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2026-08-03

循環器フィジカル - 100本ノック -


循環器領域の身体所見を学習するために作成された無料アプリ「循環器フィジカル -100本ノック-」の動画版です.2026年4月から循環器Physical Examination講習会の公式SNSに毎週金曜日にアップしています.こちらのコンテンツにも2週分ずつまとめてアップします.

👻「フィジカルノック」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-07-29

AI 聴診器の研究から

TRICORDER 試験 👀 Lancet 2026;407(10529):704-15
  • 背景: 心血管疾患の早期発見は、世界的な公衆衛生上の優先事項である。人工知能(AI)搭載聴診器は、心不全、心房細動、弁膜症(VHD)のポイントオブケア検出において、優れた性能特性を発揮する。
  • 方法:英国のプライマリケア診療所を、介入群(日常診療におけるAI聴診器の使用に関するトレーニングと導入)または対照群(日常診療)に1:1でクラスター無作為化した。心臓検査中、AI聴診器は15秒間の単誘導心電図と心音図信号を記録し、3つのAIアルゴリズムに入力して、左室駆出率低下(≤40%)、心房細動、およびVHDの有無に関する二値予測を返した。
  • 結果:205の診療所がランダムに割り当てられた (介入群に96施設 [登録患者 701,933人]、対照群に109施設 [登録患者851,242人])。介入群の診療所では、心不全の検出はグループ間で差がなかった (IRR 0.94 [95% CI 0.86-1.02])。地域ベースまたは病院ベースの診断に差はなかった (p>0.05)。 
  • 解釈: AI聴診器を日常的なプライマリケアに導入しても、導入後12か月経過しても心不全の検出率や地域ベースの診断率は有意に増加しなかった。ただしAI聴診器の使用は、心不全、心房細動、弁膜症の検出率の有意な上昇と独立して関連していた。


😑 独り言
  • 少し分かりにくい結果かな~と思います。特に「AI聴診器の使用は、心不全、心房細動、弁膜症の検出率の上昇と関連するが、心不全の検出率や地域ベースの診断率は有意に増加しなかった」という点です。抄録の解析はIntention-to-treat analysisですが、図のPer-protocol adjusted incidenceでは差がありそうです(両解析法の違い
  • これに関する筆者らのコメントAI訳 →「アルゴリズムの性能は良好であったにもかかわらず、3疾患の検出率の向上は集団規模では達成されず、使用状況に依存することが明らかになった。また、実世界での導入において克服すべき大きな課題、例えば低い利用率や関連するワークフローの不整合なども明らかになった。」…なるほど(!?)

💁 AI(人工知能)に関する過去投稿は コチラ(PC版なら右下欄から選択可能)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-07-28

心音クイズ:Q1

心音の無料ゲーム「心音マイスター」より


💫 解説
  • S1とS2の間が収縮期で、S2とS1の間が拡張期です。ほとんどの症例で収縮期より拡張期の方が長くなります。
  • よって「S1-S2-休み」という塊で心音を理解するように心がけていると、S1とS2をより鑑別しやすくなります。

😎 補足
  • 本例は健常者で記録された正常の心音です。少し注意すると、音量はS1の方がS2よりも大きいことに気が付きます。
  • よってこの心音は心尖部で記録されていることになります。逆に心基部の記録ならS2の方がS1 より大きくなります。

(投稿者 川崎)

2026-07-26

Les Archives du Cœur 心臓音のアーカイブ

  • フランスの芸術家 Christian Boltanski(1944-2021)が、人々が生きた証として開始した心臓音を収集するプロジェクト
  • 香川県にある豊島(てしま:14.5㎢、人口約760人)にあり、世界各地で採録された人々の心臓音を恒久的に保存・公開
  • 入場料はオンライン600円、当日700円(※15歳以下は無料)で、録音料は1,570円(CDブックレットを含む)(詳細


😎 独り言
  • 心音フリークの投稿者としては、実際に行ってみて、いろんな心音を聴きたいと思います。そして是非、自分の心音もアーカイブに加えるつもりです。永久に残るという触れ込みですし…
  • 使用機器が気になります。心音の録音はノイズとの闘いだからです。心雑音はともかく、過剰音(特に低調成分)はノイズとして消え去りそう…いずれにせよいつか訪問記をアップします。

(投稿者 川崎)

2026-07-23

今週の一枚 🎯

2週間前からの動悸と息切れで来院

🔒 解説
  • 両側の外頚静脈が隆起(呼吸変動なく怒張)
  • 頚部に拍動ありそう → 陥凹の疑い(矢頭)
  • 左だが内頚静脈の視認なら非代償性心不全
  • その拍動は規則正しく早い(>100回/分)
  • 病歴からも頻拍誘発性の心筋症が疑われた
  • 最終診断は2:1伝導の心房粗動による心不全

😶 独り言
  • 座位での外頚静脈の視認は必ずしも心不全とは言えません。頚部の筋緊張等で静脈灌流が阻害されることがあるためです。しかし本例のように両側で怒張している場合は、中心静脈圧の上昇が疑われます。なお怒張という用語は注意を要しますが(過去の投稿)、本例ではOKです。
  • 本例の頚部の拍動は内頚静脈の陥凹です(陥凹時間<隆起時間)。しかし一見、隆起か陥凹かの区別が難しいかもしれません。これは特に頻脈症例で多いと思いますが、こういう場合は右側よりも左側の方が分かりやすい症例があります。なお隆起なら頚動脈拍動との鑑別が必要です。
  • 動脈か静脈かの鑑別は触診をすればすぐに分かると思います。しかしそこはじっと我慢して、視診でどこまで診断に迫れるかが腕の見せ所です。頚静脈拍動から不整脈の鑑別も可能ですが(過去の投稿)、そこはフロッグサインを除きあまり拘らないようにしています(苦い思い出)。

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-07-21

奇脈(Pulsus Paradoxus)の生理学

📧 N Engl J Med 2026;394:2487 に掲載されたレターより
  • 奇脈は吸気時に収縮期血圧が10mmHgを超えて低下する現象と定義され、しばしば重篤な疾患を疑う手がかりである。収縮性心膜炎心タンポナーデといった心疾患との関連でよく知られているが、喘息やCOPDなどの肺疾患でも見られる。
  • その機序として、吸気時の全身静脈還流増加、肺血管系への血液プーリング、心室間相互依存性、胸腔内圧の変動の誇張など、複数の要因が示唆されている。なおこの現象は奇脈という名称にもかかわらず、正常な生理反応の誇張に過ぎない
  • 奇脈は、他に異常のない肥満患者でもよく見られる所見である。これは腹囲増大が胸壁・横隔膜を圧迫し、呼吸仕事量を増加させる効果によるものと考えられている。従来からストロー呼吸(気道閉塞の模擬)を用いて、教育されてきた。
  • しかし呼吸速度を遅くするだけで奇脈は有意に増大する。特に注目すべき点として、10秒/呼吸という遅い呼吸だけで、ストローなしでも血圧低下が20mmHgを超えた(下図)。再現性の高いこのプロトコルは教育的に有用である。
  • 肥満や心肺疾患のない健常者でも、遅い呼吸だけで容易に10mmHgを超える奇脈が生じうるということは、呼吸速度の変化が、重篤な疾患を見分けるトリアージツールとしての奇脈の臨床的有用性に影響しうる可能性を示唆している。

- 奇脈に対する呼吸の影響 -
@NEJM

(投稿者 川崎)

2026-07-20

循環器フィジカル - 100本ノック -


循環器領域の身体所見を学習するために作成された無料アプリ「循環器フィジカル -100本ノック-」の動画版です.2026年4月から循環器Physical Examination講習会の公式SNSに毎週金曜日にアップしています.こちらのコンテンツにも2週分ずつまとめてアップします.

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(投稿者 川崎)

2026-07-17

日本内科学会 第252回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題12 失神精査で発作時心静止と診断した閉塞性肥大型心筋症の1例
  • 心疾患併存例の失神では心原性が疑われやすいが、てんかん発作に伴う発作時心静止(Ictal Asystole:IA)の可能性も念頭に置く必要がある。今回、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)を背景とする失神に対し、脳波検査でIAを同定し、ペースメーカー(PM)留置を回避できた1例を報告する。今回の精査中、モニター心電図で心静止が記録され循環器内科でPM留置が予定された。しかし、脳波検査で右側頭部に進展を伴う律動性徐波と一致して心静止を認め、IAと診断した。協議の結果、PM留置は中止とし抗発作薬(ASM)を開始し、以降発作はなく経過している。

演題114 電子処方箋導入に苦慮した診療所の1例
  • オンライン資格確認の準備段階で光回線を電話通信用とは別に引く必要性を後になり知らされ工期が延び開院は1ヶ月遅れた。業者が用意したオンライン資格確認用のパソコンには診療報酬振込額明細ダウンロードに必要なExcelが入っていなかった。クライアント証明書とHPKIセカンド電子証明書の違いも当初は理解できなかった。クライアント証明書はパスワードとともにベンダーに渡すように指示されたが受取対応を拒否され混乱した。厚労省マニュアルにあるICカードリーダー購入は電子処方箋導入には不要であった。概算費用は顔認証リーダー16万円、オンライン資格確認導入40万円、電子カルテへのオンライン資格確認連携20万円および電子処方箋導入30万円などを要した。電子処方箋導入は補助金を申請したが2回取消となり断念した。

演題115 長期経過の神経性やせ症患者の死後画像
  • 【症例】72歳、女性【主訴】意識障害【経過】やせ願望があった。意識障害で救急搬送されてきた際の身体計測でBMIは11であった。各種問診から神経性やせ症と診断された。低血糖や電解質異常、たこつぼ型心筋症などの対処を要した。各科の協力のもとrefeeding症候群を予防しながら経腸栄養を続けたが、第19病日に死亡された。死後CTを最終生存確認から約2時間後に行い、脳溝、大動脈、左心房、右心房、肝門脈、両腎に散在するガス像を認めた。本症例は著明な代謝性アルカローシスに対する代償性の高PaCO2血症をきたしており、死亡前の採血ではCO2分圧が100torr以上ありそれが循環停止により気化して広範なガス像を形成した原因の可能性もあると考えられた。

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(投稿者 川崎)

2026-07-16

今週の一枚 🎯

息切れを訴える症例(座位)

🔎 推理
  • 座位で右頚部に周期的な隆起を認める(矢頭)。左側ではあまり隆起が目立たないことより、頸動脈の拍動(コリガン脈)よりも頚静脈の拍動(ランチシ徴候)と考えられる。よって中心静脈圧は高度に上昇しているため、非代償性心不全と診断できる。
  • 次に心尖部を確認すると複数の肋間で心尖拍動を視認するため(矢印)、心拡大が疑われる。さらに男性であるにも関わらず、乳房が発達している(女性化乳房の疑い)。つまりスピロノラクトンなどミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の服用が疑われる。
  • さらに左前胸部に埋め込まれているデバイスは通常よりも大きいため、CRTD(両室ペーシング機能付き植込み型除細動器)等と思われる。これらすべてに合致するのはHFrEFで、肋間筋の萎縮も考慮すると悪液質に陥ったステージDの重症心不全の疑い。

🎩 独り言
  • 上記の予想はすべて正解です。まるでシャーロック・ホームズの推理でしょうか? 彼の推理は微細な事実の観察と、そこから論理を組み立てる推論の組み合わせです(AI解説)。
  • 身体所見も少し慣れれば、同じことができるかもしれません。以前にもフィジカルでここまで分かったという症例をアップしているので、よろしければご覧ください(ココ)。

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(投稿者 川崎)

2026-07-14

論文 🏆

  • 2026 FIFAワールドカップもそろそろ4チームに絞られてきました(今朝は6時からで、イングランドがノルウェーに勝利)。予想通りフランスが圧倒的な強さで順当に駒を進めています(本投稿作成時)。
  • 循環器内科のメンバーでサッカーの話をしているときに、2018年ロシア大会の時に、当院で経験した心筋梗塞の症例が話題になりました。本ブログにアップされていないようなので投稿しておきます。
  • 日本 vs ベルギー戦(ベスト16)で、午前3時にキックオフでした。日本が(奇跡的?)に2点リードしたのですが、同点に追いつかれました。まさにそのタイミングで胸痛が出現した中年男性です。
  • 確か午前5時前に呼び出しの電話があって、病院に向かいました。心電図変化も典型的なST上昇ではなかったため、「MIじゃなくて、蛸だな~」と思っていました。でも冠動脈が閉塞していました。


裏話
  • ちょうど先日、この患者さんが外来を受診されました。ワールドカップの最中でもあるため、「8年前、懐かしいですね~」と談笑しました。もっとも今回の北米大会も、早朝の試合が多いので、油断はできませんが…😅
  • 本例を論文にしてくれた初期研修の先生が、2019年4月の医学生・研修医の日本内科学会ことはじめで発表してくれました。その時にSNSでともてバズっていました。(本例は後にアップ済だったことが判明しました)

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-07-13

フィジカル広場✨LIVE

  • 身体所見は、画像診断が発達した今日でも大切です。診断に役立つだけでなく、臨床に彩りを添え、診療を楽しくしてくれるからです。そんなベッドサイド技術をリアルに学ぶ場がフィジカル広場ライブです。
  • 職種や学閥の垣根を越え、誰もが身体所見を学べる場の創設を目指しました。また日頃、皆様が抱いておられる疑問や悩みを解決できるよう、双方向型のスタイルを採用しています。願いは医療の質の向上です。
  • 身体所見の達人による30分のレクチャー後に、30分の質問コーナーがあります。参加費は1回ワンコイン(500円)で、1週間のオンデマンド視聴付。明日からの臨床にきっと生かせる知識をお届けいたします。


😎 独り言
  • 講師の先生方に抑えた謝礼で協力してもらっても、当面は赤字運営です。しかし参加者が増加してくれば、継続配信できる目算は充分にあります。それまでは何とか持ちこたえるつもりです。
  • 視聴者からの質問はQ&Aからですが、挙手時にはホストがカメラと音声の権利を付与するつもりです。理想は以前に関西であった「UCG談話会」のようなワイワイ・ガヤガヤした雰囲気です。

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(投稿者 川崎)

2026-07-10

YUMIKOユミコ- LITAリタ catheter


😐 追加コメント
  • 冠動脈バイパス(CABG)術前に内胸動脈を造影する機会は減りましたが、今でもYUMIKO-LITA catheterを時々見かけます。先日のアンギオカンファでこのユミコ・カテが話題になったので、懐かしくなって本ブログにまとめてみました。
  • 当院でも初期からYUMIKO-LITAカテーテルを使用し、2003年には右内胸動脈(RITA)にも応用できることを報告しています(下図)。この症例報告を三宅先生が論文で引用されていたのを見た記憶があるのですが、探しきれませんでした。

(投稿者 川崎)

2026-07-07

ハッピーハート症候群 Happy Heart Syndrome

  • たこつぼ症候群(takotsubo syndrome )は先行するストレスと関連が多い
  • 通常はネガティブな誘因でbroken heart syndrome(失恋症候群)とも呼ぶ
  • 一方、快い感情が引き金のhappy heart syndrome(幸福感症候群)も存在
  • 蛸壺心筋症レジストリ2,482人中910人(36.7%)で感情的なトリガーを確定
  • その内、ネガティブな誘因が95.9%で、喜びは4.1%(全タコツボ症例の1.5%)
  • ハッピーハート例は通常より男性に多く、心尖部以外のバルーニングが多い
  • 短期と長期の転帰は、通常のたこつぼ症候群とハッピーハート症候群で類似


- ハッピーハート症候群の具体的な快感誘因 -

  • 誕生日パーティーまたは家族のお祝い(7例)
  • ロマンチックな瞬間またはデート(4例)
  • 結婚式(3例)
  • 良い知らせを受けた人(2例)
  • 公の場での芸術的パフォーマンス(喜び)(2例)
  • 感動的な家族の再会(2例)
  • リラックスできるスパ訪問中または訪問後(2例)
  • お気に入りのサッカーチームが試合に勝利(1例)
  • 友人の誕生日パーティーでの感動的なスピーチ(1例)
  • パリでの休暇(楽しい期待)(1例)
  • 大晦日に初めて孫の世話(喜び)(1例)
  • 家族がリンパ腫から回復(1例)
  • 休暇中(ボートに乗って花火を見るなど)(1例)
  • 孫の洗礼(1例)
  • 音楽コンサート中に心地よい感情的な記憶が呼び起こされる(1例)
  • 大きな賞を獲得した後(1例)
  • 息子がテレビで(パラリンピック開会式を)観戦中(1例)
  • クリスマスディナーの準備中(楽しい期待感)(1例)
  • 家族問題の解決 ガーデニング中(楽しい)(1例)
  • 孫が生まれた後(1例)


🐙 おまけ
  • 今回、我々が経験した症例は、大好きなゴルフの練習中に生じたたこつぼ心筋障害でした。特にミスショットをしてストレスがかかったわけではありません(ナイスショットで嬉しかったかどうかは不明ですが…)。おまけに同疾患で多い高齢女性ではなくて、高齢男性で、典型的な心尖部バルーニングと少し異なった左室形態もハッピーハート症候群に合致でしょうか?

(投稿者 川崎)

2026-07-06

循環器フィジカル - 100本ノック -


循環器領域の身体所見を学習するために作成された無料アプリ「循環器フィジカル -100本ノック-」の動画版です.2026年4月から循環器Physical Examination講習会の公式SNSに毎週金曜日にアップしています.こちらのコンテンツにも2週分ずつまとめてアップします.

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(投稿者 川崎)

2026-07-04

第141回日本循環器学会近畿地方会より

😗 個人的に気になった報告
 
1-15 海外留学生の未修復心室中隔欠損に伴う肺動脈性肺高血圧の一例
  • 症例はネパール出身の20歳代女性。未修復心室中隔欠損に伴う肺動脈性肺高血圧と診断した。患者はネパールの高地出身であり,慢性的な低酸素環境が肺血流増大による左心容量負荷の進行を抑制した可能性が考えられた。(投稿者追記:その解釈は興味深いが…)。

5-26 Arrhythmic mitral valve prolapseが疑われた1例
  • 症例は67歳男性。8年前の健診で心雑音を指摘され,他院で僧帽弁逸脱症(MVP),僧帽弁閉鎖不全症と診断された。6年前に心停止を起こしECPRで蘇生,ICD植え込みとなっていた。(投稿者追記:不整脈性MVPとは、他の不整脈基質がない状態で、僧帽弁輪離開の有無にかかわらずMVPと複雑な心室性不整脈が共存する病態)

6-14 Sense B noiseによるS-ICD不適切作動の1例
  • 症例は77歳男性。6年前に冠攣縮性狭心症を背景とした心室細動の診断で,皮下植込み型除細動器(S-ICD)の植込みを行った。昼食後に仰向けになり休んでいたところ,ショック作動があったが、エピソード記録では,不規則なアーチファクト様のノイズがみられ,オーバーセンシングによって心室細動と認識しショックが送出されていた。(投稿者追記:センスBノイズは、S-ICDシステムの問題に起因する、非生理的な信号過剰感知による不適切なショックの原因)


😀 当院からの発表
  • 2-13 高齢で診断された先天性左冠動脈閉鎖症の一例(循環器内科 大野貴都ほか)
  • 3-14 バレーボールの指導者に発症したPaget–Schroetter症候群の一例(循環器内科 足立沙瑛子ほか)
  • 4-20 通り抜け現象(ウォームアップ狭心症) を呈した冠動脈疾患の2症例(循環器内科 林 寛人ほか)
  • 7-1  運動誘発性のparadoxical jet flowを検出した心尖部肥大型心筋症の一例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • 7-6 低調成分を主体とする大動脈駆出音を伴った左脚ブロックの1例(循環器内科 川﨑達也ほか)

4編は発表前に英語論文化(2編は出版済,2編は投稿中) 👏

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(投稿者 川崎)

2026-07-03

👀これから眼にも着目

  • 重度の三尖弁逆流(TR)による眼球の収縮期突出の報告を読みました(Open Med (Wars) 2026 Mar 20;21(1):20261395)。これまでの文献上の報告はわずか7例で、本稿では新たに2例を報告しています。
  • この所見の初報は、エモリー大学のJ. Willis Hurst(1920 – 2011)らのようです(Am J Cardiol 1970 Oct;26(4):351-4)。重鎮ハースト先生は心臓病学のテキスト(通称Hurst's The Heart)などで高名
  • 同眼球所見の機序は、頚静脈の収縮期陽性波(Lancisi徴候)と同様に、TRによるCV波と思われます。大動脈弁逆流症に伴う収縮期眼球突出(Pulsatile pseudo-proptosis)の方が少しだけ有名?
  • 個人的にはTRに伴う”こめかみ”の拍動を経験しています(勝手に命名:こめかみサイン)。論文で前額静脈の拍動を見たことがあります(過去の投稿)。これからはTRがあれば眼にも着目しなくては…

心不全で入院した44歳男性(平均右房圧23 mmHg)

Open Med (Wars) 2026 Mar 20;21(1):20261395/残念ながら動画なし)

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(投稿者 川崎)

2026-06-29

頭の整理:アミロイド

  • TTR ➜ トランスサイレチン(transthyretin)で、Transport of Thyroxine and Retinol-binding proteinに基づく。旧名はプレアルブミン
  • ATTR ➜ Amyloid TTRで、主に肝臓で合成される正常タンパク質であるトランスサイレチンが変性・凝集してできたアミロイド沈着物
  • ATTRアミロイドーシス ➜ トランスサイレチン (TTR)を前駆タンパク質(precursor protein)とする全身性アミロイドーシス
  • プレアルブミン ➜ 名前の由来は電気泳動でアルブミンより陽極側(前)に泳動されためで、アルブミンとは構造的・機能的な関連性はない

(投稿者 川崎)

2026-06-27

4D Flow MRI

  • 心臓MRIは3次元でfull volumeのスキャンできるため(放射線被ばくなし/造影剤も不要),複雑な解剖を理解しやすい
  • 位相コントラスト法は傾斜磁場反転時のプロトン歳差運動を利用したスキャンで空間観測点の速度情報を得ることができる
  • 4D flow MRIでは心電同期シネ位相コントラスト法3方向をfull volumeで適用するため血行動態と心機能を同時に評価可能
  • 特に超音波カラードプラの到達しにくい大血管や右心系では大きな力を発揮するため先天性心疾患の外科手術において有用


4D flow MRIでみたFallot四徴症修復後の末梢肺動脈狭窄例
上段:Fallot四徴症一弁付きパッチでの修復後の30代女性の収縮期3Dでの流線.高度な肺動脈弁逆流に加えて右肺動脈の流線が高度に加速したうえで途絶していることがわかる.極めて強いbranchのPSであり,画像上も上行大動脈背側に狭小な右肺動脈を認める.
中段:術中所見.上行大動脈はいったん離断し,狭小な右肺動脈を末梢で離断.リング付き人工血管で右肺動脈を再建し,生体弁を挿入した人工血管で右室流出路再建,上行大動脈を人工血管で延長.
下段:術後4D flow MRI.良好に収縮した右室から流量の多い肺動脈血流が得られていると同時に流線は右肺動脈末梢まで繋がり,右肺動脈は大きく拡大していることがわかる.


(投稿者 川崎)

2026-06-25

今週の一枚 🎯

先天性心疾患術後例の息切れ

🔒 解説
  • 胸部正中に手術瘢痕(問診でファロー四徴症と判明)
  • 座位で内頚静脈の陥凹(矢頭)→ 非代償性心不全
  • 吸気負荷で鎖骨上窩の内頚静脈拍動は一見、不明瞭
  • しかしよく見ると頚部中央に拍動が出現(矢印群)
  • 下腿浮腫はなく、心音は汎収縮期逆流性雑音+Ⅲ音
  • 最終診断は亜急性の僧帽弁逆流(腱索断裂の疑い)

🔓 独り言
  • 安静座位で頚部に視認する内頚静脈の拍動は高度の中心静脈圧の上昇を示唆します。この代償が破綻した状態が、吸気で改善することは(経験的にも)ないと考えます。
  • しかし本例のように、吸気で拍動が不明瞭になる症例を稀ながら経験します。その多くは頚部の筋肉(特に胸鎖乳突筋)の緊張に伴う静脈拍動の不明瞭化と考えます。
  • ご存じのように下腿浮腫は心不全で出現する身体所見の一つですが、特異性はありません。また本例のように比較的急な経過で増悪した心不全では、下腿浮腫は稀です。

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(投稿者 川崎)

2026-06-24

腋窩は診てませんでした😔

  • 重症の大動脈弁逆流症によるフィジカルの短報を見かけました(Eur Heart J Case Rep. 2026 Feb 6;10(2):ytag074)。大脈(速脈)を反映する身体所見で、水槌脈(Water-hammer pulse)や反跳脈(Bounding pulse)、コリガン脈(Corrigan pulse)などと呼ばれています。
  • これは特に目新しい所見ではなくて、このブログにも何度も登場しています(ココ)。本例がEur Heart J Case Repに掲載された理由は、場所が腋窩だからかな~と予想します。そういえば僕自身も腋窩を確認したことはありませんでした...... ( 〃..)ノ  ハンセイです

📗全文(AI訳)と図
  • 78歳の男性が、長期間にわたる進行性の呼吸困難の既往歴の後、起坐呼吸と安静時の呼吸困難を主訴として救急外来を受診した。身体診察では、うっ血性心不全の兆候、広い脈圧(144/43 mmHg)、心尖拍動の側方偏位、および大動脈弁逆流を示唆する高音の漸減性早期拡張期雑音が認められた。特に腋窩動脈において、顕著で規則的な末梢動脈拍動が認められ(ビデオSA)、急速な上昇と突然の虚脱を示した。この目に見える水槌脈(ワトソン脈とも呼ばれる)は、大動脈弁逆流の特徴である。これは、大動脈の急激な拡張を伴う一回拍出量の増加、それに続く大動脈から左心室への血液の逆流による拡張期虚脱の誇張によって生じる。心エコー検査により、重度の大動脈弁逆流に加え、著明な左心室拡張および収縮機能障害が確認された。

(投稿者 川崎)