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2019-08-31

耳管開放症 Patulous Eustachian tube

心不全で入院中の症例と朝の回診での会話
  • 患者 「先生,最近なんか耳も調子が悪いんです」
  • 医師 「それはお困りですね.どう悪いのですか?」
  • 患者 「TVの音なんかはちゃんと聞こえるんです」
  • 医師 「耳鳴りがあるのですか?それとも痛み?」
  • 患者 「なんか自分の声が割れて聞こえるんです」
  • 医師 「自分の声だけが…ウ〜ん,なんだろう?」

👿 耳鼻咽喉科に紹介して耳管開放症と診断された



耳管開放症 👂 日耳鼻 2016;119:1336-72
  • 症状 自声強聴,自己呼吸音聴取,耳閉感
  • 特徴 症状の体位による変化(臥位で軽快)
  • 診断 鼓膜の呼吸性動揺,話声聴取,耳管機能検査,座位耳管CT
  • 治療 原則は保存的治療,必要なら耳管ピン挿入術

耳管開放症の症例では鼻すすり癖が稀ではない(448例中113例:25.2%).これは鼻をすすることにより耳管が閉塞して快適な状態となるためである.


🙉 耳の模式図

1=頭蓋骨,2=外耳道,3=耳介,4=鼓膜,5=卵円孔,6=ツチ骨,7=キヌタ骨,8=アブミ骨,9=前庭,10=蝸牛,11=聴神経,12=耳管

(投稿者 川崎)

2022-07-09

エウスタキオ管 Eustachian tube

  • 中耳(鼓室)と咽頭をつなぐ管状の構造物で,通常は耳管と呼ばれている
  • その役割は鼓室内の圧力調整および鼓室内の分泌物を咽頭に排出すること
  • 直径3mm,全長35mm程度で英名はauditory or pharyngotympanic tube
  • 名前はイタリアの解剖学者 Bartolomeo Eustachi (1500?– 1574) に由来する
  • ただし構造自体は紀元前500年頃のAlcmaeon of Crotonが発見している(
  • Eustachi は胎生期の下大静脈開口部のユースタキオ弁にも名を残している

- 下図の水色部分がエウスタキオ管 -
🚑 おまけ
  • 看護学生から「エウスタキオ管が...」と言われと,すぐに思い出せなかったから調べました(その場では学生さんに教えてもらいました 😅)
  • カタカナのエウスタキオはどうやらギリシャ語から来ているようですが,英語では juːstéiʃən(ユーステイシャン)です(実際の発音はココ

💁 耳管に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-06-25

日本内科学会 第240回近畿地方会より

😐 個人的に気になった報告

演題28 急性期脳梗塞の原因としてcarotid webを認めた1例
  • Carotid webとは頸部内頸動脈起始部後壁にできる棚状構造物で,その本態は線維筋性異形成と考えられている.Carotid webは潜在性脳梗塞の1.6%,さらに60歳未満に限れば4.5%に認められると報告されている.

演題87 たこ焼き摂取後に発症した経口ダニアナフィラキシーの1例
  • パンケーキ症候群と呼ばれる経口ダニアナフィラキシー.アナフィラキシーの原因は食物が最も多いため間違われることもあり,正しい診断のためには本疾患を念頭に置いて丁寧に問診することが重要

演題100 慢性疼痛の症状緩和に対して仮想現実技術を用いた脳再プログラミング療法が著効した2例
  • mediVR社製のmediVRカグラのガイド下脳再プログラミング療法は薬物療法が奏功しない慢性疼痛患者の症状緩和に有用である可能性が示唆された(今回,mediVRカグラに関する演題が他に2つあり)

演題103 耳管通気中に脳空気塞栓症を来した1例
  • 左耳の聴力低下で来院.左鼓膜に陥凹が認められたため,耳管通気処置を施行した後に意識消失し眼球上転, 全身の痙攣を認めた.直ちに心肺蘇生を開始.数分で心拍再開したが酸素化安定せず,挿管し人工呼吸器にて管理となった.静脈に空気が流入し体循環に入ったためと考えられている.

演題116 炭火処理に従事した未成年者に発症した急性好酸球性肺炎の1例
  • 週3回, 炭火焼肉店で非常勤勤務.狭小空間で,使用済みの炭火を処理する作業に従事した.確定診断にチャレンジテストを要するが,患者はリスクを背負ってまで負荷試験を希望されず(元々,この勤務を辞めるつもりであった)

演題120 Geleophysic dysplasia(幸福顔貌骨異形成症)に合併した肺高血圧症の1例
  • リソソーム貯蔵障害に類似した進行性の疾患である多幸小人症で,低身長・短い手足・進行性の関節制限および拘縮・特徴的な顔貌・進行性の心弁膜症・皮膚の肥厚が特徴である(知性は正常)(引用).Geleophysic dysplasiaは稀少疾患であるが, 肺高血圧症の合併の報告はさらに少ない.

👻 当院からの発表
  • 演題121 Staphylococcus lugdunensisによる感染性心内膜炎の1例(循環器内科 野口理希先生)

😇 とてもナイスな発表でした

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2019-09-06

声帯溝症(せいたいこうしょう) Sulcus vocalis

  • 病態 声帯の溝による声門の閉鎖不全を生じた病態で別名は声帯萎縮症
  • 症状 発声時間の短縮(一息で数秒),嗄声,嚥下障害,運動能力低下など
  • 疫学 高齢者(特に70歳以上の男性)に多い(30歳未満は本邦では500人位)
  • 診断 発声時の声帯間隙+声帯溝(喉頭鏡やビデオストロボスコピーなどで)
  • 原因 不明/加齢・声の濫用・先天性(のう胞の破裂など)・炎症などの推測
  • 治療 音声訓練,声帯内注入(ステロイドや自家脂肪など),喉頭形成術など



👂 関連投稿

(投稿者 川崎)

2018-11-09

扁桃 vs 扁桃腺

  • リンパ組織の集合なので”扁桃/tonsil”が正しい用語
  • 昔は分泌機能を有すると考えられ”腺”と呼ばれていた

口腔と鼻腔の裏門を取り囲むワルダイエル咽頭輪(Waldeyer's tonsillar ring)の一部
  1. 咽頭扁桃(pharyngeal tonsil)➜ 別名はアデノイド(adenoid)
  2. 耳管扁桃(tubal tonsils)
  3. 口蓋扁桃(palatine tonsils)➜ 世間で言われる”扁桃”
  4. 舌扁桃(lingual tonsil)

👄ドイツ人解剖学者Heinrich Wilhelm Gottfried von Waldeyer-Hartz (1836–1921) が発見(Sitzungsberichte der Königlich Preussischen Akademie der Wissenschaften zu Berlin, 1886, 12:233-50)

(投稿者 川崎)

2017-03-13

2016年度 基本的臨床能力評価試験の復習 1/4

「症候群・臨床推論」の問題1~問題25
  1. ランダム化試験では患者背景の偏りを判定する検定は不要.検定を行っても偶然の誤差の程度を確認するに過ぎない.
  2. 担癌患者で筋力低下,痺れ,深部腱反射の消失が見られたら,転移性脊髄圧迫症候群を考慮して全脊椎の造影MRIを行う.
  3. 亜急性甲状腺炎が否定できない症例では抗甲状腺薬の投与は見合わせる.TSHレセプター抗体でバセドウ病が確定されるまではNSAIDsで対応する.
  4. 妊婦には葉酸サプリメントは勧められるが,脂溶性ビタミンは推奨されない.いずれも胎児の神経管閉鎖障害と関連するため.
  5. 学校保健法で出席停止期間が定められている疾患は,インフルエンザ・百日咳・麻疹・流行性耳下腺炎・風疹・水痘・咽頭結膜炎.
  6. クリニカルシナリオ1の急性左心不全(つまり収縮期血圧が140mmHg以上)では,降圧+酸素投与が最優先である.必要に応じて非侵襲的陽圧換気を考慮するが,利尿薬は多くの場合不要である.
  7. 脾摘症例では,脾臓摘出後重症感染症の予防のため肺炎球菌ワクチンを接種する(生涯にわたって5年毎).
  8. 児童虐待が疑われる症例では,福祉事務所あるいは児童相談所に通告する(警察への通報ではない).事実確認や保護者の了承は不要で,通告しても守秘義務違反に当たらない.
  9. 急性閉塞隅角緑内障の典型的例は,片側の重度眼痛,頭痛,嘔気,光周囲のハロー,結膜充血,対光反射遅延あるいは消失,角膜混濁,散瞳を伴う.眼科医への緊急コンサルトが必要.

(投稿者 川崎)

2017-08-28

ムコール症

ムコール菌による感染症の総称で別名は接合菌症(日和見型深在性真菌症
 ムコール菌=広く自然界に遍在するムコール目の真菌
  接合菌=接合胞子嚢(多核の菌糸)を作る菌類(例:ケカビやクモノスカビ)
  • 経路 環境中に浮遊する真菌の吸引(経気道的感染)
  • 診断 病理組織学的検査および真菌学的検査
  • 分類 鼻脳型,肺型,皮膚型,消化管型,播種型
  • 症状 発熱,疼痛,腫脹,壊死など(部位により大きく異なる)
  • 治療 基礎疾患治療+病変部切除,大量アムホテリシンB
  • 予後 皮膚型を除き不良(急性に進行して多くは致死的)
ムーコル
典型例 ⇒ 急速な転帰を辿った鼻副鼻腔ムコール症の1例(耳展1997;40:192-199)

(投稿者 川崎)

2017-02-20

Beals' syndrome ビールス症候群

先天性拘縮性くも状指趾症 congenital contractural arachnodactyly

マルファン様の体型(高身長,広いアームスパン,長くて細いくも状指趾)が特徴である
耳介変形,出生時の大関節の拘縮,筋肉の低形成,脊柱の後側彎症を伴うことが多い
心血管の合併しうる奇形:心房・心室中隔欠損,大動脈弓離断,単一臍帯動脈など
消化管の合併しうる奇形:十二指腸閉鎖,食道閉鎖,腸回転異常など

細胞外マトリックスの細線維であるfibrillin2をコードしているFBN2遺伝子の変異
常染色体優性遺伝性疾患であるであるが,新生変異により発症している場合もある

詳細はコチラ ⇒ ビールス症候群(GeneReviews 日本語版サイト)
(投稿者 川崎)

2023-02-05

二分口蓋垂 Bifid uvula

👄 二分口蓋垂(Bifid uvula)
  • 分岐した口蓋垂のうち二分した状態で,口蓋棚の不完全な融合に起因する.通常の口蓋垂よりも筋肉量が少ないため、中耳感染症を繰り返したり,食物が鼻腔に入る可能性がある.
  • その頻度は一般人口の0.42%()であるが,ネイティブ アメリカンでは10%と高率().ロイス・ディーツ症候群(Loeys-Dietz syndrome: LDS)に合併が多い(90〜92%:引用

Loeys-Dietz syndromeの症例で認めた二分口蓋垂

🔎 臨床現場での活用
  • 遺伝性大動脈疾患(マルファン症候群,ロイス・ディーツ症候群,エーラス・ダンロス症候群:血管型など)は類似した臨床所見です.ただしロイス・ディーツ症候群(特にタイプ1)は眼間解離,口蓋裂・口蓋垂裂,動脈ねじれ,頭蓋縫合の早期閉鎖,動脈管開存・心房中隔欠損などからマルファン症候群とは鑑別できるようです.
  • またロイス・ディーツ症候群タイプ2は皮膚異常 (あざができやすい半透明のビロード様皮膚),関節の緩み,および内臓破裂などを伴います.一方,マルファン症候群の半数近くに認める水晶体亜脱臼などの眼症状は,LDSには見られないようです.
  • ちなみにマルファン症候群,ロイス・ディーツ症候群,エーラス・ダンロス症候群:血管型はいずれも常染色体顕性(優性)遺伝(autosomal dominant inheritance)形式であるため子孫には性別に関係なく50%の確率で遺伝します.

ロイス・ディーツ症候群の男児

(投稿者 川崎)