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2017-12-31

クイズ Who's Who?





(投稿者 川崎)

2017-12-30

ワクチン&アデム

アデム=ADEM=Acute disseminated encephalomyelitis=急性散在性脳脊髄炎
急性発症で単相性の経過をとる脳白質および脊髄白質の散在性脱髄性の疾患
初報はWestphal C.による4例 (The British Journal of Psychiatry. 1872;18:289-294

ADEM
  • 疫学 好発年齢は5~8歳で明確な男女差はなく,頻度は8件/100万年・人
  • 契機 2/3の症例ではウイルス感染やワクチン接種(1~3週後にADEM発症)
  • 症状 発熱,頭痛,嘔吐 ⇒ 膀胱直腸障害,意識障害,麻痺(急激に進行)
  • 治療 ステロイドパルス(必要に応じて血漿交換や免疫グロブリンなど)
  • 予後 50~75%が完全回復(ただし1~6ヵ月を要す)/死亡率は5%(?)

典型例 ⇒ 脳と発達.2004;36:401-406

(投稿者 川崎)

2017-12-29

メトホルミン vs 造影剤

メトホルミンは2型糖尿病に使用するビグアナイド系の経口血糖降下剤で肝臓の糖新生を抑制
予後改善効果(Arch Intern Med. 2010;170:1892-9など)もあるため臨床現場で多用されている
ただし稀ながら乳酸アシドーシスを生じる(10万人年で7.4回:Diabetes Care. 2014;37:2218-24

  • 腎機能低下に加えて造影剤を使用した後にも乳酸アシドーシスを生じやすい
  • よって当院でも造影剤を使用する前後48時間はメトフォルミンを中止している

― 大日本住友製薬のメトフォルミンの添付文書より(赤線追加) ―

💡 ポイント 💡
  • 緊急時には使用可能(もちろん有益性が上回ると考えられる場合)
  • ヨード造影剤と限定する文言があるためMRI造影剤は含まれない

(投稿者 川崎)

オープン・セサミ・テクニック Open Sesame Technique

冠動脈の完全閉塞部位に対するインターベンション成功率を上げるためのテクニック
穿通困難な硬いキャップがあり,閉塞部の直前に側枝を有する完全閉塞病変が適応
湘南鎌倉総合病院の齋藤 滋先生が考案(Catheter Cardiovasc Interv. 2010;75:690-4

方法 
  1. 側枝にワイヤーを挿入してバルーン拡張し閉塞部位の入口部に亀裂を作成
  2. 新たにできた閉塞部キャップの亀裂から完全閉塞部位の本幹へワイヤリング
  3. ワイヤー挿入に成功したらバルーンなどによる完全閉塞部位の拡張を行う

おまけ
開けゴマは「アリババと40人の盗賊」に登場する呪文であるが,なぜゴマ/sesameなのかは不明
ヘブライ語šem(神の隠語)の繰り返しあるいはバビロンの魔法であったという説(Wiki in English
また当時はゴマ自体が貴重な財源であったとういう説(かどや製油株式会社)も知られている

(投稿者 川崎)

2017-12-28

ペースメーカのアラーム

医師 「今日はどうされましたか?」
患者 「数日前からペースメーカが毎朝10時に10回ほどピーピー鳴るんです」
医師 「それは心配ですね.ペースメーカを一度チェックしてみましょう」

医師 「OptiVolアラームが鳴っているようです.肺うっ血が悪化したときに見られる現象です」
患者 「息苦しさや体重増加,むくみは別にないのですが・・・」
医師 「身体所見でも心不全増悪を示す所見はありませんが念のため検査をしておきましょう」

医師 「胸部X線やBNPに変化はありませんでした.ペースメーカの設定を変更したのでもう鳴らないと思います」
患者 「会社で心配かけないように10時前に職場を離れる必要があったので助かります」
医師 「でも心不全悪化の初期段階かも知れないので自覚症状の変化時には早めに再診してください」



⏰ 除細動機能付きペースメーカが有する代表的なアラーム機能の一覧 ⏰

1. 臨床関連 (設定時刻にアラーム)
  • OptiVol 肺うっ血状態の閾値を超過
  • AT/AF Alert 1日辺りのAT/AF発生が設定時間を超える
  • Number of Shocks Delivered エピソード中のショック回数を通知
  • All Therapies for an Episode 1エピソードに対し全治療送出

2. ペースメーカ関連 (設定時刻にアラーム)
  • RV Lead Alerts RVリード不全検出あるいはノイズ検出
  • Lead Impedance Out of Range リード抵抗値範囲外
  • Low Battery Voltage RRT 電池電圧低下警告
  • Excessive Charge Time EOS 充電時間延長警告
  • VF Detection OFF, etc 心室細動の検出/治療など(例:6時間毎に鳴音)

3. その他 (随時アラーム)
  • 磁場に近づいたとき
  • 電気的リセット直後
  • 電気的リセットで頻拍検出及び治療が無効になった場合
  • 非同期モード設定(つまりVOO/AOO/DOO)
  • Single CoilでActive CanがOffの場合
  • 充電回路タイムアウト
ペースメーカー
(投稿者 川崎)

2017-12-27

心電図クイズ(倦怠感)




(投稿者 川崎)

NKDA と NKFA  ・・・ って何?

  • NKDA = no known drug allergy = 既知の薬物アレルギーなし
  • NKFA = no known food allergy = 既知の食物アレルギーなし

(投稿者 川崎)

2017-12-26

第27回バイリンガルカンファレンスより

症例報告の時間経過は,初診時あるいは入院日を起点にすると分かりやすい

提示の一番初めに「*歳の男性/女性が**で入院/来院した」と言っておく
その後は ”数字+単位+before/after presentation/admission” を繰り返すだけ

  • 来院2ヵ月前 2 months before presentation
  • 入院3日前 3 days before admission
  • 来院の8時間後に 8 hours after presentation
  • 入院の翌日 a day after admission

おまけ presentation や admission には冠詞不要だよ

(投稿者 川崎)

NIHSS

NIHSS=National Institute of Health Stroke Scale, NIH Stroke Scale
脳卒中の重症度評価スケールのひとつ(Stroke. 1989;20:864-870

重症度判定
  • 0点 ➜ 脳卒中の症状なし(No stroke symptoms)
  • 1-4点 ➜ 軽度の脳卒中(Minor stroke)
  • 5-15点 ➜ 中等度の脳卒中(Moderate stroke)
  • 16-20点 ➜ 中等度~重症の脳卒中(Moderate to severe stroke)
  • 21-42点 ➜ 重症の脳卒中(Severe stroke)


(投稿者 川崎)

2017-12-25

点状紫斑?

紫斑 点状出血 斑状出血 びまん性出血

紫斑の鑑別 (参考文献:紫斑 purpura
  • 血小板減少性紫斑 Thrombocytopenic purpura
  • クリオグロブリン血症性紫斑 Cryoglobulinemic purpura
  • 特発性色素性紫斑 Idiopathic pigmentary purpura (例,中年男性の下肢に好発する点状出血)
  • 老人性紫斑 Senile purpura
  • 単純性紫斑 Purpura simplex (例,女性の下肢に多発する境界のやや不明瞭な点状出血)
  • ステロイド紫斑 Steroid purpura (ステロイドの長期的投与により血管支持組織が脆弱化)

(投稿者 川崎)

クイズ

連鎖球菌 Streptococcus は溶血の程度で3群に分類 ➜ 詳細はコチラ
  1. α溶血性(不完全溶血)
  2. β溶血性(完全溶血)
  3. γ溶血(非溶血) 


問題1 下記の培養シャーレで溶血を示しているのはどちら?





問題2 下記の血液培養ボトルで溶血しているのはどっち?



(投稿者 川崎)


2017-12-24

呪文 VINDICATE-P

鑑別診断に行き詰ったら初心に帰って ”VINDICATE-P" から再スタート


英語 日本語 具体例
Vascular心血管大動脈解離
Infection感染症放線菌
Neoplastic腫瘍血管内リンパ腫
Degenerative変性疾患多系統萎縮症
Intoxication中毒テオフィリン中毒
Congenital先天性家族性地中海熱
Allergy/Autoimmuneアレルギー/自己免疫巨細胞性動脈炎
Trauma外傷膀胱破裂
Endocrine/Metabolic内分泌/代謝相対的副腎不全
Psychiatric/Psychogenic精神疾患/心因性身体化現

(投稿者 川崎)

ブルジンスキー徴候 Brudzinski's sign

仰臥位で頭部を他動的に前屈させた時に股関節と膝関節が屈曲すれば陽性
髄膜刺激症状を示唆する所見で項部硬直と同様に髄膜炎をを示唆する
ポーランドの小児科医 ユゼフ・ブルジンスキ(1874– 181917)に由来する
(Brudziński J. Archives de médecine des enfants, Paris. 1909;12:745-52)



(投稿者 川崎)

2017-12-23

脳出血の手術適応

高血圧性脳出血
  • 被殻 神経学的所見が中等度+血腫量31mL以上+血腫の圧迫所見が高度なら手術を考慮
  • 視床 血腫除去は勧められない(脳室穿破+脳室拡大が強い場合は脳室ドレナージを考慮)
  • 皮質下 脳表から深さが1㎝以内なら手術を考慮
  • 小脳 最大径が3㎝以上で神経所見が悪化あるいは脳室圧迫で水頭症の場合は手術を考慮
  • 脳幹 血腫除去は勧められない(脳室穿破+脳室拡大が強い場合は脳室ドレナージを考慮)
※血腫量が10mL未満,神経学的所見が軽度,意識レベルが深昏睡(JCS 300)では手術を勧めない


出血量の求め方 CTで(縦✖横✖高さ✖3.14)➗6  🍙 簡易版 (縦✖横✖高さ)➗2

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「喀血」

喀血はそれ自体がレッドフラッグと考えられる
今回は喀血に関して「焦点を絞った質問」と「考えられること」を記載
  1. 嗄声がありますか? ⇒ 癌
  2. 大量の膿性の痰が慢性的に出ますか? ⇒ 気管支拡張症
  3. 血尿,副鼻腔炎,耳炎,皮膚病変がありますか? ⇒ 多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)
  4. 呼吸困難を伴う急性胸痛がありますか? ⇒ 肺塞栓または梗塞
  5. 血管手術または気管切開の既往 ⇒ 大動脈腸瘻
  6. 慢性閉塞性肺疾患 ⇒ 肺癌
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-12-22

輸液反応性 Fluid responsiveness

輸液反応により心拍出量が増えるか否かで容量管理の指標になる

判定方法
急速補液250mlで心拍出量や一回拍出量が10–15%以上増加=反応あり(Intensive Care Med. 2016;42:324-32

他の指標
中心静脈圧,肺動脈圧,脈圧変動,1回拍出量変動,足上げ試験,下大静脈径の呼吸性変動など(ただしいずれの指標もかなりの問題点を有する)


  • 少しわかりにくいフローチャートだけれど,いずれの指標でもいいから輸液反応性がありそうならリスクを考慮しながら補液をしようと解釈できる(?)
  • "Mini" fluid challengeは生食100mlの膠質液を1分で投与して心エコー図で左室流出路の時間積分値VTIを評価する方法(Anesthesiology. 2011;115:541-7

(投稿者 川崎)

Granular sparkling pattern グラニュラー・スパークリング・パターン

心エコー図で認める心筋内の顆粒状の輝度上昇所見で心臓に蓄積したアミロイドーシスを反映すると考えられる
感度は低く26% (47例中12例),アミドイドーシス以外でも出現4% (115例中5例)(J Am Coll Cardiol 2004;43:410-5



(投稿者 川崎)

2017-12-21

脳出血とペルジピン

脳卒中治療ガイドライン2015〔追補2017〕 - 日本脳卒中学会」の推奨
  • 脳出血急性期の血圧はできるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満にして7日間維持を考慮可



降圧薬としてニカルジピン塩酸塩注射液(ペルジピン注射液)を用いることが多い
ただし同薬の添付文書には長らく”脳出血急性期の投与は禁忌”と記載されていた

そこで2008年に日本脳卒中学会から厚生労働省に対して禁忌項目削除の要望書が提出された
その後,この臨床現場にそぐわないペルジピンの禁忌項目が削除された ➜ 現在の添付文書

(投稿者 川崎)

細菌性髄膜炎

意識障害で来院した症例に対して各種検体をグラム染色した


  • すべての検体で連鎖しているグラム陽性球菌とその貪食像を検出
  • 培養結果はB群連鎖球菌 (Group B Streptococcus: GBS)であった

尿路感染症から敗血症(urosepsis)になり髄膜炎に至ったと考えられた
尿検体と比較して髄液中の細菌は僅かだった(強拡大の数視野に1つ)
髄液が橙黄色(キサントクロミー,xanthochromia)である点にも注目

おまけ
  • 髄液=脳脊髄液=cerebrospinal fluid (CSF)=リコール
  • リコールはラテン語 liquor cerebrospinalis の略と思われる

(投稿者 川崎)

2017-12-20

腸管気腫

当院の総合内科でレジデントの先生が担当された症例が論文化されました
腸管気腫を生じた症例で,腹部CTの肺野条件が気腫の描出に有用でした



(Takemura K, Kawasaki T, Kotani T, Yuasa K, Yamada N, Oyamada H Pneumatosis intestinalis. J Gen Fam Med. 2017;18:450–1)

おまけ
腹部CTの肺野条件はフリーエアの検出には少し不向き(小さい空気はとんでしまい見えなくなる)

(投稿者 川崎)

ペースメーカ症例の心筋梗塞

来院時

1週間前の記録

緊急冠動脈造影で左前下行枝起始部の閉塞を確認 (診断:ステント血栓症による急性前壁梗塞)

ポイント
  • ペースメーカ植込み後や左脚ブロック症例では通常ST-T部分の変化は判定できない
  • 急性心筋梗塞が疑われる場合は以前の心電図と比較することが大切 ⇒ 他の自験例
  • 急性心筋梗塞が疑われるが以前の記録が利用できない時には Sgarbossaの基準
  • 本例ではV4誘導のST上昇が目立つ(上向きR波におけるST上昇は常に要注意)
  • 心拍数の上昇がない点にも注目(前壁梗塞では通常頻脈だが本例は洞不全を合併)
ペースメーカー
(投稿者 川崎)

心臓限局性サルコイドーシス

昨年,2006年版のサルコイドーシス診断基準が見直された(2016年版心臓サルコイドーシスの診療ガイドライン
画像診断技術の進歩に伴いガドリニウム造影MRI18F-FDG PETの所見が主徴候に加えられた

心サルコイドーシス


上記の新指針でも心臓に限局したサルコイドーシスの診断は困難(心筋生検で類上皮細胞肉芽腫がない場合)
そこで今回のガイドラインでは「心臓限局性サルコイドーシス診断の手引き」を新たに提唱


(投稿者 川崎)

2017-12-19

LFLG AS

Low-Flow/Low-Gradient Aortic Stenosis=低流量低圧較差大動脈弁狭窄

高度のASに対する内科療法の予後は不良であるため外科的介入が必要
しかし低流量低圧較差(LFLG)ではASの重症度判定(高度か否か)が難しい

LFLG ASでは以下の2病態が考えられる(Circulation. 2011;124:e739-41
  1. 左室収縮力の低下に起因した低心拍出量による”過小評価された高度AS”
  2. 心筋虚血や心筋症などの他の原因による心筋障害を伴う”中等度までのAS”

上記の病態1では大動脈弁置換術の予後改善効果が期待できるが,病態2ではその効果は乏しい(Circulation. 2003;108:319-24

左室駆出率が保たれているにも関わらず一回拍出量が低下している奇異性の低流量低圧較差大動脈弁狭窄(Paradoxical LFLG AS)と呼ばれる観念も提唱されている(Eur Heart J. 2010;31:281-9

(投稿者 川崎)

クイズ Who's Who?





(投稿者 川崎)

2017-12-18

喘息増悪

まず重症度分類を行う

次に重症度分類に応じた治療




📌 横になれない ➜ 中発作以上 ➜ ステロイド点滴あるいはボスミン皮下注を考慮
📎 治療に対する反応を判定するJohnson(ジョンソン)分類は コチラ から参照できます

(投稿者 川崎)

マルケサニ症候群

低身長,短指症,関節拘縮などの身体的特徴を有する常染色体異常の遺伝子疾患
別名は逆マルファン症候群,ワイル-マルケサニ症候群,Weill–Marchesani syndrome

1932年にフランス眼科医マルケサニ,1939年にオ-ストリア眼科医ワイルが個別に報告
Weill G. Ann Ocul 1932;169:21-44/Marchesani O. Klin Mibl Augenheilkd 1939;103:392-406

🙊 マルファン症候群は コチラ

(投稿者 川崎)

2017-12-17

FoCUS

FoCUS=Focus Cardiac UltraSound=的を絞った心臓超音波

FAST同様,ポイントオブケア超音波検査(point of care ultrasound,POCUS)のひとつ
2010年以降に確立されてきたER室で非循環器専門医によって行われる心エコー図


😈😈 関連投稿 ➜ ERでの心エコー図:大動脈弁狭窄 AS

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

誤嚥性肺炎に対して抗菌薬を投与している症例
発熱が続くため喀痰のグラム染色を再検した

口腔 カンジタ症,咽頭 カンジダ症,酵母,菌糸
(投稿者 川崎)

2017-12-16

松下金曜会 「便秘」

便秘のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 意図しない体重減少 ⇒ 結腸癌,うつ病
  2. 最近の発症 ⇒ 結腸癌,代謝性または内分泌障害
  3. 便の太さの変化 ⇒ 結腸癌,狭窄,肛門裂傷
  4. 悪心,嘔吐 ⇒ 腸閉塞(例:腫瘍,狭窄)
  5. 発熱 ⇒ 憩室炎,癌
  6. 背部痛,サドルブロック麻酔,下肢痺れ ⇒ 脊髄に起因するもの(例:馬尾症候群)
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-12-15

ヒルドイドの禁忌について

【禁忌】
(1)出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)のある患者
(2)僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者

ヒルドイドの成分はヘパリン類似物質であり、1g中に3.0mg含まれる。
血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがあるため、上記の禁忌が設定されている。
ただし、ヘパリン類似物質の血中への移行について検討したデータはなく、何gのヒルドイドが何単位のヘパリンNa注に相当するかは不明である。
バリア機能が障害されていない正常な皮膚への塗布であれば、出血傾向を来すまでの効果は示さないと考えられている。
禁忌に該当する症例においても使用されているが、出血に関連した有害事象の報告はない。


(投稿者 小森)

グラム染色クイズ

排尿痛と頻尿で来院した妊娠していない若い女性の尿をグラム染色(強拡大)




(投稿者 川崎)

非結核性抗酸菌 NTM

NTM=Non-tuberculous mycobacteria
結核菌を除いた抗酸菌で150種類以上が存在(その内訳は8割マック菌,1割カンサシ菌)
以前は結核菌とライ菌以外の抗酸菌を非定型抗酸菌(atypical acid-fast bacteria)と呼んだ

土や水などに常在する細菌で吸入曝露により慢性の呼吸器感染症を発症(人人感染はない)
環境寄生菌であるため喀痰などから検出時には環境汚染(コンタミネーション)の除外が必要
➜ よって診断には(気管支鏡検査を行わない場合)少なくとも異なる2検体での検出が必須


♖ 結核菌に対するガフキーの新分類 ➜ コチラ
♜ 抗酸菌のチール・ネールゼン法染色 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2017-12-14

バソプレッシン Vasopressin

脳下垂体後葉から分泌されるホルモン:腎臓での水再吸収増加+血管収縮 ➜ 血圧上昇
ただしノルアドレナリン抵抗性ショックにおけるバソプレッシンの有用性は確立されていない

  • 敗血症性ショック778例(N Engl J Med 2008;358:877-87) ➜ バソプレッシン追加で死亡率は低減せず
  • 敗血症性ショック409例(JAMA 2016;316:509-18) ➜ バソプレッシン追加で死亡率と腎障害は低減せず



日本版敗血症診療ガイドライン2016での要約



おまけ
  • 発音は少し難しい væ`souprésn  ヴェイソォゥプレェスン 実際の音声は コチラ
  • Vaso(血管)とpress(圧迫)の合成語で,別名は抗利尿ホルモン・血圧上昇ホルモン
  • 正確にはバソプレシンで先発品ピトレシンの適応にショックはない(添付文書

(投稿者 川崎)

緊急CFを行う血便

緊急で大腸内視鏡検査 (Colonofiberscopy: CF) を行う必要がある血便疾患
  1. 大腸内視鏡の治療後(~3日が多いが1週間まではあり得る)
  2. 憩室出血(侮るなかれ,大量出血することあり!)
  3. 血管病変(稀,IVR: Interventional radiology が必要なことも)
  4. 急性出血性潰瘍+宿便性潰瘍

➜ 血便と下血の違いは 「下血と血便」 あるいは 「血便 vs 下血 パート2」

(投稿者 川崎)

2017-12-13

ゴロ音

喀痰の排泄不良に伴って生じる低音の雑音のこと(実際にゴロゴロと聞こえる)
呼吸音(厳密には肺音)の記述で用いられている(おそらく医学用語ではない)








連続性=250ms以上 ➜ wheezes:笛声音(400Hz以上),rhonchi:類鼾音(200Hz以下)
断続性=25ms以内 ➜ fine crackles:捻髪音(500~1000Hz),corase crackles:水泡音(250~500Hz)

おまけ
  • rumbleといえば僧帽弁狭窄などで聴取する拡張中期の低調な心雑音が有名
  • ゴロ音はrattling sound(ガタガタ)やgurgling sound(ゴボゴボ)とも呼ばれる
  • Crackleの分類は コチラ / 高調な吸気性喘鳴のStridorストライダーは コチラ

(投稿者 川崎)

加療 vs 治療

広辞苑(第六版)
  • 治療 ➜ 病気やけがを治すこと/またそのために施す種々のてだて/療治
  • 加療 ➜ 病気や傷を治療すること

ウィキぺディア
  • 治療 ➜ 医師が患者の症状に対して行う行為
  • 加療 ➜ 長期的な治療を加療と呼ぶこともある

weblio辞書
  • 治療 ➜ 病気をなおすこと
  • 加療 ➜ 病気やけがの治療をすること

YAHOO知恵袋(回答者minamiwakacase
  • 治療 ➜ 病気やけがを治すこと
  • 加療 ➜ 治療をおこなうこと

😶 「処理」と「処置」は全く違うから要注意 ⇒ 創傷処理 vs 創傷処置

😶😶(投稿者 川崎)

2017-12-12

翼状肩甲 Winged scapula/Scapular winging

肩甲骨scapulaが通常の位置から突出している状態で,命名は翼のような外観から


レビュー論文Curr Rev Musculoskelet Med. 2008;1:1–11
  • 疫学 Mayo Clinicの検討では38,500例中1例
  • 原因 前鋸筋麻痺(最多),僧帽筋・菱形筋麻痺,外傷,医原性など
  • 診断 外観の視覚的判断が中心(筋麻痺を合併時には筋電図)
  • 症状 倦怠感,痛み(意外に多くない),患側上肢の機能不全
  • 治療 保存療法(半年~2年で多くは自然回復),難治例には修正手術
(rhomboid muscles=菱形筋,serratus anterior muscle=前鋸筋,trapezius=僧帽筋)

(投稿者 川崎)

利尿薬抵抗性 Diuretic resistance

心不全に対する利尿薬の効果が期待したほど得られない状態

原因N Engl J Med 2017;377:1964-1975の表1より)
1.利尿薬の投与量が不十分
2.アドヒアランス不良
  • 処方薬の未服用
  • 塩分の過剰摂取)
3.薬剤的要因
  • 腸菅浮腫による吸収遅延
  • 利尿薬の尿細管内腔への分泌不全(慢性腎臓病,高齢,薬剤性:NSAIDsやプロベネシド)
4.低蛋白血症
5.低血圧
6.ネフローゼ症候群
7.抗ナトリウム利尿薬
  • NSAIDs
  • 降圧薬
8.腎血流の低下
9.ネフロンのリモデリング
10.神経ホルモン因子の亢進

おまけ
ループ利尿薬は心不全治療ガイドラインのクラスⅠであるがエビデンスレベルB/C
代表的なループ利尿薬フロセミドは持続時間が6時間=last six ⇒ ラシックと命名
フロセミド furosemideの発音【fyo͝oˈrōsəˌmīd】は少し難しい(音声は コチラ から)

(投稿者 川崎)

2017-12-11

人工弁不全

半年前の心エコ-図と比較して左房から左室への流入血が側壁側へ偏位(矢印)
ただし金属アーチファクトが強いため人工弁の詳細を観察することはできなかった



最終的に透視下で機械弁の異常が確認できたため人工弁不全と診断した
画面左の人工弁は二葉弁であるが,一方の弁(左側)の可動低下に注目


🙅 心エコ-図は弁膜症に対して最強のツールであるが人工弁の詳細な評価は困難

(投稿者 川崎)

医療刑務所

  • 専門的な医療を必要とする受刑者を収容する施設
  • 複数の常勤医が配置され医療法上の病院に該当
  • 精神疾病や薬物・アルコール依存症も対象になる

東京都八王子市,愛知県岡崎市,大阪府堺市,福岡県北九州市の4施設がある

大阪医療刑務所のホームページ ⇒ コチラ

(投稿者 川崎)

2017-12-10

オートプシー・イメージングで診断した1例

当院の総合内科で初期研修医(当時)の先生が担当された症例が論文化されました
背部痛などの疼痛を伴わないスタンフォードA型大動脈解離による脳梗塞症例です


米田佑香,川崎達也,世古口悟,佐伯雅史,小谷知也,安田考志,小山田裕一.オートプシー・イメージングが診断に有用であったスタンフォードA型大動脈解離の1例.松仁会医学誌.2016;55:105-10.

(投稿者 川崎)

心不全の定義

心不全の定義は研究により異なり統一されていなかった(心不全の診断は コチラ
2017年10月31日に日本循環器学会と日本心不全学会が『心不全の定義』を発表

『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。』
※上記文言は原文そのまま/心不全の定義に関する詳細については コチラ から参照可能

おまけ
  • 本邦の死亡数は癌が1位で循環器疾患が2位
  • 心不全の予後は不良で5年生存率は約50%

(投稿者 川崎)

2017-12-09

外傷性膀胱破裂の1例

当院の総合内科でレジデントの先生(当時)が担当された症例が論文化されました
併存疾患の肝硬変や人工股関節置換によるアーチファクトのため診断に難渋した症例です



Takemura K, Kawasaki T, Yasuda T, Mikami T, Kotani K, Sekoguchi S, Hotta S, Takeshita H, Ishii M, Oyamada H. Isolated Bladder Rupture After Trauma: A Case with Difficulty in Diagnosing. Matsushita MJ. 2017;56:24-29.


(投稿者 川崎)

松下金曜会 「頸部痛」

頸部痛のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 咽頭部の異物感,呼吸困難,会話不能 ⇒ 気道閉塞,異物吸引
  2. 四肢の筋力低下・刺痒感,レルミット徴候(頸部屈伸で手足刺痛感) ⇒ ミエロパシー(ヘルニア・炎症・狭窄・多発性硬化症)
  3. 肩,腕または手の脱力・感覚消失 ⇒ 頸部神経根のインピンジメントまたは絞扼
  4. 外傷後の激痛 ⇒ 頸椎骨折
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-12-08

水溶性植物繊維 サンファイバー

植物繊維の摂取は便秘の改善に有用であるが,その過剰摂取は食餌性イレウスのリスクになる
株式会社タイヨーラボから販売されている『サンファイバー』は天然グアー豆の水溶性食物繊維

(内容量:6g×30包 2000~2500円/タイヨーラボ【公式】通販サイトより)

臨床での検討日本食生活学会誌 2012;22:315-9
  • 対象 特別養護老人ホーム入所中の排便コントロールが難しい15例
  • 方法 サンファイバー10gを毎日摂取して半年後にその効果を判定
  • 結果 下剤回数は週1.8回⇒0.3回/下痢の頻度は週0.5回⇒0.3回

※便秘だけでなく下痢にも効果があった点にはとても興味がそそられる

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ(染色してないけど・・・)

下部消化管検査時の回収液を無染色で検鏡(200倍)





(投稿者 川崎)

2017-12-07

脾臓 SANT

SANT=sclerosing angiomatoid nodular transformation
脾臓の赤色髄由来の非腫瘍性血管性病変(つまり良性の脾腫瘍)
イタリアの病理医Martelらが2004年に報告(Am J Surg Pathol. 2004;28:1268-79

  • 境界明瞭な単発性腫瘤で,内部に多結節性の血管腫様病変を有する
  • 三種の血管成分からなる点が脾臓血管腫やlittoral angiomaとは異なる

おすすめ ➜ 脾臓sclerosing angiomatoid nodular transformationの1例.日臨外会誌.2013;74:2284-2288

(投稿者 川崎)

Differential cyanosis

differential 【dìfərénʃəl デファレンシャル】 差,《数学》微分,差別的な
cyanosis 【sàiənóusis サァィアノォゥシィス】 《医》チアノーゼ 発音注意実際の音声

アイゼンメンジャー化した動脈管開存症(PDA: Patent Ductus Arteriosus)に特徴的所見
  • 上肢 ➜ チアノ-ゼなし+バチ指なし
  • 下肢 ➜ チアノ-ゼあり ± バチ指あり
"Medicine (Baltimore). 2017;96:e7105 "より.症例Aはチアノーゼのみ/症例Bはチアノーゼ+バチ指

機序
動脈管内の血流は通常大動脈から肺動脈方向であるがアイゼンメンジャー化すると逆転するため
  • 上肢=酸素飽和度の高い動脈血が大動脈弓部の右腕頭動脈と左鎖骨下動脈から供給
  • 下肢=酸素飽和度の低い静脈血が動脈管を逆行して大動脈弓部の遠位部に流れ込む

(投稿者 川崎)

2017-12-06

Porcelain aorta

全周性に管状石灰化を伴った大動脈のことで,陶器様大動脈とも呼ばれる
porcelain 【pɔ'ːrsəlin】 ポォーサァリィン (名)磁器 (形)磁器製の 実際の発音


Porcelain aorta のレビューCirculation. 2015;131:827-36
  • 高齢者,冠動脈疾患症例,大動脈弁狭窄症例,透析症例などで多い
  • TAVI(経カテーテル大動脈弁植込み術)症例の約20%(5%–33%)
  • 罹病率と死亡率の上昇と関連し,特に周術期脳梗塞のリスクが高い

※磁器はchinaとも言いますが,porcelainはchinaより高温で焼成されるためより硬くなるようです(参考ページ

(投稿者 川崎)

心拍数と心臓自律神経

心臓は自律神経で常にコントロールされている
  • 交感神経=アクセル ➜ 心拍数増加
  • 迷走神経(副交感神経)=ブレーキ ➜ 心拍数減少

運動に対する心臓自律神経の反応と心拍数
1.安静時:交感神経より迷走神経が優位(常にブレーキオン)
2.運動中:
  • 開始直後に迷走神経の速やかな活動低下 (ブレーキオフ)➜ 心拍数の速やかな上昇
  • 少し遅れて交感神経の活動亢進(アクセルオン) ➜ 心拍数のさらなる上昇
3.運動後:交感神経と迷走神経の活動が緩やかに定常状態へ回復


移植心では心臓自律神経のコントロールが消失する
  • 安静時の心拍数上昇(ブレーキオフがないため)
  • 運動開始後の心拍数上昇が遅延(副腎髄質から分泌されるアドレナリン依存)

Circulation. 1989;79:76-82/移植心では心拍数の揺らぎ消失にも注目)

※ただし移植心の心臓自律神経はゆっくりではあるが再生すると思われる(J Cardiol. 2012;59:220-4

(投稿者 川崎)

HLA-B51

HLA=human leukocyte antigen=ヒト白血球抗原
HLAは白血球だけでなくほぼすべての細胞と体液に分布
組織適合性抗原(免疫に関わる重要分子)として重要な役割

HLA-B51抗原
  • 人種を超えてベーチェット病と顕著に関連
  • 陽性率は一般人10% vs ベーチェット病患者50~60%(脈管学 2009;49:391–398
  • 陽性ならベーチェット病を発症するリスクが9.3倍上昇(HLA研究所

※その他のHLAタイプと日本人の病気の相関表(HLA研究所) ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2017-12-05

右心負荷を来す稀な病態

心エコー図で右心の圧負荷を認めた症例(収縮期に心室中隔が扁平化)
肺血栓塞栓症を疑い99mTc-MAAを用いて肺血流シンチグラフィを撮像した





(投稿者 川崎)

骨盤動揺

両側の腰骨を同時に触診した時の不安定感 ➜ 骨盤骨折を示唆

外傷患者では骨盤出血が致命傷になるため骨盤骨折の有無の評価はとても重要
骨盤動揺があればX線検査・IVR前に骨盤部シーツラッピングで出血低減を試みたい

注意点
  • 骨盤骨折時には骨盤出血を悪化する可能性があるため1回だけ優しく施行する
  • 外見上の骨盤変形がある時やX線写真で骨盤骨折が判明している時は行わない

(投稿者 川崎)

2017-12-04

呼吸苦 vs 呼吸困難(感)

カルテへの表記方法として以下の3通りのが考えられる
  1. 主訴 : 呼吸苦
  2. 主訴 : 呼吸困難
  3. 主訴 : 呼吸困難感
ただし呼吸苦は医学用語ではないという意見もあるようです



Google scholarでの検索
  • ”呼吸苦” ➜ 約10,600件
  • ”呼吸困難” ➜ 約24,500件
  • ”呼吸困難感” ➜ 約7,640件

メディカルオンラインでの検索
  • ”呼吸苦” ➜ 26,640件
  • ”呼吸困難” ➜ 26,640件
  • ”呼吸困難感” ➜ 1,824件

医中誌Webでの検索
  • ”呼吸苦” ➜ 113件
  • ”呼吸困難” ➜ 782件
  • ”呼吸困難感” ➜ 57件

日本循環器学会用語集(第3版)
  • ”呼吸苦” ➜ 登録なし
  • ”呼吸困難” ➜ 11件記載(英訳=dyspnea)
  • ”呼吸困難感” ➜ 登録なし

広辞苑(第六版)
  • ”呼吸苦” ➜ 記載なし
  • ”呼吸困難” ➜ 解説あり
  • ”呼吸困難感” ➜ 記載なし



絶対的な正解はないと思われるが専門用語にはこだわっておきたい
 (誤)ペースメーカー ⇒ (正)ペースメーカ/(誤)データー ⇒ (正)データ

※その他の注意すべき用語(過去の投稿) ⇒ その1 ・ その2

ペースメーカー
(投稿者 川崎)

迅速グラム染色

グラム染色は標本作成に15分程度の時間を要す ➜ 通常の方法

急ぐ場合は迅速法でもある程度評価することが可能と考えられる
 例  スライド上の検体をバーナーで乾かし染色液は各10秒(計1分


上図は同じ尿検体を迅速法と通常法でグラム染色(培養では大腸菌であった)
白血球が不明瞭になり観察できる細菌もすこし少ないが概略は把握できる

(投稿者 川崎)

2017-12-03

舌咽神経痛:失神の稀な原因

咀嚼時や嚥下時に舌咽神経が刺激され疼痛を生じる病態
Glossopharyngeal Neuralgia, GPN

  • 症状 突発的に生じて数秒間続く咽頭や舌,耳などの非常に鋭利な電撃痛
  • 誘因 咀嚼や嚥下,咳嗽,欠伸,会話,顔面(特に耳介下部)への接触など.
  • 原因 血管の圧迫説が有力.その他に腫瘍や膿瘍,外傷,多発性硬化症など
  • 診断 正確な問診と上咽頭への局麻テスト,thin sliceのMRIおよびMRA
  • 疫学 10万人中0.2-0.7人の年間発生率,男女比=1:1.5~2で50歳前後
  • 治療 カルバマゼピン,舌咽神経根切断術・神経血管減圧術,ペースメーカ無効

舌咽神経痛の原因―神経血管圧迫説(口咽科 2013;26:39-45

強い疼痛から副交感神経亢進による徐脈・心停止と交感神経抑制による血管拡張から失神を起こすことがある
⇒ 症例報告(心臓2003;35:80-83

※失神のレッドフラッグは コチラ
※失神と意識障害の違いは コチラ
ペースメーカー
(投稿者 川崎)

2017-12-02

チョコレート嚢胞 Chocolate cyst

子宮内膜症=子宮内膜が子宮以外の場所で発育・増殖する疾患(月経のある女性の約10%)
チョコレート嚢胞=卵巣に発生した子宮内膜症(40歳代~卵巣癌のリスク上昇/頻度は0.7%)

(破裂した左卵巣の腹腔鏡所見:Wikiのpublic domain

参考:日本婦人科腫瘍学会 子宮内膜症の悪性化(2017年12月閲覧)

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「異常な腟出血」

異常な腟出血のレッドフラッグと重篤な原因
  1. めまい,ふらつき,失神,動悸・頻脈 ⇒ 出血
  2. 腹痛および確認された妊娠 ⇒ 異所性妊娠(子宮外妊娠) 👻 両者の使い分けは コチラ
  3. 体重減少 ⇒ 子宮内膜癌
  4. 鼓腸,腹位の増加 ⇒ 卵巣癌
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-12-01

生食による代謝性アシドーシス

生理的食塩水は安価(149円/500mL)かつ適応範囲が広いためERで汎用されている
ただし急速の大量静注で心不全の増悪に加えて代謝性アシドーシスを惹起することあり
  • ナトリウムの過剰投与による体液貯留(生食500mlに塩分4.5g
  • 血中の重炭酸イオン濃度が希釈される(希釈性アシドーシス)
  • クロールの過剰投与による高クロール血症によるアシドーシス

これらのアシドーシスを防ぐため各種リンゲル液が開発された
NaやClにKやCaの電解質を加え細胞外液(血漿成分)に近い

種類当院の採用
乳酸リンゲル液ポタコール(180円/500mL)
酢酸リンゲル液ソルアセト(193円/500mL)
重炭酸リンゲル液ビカネイト(224円/500mL)

乳酸や酢酸は酸であるが下記の反応で HCO3- を増加させる
  1. 乳酸は肝臓で,酢酸は多臓器で代謝され CO2+H2O になる
  2. その後に平衡関係 CO2+H2O ⇔ HCO3-+H+ で右辺が増加

(投稿者 川崎)

心理学用語 スキーマ schema

認知心理学で用いられる用語で自動思考(考え方)の奥底にある中核信念
人間の認知過程の分析に有用で,スキーマのゆがみ修正は治療に繋がる

実例
幼少期の虐待やいじめからネガティブな自己スキーマが生じうつ病になる

※分かりやすい(?)ページ ⇒ スキーマとは頭の中のプログラム

(投稿者 川崎)

2017-11-30

クモ膜下出血のオタワルール Ottawa SAH Rule

神経障害のない急性頭痛症例でクモ膜下出血の可能性を判定するのに有用な基準
カナダ10ヵ所のERで行われたコホート試験(JAMA. 2013;310:1248-55)の結果による

対象
  • 1時間以内に痛みのピークを迎えた頭痛があり、神経障害は認められない成人患者2,131例
項目
  • 40歳以上 age 40 years or older
  • 首の痛みや硬直 neck pain or stiffness
  • 目撃者のいる意識消失あり witnessed loss of consciousness
  • 労作時の発症 onset during exertion
  • 雷鳴頭痛(発症直後に痛みがピークに達する頭痛) thunderclap headache (ie, instantly peaking pain)
  • 診察時の頸部屈曲制限 limited neck flexion on examination
結果
  • 132人がクモ膜下出血と診断された
  • 上記の一つでもあれば感度100% (97.2~100.0),特異度15.3% (13.8~16.9)

極めて良好な感度を考慮すると,1時間以内に痛みのピークを迎えた頭痛があり神経障害がない成人では上記の6項目のいずれも有さない場合のクモ膜下出血は概ね否定できる

(投稿者 川崎)

2017-11-29

僧帽弁逸脱

僧帽弁逸脱は明瞭な心雑音を呈するためERでも聞き逃したくない(口真似 ド・ド~ ド・ド~)

※大動脈弁狭窄との基本的な違いは僧帽弁逸脱ではⅡ音が聴取できない


※収縮中期~後期に僧帽弁前尖が左房側へ逸脱し僧帽弁逆流が生じている

🙉 騒がしいERであっても聞き逃したくない他の心音・心雑音 ➔ ギャロップ大動脈弁狭窄

(投稿者 川崎)

キシロカイン vs 心房細動

先日,(一見)regular wide QRS tachycardiaの症例にリドカイン100mgを静注し頻脈停止に成功
その後の心電図で,心室頻拍ではなくて左脚ブロック+発作性心房細動であったことが判明

臨床現場で発作性心房細動の停止目的でキシロカインを使用することは(ほぼ)ない

ただし動物実験ではリドカインが発作性心房細動の停止に著効するというデータあり(Am Heart J 1990;119:1061-8
  • 対象 心房細動が15分以上持続している犬30匹(26匹では迷走神経亢進状態)
  • 方法 リドカインを静脈内にボーラス投与(2~3 mg/kg)
  • 結果 洞調律への回復率は100%(101エピソードで101回成功)

その後,ヒトに対して前向き無作為研究が行われている(Am Heart J 2000;139:E8-11
  • 対象 電気的徐細動が予定された心房細動23例(平均持続期間187日:0~1140日)
  • 方法 リドカイン(1.5~2.5 mg/kg) or 生食プラセボの静脈内ボーラス投与をクロスオーバー
  • 結果 いずれの治療群でも洞調律へ回復した症例はなし(95%信頼区間:0~14%)

※上記の動物実験とヒト臨床研究では種の違い以外に心房細動の条件が大きく異なる点に要注意

(投稿者 川崎)

グラム染色

血尿(下図の左)をグラム染色した

診断はもちろんグラム陰性桿菌による尿路系感染症
  • 通常の火炎固定グラム染色(上図中央)では赤血球が観察困難である点に注意(ギムザ染色が必要)
  • 尿検体をスライド上に厚め塗布してアルコール固定すると多数の赤血球がうっすら見えてくる(上図右)

(投稿者 川崎)

2017-11-28

カーネット徴候 Carnett's sign

腹痛を訴える症例で腹壁を緊張させたときに圧痛が増悪すれば陽性
米国の外科医/軍医J.B. Carnettが報告(J Surg Gynecol Obstet. 1926;42:625-632)

方法の一例
  • 仰臥位に寝てもらい圧痛点に指を置く
  • 首と肩を少し持ち上げてもらう(または膝を進展して両下肢を挙上)
  • 挙上に伴う圧痛の変化を確認する


解釈
  • 陽性 ➜ 腹壁由来の疼痛を示唆(例,腹直筋血腫)
  • 陰性 ➜ 腹腔内臓器由来の疼痛を示唆(例,虫垂炎)

(投稿者 川崎)

血ガス クイズ

救急室ERにショック状態で搬入された症例の静脈血のガス分析
  • アシデミアがありPaCO2が低下しているため代謝性アシドーシス(Lacも上昇している)
  • アニオンギャップAG=Na+-(Cl-+HCO3-)=144-(128+8.6)=7.4(増加なし:ただし静脈)
貧血やtBil=0など多くの異常値がありますが・・・特に気になる点は?


😲😲😲 アシデミアにもかかわらずカリウムが極めて低値

基本原則 アシデミア ➜ カリウム高値 & アルカレミア ➜ カリウム低値
もしアシデミア+カリウム低値なら尿細管性アシドーシスを考えたい(もちろん激しい下痢でも生じえる)

※血ガスの動脈 vs 静脈は コチラ
※血ガスの大まかな解釈は コチラ

(投稿者 川崎)

2017-11-27

祝:三好先生 ご出演

本日 Live Symposium for Resident が開催され全国にWeb中継されました
当院総合診療科の三好友樹先生が出演されました(とてもかっこよかったッス)

テーマ ケースで学ぶ診断エラー 指導医にも役立つクリニカルパール
  • 司会 : 群星沖縄臨床研修センター長 徳田安春先生(右)
  • 東日本代表 : 順天堂大学 総合診療科 石山敏也先生(中央)
  • 西日本代表 : 松下記念病院 総合診療科 三好友樹先生(左)

※妊娠初期の症例で身体所見(カーネット徴候)が診断にとても有用なケースでした

(投稿者 川崎)

食餌性イレウス

食物が原因で引き起こされたイレウスのこと
  • 食餌性イレウスは全イレウスの原因の約4%,手術症例の0.3~2.1%
  • 原因はコンニャク,餅,海藻類,線維の多い野菜など(84例の検討)
  • 種子も10例が報告がある(梅6例,びわ・桃・マンゴー・柿が各1例)
  • 治療はイレウス管,無効なら手術(ミルキングを試み不可能なら腸切開)

イレウスや腸閉塞の再発予防には,早食いや過食の禁止に加えて,上記食物の過剰摂取も避けたい
用語的には「食餌性腸閉塞」が正しいと思われるが,学術的にも「食餌性イレウス」が多用されている 
➜ イレウスと腸閉塞の違いは コチラ からどうぞ

(投稿者 川崎)

2017-11-26

FIB-4 index

HIVとHCVの混合感染症例における肝線維化の予測式(Hepatology 2006;43:1317-1325
現在ではNAFLDやNASHをはじめ多くの肝疾患で線維化の指標として利用されている
  • NAFLD(ナッフルディー)=Non-alcoholic fatty liver disease/非アルコール性脂肪性肝疾患
  • NASH(ナッシュ)=Non-alcoholic steatohepatitis/非アルコール性脂肪肝炎

方法 FIB-4 index=(年齢XAST)÷(血小板数X√ALT)
※血小板数の単位は109/L ➜ 15万/mm3なら150になる

カットオフ値は疾患毎に異なるが,スクリーニング(NAFLD症例など)に用いるなら,2.67以上で肝線維化の陽性的中率80%,1.30以下で陰性的中率90%(Clin Gastroenterol Hepatol. 2009;7:1104-12

当院では採血検査時に自動的に計算され表示されます

(投稿者 川崎)

2017-11-25

Double rupture

心筋梗塞急性期の機械的三大合併症 (← 各自験例の心エコー図が見られます)
  1. 心室自由壁破裂 Free wall ruptures (FWR)
  2. 心室中隔穿孔 Ventricular septal ruptures (VSR)
  3. 乳頭筋断裂 Papillary muscle ruptures (PMR)

このうち二つを合併した病態をDouble ruptureと呼んでいる



初報は70年以上前(Spontaneous double ruapture of the heart. Arch Pathol. 1940;29:796―799)
頻度は急性心筋梗塞3,284例中10例(約0.3%)で死亡率80%(J Nippon Med Sch. 2003;70:21-27

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「肛門直腸痛」

肛門直腸痛のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 体重減少,疲労 ⇒ 癌,感染,炎症性腸疾患
  2. 慢性貧血,血便,発熱,腹痛 ⇒ 癌,炎症性腸疾患,感染(膿瘍)
  3. 数日間で徐々に疼痛が悪化 ⇒ 膿瘍
  4. 感覚消失または筋力低下 ⇒ 脊髄または神経根,末梢神経の癌もしくは感染
  5. 50歳を過ぎた患者で排便習慣が変化 ⇒ 結腸癌
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-11-24

クイズ Who's Who?




クスマール
(投稿者 川崎)

2017-11-23

急性冠症候群 ACS

冠動脈の粥腫破綻とそれに引き続く血栓形成により生じた急性心筋虚血を呈する病態
ACS = acute coronary syndrome (or syndromes)




急性冠症候群 ACS の認識が重要である理由は緊急事態 "medical emergency" であるため
ACSは安定している狭心症(AP: angina pectoris)や心不全とは全く異なる概念である

  • STEMI(ステミ) = ST-segment elevation myocardial infarction
  • UAP(ユーエーピー) = unstable angina pectoris

(投稿者 川崎)

子宮留水腫

子宮腔内に粘液または漿液性の貯留液が存在する子宮留腫の一病態
子宮留腫は貯留液の性状により子宮留膿腫,留水腫,留血腫に区別
子宮留腫は婦人科外来の0.01~0.5%(留水腫62.7%,留膿腫27.5%,留血腫9.8%)
  • 機序 子宮頸管の狭窄や閉塞機転により分泌物の自然排出が障害
  • 頻度 50歳以上の女性の4.4%,閉経女性の12~14.1%
  • 症状 無症状が多い(感染症を伴うと留膿腫:発熱や膿性帯下,下腹部痛など)
  • 病因 腫瘍,放射線療法後,老人性頸管狭窄,人工中絶等による外傷,先天性奇形など


(投稿者 川崎)

2017-11-22

心膜癒着療法

原発性肺癌に合併した癌性心膜炎における心膜癒着療法の有用性(肺癌.2009;49:994-998

対象 原発性肺癌908例中,癌性心膜炎を合併した27例(心膜開窓術を行った1例は除外済)
方法 心嚢穿刺のみ19例 vs 心膜穿刺後に心膜癒着療法を行った8例の予後を後ろ向きに検討
加入
  • 心嚢液の排液後に癒着薬剤を投与し2時間クランプして開放・排液後にカテーテル抜去
  • 使用した癒着薬剤はBleomycin 6例,OK432+Mitomycin C 1例,OK432 1例であった
結果
  • 心膜癒着療法群8例で癌性心膜炎診断後の生存期間が良好(3ヵ月 vs 1.2ヵ月,P=0.04) ➜ 下図左
  • 心タンポナーデ合併11症例でも癒着群の生存期間が良好(4.6ヵ月 vs 1.0ヵ月,P=0.015) ➜ 下図右

注意
  • 前向きの検討ではないため治療法の選択にバイアスがありえる
  • 他の治療法として心膜開窓術との比較検討が行われていない

(投稿者 川崎)