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2023-01-31

CRAB symptoms クラブ症状

👀 多発性骨髄腫の典型的所見
  • HyperCalcemia(高カルシウム血症)
  • Renal insufficiency(腎障害)
  • Anemia(貧血)
  • Bone lesions(骨病変)

👂 CRAB症状の頻度・意義
  • 米国の癌研究所を受診した多発性骨髄腫170例の後ろ向き解析:74%がCRAB症状,20%が非CRAB症状,6%が混在(つまりCRAB症状+非CRAB症状)
  • CRAB以外の症状は頻度順に神経障害,髄外侵襲,過剰粘液症候群,アミロイドーシス,出血凝固障害,全身症状(例:発熱や体重減少)など
  • CRAB症状を呈する患者の生存率と非CRAB症状の患者の生存率との間に有意な差はなかった(両群のKaplan-Meier推定値に有意差は検出されず)


💁 多発性骨髄腫に関する過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-30

超正常のeGFR?

外来での会話 💨
  • 担当医師 「採血には特に問題はないですよ」
  • 中年患者 「先生,腎臓は大丈夫でしたか?」
  • 担当医師 「ええ,全く問題ないと思います」
  • 中年患者 「どの項目で分かるんですか?」
  • 担当医師 「このeGFRが100超ってすごいですよ」
  • 中年患者 「よかった 😊 糖尿かも言われたので...」

💣 eGFR(推算糸球体濾過量)
  • eGFR(ml/分/1.73 m2)が90以上なら正常〜高値,60〜89なら正常〜軽度低下
  • ただし血清Crを用いて算出するため筋肉量低下(長期臥床)で過大評価に注意
  • また糖尿病初期では高血糖で尿量が増加してeGFRが一時的に上昇(過剰ろ過
  • 血糖コントロール後が本来の値(放置で顕性アルブミン尿の出現やeGFR低下)


💁 腎機能の過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-29

心臓アカラシア Achalasia cardia

  • 食道アカラシア(または単にアカラシア)は英名で esophageal achalasia または achalasia と記載されます.しかし稀ならず achalasia cardiacardiac achalasia とも表記されます.「どうして心臓なんだろう?」と思って調べていると以下の歴史に辿り着きました.
  • Google Scholar では”心臓アカラシア”や”アカラシア”という用語は検出されません.おそらく英名が変更された後に日本に疾患観念が広まったためと(勝手に)推測します.実際に1950年までに限定した Google Scholar 検索では用語”アカラシア”の論文ヒットは極僅かです.

🐞 アカラシアの歴史Esophageal achalasia@Wiki より)
  • 1672年に英国人医師トーマス・ウィリス卿がアカラシアの病態を初めて記述
  • 1881年にポーランド系オーストリア人の医師ヨハン・フライヘア・フォン・ミクリッツ・ラデッキがこの病気を心臓痙攣と記載
  • 1929年に医師のハルトとレイクが、この病態は下部食道括約筋が弛緩しないことが原因であることを突き止め,弛緩不能を意味するアカラシアと命名
  • 1937年にレンドラムがハルトとレイクの結論を支持し,心臓痙攣よりアカラシアという言葉を広めた

💁 命名の過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-28

Emergency Heart Failure Mortality Risk Grade (EHMRG)

💘 急性心不全の重症度スコア
  • カナダでの12,591名の急性心不全のデータをもとに提唱された臨床スコア(Ann Intern Med 2012;156:767-75).年齢、収縮期血圧、心拍数、酸素飽和度、血清Cr値、K値、救急車搬送・トロポニン上昇・活動性悪性腫瘍・利尿薬内服の有無により算出され(MED+CALCで計算可能:ココ)、7日以内の死亡率の予測に有用    

7日後の予後を予測するオリジナルのEHMRG(EHMRG7)に心電図のST低下を加えた指標EHMRG30-STは30日後の予後を予測することも報告されているも提唱されている

🉐 心不全に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-27

APS vs APTT:不思議な関係

APS=anti-phospholipid antibody syndrome(抗リン脂質抗体症候群)
APTT=activated partial thromboplastin time(活性化部分トロンボプラスチン時間)
  • APS臨床は静脈系+動脈系の血栓症であるが,検査ではAPTTが延長する

実はループスアンチコアグラント(LA)は in vitro のリン脂質依存性凝固反応(APTTなど)を阻害する免疫グロブリンと定義されている(血栓止血誌 2019;30:23-7).
  • APTTが延長するにも関わらず血栓症を発症する機序として,①リン脂質依存性凝固反応を抑制的に制御,②β2‐GPIを阻害,③プロテインCの活性化を阻害,④血管内皮細胞上のトロンボモジュリンやヘパラン硫酸を阻害ないし障害,⑤凝固抑制に働く血管内皮細胞からのプロスタサイクリン産生を抑制,⑥血管内皮細胞からのフォンウィルブランド(von Willebrand)因子やプラスミノゲンアクティベータインヒビターの産生放出を増加,などが提唱されている(難病情報センター).

(投稿者 川崎)

2023-01-26

🎯 今週の一枚

肺炎のため総合診療科に入院中の症例:心不全の合併が疑われたため朝に訪床した

🌅 現場実況
  • 患者さんがベットに腰掛けている状態でお話を伺い始めた.対側(患者さんの左側)にある大きな窓から入ってくる朝日がとても眩しかった.
  • ほどなくして,頸部の影が上下に拍動していることに気がついた(動画前半の矢印).もちろん内頸静脈の拍動で中心静脈圧は相当に上昇
  • 今度は逆向きに座り直してもらった(動画後半).眩しさはなくなったが,頸静脈の拍動が不明瞭になってしまった(よくみるとあるのだが...)
  • ちなみに右耳朶皺(フランク徴候/Frank's sign)を認める.冠動脈造影は未施行であったが安静心筋シンチグラフィからは虚血が疑われた.

🌇 独り言
  • ペンライトを用いると頸静脈拍動の評価が容易になることは以前から知られています(自験例).部屋の灯を消さなくてもペンライト点灯のみで十分なコントラストが得られることは覚えておいて損はないとおもいます.
  • 個人的にはペンライトを携行していないため,頸静脈拍動の評価目的に用いることほとんどありません.しかし本例のように,太陽光や部屋のライトでできる自然の影をうまく使えないかと常に意識はしています.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-01-25

🏆 論文

  • 当院の初期研修医であった梶先生が循環器内科で経験した症例が出版されました
  • 転落後の胸痛で当院のERに搬入 ➜ 右側気胸+前壁心筋梗塞と診断して順に治療
  • 本例のポイントは気胸は外傷性ですが心筋梗塞は外傷によるストレス誘発の疑い


😀 おまけ
  • 本例の主訴は胸痛と呼吸困難感でした.もちろんともに外傷性気胸で説明は可能です.ER搬入時に心電図も記録していますが,大きな問題はないと判断しています(ただし後から見返すと僅かにST上昇?)
  • 胸痛が持続するため心電図を再検(受傷後120分後/来院40分後)➜ 全胸部誘導で明瞭なST上昇が判明しました.胸腔トロッカーを挿入後に緊急カテーテル治療(ヘパリンや抗血小板薬は通常通り投与)
  • 精神的ストレスが心筋梗塞を誘発するの機序として,血行動態の過負荷・自律神経機能障害・神経内分泌活性化・炎症反応・血小板活性化などによる冠動脈プラークの破壊と血栓形成が提唱されています(

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-01-24

筋腎代謝症候群 MNMS: Myonephropathic metabolic syndrome

  • 急性動脈閉塞(特に下肢全体)に関連して発症する重篤な病態
  • 病態は横紋筋融解壊死に起因する腎障害や全身の代謝障害など
  • アメリカの外科医 Haimovici が提唱(Surgery 1960;47:739-47
  • 虚血再灌流症候群(ischemia-reperfusion syndrome)とも言う
  • 阻血をきたした患肢は著明に腫脹して患者は強い疼痛を訴える
  • 高ミオグロビン血症・尿症,高K血症,代謝性アシドーシス他
  • 閉塞動脈の血流を再開した直後に発症する例が多いことが特徴


(投稿者 川崎)

2023-01-23

Anthem sign(国歌斉唱サイン)

  • 末梢静脈虚脱法を用いて中心静脈圧の上昇の有無を判定する簡便な方法
  • 開発者であるカナダの循環器医 Rizkallah が自らRizkallah signと命名()
  • 診断特異度は医学生 88%,レジデント 85%,循環器フェロー 85%と安定

🐤 実際の方法
  1. 被験者はベッドの頭を30度上げた仰臥位(オリジナル)
  2. 手背の表在静脈を確認(静脈が見えない時は適用なし) 
  3. 腕を(国歌斉唱時の様に)受動的に胸骨上に置く(下図)
  4. 静脈が拡張している場合は陽性(中心静脈圧が上昇)

🐦 独り言
  • オリジナル報告の体位は30度臥床ですが,座位でも仰臥位でもいいような気がします.末梢静脈は逆流防止弁や筋肉の影響など不確定要素が少なくありませんが,本所見の様に臨床経験に影響を受けにくい特異度の高い(=ルールインできる/確定できる)身体所見は臨床に役立ちそうです.イケた命名も素敵です.

💁 末梢静脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ
アンサム
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(投稿者 川崎)

2023-01-22

ベルトロッティ症候群 Bertolotti Syndrome

  • 最尾側腰椎の肥大した横突起と仙骨間の関節を形成した病態
  • 初報はイタリアのMario Bertolotti(Radiol Med 1917;4:113-44)
  • 頻度は腰痛769症例のMRI検討で4.6%(30歳以下では11.4%)
  • 治療は内服薬や理学療法,局所注入,ラジオ波焼灼,外科手術

腰痛を訴える28歳女性(上図)にL5左横突起切除術を施行(下図)

💁 腰痛に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-21

ドゥベガ法 De Vega's Technique

  • 機能性三尖弁逆流(FTR)に対する三尖弁輪形成術の一つ
  • スペインのDe Vegaが考案(Rev Esp Cardiol 1972;25:555-6
  • 縫縮のみでリングやバンドの人工弁輪を使用しない(下図)
  • ただし人工弁輪使用例よりも遠隔成績に劣ると考えられる
  • 問題点:経年的な縫縮効果の薄れ+中隔尖を修正できない


Aはオリジナルのドゥベガ法/Bは修正ドゥベガ法

(投稿者 川崎)

2023-01-20

略語:I-NEED-HELP

専門家へのコンサルトを考慮すべき心不全の状態

👀 DeepL による日本語訳(今回は少し手直し)
  • I ➜ 静脈内投与による強心剤の投与
  • N ➜ ニューヨーク心臓協会(NYHA)IIIB/IV度またはナトリウム利尿ペプチドの持続的な上昇
  • E ➜ 末期の臓器機能障害
  • E ➜ EF≦35%
  • D ➜ 除細動器によるショック
  • H ➜ 入院回数>1回
  • E ➜ 利尿剤の増量にもかかわらず浮腫
  • L ➜ 収縮期血圧90以下、高心拍数
  • P ➜ 予後不良の薬物治療(ガイドラインに沿った治療法 GDMT への不耐や減量の進行)

(投稿者 川崎)

2023-01-19

🎯 今週の一枚

心電図異常に対する心臓CTで心外病変を指摘された症例



(投稿者 川崎)

2023-01-18

肝紫斑病 Peliosis hepatis

😊 先日,耳にしたことがない病名に遭遇したので調べてみました

🔗 肝紫斑病(Peliosis hepatis)
  • 類洞の拡張と肝内に多発する1~10mmの血液の貯留腔を認める稀な疾患
  • WHOの肝腫瘍の組織学的分類では腫瘍類似病変に分類(一応良性疾患)
  • Wagnerによって1861年に初めて報告された(Arch Heilk 1861;2:369-70)
  • 疾患の観念提唱はSchoenlank(Virchows Arch Path Anat 1916;222:358-64)
  • 蛋白同化ステロイドなどの薬物使用や慢性消耗性疾患に随伴して発症あり
  • 確定診断は生検,腹腔鏡,各種画像所見を組み合わせて総合的に判断する
  • 無症状から急激に進行して重症化する症例あり/確立された治療法はない


肝全体に不均一な造影が散在し肝内での血液貯留腔の存在が示唆される

💁 肝臓の過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-17

遺伝性脳小血管病: CADASILカダシル & CARASILカラシル

🔒 CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)
  • 常染色体優性遺伝(NOTCH3変異)で若年性脳梗塞を発症
  • 40~50歳(日本では60歳以上が多い)で発症し性差はない
  • 一過性脳梗塞やラクナ梗塞を繰り返し,認知症やうつ症状へ
  • 前兆を伴う片頭痛を認めることがある(全症例の20~30%)
  • MRI のT2強調画像で前頭極と外包に対称的に高信号域あり
  • 皮膚生検などで小・細動脈の血管壁肥厚+血管内腔狭小化


🔓 CARASIL(cerebral autosomal recessive arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)
  • 常染色体劣性遺伝(HTRA1遺伝子変異)
  • 頭部MRI所見で多発性ラクナ梗塞の所見
  • 早発性の禿頭と腰痛,脊椎変形などあり
  • CADASILほど片頭痛の発作は合併しない

CADASILカダシル CARASILカラシルの診断基準
カラシル カダシル
(投稿者 川崎)

2023-01-16

カロテン血症 Carotenosis

  • カロテノイド色素の過剰摂取で皮膚(特に掌や足底,鼻など)が黄染した状態
  • 同色素が多い食物(ミカンなど)を過食すると生じるため柑皮症とも呼ばれる
  • 黄疸は眼球結膜(強膜)が黄色くなるが,柑皮症ではならないため区別は可能
  • 白眼黄染が生じない理由はカロテンと親和性が高い脂質が強膜には少ないため

マンゴーとオレンジを6週間に渡って何度も食べた19歳女性

👵 もっと詳しくなら...
  • カロテノイドは脂溶性化合物でα-およびβ-カロテン,β-クリプトキサンチン,リコペン,ルテイン,ゼアキサンチンから構成されています.ミカン以外にもリンゴやオレンジ,パパイヤ,豆,モモ,ベリー,パイナップル,マンゴー,ブロッコリー,キャベツ,カボチャ,ニンジン,ほうれん草,トマト,レタス,バター,チーズ,卵黄,肉,牛乳,栄養補助食品,パーム油などに様々な食物に含まれています.
  • カロテノイドは消化管からの受動拡散によって吸収され,一部は腸粘膜や肝臓でビタミンAへ代謝され,残りは汗・皮脂・尿・消化管分泌物として体外へ排出されます.カロテン血症の最も一般的な原因はカロテン過剰摂取ですが,稀に糖尿病や腎疾患(糸球体腎炎やネルフローゼ症候群など),甲状腺機能低下症,神経性食欲不振症,原発性肝疾患などの全身性疾患に起因することもあるようです.
  • 食事誘発性カロテン血症は病歴と身体所見から診断されます.ただし血清ベータカロテン値が高いこと,ビタミンA値が正常またはわずかに上昇していること,および肝機能検査の結果が正常であることによって確認できます.基礎疾患がなければ深刻な結果につながる可能性が低い良性疾患(美容的な問題は除く)で,食事中のカロテン量を減らすことで消失します.ちなみに昔はカロチンと呼んでいました.


(投稿者 川崎)

2023-01-15

SP-D:肺サーファクタント プロテインD

💠 Surfactant Protein-D
  • 極めて肺に特異的な物質でII型肺胞上皮細胞肺で産生される
  • 間質性肺炎の病勢把握および予後予測因子として有用である
  • 正常値<110ng/ml(血清 0.5mlで測定でき判断料144点)
  • 病的状態で上皮内皮細胞間関門が破壊され血流漏出(下図)



間質性肺炎の3マーカー比較
 
😀 追加コメント
  • SP-AやSP-Dは間質性肺炎に対する陽性率はKL-6とほぼ同様ですが,細菌性肺炎で上昇する頻度が有意に高いため,間質性肺炎の診断能はKL-6に及ばないようです.
  • これらのマーカーの組み合わせは診断能を改善しますが,保険上は『KL-6,SP-A,SP-Dを複数を実施した場合,主たるもののみ算定する』と記載されています.
(投稿者 川崎)

2023-01-14

ミノサイクリンによる色素沈着

👤 Minocycline-induced hyperpigmentation
  • 頻度:有病率は2.4〜41%で,治療期間や累積投与量と相関(顔面を除く)
  • 病理:基底ケラチノサイトでのメラニンの増加および真皮メラノファージ
  • 鑑別:アジソン病,甲状腺機能亢進,ヘモクロマトーシス,悪性腫瘍など
  • 治療:ミノサイクリン中止,日光への露出回避,色素特異的レーザーなど


繰り返す創部感染症でミノサイクリン200 mg/日を6年服用していた症例

👹 追加情報
  •  薬剤性色素沈着にはミノサイクリン以外にも,アミオダロンやブレオマイシン,プロスタグランジン,経口避妊薬,フェノチアジン,抗マラリア薬などが知られています.
  • 特にアミオダロンによる色素沈着は”Blue man”として知られています(下図).ちなみに”Red man”といえばバンコマイシンによる過敏反応のレッドマン症候群です.

(投稿者 川崎)

2023-01-13

Na vs K:抗不整脈薬

🐥 ざっくり言って...
  • 抗不整脈薬は基本的にNaチャネル遮断とKチャネル遮断の組み合わせ
  • そこにスパイス(Caチャネルやβ受容体)が加わり多彩になっている

💛 Naチャネル遮断薬
  • 純粋な強い遮断薬はピルジカイニドのみ (サンリズム©)
  • 脱分極の立ち上がり(0相の角度)を緩徐にする(下図)
  • 予後改善効果はなく心不全例や低左心機能例では避ける

💚 Kチャネル遮断薬
  • 純粋な遮断薬はニフェカラントのみ(シンビット©)
  • 陰性変力作用はほぼない(心不全症例にも使用可能)
  • 活動電位持続時間を延長させるためQT延長に要注意


🉐 不整脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-12

🎯 今週の一枚

息切れで来院した症例の端座位

🐇 解説
  • 心窩部に周期的な拍動(心尖拍動は視認せず)
  • るい痩が目立ち腹式呼吸をしている ➜ COPD?
  • 口すぼめ呼吸はないがフーバー徴候あり(矢印)
  • 頸静脈は座位陰性で心エコー図で右室負荷なし
  • 長期の喫煙歴もありCOPDによる息切れと判断

 🐀 つぶやき
  • 心窩部の周期性拍動は拡大した右室が前胸部と広い範囲で接するために顕性化した右室拍動が多いと報告されている
  • 本例には右室負荷はなく,るい痩で右室拍動が目立ったと思われた(つい先日,漏斗胸の右室拍動も経験 ➜ コチラ
  • COPD例でるい痩が多いのは呼吸筋エネルギー消費の増加(健常者36~72kcal/日の10倍が必要)など(過去の投稿

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(投稿者 川崎)

2023-01-11

いわゆる「白目の中の黒い点」

👀 結膜母斑(Conjunctival Nevus)
  • 白目≒結膜(Conjunctival:発音はkɔ̀ndʒʌ̀ŋktáivəl/実際の音声
  • 黒い点≒母斑(Nevus:発音はníːvəs/ニーヴァス/実際の音声
  • メラニン細胞性腫瘍で多くは先天性(ただし思春期頃から顕性化)
  • 自覚症状なく特に加療も不要(増大時注意:極めて稀にメラノーマ)
  • 美容目的のレーザー治療は点眼麻酔で10分程(自費診療で3〜5万)

(A)成人期に発生した結膜母斑.(B)固有嚢胞を認めず,直径1.5mmで,深いメラニン層を呈している(10倍、ヘマトキシリン・エオジン).(C)メラニン細胞性母斑の病理組織像ではメラノサイトはBRAFV600Eの免疫反応を示す(10倍、ペルオキシダーゼ・アンチペルオキシダーゼ).

(投稿者 川崎)

2023-01-10

Yao syndrome ヤオ症候群

  • 反復性の発熱・発疹,関節炎,四肢遠位部の腫脹,胃腸症状,乾燥様症状を生じる
  • 一見,家族性地中海熱(FMF)に類似した病態で,旧名はNOD2関連自己炎症性疾患
  • 米国のリウマチ科医であるQingping Yaoらが提唱(Arthritis Res Ther 2011;13:R148
  • 原因は自然免疫応答に重要なパターン認識受容体をコードしているNOD2遺伝子変異
  • 20〜50歳に多く(平均40.7歳),女性と男性の比率は2:1(白人での報告例が多い)
  • 治療はグルココルチコイド,ダプソン,コルヒチン,スルファサラジン,カナキヌマブ


 実際の症例  27歳の白人男性が、発熱と特に体幹に顕著な圧痛を伴う紅斑性皮疹を繰り返し発症し皮膚科を受診した。発疹は心理的ストレスが引き金となり、インフルエンザ様症状、微熱、咽頭痛、関節痛が前駆症状であったと報告されている。これらのエピソードの間、彼は断続的な下痢と激しい頭痛を経験した。時間の経過とともに再燃は重症化し、患者はエピソードの間、寝たきりになった。症状は3〜7日間持続した後、自然に治り、3週間ごとに再発した。

(投稿者 川崎)

2023-01-09

最近学んだこと🐥

  1. その症例がH&P症例(History and Physical)なのかABC症例(Air, Breathing, and Circulation)なのかを判断する.つまりショックバイタル症例では全身を入念に診察する必要はない.
  2. 腹痛症例のclosed eye signとは,腹部触診時に患者さんが閉眼していれば器質的疾患の可能性が低いこと.腹膜炎などがあれば,患者さんは診察中に何をされるかわからず不安で眼を開けていることが多い.
  3. Leriche(レリシュ)症候群の三徴は勃起障害,間歇性跛行,大腿動脈の触知不良
  4. 女性で歯に口紅が付着していれば,シェーグレン症候群による粘膜の乾燥の可能性がある.
  5. コクランのメタ解析()では,急性腹痛に対しオピオイドを投与しても,診断ミスや治療法の決定ミスを増加させないため,問題なく投与していよい.
  6. リンパ節とはリンパ管の途中にある皮膜に覆われた小さな構造物(<1cm)で,全身におよそ600個ある.
  7. 忙しい現場では「病歴 → 検査 → ±身体所見」ということも行われているのではなかろうか.しかし,過去の偉人の苦労の結晶であるclinical signを共有することで病気を実態として感じ取ることはなんとも有益なことではなかろうか.
  8. 神経性食欲不振症では,自らの手で咽頭反射を誘発して嘔吐するため,上の前歯が当たる手の甲にいわゆる”吐きダコ”が生じる.また胃酸による歯牙侵食(エナメル質の神職による象牙質の露出や歯間の間隙拡大)も生じる.
身体診察 Hospitalist 2022;10(1):1-194より

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(投稿者 川崎)

2023-01-08

既往歴:OPLL

🚑 ERの引き継ぎ症例
  • 既往歴の欄にしれっと”OPLL手術”と記載されていました.どんな手術か分からなかったので調べてみました.ちなみに初期対応は整形外科の先生でした.

👤 OPLL
  • Ossified Posterior Longitudinal Ligamentの略(邦名:後縦靱帯骨化症)
  • 脊柱のほぼ全長を縦走している後縦靱帯の骨化で脊椎管狭窄を来す疾患
  • 原因不明で難治性の特定疾患で頸椎に最も多いが胸椎や腰椎にも生じる
  • 頸部痛や上肢痛などで発症し,進行すると下肢に進展して知覚運動障害
  • 治療は後屈回避,カラー装着,ビタミンB・鎮痛薬などで進行例は手術


👥 おまけ
  • 類似病態に黄色靱帯骨化症(Ossification of the Ligamentum Flavum: OLF)があります.これは脊髄の後方にある黄色靱帯が骨化する疾患で,胸椎に多いため下肢の脱力やしびれなどで発症します.こちらも特定疾患ですが患者数は360人(平成24年度)と,OPLLの33,346人よりもずいぶん少ないようです().
  • 脊髄の前方にあるのが後縦靱帯で,後方にあるのが黄色靱帯と少し混乱します.これは内科医が脊髄を中心に考えるからかもしれません.骨(椎体)からみれば後面にあるため後縦靱帯です.そして椎体の前面にあるのが前縦靱帯です.ちなみに黄色靱帯は通常の靭帯よりも弾性線維を多く含むため黄色っぽいそうです.

(投稿者 川崎)

2023-01-07

🏆 論文

  • 当院の初期研修医である間瀬先生が総合診療科で経験した症例が出版されました
  • 息切れと倦怠感で当院の搬入 ➜ 最終的には4時間後に死亡(血培から大腸菌検出)
  • 剖検は未施行ですが,総合的にWaterhouse-Friderichsen syndromeが疑われました

(Open J Clin Med Case Rep 2022; 1894)

😀 追加コメント
  • 学会発表の準備中,コルチゾール濃度に対する興味が湧いたので保存していた検体を用いて測定してみました(論文の出版後).ウォーターハウス・フリードリヒセン症候群の本体は副腎出血による副腎不全であるため,コルチゾール低値を予想したのですが,本例では正常値を少し上回っていました.診断の正当性を疑う声もでました.
  • しかし調べていくうちに面白い症例報告を見つけました.例えば,一時点でのコルチゾール値は上昇しているが24時間値では正常範囲内(Radiation 2022;2:303-10)➜ つまり相対的に不足.また一時点でのコルチゾール値が正常範囲内(CASE REPORT| 2009;27:751.E3-751)➜ こちらも病態を考えると相対的不足.
  • コルチゾール濃度は敗血症ショック時に平均,健常者の14倍以上に上昇するようです(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2006;91:105–14).よって勝手な予想 😶 副腎の広範な出血例ではコルチゾール値が低下(CTで生前診断可能)vs 通常の微小出血例では相対的不足も稀ではない(剖検でのみ診断可)

🎉「論文」の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-01-06

PH crisis(肺高血圧クライシス)

💣 Pulmonary hypertensive crisis
  • 末梢肺血管の過敏反応により生じた急激な肺血管抵抗上昇による血行動態の崩壊
  • 肺への血流が極度に低下するため,急激な体血圧と酸素飽和度の低下がみられる
  • 肺高血圧を呈す先天性心疾患の開心術後の急性期に生じることが多い(特に小児)
  • 誘引は低酸素,高二酸化炭素,代謝性アシドーシス,気管内吸引,抜管,疼痛など
  • 治療は酸素,NO吸入,血管拡張薬,刺激回避(最小限の気管内吸引+鎮痛・鎮静)

参考)蘇生 2008;27:60-2,ほか

人工股関節置換術後に死亡した肺高血圧合併全身性エリテマトーデスの1例

💁 肺高血圧の過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-05

大動脈弁狭窄 vs 身体所見

😅 少し古い研究ですが...
  • 有意なAS(中等度〜)を身体所見から判定する試み(J Gen Intern Med 1998;13:699-704)をSNS(Twitter)を通じて教えてもらったので簡単にまとめておきます.

📎 関連する因子
  • Ⅱ音の減弱
  • 頸動脈容積の減少
  • 頸動脈圧の緩徐な上昇
  • 雑音が第二肋間胸骨右縁で最大



📢 ステップ判定法
  1. 右鎖骨上の雑音なし ➜ 効果的に除外(尤度比0.10;ASの確率1.4%)
  2. 上記因子が0~2個 ➜ ある程度疑われる(尤度比1.8;ASの確率21%)
  3. 上記因子が3~4個 ➜ 確率が高い(尤度比40;ASの確率86%)

独り言 💨
  • 比較的小規模(心エコーを受けた123人で中等度以上のASは16人)かつ身体所見が厳密に定義されていないなどの問題点はありますが,個人的に好きな研究です.
  • 関連する上記の4つ因子の判定(0~2個 vs 3~4個)では,レジデントとスタッフ内科医の間で判定精度の結果に有意差がなかったことも本文中に記載されています.
  • 大動脈弁狭窄は身体所見で診断すべきですが,その重症度判定は心エコー図に分があります.それでも心エコー図には挑み続けたいと思っています(過去の投稿).

(投稿者 川崎)

2023-01-04

デキサメタゾン抑制試験 Dexamethasone suppression test: DST

クッシング症候群のスクリーニング検査(以下の方法は1例)
  • 22〜23時にデカドロン錠0.5mgを2錠服用(1錠の方法もあり)
  • 翌朝8~9時に血清コルチゾールを測定(>5 μg/dlなら異常)

- Cushing 症候群の診断アルゴリズム -

🐥 おまけ
  • ヒドロコルチゾンやプレドニゾロンの服薬中止が困難な場合には,コルチゾール測定系への影響の少ないデキサメタゾンに変更し評価().
  • デカドロン錠は検査薬として保険適応を有しているが,DDAVP試験で用いるデスモプレシンは検査薬としては保険適用外になってしまう

💁 副腎に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-03

薬機法(旧薬事法)

🏥 治験審査委員会の直前ミーテイング
  • スタッフ「それは薬法違反です」
  • 担当医師「やっき? 薬法違反?」
  • スタッフ「ええ.今は薬法です」

📚 薬機法(旧薬事法)
  • 医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の品質・有効性・安全性を確保して保健衛生の向上を図るための法律
  • 正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で,別名は医薬品医療機器等法とも言う
  • 1960年(昭和35年)に施行された法律の薬事法であるが2014年(平成26年)の法改正に伴い薬機法という名称に変更された
  • 薬機法と薬事法の最大の変更点は,薬機法に医療機器(ペースメーカや人工関節、超音波装置など)を扱う章が追加されたこと
  • 医薬品等の名称,製造方法,効能・効果,性能に関して,虚偽または誇大な記事の広告・記述・流布は禁止されている(第66条)

😀 おまけ
  • 日本の法令はデジタル庁が提供するe-Gov(イーガブ)法令検索から無料閲覧できます.現行の憲法・法律・政令・勅令・府令・省令・閣令・規則を含んでいます.
  • ちなみにe-Gov法令検索で薬機法をチェックした結果はコチラ.91の条項と多数の附則から構成 ➜ あまりのボリュームに圧倒され僕はそうそうに撤退しました 😅

(投稿者 川崎)

2023-01-02

聴診部位の覚え方

😊 いろいろな語呂合わせがあるようですが...
  • A PET Monkey(ペットのお猿さん:下図)
  • All Pigs Eat Too Much(すべての豚は食べすぎる)
  • APE To Man(猿からヒトへ)
  • ママとパパ(心尖部から心基部の方向でErb領域は含まず)

All Medical Mnemonics on facebook) 

  •  Aを表す大動脈弁の疾患(特に狭窄)では,第2肋間胸骨右縁(2RSB)に限らず,鎖骨〜心尖部のを結んだ「たすき掛け」の広い領域で雑音が聴取されます.
  • ここだけAllにしたAll PET MR(すべてのPET-MRI検査/Mitral Regurgitationも兼ねる)なんかも良かったりして...知らんけど(責任逃れの必殺大阪語 😅)

💁 語呂合わせに関する過去の投稿 ➜ コチラ

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-01-01

元旦からフィジカル 🎯 今週の一枚

  • 心房細動でワルファリンを長期内服している症例.アドヒアランスは良好でINR値も10年以上安定していた.定期受診で本人は「調子よい」と言うが採血で貧血が進行していた(INRは安定し過延長なし).ご本人に問うと「実は...」と言って服を脱いで見せてくれた.



(投稿者 川崎)