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2024-01-16

心不全とSGLT2阻害薬

  • (今更ですが)日本循環器学会・日本心不全学会の心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationを転記しておきます(2023年6月16日) 
  • 概略:すべての心不全で積極的使用+腎機能や電解質,尿路・性器感染に注意+食事制限手術なら糖尿例で3日前~,非糖尿例で前日~中止(再開は食事の開始時)

📖 Recommendation(勧告)
  • 心血管疾患のハイリスク2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬は入院を要する心不全イベントの抑制が報告されており、リスクとベネフィットを十分に勘案して積極的にその使用を検討する。
  • 心不全患者において、SGLT2阻害薬(ダパグリフロジンとエンパグリフロジン)は2型糖尿病の合併・非合併および左室駆出率にかかわらず、心不全イベントの抑制が報告されており、リスクとベネフィットを十分に勘案して積極的にその使用を検討する。
  • 心不全患者では利尿薬を使用する頻度が高く、SGLT2阻害薬の併用により過度の体液量減少をきたすリスクがあるため、腎機能や電解質等のモニタリングを適宜行い、必要に応じて利尿薬や降圧薬の用量を調節する。
  • 2型糖尿病を合併した SGLT2阻害薬を使用中の心不全患者が、食事摂取制限を伴う手術を受ける場合には、手術3日前から休薬し、術後は食事摂取が可能になってから再開する。一方、2型糖尿病を合併しない心不全患者では、術前の終日絶食日に SGLT2阻害薬を休薬し、術後は食事摂取が可能になってから再開する。なお、2型糖尿病の合併・非合併にかかわらず、SGLT2阻害薬を服用中の心不全患者が緊急手術を受ける場合には、同薬の休薬についてリスクとベネフィットを十分に勘案して現場での判断を許容する。いずれの場合においても、心不全患者において SGLT2阻害薬を休薬する場合には、休薬に伴う心不全増悪時も含め必要に応じて循環器専門医への紹介を考慮する。
  • SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の合併の有無にかかわらず心不全患者においても尿路・性器感染症の発生・増悪が懸念されるため、リスクとベネフィットを十分に勘案して適応を検討し、投与後は注意を払う必要がある。
  • 心不全患者において SGLT2阻害薬を使用する場合、各薬剤の添付文書および本Recommendationを踏まえて適正に使用する。糖尿病や慢性腎臓病の併存する病態に応じて日本糖尿病学会および日本腎臓学会の SGLT2 阻害薬の適正使用に関するRecommendationも参考にする。

(投稿者 川崎)

2019-05-30

急性心不全に使用する薬剤の推奨

推奨クラス 薬剤 病態
Iループ利尿薬急性心不全における体液貯留に対する静注および経口投与
I硝酸薬急性心不全や慢性心不全の急性増悪時の肺うっ血に対する投与
Iジギタリス頻脈誘発性心不全における心房細動の心拍数コントロール目的での投与
Iランジオロール頻脈誘発性心不全における心房細動の心拍数コントロール目的での投与
IIaループ利尿薬1回静注に抵抗性のある場合の持続静脈内投与
IIaトルバプタンループ利尿薬をはじめとする他の利尿薬で効果不十分な場合の体液貯留に対しての投与(高ナトリウム血症を除く)
IIaトルバプタン低ナトリウム血症を伴う体液貯留に対しての投与
IIaミネラルコルチコイド受容体拮抗薬腎機能が保たれた低カリウム血症合併例に対する投与
IIaカルペリチド非代償性心不全患者での肺うっ血に対する投与
IIaカルペリチド難治性心不全患者での強心薬との併用投与
IIaドブタミンポンプ失調を有する肺うっ血患者への投与
IIaノルアドレナリン肺うっ血と同時に低血圧を呈する患者へのカテコラミン製剤との併用投与
IIaPDEIII阻害薬非虚血性のポンプ失調と肺うっ血に対する投与
IIbミネラルコルチコイド受容体拮抗薬ループ利尿薬による利尿効果減弱の場合の併用投与
IIbサイアザイド系利尿薬フロセミドによる利尿効果減弱の場合の併用投与
IIbニコランジル急性心不全や慢性心不全の急性増悪時の肺うっ血に対する投与
IIbドパミン尿量増加や腎保護効果を期待しての投与
IIbPDEIII阻害薬虚血性のポンプ失調と肺うっ血に対する投与
IIbPDEIII阻害薬心拍出量の高度低下に対してのドブタミンとの併用投与
IIIミネラルコルチコイド受容体拮抗薬腎機能障害,高カリウム血症合併例に対する投与
IIIカルペリチド重篤な低血圧,心原性ショック,急性右室梗塞,脱水症患者に対する投与
IIIカルシウム拮抗薬高血圧緊急症に対するニフェジピンの舌下投与
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)の表58より(2019年5月閲覧/記載順など一部改編)

👿 推奨クラス順に並べると頭が整理されて分かりやすいと思う

関連投稿

(投稿者 川崎)

2021-12-27

心不全治療薬


😄 近年,新たな3種類の治療薬が加わりました
推奨クラス 薬剤 病態
I SGLT2阻害薬 最適な薬物治療(最大量あるいは最大忍容量のβ遮断薬, ACE阻害薬 [またはARB] およびMRA)が導入されている にも関わらず症候性で,収縮能の低下した(LVEF≦40%) 慢性心不全患者に対し,心不全悪化および心血管死のリス ク低減を考慮してダパグリフロジンまたはエンパグリフロジンを投与する.
I ARNI ACE 阻害薬(またはARB),β遮断薬,MRAがすでに投 与されているHFrEFにおいて,症状を有する(または効果が不十分)場合,ACE阻害薬(またはARB)からの切替えを行う.
IIa ARNI ACE阻害薬(またはARB)未使用の入院中のHFrEFへの投与を考慮する.
or
利尿薬が投与されているNYHA心機能分類 II 度以上のHFmrEFにおいて,ACE阻害薬(またはARB)からの切替えを考慮する.
IIa イバブラジン 最適な薬物治療(最大量あるいは最大忍容量のβ遮断薬, ACE阻害薬[またはARB]およびMRA)にもかかわらず症候性で,洞調律かつ心拍数≧75拍/分のHFrEF(LVEF≦35%)患者において,心不全入院および心血管死のリスク低減に考慮する.
or
ACE阻害薬(またはARB)およびMRAを投与されているものの,洞調律で安静時心拍数≧75拍/分の症候性HFrEF(LVEF≦35%)患者であるがβ遮断薬に不耐容あるいは禁忌である患者において,心不全入院および心血管死のリスクを低減するために考慮する.
IIb ARNI HFpEFに対する投与を考慮してもよい.

😈 現在の基本薬は4剤に集約 (いわゆるFantastic four)
  1. ARNI (アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
  2. BB(ベータ遮断薬)
  3. MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
  4. SGLT2 inhibitor(ナトリウム/グルコース共輸送体2阻害薬)

これらの4薬剤はすべて長期予後を改善することが証明されています.しかし心不全治療では,急性期の自覚症状を改善することも重要です(急性の心不全に使用する薬剤の推奨).

上記の素晴らしい4つ薬剤のなかでSGLT2阻害薬は急性心不全の治療にも有用であることが示されつつあります(例:Circ Heart Fail 2021;14:e007048.).これは注目すべきすごいこと!

(投稿者 川崎)

2026-03-11

慢性心不全の再入院予防(令和8年診療報酬改定)

  • 当院では心不全チームによるカンファレンスを継続して行ってきました。また心不全療養指導士の取得も積極的に実施してきました。
  • その両者が「慢性心不全の再入院予防の評価の新設」という形で診療報酬に反映されることになりました。それも相当の点数です 😮

💗 慢性心不全の再入院予防の評価の新設
  • 心不全治療による再入院予防を推進する観点から、急性心不全で入院した患者に対して、早期から多職種による介入を実施し、退院後も必要な治療を地域で連携して実施した場合について、新たな評価を行う。
  • (新)心不全再入院予防継続管理料
    1. 心不全再入院予防継続管理料1 1,000点 (入院中1回に限り算定)
    2. 心不全再入院予防継続管理料2 6回目まで 700点 7回目以降 225点 (1年を限度として月に1回・外来で算定)
    3. 心不全再入院予防継続管理料3 6回目まで 400点 7回目以降 225点 (1年を限度として月に1回・外来で算定)


令和8年度診療報酬改定より抜粋


(投稿者 川崎)

2022-01-19

心不全パンデミック Heart Failure "Pandemic"

- 日本の65歳以上での心不全新規発症推定数 -

💣 追加コメント
  • 現在,パンデミックと言えばCOVID-19です.しかし日経メディカルは2015年に「心不全パンデミック」を特集しています.団塊の世代が75歳に達する2025年に心不全症例は120万人を超え医療負荷が急増するという警告です.
  • 上図は本邦では今後も年間約35万人以上の高齢者が新規に心不全を発症することを意味します.しかしこの数値は米国の65歳以上の心不全発症率(年間1/100人)を用いて算出された推定値であるため注意が必要(筆者らも指摘)
  • 本邦の心不全患者はすでに100万人を突破しています(※).そこに毎年35万人が加わればすごい数になりそうでが,実際の総数は著増ではありません(※).これは心不全を患う症例の予後がかなり不良であるためと考えられます.

💁 心不全の関連投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-29

ベルンハイム症候群 Bernheim's syndrome

  • 右室内腔の狭小化のため右心不全を呈する左心系の疾患.Bernheim が100年以上前に報告(De l'asystolie veineuse dans l'hypertrophie du coeur gauche par stenose concomitante du ventricule droit. [仏語:右室狭窄を伴う左心肥大の静脈性不全収縮] Rev de WV 1910;30:785-801).
  • ただしベルンハイム症候群に懐疑的な報告も少なくないようで,最近では目にすることはほとんどないと思われる.2000年以降でGoogle scholarの検索ではわずかに33件がヒット(実際の検索).日本語では全期間を通してもわずか数編程度でしょうか?

ベルンハイムのオリジナル論文からの図の転載

👿 深掘り

仁村泰治先生が「肥大型心筋症に伴う右室流出路狭窄と"Bernheim症候群"」という題でeditorial commentを発表されています(心臓 1992;24:1309-12).ベルンハイムの提案した項目をわかりやすくまとめられています(下記).このベルンハイム症候群に対しては少し懐疑的な見方を示しつつ,ベルンハイム効果とういう観念で考えるならば意味はあると述べられておられるところはさすがです.同効果はこの心臓フィジカル広場でも頻出です(ココ).

  1. 左心系の疾患であって,左室肥大ないし拡張が著しい
  2. 肺うっ血はなく,臨床的にも起坐呼吸,咳など,それに相当する症状はない
  3. 直接に右心不全を来たすような右心,肺循環系の疾患はない
  4. 左室の肥大,拡張ないし心室中隔の肥大のため,中隔は右室腔内に凸に膨隆し,そのため,右室,特にその下半は狭小化している.ロート部はかえって代償的と見られる肥大,拡張を示していることが多い
  5. 頸静脈怒張,肝腫大,下肢浮腫など右心不全症状が見られる
  6. 以上の事柄からこの右心不全は,通常考えられるような左心不全→肺循環負荷→右心不全と言う経過を辿ったものでなく,上述のような右室内腔の狭小化のため,静脈還流が制限され,左心不全,肺循環負荷とは関係なしに,右心不全の状況を来たしたと考えられる

※ 心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2017-12-10

心不全の定義

心不全の定義は研究により異なり統一されていなかった(心不全の診断は コチラ)
2017年10月31日に日本循環器学会と日本心不全学会が『心不全の定義』を発表

『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。』
※上記文言は原文そのまま/心不全の定義に関する詳細については コチラ から参照可能

おまけ
  • 本邦の死亡数は癌が1位で循環器疾患が2位
  • 心不全の予後は不良で5年生存率は約50%

(投稿者 川崎)

2021-03-30

心不全:ダパグリフロジンのまとめ

👀 フォシーガ®(商品名)
  • 現時点で糖尿病の有無にかかわらず心不全治療に利用できる唯一のSGLT2阻害薬

  • オリジナルの臨床試験DAPA-HF(N Engl J Med 2019;381:1995-2008)の対象は左室駆出率40%以下であったが,同薬の添付文書の記載は「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」で,左室駆出率の具体的な値は明記されていない.
  • 糖尿病に対しては「重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の血糖降下作用が期待できないため、投与しないこと」および「糖尿病の血糖コントロール改善を目的として使用している患者においては、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m2未満に低下した場合は投与の中止を検討すること」と記載されている.
  • 一方,慢性心不全に対しては「本剤では腎機能低下に伴う血中濃度の上昇が報告されている。また、eGFRが30mL/min/1.73m2未満あるいは末期腎不全(ESRD)の患者を対象とした臨床試験は実施していない」の記載に留まる.
👳 独り言
  • 心不全に対する利尿薬にはループ利尿薬(例:フロセミド),サイアザイド系利尿薬(例トリクロルメチアジド/フルイトラン®),抗アルドステロン薬(例:アルダクトン),V2受容体拮抗薬(例:バソプレシン/サムスカ®)がありました.SGLT2阻害薬は5番目の心不全利尿薬などと呼ばれています.
  • 利尿薬は服用のタイミングが大切です.例えば外出前や眠前にフロセミド内服すると,頻回のトイレでQOLが著しく低下します.フォシーガ®は5mgでも10㎎でも1日1回の投与と決められていますが(添付文書),心不全症例に対して服用する場合は朝5㎎+昼5㎎などの分割投与は意味がないのかな~って気になります.

(投稿者 川崎)

2022-01-29

心不全を防止する4回のチャンス

  • 心不全は下図のように進行していく病気で増悪を予防することが大切
  • 各ステージでとどまれるようにしたい(提唱はおそらく小室一成先生)
  • つまり心不全は発症前に3回と,発症後に1回の予防タイミングがある

    1. リスクなし ➜ 0次予防(リスク予防=よい生活習慣)
    2. Stage A ➜ 1次予防(疾患の発症を予防=リスク管理)
    3. Stage B ➜ 2次予防(心不全の発症予防=適切な治療)
    4. Stage C ➜ 3次予防(心不全の再発予防=包括的治療)


💁 心不全の関連投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2019-05-20

末期心不全の緩和ケア

  • 終末期心不全 ➜ 呼吸困難(60~88%),全身倦怠感(69~82%),疼痛(35~78%),抑うつ症状(入院症例の70%)(参考:急性・慢性心不全診療ガイドライン 2017年改訂版)
  • 2018年の診療報酬改訂 ➜ 「緩和ケア診療加算」の対象に特定の要件を満たす「末期心不全」患者が追加/(1日につき390点)
  • 算定条件 ➜ 「緩和ケアチームのうちいずれか1人は専従。ただし、緩和ケアチームの診療患者数が1日15人以内の場合は、いずれも専任で差し支えない」

末期心不全の定義 以下のア~ウまでの基準及びエ~カまでのいずれかに該当
  • ア) 心不全に対して適切な治療が実施されている。
  • イ) 器質的な心機能障害により、適切な治療にかかわらず、慢性的にNYHA重症度分類Ⅳ度の症状に該当し、頻回又は持続的に点滴薬物療法が必要な状態。
  • ウ) 過去1年以内に心不全による急変時の入院が2回以上。
  • エ) 左室駆出率が20%以下。
  • オ) 医学的に終末期であると判断される状態。
  • カ) エ又はオに掲げる状態に準ずる場合。

(投稿者 川崎)

2019-10-20

「心大血管疾患リハビリテーション料」の対象疾患

心不全の心臓リハビリテーション標準プログラム(2017年版)より(6ページを一部改変:平成26年度診療報酬改定)

急性の病態(術後を含む)
  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 開心術後
  • 大血管疾患(大動脈解離,解離性大動脈瘤,大血管術後)

慢性の疾患
  • 慢性心不全:LVEF≦40%,peakVO2≦80%,BNP≧80pg/mL のいずれかを満たす
  • 末梢動脈閉塞性疾患:間歇性跛行を呈する状態

👶 おまけ
  • 心不全の心臓リハビリ適応にNT-proBNPのカットオフ値は(なぜか)記載されていない.一方,急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)の図6には『NT-proBNP≧400pg/mLまたはBNP≧100pg/mLなら治療対象となる心不全の可能性があるので精査あるいは専門医に紹介』と記載されている.NT-proBNPとBNPの比が4倍であることを考慮すると,心不全に対する心臓リハビリはNT-proBNP≧320pg/mLあたりが妥当かも・・・

関連投稿 🉐

(投稿者 川崎) 

2024-01-22

心不全と難聴

時々息遣いが荒くなる難聴例(端座位)

👂 解説
  • 指示が通らないため安静の頸静脈所見は判定困難
  • 左上肢挙上で内頸静脈の明瞭な陥凹が出現(矢印)
  • 本人の発語が混入して心音は十分には評価できず
  • 最終的に収縮の保たれた心不全(HFPEF)であった

🙉 追加コメント
  • 米国の70歳以上の横断的な国民健康栄養調査では,難聴の有病率は心不全症例で74.4%と,非心不全症例の63.3%より高率です(JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2018;144:273-5).さらに心不全のある高齢者では難聴が強いほど活動性が低下することも報告されています(Clin Interv Aging 2020:15:635-43).
  • 上記の全米調査で心不全および難聴のある参加者のうち補聴器を着用しているのはわずか16.3%でした.聴力障害なら筆談で対応すればいいのではと思われますが,心不全患者では認知症が43%とかなり高率です(J Card Fail 2017;23:464-75).そんな時こそ左上肢の挙上負荷が役立つかもしれないので追加してみてください.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2022-03-15

自覚症状と身体所見の乖離:パート2

慢性左心不全で加療中の症例が息切れで来院



(投稿者 川崎)

2026-02-12

今週の一枚 🎯

息切れで来院(血液疾患で化学療法中)

😐 解説
  • 眼周囲の明瞭な浮腫(puffy eyes)
  • 浮腫は下眼瞼より上眼瞼で目立つ
  • 浮腫の部分は心持ち蒼白?(pale)
  • 座位で右側内頚静脈の拍動は陽性
  • 心音はギャロップ+全収縮期雑音
  • 最終診断は薬剤性心筋症(HFrEF)

👽 心不全 vs 眼
  • 眼瞼浮腫は必ずしも病的とは言えません(寝不足や号泣後).しかし本例のように上眼瞼が主体の浮腫なら心不全を想起させます(ただしエビデンスは見つからず)
  • 眼瞼浮腫で発赤がないことは炎症やアレルギーに伴う変化の除外に有用と思われます.(本例は血液疾患による貧血に加えて,心不全による血液の希釈も影響?)
  • 心不全の浮腫と言えば下腿浮腫ですが,眼瞼や陰嚢などにも出現することがあります.心不全での眼瞼浮腫の頻度を調べましたが見つけることができませんでした.
  • 心不全ガイドラインには「下腿(末梢あるいは四肢)の浮腫とそれ以外の浮腫」という分類がされています.「眼」という漢字は一つも記載されていませんでした.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-11-13

症状があてにならない時

息切れがあるのかないのかはっきりしない症例

😶 臨床現場
  • 座位では僅かに拍動あり? ➜ 心不全ありとは言えず
  • 吸気負荷で内頸静脈の隆起?(拍動なし)➜ 心不全?
  • 左上肢挙上で周期的な陥凹出現 ➜ 心不全ありと判断
  • 最終診断は慢性左心不全(HEpEF)➜ SGLT2i を投与

🔗 復習
  • 高齢者の心不全例では自覚症状が曖昧なことがあります.加齢に伴う身体活動の低下や各種知覚センサーの鈍化が原因と推測されます.また認知機能障害の合併も念頭に置く必要があります(自験例:ニコニコしている症例).システマティックレビュー(J Card Fail 2017;23:464-75)では,心不全患者で認知症の頻度が43%に達していました(95%信頼区間30~55).怪しければ吸気負荷に加えて左上肢挙上負荷や前屈負荷の追加が役立ちます.

※ 心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-06-12

STRONG-HF試験:GDMT急速増量戦略

  • 心不全に対する標準治療薬(例:Fantastic four)の早期導入の有効性と安全性を検証した前向きのランダム化比較試験
  • AHA2022で発表され同時に論文も掲載(Lancet 2022;400(10367):1938-52).STRONG-HF試験の視覚的資料は  ココ です

💕 STRONG-HF試験
  • 対象 標準的な薬物治療(GDMT)が充分には行われていない急性心不全入院例
  • 介入 退院2日前までに標準薬の至適用量の1/2以上導入+退院2週後までに全量
  • 結果 180日目までの心不全再入院と全死亡は介入群で低率(リスク比=0.66)
  • 解釈 急性心不全で入院後はGDMTの急速増量戦略が標準的な治療法よりも有用

😶 つぶやき
  • 心不全入院を経験した症例の5年生存率はおよそ50%(日本医事新報)で,全がん症例の62%(国立がん研究センター)より不良です.
  • 当院の心不全入院311例(2019.4~2021.3)の解析でも,院内死亡率5.7%,退院1年内に死亡5.3%,退院1年内に再入院31.7%と不良
  • 予後改善には心臓リハビリの外来継続や多職種介入,ハートノート導入に加え,GDMT急速増量戦略がとても重要と感じるこの頃です.

(投稿者 川崎)

2021-01-31

オーシェフ OSHEF

  • OSHEF=Osaka Stops HEart Failure(大阪心不全地域医療連携の会)
  • 北野病院と大阪市立総合医療センターで始まった心不全の病診連携
  • 学閥を超え大阪府下に広がっている(当院も北河内代表施設の一つ)
  • 診療情報・患者情報・評価方法を統一した”ツール”を用いて標準化
  • 患者さん自身が体重や症状などを数値化して緊急受診の要否を判定

OSHEFのホームページに記載された理念 💨
  • 大阪府下における心不全治療基幹病院、これら基幹病院と連携する医療機関、訪問看護ステーション、調剤薬局、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどの多施設・多職種が連携する組織体制を構築することにより、増大する心不全医療のニーズや地域医療構想の中で需要の受け皿としての役割を果たすための体制を整備し、患者さんのお住まいのエリアにおける心不全医療の発展に寄与することを目的としています。

OSHEFで1年後の予後改善(主に心不全入院を減少)が最近示された

(投稿者 川崎)

2026-07-29

AI 聴診器の研究から

TRICORDER 試験 👀 Lancet 2026;407(10529):704-15
  • 背景: 心血管疾患の早期発見は、世界的な公衆衛生上の優先事項である。人工知能(AI)搭載聴診器は、心不全、心房細動、弁膜症(VHD)のポイントオブケア検出において、優れた性能特性を発揮する。
  • 方法:英国のプライマリケア診療所を、介入群(日常診療におけるAI聴診器の使用に関するトレーニングと導入)または対照群(日常診療)に1:1でクラスター無作為化した。心臓検査中、AI聴診器は15秒間の単誘導心電図と心音図信号を記録し、3つのAIアルゴリズムに入力して、左室駆出率低下(≤40%)、心房細動、およびVHDの有無に関する二値予測を返した。
  • 結果:205の診療所がランダムに割り当てられた (介入群に96施設 [登録患者 701,933人]、対照群に109施設 [登録患者851,242人])。介入群の診療所では、心不全の検出はグループ間で差がなかった (IRR 0.94 [95% CI 0.86-1.02])。地域ベースまたは病院ベースの診断に差はなかった (p>0.05)。 
  • 解釈: AI聴診器を日常的なプライマリケアに導入しても、導入後12か月経過しても心不全の検出率や地域ベースの診断率は有意に増加しなかった。ただしAI聴診器の使用は、心不全、心房細動、弁膜症の検出率の有意な上昇と独立して関連していた。


😑 独り言
  • 少し分かりにくい結果かな~と思います。特に「AI聴診器の使用は、心不全、心房細動、弁膜症の検出率の上昇と関連するが、心不全の検出率や地域ベースの診断率は有意に増加しなかった」という点です。抄録の解析はIntention-to-treat analysisですが、図のPer-protocol adjusted incidenceでは差がありそうです(両解析法の違い)
  • これに関する筆者らのコメントAI訳 →「アルゴリズムの性能は良好であったにもかかわらず、3疾患の検出率の向上は集団規模では達成されず、使用状況に依存することが明らかになった。また、実世界での導入において克服すべき大きな課題、例えば低い利用率や関連するワークフローの不整合なども明らかになった。」…なるほど(!?)

💁 AI(人工知能)に関する過去投稿は コチラ(PC版なら右下欄から選択可能)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2022-11-03

心不全:大切な10事項

👾 ガイドラインの超抜粋(※)

  1. 4 Medication classes are now recommended as guideline-directed medical therapy for HFrEF: ARNI, ACEi or ARB, beta blockers, MRAs and the new group SGLT2i. ➜ HFrEFのガイドラインに沿った医学療法として、ARNI、ACEi または ARB、ベータ遮断薬、MRAおよび新しいグループSGLT2iの4つの投薬クラスが現在推奨されています。
  2. There are new medication recommendations for HFmrEF, including use of SGLT2i (class of recommendations 2a). ➜ SGLT2iの使用を含む、HFmrEFの新しい投薬の推奨事項があります (推奨クラス 2a)。
  3. There are new medication recommendations for HFpEF, including use of SGLT2i (class of recommendations 2a), MRAs (class of recommendations 2b) and ARNI (2b). ➜ SGLT2i (推奨クラス 2a)、MRA (推奨クラス 2b)、ARNI (2b) の使用を含むHFpEFの新しい投薬推奨事項があります。
  4. Patients with previous HFrEF who now have an LVEF >40% are referred to as having improved LVEF. They should continue their HFrEF treatment. ➜ 以前にHFrEFを患い、現在LVEFが40%を超えている患者は、LVEFが改善したと見なされます。 HFrEF治療を継続する必要があります。
  5. For many treatments, value statements have been created. High-value therapies include ARNI, ACEi, ARB, beta blocker, MRA, implantable cardioverter-defibrillator, and cardiac resynchronization therapy. Intermediate-value therapies include SLGT2i and cardiac transplantation. ➜ 多くの治療法について、価値声明が作成されています。価値の高い治療には、ARNI、ACEi、ARB、ベータ遮断薬、MRA、植込み型除細動器、心臓再同期療法などがあります。中間値の治療には、SLGT2iおよび心臓移植が含まれます。
  6. There are new recommendations for treatment of amyloid heart disease. ➜ アミロイド心疾患の治療に関する新しい推奨事項があります。
  7. If LVEF >40% evidence of spontaneous or provokable increased LV filling pressures is needed to confirm diagnosis of HF. ➜ LVEFが40%を超える場合、HFの診断を確認するには、自発的または誘発性の左室充満圧の増加の証拠が必要です。
  8. Patients with advanced HF and a wish for prolonged survival should be referred to a HF specialty team. ➜ 心不全が進行し、生存期間の延長を希望する患者は、心不全専門チームに紹介する必要があります。
  9. For those at risk for HF (stage A) or pre-HF (stage B), primary prevention is important. There was a revision of stages of HF to highlight the new terminology of “at risk for HF” (stage A) and “pre-HF” (stage B). ➜ 心不全 (ステージ A) または前心不全 (ステージ B) のリスクがある人にとっては、一次予防が重要です。 「HFのリスクがある」(ステージA)および「HF前」(ステージB)という新しい用語を強調するために、HFのステージの改訂がありました。
  10. Specific-treatment recommendations are provided for select patients with HF and iron deficiency, anemia, hypertension, sleep disorders, type 2 diabetes, AF, coronary artery disease and malignancy. ➜ HFおよび鉄欠乏症、貧血、高血圧、睡眠障害、2 型糖尿病、心房細動、冠動脈疾患、および悪性腫瘍の選択された患者に対して、特定の治療に関する推奨事項が提供されます。

👽 おまけ
  • 充実したガイドラインは重宝しますが,更新毎にボリュームが増しフォローすることが大変です.作成メンバーもそれを理解してか,今回の10項目の抜粋はとても助かります.
  • 今回の日本語訳(➜ 以降の部分)はGoogle翻訳をそのまま掲載してみました.きになる部分がないこともないのですが,着実に進歩するその技術には本当に驚かされます.

(投稿者 川崎)

2025-05-20

心不全のステージE(Stage E)

  • 心原性ショック分類に関するSCAI臨床専門家の合意声明で採用されている5分類の一つ(米国心臓病学会 ACC、米国心臓協会 AHA、集中治療医学会 SCCM、および胸部外科学会 STSによって承認)。
  • ステージAは心原性ショックの「リスクあり」、ステージBは「初期」ショック、ステージCは「古典的」心原性ショック、ステージDは「悪化中」、そしてステージEは「極限状態」である。
  • BとCの違いは低灌流の存在である。Dは選択された初期介入を行っても30分間で適切な灌流が回復していない。Eは極限状態にあり、非常に不安定で、多くの場合、心血管虚脱を伴う。

- 心原性ショック分類のピラミッド -

  • 上記の心原性ショックに限定した分類(ステージA~Eの5分類)とは異なり、心不全の長い軌跡を一連の病態として捉えた病期分類もあります。
  • こちらの分類(ステージA~D)の方が圧倒的に有名で、心不全の適切な治療介入やケア、早期発見の目的のために日常臨床で活用されています。

- 心不全のステージ分類 -

💁 心不全分類 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)