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2026-03-16

蹲踞負荷は古典ではない?

  • 最近,気になる論文を眼にしたので共有します.Javadi N, Galazka P, Peters M, Tajik AJ. Squat in Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy. JACC Case Rep. 2026 Feb 12:106920 (Epub ahead of print)
  • 古典的な内容の視覚化だね」と読んでいると "This is to our knowledge the first documentation of confirmation of the hemodynamic changes associated with prompt squat." と記載がありました😮
  • Corresponding authorは,なんとメイヨー・クリニックに長年おられたDr. A. Jamil Tajik…タジク先生がそうおっしゃるならそうかもしれませんが…本ブログにも蹲踞負荷はしばしば登場(ココ

図1 スクワット動作によるLVOT勾配の変化を示す心エコー図
閉塞性肥大型心筋症の(A)50歳男性と(B)33歳女性の左室流出路における連続波ドップラー心エコー図。1)安静時、2)バルサルバ法実施中、3)立位時、4)スクワット時、5)スクワットから立位への変化を示す。安静時から立位にかけての勾配増強とスクワット時の消失が示され、閉塞性肥大型心筋症に対する動的な生理学的影響が強調されている。LVOT = 左室流出路。(AI訳)


閉塞性肥大型心筋症におけるベッドサイド手技の血行動態への影響の視覚的要約
この模式図は、ベッドサイドでの動的操作中の前負荷、後負荷、LVOT勾配、および収縮期駆出性雑音の変化を示しています。バルサルバ法と立位は前負荷を軽減し、LVOT勾配と雑音の強度を増加させます。しゃがみ姿勢は前負荷と後負荷を増加させ、LVOT勾配と雑音の強度を低下させます。しゃがみ姿勢から立位に移行すると、前負荷と後負荷が急激に減少し、LVOT勾配と雑音の強度が著しく増大します。矢印の大きさは変化の相対的な大きさを示しています。LVOT = 左室流出路。(AI訳)


心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-03-15

Hostile neck(邦訳:敵対的ネック?)

  • 腹部大動脈瘤に対する血管内治療であるステントグラフト内挿術(Endovascular Aortic Repair:EVAR)を施行する際の用語で,別名はchallenging neck
  • 定義は中枢側ネック径が28 mm以上,ネック長15 mm以下,中枢側ネック角度60度以上,石灰化または全周の50%以上の壁在血栓,リバーステーパー他
  • EVARによる治療が難しく遠隔期の成績も不良.例えば近位頚部のhostile neck例では、type Iaエンドリークが多く,再介入が困難で破裂の発生リスクも上昇


- Hostile neck(短く強く屈曲)のEVAR例 -


A: シェーマ。左腎動脈下端から動脈瘤までの長さが5 mmと短く、ネック角度90°の短く強く屈曲したネック症例。 B: 術中血管造影。 C: 腎動脈上ステント(suprarenal stent)をリリースする前に、メインボディと腎動脈上ステントを交互にゆっくり展開し、エンドグラフト近位端を拡張した。 D: 3本目のステントを展開後に腎動脈上ステントをリリースし、プッシュアップテクニックを用いることで、エンドグラフトは動脈瘤移行部の形状に沿って良好な適合性でフィットした。 E: エンドグラフト留置後、左腎動脈内にベアステントを留置した。 F: 最終血管造影では、左腎動脈の開存が保たれ、エンドリークは認めなかった。(AI訳)


(投稿者 川崎)

2026-03-14

センメルヴェイス反射(Semmelweis reflex)

  • 誤りが認められず権力によって事実を捻じ曲げたり排除する行為のこと
  • 由来はハンガリー人の医師 Semmelweis Ignác Fülöp(1818年 - 1865年)
  • 彼はウィーン総合病院産科で出産した母の死亡率が高いことに気付いた
  • その原因は産褥熱で分娩担当医の汚れた手にあるということを主張した
  • その予防法として塩素による消毒法を提唱し、死亡を劇的に減少させた
  • しかし細菌の概念が未確立な当時、彼は多くの医師たちから反感を買う
  • (医師自身が原因で患者が死亡しているという事実を多くの医師が拒絶)
  • センメルヴェイスはくじけなかったが、最終的に精神病院へ隔離された
  • その後、病院の衛兵から受けた暴力による傷が元で敗血症のために死亡


ウィーン総合病院の母体死亡率の推移
ウィーン総合病院が1823年に死後解剖を日常診療として導入して以来、1000件の出産あたりの妊産婦死亡数の推移を示している。1833年に産科が分割された後、両産科でほぼ同数の医学生と助産婦研修生が分娩を担当した。しかし、1839年には、第一産科は専ら医学生を対象とし、彼らは剖検も行い、第二産科では助産婦研修生が分娩を担当するようになった。ゼンメルワイス博士が1848年に塩素溶液による手洗いの習慣を導入して初めて、第一産科における1000件の出産あたりの妊産婦死亡数は減少し、第二産科とほぼ同等になった。(AI訳)

(投稿者 川崎)

2026-03-13

M検(エムけん)

  • 先日、坂本二哉先生の新刊「戦慄の東大病院」を読んでいたら、M検という用語がでてきました。本文中の説明(パンツを下ろしておちんちんと睾丸を握ること)から意味は分かりましが、Mってなんだろうと思ったので調べてみました。

M検(エムけん)💦
  • 男性の生殖器露出検査を意味する俗語。Mは、サンスクリット語の男根を意味する「魔羅」に由来する「M」や英語の "Membrum"の頭文字に由来
  • 1871年春に大阪兵学寮で行われた日本で最初の徴兵検査が始まった。疾病や欠損があれば兵役に適さない者として除外を目的としたものである。
  • 全身脱衣で、鼠径部、睾丸、陰茎の目視と触診を行った。具体的には、包皮をめくり亀頭を露出し、臀部を開脚させ痔疾、痔瘻の有無を検査した。

(投稿者 川崎)

2026-03-12

今週の一枚 🎯

中年女性の術前レントゲン

👀 頚肋けいろく(Cervical Rib)
  • 頚椎の横突起が先天的に過剰発達した状態(矢印)
  • 人口の約0.5~1%に発生して第7頸椎への付着が多い
  • 形状や付着部位は様々(片側性または両側性あり)
  • 多くの症例では症状なし(X線写真などで偶然発見)
  • 局所的な疼痛や周囲構造を圧迫時には介入が必要



👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-03-11

慢性心不全の再入院予防(令和8年診療報酬改定)

  • 当院では心不全チームによるカンファレンスを継続して行ってきました。また心不全療養指導士の取得も積極的に実施してきました。
  • その両者が「慢性心不全の再入院予防の評価の新設」という形で診療報酬に反映されることになりました。それも相当の点数です 😮

💗 慢性心不全の再入院予防の評価の新設
  • 心不全治療による再入院予防を推進する観点から、急性心不全で入院した患者に対して、早期から多職種による介入を実施し、退院後も必要な治療を地域で連携して実施した場合について、新たな評価を行う。
  • (新)心不全再入院予防継続管理料
    1. 心不全再入院予防継続管理料1 1,000点 (入院中1回に限り算定)
    2. 心不全再入院予防継続管理料2 6回目まで 700点 7回目以降 225点 (1年を限度として月に1回・外来で算定)
    3. 心不全再入院予防継続管理料3 6回目まで 400点 7回目以降 225点 (1年を限度として月に1回・外来で算定)


令和8年度診療報酬改定より抜粋


(投稿者 川崎)

2026-03-10

特発性頭蓋内圧亢進症 Idiopathic intracranial hypertension

  • 頭蓋内に腫瘍や血管病変,水頭症などを伴わずに頭蓋内圧が亢進した病態
  • 一般人口10万人当たり年0.5~2.02人の発症で妊娠可能の肥満女性に多い
  • 症状は頭痛(排便や臥位,前屈などで悪化)や嘔気,視神経乳頭浮腫など
  • 原因不明(代謝障害や静脈還流障害,髄液吸収障害などが提唱されている)
  • 鑑別は血管障害や悪性腫瘍,感染症,代謝障害,中毒,内分泌,薬物乱用
  • 治療は肥満なら体重減少を指導(Body mass indexと頭蓋内圧はほぼ比例)
  • 薬物はアセタゾラミド(グリセオールや五苓散の明らかなエビデンスなし)
  • 外科的治療は髄液シャント手術や視力障害出現例では視神経管開放術など


「特発性頭蓋内圧亢進症を説明する一枚の画像」に対するAIの回答(←漢字が変)


「Idiopathic intracranial hypertensionを説明する一枚の画像」に対するAIの回答

👉 AI(人工知能)に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2026-03-09

フィジカルクイズ(No. 43 & 44)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2026-03-08

シトルリン血症 Citrullinemia(CTLN)

  • 尿素サイクルの律速酵素であるアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の異常をきたし,高アンモニア・シトルリン血症をきたす遺伝性疾患
  • ASS遺伝子の異常による新生児・小児期発症の古典的シトルリン血症(I 型,III 型)とASS蛋白の肝細胞量的低下による成人発症 II 型に分類
  • 常染色体劣性 [不顕性] 遺伝性疾患で,日本でのヘテロ接合体の頻度は約50~78人に1人,ホモ接合体の頻度は17000人に1人と推定されている
  • II 型の発症年齢は20~50歳代に多く,高アンモニア血症により意識障害や失見当識,異常行動,痙攣など多彩な精神神経症状+脂肪性肝疾患
  • CTLN 2の約30%はてんかんや統合失調症,うつ病,精神遅滞などと初期診断されていて,アンモニア高値をとらえていない場合は診断が困難
  • CTLN 2では,幼少時より豆類や乳製品,卵などの蛋白質や脂質の多いものを好み,米飯や甘いもの,アルコールを嫌う特異な食癖が特徴的
  • この偏食は,豆類がASSの基質であるアスパラギン酸の供給に役立ち,米飯や飲酒で細胞質内のNADHが上昇し症状が出現〜悪化と推測
  • 根治治療は肝移植で10年生存率は94.3%.病因の治療法は肝に蓄積したNADHの再酸化目的で,低糖質・高脂肪食やピルビン酸ナトリウム

参考)日消誌 2013;110:432-40,他

- 繰り返す意識障害を認めた高シトルリン血症の33歳男性 -

(投稿者 川崎)

2026-03-07

成人 PAPVR 👥 新生児 TAPVR

  • 成人を対象とする循環器内科ではPAPVR(partial anomalous pulmonary venous return;部分肺静脈還流異常症)を稀に経験します.特に心エコー図で冠静脈洞の拡大を認めた時に思い出したい3疾患の一つです.他はPLSVC(Persistent left superior vena cava;左上大静脈遺残)とCS-ASD([unroofed] coronary sinus atrial septal defect;冠静脈洞型心房中隔欠損症)です.
  • 先日,いつも人工心肺を対応しているCEさんに,小児心臓外科領域ではTAPVR(total anomalous pulmonary venous return;総肺静脈還流異常)と言えば,新生児緊急手術の代表疾患(ほぼ唯一?)だということを教えてもらいました.PAPVRは日常臨床で口にする略語ですが,TAPVRと聞いてあまりピンと来ませんでした.少し反省を込めて本ブログでまとめておきます.

💜 総肺静脈還流異常[症] PAPVR
  • 全肺静脈が左心房以外の体静脈系に異常に還流する先天性心疾患
  • TAPVRの別名はTAPVDまたはTAPVC (TAPV drainage or connection)
  • 全先天性心疾患の1.5~3%の発生頻度で男女比は1.7~2.1:1程度
  • Darling分類:肺静脈還流が上心臓型~50%,傍心臓型~30%(下図)
  • 新生児の多呼吸で100%酸素でも酸素飽和度が上昇しない時に疑う
  • 緊急外科手術が唯一の治療法(肺静脈低形成や術後再狭窄は不良)
  • ただし下心臓型TAPVRでは静脈管ステント留置なども可能(下図)


- TAPVR 総肺静脈還流異常の分類 -

- TAPVRに対し静脈管ステント留置を行った日齢7の新生児 -

(投稿者 川崎)