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2023-11-30

今週の一枚 🎯

右下腹部痛例ブルンベルグ徴候 陽性)



(投稿者 積木/川崎)

2023-11-29

シアトル心不全モデル Seattle Heart Failure Model: SHFM

  • ワシントン大学(シアトル)Levyらの心不全予後予測モデル(Circulation 2006;113:1424-33
  • 容易に入手できるデータを用い1年後,2年後,5年後の生存率などを予想できる(下図参照)
  • 慶應大学のShiraishiらが日本人補正版のSHFMが報告している(J Card Fail 2019;25:561-567
  • 背景,NYHA,虚血性,EF,sBP,血液データ,投薬,デバイス有無から算出(計算ページ

- シアトル心不全モデルの計算例 -

👺 他の心不全の予後予測
(投稿者 川崎)

2023-11-28

心電図マイスターへの道 ③

上室期外収縮 PAC の起源
  • P波:V1陰性=右房起源:下壁誘導が上方なら上大静脈,下方なら冠静脈洞
  • P波:V1陽性=左房起源:I&L誘導が陽性なら右肺静脈(下壁誘導が上方なら上肺静脈,下方なら下肺静脈),I&L誘導が陰性なら左肺静脈(下壁誘導が上方なら上肺静脈,下方なら下肺静脈)

心室期外収縮 PVC の起源
  • 右脚ブロック(左室起源):I・L・5・6陽性+下壁陽性なら左室弁輪前壁・流出路,I・L・5・6陽性+下壁陰性なら左室弁輪後壁・下壁,I・L・5・6陰性+下壁陽性なら左室前壁心尖近傍,I・L・5・6陰性+下壁陰性なら左室心尖部
  • 左脚ブロック(右室起源):I・L・5・6陽性+下壁陽性なら右室弁輪前壁・流出路,I・L・5・6陽性+下壁陰性なら右室弁輪後壁・下壁,I・L・5・6陰性+下壁陽性なら右室前壁心尖近傍,I・L・5・6陰性+下壁陰性なら右室心尖部
  • 右室起源の大まかなルール:下壁誘導ですべて陽性=流出路,すべて陰性=心尖部,ばらばら=中隔

ペーシングの位置
  • V1でQSなら右室ペーシング,V1でRsなら両室ペーシング
  • 右室心尖部なら胸部誘導は基本,negative concordance (例えば全てQS)で上方軸
  • 下壁誘導で全て陽性なら右室上部ペーシング,すべて陰性なら右室下壁あるいは心尖部ペーシング,一定しなければ中隔ペーシング
  • 左室心尖部のペーシングなら,V1が陽性で,V2-6はすべて陰性(例:QS).ただし両心室の心尖部は近いため,心拡大や回転によって,右室心尖部ペーシングでも同様の所見になり得る.

2枝ブロック
  • 右脚ブロック+左軸偏位:右脚と左脚前枝のブロック
  • 右脚ブロック+右軸偏位:右脚と左脚後枝のブロック
  • (広義には左脚ブロック:左脚前枝と左脚後枝のブロック)

3枝ブロック
  • 右脚ブロック+左軸偏位+1度房室ブロック
  • 右脚ブロック+右軸偏位+1度房室ブロック
  • 左脚ブロック+1度房室ブロック

Lown分類
  • Grade 0=心室性期外収縮なし,Grade 1=散発性(<30個/時間),Grade 2=散発性(>30個/時間),Grade 3=多形性(多源性),Grade 4a=2連発,Grade 4b=3連発,Grade 5=RonT
  • 急性心筋梗塞症例で心室細動への移行率から作成された分類であることに注意が必要

ケント束の追記
  • デルタ波が下壁誘導で陰性+II誘導でQSなら心外膜(冠静脈洞 CSや中心静脈 MCV)のケント束
  • C型WPWなら前中隔,中中隔,後中隔に分類できる.Δ波から1mmの極性で判断:目安は下壁誘導ですべて陽性なら前中隔,すべて陰性なら後中隔,不定なら中中隔
  • Ⅲ誘導でR波高さは前中隔>中中隔>後中隔の順に大きい
  • Jemes線維は心房から房室結節下部を連結,Mahaim線維はatrio-fascicular/ventricular pathway,nodo-fascicular/ventricular pathway,fasciculo-ventricular pathwayの総称
  • デルタ波が目立たないなら左室側壁(伝わるまでに時間を要しその間に通常伝導が生じる)のケント束,マハイム線維,Fasciculoventricular pathway(purkinje組織から隣接する心筋に接続している副伝導路)
  • 束枝—心室副伝導路(Fasciculo-ventricular pathway)ではWPW patternを呈するが基本的に頻拍は来さないため治療対象ではない

心室頻拍 VT
  • 4特徴:①房室解離,②すべての胸部誘導で陰性波(negative concordant:自験例),③胸部誘導でRS(またはrS)波形がありR開始~S谷≧100ms,④特徴的な波形(RBBBならV1で前半のRが大きい(taller left rabit ear)+V6でR<S,LBBBならRS波の下行(前半)部分にノッチ
  • 左軸偏位やQRS幅>160ms,左脚ブロック+右軸偏位,RBBBでV1で単相性,aVRでQ波なし,なども心室頻拍を示唆
  • wide QRS tachycardiaの鑑別はVT,SVT,偽性心室調律


💁 心電図マイスターに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-11-27

胸鎖乳突筋 Sternocleidomastoid muscle

軽労作での息切れで来院した症例(体位は座位)

🐤 解説
  • 座位で内頸静脈の明瞭な拍動を視認可 ➜ 中心静脈圧は高度に上昇
  • 拍動は隆起ではなくて陥凹で不規則と思われる ➜ 心房細動の疑い
  • 吸気負荷の追加 ➜ 胸鎖乳突筋が明瞭化し頸静脈反応は評価できず
  • 患者さんの右側から再度負荷 ➜ 拍動上縁は上昇するが陽性波なし
  • 本例の最終診断は心房細動を合併した非代償性の左心不全(PEF)

🐥 独り言
  • 座位で内頸静脈の陥凹を認めた場合,吸気負荷で陽性波(CV merger)になれば心不全はより重篤と考えられます.本例は負荷後も陰性波のままだったため,そこまで重症ではないと考えられました.ちなみに吸気負荷で拍動が消失する症例を経験することは(ほぼ)ありません(直近の座位陽性12例では吸気で拍動消失例なし).
  • 安静座位で内頸静脈の拍動を認めない症例で,吸気後に拍動が出現すれば中心静脈は中等度上昇していると(個人的には)判断しています.胸鎖乳突筋が安静時から目立っている場合(自験例)や本例のように吸気で目立つ場合(偽クスマウル徴候)があります.しかし筋肉は拍動しないので頸静脈と見間違うことはないと思います.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-11-26

ラミナリア かん Laminaria tent

  • 昆布の一種である乾燥したラミナリアの茎で作られた細い棒
  • 子宮頸管の拡張目的に用いられる医療機器(子宮頸管拡張器)
  • 12〜24時間で凡そ2~3倍に膨張(挿入後24時間以内に抜去)
  • 外科的中絶前,初産婦の頸管未熟例,婦人科疾患処置前など
  • 長さ60~80mm、直径3~5mmの円筒形で通常,複数本挿入
  • 日本ラミナリア桿(医療機器届出番号:21B3X00009000001


(投稿者 川崎)

2023-11-25

黄色肉芽腫性腎盂腎炎 Xanthogranulomatous pyelonephritis

  • 概要 慢性腎盂腎炎の亜型で尿路閉塞や慢性感染に関連することが多い病態
  • 命名 脂質を多く含んだマクロファージ浸潤が病理切片で黄色に見えるため
  • 感染 起因菌は尿路感染と同じ(大腸菌,ミラビリス,シュードモナス他)
  • 疫学 全ての腎感染症の0.6%~1%で男性よりも女性に多い(50〜60歳代)
  • 鑑別 腎がん,腎実質奇形,腎結核,腎膿瘍,間質性腎炎,血管筋脂肪腫
  • 治療 抗生物質と経皮ドレナージ,難治症例では腎部分切除術や腎全摘術

参考)StatPearls

腎周囲組織や副腎に破壊が及んだ黄色肉芽腫性腎盂腎炎の1例

(投稿者 川崎)

2023-11-24

右心カテーテル

  • 最近では右心カテーテルを行う機会はめっきり減少しました.しかし頸静脈所見を解釈するためには,右心カテーテルで得られる圧波形を知っておくことが重要です.少し前にSNSで目にした論文)が気になったため,右心カテーテルの歴史と代表的な波形を復習してみました.

♻ 歴史
  1. 西ドイツの泌尿器科医フォルスマンWerner Forssmann、1904-1979)が自らの腕を切開して尿道カテーテルを右心房まで到達させレントゲンを撮影した(Klinische Wochenschrift 1929;8:2085). その一件で病院を解雇されたが,これは世界初の心臓カテーテルで1956年にノーベル生理・医学賞を受賞.同じ様な行動をとった医師が他にもいたがフォルスマンのみ写真が残っていたらしい(
  2. フランスの医師・生理学者であるクールナンAndré Frédéric Cournand, 1895-1988)が,右心カテーテルによる圧測定および心拍出量の測定法を確立した(J Clin Investig 1945;24:106).フォルスマンと同時にノーベル生理・医学賞を受賞した.同年は3人の同時受賞でもう1人はリチャーズDickinson Woodruff Richards Jr.,1895-1973)
  3. アイルランドの心臓専門医スワンHarold James Charles “Jeremy” Swan,1922–2005)とスロバキア生まれのアメリカの心臓専門医ガンツWilliam Ganz,1919-2009)が先端にバルーンが付いた肺動脈カテーテル(別名:スワン・ガンツカテーテル/Swan-Ganz catheter)を開発(N Engl J Med 1970;283:447-51

- 圧力波形のピットフォールと異常 -

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(投稿者 川崎)

2023-11-23

周期性嘔吐症 Cyclic vomiting syndrome: CVS

  • 概要 数日の嘔吐発作を周期的にくり返す小児に多くみられる病態
  • 疫学 発症年齢の中央値は4.8歳で,僅かに男性に多く白人では2%
  • 別名 アセトン血性嘔吐症やケトン血性嘔吐症など(昔は自家中毒
  • 誘因 心理的・身体的なストレス,感染症,疲労,食事,月経など
  • 機序 体脂肪の分解時に血中アセトン(ケトン体)が異常増加する
  • 原因 ミトコンドリア異常や内分泌異常,自立神経障害など多因子?
  • 診断 臨床経過と嘔吐発作の特徴,器質的な疾患の否定などによる
  • 治療 予防には誘引の回避+発症時には輸液や制吐剤など対症療法
  • 予後 発症後2~5年程度で自然軽快が多い(28%は片頭痛に移行)


(投稿者 川崎)

2023-11-22

今週の一枚 🎯

消化管の進行癌症例




(投稿者 川崎)

2023-11-21

頭部脳回転状皮膚 Cutis Verticis Gyrata: CVG

  • 頭皮軟組織の過剰肥厚で脳のような外観を呈する病態
  • 初報は1837年にフランスの皮膚科医であるJLM Alibert
  • 隆起部は硬く圧を加えても平らにすることはできない
  • 頭皮の中央〜後部に多いが頭皮全体に及ぶこともある
  • 頻度は1/10万人以下で男女比6:1,好発は思春期〜30歳
  • 脳性麻痺やてんかん,精神神経疾患と関連する可能性
  • 二次性CVGは先端巨大症,母斑,炎症過程などと関連
  • 通常は良性疾患で治療不要(二次性では原疾患の治療)
  • 美容的に外科切除,皮膚充填剤,ヒアルロニダーゼ注射


- 頭部脳回転状皮膚を呈した先端巨大症の60歳男性 -

(投稿者 川崎)

2023-11-20

「アレっ?」と思ったら慎重に

2週間前から息切れが続く症例(座位)

🐥 解説
  • 頸部は右側のみでなく正中,左側も拍動(隆起)
  • 吸気負荷でも陽性波所見に変化なし(動画なし)
  • 同様に左上肢の挙上後にも頸部所見に変化なし
  • 最終診断は大動脈弁逆流のコリガン脈(頸動脈)

🐤 つぶやき
  • 右側に限局しない陽性拍動なら動脈性を真っ先に考えるべきでした.呼吸負荷や上肢挙上負荷で変化がないならなおさらです.しかし何故かこの時は頸動脈のことが少しも頭に浮かびませんでした.当日の外来があふれていたことと本例の病歴が典型的な心不全であったためかもしれません(反省😓).前頸静脈(Anterior jugular vein)の拍動って珍しいな〜と思っていました.
  • 上肢の重量は片側で体重の4%程度だそうです(例:体重60 kgなら2.4 kg).2Lのペットボトルを挙上・保持する動作はなかなかの重労働です.挙上に伴う前負荷増大(上肢内血液の心臓への還流)および後負荷増大(上肢が心臓よりも高位に移動)を考えると,上肢挙上は蹲踞姿勢(最強負荷新最強負荷)に匹敵するなかなかの負荷ではないかと思っている今日この頃です.

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(投稿者 川崎)

2023-11-19

病児・病後児・体調不良児:保育サービス

🌒 病児 対応型
  • 当面症状の急変は認められないが、病気の回復期に至っていないことから、集団保育が困難である児童(病児)を、病院・保育所等の付設の専用スペースで、一時的に預かるもの。

🌓 病後児 対応型
  • 病気の回復期であり、かつ、集団保育が困難である児童(病後児)を、病院・保育所等の付設の専用スペースで、一時的に預かるもの。

🌔 体調不良児 対応型
  • 普段通っている保育所において、保育中に微熱を出すなど体調不良となった児童(体調不良児)を、当該保育所内の医務室等で、一時的に預かるもの。


(投稿者 川崎)

2023-11-18

Nonthyroidal illness syndrome: NTIS 非甲状腺疾患症候群

  • 視床下部-下垂体-甲状腺の機能異常を伴わず甲状腺ホルモン異常を生じた病態
  • 上記系のset-pointの変化で甲状腺ホルモンの供給が低下した状態と考えられる
  • かってはEuthyroid sick syndrome(甲状腺機能正常症候群)とも呼ばれていた
  • 軽症はT3低下(low T3症候群),重篤はTSHの上昇なくT4低下(low T4症候群
  • 基礎疾病+飢餓,ストレス,コルチコイド,サイトカインなどの多因子が影響


非甲状腺疾患の発症時および回復時の甲状腺機能検査の典型的な変化と死亡率

💁 甲状腺に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-11-17

爪囲そうい紅斑 Periungual erythema

  • 爪縁に沿って紅斑, 血管拡張, 出血などを生じた病態
  • 症状は発赤,熱感,疼痛などで診断は視診に基づく
  • 単なる感染症でも生じるが,膠原病と関連しやすい
  • 特に皮膚筋炎で高率に合併(微小血管障害による)

発熱と咳嗽で来院した64歳の男性
最終診断は筋症状を伴わない皮膚筋炎+急速進行性間質性肺炎

💁 膠原病に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-11-16

今週の一枚 🎯

1週間続く胸背部の内部痛(大動脈弁置換術の既往あり)
(左側胸部:少しボケていて🙇)




(投稿者 川崎)

2023-11-15

SIBO シーボ

  • SIBO=Small Intestinal Bacterial Overgrowth=小腸内細菌増殖症
  • 小腸内である種の常在細菌が過剰に増殖した結果生じる一連の病態
  • 症状は腹部膨満,ガス,膨満,下痢,脂肪便など(有病率は不明)
  • 素因はPPIやオピオイドの投与,胃バイパス術後,結腸切除術後など
  • 診断は小腸吸引物の培養(呼気検査も可能だが標準化と検証が必要)
  • 治療は食事療法(低FODMAP食)や抗生物質(リファキシミン他)


変化した腸内微生物叢と人体のさまざまな領域との間の双方向の関係

(投稿者 川崎)

2023-11-14

好酸球増加症の原因:CHINA

  1. Connective tissue disorders ➜ 結合組織病
  2. Helminth infections ➜ 蠕虫感染症
  3. Idiopathic ➜ 特発性
  4. Neoplasms(CML, Hodgkins) ➜ 新生物(慢性骨髄性白血病、ホジキン病)
  5. Allergies ➜ アレルギー

NAACP(エヌ・エー・エー・シー・ピー or エヌ・ダブルエー・シー・ピー)という語呂合わせもあり(ただしNational Association for the Advancement of Colored People/全米有色人種地位向上協議会の方が有名)
  1. Neoplasia (CML, Hodgkins lymphoma) 
  2. Allergy, Atopy
  3. Athma, Addison's (Hypoadrenalism) 
  4. Churg-Strauss / Connective tissue disorders
  5. Parasite infections

💁 語呂合わせ(mnemonics)に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-11-13

症状があてにならない時

息切れがあるのかないのかはっきりしない症例

😶 臨床現場
  • 座位では僅かに拍動あり? ➜ 心不全ありとは言えず
  • 吸気負荷で内頸静脈の隆起?(拍動なし)➜ 心不全?
  • 左上肢挙上で周期的な陥凹出現 ➜ 心不全ありと判断
  • 最終診断は慢性左心不全(HEpEF)➜ SGLT2i を投与

🔗 復習
  • 高齢者の心不全例では自覚症状が曖昧なことがあります.加齢に伴う身体活動の低下や各種知覚センサーの鈍化が原因と推測されます.また認知機能障害の合併も念頭に置く必要があります(自験例:ニコニコしている症例).システマティックレビュー(J Card Fail 2017;23:464-75)では,心不全患者で認知症の頻度が43%に達していました(95%信頼区間30~55).怪しければ吸気負荷に加えて左上肢挙上負荷前屈負荷の追加が役立ちます.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-11-12

レントゲン読影:ABCs 〜 ABCDEs

🦴 四肢のABCs
  • Alignment ➜ 骨の配置は正常か?
  • Bone density ➜ 骨の密度は正常か?
  • Cartilage density ➜ 関節裂隙は正常か?
  • Soft tissue ➜ 軟部組織は正常か?

🍖 脊椎のABCDs
  • Alignment ➜ 骨の配置は正常か?
  • Bone density ➜ 骨の密度は正常か?
  • Cartilage density ➜ 椎間板は正常か?
  • Distance ➜ 椎体間隙は正常か?
  • Soft tissue ➜ 軟部組織は正常か?

🌰 胸部のABCDEs
  • Air ➜ 肺野は正常か?
  • Bone ➜ 骨は正常か?
  • Central space / Cardiac shadow ➜ 縦隔 / 心陰影は正常か?
  • Diaphragm ➜ 横隔膜は正常か?
  • Extra thoracic area ➜ 胸郭外は正常か?

(投稿者 川崎)

2023-11-11

薬傷:フッ化水素酸

  • 概略 フッ化水素酸(hydrofluoric acid)は組織に対し強い腐蝕性を有す無機酸
  • 現場 しみ抜きや錆落としなど広く用いられているため手指に化学熱傷を生じる
  • 問題 フッ化物イオ ンが中和されるまで組織破壊が遷延し,著明な疼痛を生じる
  • 対応 大量の生食洗浄+グルコン酸Ca注(カルチコール)を浸したガーゼ湿布など


年末大掃除中に手袋の裂け目から55%濃度のフッ化水素酸溶液がしみ込んだ症例
(壊死進行を阻止することを意図して体幹部に作成した皮弁で創面を被覆:図3c)

(投稿者 川崎)

2023-11-10

心電図マイスターへの道 ②

不定軸
  • 四肢誘導のすべてでR波,S波,Q波の波高が等しく電気軸が求められないとき.北西軸(極端な軸偏位)と混同しないように(ただし北西軸を不定軸と呼ぶこともある).
  • S1S2S3パターンはI、II、III誘導のすべての誘導にS波を認め,不定軸になりやすい.

両室肥大

完全房室ブロック
  • 一見,完全AVブロックでも,繋がっている部位があれば高度AVブロックになる.

心房粗動
  • 通常型反時計回転(common):鋸歯状波がI,II,III,aVF誘導で陰性,V1誘導で陽性(IIで陰性・V1で陽性・V6で陰性のワンパターン)
  • 通常型時計回転(reverse common):鋸歯状波がI,II,III,aVF誘導で陽性,V1誘導で陰性

心房頻拍
  • 原因に自動能亢進とリエントリーがある.開始時に徐々に心拍数が増加するwarm up現象と,停止に先立ち徐々に心拍数が低下するcool down現象がある(過去の投稿).

LGL症候群
  • 心房ーHis束以下の刺激伝導系の短絡(ジェームス線維)で頻度は2500~5000人に一人(ケント束は心房ー心室間の短絡で頻度は1500~2000人に一人)

WPW症候群
  • 順方向性房室回帰頻拍:最多で房室結節を順行,ケント束を逆行してQRS幅が狭い
  • 逆向性房室回帰頻拍:ケント束を順行,房室結節を逆行してQRS幅が広い

心室頻拍
  • 洞捕捉(途中で形の頃なるQRS:融合収縮や捕捉収縮),房室解離,突然のP波の脱落なら確定
  • RBBB+左軸偏位:左脚後枝起源の特発性心室頻拍が多くベラパミル感受性(いわゆるベラセン)
  • RBBB+右軸偏位:左脚前枝起源
  • LBBB+下方軸:右室流出路起源の特発性心室頻拍が多い
  • 子供であればVTに見えても逆方向性AVRT(antidromic AVRT:ART=心房→Kent束を順伝導→心室→房室結節を逆伝導→心房の順で旋回)が多い

先天性QT延長症候群
  • LQT1:トリガーは運動(特に水泳)が多く,大きくて幅が広いT波が特徴
  • LQT2:情動ストレス(恐怖や目覚まし音)が誘因で,T波は平低やnotchあり
  • LQT3:発作は睡眠中や安静時で,T波の始まりが遅い特徴あり


💁 心電図マイスターに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-11-09

今週の一枚 🎯 ゴニョゴニョ

心電図異常(洞調律・ST-T変化)で来院した男性(座位)

😎 診察室中継
  1. 呼吸時の大きな胸壁の動きにめげずに心尖の拍動を探す
  2. 心尖拍動(矢印)を認識したら次はその位置を確認する
  3. 拍動が左乳輪外側とは言えないため心拡大はないと判断
  4. 次に拍動様式を分析:なにか”ごにょごにょ”している?
  5. 触るってみると二峰性拍動(ダブルインパルス)の疑い
  6. 拍動部位で大きなⅣ音を聴診して肥大型心筋症を疑った
  7. その後に心エコー図で心尖部肥大を確認しAPHと診断

😁 楽しい臨床
  • 二峰性心尖拍動(ダブルインパルス)と言えば肥大型心筋症です(特異度98%:当院の臨床研究).心尖部肥大型心筋症に限らず,巨大Ⅳ音を示唆する所見です.視診・触診・聴診のいずれでも診断できますが慣れが必要でしょうか?
  • 最近は,二峰性またはダブルにはあまりこだわらなくていいのではと思っています.リアルの臨床現場では本例の様に胸壁の動きも加わるため細かい判定はより難しく成ります.「なにかゴニョゴニョしているな〜」程度で十分です.
  • 先月に経験した症例はHCMでギクシャクしている心尖拍動でした.視診から肥大型心筋症を疑い,心エコー図で確認する臨床スタイルは机上の空論ではありません.誰にでも可能で,かつ日常臨床を楽しくする知識だと思います.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-11-08

SLEDスレッド

  • SLED=sustained low-efficiency dialysis(緩徐低効率血液濾過透析)で,血液流量と透析液流量を減じて治療時間を延長して行う.例えば透析液流量を一般的な500mL/min を1/2程度の200~300mL/minへ減少させ,治療時間を従来の4時間から2倍程度の8~10時間に延長させる.
  • 持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT,ICUで連日24時間行うCHDFなど)と間歇的腎機能代替療法(intermittent renal replacement therapy:IRRT,通常の週3回のHDなど)の中間的な治療モード.CRRT装置がない場合やCRRTを施行できない場所でもSLEDは可能
  • 重症の急性腎障害に対する血液透析IRRTは低血圧や不十分な体液除去が多く、一方CRRTは高額で抗凝固療法の問題などが生じる.その解決策としてSLEDが期待されている(SLED は抗凝固療法なしで日常的に実行できて大幅に低いコストでCRRT と同等の溶質除去を実現)



💁 透析に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-11-07

中心性漿液性脈絡網膜症 CSC: central serous chorioretinopathy

  • 概略 脈絡膜から黄斑に水分が漏れ出て網膜剥離を生じた病態
  • 疫学 30歳以上の中年に多い疾患で発症率は1万人に1人程度
  • 原因 感受性遺伝子座?(CFH rs800292およびVIPR2 rs3793217)
  • 症状 視界の中心部(視線を向けたところ)が逆に見えにくい
  • 経過 自然に治癒することが多い(僅かな後遺症は生じ得る)
  • 治療 レーザー光凝固術,経瞳孔温熱療法,光線力学療法など
  • 合併 治癒しても数十年後に加齢黄斑変性を発症しやすくなる


急性の中心性漿液性脈絡網膜症と診断された34歳の男性

(投稿者 川崎)

2023-11-06

👴 歴史クイズ

CC BY 4.0



(投稿者 川崎)

2023-11-05

✈ 航空機内での酸素投与

  • 飛行中の機内:気圧0.8気圧,気温25度,湿度10〜20%
  • 動脈血酸素分圧は118 Torrへ,Hb飽和度も90%へ低下
  • 健常者では心拍数や心拍出量の増加などで代償が可能
  • HOT例や予備軍,心不全例では個々に応じた対応が要

- 目安 -
  1. 在宅酸素中の症例 ➜ 通常量に1〜2 L/分追加
  2. 酸素飽和度が92%以下に低下例 ➜ 2 L/分開始

参考)医学会新聞 寄稿 2010,ほか

航空機内での酸素飽和度と酸素濃度

(投稿者 川崎)

2023-11-04

18トリソミー症候群(エドワード症候群)

  • 概要 常染色体異数による先天性疾患で18番染色体の全長あるいは一部が重複
  • 由来 米国の小児科医 John Hilton Edwards らの初報(Lancet 1960;1:787-90
  • 疫学 全出生児3,500~8,500人に1人の頻度で見られる(男:女=1:1~1:3程度)
  • 診断 出生前の絨毛検査や羊水検査,出生後の血液で18番染色体が3本(下図)
  • 合併 身体的特徴(多指症や口唇裂など)、心疾患(VSD他),呼吸器疾患など
  • 類似 最多は21 trisomy(ダウン症候群),13 trisomy(パトー症候群)は稀
  • 予後 生存期間中央値は14日で,1年生存率は10%程度,98.9%が0〜4歳に死亡


エドワード症候群の女児(18番染色体が重複)

 18トリソミー症候群の男児(左,早期新生児/右,1歳)

(投稿者 川崎)

2023-11-03

Winking owl sign 椎弓根消失像

  • 脊椎単純X線の正面像で椎弓根陰影が欠損した状態
  • 由来は瞬き (wink) したフクロウ (owl) に似るため
  • 別名は pedicle sign(pedicle=椎弓根,pédikəl)
  • 転移性の脊椎腫瘍で出現しやすい所見として有名
  • ただし感染症(結核など)や先天的低形成でも有

L1(右図中央)の右椎弓根陰影が不明瞭化

(投稿者 川崎)

2023-11-02

今週の一枚 🎯

慢性心不全でフォロー中の症例(座位)

🔥 解説(個人的見解)
  • 端座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動はなし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気でも拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度上昇なし(ビデオなし)
  • 左上肢の挙上で陥凹が出現(矢印)➜ 中心静脈圧の軽度〜中等度の上昇
  • 新たに出現した陥凹は不規則 ➜ 心房細動の疑い(実際に本例はAFです)

💛 心不全否定のMyパターン
  • 症状で心不全を疑わない症例:安静時に内頸静脈の座位陰性を確認
  • 心不全が否定できない症例:安静時と吸気負荷後ともに陰性を確認
  • 心不全の可能性あり例:安静吸気左上肢挙上すべて陰性を確認

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-11-01

Alcoholicやfattyは不適切だそうです

  • 欧州肝臓学会は米国肝臓病学会,ラテンアメリカ肝疾患研究協会と合同で脂肪性肝疾患の病名変更を発表(J Hepatol 2023:S0168-8278(23)00418-X
  • その理由はalcoholic”および“fatty”という用語が不適切と見なされるためです.本邦の日本消化器病学会もこの変更の提案を妥当と判断し承認().

 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease,ナッフルディ)
 ➜ MASLDmetabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis 、ナッシュ)
 ➜ MASHmetabolic dysfunction-associated steatohepatitis)

(投稿者 川崎)