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2024-05-12

冠動脈:生理の整理

冠微小循環障害CMD: coronary microvascular dysfunction)
  • 心外膜血管より多くの血流を担う微小循環の障害で様々な病態に関与(下図)

冠血流予備能CFR: coronary flow reserve)
  • 最大冠血流量(薬剤投与時など)を安静時冠血流量で除した値で2.0以上が正常

冠微小血管抵抗指標IMR: index of microvascular resistance)
  • 最大充血時(薬剤投与時など)の冠内圧を冠血流量で除した値で25以下が正常

- さまざまな心血管疾患における CMD の役割 -

(投稿者 川崎)

2022-10-07

呼吸困難感の発生機序:中枢-末梢ミスマッチ説

中枢からの運動出力と神経受容器からの求心性入力に乖離があれば呼吸困難感が生じるという説

呼吸困難発生に関与する受容器
1.化学受容器
  • 延髄の中枢化学受容器は,血液中のCO2上昇によって刺激される
  • 総頚動脈分岐部の末梢の化学受容器:低酸素によって強く刺激される

2.迷走神経受容器
  • 気道や肺には多くの受容器(肺イリタント受容器,C線維受容器,肺伸展受容器など)
  • 肺イリタント受容器はC線維受容器=機械&化学刺激(ヒスタミン,ブラディキニン,プロスタグランディンなど)
  • 呼吸困難感の発生・増悪に関与する受容器と,逆にその緩和に関与する受容器が混在

3.胸壁(筋・腱)受容器
  • 胸壁の呼吸筋や腱の内部には筋紡錘のような神経受容器が存在
  • 例:胸壁に振動刺激を加えると部位や方法で呼吸困難感が増悪または緩和

4.上気道受容器
  • 鼻腔から喉頭に至る上気道には,圧や気流,機械的あるいは化学的刺激を感受できる受容器が存在
  • 例:冷風を顔面に送風したりメントールを吸入すると呼吸困難感が緩和(三叉神経などを介す)


👹 おまけ
  • 英語の息切れ”dyspnea”はラテン語の”dyspnoea”やギリシャ語の”dyspnoia”に由来すると考えられ,紀元1世紀にAulus Cornelius Celsusによって執筆されたローマの医書「De Medicina」にすでに使われているそうです.
  • 息切れの機序は疾患によって大きく異なると考えられます.例えば心不全ならO2低下に対する末梢化学受容器の反応で,COPDなら胸壁(筋・腱)受容器およびCO2上昇による中枢化学受容器の反応が主と思われます.

(投稿者 川崎)

2021-10-19

Sv02の正常値は?

👺 まとめ
  • SvO2Venous oxygen saturation:静脈血酸素飽和度(基準値:75%
  • SaO2Arterial oxygen saturation:動脈血酸素飽和度(基準値:95~98%)
  • SpO2Peripheral oxygen saturation:経皮的動脈血酸素飽和度(基準値:95~98%)

※SvO2は中心静脈のScvO2や混合静脈(上大静脈+下大静脈+冠状静脈)のSmvO2に細分

  • SvO2は心拍出量やヘモグロビン濃度, 動脈血酸素飽和度(SaO2),酸素消費量で決定され,その低下は酸素供給量の不足あるいは酸素消費量の増大を意味します.スワンガンツカテーテルを用いて測定することができるので,ショック症例などではICUで連続モニターすることがあります.
  • ヒトの運動耐容能(つまり最高酸素摂取量=peak VO2)は,非アスリートで安静時の10倍程度です(オリンピック選手は20倍以上).心拍出量の増加上限は安静時の5倍程度(毎分5L ➜ 25L)なので,最大運動時に酸素は不足します.そこでSvO2が低下して酸素供給を増加させています.

(投稿者 川崎)

2021-06-29

🏃 短距離選手と心拍数の関係

  • 今の一流選手がどんな心拍数で本番に臨んでいるかは、調べてみたものの見つけられませんでした… ただ、心拍数とタイムの関係について、現役選手として興味深いと思ったものがいくつか文献にあったので紹介します。
  • 大学時代、当時エースだった先輩に「土橋、コンビニに行く用事あったら(某エナジードリンク)を買ってきてくれへんか?」とよく言われていました。 エナジードリンクで変わるのか?と聞いたことがありましたが、「カフェインがタイムに影響している気がする」と先輩が言っていたのを思い出します。 実際、カフェイン摂取により心拍数が上がることが良い結果に繋がっていたのかもしれませんね。
  • 前置きが長くなりましたが、色々調べていると「心拍数が大きく上昇した選手ほど、スタート時の膝関節伸展速度が増加し、タイムが短縮した」と報告したものがありました ➜ コチラ
  • 短距離(特にスタートダッシュ時)では、股関節や膝関節、足関節といった下肢の関節をいかに素早く、力強く操れるかが勝負のカギとなります。 この研究では、20mダッシュに条件を課して心理的なプレッシャーを与えることで心拍数を上げていたようですが、失敗できないという状況下で集中力を高まったという要因の他に、心拍数を上げることが関節運動の俊敏性向上と関連しているのではないかと思われます。
  • これだけでは、「プレッシャーで集中力が上がったからタイムも良くなった」という仮設を棄却することはできないので、さらなる文献 ➜ コチラ
  • 一流選手と城西大学の短距離選手(この大学も十分すごいですが)では、最大酸素摂取量に8%(体重あたりの最大酸素摂取量では5%)の差があったようです。 最大酸素摂取量は心拍数と直線的な関係があることが知られているので、やはり心拍数が高いほど最大酸素摂取量も多くなるはずで、一流選手の好タイムに心拍数が寄与している可能性を示唆します。100mは無酸素運動なのに、最大酸素摂取量が関係するというのも興味深いです。

今日自分で人体実験してきた結果と考察です
心拍数の測定は15秒×4、距離は60m、土用スパイクを履いています

心拍数 60mのタイム
52/分 7.77秒
68/分 7.69秒
80/分 7.75秒
116/分 7.63秒
140/分 7.64秒

  • 1人の練習でこれ以上心拍数を上げることは困難でした やはり心拍数が上がると短距離走のタイムは良くなりました。一方で、完全に比例するわけではなく個々によって頭打ちの値があり、僕の場合は予想以上にすぐでした …笑
  • 走ってみた感想としては、心拍数が上がるにつれ大きな筋肉(大腿二頭筋や四頭筋) が温まり動かしやすくなったので、心拍数上昇→筋温上昇もタイム向上の要因だと考えられます。

(投稿者 土橋)

2020-08-16

DFT: diastolic filling time 拡張期充満時間

😟 diastolic filling timeと聞いてちょっとピンと来なかったので・・・
  • 左室の拡張は左室弛緩と左室コンプライアンスに分けて考える.左室弛緩(relaxation)はアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate; ATP)を消費してカルシウムイオンを筋小胞体に再取り込むことで生じる能動的拡張である.その後の左室は受動的拡張で,左房−左室の圧較差および弛緩した心筋の柔軟性(コンプライアンス)で規定される.拡張期は等容弛緩期+急速流入期+緩徐流入期+心房収縮期で構成され,左室充満期は急速流入期+緩徐流入期+心房収縮期である(つまり心エコー図のE波の開始点〜A波の終了点).



(投稿者 川崎)

2020-04-12

利尿薬の作用部位

  1. ループ利尿薬 ➜ ヘンレ係蹄上行脚(NaとKの再吸収を抑制)
  2. サイアザイド系利尿薬 ➜ 遠位尿細管(Na-Cl輸送体に競合)
  3. 抗アルドステロン薬 ➜ 皮質集合管(Naチャネルの発現を阻害)
  4. トルバプタン ➜ 髄質集合管(バソプレシンV2受容体に拮抗)
🙆覚え方:ループして 点を取る


🔮 おまけ
  • SGLT2阻害薬糖尿病薬の一つ)➜ 近位尿細管のNa/グルコース共輸送体を阻害して尿糖排泄量を増加させて利尿
  • 炭酸脱水素酵素阻害薬(一般名アセタゾラミド/商品名ダイアモックス®など)➜ 近位尿細管でNa再吸収とH排泄を抑制して利尿
  • 浸透圧利尿薬(マンニトール・グリセリン・イソソルビドなど)➜ 糸球体でろ過され腎尿細管で再吸収されないため管腔内の浸透圧上昇により利尿

(投稿者 川崎)

2020-01-21

心機図

👉 定義
  • 心臓・大血管から発生し,かつ耳では聞こえない低周波の振動のうち,胸壁あるいは皮膚を介して認識しうる振動を,変換器(トランスデューサー)と増幅器を用いて波形として記録したもの 

「心疾患の視診・触診・聴診 心エコー・ドプラ所見との対比による新しい考え方」より

肥大型心筋症に特徴的な心機図(自験例)

😶 心尖拍動図の解説
  • 緩徐流入波(SF)に続く大きな心房収縮波(A) ➜ A波とⅣ音(S4)の一致に注目
  • 立ち上がり点(C)は左室収縮の開始点で概ね心電図R波の頂点付近と一致する
  • 駆出点(E)後に収縮後期の小隆起(end-systole shoulder, ESS)を経て急下降
  • 肥大型心筋症ではE〜ESSの隆起が持続する抬起性拍動を形成することが多い
  • 本例は大きなA波と抬起性拍動で二峰性心尖拍動(ダブルインパルス)を形成
  • 拡張早期最低点(O)の後に急速流入波(RF)が続く ➜ Ⅲ音があればRFに一致
  • 本例はⅡ音(S2)後に低調な振動を認めるがRFとは不一致でⅢ音と断定できず

👶 研修医時代の思い出
  • 超優秀だけどクールでほとんど何も教えてくれなかった先輩が珍しくアドバイス ➜ 「もっと心機図を勉強しろ」

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2019-05-29

名言?

  • フランク・スターリングの法則(Frank–Starling law)=最終弛緩時の心筋長に正比例して次の心筋収縮力が決定される現象
  • ドイツの医師・生理学者であるOtto Frank (1865–1944) と英国の生理学者Ernest Henry Starling (1866–1927)が発見

このスターリングの言葉
  • "The heart can only pump out what comes back to it."(心臓は返ってきた血液のみを駆出できる)

本質はついている(?)が,あまりにも当たり前すぎて・・・😶

(投稿者 川崎)

2019-05-11

心エコー図のプチ負荷アラカルト

Valsalva負荷
  • 前負荷の軽減で通常は左室流入血のE/Aは低下する.しかし同時に駆出血のTVIも大きく低下する場合,利尿薬単独で治療することは難しい.

座位負荷
  • 仰臥位から立位になると500-800mlの血液が胸腔内から下肢や腹部内臓系に移動する.よって臥位から座位になると一回拍出量は8%程度低下する.

下肢陽圧負荷
  • 人間の体内では総血液量の30%のみが有効血液量(stressed volume)として機能し,残りの70%は無効血液(unstressed volume)として主に腹部内臓の静脈系に蓄えられている.交感神経の興奮時には静脈血管のトーヌスが上昇し,最大800mlの血液がunstressed volumeからstressed volumeに瞬時に動員される(volume central shift).下肢陽圧負荷(leg positive pressure: LPP)でも同様のshiftを容易に誘発することができる.

期外収縮
  • 期外収縮後の代償性休止期に心筋細胞内へのカルシウムイオンの流入が増加する.その結果,筋小胞体からのカルシウムイオンの放出が増加するため,次の収縮で心収縮性が高まる(Post-extrasystolic potentiation: PESP).つまりPESPは心筋細胞内のカルシウムハンドリング機構が健全であることを示す.

シャント駆血
  • 駆血の有無による心拍出量の変化を計算すればシャント量とシャント率が計算できる.シャント量が2L/分以上あるいはシャント率が30%以上は高心拍出性心不全のリスクである.

自然呼吸
  • 収縮性心膜炎では,胸腔内圧の変化が心膜内に伝播しないことによる心室間相互作用の増強が生じる.これは吸気時の心室中隔の左室側への偏位(septal bounce)として観察できる.

参考)松本賢亮.心エコー2019;20:418-23 ⬅ とても面白くてオススメ

生理学の関連投稿:いずれも砂川賢二先生関連 👀

(投稿者 川崎)

2019-02-17

運動と呼吸

呼吸は1回呼気換気量(expiratory tidal volume: TV E)と呼吸数(respiratory rate: RR)で規定される

実例 健常者の症候限界性運動負荷時のTV E(縦軸)とRR(横軸)の変化

  • 運動を開始すると,1回呼気換気量(TV E)が増加(上図の赤矢印)
  • その後に呼吸数(RR)(上図の水色矢印)が増加し,限界に達する
  • 呼吸数の増加は嫌気性代謝で出現したアシドーシスの補正にも有用

😊 運動生理学をじっくり学びたい方 ➜ 心肺運動負荷CPX塾 へどうぞ

(投稿者 川崎)

2017-12-06

心拍数と心臓自律神経

心臓は自律神経で常にコントロールされている
  • 交感神経=アクセル ➜ 心拍数増加
  • 迷走神経(副交感神経)=ブレーキ ➜ 心拍数減少

運動に対する心臓自律神経の反応と心拍数
1.安静時:交感神経より迷走神経が優位(常にブレーキオン)
2.運動中:
  • 開始直後に迷走神経の速やかな活動低下 (ブレーキオフ)➜ 心拍数の速やかな上昇
  • 少し遅れて交感神経の活動亢進(アクセルオン) ➜ 心拍数のさらなる上昇
3.運動後:交感神経と迷走神経の活動が緩やかに定常状態へ回復


移植心では心臓自律神経のコントロールが消失する
  • 安静時の心拍数上昇(ブレーキオフがないため)
  • 運動開始後の心拍数上昇が遅延(副腎髄質から分泌されるアドレナリン依存)

Circulation. 1989;79:76-82/移植心では心拍数の揺らぎ消失にも注目)

※ただし移植心の心臓自律神経はゆっくりではあるが再生すると思われる(J Cardiol. 2012;59:220-4

(投稿者 川崎)