表示されます

(投稿者 川崎)

2017-11-25

Double rupture

心筋梗塞急性期の機械的三大合併症 (← 各自験例の心エコー図が見られます)
  1. 心室自由壁破裂 Free wall ruptures (FWR)
  2. 心室中隔穿孔 Ventricular septal ruptures (VSR)
  3. 乳頭筋断裂 Papillary muscle ruptures (PMR)

このうち二つを合併した病態をDouble ruptureと呼んでいる



初報は70年以上前(Spontaneous double ruapture of the heart. Arch Pathol. 1940;29:796―799)
頻度は急性心筋梗塞3,284例中10例(約0.3%)で死亡率80%(J Nippon Med Sch. 2003;70:21-27

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「肛門直腸痛」

肛門直腸痛のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 体重減少,疲労 ⇒ 癌,感染,炎症性腸疾患
  2. 慢性貧血,血便,発熱,腹痛 ⇒ 癌,炎症性腸疾患,感染(膿瘍)
  3. 数日間で徐々に疼痛が悪化 ⇒ 膿瘍
  4. 感覚消失または筋力低下 ⇒ 脊髄または神経根,末梢神経の癌もしくは感染
  5. 50歳を過ぎた患者で排便習慣が変化 ⇒ 結腸癌
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-11-24

クイズ Who's Who?




クスマール
(投稿者 川崎)

2017-11-23

急性冠症候群 ACS

冠動脈の粥腫破綻とそれに引き続く血栓形成により生じた急性心筋虚血を呈する病態
ACS = acute coronary syndrome (or syndromes)




急性冠症候群 ACS の認識が重要である理由は緊急事態 "medical emergency" であるため
ACSは安定している狭心症(AP: angina pectoris)や心不全とは全く異なる概念である

  • STEMI(ステミ) = ST-segment elevation myocardial infarction
  • UAP(ユーエーピー) = unstable angina pectoris

(投稿者 川崎)

子宮留水腫

子宮腔内に粘液または漿液性の貯留液が存在する子宮留腫の一病態
子宮留腫は貯留液の性状により子宮留膿腫,留水腫,留血腫に区別
子宮留腫は婦人科外来の0.01~0.5%(留水腫62.7%,留膿腫27.5%,留血腫9.8%)
  • 機序 子宮頸管の狭窄や閉塞機転により分泌物の自然排出が障害
  • 頻度 50歳以上の女性の4.4%,閉経女性の12~14.1%
  • 症状 無症状が多い(感染症を伴うと留膿腫:発熱や膿性帯下,下腹部痛など)
  • 病因 腫瘍,放射線療法後,老人性頸管狭窄,人工中絶等による外傷,先天性奇形など


(投稿者 川崎)

2017-11-22

心膜癒着療法

原発性肺癌に合併した癌性心膜炎における心膜癒着療法の有用性(肺癌.2009;49:994-998

対象 原発性肺癌908例中,癌性心膜炎を合併した27例(心膜開窓術を行った1例は除外済)
方法 心嚢穿刺のみ19例 vs 心膜穿刺後に心膜癒着療法を行った8例の予後を後ろ向きに検討
加入
  • 心嚢液の排液後に癒着薬剤を投与し2時間クランプして開放・排液後にカテーテル抜去
  • 使用した癒着薬剤はBleomycin 6例,OK432+Mitomycin C 1例,OK432 1例であった
結果
  • 心膜癒着療法群8例で癌性心膜炎診断後の生存期間が良好(3ヵ月 vs 1.2ヵ月,P=0.04) ➜ 下図左
  • 心タンポナーデ合併11症例でも癒着群の生存期間が良好(4.6ヵ月 vs 1.0ヵ月,P=0.015) ➜ 下図右

注意
  • 前向きの検討ではないため治療法の選択にバイアスがありえる
  • 他の治療法として心膜開窓術との比較検討が行われていない

(投稿者 川崎)

GU vs DU 年齢編

GU = gastric ulcers / DU = duodenal ulcers

中国での448例(GU 254例, DU 194例)の検討(World J Gastroenterol. 2010;16:2017-2022
胃潰瘍のほうが十二指腸潰瘍より高齢(平均60.44歳 vs 51.99歳,p=0.001)

  • 性差や喫煙率,飲酒率はいずれも胃潰瘍と十二指腸潰瘍の間に有意差なし
  • ピロリ菌の陽性率は十二指腸潰瘍でより高率(62.4% vs 43.3%,p=0.001)

(投稿者 川崎)

2017-11-21

ヘリコバクター・ピロリ検査 Detection of H. pylori

  • 胃カメラで生検を要する検査 ➜ 胃粘膜の培養・鏡検・迅速ウレアーゼ試験・PCR
  • 胃カメラが不要である検査 ➜ 血清抗体,尿素呼気試験,便中抗原,尿中抗体

方法 簡便度 感度(%) 特異度(%)
培養(胃粘膜) 70-90 100
検鏡(胃粘膜) 80–98 90–98
迅速ウレアーゼ試験(胃粘膜) 90–95 90–95
PCR(胃粘膜) 90–95 90–95
血清抗体 70–90 70–90
尿素呼気試験 85–95 85–95
便中抗原 中~高 85–95 85–95
尿中抗体 81-86 73-91


おまけ
😊 ピロリpyloriの発音は以外に難しい ⇒ pailóuri パァィロォゥリィ 実際の音声
😊 ピロリの有無に関する胃カメラの肉眼的所見 ⇒ RAC(ラック)
😊 除菌後の治療判定検査 ⇒ 尿素呼気試験あるいは便中抗体

(投稿者 川崎)

負荷心筋シンチの検査中に・・・

虚血性心疾患が疑われ運動負荷タリウム心筋シンチグラフィを施行した症例
下肢疲労で自転車エルゴメータで負荷を終了 ➜ 心筋虚血は検出されなかった

左下肢のしびれ感があったため運動負荷終了後に下肢のプラナ(平面)像を追加

右下肢と比較して左下肢で核種の取り込み低下(筋肉内血流量を反映) ➜ 閉塞性動脈硬化症の疑い

※検査中に気になる所見に遭遇したら臨機応変に対応したい (例:松下心エコー塾 症例11症例80

(投稿者 川崎)

2017-11-20

鎖骨下動脈盗血症候群 Subclavian Steal Syndrome

鎖骨下動脈起始部に存在する閉塞あるいは高度狭窄のため椎骨動脈に逆流を生じる病態
初報は米国の脳外科医Reivich Mらによる2症例の報告(N Engl J Med 1961;265:878-85

  • 症状 無症状~運動時の上肢虚血(脱力やしびれ)+脳虚血症状(頭痛,眼前暗黒感,めまい)
  • 機序 椎骨動脈から逆行性に患側上肢へ血流が流れるため脳底動脈循環不全が誘発される
  • 原因 動脈硬化(多くはコレ),高安動脈炎(大動脈炎症候群/脈なし病),外傷後,腫瘍に圧排など
  • 治療 患側上肢の使用制限,抗血小板薬,血管内治療(バルーン・ステント),外科バイパス術など

😐 補足 😐 冠動脈鎖骨下動脈盗血症候群(coronary-subclavian steal syndrome)
  • 内胸動脈を用いた冠動脈バイパス後に生じた鎖骨下動脈盗血症候群
  • 椎骨動脈と同様に内胸動脈の血流が逆流するため心筋虚血が加わる

(投稿者 川崎)

フィジカルイグザミネーション忘備録2

頸静脈
  1. a波 心房収縮による(三尖弁血流のA波を反映)
  2. x下行 心房弛緩+右室収縮による三尖弁輪下行
  3. c波 右室収縮開始時の三尖弁の膨隆
  4. v波 右室収縮終了後の静脈還流開始による右房圧上昇
  5. y下行 三尖弁開放による右房圧低下(E波を反映)

判定
  • x谷>y谷 正常パターン(dominant x)
  • x谷<y谷 心房細動,静脈圧上昇(dominant y)
  • 長く持続するv波 重症の三尖弁逆流(prominent CV wave)
  • 急峻なy谷 収縮性心内膜炎(deep y:視診のFriedreich's sign=フリードライヒ徴候)
頚静脈
※頸静脈から静脈圧の推定方法 ➜ 第五のバイタル
※1957年作成された頸静脈に関する短編映画 ➜ "The Jugular Venous Pulse"

(投稿者 川崎)

2017-11-19

精神疾患の国際疾患分類 ICD-10

ICD-10=WHO(世界保健機構)の疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第10版

気分[感情]障害の国際疾患分類(ICD-10)F30-F39   
  • F30 躁病エピソード
  • F31 双極性感情障害<躁うつ病>
  • F32 うつ病エピソード
  • F33 反復性うつ病性障害
  • F34 持続性気分[感情]障害
  • F38 その他の気分[感情]障害
  • F39 詳細不明の気分[感情]障害

😶😶 上記以外も含んだ精神および行動の障害ICD-10の詳細(F00-F99) ⇒ コチラ

おまけ
  1. うつ病と双極性障害の鑑別は難しい(経過をみて躁状態の有無を確認)
  2. 躁状態は睡眠減少,多弁,観念奔逸,活動増加などが最低1週間持続
  3. 双極性障害患者はうつ病患者よりパーソナリティ障害を伴うことが多い
  4. 米国分類DSM-5の大うつ病性障害(Major depressive disorder)=うつ病

(投稿者 川崎)

T2 shine through

T2強調像で高信号部位が拡散強調像(DWI)でも高信号になる現象のこと
DWI画像はT2値の影響を受けるためで,ティーツー・シャイン・スルーと読む

急性期脳梗塞の診断は拡散強調像(DWI)の高信号で判断することが多い
ただしT2 shine throughによる誤診を防ぐため必ずADC mapの低信号も確認

※急性期脳梗塞におけるDWI, ADC map, T2の継時的変化 ⇒ コチラ

(投稿者 川崎)

解析 ITT vs PP

いずれもランダム化比較試験(RCT:Randomized controlled trial)の解析方法
  • ITT解析=Intention-to-treat analysis=治療意図に基づく解析
  • PP解析=Per-protocol analysis=治験実施計画書に基づく解析

特徴
  • ITT解析 ➜ はじめに割り付けられた群間で介入効果を比較する.無作為な割付に基づくためバイアスが少なく,より日常臨床を反映しやすい.しかし結果に未介入症例(脱落例や他群への変更例)も含んでしまう.
  • PP解析 ➜ プロトコールから逸脱した症例を除外した群間で介入効果を比較する.実際に介入を受けた群との比較であるため介入効果をより反映する.しかし結果に影響を与えるバイアスが増加してしまう.

おまけ
  • ITT解析に比べてPP解析ではエビデンスレベルが低下する
  • PP解析は非劣性試験の解析と有害事象の解析に有用である
  • 😊ITT解析とPP解析は補完し合う情報でありいずれも重要😊

(投稿者 川﨑)

2017-11-18

墓石様ST上昇 Tombstone-like ST elevation

急性心筋梗塞で著明なST上昇を意味する表現

英国の医師Wimalaratna HSKがletterで初めて使用した表現(Lancet. 1993;342:96
(本邦の一般的な墓石ではなくて英語圏に多い墓石に似ることに準じた表現と推測される)

診断基準 必須4項目(Clin Cardiol. 2000;23:347-352
  • R波の欠損 or 小さく幅が40 ms未満
  • 上に凸のST上昇+R波下降脚またはQRと融合
  • ST上昇がR波より高い
  • ST上昇がT波の上行脚と癒合

臨床的特徴Curr Cardiol Rev. 2009;5:273–278
  • 前下行枝の完全閉塞病変に多い
  • 冠危険因子や胸痛持続時間とは無関係
  • 高いCkやBNP値,低い左室駆出率に関連
  • 心室性不整脈や心不全と関連し死亡率上昇(26~38.2%)

自験例 松下心電塾 症例163 より

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「浮腫」

浮腫のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 新しい薬剤,ラテックスまたは化学薬品への暴露 ⇒ アナフィラキシー
  2. 胸部不快感,息切れ,起坐呼吸 ⇒ 弁膜症
  3. 意識消失(失神・失神寸前) ⇒ 大動脈弁狭窄,肥大型心筋症,肺高血圧,心房粘液腫
  4. アルコール乱用,腹部の腫脹,違法薬 ⇒ 肝不全
  5. 長期臥床,長旅,喫煙,血餅の既往,経口避妊薬 ⇒ 肺梗塞
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-11-17

血ガス 動脈 vs 静脈

ERを受診した45例の前向き研究(Anesth Essays Res. 2013;7:355–358

動脈(平均値)静脈(平均値)相関係数
pH7.4187.3650.0530.95
HCO3-21.87623.3901.510.98
Base excess-0.74-0.30-0.440.93
Anion gap22.33615.8876.4490.77
PaO297.66936.6361.030.21
PaCO236.3741.9585.580.83
Na+134.6135.91.310.96
K+3.5273.6020.0750.96
Cl+102.37103.280.9130.91
Hemoglobin9.3479.2710.0760.99

静脈血ガスのまとめ

😄😄😄 血ガスの基本的な考え方は コチラ

(投稿者 川崎)

ヒル徴候 Hill’s sign

下肢の収縮期血圧が上肢より20mmHgより高い時にヒル徴候陽性
(通常でも収縮期血圧は下肢で高いが,その差は10-20mmHg程度)
大動脈弁逆流症ではその差が60-100mmHgまで増加することがある

診断能
  • 中等度~高度の大動脈逆流の感度89%(Braunwald's Heart Disease 8th edition)
  • 大動脈逆流の感度0-100%,特異度71-100%(Ann Intern Med. 2003;138:736-42
  • 60mmHg以上なら重症の大動脈弁逆流(山崎直仁著 循環器Physical Examination)

初報はHill L and Flack M. Br Med J. 1909 Jan 30; 1(2509):272–274
閉塞性動脈硬化症を疑ったときに行うABI検査で簡便に判定できるので要チェック
ヒル徴候 Hill’s sign
(投稿者 川﨑)

2017-11-16

QT延長症候群(Long QT syndrome, LQTS)

心電図でQT延長+T波の形態異常(ノッチなど)を認め,心室頻拍や心室細動などの致死性心室性不整脈を生じる症候群

QTが延長した心電図(松下心電塾 初級29より) T波がRR間隔のおよそ半分を超えている点に注目

QTが延長した心電図を見たら家族歴を問診し遺伝関係が明らかな場合
  • 先天性聾なし ➜ Romano-Ward syndrome(ロマノ・ワード症候群)=常染色体優性(顕性)遺伝=遺伝子型でLQT1~LQT13に分類
  • 先天性聾あり ➜ Jervell and Lange-Nielsen syndrome(ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群)=常染色体劣性(潜性)遺伝=遺伝子型でJLN1とJLN2に分類


    (投稿者 川崎)

    Epilepsy, Seizure, and Convulsion

    • epilepsy 【名】てんかん 【発音】épəlèpsi エパァレェプシィ 実際の音声
    • seizure 【名】てんかん発作 【発音】síːʒər シィージャ 実際の音声
    • convulsion 【名】けいれん、【発音】kənvʌ́lʃən カナコンヴァ’ルション 実際の音声

    (投稿者 川崎)

    2017-11-15

    腹腔動脈瘤 Celiac Arterial Aneurysms

    Current management of visceral artery aneurysms. Surgery 1996;120:627-633; discussion 633-634.
    • 腹部内臓動脈瘤46例中,最多は脾動脈瘤22例(48%),次は肝動脈瘤10例,上腸間膜動脈瘤4例,腹腔動脈瘤3例(7%)・・・

    Celiac artery aneurysms: historic (1745-1949) versus contemporary (1950-1984) differences in etiology and clinical importance. J Vasc Surg 1985;2:757-764.
    • 48例の腹腔動脈瘤中,20%は腹部大動脈瘤を合併,38%は脾動脈瘤の合併,孤発性腹腔動脈瘤は稀(数は記載なし)
    • 男女比は1:1,平均年齢は男性53.7歳/女性51.9歳,原因は感染性40%/外傷性7%/原因不明52%

    Celiac arterial aneurysms: a critical reappraisal of a rare entity. Arch Surg 2002;137:670-674.
    • 腹腔動脈瘤18例の瘤の最大短径は1.5~4.0cmで9例に手術(平均瘤径は2.4cm,幅1.8~4.0cm)
    • 最大短径が20mm超なら外科療法を考慮すべき(結語に記載されているが明確な根拠は明示されていない?)

    ※腹部内臓動脈の解離はコチラへ ➜ 孤立性腹部内臓動脈解離

    (投稿者 川崎)

    デルタアミノレブリン酸

    • グリシンとVB6,スクシニル-CoAからプロトポルフィリン(ヘム材料)合成時の中間代謝物
    • ポルフィリン症や鉛中毒,鉄欠乏性貧血,再生不良性貧血などで上昇(標準値<0.7~2.5mg/g・Cr)
    • ポルフィリン症や鉛中毒では血中遊離プロトポルフィリンや血中鉛で評価することも可能

    関連ページ ➔ (株)ビー・エム・エル / シスメックス株式会社

    (投稿者 川崎)

    2017-11-14

    心不全は病名ではない

    心不全は病名ではなくて病態,状態を表す用語(≒症候群)
    原因疾患が多岐に渡るため,その診断はシンプルではない


    (投稿者 川崎)

    2017-11-13

    アメーバ性肝膿瘍

    アメーバ性肝膿瘍46例と化膿性肝膿瘍6例の比較(J Pak Med Assoc. 2002;52:497-501


    アメーバ性肝膿瘍の特徴
    • 右葉に孤立性の膿瘍を形成することが多い
    • 黄疸は稀(平均Bil 1.44mg/dl vs 5.95mg/dl)
    • その他の一般採血や自覚症状に有意差なし

    ※赤痢アメーバの動画はコチラ ⇒ その1その2

    (投稿者 川崎)

    P-CAB(ピーキャブ) vs PPI(ピーピーアイ)

    P-CAB=potassium-competitive acid blocker(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)
    PPI=proton pump inhibitor(プロトンポンプインヒビター)

    P-CABであるタケキャブ(一般名:ボノプラザン)は従来型PPIとはいろいろな面で異なる
    • P-CABは酸による活性化が不必要(=安定)/PPIは酸による活性化が必要
    • P-CABは酸で失活せず効果持続/PPIは酸に不安定なため腸溶性(=効果発現が遅い)
    • P-CABはCYP3A4による代謝/PPIはCYP2C19による代謝(=日本人では個人差が大きい)

    ピーキャブは早くて強い(安くはないけど・・・タケキャブ10mg 160.1円 vs タケプロン15mg 80.6円)

    (投稿者 川崎)

    2017-11-12

    ワルファリンの中和

    ガイドライン 日本循環器学会を含む合同研究班の心房細動治療ガイドライン(2013年改訂版)より




    医薬品情報(DI) ビタミンKとして使用されるメナテトレノン(ケイツーN)の添付文書より一部抜粋




    投与方法の一例 生食100ml+ケイツーN (10mg) 1Aを点滴 ⇒ 1時間後にプロトロンビン時間を再評価

    ※ワーファリンは一般名ワルファリン(カリウム)の商品名であるため公文書に順ずるカルテにはワルファリンと記載したい
    ※ただし厳密には公文書になるカルテは国や地方公共団体の機関(例:国立病院や市立病院)の記録に限るようですが…

    (投稿者 川崎)

    バリウム虫垂炎

    バリウムが盲腸に残存した虫垂炎の症例報告が散見される(例:日本臨床外科学会雑誌 2007;68:1994-1998
    バリウム検査(胃X線検査)と虫垂炎の関連は確立されていなかったが,最近大規模な研究結果が発表された
    Li HM, et al. The Association Between Barium Examination and Subsequent Appendicitis: A Nationwide Population-Based Study. Am J Med. 2017;130:54-60

    対象 台湾の登録データベースによるバリウム検査を受けた24,885名と受けていない98,384名(年齢や性別などは一致)
    結果 バリウム検査後は虫垂炎のリスクが上昇(併存疾患調整後ハザード比1.46,特に検査2ヵ月以内はハザード比9.72)

    バリウム検査が虫垂炎の原因になることは都市伝説ではなかったようです
    虫垂炎にまつわる他の都市伝説(ガムや不衛生な水)は コチラ からどうぞ

    (投稿者 川崎)

    2017-11-11

    マジックキス

    小児の鼻腔内異物に対する簡便な除去方法
    別名は"mother's kiss" or “parent’s kiss” technique

    方法
    1. 母親や患児が慣れている大人が患児の口を自分の口で覆う(人工呼吸様)
    2. 患児の鼻腔のうち,異物が詰まっていない方を大人が指で押さえる
    3. 大人が息を軽く吹きこむと患児が声門を閉じるので抵抗を感じる
    4. そのタイミングで勢いよくプッと空気を患児の口に短時間だけ送り込む
    5. うまくいけば患側鼻腔から異物が排出される(何度か繰り返してみる)
    6. コツは子供に“big kiss”してあげると安心させストレスを感じさせないこと

    系統的レビュー(CMAJ. 2012;184:E904-12)では152例中91例(59.9%)で成功
    合併症として鼓膜破裂や気胸,異物の気道への移動などが考えられるが上記報告では発生例なし

    (投稿者 川崎)

    松下金曜会 「失神」

    失神のレッドフラッグと重篤な原因
    1. 年齢45歳以上・心疾患の既往 ⇒ 心原生失神
    2. 心疾疾または突然死の家族歴 ⇒ 肥大型心筋症,QT延長症候群
    3. 胸痛,呼吸困難,労作時に出現 ⇒ 心筋梗塞,大動脈弁狭窄,肥大型心筋症,大動脈解離,肺梗塞など
    4. 前駆症状の欠如,仰臥位での失神 ⇒ 不整脈
    5. 複視,構語障害,回転性めまい,顔のしびれ ⇒ 椎骨脳底動脈(脳幹)の一過性脳虚血発作
    参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

    (投稿者 川崎)

    2017-11-10

    心原生ショック時のIABP

    心原生ショックに対する大動脈内バルーンパンピング(IABP)のルーチン使用はもはや推奨されていない
    2016年の欧州心臓病学会ガイドライン(Eur Heart J doi:10.1093)ではクラスⅢ(有用でなく時に有害),レベルB(少数例の無作為検討あるいは多数例の非無作為検討)


    (投稿者 川崎)

    フェルティ症候群 Felty's Syndrome

    関節リウマチ,脾腫,白血球減少(好中球<1500/mm3必須)を三徴とする病態
    名称は米国の医師フェルティ(1895-1964)による5例の報告に由来している
    (Bulletin of the Johns Hopkins Hospital. Baltimore. 1924;35:16-20)

    • 頻度 関節リウマチの1-3%,50歳以上・女性に多い,人口1万人あたり約1人
    • 症状 上記の三徴+貧血・易感染性・多発性単神経炎・下腿潰瘍・血管炎など
    • 原因 ヒト白血球抗原HLA DR4の関与?(好中球の活性化とアポトーシスなど)
    • 鑑別 シェーグレン症候群,全身性エリテマトーデス,リンパ球造血系悪性疾患など
    • 治療 抗関節リウマチ薬(メトトレキセート含)+分子標的治療薬・G-CSF・脾摘(稀)など
    • 予後 健常人より低下するが関節リウマチ症例と差はない.最大の死因は感染症


    (投稿者 川崎)

    2017-11-09

    ガーデン分類 Garden classification

    大腿骨頚部骨折で用いられる評価方法で転位の程度によりStage I~IVの4段階に分類
    1. Stage I 不完全骨折(若木骨折型)
    2. Stage II 完全骨折であるが転位なし
    3. Stage III 転位のある完全骨折
    4. Stage IV 転位高度の完全骨折

    英国の整形外科医ガーデンのオリジナル論文(Garden, RS. Bone & Joint Journal 1961;43:647-663)より一部改編

    Garden分類の有用性(臨床的エビデンス) ⇒ 大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン(改訂第2版)

    (投稿者 川﨑)

    クイズ Who's Who?





    (投稿者 川崎)

    2017-11-08

    聴診 vs 右脚ブロック

    右脚ブロックではⅡ音が病的分裂する ➜ 聴診で疑って心電図で確認できるとカッコイイかも
    心臓の窓といわれるエルプ領域(第3肋間胸骨左縁)に聴診器の膜側(大きい方)を押し当てる

    • 実例:本例ではⅠ音が減弱しⅡ音が明瞭に分裂
    ※右脚ブロック症例の心音図+心音はコチラへ ⇒ 症例46 (心音塾)

    おまけ
    • 右脚ブロックでのⅡ音の病的分裂は高齢者では不明瞭になることがある
    • 心電図で右脚ブロックと左脚ブロックの診断は1秒以内で行いたい(参照
    • 左脚ブロックでもⅡ音の異常(奇異性分裂)を生じるが聴診での診断は難しい

    (投稿者 川崎)

    機能性MRの重症度

    2014年のAHA/ACC弁膜症ガイドラインCirculation. 2014 Jun 10;129:e521-643
    機能性の僧帽弁逆流(MR: mitral regurgitation)では中等度MRでも高度MRに分類する
    つまり機能性MRで下記(重症度評価における中等度MRの基準)を満たせば手術を考慮
    • 有効逆流弁口面積(EROA: effective regurgitant orifice area)=0.20~0.39cm2
    • 逆流量(RV: regurgitant volume)=30~59ml
    • 逆流率(RF: regurgitant fraction)=30~49%

    2017年のAHA/ACC弁膜症ガイドラインCirculation. 2017 Jun 20;135:e1159-e1195
    機能性と器質性のMR重症度評価が統一され下記(高度MRの基準)を満たせば手術を考慮する
    • 有効逆流弁口面積(EROA: effective regurgitant orifice area)≧0.40cm2
    • 逆流量(RV: regurgitant volume)≧60ml
    • 逆流率(RF: regurgitant fraction)≧50%

    ※今回のガイドライン変更は頻度の多い疾患における手術適応に関してでありとても重要

    (投稿者 川崎)

    2017-11-07

    第26回バイリンガルカンファレンスより

    dyspneaではpを発音しないことが多いがorthopneaではpを発音することが多い(と思う)
    • dyspnea 【dís(p)niə 】 呼吸困難・息切れ 実際の音声 ➜ その1 その2
    • orthopnea 【ɔ :'θɔpniə】 起座呼吸 実際の音声 ➜ その1 その2 その3

    質問中に相手にあまりうまく伝わっていないと感じたら・・・
    • I mean, what is the cause? (つまり,その原因はなんですか? 質問をシンプルに言い直す)

    (投稿者 川崎)

    浸透圧の近似式

    低Na血症の原因検索には血漿浸透圧と尿浸透圧の測定が必要であるがルーチンの測定データから推定も可能

    血漿浸透圧 (mOsm/L)=2×[Na+](mEq/L)+グルコース(mg/dL)/18+BUN(mg/dL)/2.8
    (正常値は275~295 mOsm/kgH2O)

    尿浸透圧 (mOsm/L)=(尿比重の下2桁)×25~40 (例:尿比重1.020なら500~800 mOsm/L)
    (正常値は100~1,300 mOsm/kgH2O)

    浸透圧の単位
    • 重量オスモル濃度 mOsm/kgH2O ➜ 溶液の水1 kgが持つ浸透圧で浸透圧計で測定
    • 容量オスモル濃度 mOsm/L ➜ 溶液(溶媒と溶質)1 Lが持つ浸透圧で計算で算出
    (※水1 L=1 kgであるが血漿では血漿1L=0.93 kgH2O)

    (投稿者 川崎)

    Yellow nail syndrome

    黄色爪症候群(おうしょくそうしょうこうぐん)
    1964年にSammanらによって提唱された疾患概念(Br J Dermatol 1964;76:153―157


    • 症状 成長遅延を伴う黄色爪,リンパ浮腫,肺病変(胸水・気管支拡張症・肺炎・慢性副鼻腔炎など)
    • 診断 上記3症状のうち成長遅延を伴う黄色爪+リンパ浮腫 or 肺病変で診断することが多いようです
    • 原因 先天性なリンパ還流異常が存在し,後天的に感染などを契機に顕在化すると考えられている
    • 治療 ビタミンEやクラリスロマイシン,利尿薬,ステロイド局注,ドレナージ・シャント術など(すべて対症療法)
    • 余後 37例で検討した生存期間中央値は11年(約半数で黄色爪改善:その半数は無治療であった)

    おすすめ1 ⇒ 両側胸水を認めた黄色爪症候群の1 例(日呼吸会誌2010;48:458-462
    おすすめ2 ⇒ 一目瞭然!目で診る症例」問題編(日内会誌 2016;105:1069-1071

    (投稿者 川崎)

    2017-11-06

    ワレンベルグ症候群

    延髄の外側の梗塞によって特徴的な一連の症状を生じる病態
    延髄内側を通る錐体路(運動)や内側毛帯(深部覚)は障害されない
    ➜ 感覚障害が顔面と体幹四肢で左右反対側に出るのが特徴

    延髄外側症候群=Lateral medullary syndrome=Wallenberg-Syndrome
    ドイツの神経内科医Adolf Wallenbergが報告(Psychiat. u. Neurol 1895;27:504)

    症状
    • 患側の顔面感覚障害+対側の体幹四肢感覚障害
    • 明瞭な四肢麻痺なし+同側上下肢に小脳性運動失調
    • 味覚・嚥下・構音障害,口蓋垂偏位(カーテン徴候
    • 頭痛,眼振,縮瞳,眼瞼下垂,発汗減少,嘔気など

    原因は椎骨動脈やその枝である後下小脳動脈(Posterior inferior cerebellar artery, PICA)の解離や閉塞
    病変が小さいためMRIの短軸像のみでは検出不良(10%程度? 出典) ➜ 当院例も冠状断で初めて認識できた


    (投稿者 川崎)

    脱抑制 disinhibition

    高次脳機能の抑制機能が失われ感情や欲求のコントロールが不能に陥った状態
    • 原因 ➔ 薬物,アルコール,脳血管障害,脳変性疾患,頭部外傷後,精神疾患など
    • 機序 ➔ 前頭葉眼窩部との関連が疑われている(前頭葉関連症状の一つである)
    • 症状 ➔ 礼儀欠如や易怒性,窃盗,ギャンブル,反社会的行動,性的逸脱行動など

    内視鏡検査(経食道心エコ-図を含む)の鎮静併用時の偶発症として出現することがある
    その他の鎮静時偶発症には呼吸抑制や循環抑制,不整脈,前向性健忘,吃逆などがある

    (投稿者 川崎)

    2017-11-05

    イレウス ≠ 腸閉塞

    先日のERカンファ
    • 研修医 「最終的に癒着性イレウスと診断して入院となりました」
    • 指導医 「う~・・・イレウスと腸閉塞の違いを知ってますか?」



    厳密な定義
    • イレウス ➜ 腸蠕動運動の機能的な問題に起因する腸管内容の移動障害
    • 腸閉塞 ➜ "bowel obstruction" = 機械的な閉塞による腸管内容の移動障害

    イレウス/腸閉塞の分類
    機械的単純性(閉塞性)血行障害なし開腹術後の癒着,大腸癌,寄生虫など腸閉塞
    複雑性(絞扼性)血行障害あり索状物,嵌頓,腸捻転,腸重積など腸閉塞
    機能的麻痺性腸管壁や神経の障害術直後,腹膜炎,血流障害,神経障害などイレウス
    痙攣性腸管壁の痙攣中毒,外傷,結石発作,ヒステリーなどイレウス

    ※別の指導医 「入院となりました」という表現にも要注意 ⇒ その理由

    (投稿者 川崎)

    グラム染色クイズ

    アルコール性肝機能障害を有する症例が発熱で来院.写真は血液培養のグラム染色です

    螺旋 らせん 血培 グラム染色 リンパ球
    培養とPCRで最終的にHelicobacter cinaedi(ヘリコバクター・シネディ)と診断された
    • H. cinaedi は腸管に存在するグラム陰性の螺旋菌で免疫不全例の発熱時に血中から検出されることがある
    • 腸管から血流へのbacterial translocationによる感染と考えられ,検出には血液培養で最低7日間を要す

    テクニック グラム染色で見落とさないためのコツ(観察する順番)
    • 螺旋菌 ⇒ 短桿菌(グラム陰性桿菌) ⇒ グラム陰性菌 ⇒ グラム陽性菌 (つまり目立たない細菌から確認!)

    (投稿者 川崎)

    2017-11-04

    クワシオルコル(=クワシオルコール or クワシオコア)

    • 主として蛋白質の摂取不足から栄養失調を来した病態(例:キャッサバを主食とする小児)
    • 下腿浮腫,腹部膨張(腹水+脂肪肝),細毛髪、歯脱落,皮膚炎,生育不振,下痢などが見られる
    • 他の栄養失調にはマラスムス(蛋白質・脂質・炭水化物すべての不足)や悪液質/カヘキシー(癌や心不全の末期など基礎疾患に起因)がある

    😊もともとガーナ語であるため英語"kwashiorkor"の発音は難しい クゥアシィオーコォー実際の音声

    (投稿者 川崎)

    呼吸商

    単位時間当たりの酸素消費量に対する二酸化炭素量排出量(体積比)
    燃焼栄養素(脂肪 vs 蛋白質 vs 炭水化物)や状態(安静 vs 労作)で変化する

    栄養素 呼吸商 熱量(kcal/g)
    脂質 0.7 9
    蛋白質 0.8 4
    炭水化物(糖質) 1.0 4

    • 炭水化物ばかり食べていると呼吸商は1.0,脂肪ばかりなら0.7に近づく(日本食の平均は0.82-0.83)
    • COPD症例で高脂肪食が推奨されているのは,脂質はCO2の発生が低く(呼吸商0.7)かつ熱量が高いから

    ※基礎代謝量測定検査のような安静時には呼吸商と称すが,心肺運動負荷試験など運動時を含む場合はガス交換比と呼ぶことが多い

    (投稿者 川崎)

    2017-11-03

    クイズ Who's Who?





    (投稿者 川崎)

    肝逸脱酵素の半減期

    半減期はアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)が約半日,アラニンアミノ基転移酵素(ALT)が数日
    つまり採血でASTが低下してきたら,ALTに明らかな変化がなくても,近日中の改善が期待できる
    ※ASTはshort,ALTはlongと覚えたらいいかも・・・

    半減期 肝の含有量 逸脱しやすさ
    AST 短い ++
    ALT 長い ++

    イメージ ALTと比較して,ASTは短期決戦の大量動員タイプ(ただし決心には時間を要す)

    (投稿者 川崎)

    2017-11-02

    腸間膜リンパ節炎 Mesenteric lymphadenitis

    主として回盲部の腸間膜に多数のリンパ節腫大を認める病態
    • 症状 右下腹部痛,微熱 (下痢や悪心,嘔吐は稀)
    • 疫学 小児に多い(リンパ濾胞増生期12~20歳に一致するようです)
    • 原因 細菌やウイルス感染,結核菌,エルシニア菌(特に小児)
    • 検査 白血球増加,エコーやCTで回盲部のリンパ節腫大+壁肥厚
    • 鑑別 虫垂炎
    • 経過 1週間程で自然軽快(鎮痛目的にアセトアミノフェン)

    治療に難渋しステロイドが著効した腸間膜リンパ節炎の症例報告 ⇒ 日消誌 2007;104:1371-6

    ※よく似た病名の腸管膜脂肪織炎は コチラ からどうぞ

    (投稿者 川崎)

    脂肪性浮腫

    Gynoid lipodystrophy/一般にはセルライト(Cellulite)と呼ばれることが多い
    • gynoid 女性のアンドロイドのような意味(ギリシア語の女性γυνηに由来)
    • lipodystrophy リポジストロフィ,脂肪異栄養症


    (左図a:安静時,右図b:殿部の牽引後 JEADV 2000;14:251–262 より)

    体表に現れた皮膚の凸凹変化で,女性の臀部~大腿部や腹部に出現することが多い
    皮膚に牽引された脂肪組織で,肥満とは異なるが病的な状態が否かは不明である

    (投稿者 川崎)

    2017-11-01

    心電図クイズ(本日の心電塾より)

    【症例1】





    【症例2】





    ポイント
    • 症例2は症例1と異なりQRS脱落がランダムに見えるため分かりにくいが,PP間隔とPR間隔に注目
    • 基本はQRSが早めに出現すれば期外収縮,遅めに出現すれば2・3度房室ブロックあるいは洞不全

    (投稿者 川崎)

    ARDSの診断:通称Berlin定義

    ARDSは一つの確立された疾患群であるが,その診断は必ずしも容易ではない
    Berlin定義とは2012年に診断特異性の向上を目指した新たな定義の通称である

    (日本呼吸器学会,日本集中治療医学会,日本呼吸療法医学会にて合同作成 ARDS診療ガイドライン2016 より)
    http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL2016.pdf 2017年11月閲覧)

    • ARDSと急性肺損傷(acute lung injury, ALI)の違いは コチラ
    • N Engl J Medに掲載されたARDSのPerspectiveは コチラ

    (投稿者 川崎)

    口部自動症

    口をモグモグ,クチャクチャさせる無意味な動作の繰り返し
    非痙攣性てんかんのうち,複雑部分発作で観察されやすい

    複雑部分発作complex partial seizureでは他の自動症(手足など)も出現することがある



    (投稿者 川崎)