このブログを検索

2026-10-03

4q欠損症候群 4q deletion syndrome

  • 4番染色体長腕(4q)の部分欠失により生じる先天性染色体異常症候群
  • 別名は4番染色体長腕部分モノソミーやWolf-Hirschhorn症候群など
  • 頻度は1/50,000人程度で女児:男児=2:1(ただし未診断例が多い)
  • 欠失の範囲・部位により重症度・表現型が多彩:例、遠位部は心疾患
  • 主な所見は特徴的顔貌・先天性心疾患・精神運動発達遅滞など(下図)
  • アレイCGHやFISH法で微細欠失を検出し、核型分析と併用し確定診断
  • 治療は対症療法が中心で、心奇形には外科的修復、発達遅滞には療育


- 患者の臨床所見 -
a:上向きの眼瞼裂、広い鼻梁、前向きの鼻孔、広い鼻翼、滑らかな人中、滑らかな鼻唇溝、薄い唇、水平な口角、広い眉毛。b:耳介後転、下顎後退症、長いまつげ。c:高口蓋。d:犬歯の無形成と下顎の中切歯と左側切歯の癒合。e:母斑と乳頭の間隔が広い。f:背側後弯症と過前弯症。g:親指の近位埋没。h:陰核肥大(AI訳)

👻 初報問題

(投稿者 川崎)

2026-10-02

プレアルブミンの深堀:ATTR関連

  • 先日,カンファレンスでATTR心アミロイドーシスに関し,プレアルブミン(=TTR)について混乱がありました。AIと一緒に整理してみたので忘備録として下記にアップしておきます.
  • なおTTRは血中では主にホモ4量体として存在し、T4やビタミンAの輸送を担います。4量体が単量体に解離し、単量体がミスフォールドして、オリゴマーを経てアミロイド線維として沈着します。

👺 プレアルブミン値 vs 診断
  • ATTRwtの診断時TTR中央値は23 mg/dLで、正常下限付近(基準18–45 mg/dL)にとどまった(Circ Heart Fail 2018)。別の米国研究(45例)では、ATTRwt患者のTTRは対照と差がなかった(Circ Heart Fail 2018)。
  • 診断は、骨シンチとM蛋白の除外による非生検診断アルゴリズムが基本であり、血中TTRはその項目に含まれない(Circulation 2016)。

👹 プレアルブミン値 vs 予後
  • 生検で確定したATTRwtでは、診断時の血中TTRが低いほど生存期間が短く、独立した予後予測因子であった。経時的なTTR低下は心機能の悪化と対応していた。TTR <18 mg/dLの群では生存期間中央値2.8年、≥18 mg/dLの群では4.1年であった(HR 2.3)(Circ Heart Fail 2018)。
  • タファミジスを導入したATTRwt 169例では、ベースラインTTRが低いほど死亡リスクが高く(<18 mg/dLで高リスク)、導入30日後のTTR上昇幅が小さいほど(<7.5 mg/dL)心不全入院が多かった。両者がともに低値(ベースライン<18 mg/dLかつ上昇幅<7.5 mg/dL)の群でイベント率が最も高かった(Eur J Heart Fail 2026)。

👿プレアルブミン値 vs 薬力学的指標(基本:安定化薬で↑、サイレンサーで↓)
  • タファミジス:実臨床のATTR-CM 72例では、血中TTRが21.8から29.3 mg/dLへ34.5%上昇した(JACC CardioOncol 2021)。ATTR-ACTの事後解析では、80 mgで1か月時点に平均36.3%上昇し、30か月まで持続した。早期上昇が5 mg/dL大きいごとに全死亡のオッズは45.0%低下したが、TTR上昇の機序と臨床的意義はなお不明確とされている(Cardiol Ther 2026)。
  • アコラミジス:ATTRibute-CMでは第28日までに平均9.1 mg/dL上昇し、30か月まで維持された。早期上昇が5 mg/dL大きいごとに死亡オッズは31.6%低く、この関連はバリアントの有無、NYHA分類、NACステージ、ベースラインTTRで補正後も独立していた(J Am Coll Cardiol 2025)。
  • サイレンサー(ブトリシランなど):肝でのTTR産生を抑制するため、血中TTRは大きく低下する。HELIOS-Aでは3週以内に低下し、18か月後の定常状態で平均81.0%(トラフ)低下した。血清ビタミンAもTTRと並行して低下した(Amyloid 2023)。

(投稿者 川崎)

2026-10-01

今週の一枚 🎯

他院から転院してきた難治性心不全例

💘 解説
  • 心拡大と両側の胸水貯留は心不全に矛盾せず
  • よく見ると心陰影の中に人工構造物(拡大図)
  • これは Corvia® Atrial Shunt システム(IASD®)
  • 医原性に心房中隔シャント作成(下のCT参照)
  • おまけ:この心房シャントは条件付きMR対応


👂 心房シャントデバイス
  • IASD(Interatrial Shunt Device)は、左房(LA)から右房(RA)へと血流を導く経カテーテル的心房中隔デバイスのこと。HFpEF/HFmrEFでは運動時に左房圧が上昇しやすく、これが呼吸困難や運動耐容能低下の主因となります。そこで心房中隔に恒久的な交通孔を作成し、LA圧をRAへ逃がすことで、労作時のうっ血を軽減することを狙ったデバイス。欧州連合(EU)では販売されていますが,米国内での商業的流通は認められていません(現時点ではおそらく)。本邦でも未承認で現在,治験中(jRCT1080224934)だそうです。

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-09-30

第74回日本心臓病学会学術集会より(出島メッセ長崎)

📢 心音を演題名に含む発表(2演題)

演題O-23-5 AI心音図計“超聴診器”を用いた非心臓手術術前心疾患スクリーニング(鳥取大学医学部附属病院 循環器内科)
  • 超聴診器は心音図解析から心雑音指数、心負荷指数を算出し、それらを総合した心疾患指数によって心疾患リスクを評価する。非心臓手術のため麻酔科術前スクリーニング外来655例中28例(4.3%)が循環器内科紹介基準に該当した。全例で心臓エコー検査が施行され、重症弁膜症2例(未指摘1例)、中等症弁膜症6例(未指摘5例)、慢性心不全1例を認め、術前介入またはフォローアップが施行された。持続性心房細動を10例(未指摘1例)に認め、軽度以下弁膜症のみの症例は15例認めた。

演題S16-5 8秒の心音図で右室容積を推定する新規指標(心雑音エネルギー指数:Cardiac Murmur Energy Index)の開発(済生会宇都宮病院 小児科)
  • AI心音図(超聴診器)を用いて拡張期雑音を記録し、当該領域のRMS音圧値を算出した。これを基準音圧比から平均dB値に変換し、雑音持続時間との積により面積積分値を算出し、新規指標「心雑音エネルギー指数(Cardiac Murmur Energy Index:CMEI)」と定義した。心臓MRIにより右室拡張末期容積指数(RVEDVI)を測定し、CMEIとの相関を解析した。CMEIはRVEDVIと強い正の相関を示した(r=0.85)。

💓 心音を抄録に含む発表(上記演題を除く7演題)
  • 演題[O-4-1] 冠動脈疾患の診断に対するⅣ音の臨床的意義 (松下記念病院 循環器内科)
  • 演題[PE2-2] 労作時呼吸困難の増悪を認めた肺動脈性肺高血圧患者 (高知高須病院 循環器内科)
  • 演題[PE3-1] 僧帽弁逆流におけるⅡ音分裂の臨床的意義 (医療法人社団 倫生会 みどり病院 循環器内科)
  • 演題[O-24-5] 弁膜症の診断に対する2点聴診法の有用性 (松下記念病院 循環器内科)
  • 演題[C-12-6] 特異的な聴診所見を呈したbileaflet mitral valve prolapseの一例 (倫生会 みどり病院 検査科)
  • 演題[P-1-22] 透析導入時の体液除水前後に超聴診器・心負荷評価を用いて観察した1例 (公立学校共済組合 関東中央病院 循環器センター・検査科)
  • 演題[C-16-6] 心不全モニタリング指標であるHeartLogicインデックスを活用した多職種による早期介入が有用であった一例 (順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-09-29

循環器フィジカル - 100本ノック -


循環器領域の身体所見を学習するために作成された無料アプリ「循環器フィジカル -100本ノック-」の動画版です.2026年4月から循環器Physical Examination講習会の公式SNSに毎週金曜日にアップしています.こちらのコンテンツにも2週分ずつまとめてアップします.

👻「フィジカルノック」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-09-28

フィジカル広場✨Podcast

  • ベッドサイドの診断技術を、身体所見の達人に教わる「フィジカル広場✨LIVE」の音声版です。
  • 視診・触診・聴診のコツを、耳から学ぶとういう、新たな試みです。無料かつながら学習可能


🎧 フィジカル広場Podcast  ▶︎ Spotify ▶︎ Apple Podcasts ▶︎ Amazon Music

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-09-27

Grad-CAMとLIME

  • ディープラーニングによる診断AIの判断基準はブラックボックス
  • この不透明さを可視化する代表的な2つの方法がGrad-CAMとLIME
  • Grad-CAM とは Gradient-weighted Class Activation Mappingの略
  • LIME とは Local Interpretable Model-Agnostic Explanationsの略

Grad-CAMとLIMEの大まかな比較
Grad-CAM LIME
得意なデータ 画像・動画 表形式データ・画像・テキスト何でも
モデルへの要件 内部(勾配)にアクセス可能なこと 出力さえ得られればよい
出力 ヒートマップ(粗い) 特徴量ごとの寄与度
弱点 局在精度が低い 結果が不安定


Grad-CAM:AIが心房細動と判定する時の注視部位


LIME:心電図診断時の注視部位

(投稿者 川崎)

2026-09-26

典型的な心雑音・予期せぬ診断❓

🎶 気になった論文(Case Rep Cardiol 2026:2026:3461386)より
  • 症例は45歳の女性で主訴は運動中の動悸と呼吸困難.大動脈領域で最もよく聴取されるグレード3/6の粗い収縮期雑音あり.頸部に良好に放散するため,当初は大動脈弁狭窄症が疑われた.しかしその後の心エコー図で,大動脈弁の構造異常や大動脈弁狭窄を示唆する圧較差は認められなかった.
  • 一方,僧帽弁の後尖P2に著しい逸脱があり,中等度から重度の僧帽弁逆流が確認された.筆者らは,僧帽弁の逆流ジェットが前内側方向へ進み,大動脈基部と心房中隔に衝突する結果,その振動の音響エネルギーが左心室流出路と頸部構造に伝わり,大動脈弁狭窄症に似た雑音を生じると考察

😐 独り言
  • 本論文には心音図や音声が付いていないため,実際に聴いて判断してみるができませんでした.しかし大動脈弁狭窄と僧帽弁逆流の鑑別が容易ではない症例が存在することは事実です.
  • 例えば,僧帽弁逆流でも重症ならダイヤモンド型の漸増漸減パターンになります(自験例).この時にⅢ音を減弱したⅡ音と誤認すると,ますます重症の大動脈弁狭窄と誤診します.
  • また上記論文の症例のように,僧帽弁後尖の逸脱では,ジェットが左房前壁に向かうため,雑音が通常のMRのように心尖部で最大にならず,心基部に広く放散します(自験例).

(投稿者 川崎)

2026-09-25

ニンテダニブ(オフェブ®)

  • チロシンキナーゼ阻害剤(抗線維化剤):効能または効果:特発性肺線維症、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患、進行性肺線維症(添付文章情報)
  • 主な副作用は下痢: INPULSIS試験で、下痢はニンテダニブ群61.5% vs プラセボ群18.6%(ただし軽度〜中等度が多く、投与中止は4.4%程度)
  • 下痢の機序:上皮成長因子受容体(EGFR)による塩化物分泌の負調節が阻害され、管腔内に過剰な塩化物イオンが移動することによる分泌性下痢

塩化物分泌とEGFR-TKI関連下痢の関係
正常な腸管上皮における塩化物分泌機構(青点線)とEGFRによる塩化物分泌の負の制御(赤実線)。NKCC1:ナトリウム-カリウム塩化物共輸送体1型;CFTR:嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子;CaCC:カルシウム活性化塩化物チャネル;cAMP:環状アデノシン一リン酸;EGFR:上皮成長因子受容体;ErbB2:ヒト上皮成長因子受容体2;EGF:上皮成長因子;TGF-α:形質転換成長因子-α;ERK:細胞外調節タンパク質キナーゼ;PI3K:ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ;Akt:プロテインキナーゼB;PKC:プロテインキナーゼC。(AI訳)

(投稿者 山中/川崎)

2026-09-24

今週の一枚 🎯体位と頚静脈

拡張型心筋症の症例

🔎 解説
  • 座位:内頚静脈の明瞭な拍動(隆起)
  • 半坐位:拍動が不明瞭になっている
  • 臥位 (枕あり):外頚静脈の怒張あり
  • 本症例は心不全の悪化のため入院中

😐 コメント
  • 本例は座位で内頚静脈の拍動上縁が、顎下まで達しています。つまり中心静脈圧(右房圧)は高度に上昇しています(おそらく20 ㎝水柱以上)。このような症例では、半坐位や臥位では内頚静脈の拍動上縁が顎下よりも上方になり、その視認が難しくなるため注意が必要です。臥床で外頚静脈が怒張していますが、心不全診療で信頼すべきは内頚静脈です。
  • 一方、座位で内頚静脈の拍動を視認するためには、その上縁が少なくとも鎖骨上窩よりも上にあることが必須です。つまり、心臓と鎖骨の垂直距離を考慮すると、15 ㎝水柱以上の中心静脈圧(右房圧)を要します(正常参考値は4-8 cm水柱)。よって、軽度から中等度の上昇を見逃さないため、負荷頚静脈法です。無料アプリ「シンプル頚静脈」で学べます。

(投稿者 川崎)