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2026-09-23

胃流出路閉塞 GOO: gastric outlet obstruction

  • 胃の出口が機械的に閉塞して、胃内容物が排出されなくなった病態の総称
  • 胃出口閉塞や胃排出路閉塞、幽門狭窄/幽門閉塞などと称されることあり
  • 主な原因は成人では悪性で膵頭部癌、遠位胃癌、十二指腸癌、胆管癌など
  • 良性では消化性潰瘍の瘢痕狭窄、術後変形、慢性膵炎、クローン病など
  • 小児で肥厚性幽門狭窄症(所謂ピロステ=pyloric stenosis:過去の投稿)
  • 症状は食後嘔吐(胆汁を含まない未消化の食物)、腹部膨満、早期満腹感
  • 身体所見は胃振水音(succussion splash)+可視性蠕動(visible peristalsis)
  • 血液検査では低クロール性・低カリウム性の代謝性アルカローシスを生じる
  • 治療は胃管・バルーン拡張・ステント留置・胃空腸吻合術(GJ、EUS-GE)他

- GOOによる可視性蠕動 -

💙 余談
  • ドイツ人医師のアドルフ・クスマウル(Adolf/ph Kussmaul、1822-1902)は、1869年に発表した論文で、胃出口閉塞とそれに伴う拡張への治療法(胃ポンプを使用)の可能性について言及しています(引用)。
  • クスマウルはクスマウル徴候(吸気時に頚静脈膨隆)、奇脈(吸気時の収縮期血圧が10mmHg以上低下)、クスマウル呼吸(糖尿病性ケトアシドーシスなどによる異常に深大な呼吸の連続)も報告(過去の投稿)

(投稿者 川崎)

2026-09-20

ジアゼパム点鼻液 (スピジアⓇ)

  • 国内初のジアゼパムの鼻腔内投与製剤(2025年12月24日に発売)
  • 効果はてんかん重積状態(2歳以上で重積状態へ移行する恐れ含)
  • 医療機関外で医療者や介護者による投与可なレスキュー薬(下記)

📘 医政医発0415第1号(令和8年4月15日)より

学校、保育所、認定こども園、家庭的保育事業等、放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、児童育成支援拠点事業、放課後子供教室、認可外保育施設、児童自立生活援助事業、児童発達支援、放課後等デイサービス等(以下「学校等」という。)に在籍又は利用する幼児、児童、生徒、学生(以下「児童等」という。)がてんかん発作を起こし、生命が危険な状態等である場合に、現場に居合わせた教職員を含む職員又はスタッフ(以下「教職員等」という。)が、ジアゼパム点鼻液(「スピジア®」)を自ら投与できない本人に代わって投与する場合が想定されるが、当該行為は緊急やむを得ない措置として行われるものであり、次の4つの条件を満たす場合には、医師法(昭和23年法律第201号)第17条違反とはならないと解してよい。
  1. 当該児童等及びその保護者が、事前に医師から、次の点に関して書面で指示を受けていること。学校等においてやむを得ずジアゼパム点鼻液を使用する必要性が認められる児童等であること、ジアゼパム点鼻液を使用する際の留意事項
  2. 当該児童等及びその保護者が、学校等に対して、やむを得ない場合には当該児童等にジアゼパム点鼻液を使用することについて、具体的に依頼(医師から受けたジアゼパム点鼻液を使用する際の留意事項に関する書面を渡して説明しておくこと等を含む。)していること。
  3. 当該児童等を担当する教職員等が、次の点に留意してジアゼパム点鼻液を使用すること。当該児童等がやむを得ずジアゼパム点鼻液を使用することが認められる児童等本人であることを改めて確認すること、ジアゼパム点鼻液を使用する際の留意事項に関する書面の記載事項を遵守すること
  4. 当該児童等の保護者又は教職員等は、ジアゼパム点鼻液を使用した後、当該児童等を必ず医療機関で受診させること。

(投稿者 川崎)

2026-08-29

クローブス症候群 CLOVES syndrome

  • PIK3CA遺伝子変異により四肢や体幹に奇形や過成長を伴う疾患で,PIK3CA-Related Overgrowth Spectrumの一つ
  • Congenital Lipomatous Overgrowth,Vascular malformations,Epidermal nevi,Scoliosis/Skeletal/Spinal anomalies の頭文字
  • 米国のJulie C SappらがCLOVE syndromeとして報告(Am J Med Genet A . 2007 Dec 15;143A(24):2944-58)し,後にSの追加(※)
  •  鑑別すべき疾患はProteus 症候群,Parkes Weber 症候群, Klippel-Trenaunay 症候群(KTS)など(確定は遺伝子検査)
  • これまでの報告は200例未満で,推定発症率は100万分のと非常に少な く,男女差や人種差はないと考えられている
  • PI3K/AKT/mTOR経路の下流mTORを阻害する分子標的薬であるシロリムスが難治性脈管奇形に対して有効という報告あり

- CLOVES症候群の特徴的な身体的所見 -

図1. 両側の躯幹に及ぶ大きな脂肪性腫瘤。左右に分布し、その一部は毛細血管奇形(ポートワイン母斑)に覆われている(A)。両手は左右非対称に幅広く過成長しており、指間腔が拡大している(B)。また、主に左第3・第4指を侵す巨指症を認める(C)。パネルDの写真は、特徴的な幅広の足と「サンダルギャップ(sandal-gap)」変形を示している。(AI訳)

(投稿者 川崎)

2026-06-13

ウンナ母斑(単純性母斑) Unna's nevus(Nevus simplex)

  • 皮膚内に認める胎児期血液循環の遺残(拡張した毛細血管)
  • 名前の由来はドイツの皮膚科医 Unna PG の報告(1884年)
  • 新生児の約40%に認める平坦な薄いピンクの赤あざ(下図)
  • 部位は後頚部(81%)が最多で、眼瞼(45%)、眉間(33%)
  • 児の啼泣や努責時には血管がさらに拡張して色が濃くなる
  • 1歳半程で半数は自然消失するが残りの半数はその後も残存
  • 鑑別診断:ポートワインステイン(ポートワイン母斑)他


ウンナ母斑 vs ポートワイン母斑(AI作成)
項目 ウンナ母斑(Nevus simplex) ポートワイン母斑(Port-wine stain)
別名 サーモンパッチ、コウノトリのくちばしの跡、Nevus flammeus nuchae Nevus flammeus、単純性血管腫(毛細血管奇形)
病態分類 毛細血管拡張(胎児期血液循環の遺残) 毛細血管奇形(capillary malformation)
主な発生部位 後頚部・うなじ(81%)、眼瞼(45%)、眉間(33%) 顔面(三叉神経領域)、体幹・四肢にも
部位の特徴 正中部・両側性が多い 側方・片側性が多い
色調 淡いピンク〜サーモン色 濃い赤〜紫赤色
境界 不明瞭 明瞭・シャープ
隆起 なし(平坦) 幼少期は平坦、加齢とともに肥厚・結節化
圧迫退色(blanching) あり あり(不完全なこともある)
啼泣・温熱時 一時的に色が濃くなる(生理的反応) 変化は乏しい
頻度 新生児の約 40%(最も頻度の高い血管異常) 新生児の約 0.3%
自然消退 顔面:約18か月で多くが消退
後頚部:約半数が残存
なし(生涯持続・加齢で悪化)
組織学的所見 真皮浅層の毛細血管拡張のみ
内皮増殖なし
真皮の毛細血管〜静脈系血管の拡張・蛇行
加齢で血管壁肥厚
遺伝子異常 通常なし GNAQ 体細胞モザイク変異(多くの場合)
関連症候群 通常なし
眉間の顕著な病変:Beckwith-Wiedemann症候群
仙尾部病変:潜在性二分脊椎の可能性
眼瞼・前額:Sturge-Weber症候群
下肢:Klippel-Trenaunay症候群
眼合併症(緑内障)
診断方法 臨床診断(検査不要)
仙尾部病変は超音波・MRI を考慮
臨床診断が基本
眼瞼・前額部は眼科紹介・頭部MRI
治療 基本的に不要
目立つ場合:パルス色素レーザー(PDL)
パルス色素レーザー(PDL)が第一選択
早期開始が推奨される
レーザー反応性 良好(通常 1〜2 回で消退) 複数回を要することが多い(部位・深さによる)

※この表はAI(Claude)により作成


(投稿者 川崎)

2026-06-06

Konno operation 今野手術

  • 東京女子医大附属日本心臓血圧研究所(心研)の心臓外科医である今野草二先生が開発した、Patient-prosthesis mismatchを回避することを目的とした手術方法(J Thorac Cardiovasc Surg 1975;70:909-17)
  • 基本術式は、大動脈基部前壁の縦切開と右室流出路の横切開をつなぎ、右室流出路の心室中隔に切り込む左室流出路を拡大し、aorto-ventriculoplastyパッチをプレジェット付き糸で心室中隔切開縁に縫着(下図)

- 今野(コンノ)手術 -

(投稿者 川崎)

2026-06-03

WISC-V(ウィスク・ファイブ)

  • ウェクスラー式知能検査の一つでWISCは児童向け(5歳~16歳)
  • WISCとはWechsler Intelligence Scale for Childrenの頭文字の略
  • WISCの検査ではIQ(知能指数)に加え全般的な認知能力も確認
  • WISCは10種の基本検査と5種の補助検査の計15種検査から構成
  • 医療機関で保険適用で検査を受ける場合の費用は1,500円程度
  • 結果:パーセンタイルが30なら同年齢100人の集団で下から30番
  • 当日コンディションなどに左右されるため一度の受検で確定難


WISC-V 主要指標

略称 指標名 測定する能力
VCI 言語理解 語彙力・文法理解・情報処理
VSI 視空間 視覚情報の解釈・空間認識
FRI 流動性推理 抽象的思考・問題解決
WMI ワーキングメモリー 情報の一時保持・活用
PSI 処理速度 情報処理の速さ

(投稿者 川崎)

2026-05-23

いわゆる "Ductal shock" (動脈管ショック)

  • 病態:出生後に動脈管が自然閉鎖(生後1〜2日で縮み始め2〜3週間以内に閉鎖が多い)することによる急激な循環破綻
  • 背景:一部の先天性心疾患では、動脈管(ductus arteriosus)が開存していることで体循環または肺循環が維持されている
  • 疾患:大動脈縮窄症、大動脈弓離断症、左心低形成症候群、肺循環依存肺動脈閉鎖症、重症肺動脈狭窄、三尖弁閉鎖症など
  • 臨床:生後2週間以内に突然の循環不全やショック、チアノーゼ、代謝性アシドーシス(※心雑音が目立たないことあり)
  • 治療:プロスタグランジンの静脈投与で動脈管を再開通(副作用の無呼吸に対し挿管準備)、外科手術やカテーテル治療
  • 要点:新生児が突然ショック状態 → 必ずductal shockを疑う。特に高酸素試験(hyperoxia test)で酸素化の改善なし

(投稿者 川崎)

2026-05-09

オルソケラトロジー Orthokeratology (OK)

  • 健診医 「大きな病気はないですか?」
  • 小学生 「眼が悪いので治療してます」
  • 健診医 「どんなことしてるのかな?」
  • 小学生 「オルソケラトロジーです!」
  • 健診医 「オルソ…ケラ…ト 何? 😢」

👀 オルソケラトロジー
  • 概要 特殊形状のハードコンタクトレンズ装用で角膜を変形させ屈折異常を矯正
  • 適応 本邦では近視矯正や近視進行抑制(海外では乱視,遠視,老視矯正など)
  • 効果 学童期の近視に対し(報告により差はあるが)32~55%の抑制効果がある
  • 実際 就寝時にコンタクトレンズを装着し、日中は裸眼で生活する視力矯正方法
  • 原理 近視ではOKレンズの角膜圧迫部は平坦化し周囲の非圧迫部は上皮厚が増加



オルソケラトロジーのレンズ構造

(投稿者 川崎)

2026-05-06

ミトコンドリア・カクテル療法

  • ミトコ ンドリア異常に対するビタミンやCoQ、カルニチンのカクテル投与
  • エビデンスは確立されていないが、一部の症例では有用(副作用が少ない)
  • 例:けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)に対し24時間以内の投与
  • ただしタウリン以外はミトコンドリア病や急性脳症としての保険適用なし
  • おまけ:MELASの発音は英語圏ではメラスよりもミーラスが主流(ココ)

- カクテル療法の実際 -

(投稿者 川崎)

2026-03-08

シトルリン血症 Citrullinemia(CTLN)

  • 尿素サイクルの律速酵素であるアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の異常をきたし,高アンモニア・シトルリン血症をきたす遺伝性疾患
  • ASS遺伝子の異常による新生児・小児期発症の古典的シトルリン血症(I 型,III 型)とASS蛋白の肝細胞量的低下による成人発症 II 型に分類
  • 常染色体劣性 [不顕性] 遺伝性疾患で,日本でのヘテロ接合体の頻度は約50~78人に1人,ホモ接合体の頻度は17000人に1人と推定されている
  • II 型の発症年齢は20~50歳代に多く,高アンモニア血症により意識障害や失見当識,異常行動,痙攣など多彩な精神神経症状+脂肪性肝疾患
  • CTLN 2の約30%はてんかんや統合失調症,うつ病,精神遅滞などと初期診断されていて,アンモニア高値をとらえていない場合は診断が困難
  • CTLN 2では,幼少時より豆類や乳製品,卵などの蛋白質や脂質の多いものを好み,米飯や甘いもの,アルコールを嫌う特異な食癖が特徴的
  • この偏食は,豆類がASSの基質であるアスパラギン酸の供給に役立ち,米飯や飲酒で細胞質内のNADHが上昇し症状が出現〜悪化と推測
  • 根治治療は肝移植で10年生存率は94.3%.病因の治療法は肝に蓄積したNADHの再酸化目的で,低糖質・高脂肪食やピルビン酸ナトリウム

参考)日消誌 2013;110:432-40,他

- 繰り返す意識障害を認めた高シトルリン血症の33歳男性 -

(投稿者 川崎)

2026-03-07

成人 PAPVR 👥 新生児 TAPVR

  • 成人を対象とする循環器内科ではPAPVR(partial anomalous pulmonary venous return;部分肺静脈還流異常症)を稀に経験します.特に心エコー図で冠静脈洞の拡大を認めた時に思い出したい3疾患の一つです.他はPLSVC(Persistent left superior vena cava;左上大静脈遺残)とCS-ASD([unroofed] coronary sinus atrial septal defect;冠静脈洞型心房中隔欠損症)です.
  • 先日,いつも人工心肺を対応しているCEさんに,小児心臓外科領域ではTAPVR(total anomalous pulmonary venous return;総肺静脈還流異常)と言えば,新生児緊急手術の代表疾患(ほぼ唯一?)だということを教えてもらいました.PAPVRは日常臨床で口にする略語ですが,TAPVRと聞いてあまりピンと来ませんでした.少し反省を込めて本ブログでまとめておきます.

💜 総肺静脈還流異常[症] PAPVR
  • 全肺静脈が左心房以外の体静脈系に異常に還流する先天性心疾患
  • TAPVRの別名はTAPVDまたはTAPVC (TAPV drainage or connection)
  • 全先天性心疾患の1.5~3%の発生頻度で男女比は1.7~2.1:1程度
  • Darling分類:肺静脈還流が上心臓型~50%,傍心臓型~30%(下図)
  • 新生児の多呼吸で100%酸素でも酸素飽和度が上昇しない時に疑う
  • 緊急外科手術が唯一の治療法(肺静脈低形成や術後再狭窄は不良)
  • ただし下心臓型TAPVRでは静脈管ステント留置なども可能(下図)


- TAPVR 総肺静脈還流異常の分類 -

- TAPVRに対し静脈管ステント留置を行った日齢7の新生児 -

(投稿者 川崎)

2026-03-04

クレチン症 Cretinism

  • 先天性甲状腺機能低下症(congenital hypothyroidism: CH)のこと
  • 発生頻度は3000-8000人にひとり程度で,性別は1:2で女児が多い
  • 症状は出生後に元気がない・哺乳不良・体重増加不良・便秘など
  • 長期的に身体成長不良や知的障害(特に出生後数ヵ月以内が重要)
  • 原因は甲状腺の無・低形成,異所性,ホルモン合成障害,中枢性
  • 症状の程度は軽症〜重症と個人差が大きく期間も永続性〜一過性
  • 生後5〜7日目にTSHの測定による新生児マススクリーニング検査
  • 母親の甲状腺疾患や抗甲状腺剤,過剰な海藻やイソジン摂取など
  • 治療は1日1回甲状腺ホルモン薬レボチロキシンナトリウムの内服
  • 3才以降の適切な時期に原因に対する検査(病型診断)を実施する


🔎 病名の由来
  • ヨーロッパの山岳地域などではヨード欠乏による風土病性クレチン症が少なくなく,当時これらの人々をフランス語で「crétin」と呼んでいました.これはchrétien(キリスト教徒)に由来し,「神の前では同じ人間である」という人道的な意味だったそうです.
  • その後cretinismという名称が医学用語として広まりましたが,cretinという言葉が英語圏では侮辱的な意味で使用されるようになりました.よって現代医学では先天性甲状腺機能低下症(congenital hypothyroidism: CH)という名称で呼ばれるのが一般的です.

(投稿者 川崎)

2026-02-19

今週の一枚 🎯

  • 他のコンテンツで心音クイズを作成しました.本ページにもアップしておきます(内容は少し変更しています)


心雑音を指摘され受診.正しいのはどれか.







判定


😐 正解 D
  • 注目すべきは収縮期雑音がスムースに拡張期まで持続している点
  • Ⅱ音(S2)前後で雑音が変化しない点が往復雑音とは異なります.
  • 注意:連続性雑音は必ずしも一心周期に渡り雑音が連続しません.


👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-02-10

ガマ腫 🐸 Ranula

  • 舌下腺導管が閉塞し舌下腺からの唾液が周囲間隙に漏出した貯留嚢胞
  • その命名はガマガエルが喉を膨らませた姿に似ていることに由来する
  • 10~20歳代に好発する疾患で, 組織学的には上皮細胞を欠く偽嚢胞
  • 口腔底限局の舌下型,顎下進展の顎下型,口腔底〜顎下の舌下顎下型
  • 治療は開窓術,嚢胞摘出術,舌下腺摘出術などの手術に加え硬化療法

参考)口咽科 2023;36:59-64,他

口腔底の腫脹を生じたガマ腫の12歳女性
OK-432(ピシバニール®)高濃度注入法で消失

(投稿者 川崎)

2026-01-25

血小板無力症(グランツマン病:Glanzmann’s thrombasthenia)

  • 概略 正常小板数にも関わらず出血傾向を呈する先天性疾患
  • 原因 血小板膜糖蛋白(GP)IIb/IIIa欠損で常染色体劣性遺伝
  • 由来 スイスの臨床医 Eduard Glanzmann (1887-1959) (※)
  • 頻度 最近の疫学調査はない(1986年の全国調査では222例)
  • 症状 鼻腔または口腔の粘膜、皮膚表層の出血が主体である
  • 日常 誘因なく治療介入を要す出血症状が出現することは稀
  • 指導 出血リスクや血小板機能を抑制薬剤(NSAIDs)の回避
  • 対処 圧迫止血および鼻や口腔の粘膜出血は抗プラスミン剤
  • 手術 重篤な出血や外科手術では血小板輸血が唯一の治療法
  • 経過 一般的には成人になるに従い出血症状は軽減していく


- 先天性血小板機能異常症の概念図 -

(投稿者 川崎)

2026-01-11

Carditis 心[臓]炎

  • リウマチ熱の心炎は,リウマチ熱の主症状で関節炎に次いで2番目に多い症状である.小児では初発例の約50~60%に出現する.頻脈・心雑音で気づかれることが多く,発熱・関節炎の出現後,1~2 週間以内の出現が多い.重症度はさまざまで,軽症で一過性のものから劇症型で死に至るものもある.汎心炎であり,心内膜,心筋,心膜すべての炎症を引き起こすが,多くは弁膜炎を中心とした心内膜炎である.心内膜が最も侵されやすく,心内膜炎のない心筋炎・心膜炎は稀である.


  • The incidence of Lyme disease in the USA is 8 per 100 000 cases and 95% of those occur in the Northeastern region. Cardiac involvement occurs in only 1% of untreated patients. We describe the case of a 46-year-old man who presented with chest pressure, dyspnoea, palpitations and syncope. He presented initially with atrial fibrillation with rapid ventricular response, a rare manifestation of Lyme carditis.


😐 独り言
  • Carditisという用語は成人を対象とする循環器内科医が使うことはほとんどないと思います.通常はもっと具体的に記載します(例:心筋炎,心膜炎,心内膜炎).しかし学会用語集には心[臓]炎の邦訳で収載されています.
  • 調査範囲では,英語論文ではライム病での使用が最多でした(日本語ではライム病自体が稀なためかごく僅か).他は膠原病やリウマチ,COVID-19などに生じた心臓合併症として使用.さらに(なぜか)小児領域で散見😶

(投稿者 川崎)

2026-01-10

血管 輪りん Vascular Ring

  • 大動脈弓やその分枝が気管や食道の周囲を取り囲み圧迫する先天異常
  • 両側第4鰓弓動脈の遺残で重複大動脈弓 ➜ 一部の血管が退縮し血管輪
  • 重複大動脈弓によるものと右側大動脈弓に伴うものが多くを占めている
  • 右側大動脈弓では動脈管索例と動脈管索に加え鎖骨下動脈の起始異常例
  • 無症状~喘鳴,反復呼吸器感染,嚥下障害,頻回の嘔吐,体重増加不良
  • 重症の気管(支)軟化合併なら啼泣や哺乳で致命的呼吸不全(dying spell)
  • コメレル憩室(鎖骨下動脈起始部の瘤状拡張)による血管輪あり(下図)
  • 症候性なら早期に血管輪の解除術(+気管支や食道の再建術やステント)


- 血管輪による食道の後方圧迫像 -

図2. ( a ) 後方を向いた 3D 再構成の CT スキャンでは、異常な左鎖骨下動脈とコメレル憩室を伴う右側大動脈弓が示されている。 ( b ) コメレル憩室を伴う閉鎖遠位左大動脈部分を伴う二重大動脈弓を示す。CT スキャン 3D 再構成。 ( c ) 食道造影写真では、異常な鎖骨下動脈のコメレル憩室 (白い矢印でマーク) によって引き起こされる後方圧迫が示されている。 AA = 大動脈弓、KD = コメレル憩室、DA = 下行大動脈 (AI訳)

(投稿者 川崎)

2026-01-07

ボウルビィの愛着理論 Bowlby's Attachment Theory

  • イギリスの精神科医(John Bowlby:1907-1990)が提唱した理論(Attachment and Loss, Vol.1 London: Hogarth Press, 1969)
  • 乳児が生存し,健全な社会的・情緒的機能を発達させるためには,少なくとも一人の主要な養育者と親密な関係を築く必要があると仮定
  • ジョン・ボウルビィはアタッチメント理論のなかでアタッチメント行動の発達について4段階に分けて説明している(下記の箇条書き)

👶 アタッチメント行動
  • 第1段階:特定されない対象への定位・信号行動(生後3カ月頃まで)
  • 第2段階:識別された特定の対象への定位・信号行動(生後6ヵ月頃)
  • 第3段階:特定の対象への近接・接近する行動(生後6ヵ月〜3歳頃)
  • 第4段階:行動目標の修正と協調性の形成(3歳頃以降)

💁 各段階の行動の具体例
  • 定位 ➜ 養育者の姿を目で追ったり,声を聞こうとしたりする行動
  • 信号 ➜ 人に注意を向けて泣く,微笑するなど合図する行動
  • 接近 ➜ 吸う,しがみつく,後を追うなどの行動


(投稿者 川崎)

2025-11-25

H症候群 H syndrome

  • 概略 組織球症・リンパ節腫脹症候群に分類される稀な遺伝性疾患
  • 原因 ヒト平衡輸送体3をコードするSLC29A3遺伝子の変異と関連
  • 由来 症状の多くが英語の H で始まるため(初報は1998年→ココ)
  • 症状 色素沈着,多毛,肝脾腫,難聴,心異常,性腺機能低下など
  • 治療 根本的な治療はなく対症療法(予後は合併症で大きく異なる)


上肢の多毛と色素沈着を呈したH症候群の24歳モロッコ人

(投稿者 川崎)

2025-11-20

今週の一枚 🎯

卵アレルギーと言われている幼児
久しぶりに玉子を食べ数時間後に嘔吐


(投稿者 林/川崎)