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2024-03-31

循環器関連学会:略語集

  • ESC (European Society of Cardiology) ➜ 欧州心臓病学会
  • AHA (American Heart Association) ➜ アメリカ心臓協会
  • ACC (American College of Cardiology) ➜ 米国心臓病学会
  • WHF (World Heart Federation) ➜ 世界心臓連盟
  • APSC (Asian Pacific Society of Cardiology) ➜ アジア太平洋心臓病学会
  • JCC (Japanese College of Cardiology) ➜ 日本心臓病学会
  • JCS (Japanese Circulation Society) ➜ 日本循環器学会
  • OCC (Oriental Congress of Cardiology) ➜ 东方心脏病学会议
  • KSC (Korean Society of Cardiology) ➜ 대한심장학회(大韓民国循環器学会)
  • TSOC (Taiwan Society of Cardiology) ➜ 中華民國心臓學會
  • CSC (Chinese Society of Cardiology) ➜ 中华医学会心血管病学分会
  • GW-ICC (Great Wall International Congress of Cardiology) ➜ 长城心脏病学大会

🉐 略語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-30

先日の学会スライドで見かけました 👀 ”s/p Dor手術”

  • s/pStatus Postの略で「〜の後/既往あり」の意味(つまりDor手術の後)
  • Dor(ドール)は左心室形成術の一つ(他にSAVEやELITEなどの形成法あり)
  • もちろんs/oSuspect Ofの略で「~の疑い」(例:s/o DM=糖尿病の疑い)

💁 略語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-29

ベルンハイム症候群 Bernheim's syndrome

  • 右室内腔の狭小化のため右心不全を呈する左心系の疾患.Bernheim が100年以上前に報告(De l'asystolie veineuse dans l'hypertrophie du coeur gauche par stenose concomitante du ventricule droit. [仏語:右室狭窄を伴う左心肥大の静脈性不全収縮] Rev de WV 1910;30:785-801).
  • ただしベルンハイム症候群に懐疑的な報告も少なくないようで,最近では目にすることはほとんどないと思われる.2000年以降でGoogle scholarの検索ではわずかに33件がヒット(実際の検索).日本語では全期間を通してもわずか数編程度でしょうか?

ベルンハイムのオリジナル論文からの図の転載

👿 深掘り

仁村泰治先生が「肥大型心筋症に伴う右室流出路狭窄と"Bernheim症候群"」という題でeditorial commentを発表されています(心臓 1992;24:1309-12).ベルンハイムの提案した項目をわかりやすくまとめられています(下記).このベルンハイム症候群に対しては少し懐疑的な見方を示しつつ,ベルンハイム効果とういう観念で考えるならば意味はあると述べられておられるところはさすがです.同効果はこの心臓フィジカル広場でも頻出です(ココ).

  1. 左心系の疾患であって,左室肥大ないし拡張が著しい
  2. 肺うっ血はなく,臨床的にも起坐呼吸,咳など,それに相当する症状はない
  3. 直接に右心不全を来たすような右心,肺循環系の疾患はない
  4. 左室の肥大,拡張ないし心室中隔の肥大のため,中隔は右室腔内に凸に膨隆し,そのため,右室,特にその下半は狭小化している.ロート部はかえって代償的と見られる肥大,拡張を示していることが多い
  5. 頸静脈怒張,肝腫大,下肢浮腫など右心不全症状が見られる
  6. 以上の事柄からこの右心不全は,通常考えられるような左心不全→肺循環負荷→右心不全と言う経過を辿ったものでなく,上述のような右室内腔の狭小化のため,静脈還流が制限され,左心不全,肺循環負荷とは関係なしに,右心不全の状況を来たしたと考えられる

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(投稿者 川崎)

2024-03-28

今週の一枚 🎯 傍胸骨拍動の吸気負荷

CTEPHで外来通院中の症例(仰臥位で左が頭側)

🐳 解説
  • 傍胸骨に置いた聴診器に明らかな拍動なし
  • 吸気に伴い聴診器に上下運動が出現(矢印)
  • 拍動は数拍持続しその後に不明瞭になった
  • 本例は状態は安定し日常生活で息切れなし
  • ただし心エコー図で軽度の肺高血圧は残存

🐟 復習
  • 抬起性の傍胸骨拍動は肺高血圧に伴う右室圧負荷を示唆します.稀に左房負荷(自験例)や肺動脈拍動(自験例)もあります.本例で認めた吸気負荷に伴う傍胸骨拍動の出現は潜在的な肺高血圧を示唆していると思っています.
  • 吸気中は中心静脈圧に加えて肺動脈圧や体血圧も上昇するため(過去の投稿),理論的には吸気負荷で傍胸骨拍動は増強されるはず.しかし同時に胸腔容積も増大して右室と胸骨の密着度の低下から相殺される可能性もあり?

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-03-27

WIfIワイファイ分類

  • 包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb-threatening ischemia: CLTI)で使う重症度分類
  • 創(wound),虚血(ischemia),感染(foot infection)の3項目から判定する(下表)
  • Vascular Surgery Lower Extremity学会が提唱した分類法(J Vasc Surg 2014;59:220-34
  • SPP値との関連:0は≧50 mmHg/1は40~49 mmHg/2は30~39 mmHg/3は<30 mmHg
  • 1年後までの大切断率はWIfI ステージが上がるにつれ上昇して特にStage 4では38%と高率



💫 おまけ
  • 無線LANのWi-Fiはブランド コンサルティング会社 Interbrand による造語で,業界団体 Wi-Fi Alliance の商標登録.Wireless Fidelity(忠実度)の短縮形ではなく,WiFiやWifi,wifiとも記載されますがWi-Fi Allianceの承認はないそうです().
  • 1997年当時のWi-Fi(当時は別名)から無線周波数は2.4 GHzですが,その速度はたったの1-2 Mbit/秒でした.2024年時点(名称はWi-Fi7)では周波数2.4 GHz,5 GHz,6 GHzが利用可能で,速度は1,376–46,120 Mbit/秒にまでアップしています.

(投稿者 川崎)

2024-03-26

脾摘&ニューモバックス®NPシリンジ

  • 脾摘後重症感染症(overwhelming postsplenectomy infection, OPSI)予防が重要
  • OPSIではS. pneumoniaeなどの感染症罹患で数時間〜数日で50~75%が死亡しうる
  • 本邦で脾摘後の保険適用はPPSV23(ニューモバックス)のみ(プレベナー13なし)
  • 予定脾摘なら摘出2週前,緊急脾摘なら摘出2週以降にPPSV23(以後は共に5年毎)

💉 ニューモバックス®の効能又は効果添付文書

2歳以上で肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高い次のような個人及び患者

  • 脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防
  • 肺炎球菌による感染症の予防
    1. 鎌状赤血球疾患、あるいはその他の原因で脾機能不全である患者
    2. 心・呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏等の基礎疾患のある患者
    3. 高齢者
    4. 免疫抑制作用を有する治療が予定されている者で治療開始まで少なくとも14日以上の余裕のある患者

💁 脾摘に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-25

指先拍動徴候 Throbbing fingertip sign

息切れと心雑音で受診した症例

😀 解説
  • 無負荷の状態では爪床の色調変化(クインケ徴候)は陰性
  • 爪床圧迫で僅かにQuincke's pulseを認める?(動画中の*)
  • そこでスマホ光源法を追加したがクインケ脈はやはり陰性
  • しかし指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)あり(→)
  • 最終診断は中等症MR+軽症〜中等症ARによる慢性心不全

    😄 追加コメント
  • 指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)は指先の容積変化で,大脈を反映していると考えられます.非常にわずかな変化なので通常の肉眼で視認することは難しいと思われますが,ライトアップすれば本例のようにわかりやすくなります.
  • 本例の指先拍動徴候は非圧迫で観察できている点がポイントかもしれません(圧迫法で出現したthrobbing fingertip sign).つまりクインケ徴候よりも感度が高い可能性があります.経験された方はコメント欄に記載してもらえると嬉しいです😊

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(投稿者 川崎)

2024-03-24

封入体筋炎 Sporadic Inclusion Body Myositis(sIBM)

  • 概略 緩徐進行性の筋疾患で特徴的な縁取り空胞(下図)
  • 疫学 50歳以上の男性に多く現在日本には1,000~1,500人
  • 症状 初発は74%が大腿四頭筋の脱力による階段昇降困難
  • 採血 血清CK値は正常から正常上限の10倍程度まで上昇
  • 抗体 診断に対する抗cN1A抗体の感度は70%,特異度92%
  • 治療 確立されておらずほとんどの例でステロ イド無効
  • 予後 筋力低下で寝たきりから誤嚥性肺炎で死亡が多い


封入体筋炎の71歳男性で右胸外側筋の筋生検(図3Cに封入体)

💁 筋炎に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-23

後頭神経痛 Occipital neuralgia

  • 症状 発作性で数秒から数分持続する刺すような後頭部痛
  • 分布 大後頭神経,小後頭神経,第3後頭神経に関連する
  • 誘因 長時間の同一姿勢や頚椎の異常,精神的ストレス他
  • 疫学 10万人あたり約3.2人で初診時の平均年齢は54.1歳
  • 診断 病歴と身体検査,診断用神経ブロックに対する反応
  • 鑑別 片頭痛,群発頭痛,緊張性頭痛,頸椎筋靭帯性など
  • 治療 NSAIDs,抗うつ薬,ブロック注射,ボツリヌスなど
  • 予後 通常は1週間ほどで軽減(稀に数ヵ月続くことあり)


大後頭神経と小後頭神経の走行概略図

💁 頭痛に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-22

カメラベースの頸静脈評価:レビュー論文

  • Arrow C, et al. Capturing the pulse: a state-of-the-art review on camera-based jugular vein assessment. Biomed Opt Express 2023 Nov 28;14:6470-92
  • ざっくりまとめると「方法論に改善の余地はあるがカメラベースの頸静脈評価は定量的あるいは定性的な特徴付けが可能」だそうです(下表)

😐 独り言
  • Artificial intelligence(AI)のアルゴリズムにかかれば,顔写真から虚血性心疾患の有無や胸部X線から糖尿病の有無が推測できる時代です(過去の投稿).ただ頸静脈評価に関しては,AIを用いたシステムはまだ開発されていないようです(上記論文の著者が本文で言及).
  • 将来的にはスマホで撮影すればAIがすぐに判定してくれるかもしれません(手ブレは気になりますが背景から完璧に補正と予想).ただし頸静脈の座位定性法は簡便なので,わざわざスマホを使わなくても...とも思います(患者さんもカメラを向けられると構えますし)

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(投稿者 川崎)

2024-03-21

今週の一枚 🎯

息切れと発熱と全身痛で来院した男性

👤 間質性肺炎
  • 両肺野に透過性低下が散在している
  • 頻度からは細菌感染や真菌感染疑い
  • 細菌は検出されずβDグルカンも陰性
  • 多発関節炎+上肢近位部筋炎を合併
  • 抗Jo-1抗体が550 U/ml(基準値<10)
  • よく見るとヘリオトロープ疹もあり?
  • 膠原病に関連した間質性肺炎と判断
  • 最終的に抗ARS抗体症候群と診断した

👥 抗合成酵素症候群 Anti-synthetase syndrome (ASS)
  • 抗合成酵素症候群は女性優位で(1:3~4),平均発症年齢は50歳代,筋力低下は左右対称性で近位筋優位が多い.
  • 筋外症状の中で最も頻度が高くまた生命予後を左右するのが間質性肺炎であり,抗合成酵素症候群の80%で認める.
  • 本例はステロイド(60 mg/日)+タクロリムスの投与で寛解導入.器質化肺炎像は瘢痕を残さずほぼ消退している.
👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-03-20

ハイパーナイフ Hyperknife

  • エステサロンなどで活用されている痩身機器のひとつ
  • 高周波を用いて脂肪をほぐす?(脂肪の減少はない)
  • むくみや肩こりが解消されリンパの流れも改善する?
  • 施行後に有酸素運動を組合わせることでより効果的?


💁 美容に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-19

日本内科学会 第243回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題14 痙攣発作にて発症したMOG抗体関連疾患(MOGAD)の1例
  • 自己免疫性脳炎の診断でステロイドパルス療法および抗てんかん薬投与を行った。血液・髄液検査にて抗MOG抗体陽性が判明しMOG抗体関連疾患と診断した。成人発症のMOG抗体関連疾患は視神経炎や脊髄炎として発症することが多い。

演題37 急激な経過で死亡したpheochromocytoma multisystem crisis(PMC)の1例
  • 来院時は不穏状態で,体温38.5℃・血圧200/110mmHg・心拍数142/分・SpO2 70%(カヌラ2L/分)で末梢冷感著明であった。腹部CTで長径7cm大の左副腎腫瘍を認め褐色細胞腫の合併が疑われた。著しい低左心機能を原因とした肺水腫であったためECMO/IABPを導入し血管拡張薬やα遮断薬を開始したが,5時間後に再度心停止となり永眠された。PMCは多臓器不全や精神症状,血圧異常など多彩な症状を示し,急性期での診断は困難である。

演題57 Eight-and-a-half症候群を呈しMRI拡散強調像は偽陰性であった橋梗塞の1例
  • One-and-a-half症候群に末梢性顔面神経(VII)麻痺を合併するものをeight-and-a-half症候群と呼ぶ。本例は左MLF(medial longitudinal fasciculus:内側縦束)症候群と左側方注視麻痺を認め,左one-and-a-half症候群であった。さらに左末梢性顔面神経麻痺も認め,eight-and-a-half症候群を呈しており,病巣は左橋下部被蓋の傍正中部と局在診断した。

演題139 glomus腫瘍の1例
  • 症例は50歳代,女性。卵巣腫瘍術前の胸腹部造影CTにて胃前庭部に18mmの濃染される粘膜下腫瘍を認めた。上部消化管内視鏡検査では胃前庭部大弯に20mmの粘膜下腫瘍(SMT)を認めた。glomus腫瘍は四肢末端に存在し体温や血流調節に寄与しているとされるglomus体に由来する非上皮性腫瘍である。glomus腫瘍は胃の間葉系腫瘍の約1%と稀である。

演題191 児にFemoral Facial Syndromeを認めた2型糖尿病合併妊娠の1例
  • 第2病日に選択的帝王切開術施行。児は口唇口蓋裂,大腿骨・腓骨欠損、四肢拘縮・短縮を認めFemoral Facial Syndrome (FFS)が疑われた。FFSは大腿骨低形成や眼瞼斜列上・上唇の菲薄化・小顎症等特徴的な顔貌を呈する疾患で,本邦では数例しか報告されていない。


👻 当院からの発表
  • 演題228 膿胸治療中にバンコマイシン関連円柱腎症を来した1例(腎臓内科 野一色陽菜先生)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-03-18

Advanced but stable HF

慢性左心不全で通院中の症例(座位)

😊 解説
  • 座位で内頸静脈の拍動 ➜ 中心静脈圧は高度に上昇
  • 拍動は陥凹でなく隆起で上縁は下顎角より上(矢印)
  • 左上肢垂直挙上負荷を行うが所見にあまり変化なし
  • 外頸静脈の拍動上縁も安静・負荷ともに頸部の中央
  • 本例の症状は安定し労作時の増悪もあまり認めない

😎 独り言
  • 座位で内頸静脈拍動を視認(座位陽性)なら,中心静脈圧の高度上昇が疑われます(>15 cm水柱).本例のように上縁が高くかつ隆起型ならほぼ確定です.このような症例には通常何らかの対策が必要です(利尿薬追加や入院加療).しかし治療抵抗性の座位陽性例も臨床現場では稀ながら経験します.
  • 左上肢の挙上負荷は吸気負荷よりも心負荷が大きいと思われます(機序:過去の投稿).座位陽性心不全症例で,その高負荷に対する頸静脈所見の増悪が乏しければ,労作時の症状増悪が少ないような気がします.つまり悪いながら安定している心不全(advanced but stable HFかもしれません.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-03-17

番外編:ブロッケン現象

先日,ドラマでブロッケン現象というセリフがでてきました.循環器でブロッケンといえばブロッケンブロー現象 (Brockenbrough phenomenon)とブロッケンブロー手技 (Brockenbrough maneuver)です(過去の投稿).ブロッケン現象は医学とは何の関係もありませんがブロッケンつながりで調べてみました😁  

👻 ブロッケン現象(Brocken spectre)
  • 空中に生じる観察者の拡大影で虹色の輪を伴うこともある
  • 均一な水滴が光を屈折させて後方散乱させ反対側に生じる
  • 例えば霧のかかった山腹や飛行機から太陽と反対側に出現
  • 名称はドイツにあるブロッケン山で時折り観察されたため
  • 日本では御来迎や仏後光などと言われるが欧米は妖怪扱い

- ブロッケン現象の実例 -

(投稿者 川崎)

2024-03-16

アリセプトと失神

📞 先日,先輩医師からアリセプトによる失神を3例経験したと教えてもらいました


  • アリセプト(一般名ドネペジル塩酸塩)はアルツハイマー型とレビー小体型の認知症の治療薬
  • 神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素コリンエステラーゼを阻害して効果を発す
  • アセチルコリンは心臓のムスカリン受容体にも作用して抑制的効果から徐脈や低血圧をきたす
  • 洞不全症候群(その頻度不明),洞房ブロック・房室ブロック・失神(各頻度0.1〜1%未満)
  • アリセプトはQT延長(0.1〜1%未満)から心室頻拍(Torsade de pointes含)・心室細動あり
  • 過量投与に対する処置は抗コリン作用を有するアトロピン(アセチルコリンのアンタゴニスト)


💁 失神に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-15

PFS: pressure-flow study 内圧尿流検査 

  • 概略 下部尿路機能(特に膀胱機能)を客観的に評価するための機能的検査
  • 対象 尿排出障害(例:前立腺肥大症)や排尿筋低活動を示す神経因性膀胱
  • 方法 排尿時の膀胱内圧,腹圧(直腸内圧),尿流率を同時に測定(下図)



(投稿者 川崎)

2024-03-14

今週の一枚 🎯

意識消失でERに搬入された高齢男性(到着時には意識改善)

👽 解説
  • 両側大脳にDWIで高信号が散在
  • DWI高信号部位はADCで低信号
  • 急性期の脳梗塞に合致(右優位)
  • その分布は分水嶺領域で目立つ
  • 脳室はやや拡大し水頭症を考慮
  • 黒色便があり活動性の胃潰瘍!
  • 採血で高度貧血があり輸血開始
  • 最終的に分水嶺梗塞と診断した
  • 意識消失は潰瘍からの出血疑い

👿 分水嶺梗塞(Watershed infarction)
  • 各脳動脈で栄養される境界領域に生じた脳梗塞で血行力学的(一過性の低血圧など)に生じることが多い(分類はアテローム血栓性脳梗塞).
  • 貧血単独で分水嶺梗塞に至ることは少ないと思われる.本例は右中大脳動脈の末梢描出が不良かつ右内頚動脈サイフォン部に狭窄を伴っていた.
👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-03-13

グレープフルーツ

🏨 外来での一コマ
  • 患者さん 「血圧の薬はグレープフルーツダメなんですか?」
  • 担当医師 「そうですよ.だから薬は水で飲んでください」
  • 患者さん 「ええ.もし一緒にとったらどうなるんですか?」
  • 担当医師 「え〜っと...確か...血圧が下がりすぎる...ような」
  • 患者さん 「効きすぎるんですね.でもどうしてですか?」
  • 担当医師 「...どうしてなんでしょう...😓」

🍊 グレープフルーツによる薬物相互作用
  • DHP系Ca拮抗薬,ミダゾラム,トリアゾラム,シクロスポリンと同時服用で血中濃度が上昇
  • 降圧薬は水の服用時に比較して最高血中濃度は3.3倍,血中濃度時間曲線下面積は2.2倍↑
  • ただし同じ柑橘類でもオレンジやミカン,レモン,ザボン,ボンタン,夏ミカンでは生じない
  • 機序は小腸のCYP3A4活性を選択的に阻害し薬剤の生体内利用率を高めるためと思われる


(投稿者 川崎)

2024-03-12

役職:CxO

🏢 最近は医療業界以外の方と会う機会も増えてきました
  • CEO:Chief Executive Officer ➜ 最高経営責任者
  • COO:Chief Operating Officer ➜ 最高執行責任者(通常はCEOの次)
  • CTO:Chief Technical Officer ➜ 最高技術責任者
  • CSO:Chief Strategy Officer ➜ 最高戦略責任者

他の肩書きは コチラ

👾 おまけ
  • CPU:Central Processing Unit ➜ 中央演算装置(システムの司令塔で複雑な計算が得意)
  • GPU:Graphics Processing Unit ➜ 画像演算装置(並列処理が得意で高速画像処理を担当)
  • APU:Accelerated Processing Unit ➜ CPUとGPUを合わせた処理装置で米国のAMDが販売

(投稿者 川崎)

2024-03-11

👴 歴史クイズ




(投稿者 川崎)

2024-03-10

アルティメット Ultimate

🚑 若者が全身の筋力低下でERに搬入
  •  医師「何か激しい運動していますか?」
  •  青年「アルティメットをやってます」
  •  医師「アルティメット...(何それ?)」
(※最終診断は周期性四肢麻痺)

🏃アルティメット(Ultimate)
  • 100m×37mのフィールドで行われる7人制のチームスポーツ
  • 意味は究極で技術・走力・持久力など様々な能力を要すため
  • 1968年にアメリカの高校生であるジョエル・シルバが考案
  • フライングディスクをパスしコート端でキャッチすれば得点
  • 身体接触は禁止され世界大会では17点の先取で勝敗を決定


アルティメット(Ultimate)| 競技紹介

💁 スポーツに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-09

膀胱三角部 Trigone of urinary bladder

  • 2つの尿管口と内尿道口によって形成される内膀胱の滑らかな三角形領域
  • 膀胱三角部は拡張に敏感で尿量を知覚する伸展知覚・圧迫知覚神経が集中
  • 同部位は感染症(三角炎/trigonitis)が生じやすく様々な排尿異常に至る
  • 感染症以外にも膀胱三角部にはマラコプラキアが生じやすい(特に女性)


(投稿者 川崎)

2024-03-08

AR:指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)

重症の大動脈弁逆流例(症状なし)

💅 解説
  • 無負荷状態ではクインケ徴候陰性(陽性例
  • 爪床圧迫を追加したがそれも陰性(陽性例
  • そこでスマホ法を追加したが陰性(陽性例
  • さらにスマホ法に圧迫法を追加したが陰性
  • しかし照明の境界部分が明瞭に拍動(矢印)

 😎 解釈
  • 大動脈弁逆流症は一回拍出量が増大する大脈です.これが指先の大きな容積変化を生じ,拍動として観察されているのではと推測します.
  • 被検者ではなくて検者(つまり指を抑えている本人)の拍動が伝わっているのかなとも思いましたが,自分の拍動とは異なるリズムでした.
  • この症例は個人的に指先拍動(throbbing fingertip)と呼んでいます.ARの新たな(?)身体所見として有用かは症例の集積が必要ですが...

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-03-07

個人情報の第三者提供

  • 先日,医療機関から画像提供の依頼がありました(個々の症例に対する紹介状ではなくて包括リストでの依頼).通常,個人情報の第三者提供にはご本人からの同意取得が必要です.しかし今回は以下の条件に合致していたため個人情報保護の例外になるようです.

Q4-13
  • がん検診の2次検診機関として患者の精密検査を行った場合、1次検診機関から、精密検査結果の提供を求められることがありますが、患者の精密検査結果を提供する場合には、患者の同意を得る必要があるのでしょうか。



A4-13
  • がん検診については、がん検診全体の精度管理のために、1次検診機関においては、必要に応じ、精密検査の結果等を記録することとされており、2次検診機関は、1次検診機関から、患者の精密検査結果を提供するよう依頼を受けることがあります。
  • その際に、2次検診機関において、患者に対し、1次検診機関に精密検査結果を提供する旨の同意を得ることは、その性質上、患者の強い不安を招きやすく、また、同意が得られた患者のみ精密検査結果を提供することはがん検診全体の制度管理に影響を与えることが考えられます。
  • このため、がん検診の精度管理のために、2次検診機関が、1次検診機関に患者の精密検査結果を提供することは、個人情報保護法第23条第1項第3号(公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき)に該当し、あらかじめ患者の同意を得る必要はありません。


💁 個人情報に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-06

BeSMART:語呂合わせ


パーキンソン症候群に伴う症状の語呂合わせ
  1. Bending/forward tilt ➜ 屈曲/前傾
  2. Shuffling gait ➜ 引きずり足歩行
  3. Mask like face ➜ 仮面様顔貌
  4. Akinesia ➜ 運動失調
  5. Rigidity ➜ 固縮
  6. Tremor ➜ 振戦

💁 パーキンソンに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-05

アスピリン喘息:AIA→AERD→N-ERD

  • 従来はAIA(aspirin-induced asthma)であったが近年はAERD(aspirin-exacerbated respiratory disease)と呼ばれるようになってきた.その本体はプロスタグランディン(PG) 合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1阻害作用をもつNSAIDsにより,気道狭窄症状(鼻閉,喘息など)を呈する非アレルギー性の過敏症(不耐症)である.よって最近ではN-ERD(NSAIDs-exacerbated respiratory disease)という用語が提唱されている.これはNSAIDs不耐症の気道型で,他のNSAIDs不耐症は皮膚型(急性および慢性蕁麻疹や血管浮腫)や混合型(気道型+皮膚型)である.
  • AERDの誘発閾値は常用量の1/5以下のため,少量でも十分な注意を要する.過敏症状は,NSAIDsの注射薬,坐薬,内服薬の順に出現が早く重篤である.貼付薬,塗布薬,点眼薬も禁忌と考える(下の表2を参照).また添加物(とくにパラベンや亜硫酸塩)を含有した医薬品(吸入薬や液体薬)の急速投与やミント摂取練り歯磨きにより,とくに重症不安定例では過敏反応が生じる場合がある.正確な機序は不明であるが,添加物やミントが,NSAIDsと構造式上類似しており,弱いCOX-1作用を有していると推定する専門家も多い.





💁 アスピリンに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-04

🔍 最新論文:流し読み

📍 Cannon A wave validation as a diagnostic tool in paroxysmal supraventricular tachycardias



  • 背景 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)のフロッグ徴候(キャノン A波)は伝統的に知られているが体系的評価はされていない
  • 対象 短いVA間隔(AVNRT+中隔副経路AVRT)と長いVA間隔(非定型AVNRT+左自由壁副経路AVRT)に分類した100名
  • 結果 キャノンA波はAVNRTと関連しないが(p = 0.058),短いVA間隔と関連(p<0.001).CVPはVA間隔と反比例(p<0.001)
  • 結論 キャノンA波の存在は短いVA間隔の頻脈という最終診断と関連する

CVPとVA間隔は逆相関
CE-542-03(同グループの発表抄録)

👽 追加コメント
  • フロッグ徴候の機序(房室弁の閉鎖時に右房収縮)を考えれば本研究の結果は理にかなっています.きっと症例数が増えればフロッグサインとAVNRTは有意に関連してくると推測します(本研究では100症例の検討でp = 0.058).
  • 中心静脈圧の上昇は頻脈期間や基礎心疾患とも関連しそうです.心不全を伴えば中心静脈圧が上昇し頸静脈拍動がより明瞭になるからです(自験例).このカエルサインハミングバード徴候(当院提唱)の普及に期待しています.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-03-03

ベル麻痺 vs HSV-1

😐 ベル麻痺(日本語Wiki)の冒頭
  • ベル麻痺(ベルまひ)とは、顔面神経の麻痺によって障害側の顔面筋のコントロールができなくなった状態のことである。顔面神経麻痺の原因として脳腫瘍、脳卒中、ライム病などがあるが、原因が特定できない場合にベル麻痺と呼ばれる。(※ただし本体には1型単純ヘルペスウイルス感染に関するコメントあり)

😑 Bell's palsy(英語Wiki)
  • 一部の研究では、神経内液サンプリングによりベル麻痺と診断された症例の大部分で単純ヘルペスウイルス1 型 (HSV-1) が同定されている(Ann Intern Med 1996;124:27-30).しかし、他の研究では、ベル麻痺と診断された合計176例のうち、31例 (18%) で HSV-1、45例 (26%) で帯状疱疹が特定された(Auris Nasus Larynx 2001;28:S13-7).

😕 ベル麻痺 2019(日本神経治療学会ガイドライン)の「はじめに」
  • Bell 麻痺は,原因不明の急性発症片側性顔面神経支配筋麻痺を呈する症候群であり,急性顔面神経単ニューロパチーの最も一般的な原因である.但し,現在 Bell 麻痺の主な原因として単純ヘルペスウ イルスの関与が示唆されており,必ずしも原因不明とは言えないと考えられる.

😶 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のホームページ
  • 「ベル麻痺」は、単純ヘルペスウイルスが関与し、「ハント症候群」は、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化により発症することがわかっています。疲れやストレスで免疫が落ちると、おとなしくしていたウイルスが暴れだし神経を障害します。顔面神経麻痺はウイルスが顔の神経を襲ってくる病気と言えます。

🔔 ベル麻痺に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-02

骨化性筋炎 🦴 myositis ossificans

  • 概略 異所性骨化が特徴的な良性軟部病変(外傷性と非外傷性に大別)
  • 誘引 60-75%はスポーツによる外傷や手術の既往後に生じる外傷性
  • 疫学 良性軟部腫瘍の0.2%で全年代に発症(特にスポーツ外傷の若者)
  • 部位 通常は外傷を受けやすい部位である大腿部や上腕部等の腹側他
  • 病理 筋組織内に線維芽細胞の増殖と類骨組織が形成 → 類骨が石灰化
  • 治療 患部安静(36%が完全消失),外科切除(ただし刺激再発あり)


10週間前の外傷を契機に骨化性筋炎を発症した16歳の少年

(投稿者 川崎)

2024-03-01

Malakoplakia マラコプラキア

  • 概略 細胞質内にMichaelis-Gutmann body(下図矢印)を有す慢性肉芽腫性炎症性疾患
  • 命名 ギリシャ語のMalako(柔らかい)とPlako(プラーク)に由来(適切な邦名なし)
  • 報告 1902年にMichaelisとGutmannが報告して,1903年にvon Hansemannが命名した
  • 原因 マクロファージによる細菌(通常グラム陰性菌で特に大腸菌)の不十分な死滅?
  • 部位 女性の膀胱三角部に好発(他には尿路系全般,前立腺,精巣,卵巣,胃,肝など)
  • 治療 経口抗生物質と必要に応じて外科的切除(免疫不全状態なら原疾患の治療も必要)


65歳女性の膀胱に発生したmalakoplakiaの1例

(投稿者 川崎)