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2026-10-11
医療安全管理部門等が把握すべき重大事象:A類型とB類型
💣 3つの類型
A類型
:患者への影響度が大きく、確実に回避する手段が普及している事象
B類型
:患者への影響度が大きく、回避可能性は事象により異なる事象
C類型
:患者への影響度が比較的小さい事象
重大事象の定義:A類型とB類型
(
厚生労働省 令和7年9月3日 検討会資料
)
(投稿者 山中/川崎)
2026-10-10
頚静脈波形のy谷
先日、身体所見のセッションで本物の匠の先生の講演を聞きました。自分の講演と重なったため、一部しか視聴できませんでしたが、とても深い解説でした。
忘れないためにもここに記録しておきます。頚静脈波形の復習 ➜ v波≒右房への流入、y下降≒右室への流入(その他の詳細は
以前の投稿
を参照してください)
🚨 正常例でy下降が小さい2つの機序
正常では右房v波圧は2〜3 mmHgと低く、三尖弁開放時のRA圧(v波)−RV圧較差が小さい。 よってy下降は小さい
右房のバッファー効果。正常の右房は伸び縮みしやすいため、容量変化に伴う圧変化が乏しい。よってy下降が小さい。
🚩
右房圧(v波)が高いにもかかわらずy下降が減弱消失する場合
拡張早期からの右室流入障害の存在 → 三尖弁狭窄・肥大型心筋症・心タンポナーデ (※右房圧の上昇した心膜液貯留例でy下降があれば心タンポナーデが否定できる)
(投稿者 川崎)
2026-10-09
心房性クリック Atrial click
💁
論文抄録のAI訳
32例の心房性クリック症例を提示し、その臨床像と考えられる成因について検討した。
「心房性」クリックとは、心房収縮期に低周波成分を伴わずに記録される鋭い音(snappy sound)と定義
した(Figure 1)。振幅の大きい第Ⅳ音の高周波成分(Figure 2)は除外した。
基礎疾患は多彩であり(Table 1)、心房性クリックを有する症例に共通する特異的な臨床像は、いずれの疾患単位においても認められなかった。
心房性クリックは胸骨左縁第3肋間で最もよく記録
され(Figure 8)、P波開始後130msec(時点)に出現した。第Ⅳ音との一致は32例中13例に認められたが、そのタイミングは一定せず、両者が完全に同時に生じることはなかった。
心房性クリックは、ごく僅かな心膜摩擦音を伴って存在することがあり、自然経過により、あるいは薬理学的な介入や呼吸により、摩擦音へと変化することがあった。さらに、活動性心膜炎の摩擦音に続いて心房性クリックが出現する例、あるいはその逆の例もみられた。心腔内心音図では、心房性クリックが心腔内で見出されることは稀であった。収縮中期〜後期クリックとは対照的に、心房性クリックは心膜起源であると考えられた。
(
臨床心音図第5巻第2号 論文No. 194
)
😑
独り言
クリックと言えば僧帽弁逸脱の収縮期クリックです(
自験例
).体位でかなり変化するため油断はできません(
過去の投稿
).されにクリックは(稀ながら)拡張期にも出現することがあります(
自験例
).そして今回,心房性クリックとは…The click (plot) thickens(謎はますます深まる)
(投稿者 川崎)
2026-10-08
今週の一枚 🎯 あれ? 😐いつもと違う
ふらつきと息切れで来院(座位)
😦
解説
座位で右の鎖骨上窩に拍動あり
頚部の正中にも隆起(
前頸静脈
)
よく見ると
拍動は大きさが変動
稀に隆起が大きくなる(矢印)
キャノン
a波(大砲A波)疑い
ECGで
3度房室ブロック
を確認
😶
臨床現場
本例は近医クリニックで徐脈を指摘されて、当科を紹介受診したご高齢の方です。症状はなく、何度か行った長時間心電図記録で最大の心室静止は2-3秒であったため、経過観察中でした。
今回の受診も、3ヵ月毎の定期受診でした。直前に行っていたハートノート(1週間型のホルター心電図)の結果に問題がないことを確認後に、患者さんに診察室へ入ってもらいました。
しかし
入室から椅子に座られる間に、以前にはなかった頚部の拍動に気が付きました
。その後、ご本人から、1週間前からふらつき・数日前から息切れがあることを教えてもらいました。
完全房室ブロックだけならcannon a waveを認めるのみです。本例はその後、徐脈による心不全を合併したため、座位で内頚静脈の拍動が陽性になったと思われました。症状にも合致
👻「今週の一枚」の過去の投稿は
コチラ
(PC版なら画面右の分類からも選択可)
(投稿者 川崎)
2026-10-07
🏆 論文
当院初期研修医の大野先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
左室駆出率が保持された非代償性心不全(HFpEF)を呈した70代後半の患者
冠動脈CT検査では右バルサルバ洞から起始する単一の冠動脈と思われました
CAGで右冠動脈から良好な側副血行路を介した左冠動脈の逆行性灌流を確認
教訓:
先天性LMCA閉鎖症は典型的な狭心痛を伴わない高齢者にもあり得る
(
Journal of Coronary Artery Disease 2026;32:101-4
)
🚀
独り言
実はLMTの先天性閉塞は数年前にも経験したことがあったため(40代男性/その症例の論文 →
コチラ
)、本例の診断は比較的スムーズでした。
本例を再び論文化した理由は、その年齢でしょうか。本疾患は小児~壮年に多く、検索範囲では最高は70代の3例でした(本例は78歳で最高齢)
👉「論文」の過去の投稿は
コチラ
(PC版なら画面右の分類からも選択可)
(投稿者 川崎)
2026-10-06
論文 🏆
当院初期研修医の山中先生が循環器内科で経験された症例が出版
完全房室ブロックを生じた3日後に気胸を発症
したCOPD症例です
心疾患の発症後に呼吸様式が変化して気胸を生じる可能性を言及
- 来院時の心電図と胸部X線 -
(
Cureus 2026;18(9):e116799
)
💁
論文
の過去投稿は
コチラ
(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)
(投稿者 川崎)
2026-10-05
血液循環説:そして、ハーヴェイへ
現在では、心臓から出た血液が体を一周して心臓にもどってくるという血液循環は誰もが知る事実です。ただしこの常識を1628年にイギリスのウィリアム・ハーヴェイが『動物の心臓ならびに血液の運動に関する解剖学的研究』で証明するまでには、長い葛藤がありました。
最近、私の元上司の、またその上司の先生からお借りした書籍『
心臓とこころ:文化と科学が明かす「ハート」の歴史
』(ヴィンセント・M・フィゲレド著、坪子理美訳)にその詳細が記載されていました。血液循環説で大きな役割を果たした3人の人物を取り上げました。
ガレノス(Galenus, 129年頃~216年頃)― 1400年続いた「医学の権威」
ローマ帝国時代のギリシャ人医師。当時は人体解剖が禁じられていたため、サルやブタなどの動物解剖を行い、それまでは「空気が流れている」と考えられていた動脈の中に血液が流れていることを示した。
膨大な著作を残し、その体系は中世ヨーロッパやイスラム世界で約1400年間、絶対的な権威となった。しかし血液は肝臓で作られ、全身で消費されると考えた(循環という概念はなかった)。また
血液は右心室から左心室へ、心室中隔の「目に見えない小孔」を通って移動する
と考えた。
アンドレアス・ヴェサリウス(Andreas Vesalius, 1514~1564年)― 近代解剖学の父
ブリュッセル生まれの医師で、20代でイタリアのパドヴァ大学の解剖学教授となる。当時の講義は、教授がガレノスの本を読み、助手が解剖するのが普通だったが、ヴェサリウスは自ら解剖した。1543年、全7巻の解剖書『人体の構造について(De humani corporis fabrica)』を出版。
ガレノスの記載に約200か所の誤りがあることを、人体の観察にもとづいて指摘した。1555年の第2版では、
心室中隔の小孔についても「見つけることができない」と疑問を呈した
。晩年はスペイン王の侍医を務め、エルサレム巡礼の帰路、ギリシャのザキントス島で亡くなった。
ミカエル・セルヴェトゥス(Michael Servetus / ミゲル・セルベト, 1511年頃~1553年)― 肺循環を記し、火刑に処された人
スペイン・アラゴン地方出身の医師かつ神学者であった。パリで医学を修め、ヴェサリウスと同じ解剖学者ヨハン・ヴィンター・フォン・アンダーナッハに師事した。
血液は右心室から心室中隔を通るのではなく、肺を通って空気と混ざり、左心へ戻ると記した
。
この記述は、医学書ではなく神学書『キリスト教の復元』の中にあった。セルヴェトゥスは三位一体(父・子・聖霊を唯一の神とする教義)を否定したため、カトリックおよびプロテスタントの双方から異端とされ、1553年10月27日、自著とともに火刑に処された。
(投稿者 川崎)
2026-10-04
心音クイズ:Q5
心音の無料ゲーム「
心音マイスター
」より
💫 解説
馬の駆ける音に似ているためギャロップ(奔馬調)と呼ばれている
その本体はS3やS4を伴う頻脈(聴診だけでS3かS4かの鑑別は困難)
非代償性の心不全を示唆し、本例も後に重篤な心不全と診断された
😐 ギャロップについて
Ⅲ音とⅣ音は共に低調音であるため、心尖部で聴診器のベル(小さいほう)を用いて聴取する。騒がしい救急室での認識は必ずしも容易ではないが、診断的な意義が高い。
過剰音がS3だけなら心室性ギャロップ、S4だけなら心房性ギャロップと言う。S3とS4が共存した四部調律(本例)や、S3とS4が重なった重合奔馬調という病態もある。
(投稿者 川崎)
2026-10-03
4q欠損症候群 4q deletion syndrome
4番染色体長腕(4q)の部分欠失により生じる先天性染色体異常症候群
別名は4番染色体長腕部分モノソミーやWolf-Hirschhorn症候群など
頻度は1/50,000人程度で女児:男児=2:1(ただし未診断例が多い)
欠失の範囲・部位により重症度・表現型が多彩:例、遠位部は心疾患
主な所見は特徴的顔貌・先天性心疾患・精神運動発達遅滞など(下図)
アレイCGHやFISH法で微細欠失を検出し、核型分析と併用し確定診断
治療は対症療法が中心で、心奇形には外科的修復、発達遅滞には療育
引用)
Am J Med Genet A 2012;158A:635-40
/
難病センター
、他
- 患者の臨床所見 -
a:上向きの眼瞼裂、広い鼻梁、前向きの鼻孔、広い鼻翼、滑らかな人中、滑らかな鼻唇溝、薄い唇、水平な口角、広い眉毛。b:耳介後転、下顎後退症、長いまつげ。c:高口蓋。d:犬歯の無形成と下顎の中切歯と左側切歯の癒合。e:母斑と乳頭の間隔が広い。f:背側後弯症と過前弯症。g:親指の近位埋没。h:陰核肥大(AI訳)
(
Mol Cytogenet. 2021 Sep 4;14(1):43
)
👻
初報問題
厳密には1961年の報告?(Cooper H, Hirschhorn K. Apparent deletion of short arms of one chromosome (4 or 5) in a child with defects of midline fusion. Mammalian Chromosomes Newsletter. 1961;4:14/
染色体は未確定
)
その後に上記のグループから1965年の正式な論文がでました(
Hirschhorn K, Cooper HL, Firschein IL. Deletion of short arms of chromosome 4–5 in a child with defects of midline fusion. Humangenetik. 1965;1(5):479–482
)。
ただし同じ号に他施設の論文も掲載(
Wolf U, Reinwein H, Porsch R, Schröter R, Baitsch H. Defizienz an den kuzen Armen eins Chromosoms Nr. 4 [Deficiency on the short arms of a chromosome No. 4]
:
ドイツ語、ページ番号は早い
)。
このような理由で「Wolf-Hirschhorn症候群」と呼ばれていることにも納得(名前の順も含む)。なお1967年に英国のOckeyらの報告(
Arch Dis Child 1967;42:428-34
)を初報としているものも散見されましたが、これは少し違うような…
(投稿者 川崎)
2026-10-02
プレアルブミンの深堀:ATTR関連
先日,カンファレンスで
ATTR心アミロイドーシス
に関し,
プレアルブミン
(=TTR)について混乱がありました。AIと一緒に整理してみたので忘備録として下記にアップしておきます.
なお
TTRは血中では主にホモ4量体として存在
し、T4やビタミンAの輸送を担います。
4量体が単量体に解離し、単量体がミスフォールドして、オリゴマーを経てアミロイド線維として沈着
します。
👺
プレアルブミン値 vs 診断
ATTRwtの診断時TTR中央値は23 mg/dLで、正常下限付近(基準18–45 mg/dL)にとどまった(
Circ Heart Fail 2018
)。別の米国研究(45例)では、ATTRwt患者のTTRは対照と差がなかった(
Circ Heart Fail 2018
)。
診断は、骨シンチとM蛋白の除外による非生検診断アルゴリズムが基本であり、血中TTRはその項目に含まれない(
Circulation 2016
)。
👹 プレアルブミン値 vs 予後
生検で確定したATTRwtでは、診断時の血中TTRが低いほど生存期間が短く、独立した予後予測因子であった。経時的なTTR低下は心機能の悪化と対応していた。TTR <18 mg/dLの群では生存期間中央値2.8年、≥18 mg/dLの群では4.1年であった(HR 2.3)(
Circ Heart Fail 2018
)。
タファミジスを導入したATTRwt 169例では、ベースラインTTRが低いほど死亡リスクが高く(<18 mg/dLで高リスク)、導入30日後のTTR上昇幅が小さいほど(<7.5 mg/dL)心不全入院が多かった。両者がともに低値(ベースライン<18 mg/dLかつ上昇幅<7.5 mg/dL)の群でイベント率が最も高かった(
Eur J Heart Fail 2026
)。
👿
プレアルブミン値 vs 薬力学的指標
(基本:安定化薬で↑、サイレンサーで↓)
タファミジス
:実臨床のATTR-CM 72例では、血中TTRが21.8から29.3 mg/dLへ34.5%上昇した(
JACC CardioOncol 2021
)。ATTR-ACTの事後解析では、80 mgで1か月時点に平均36.3%上昇し、30か月まで持続した。早期上昇が5 mg/dL大きいごとに全死亡のオッズは45.0%低下したが、TTR上昇の機序と臨床的意義はなお不明確とされている(
Cardiol Ther 2026
)。
アコラミジス
:ATTRibute-CMでは第28日までに平均9.1 mg/dL上昇し、30か月まで維持された。早期上昇が5 mg/dL大きいごとに死亡オッズは31.6%低く、この関連はバリアントの有無、NYHA分類、NACステージ、ベースラインTTRで補正後も独立していた(
J Am Coll Cardiol 2025
)。
サイレンサー(ブトリシランなど)
:肝でのTTR産生を抑制するため、血中TTRは大きく低下する。HELIOS-Aでは3週以内に低下し、18か月後の定常状態で平均81.0%(トラフ)低下した。血清ビタミンAもTTRと並行して低下した(
Amyloid 2023
)。
(投稿者 川崎)
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