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2022-07-31

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

心源性ショック
Tl(上)、BMIPP(下)の dual SPECT
(済生会滋賀県病院循環器内科提供)



(投稿者 杉原)

2022-07-30

用語の再確認

😎 ザックリまとめると
  • Pandemic(パンデミック)➜ 流行病(複数の国や大陸:COVID-19,スペイン風邪など)
  • Epidemic(エピデミック)➜ 流行病(範囲が狭く国内:ジカ熱,デング熱など)
  • Endemic(エンデミック)➜ 風土病・地方病(特定の地域で持続:マラリアなど)
  • Outbreak(アウトブレイク)➜ 集団発生・感染爆発(狭い範囲で急激に増加:エボラ出血熱など)

💁 感染に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-07-29

滴状心:医学用語?

昨日のカンファレンス 💨
  • 滴状心という用語をめぐって,指導医と初期研修医の先生の間でちょっとしたやり取りがあったので少し調べてみました.

  1. 循環器学用語集(第4版)日本呼吸器学会用語集にはいずれも記載されていて(医学用語?),英名はともにdrop heartでした(drople heartではない😳)
  2. 類似語としてcardioptosiaという表現を見つけましたがいずれの用語集も含まれず,PubMedで100年以上前の論文が一つだけヒット(Br Med J 1918;1:721
  3. cardioptosiaの対訳になる(と思われる?)心臓下垂症という用語を見つけましたが,Google Scholarでは一つもヒットしませんでした(心臓下垂なら数件あり)
  4. 問題はその定義ですが,Google Scholarで”definition of drop heart"あるいは"drop heart was defined"を検索しても何も表示されませんでした 😥
  5. 日本離床学会のページには「カルテに記載されている印象では心胸郭比(CTR: cardiothoracic ratio)が30-35%以下の場合」と記載されていますが...(

  • 滴状心はもちろん慢性閉塞性肺疾患(COPD)で認めることがある胸部X線に関連した異常所見です.
  • 単に心胸郭比が小さいだけでなく,肺過膨張による両側からの心圧排&横隔膜平坦化による下方への心牽引が特徴
  • 個人的には,あまり厳密な定義を持たないにもかかわらず生き残っている医学用語って,なんかいいな~と思います 😙

💁 医学用語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-07-28

🎯 今週の一枚

心電図異常(非特異的ST-T変化)を指摘され来院した症例

💃 解説
  • 頸部の力強い周期的隆起(ダンシングパルス)➜ 動脈性の疑い
  • その拍動は右側だけでなく左側でも観察できる ➜ 動脈性の疑い
  • 拍動は吸気時には不明瞭になっている ➜ 静脈性の拍動は否定的
  • 触診と時相解析から動脈性拍動であることを確認(コリガン脈
  • 心エコー図では大動脈弁逆流(中等症)+僧帽弁逆流(中等症)

 🔗 つぶやき
  • 拍動が動脈性か静脈性かは触診すればすぐに区別できますが,そこはちょっと我慢するようにしています.基本ルールは呼吸性変動があれば静脈性(動脈性ではあまり変化しませんが,本例は吸気時に首に力が入ったためか拍動が不明瞭に)
  • 本例は視診のみで動脈性拍動を確信できたので,重症の大動脈弁逆流を疑いました.聴診では予想通り往復雑音(相対的な大動脈弁狭窄:他の自験例)でしたが,ランブル(オースチン・フリント雑音)はなく,爪床にクインケ徴候もなし.
  • しかし大動脈弁逆流は中等度にとどまり,息切れなどの症状もありませんでした.詳細は不明ですが,僧帽弁逆流を合併したため頸部の拍動が通常より目立ったのかもしれません.なお心エコー図後に再度行った聴診では収縮期雑音は逆流性でした.

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(投稿者 川崎)

2022-07-27

GDMT vs OMT

  • GDMT ➜ guideline-directed medical therapy(診療ガイドラインに基づく標準的治療)
  • OMT ➜ optical medical treatment(至適薬物療法)

👶 独り言

ちなにみ循環器領域の3大ガイドラインでは
  1. ACC/AHA(米国心臓病学会/米国心臓協会):GDMTを採用
  2. ESC(欧州心臓病学会):OMTを採用
  3. JCS(日本循環器学会):OMTとGDMTが混在

言語としてより正確な表現はGDMTと思われるため,今後はOMTという表記は減っていくのかな〜と思います.本邦のガイドラインはその移行期かもしれません(2021年フォーカスアップデート版急性・慢性心不全診療ではGDMT/2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドラインではOMT).個人的には至適薬物療法(OMT)という語感(日本語と英語ともに)が気に入っていたのですが...

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(投稿者 川崎)

2022-07-26

急性胸部症候群 Acute chest syndrome: ACS

  • 病態 鎌状赤血球貧血症例で一般的に見られる肺血管系の血管閉塞症
  • 症状 発熱や咳嗽、耐え難い痛み,喀痰,息切れ,低酸素レベルなど
  • 原因 肺炎や全身感染症,脂肪塞栓症,HbSを含む赤血球による肺塞栓
  • 治療 抗生物質や交換輸血,呼吸管理など(予防はヒドロキシ尿素)
  • 予後 13%が人工呼吸管理,3%が死亡(鎌状赤血球症患者の最多死因)


急性胸部症候群を発症した32歳の症例の経過

💙 追加コメント
  • 鎌状赤血球症(sickle cell disease)は遺伝子変異(11番染色体にあるヘモグロビンβ鎖の6番目のアミノ酸が置換)が原因です.ホモ接合では重度の貧血症生じますが,ヘテロ接合では日常生活に支障なく酸素分圧の低下などで発作(異常β鎖が凝縮)を生じます.
  • ほとんどの症例が黒人で,主にアフリカや地中海沿岸,中近東,インド北部で見られるようです.本邦では馴染みがないため,初めて聞いた時には 急性冠症候群(ACS: acute coronary syndrome)の別名かと思いました.略語も同じACSですし...

(投稿者 川崎)

2022-07-25

🏆 論文:ABI簡易心音計

  • 川俣先生が当院の循環器内科で行なった研究が出版されました
  • ABI 測定器が心音計(現在は販売なし)の代用になるかを検討
  • ポイントはABIの心音マイクを通常の胸骨左縁から心尖部に移動
  • 肥大型心筋症のⅣ音検出は心音図>ABI代用>聴診の順に良好
  • なお心尖部の心音マイクでもABI検査の異常(<0.9)に差はなし
同一症例での記録(矢印と矢頭はⅣ音)
A:心音図,B:通常のABI,C:心尖マイクで記録したABI

😀 追加コメント
  • 残念ながら心機図検査装置(例:フクダ電子MES-1000)は,もはや手に入れることができません.一方ABIの測定は多くの病院で実施されていると思われます.よって本研究の結果は,心音に興味があるが心音計をもっていない方にとっては朗報ではないかと思います.ちなみにフクダ電子の血圧脈波検査装置とMES-1000は同じマイクを使用しているようです(未確認情報).
  • ABIを用いた簡易心音計は低音〜高音の区別ができないため,本物の心音計には勝てないことは納得できます.しかし聴診(しかも経験ある検者)に勝るとは意外でした.理由はいろいろ考えられますが,肥大型心筋症のⅣ音はⅠ音に近接することがあり,幅広Ⅰ音と認識されることが少なくないからかもしれません(もっともこれもベルの押し付けで鑑別できるはずですが...)

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2022-07-24

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

冠攣縮性狭心症
安静時胸部不快感を訴えた症例のBMIPP(上段)および運動負荷Tl(下段)心筋イメージング



(投稿者 杉原)

2022-07-23

CRAS シーラス  心腎貧血症候群

  • Cardio-renal anemia syndromeの略で,心不全・腎不全・貧血が互いに悪影響する病態
  • イスラエルの腎臓内科の医師 Silverberg らが提唱した(Clin Nephrol 2003;60:S93-102
  • 最近は鉄欠乏を加えcardiorenal-anemia-iron deficiency syndrome( CRAIDS クライズ )ともいう
  • 心不全とCKD,鉄欠乏(貧血なし)ならcardiorenal-iron deficiency syndrome(CRIDS) 

- 慢性腎臓病と心血管疾患連関の考え方の推移 -

💁 CKDに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-07-22

抗リン脂質抗体症候群の "triple positive"

抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome: APS)で下記がすべて陽性なら血栓塞栓症の発症リスクが高い
  1. ループスアンチコアグラント lupus anticoagulant (LA)
  2. 抗カルジオリピン抗体 anti-cardiolipin (aCL)
  3. 抗β2グリコプロテインI抗体 anti-β2-glycoprotein I (b2GPI) antibodies

3重陽性の抗リン脂質抗体症候群 160例の初発症状と塞栓症に関連する予後

(投稿者 川崎)

2022-07-21

🎯 今週の一枚

非心臓手術の術前評価で循環器内科を受診した症例

🐔 解説
  • 座位で内頸静脈と(僅かに)外頸静脈の拍動を視認 ➜ 中心静脈圧の上昇
  • 吸気で外頸静脈が怒張している(動画中の矢印)➜ クスマウル徴候陽性
  • 内頸静脈は吸気で拍動が明瞭化(動画の✳︎) ➜ (広義のクスマウル徴候)
  • 拍動は二峰性陥凹でx下行よりy下行が大かつ急峻(フリードライヒ徴候)
  • 本例は他院で収縮性心膜炎と診断され経過観察されている症例であった
  • 心不全は概ね代償されているため当院で予定の非心臓手術は可能と判断

🐓 独り言
  • 急峻y下行(フリードライヒ徴候)と深吸気時怒張(クスマウル徴候)の組み合わせは収縮性心膜炎を疑うきっかけになります(典型例).本例では通常呼吸時の外頸静脈で(よくみると)y谷が急峻であることから”ピン”ときました.
  • 心エコー図で収縮性心膜炎に関する所見をルーチンに評価することはないと思います.よって身体所見で収縮性心膜炎を疑い,そのことをエコー検者に伝えることが重要です(フィジカルと心エコー図が手を組めば鬼に金棒以前の投稿

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(投稿者 川崎)

2022-07-20

前屈は意外に高負荷?

労作時の息切れを訴える症例

🐦 解説
  • 座位の安静時に右鎖骨上に頸静脈の拍動を視認しない(座位陰性)
  • 吸気負荷を追加後も頸静脈拍動の出現なし(クスマウル徴候陰性)
  • しかし少し前かがみになると内頸静脈の拍動が出現(前屈負荷陽性)
  • 拍動は陽性波(ランチージ徴候陽性)かつ不規則(心房細動を示唆)
  • 最終的に本例は,持続性心房細動を伴った慢性左心不全と診断した

🐤 臨床現場
  • 安静端座位で頸静脈拍動がないため著明な中心静脈圧の上昇(目安は15cm水柱)はないと判断.吸気負荷(クスマウル徴候)も陰性であるため「中等度の上昇もなさそうだな〜」と思っていました.
  • しかし症状が心不全のまさしく”short of breath”であったため,前かがみ(頭部前方位姿勢)になってもらったら陽性波が出現してびっくり 😮 前屈による胸腔内圧上昇は(僕が)思っているより高負荷?
  • 蹲踞は前負荷増大+後負荷増大でかなりの負荷量です.蹲踞+前屈負荷は旧最強負荷でいわゆるトリプル負荷.蹲踞+前屈負荷+吸気負荷が新最強負荷でいわゆる負荷の四重奏.すべて勝手に命名ですが...😅

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(投稿者 川崎)

2022-07-19

肺塞栓症重症度指数:PESI 

  • Pulmonary Embolism Severity Indexの略で,発症30日後の予後を予測
  • スイスのAujeskyらが提唱(Am J Respir Crit Care Med 2005;172:1041-6
  • 年齢,男性,担癌,心不全,慢性肺疾患,バイタル,精神変化で判定
  • 同様の予測が可能な易版PESIあり(J Thromb Haemost 2011;9:2115-7
  • 簡易版PESIでは1点以上の場合は30日死亡率が高いことが示されている

 簡易版PESI

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(投稿者 川崎)

2022-07-18

👴 歴史クイズ

CC BY 4.0



(投稿者 川崎)

2022-07-17

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

不安定狭心症
不安定狭心症のBMIPP(左)とTl(右)の心筋イメージング



(投稿者 杉原)

2022-07-16

ビーパス BPAS

  • Basi-parallel anatomical scanningの略でMRIのheavy-T2WIによるhydrography(水路描出) 
  • MRI撮影後にネガポジを反転することで椎骨動脈~脳底動脈などの血管構造を画像化する 
  • MR-Angiography (MRA) は血液の流れを信号化するため乱流等で描出できないことがある
  • 例えばMRAでは片側椎骨動脈や脳底動脈を先天的な欠損か病的な閉塞かの鑑別はできない
  • 一方,BPASは血管の外観が表示できるため椎骨動脈解離や動脈瘤を診断することが可能

椎骨動脈閉塞の1例(AのMRAで描出なし/BのBPASで血管外観あり)

(投稿者 川崎)

2022-07-15

最近頻回に耳にします:ICTやICN,加算1や加算2

  1. ICT ➜ Infection Control Team(感染制御チーム)
  2. ICD ➜ Infection control doctor(感染制御医)
  3. ICN ➜ Infection control nurse(感染管理看護師)

👶 おまけ
  • ICDは医師が必須条件ではありません.その資格は,①医師歴が5年以上の医師または博士号を取得後5年以上のPhD,②病院感染対策に係わる活動実績(感染対策委員歴、講習会出席、論文発表)あり,③所属施設長の推薦があることです(ICD制度協議会).

🚦 外来感染対策向上加算(令和4年度診療報酬改定で新設・見直し)
  • 加算1➜ 710点(入院初日):保健所・医師会と連携し加算2又は3の医療機関と合同で年4回以上カンファレンスを実施
  • 加算2➜ 175点(入院初日):主に300床未満で加算1の医療機関が主催するカンファレンスに年4回以上参加
  • 加算3➜ 75点(入院初日+入院期間が90日を超える毎に1回):専任の常勤医師と看護師からなる感染制御チームを設置
  • 加算 ➜ 6点(患者1人の外来診療につき月1回に限り算定) 


💁 感染に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-07-14

🎯 今週の一枚

腹部の違和感と軟便を訴える症例の腹部エコー

😄 解説
  • 腸管の内容物が行ったり来たり往復する所見(To-and-fro sign)あり
  • 鍵盤状にみえる拡張した小腸のkerckring皺襞(Keyboard sign)もあり
  • CTでも拡張した小腸と内部の液面形成を認めたためイレウスと診断した


独り言 💨
  • イレウス(腸蠕動運動の機能的な問題に起因する腸管内容の移動障害)あるいは腸閉塞(機械的な閉塞による腸管内容の移動障害)の症状は,腹痛や腹部膨満感,嘔気,嘔吐などが一般的です.一方,腹痛が主訴で,排ガスや排便を認めれば腸炎を疑うことが多いと思います.
  • ただし本例の様に排便を伴うイレウスも稀ではありません.患部遠位側の腸管内容物が排出されることがあるためです.排便・排ガスの停止がない腹痛症例でCT撮影がためらわれる場合には,ちょこっとエコーです(もっともイレウスが疑われてもCTの前にエコーですが…)

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(投稿者 川崎)

2022-07-13

医師会:A会員 B会員 C会員

  • 医師会組織は「日本医師会」「都道府県医師会」「郡市区等医師会」の3層から成る
  • 最上位の日本医師会を除き,会員の定義は各医師会によって僅かながら異なっている

📗 日本医師会の会員区分
  • A1会員 病院・診療所の開設者、管理者及びそれに準ずる会員 (日本医師賠償責任保険加入者)
  • A2(B)会員 勤務医の会員で日本医師賠償責任保険の加入者
  • A2(C)会員 医師法に基づく研修医で日本医師賠償責任保険の加入者
  • B会員 勤務医の会員で日本医師賠償責任保険の非加入者(「A2(B)会員」からの除外申請書の提出が必要)
  • C会員 医師法に基づく研修医で日本医師賠償責任保険の非加入者

📘 大阪府医師会の会員区分の一例
  • A会員 管理医師である会員
  • B会員 勤務医師である会員
  • C会員 医師法に基づく研修医ならびに医育機関(在阪5大学)において研修および研修中の会員

📙 佐賀県の武雄杵島地区医師会の会員区分の一例
  • A会員 病院・診療所・老健施設の開設者、管理者
  • B会員 公的医療機関の長および私的医療機関の勤務医
  • C1会員 公的医療機関の勤務医
  • C2会員 医師法に基づく研修医でその旨を申請した者
  • D会員 老年会員、疾病会員および自宅会員

💁 医師会に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-07-12

バイタルリンク® VitalLink®

  • 帝人ファーマ株式会社によって開発された多職種間の患者情報共有システム
  • パソコンやスマートフォン,タブレットを用いて情報を共有することが可能
  • 通信情報の暗号化に加え電子証明書とID・パスワード入力による2要素の認証
  • アンドロイド版は ココ,アップル版は ココ からアプリをダウンロード可能

App Storeに提示されているスクリーンショット)

⛨ 独り言
  • 先日の大阪心不全地域医療連携の会(OSHEF)の研究会で,心不全ポイントの共有のために使用されている施設がありました.個人情報を取り扱うアプリを自前で用意することは容易ではないことを考えると,バイタルリンク®の利用はとても実用的なことだと思います.病院として活用するときは使用料がかかるようですが...

(投稿者 川崎)

2022-07-11

VEXAS syndrome ベクサス症候群

  • VEXAS=Vacuoles, E1 Enzyme, X chromosome, Autoinflammatory, Somatic(液胞,E1酵素,X連鎖,自己炎症,体細胞)
  • X染色体上にあるユビキチン活性化酵素E1(UBA1)に影響を与える細胞変異に基づく致命的な治療抵抗性の炎症性疾患
  • アメリカ国立衛生研究所のBeckらが25人の男性患者を解析して提唱した病態(N Engl J Med 2020;383:2628-2638
  • 再発性多発性軟骨炎・Sweet症候群・結節性多発動脈炎・巨細胞性動脈炎・骨髄異形成症候群・多発性骨髄腫に類似
  • 成人後期(通常は50歳〜)の男性に発生して,現時点では高用量のコルチコステロイド療法を行うが進行性で死亡率は高い

(投稿者 川崎)

2022-07-10

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

逆流性食道炎?
運動負荷tetrofosmin心筋シンチグラムの静注後50分のplanar像



(投稿者 杉原)

2022-07-09

エウスタキオ管 Eustachian tube

  • 中耳(鼓室)と咽頭をつなぐ管状の構造物で,通常は耳管と呼ばれている
  • その役割は鼓室内の圧力調整および鼓室内の分泌物を咽頭に排出すること
  • 直径3mm,全長35mm程度で英名はauditory or pharyngotympanic tube
  • 名前はイタリアの解剖学者 Bartolomeo Eustachi (1500?– 1574) に由来する
  • ただし構造自体は紀元前500年頃のAlcmaeon of Crotonが発見している(
  • Eustachi は胎生期の下大静脈開口部のユースタキオ弁にも名を残している

- 下図の水色部分がエウスタキオ管 -
🚑 おまけ
  • 看護学生から「エウスタキオ管が...」と言われと,すぐに思い出せなかったから調べました(その場では学生さんに教えてもらいました 😅)
  • カタカナのエウスタキオはどうやらギリシャ語から来ているようですが,英語では juːstéiʃən(ユーステイシャン)です(実際の発音はココ

💁 耳管に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-07-08

ヘモクロマトーシス Hemochromatosis

  • 鉄代謝異常で鉄過剰となり諸臓器の実質細胞に沈着して組織障害や臓器不全を惹起した病態
  • 遺伝性(海外では多くはC282Y変異)と二次性(長期間の赤血球輸血:本邦で多い)に大別
  • 診断は遺伝性なら遺伝子変異の同定,二次性なら組織学的または画像的に鉄過剰沈着を証明
  • 肝臓の鉄貯蔵は約1gで毎日1mg程度の鉄が便・尿・汗・皮膚から排泄(吸収は十二指腸から)
  • 臨床的な徴候は肝硬変,糖尿病,皮膚色素沈着,心不全,甲状腺・副甲状腺・性機能の低下
  • 組織学的に鉄の沈着が認められても症状が現れるまでに20-40年を要するため40-60歳で発症
  • 治療は瀉血で,輸血後鉄過剰症に対しては鉄キレート療法(経口薬あり)+合併症への対応


💁 なんとなく発音が似ている Pheochromocytoma(褐色細胞腫)は コチラ

(投稿者 川崎)

2022-07-07

🎯 今週の一枚

心機能の評価目的で循環器内科を受診した症例

🐤 解説
  • 通常呼吸や吸気止めでは分かりにくいが呼気止めで臍周囲の上下運動(矢印)
  • 触診では動脈性の拍動で圧痛やスリルはなかった(聴診でも血管雑音はなし)
  • CTで腹部大動脈瘤を認めた(腎動脈下〜分岐部の紡錘型で最大短径は50mm)

🐣 独り言
  • 頸静脈では吸気負荷が大切で,呼気負荷の意義は乏しいと思われます(過去の投稿).一方,呼気負荷は聴診や心尖拍動(自験例)で役立ちます.腹部動脈瘤でも有用かもしれませんが,触診には完敗です(自験例).やはり”お腹は触るもの”です.
  • 腹部で拍動の視認または触知=腹部大動脈瘤ではありませんが,初診時には必ず一度はお腹を触っておくようにしています.「動脈瘤の破裂を回避することは外来担当医の責務です」と信頼している友人医師に教えてもらいました 😊

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2022-07-06

ベリーダンサー症候群 Belly dancer syndrome

  • 中東のベリーダンスのような激しい腹壁の動きで,別名は腹部ジスキネジアや横隔膜フラッター
  • 本体は横隔膜の不随意運動で疼痛などを伴うことがあり,責任病変として脊髄が推察されている
  • 原因は術後や外傷後,薬剤性(特にサルブタモール:下図例),進行性核上性麻痺,機能性など


(投稿者 川崎)

2022-07-05

星状硝子体症 🌟 Asteroid hyalosis

  • 硝子体に黄白色の反射粒子が出現する病態で,ヒト以外にも犬や猫などにも生じる
  • 頻度は0.8〜2.0%で加齢に伴い増加/原因不明で糖尿病や高血圧,脂質異常と関連
  • 主な成分はカルシウムとリン酸塩あるいはリン脂質からなるヒドロキシアパタイト
  • 通常,無症候性で視力に深刻な影響を与えることが少ないため積極的な加療は不要
  • 初報はBensonで"asteroid hyalitis"と表現(Trans Ophthalmol Soc UK 1894;14:101–4



💁 眼科に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2022-07-04

心尖拍動:凹と凸

労作時の息切れで来院した女性の心尖拍動(白タオルは乳房上)

🐤 解説
  • 持続時間の長い心尖拍動+外側偏位の疑い(≒ 心肥大+心拡大)
  • 心尖拍動は収縮期に陥凹(systolic retraction)➜ 収縮性心膜炎?
  • よく見ると内側陥凹(↓)と同じタイミングで外側は隆起(▽)
  • 本例の最終診断は複数の弁膜症による慢性心不全(肺高血圧あり)

🐦 独り言
  • 本例は右室拡大や右室肥大はなく,左室の心尖拍動(隆起=凸)の牽引による右心尖周囲の偏位(陥没=凹)かな〜と考えました.
  • 凹と凸の時間関係に注目すると,先に凸が生じて少し遅れて凹が続いているようです 😳 心室収縮は左心ファーストが基本ですし...

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(投稿者 川崎)

2022-07-03

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

肥大型心筋症の中隔性Q波の消失
肥大型心筋症の運動負荷/安静時tetrofosmin心筋イメージングおよび負荷時の心電図変化(上)と安静時心電図の13年後の変化(下)
Akakabe Y et al : Circ J ; 72: 953 – 957 ; 2008



(投稿者 杉原)

2022-07-02

多血性肝腫瘍 Hypervascular hepatic tumor

👾 発達した血管網を有する肝腫瘍の総称
  • 悪性 ➜ 肝細胞癌,胆管細胞癌,混合型肝癌(肝細胞癌と胆管細胞癌が混在), 転移性肝癌など
  • 良性 ➜ 肝血管腫,限局性結節性過形成,肝血管筋脂肪腫,肝細胞腺腫,肝炎症性腫瘤,アルコール性肝疾患に伴う過形成結節など


🌳 独り言
  • 多血性肝腫瘍というあまり聞きなれない用語を目にしたため調べてみました.造影CTの動脈相で濃染されるときに用いられるようです.一方,逆の病態は乏血性肝腫瘍(hypovascular hepatic tumor)と称されます.

💁 肝腫瘍に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-07-01

エンバーミング Embalming

  • 遺体を消毒して保存処理(必要に応じて修復)し長期保存する技法(遺体衛生保全)
  • 方法は動脈から防腐剤注入+静脈から脱血+消化器官内の残存物を除き防腐剤注入
  • 2週間程度は常温での保存可(定期的な防腐剤の交換などで半永久的な保存も可能)
  • 実例としてはロシア革命の指導者レーニンや女優のマリリン・モンローなどが有名
  • 日本でも年間1万人以上がェンバーミングを施しているが国内の専門家は100名未満


💁 死後に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)