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2026-08-29

クローブス症候群 CLOVES syndrome

  • PIK3CA遺伝子変異により四肢や体幹に奇形や過成長を伴う疾患で,PIK3CA-Related Overgrowth Spectrumの一つ
  • Congenital Lipomatous Overgrowth,Vascular malformations,Epidermal nevi,Scoliosis/Skeletal/Spinal anomalies の頭文字
  • 米国のJulie C SappらがCLOVE syndromeとして報告(Am J Med Genet A . 2007 Dec 15;143A(24):2944-58)し,後にSの追加(
  •  鑑別すべき疾患はProteus 症候群,Parkes Weber 症候群, Klippel-Trenaunay 症候群(KTS)など(確定は遺伝子検査)
  • これまでの報告は200例未満で,推定発症率は100万分のと非常に少な く,男女差や人種差はないと考えられている
  • PI3K/AKT/mTOR経路の下流mTORを阻害する分子標的薬であるシロリムスが難治性脈管奇形に対して有効という報告あり

- CLOVES症候群の特徴的な身体的所見 -

図1. 両側の躯幹に及ぶ大きな脂肪性腫瘤。左右に分布し、その一部は毛細血管奇形(ポートワイン母斑)に覆われている(A)。両手は左右非対称に幅広く過成長しており、指間腔が拡大している(B)。また、主に左第3・第4指を侵す巨指症を認める(C)。パネルDの写真は、特徴的な幅広の足と「サンダルギャップ(sandal-gap)」変形を示している。(AI訳)

(投稿者 川崎)

2026-08-28

Mural endocarditis 壁在性心内膜炎

  • 感染性心内膜炎 (IE)のうち、疣腫が弁ではなく心腔壁に形成される稀な病型
  • スペインのIE前向きにレジストリでは3676件中27件(0.7%)がmural IE (MIE)
  • MIEは若年(中央値59歳)、移植、血液透析、カテーテル由来、カンジダと関連
  • 病変部位は右心房が最多51.9%(ただし過去の文献では左心室が最多で47.2%)
  • 最多は黄色ブドウ球菌で(50%)、全身合併症は多かったが、死亡率は同程度

- 壁在性心内膜炎を呈した52歳男性 -
発熱と倦怠感を主訴に来院。全収縮期雑音があり、経胸壁心エコー検査で僧帽弁逸脱と左心房後壁への逆流ジェットが認められた。いずれの弁にも明らかな疣腫は認められなかった。血液培養検査ではStreptococcus mitis/oralisが陽性であった。経食道心エコー検査では、僧帽弁逆流ジェットに曝される左心房後壁のみに疣腫が認められた。


(投稿者 川崎)

2026-08-27

今週の一枚 🎯

舌の腫脹で救急外来に搬入された高齢者

🔎 解説
  • 舌は腫大し舌根に白苔と腫瘤病変あり
  • 採血は白血球9200/μl,CRP 8.76mg/dl
  • 造影CTで明らかな膿瘍を疑う所見なし
  • 右側の顎下腺に一致して石灰化(赤丸)
  • その周囲には僅かに浮腫様の変化あり
  • 本症例の最終診断は急性の右顎下腺炎

👅 追加情報
  • 耳鼻咽喉科をコンサルト:舌腫脹+右口腔底のワルトン管の走行に沿った腫脹+ワルトン管開口部から排膿あり→ワルトン管開口部から洗浄+抗菌薬(2週間予定)
  • ワルトン管(Wharton's duct)とは顎下腺管で,顎下腺から分泌された唾液を口腔内へ導く導管(排泄管).およそ5cm程度の長さで,唾石症の好発部位でもある.
  • なお洗浄液の培養からKlebsiella pneumoniae(過粘稠性株,String test+)を検出→眼内炎および膿瘍の全身検索も追加するが,特記すべき異常所見はなかった.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-08-26

7D:院内の発熱

👀 見逃されやすい院内発熱の7原因
  • Drug (薬剤熱): 新規薬剤によるアレルギー性の発熱
  • Device (デバイス関連感染): 留置デバイスに関連する感染症
  • DVT (深部静脈血栓症/肺塞栓症): 血栓自体または血栓に伴う炎症反応
  • CDI (Clostridioides difficile感染症、旧称CD腸炎): 抗菌薬投与→偽膜性腸炎
  • Decubitus (褥瘡): 褥瘡部の感染・炎症
  • CPPD (偽痛風、ピロリン酸カルシウム結晶沈着症):非感染性の関節炎
  • Debris (胆泥・無石性胆嚢炎): 絶食が続く患者などで胆汁うっ滞→胆嚢炎


🙊 おまけ
  • Deep abscess (深部膿瘍) や Adrenal Deficiency (副腎不全)、COVID-19/インフルエンザを加えて、8D・9D・10Dなどとも言うそうです(引用

💁 語呂合わせに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2026-08-25

心音の語呂合わ

Ⅲ音(S3)
  • Ⅱ音(S2)の直後(拡張早期)に生じるため「タッ・タ・タン」
  • 日本語では「おっかさん」(おっ・かぁさん)の抑揚に似る
  • 英語では"Ken-TUCK-y"(ケンタッキー)kənˈtʌk.i(実際の発音
  • 拡張型心筋症で記録された実際のⅢ音 ➜ コチラ からどうぞ

Ⅳ音(S4)
  • Ⅰ音(S1)直前(拡張後期、心房収縮期)で「タ・タッ・タン」
  • 日本語では「おとっさん」(とっ・さん)のリズムに似る
  • 英語では"TEN-nes-see"(テネシー)ten.əˈsiː(実際の発音
  • 肥大型心筋症で記録された実際のⅣ音 ➜ コチラ からどうぞ


😎 独り言
  • Ⅲ音はとても小さい心音です。音というよりは、ため息のような、空気の振動でしょうか。よって語呂合わせでは、日本語、英語共に弱音になっています。
  • 一方、Ⅳ音は、意外にしっかりした音(特に肥大型心筋症のS4)です。日本語の語呂合わせでは弱音ですが、英語では強音になっているのがなるほどです。

💁 語呂合わせに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2026-08-24

薬剤性無菌性髄膜炎 Drug-induced aseptic meningitis(DIAM)

📚 薬剤性髄膜炎(総論)

  • 概要 特定の薬剤投与により生じる無菌性(非感染性)の髄膜炎
  • 実際 頭痛・発熱・項部硬直を呈するが髄液糖は正常,培養陰性
  • 原因 IVIGとNSAIDsが二大原因薬剤,他は抗菌薬・ワクチン他
  • 頻度 329症例でIVIG 29.8%,NSAIDs 13.8%,抗菌薬 11.0%
  • 経過 被疑薬中止で96%が完全回復ないし軽微な後遺症にとどまる



💊 NSAIDs誘発性髄膜炎

  • 概要 NSAIDs内服後に生じる無菌性髄膜炎,イブプロフェンが最多
  • 実際 発熱・頭痛・項部硬直を呈し細菌性に類似するが糖は正常
  • 背景 SLEなどの自己免疫性結合組織疾患を背景に生じやすい
  • 特徴 36例中61%が自己免疫疾患合併,61%が再発の既往あり
  • 関連 構造の異なる他のNSAIDsでも再燃しうる交差反応性あり
  • 治療 中止のみで数日以内に回復,以後はNSAIDs全般を避ける



💉 免疫グロブリン(IVIG)誘発性髄膜炎

  • 概要 IVIGを投与した24〜72時間以内に生じる無菌性の髄膜炎
  • 実際 激しい頭痛・項部硬直・羞明・発熱を呈し多くは自然軽快
  • 背景 最大の危険因子は片頭痛の既往(免疫複合体性過敏反応)
  • 頻度 既往ありで発症率50%,既往なしで4%と大きな差がある
  • 因子 高用量投与・急速輸注・自己免疫疾患合併などが危険因子
  • 対策 緩徐輸注・十分な補液・前投薬で予防,反復例は皮下製剤



(投稿者 川崎)

2026-08-23

Dr.水野の心音聴診クイズ

  • 症例01:【解説公開】呼吸困難を訴える42歳 男性 〔2016/5/13〕
  • 症例02:【解説公開】労作時の呼吸困難を訴える47歳 女性 〔2016/9/21〕
  • 症例03:【解説公開】急な胸痛を訴える68歳 男性 〔2017/3/6〕


🐙 独り言
  • 少し前のコンテンツですが、ご存じない方も少なくないと思い、このブログにアップしました。水野 篤先生の軽妙な語り口もあり、とても楽しい仕上がりです。進行はクイズ形式で、投稿者は選択肢を一つ誤答 😓
  • Dr.水野の心音聴診クイズは無料で閲覧できますが、CareNetへの登録が必要です(医師限定)。関連コンテンツとして「Dr.水野のうたう♪心音レクチャー」もあります(臨床医学チャンネルCareNeTVの有料コンテンツ)。

(投稿者 川崎)

2026-08-22

いわゆる”副爪”

  • 小趾などの爪の外側にできる硬い角化物で二枚爪や重複爪と呼ばれることもある.“ふくつめ”と呼ばれることが多いが,正確には“ふくそう”と読む.
  • 副爪は医学用語では(多分)ない(Google Scholarでほぼ検索されず). 正確には爪ではなく慢性的な圧迫による限局性の角質増殖であることが多い.
  • 英語ではaccessory nail of the fifth toeやdouble little toenailなどの論文が散見(例:Double Nail of the Little Toe. Skin Appendage Disord 2016;1:163-7
  • 稀な病態ではなく,自覚症状を呈する患者はわずかである.ただし女性のみに発現する常染色体優性の遺伝形式を呈する家族性の報告もあり(下図)

- 発端者(A, B)と姉(C, D)の第5趾副爪 -

(投稿者 川崎)

2026-08-21

📌 項部こうぶ硬直(または 頸部けいぶ硬直) Neck stiffness

  • 概要 髄膜が刺激された状態で出現する身体所見の一つ
  • 実際 頚部の屈曲で抵抗があれば陽性(主観的な判定)
  • 原因 脊髄くも膜下腔に存在する炎症や出血,腫瘍など

👿 追加コメント
  • 項部硬直の客観的な判定方法として,項部硬直では「頚部を自動的な屈曲時に顎を胸に付けることができない」あるいは「仰臥位で頭部を8 cm以上,挙上できない」
  • 他所見も参考:Kernig徴候(仰臥位で股・膝関節を屈曲から膝を伸展させると抵抗)やBrudzinski徴候(仰臥位+下腿伸展から頚部屈曲で両側の股・膝関節が屈曲)
  • 髄膜炎例では,仰臥位から座位になる時,髄膜の牽引による疼痛誘発を回避するため,両手を体の後方につくことがある(Amoss徴候≒tripod徴候,Hoyne徴候)
  • 小児で膝を完全に伸ばした座位(長座位)で頚部前屈の角度を測定すると髄膜炎群は平均 31度±11度 vs 非髄膜炎群は45度超(Arch Dis Child 1993 Feb;68(2):215-8
  • 髄膜刺激では,特に前屈が制限される.一方、筋骨格系疾患(頚椎症やクラウンドデンス症候群など)では、前屈だけでなく回旋・伸展など複数方向で抵抗が出る.


(投稿者 川崎)

2026-08-20

今週の一枚 🎯嚥下負荷

心不全の悪化から改善中の症例(座位)

🔎 解説
  • 安静座位では内頚静脈の拍動は不明瞭
  • 偶然、患者さんが自発的に唾液を嚥下
  • 直後に内頚静脈の拍動が出現(矢頭)
  • その隆起は暫くすると見えなくなった

😋 独り言
  • 嚥下はとても複雑な生理現象で、胸腔内圧は相(口腔期・咽頭期・食道期)によって異なる変動を示します。ただし胸腔内圧は概ね陰圧になるため、静脈灌流が増加して中心静脈圧(あるいは右房圧)が上昇するようです。
  • もっとも胸腔内圧の陰圧程度は、吸気と比較すると嚥下では少ないようです(右下の図Cのグラフを参照)。吸気などの指示が入らない症例では、上肢挙上前屈に加えて、嚥下負荷も心不全評価に有用…世界初の報告?


👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)