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2017-05-31

気管支喘息 Johnson分類

Grade0 聴取しない
Grade1 強制呼気時のみ聴取
Grade2 呼気時の聴取
Grade3 吸気時にも聴取
Grade4 呼吸音減弱

上記分類は治療反応性に有効と言われている
ex.) Johnson Grade3にメプチン吸入でGrade0になった
ジョンソン分類
(投稿者 吉武)

心房粗動&心房細動

心房細動と心房粗動は稀ならず共存する ⇒ 心房粗細動 Atrial fibrillo-flutter


  • P波が不明瞭かつRR間隔が絶対不整 ⇒ 心房細動
  • 下壁誘導(Ⅱ,Ⅲ,aVF)で間欠的に出現するのこぎり様波形 ⇒ 心房粗動

(投稿者 川崎)

腸間膜脂肪織炎 Mesenteric Panniculitis

腸間膜脂肪織に生じる慢性の非特異的炎症疾患
1924年に初めて報告 Jura V. Policlinico. 1924;31:575-581
  • 疫学:腹部CTの連続症例中0.16%,男性77%,平均61歳
  • 症状:無症状~発熱,腹痛,嘔気,嘔吐,腹部腫瘤,下血など
  • 原因:感染や自己免疫,悪性疾患,腹部手術の既往,外傷,IgG4関連?
  • 予後:比較的予後良好で多く症例は自然に改善
  • 画像:CTで血管周囲の脂肪織の濃度上昇“Fat ring Sign”


(投稿者 川崎)

2017-05-30

循環器もろもろ

  • ヒトでは1日に体重と同じ量のATP(アデノシン三リン酸)を生成(36ページ)
  • 房室ブロック症例では心房梗塞(Ta上昇)が記録できることがある(73ページ)
  • 心房粗動の脳梗塞発症リスクは心房細動の1/3程度と考えられる(121ページ)

近藤 武先生らの『横から診る心電図 Insight Learning of Electrocardiography 第4版』(非売品)より

(投稿者 川崎)

2017-05-29

フーバー徴候 Hoover's sign

吸気時に胸郭下部の肋間が内方に陥凹する現象で重症COPDで出現することがある
肺の過膨張に伴う横隔膜の可動性低下+呼吸補助筋の関与によって生じると考えられている


Symptôme de Hoover by freddy1787 より

米国の医師Charles Franklin Hoover(1865–1927)が報告(Am J Med Sci 1920;159:633-646)
彼は下肢麻痺に対する器質的疾患の有無を判定する方法も発見(同じくHoover's signでこちらの方が有名?)
フーバー徴候
(投稿者 川崎)

2017-05-28

PTEG ピーテグ

PTEGPercutaneous Trans-Esophageal Gastro-tubing,経皮経食道胃管挿入術のこと
経皮内視鏡的胃瘻造設術Percutaneous Endoscopic Gastrostomy (PEG) ペグ困難時に考慮

エコーと透視を用いて頸部食道に食道瘻を作成しチューブ先端を胃内に留置(内視鏡は不要)
胃切除術後,胃腹壁間に他臓器などが存在(腹水や腸管など),食道裂孔ヘルニア等でも可能

詳しくは 日本PTEG研究会 を参照してください

(投稿者 川崎)

2017-05-27

松下金曜会 「腰痛」

腰痛のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 安静時痛 ⇒ 悪性腫瘍,強直性脊髄炎
  2. 持続期間>1ヵ月,体重減少 ⇒ 悪性腫瘍
  3. 溢流性尿失禁を伴う尿閉,便失禁 ⇒ 馬尾症候群
  4. 疼痛のために夜間覚醒,背部の朝のこわばり ⇒ 強直性脊髄炎
  5. 座位で改善,ガニ股歩行 ⇒ 脊柱管狭窄
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

肝膿瘍の穿刺液のグラム染色と培養

グラム染色でムコイドに囲まれたグラム陰性桿菌 ⇒ クレブシエラ or 緑膿菌
肝膿瘍で嫌気条件も考慮 ⇒ 緑膿菌(好気性菌)よりクレブシエラ(通性嫌気性菌)の可能性

 本例は最終的に培養でムコイド産生型のクレブシエラであることが確認された

(投稿者 川崎)

2017-05-26

交感神経

ノルアドレナリン
視床下部CRH(副腎皮質刺激ホルモン)⇒交感神経末端から分泌される
α作用>β作用⇒血管収縮による血圧上昇

アドレナリン
視床下部CRH⇒交感神経末端ノルアドレナリン⇒副腎髄質から分泌される
α作用<β作用⇒心拍数と心収縮力を上昇

ノルアドレナリンは分泌後速やかに効果を発現する(1秒以内)
一方,アドレナリンは血流を介するタイムラグあり(1分以内)
交感神経 アルファ ベータ カテコラミン
(投稿者 川崎)

2017-05-25

STD潜伏期間

STD=Sexually Transmitted Diseases=性行為などによって感染する病気のこと
性(行為)感染症のことでSexually Transmitted InfectionsからSTIとも言う

潜伏期間の目安 疾例
1~2週間以内 クラミジア・淋病・トリコモナス・カンジタ・ヘルぺス
1~2ヵ月 梅毒・毛じらみ・コンジローマ・B型肝炎
1年以上 HIV

症状や治療は 宮川クリニック 性行為感染症(STD) を参照してください

おまけ
以前の病名”性病”とは1948年の性病予防法(2000年に廃止)に記載された疾患で,淋病・梅毒・軟性下疳・クラミジア感染症を意味した.

(投稿者 川崎)

Felty症候群

1924年にFeltyが,脾腫と白血球減少を伴う慢性関節炎を報告し,後にFelty症候群とよばれるようになった.関節リウマチ,白血球(好中球)減少,脾腫が三徴で,関節リウマチ発症後10年以上経過して発症することが多い.
好中球減少の原因については,T細胞異常による骨髄前駆細胞の抑制,顆粒球刺激因子活性の低下,ホルモンによる正常好中球産生の阻害,自己抗体による破壊,脾機能亢進などがさまざまな報告がある。
三徴のほかに,関節外症状である皮下結節・皮膚潰瘍・末梢神経障害などの血管炎様症状が多く認められる.他に,食道静脈瘤・門脈圧亢進症を併発することがある.リウマトイド因子陽性率は高いことが多い.血小板減少,抗核抗体陽性,低補体血症を認めることがあり,全身性エリテマトーデスとの鑑別が必要となる.

(投稿者 室谷)

第21回 松下バイリンガルカンファレンスより

テオフィリン theophylline 【θìːəfíliːn】 シィーアフィリィーン 音声はコチラ

  • その症状はどれくらいつづきますか? ⇒ How long does the symptom last?
  • 私の知っている範囲では ⇒ To my knowledge,

(投稿者 川崎)

2017-05-24

筋性防御 vs 筋硬直

筋性防御 (muscular defense)
 痛みのため患者が意識的に腹筋に力をいれて防御している状態

筋硬直 (muscle rigidity)
 腹膜に及ぶ炎症のため患者の意思にかかわらず腹筋が収縮している状態

ポイント
 ・両者の鑑別が難しい時 ⇒ リラックスさせる/会話で話題を逸らす/少し時間を空けて再検
 ・腹膜炎を示唆する身体所見としての臨床的意義 ⇒ もちろん筋硬直筋性防御より重要

(投稿者 川崎)

左脚ブロックの心エコー図

左脚ブロックでは前壁中隔~心尖部に壁運動異常(収縮低下や非同期収縮など)が出現しやすい
虚血性心疾患に関連した左室壁運動異常との鑑別が難しいため冠動脈造影や冠動脈CTが必要



心エコー図の基本動画は「松下心エコー塾の基本編(正常20例/異常20例)」で確認できます

(投稿者 川崎)

GAS咽頭炎

GAS=Group A Streptococcus=A群(β溶血性)連鎖球菌
復習 溶連菌といえば通常はこのGASを意味することが多い

GAS咽頭炎
  • 成人の咽頭炎の5~15%,子供の咽頭炎の15~30%
  • 抗菌薬で48時間以内に軽快,投与しなくても数日で軽快
  • ペニシリン系が第一選択(GASに対する耐性はほぼなし)

GAS咽頭炎とEBウイルスによる伝染性単核球症は3~30%の割合で重複感染する
 → この時はペニシリン系は避ける(高率に皮疹が生じるため)

「Dr.岡田の知っ得レクチャー/Dr.宮城の白熱カンファレンス」より

(投稿者 川崎)

2017-05-23

Earlobe crease 耳朶の皺

耳朶(みみたぶ)を斜め後方約45度に走る皺のこと ⇒ 虚血性心疾患との関連が報告されている


両側に耳朶の皺を認めた場合の冠動脈疾患に対する診断能(415例での検討)
 ⇒ 感度51.3%,特異度84.8%,陽性適中率89.4%,陰性適中率41.2%

アメリカの呼吸器内科医Frankが(初めて?)報告したためフランク徴候とも言われる
Frank ST. Aural sign of coronary-artery disease. N Engl J Med 1973;289:327-328
 ※aural 【ˈɔːrəl】 耳の,聴覚の

(投稿者 川崎)

2017-05-22

PSVTに対する頸動脈洞マッサージ

頸動脈洞マッサージは,眼球圧迫と異なり薬物治療前に試みてもよいようです
血管雑音がないことを確認して右側から開始(有効率は15%)→ 無効なら左側


トレンデレンブルグ体位
動画(英語ですが…) ⇒ Carotid Sinus Massage 2:10~2:30位が実際の手技

(投稿者 川崎)

2017-05-21

松下金曜会 「膣炎」

膣炎のレッドフラッグと考慮すること
  1. 下腹部痛 ⇒ 骨盤内炎症性疾患,尿路感染症
  2. 出血 ⇒ 外傷,悪性疾患,異物
  3. めまい,発疹,筋肉痛,錯乱,嘔吐 ⇒ トキシックショック症候群
  4. 悪臭または汚物の混入 ⇒ 直腸膣瘻
  5. 膣のひりひりする痛みと分泌物 ⇒ ヘルペス感染症,ベーチェット症候群
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-05-20

グラム染色クイズ

尿路系感染が疑われる症例の尿グラム染色です.診断は?

ポイント
 ・腸球菌は肺炎球菌と一見似ている.喀痰なら肺炎球菌,尿なら腸球菌と考えたい
 ・本例のグラム陰性桿菌は腸内細菌としては少し細く,長さや太さに多様性が目立つ

(投稿者 川崎)

2017-05-19

腎性低尿酸血症

尿酸排泄の亢進に起因した低尿酸血症(概ね2mg/dl以下)を生じた病態
  • 原因 URAT1あるいはGLUT9などの遺伝子異常
  • 機序 近位尿細管の尿酸再吸収輸送体がうまく働かないため
  • 疫学 頻度は不明(数百人に1人?)で男女差はない
  • 症状 運動後の急性腎不全,尿路結石による疼痛や血尿など
  • 治療 根本的な治療方法はない(対症療法のみ)
  • 指導 運動前の水分摂取や感冒時の運動回避など

若い健常者が運動後に急性腎不全を呈したら思い出したい
典型的な症例報告 ⇒ 急性腎不全を合併した家族性腎性低尿酸血症の1例.プリン・ピリミジン代謝 1990;14:8-14

(投稿者 川崎)

2017-05-17

解釈モデル

症状に対して考えられる疾患名や治療法,予想される経過や予後などのこと
もちろん医師サイドからの解釈モデルと患者サイドからの解釈モデルが存在する
  • 例1 疲れたときに出現する頭痛 ⇒ 本人「脳出血が心配」 vs  医師「単なる筋緊張性頭痛」
  • 例2 長引く咳嗽 ⇒ 本人「肺癌が心配(知人が肺癌になった)」 vs  医師「感染後咳嗽」

両者の解釈モデルが大きく異なる時は患者の医療に対する満足度が低下する
よって医療面接では患者の解釈モデルを意識・確認することが重要になってくる

 ⇒ 外来診療における患者解釈モデルの質的検討.日本プライマリ・ケア連合学会誌 2013;36:88-92

(投稿者 川崎)

2017-05-16

Thumb Sign

頸部単純写真側面で、喉頭蓋が分厚くなり、親指のように見えること。
急性喉頭蓋炎で重要な所見。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1009990#t=article

有用性: ☆☆☆☆(使えるはずだが使われていないことも多い)
所見としてははっきり出るので画像さえ撮像すれば診断はしやすい。
教科書では、急性喉頭蓋炎の診断は頸部単純写真でケリをつけるべきで、臥位にして窒息の危険があるCT撮像は避けよとの記載もあるものがあるが、あまり広まっていないような・・・

(投稿者 小谷)

抗菌薬投与中に発熱と下痢を認めたら…

便の迅速検査で陽性であったためクロストリジウム・ディフィシル腸炎と診断した
C=コントロール/T=毒素/G=クロストリジウム・ディフィシルに対する抗原
TよりGの方が高感度であるため,T陰性G陽性なら便培後に再検査してT陽性を確認
CD腸炎では腸内細菌が減少するため培養ではあまり生えない(左下図)
一方,CD腸炎以外の病態では様々な菌が培養されてくる(右下の図)

(投稿者 川崎)

2017-05-15

Klebsiella oxytoca クレブシエラ・オキシトカ

抗菌薬関連出血性大腸炎でClostridium difficile (CD)を認めない場合に考慮すべき菌

抗菌薬関連大腸炎が疑われCD陰性であった症例の検討(N Engl J Med 2006;355:2418-2426
  • 22例中6例に出血性大腸炎の診断を支持する大腸内視鏡検査所見
  • この6例の便培養で5例にK. oxytoca陽性(他の共通腸内病原菌なし)
  • 大腸炎発症前に5例はペニシリン系の抗菌薬が投与されていた
  • 分離された5例のK. oxytoca株はすべて細胞毒素を産生していた

K. oxytocaは健常被験者の1.6%でも検出された.しかし本研究ではラットによる動物実験も行われ,クレブシエラ・オキシトカが出血性大腸炎の原因菌かつその発症にアモキシシリン・クラブラン酸の投与が関連していること(コッホの原則)が証明されている.

(投稿者 川崎)

腸管出血性大腸菌

基本的に、感染性腸炎に対しては使用しても排菌期間の短縮は認められず、むしろ保菌率を上昇させる恐れもあることから抗生剤の使用はしないことになっている。
しかし、O-157のような腸管出血性大腸菌では、早期に抗菌薬治療を開始したほうがHUSへの移行率は有意に低いとの厚生労働省の報告もあるが、米国では抗生剤を使用することによりHUSが増悪したり、また抗生剤を使用することで経過に有意差はないとの報告もあり、抗菌薬の使用に関しては懐疑的である。

清田らによると、発症後3日を越えると菌量が増え、抗菌薬使用時に放出される毒素が多いためHUSへ移行する可能性は高いとされており、適切な抗菌薬の使用は発症後3日以内にキノロン系またはホスホマイシンを5日間程度使用することが進められるとされている。
また、感染症ガイドライン上では抗菌薬の使用は主治医判断となっている。

発症後3日以内であれば抗菌薬の使用も可能
発症後4日以上であれば抗菌薬は使用しない
という風にしてもいいかもしれない。

詳しくは→http://journal.kansensho.or.jp/kansensho/0850060611.pdf
厚生労働省の指診は→http://www1.mhlw.go.jp/o-157/manual.html

(記載 吉武)

最近知ったコト

  • 霧(きり)がかかったように見える状態”霧視”は”むし”と読む
  • プレドニンpredonineの一般名はプレドニゾロンprednisolone
  • SAS睡眠時無呼吸症候群の症状の一つに起床時の頭痛
  • 甲状腺機能低下症ではアキレス腱反射の弛緩相の遅延
  • アメーバ性肝膿瘍の特徴に右葉・孤発性・巨大病変がある

(投稿者 川崎)

2017-05-14

ガワーズ徴候 Gowers' sign

起立時に膝に手をついて自分の体をよじ登るような行動
腰帯筋群に加えて上肢筋力および下肢筋力の低下が原因
登攀性起立とも言われ筋ジストロフィーや多発性筋炎などで出現
(Public Domain)

英国の神経学者Sir William Richard Gowersが1879年に報告
ガワーズは膝蓋腱反射や血管迷走神経性反射も発見 ⇒ 生涯をまとめたビデオ
(Public Domain)

(投稿者 川崎)

片麻痺の読み方

へんまひ 〇
かたまひ X

神経学会用語集改訂第2版でも「へんまひ」と読むことが指定されている
接頭語hemi-を偏(へん)と訳し,漢字の簡略化で片を充てた歴史がある

参考:平山惠造著.神経症候学 改訂第二版 Ⅱ 63ページ 「片麻痺」の読み方

(投稿者 川崎)

2017-05-13

クロストリジウム・ディフィシル(CD)感染症の薬物治療

軽症~中等度ではメトロニダゾール、重症ではバンコマイシン(VCM)内服。
VCMの静注では腸管に移行しないので不適。治療期間は10~14日間。 

処方例)
①フラジール250mg錠  4錠分4 毎食後と寝る前
または
フラジール250mg錠  6錠分3 毎食後
②バンコマイシン塩酸塩散0.5g  1瓶 分4 毎食後と寝る前
(添付文書には1回0.125~0.5gと記載)

参照:サンフォード感染症治療ガイド

VCM散は極めて苦味のため、水に溶解し、単シロップを付加した水薬として服用。
フラジール錠は1錠薬価35.5円。VCMは1瓶の薬価が1278.3円。
14日間の使用で、薬剤費は約2000円と約18000円。

(投稿者 王)

腹痛女性

腹痛で来院した中年女性の腟分泌液のグラム染色(強拡大,X1000)
好中球に貪食されたグラム陽性の連鎖球菌のみを認める
本例は最終的にA群溶連菌による子宮感染症および敗血症と診断された



正常の腟内は概ねラクトバチルスのみが存在している(下図は正常例)
ラクトバチルスは乳酸菌の一種で乳酸を産生して腟内を強い酸性に保つ
ヨーグルトやチーズ,ビールを作る時に用いられる細菌としても知られている

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「消化不良」

消化不良のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 体重減少・出血・貧血 ⇒ 消化管悪性疾患,虚血性大腸炎,胃潰瘍または十二指腸潰瘍
  2. 嚥下障害 ⇒ 胃癌または食道癌
  3. 男性・年齢が45歳超 ⇒ 胃癌または食道癌,消化管悪性疾患
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-05-12

Lightの基準

Lightの基準:以下の3項目のうち少なくとも1項目を満たせば滲出性、いずれも満たさなければ漏出性と判断する。
  • 胸水TP/血清TP>0.5
  • 胸水LDH/血清LDH>0.6
  • 胸水LDHが血清LDH上限値の2/3以上

(投稿者 大槻)

血液の体内分布

体内の血液分布は動脈静脈ではない
  1. 静脈 64%
  2. 心臓と肺 16%
  3. 動脈 13%
  4. 細動脈と毛細血管 7%
静脈は最大の血液プールで循環血液量を調整している

参考 磯谷彰宏.心エコー2017;18:470/ガイトン生理学.11版,2010

(投稿者 川崎)

2017-05-11

レパーサ皮下注(エボロクマブ)について

本剤は、プロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に対する遺伝子組換えヒトIgG2モノクローナル抗体製剤で、PCSK9蛋白を阻害することで血中LDL-Cを低下させる、新規作用機序の高LDLコレステロール血症治療薬である。

高額であり、市場規模の極めて大きな薬剤であるため、国民皆保険維持の観点から、最適使用を推進し薬剤に係る給付の適正化を図る目的で、厚生労働省より最適使用推進ガイドラインが策定されている。
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/p-drugs/0028.html

興味深いことに、このガイドラインでは、施設要件として、下記を満たす医師が所属していることが挙げられている。
医師免許取得後、満6年以上の臨床研修歴を有すること。また、6年のうち3年以上は循環器診療又は動脈硬化学に関する臨床研修歴を有すること。

エピペンやノルスパンテープ、ADPKDに対するサムスカなど、処方の際にe-learningが必要な薬剤はあったが、医師免許取得後の研修年数等が条件となるのは初めてのことである。
現在ガイドラインが策定されている下記4薬剤については同様に条件がある。
薬効 薬品名 一般名 薬価
免疫チェックポイント阻害薬 オプジーボ点滴静注 ニボルマブ 20mg:75,100円
100mg:364,925円
キイトルーダ点滴静注 ペムブロリズマブ 20mg注:84,488円
100mg注:410,541円
PCSK9阻害薬 レパーサ皮下注 エボロクマブ 140mg注:22,948円
プラルエント皮下注 アリロクマブ 75mg注:22,948円
150mg注:44,481円

(投稿者 小森)

Stridor ストライダー

高調音からなる吸気性喘鳴で,気道狭窄を示唆する
クループや喉頭蓋炎,気道異物,アレルギーなどで出現

(Inspiratory stridor at rest - severe croup by bindycohenより)

ストライダーの聴取は緊急事態 ⇒ 気管挿管を含めた気道確保の準備を始める

(投稿者 川崎)

長距離走と横紋筋融解

マラソンランナー15名の平均CK
スタート前 161 U/l ⇒ 42.195 kmを走破して24時間後に採血 3,424 U/l
 (2時間半以内の完走者では4,433 U/l, 2時間半超では1,432 U/l)

Creatine kinase elevations in marathon runners: relationship to training and competition. Yale J Biol Med. 1980;53:275–279

ウルトラマラソンランナー15名の平均CK
36時間以内に246km走破 ゴール15分以内に採血 43,762 U/l
 (ゴールタイムとCK値に有意な相関なし)

Exertional Rhabdomyolysis during a 246-km continuous runningrace. Med Sci Sports Exerc. 2006;38:1054-1057

(投稿者 川崎)

2017-05-10

グラム染色クイズ

肺炎症例の喀痰の強拡大(1000倍)です.診断は?

本疾患の診断は多菌種像を認めるだけでは不十分.上皮に付着する多菌種は,喀痰の採取過程で採取された口腔内の常在菌を観察している可能性がある.上皮に付着しない多菌種が好中球に貪食されている像を探しだすこと.喀痰の肉眼的評価法 Miller & Jones分類 も参考にしたい.

(投稿者 川崎)

JA: Jolt accentuation

jolt 【dʒóult】 動き・振動/accentuation 【əkséntʃuèitʃən】 強調・力説
旭中央病院の内原先生が提案した髄膜炎に関連する身体所見のひとつ
 Jolt accentuation of headache: the most sensitive sign of CSF pleocytosis. Headache. 1991;31:167-171

1秒間に2-3回の周期で頸を横に振る(自動的あるいは他動的) ⇒ 頭痛が増悪すれば陽性

髄膜炎が疑われた531例での検討(Am J Emerg Med. 2013;31:1601–1604
 ⇒ 髄膜炎に対するJA陽性の感度63.9% (51.9%-76.0%),特異度43.2% (34.7%-51.6%)

(投稿者 川崎)

2017-05-09

Pencil sign

頸部単純写真正面像で、周囲浮腫により気管の「肩」の部分がなだらかになり、鉛筆のように細くなること。
http://emedicine.medscape.com/article/962972-overview

個人的な独断と偏見による所見の有用性: ☆(使い道なし~ほぼ使えない)
現在は耳鼻科的に診察可能なので、そもそも頸部正面像の単純写真を撮る機会も無い。
また、微妙な判断を要する所見であり見慣れないと判断も難しい(見慣れないと異常のない患者さんでも全員が pencil に見えてしまいがち)。

(投稿者 小谷)

レミエール症候群

感染症に関連して生じた血栓性頸静脈炎で英語表記はLemierre's syndrome
命名はフランス細菌学者Andre Lemierreによる20例の報告から(Lancet. 1936;227:701–703
  • 症状 感冒症状後に頸部の圧痛や腫脹,流涎,開口障害,呼吸困難など
  • 疫学 100万人に数名未満,10~20代の健常者に多い,男:女=2:1
  • 原因 嫌気性菌が多い(特に上気道の常在菌であるフソバクテリアム)
  • 検査 血液培養(嫌気培養が必須),頭頸部CT(造影)など
  • 治療 抗菌薬,抗凝固薬(ヘパリン・ワルファリン)他
  • 予後 診断が遅れると不良(死亡率10%)

典型例 ⇒ Lemierre 症候群の1 例.日呼吸会誌 2011;49:449-453

(投稿者 川崎)

Ludwigアンギーナ

Ludwig’s angina=ルートヴィッヒズ・アンジャイナ=口底蜂窩織炎
口(腔)底蜂巣炎が頸部の広範囲に広がり咽頭狭窄などを伴った重篤な病態
ドイツの外科医Wilhelm Friedrich von Ludwigが1836年に初めて報告

  • 原因 扁桃炎や齲歯,歯槽骨炎,顎下腺管内唾石,外傷創感染など
  • 症状 口底部や頸部の腫脹・疼痛,発熱,開口障害,呼吸困難感など
  • 治療 抗菌薬,外科的ドレナージ,抜歯+全身管理などの対症療法
  • 予後 死亡率は数%(無治療なら50%以上)

典型例 ⇒ 診断の遅れから治療に難渋したLudwig’s angina の1例.JJAAM 2008;19:168-173

(投稿者 川崎)

2017-05-08

CVA叩打痛

CVA=costovertebral angle=肋骨脊椎角=第12肋骨と脊椎が作る三角部
CVA叩打痛があるときは,腎盂腎炎や腎梗塞,腎結石,腎外傷などを疑う


(Costovertebral Angle Tenderness by Fast Physicalより)

陰性というには意外に強めに叩打する必要あり(軽めから始めて段階的な強化でOK)
ビデオと異なり,手のひらを肋骨脊椎角に当て拳で叩打が本邦ではより一般的?

トリビア
圧痛tendernessでなくて叩打痛knoking painであるが,英語ではCVA tenderness
別名はMurphy's punch sign, Pasternacki's sign, or Goldflam's sign (Wikiより

(投稿者 川崎)

気管短縮:short trachea

胸骨上縁から甲状軟骨下縁までの距離が短縮している状態(正常は3~4横指)
肺の過膨張による気管の肺側牽引が原因で,COPD患者で認めることがある

COPDに関連したその他の所見は,胸鎖乳突筋の発達陥没呼吸(重症例)

(投稿者 川崎)

2017-05-07

グラム染色クイズ

術後に肺炎を生じた症例の喀痰のグラム染色

好中球に貪食されたグラム陽性桿菌を認める
一部の細菌がV字型を呈しコリネバクテリウムを疑った⇒培養で最終的に確認された

(投稿者 川崎)

2017-05-06

モニターの呼吸回数 RR

モニターの最下段に呼吸関連指標が白色で表示(呼吸回数RRと呼吸曲線)
これは心電図用に装着した電極間の電気抵抗の変化から算出されています

ただし呼吸回数を信じる前に呼吸曲線にも要注目(これは酸素飽和度でも同じ
モニターの呼吸回数RRは体動やモニターの装着具合によるアーチファクトが大

(投稿者 川崎)

2017-05-05

カポジ水痘様湿疹

既存の皮膚疾患にウイルス感染が生じて急速に拡大した病態
  • 原因ウイルス 単純ヘルペス(最多),コクサッキーなど
  • 基礎疾患 アトピー性皮膚炎(最多),湿疹,熱傷など
  • 診断 視診,Tzanckテスト(水疱内にウィルス性巨細胞)
  • 治療 抗ウイルス薬の内服・点滴,必要に応じて抗菌薬の全身投与

参照:カポジ水痘様発疹症 - 日本臨床皮膚科医会-ひふの病気

(投稿者 川崎)

2017-05-04

往復雑音

収縮期雑音と拡張期雑音を同時に認める状態
別名はto-and-fro murmurやブランコ雑音
連続雑音との違い ⇒ 往復雑音はⅡ音の直前に一瞬息継ぎが入る

例) 大動脈弁狭窄(収縮期)と大動脈弁逆流(拡張期)



(投稿者 川崎)

2017-05-03

Crackleの分類

呼吸に関連した音=呼吸音+副雑音
 ⇒ 副雑音=ラ音+胸膜摩擦音(+α)
  ⇒ ラ音=断続性ラ音+連続性ラ音
     ・断続性ラ音=crackle=fine crackle+coarse crackle
     ・連続性ラ音=stridor+wheeze+rhonchi

fine crackleとcoarse crackleの鑑別が容易でない症例が意外に多い
よってcrackleの聴取時には”水泡音 vs 捻髪音”に加えて出現時期にも注目

Crackleを聴取する時期 病変の部位 疾患の具体例
late inspiratory crackles 間質 間質性肺炎
holo inspiratory crackles 肺胞 心不全,細菌性肺炎
early to mid inspiratory crackles 気道~気管支 気管支炎

(投稿者 川崎)

2017-05-02

アスピリン喘息(NSAIDs不耐症)における使用可能薬剤

【安全】
・葛根湯、地竜
・ペンタゾシン、モルヒネ

【ほぼ安全】(COX-1阻害作用がほとんど無い)
・アセトアミノフェン*、1回300mg以下
・塩基性消炎剤(ソランタール*など)
・COX-2阻害の選択性の高いNSAIDs(セレコックス*、ハイペン*、モービック*など)
・PL配合顆粒*

【やや危険】
・アセトアミノフェン*、1回500mg以上
・NSAIDs塗布薬*、貼布薬*、点眼薬*

【危険】
・COX-1阻害作用の強いNSAIDs全般*

*添付文書上、アスピリン喘息には禁忌

参考:http://www.jaanet.org/pdf_files/kanto10.pdf(日本アレルギー協会)http://www.pmda.go.jp/files/000144919.pdf(医薬品医療機器総合機構)

(投稿者 小森)

閉塞性肥大型心筋症に対するペースメーカ治療

日本循環器学会の肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)より抜粋


単独治療としては一応クラスⅡに分類されているが,その有用性は不明であり今日では施行されることは稀

(投稿者 川崎)

グラム染色

肺炎で来院した症例の喀痰と血培のグラム染色


喀痰 グラム陽性双球菌が多数(周囲に莢膜あり)⇒肺炎球菌性肺炎
血培 喀痰と同様にグラム陽性双球菌が存在⇒肺炎球菌による敗血症

 おまけ 
肺炎球菌は痰培や血培の陽性率が必ずしも高くない(自己融解酵素オートリシンを放出するため)
本例の血培で一見グラム陰性の双球菌に見える細菌は,死滅した肺炎球菌と考えられる

(投稿者 川崎)

連鎖球菌 Streptococcus

1.α溶血性(不完全溶血)
  • 肺炎球菌S. pneumoniae or Pneumococcus)⇒ 肺炎,急性中耳炎,敗血症(←壁貫通能力が高いため)
  • 緑色連鎖球菌(S. viridans)⇒口腔内に常在する弱毒菌で感染性心内膜炎を引き起こすことがある

2.β溶血性(完全溶血) ← 比較的急性発症(胸膜炎による突然の胸痛など)
  • A群β溶血性レンサ球菌 ⇒ 咽頭扁桃炎,猩紅熱,溶連菌感染後急性糸球体腎炎,リウマチ熱,壊死性筋膜炎など(溶連菌といえば通常はこのA群βをさす)
  • B群β溶血性レンサ球菌 ⇒ 膣の常在菌であるため経腟分娩による新生児の細菌性髄膜炎や敗血症

3.γ溶血(非溶血) 
  • 口腔内の常在菌で臨床上の重要性には乏しい

(投稿者 川崎)

2017-05-01

侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)

定義:
Streptococcus pneumoniae による侵襲性感染症として、本菌が髄液又は血液などの無菌部位から検出された感染症とする。
→7日以内の届出義務あり。

DICになり急性感染性電撃性紫斑病に陥るケースもあり注意が必要。
DICになった場合は適切なDIC加療が必要です。

成人のリスクfactor:DM、脾摘後、免疫不全、心疾患、肝疾患、腎疾患、悪性腫瘍術後など

高リスク者には積極的に肺炎球菌vaccine接種を。vaccineによるIPDのカバー率は85%。

(投稿者 國枝)

NYHA vs Hugh Jones

NYHA (New York Heart Association)=心不全の重症度分類
Hugh Jones(ヒュー・ジョーンズ)=呼吸器疾患の重症度分類

NYHA分類 Hugh Jones分類
Ⅰ度 心疾患はあるが活動に制限なし 同年齢の健常者と同様の労作が可能
Ⅱ度 日常生活で身体活動が軽度制限 健常者と同じペースで坂や階段の昇降はできない
Ⅲ度 日常生活で身体活動の高度制限 自分のペースなら1マイル(1.6km)以上歩行可
Ⅳ度 あらゆる身体活動が制限 50ヤード(46m)の歩行に休憩を要する
Ⅴ度 会話や衣服の着脱にも息切れ/外出困難
おまけ NYHAⅡ度はⅡs度(身体活動に軽度制限)とⅡm度(身体活動に中等度制限)に細分することがある


(投稿者 川崎)

ショック症例のS-H-O-C-K

Dr.岡田の知っ得レクチャー/Dr.宮城の白熱カンファレンスより
  • S = septic, shinkei (敗血症性,神経原性)
  • H = hypoboremic (低容量性)
  • O = obstructive (閉塞性)
  • C = cardiogenic (心原生)
  • K = anaphylactic, endcrine (アナフィラキシー性,内分泌性)

ショックの基本4病態
  1. 低容量性 (出血,脱水など)
  2. 心原性 (不整脈,収縮不全,急性弁疾患など)
  3. 閉塞性 (心タンポナーデ,肺塞栓症,緊張性気胸など)
  4. 血液分布異常性 (敗血症,アナフィラキシー,神経疾患,内分泌疾患など)

(投稿者 川崎)