このブログを検索

ラベル 手技 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 手技 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2026-07-21

奇脈(Pulsus Paradoxus)の生理学

📧 N Engl J Med 2026;394:2487 に掲載されたレターより
  • 奇脈は吸気時に収縮期血圧が10mmHgを超えて低下する現象と定義され、しばしば重篤な疾患を疑う手がかりである。収縮性心膜炎心タンポナーデといった心疾患との関連でよく知られているが、喘息やCOPDなどの肺疾患でも見られる。
  • その機序として、吸気時の全身静脈還流増加、肺血管系への血液プーリング、心室間相互依存性、胸腔内圧の変動の誇張など、複数の要因が示唆されている。なおこの現象は奇脈という名称にもかかわらず、正常な生理反応の誇張に過ぎない
  • 奇脈は、他に異常のない肥満患者でもよく見られる所見である。これは腹囲増大が胸壁・横隔膜を圧迫し、呼吸仕事量を増加させる効果によるものと考えられている。従来からストロー呼吸(気道閉塞の模擬)を用いて、教育されてきた。
  • しかし呼吸速度を遅くするだけで奇脈は有意に増大する。特に注目すべき点として、10秒/呼吸という遅い呼吸だけで、ストローなしでも血圧低下が20mmHgを超えた(下図)。再現性の高いこのプロトコルは教育的に有用である。
  • 肥満や心肺疾患のない健常者でも、遅い呼吸だけで容易に10mmHgを超える奇脈が生じうるということは、呼吸速度の変化が、重篤な疾患を見分けるトリアージツールとしての奇脈の臨床的有用性に影響しうる可能性を示唆している。

- 奇脈に対する呼吸の影響 -
@NEJM

(投稿者 川崎)

2026-03-25

バルサルバ負荷(⽇本⼼エコー図学会)

  • バルサルバ負荷はシンプルですが実に奥が深い手技です(下の表).日常臨床でルーチンに行っていますが,その方法は必ずしも統一されていません(多分)
  • 今回,⼀般社団法⼈ ⽇本⼼エコー図学会から負荷⼼エコー図検査実施のための⼿引き「バルサルバ負荷⼼エコー図検査」が発⾏されました(2026年3⽉13日)
  • 詳細は原本参照ですが,簡単には「バルサルバ負荷を行いながら血流速波形を観察 → いきみを開始した第Ⅱ相の状態で10~12秒間ほどで評価」(下の図3)


💁 バルサルバ負荷に関する過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2026-03-14

センメルヴェイス反射(Semmelweis reflex)

  • 誤りが認められず権力によって事実を捻じ曲げたり排除する行為のこと
  • 由来はハンガリー人の医師 Semmelweis Ignác Fülöp(1818年 - 1865年)
  • 彼はウィーン総合病院産科で出産した母の死亡率が高いことに気付いた
  • その原因は産褥熱で分娩担当医の汚れた手にあるということを主張した
  • その予防法として塩素による消毒法を提唱し、死亡を劇的に減少させた
  • しかし細菌の概念が未確立な当時、彼は多くの医師たちから反感を買う
  • (医師自身が原因で患者が死亡しているという事実を多くの医師が拒絶)
  • センメルヴェイスはくじけなかったが、最終的に精神病院へ隔離された
  • その後、病院の衛兵から受けた暴力による傷が元で敗血症のために死亡


ウィーン総合病院の母体死亡率の推移
ウィーン総合病院が1823年に死後解剖を日常診療として導入して以来、1000件の出産あたりの妊産婦死亡数の推移を示している。1833年に産科が分割された後、両産科でほぼ同数の医学生と助産婦研修生が分娩を担当した。しかし、1839年には、第一産科は専ら医学生を対象とし、彼らは剖検も行い、第二産科では助産婦研修生が分娩を担当するようになった。ゼンメルワイス博士が1848年に塩素溶液による手洗いの習慣を導入して初めて、第一産科における1000件の出産あたりの妊産婦死亡数は減少し、第二産科とほぼ同等になった。(AI訳)

(投稿者 川崎)

2026-02-01

総合診ならぬ双合診

💟 双合診
  • 内診の一つで被験者が仰臥位で台の端に腰を据えて股関節と膝を曲げた姿勢で行う
  • 腟の中に検者が指を挿入し逆の手で恥骨の上から圧迫して子宮や卵巣の状態を触知
  • 下図のへガール徴候(Hegar's sign)は双合診による妊娠の可能性を示す身体所見
  • 双合診と直腸診(人差し指を腟に,中指を直腸に挿入)を組み合わせることもある

- 双合診の実際 -

👉 生殖器に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-12-22

習慣性顎関節脱臼に対する顎関節自己血注入療法
Autologous Blood Injection for the Treatment of Recurrent Temporomandibular Joint Dislocation

  • 顎関節脱臼とは下顎頭が下顎窩の関節運動範囲外にはずれ復位しない状態
  • 初報はドイツの歯科医(?)であるSchultz(Dtsch Stomatol 1973;23:94-8
  • 例:上関節腔2 ml,関節包周囲1 ml の計3 ml(日口外誌 2003;49:409-11
  • 自己血注入療法後はチンキャップなどで顎外固定をすることが多い(下図)
  • 機序は関節腔や周囲に生じた肉芽組織が器質化し下顎頭の前方滑走を抑制
  • 顎関節の滑膜同士や周囲軟組織の癒着による下顎頭の運動障害も脱臼抑制


- 顎関節自己血注入療法の実例 -

- おまけ:顎関節脱臼に対する徒手整復 -
Fauquier ENT

(投稿者 川崎)

2025-10-22

LOTロット-CRT:左脚領域ペーシング最適化心臓再同期療法

👻 LBBAP-optimized CRT (LOT-CRT)
  • left bundle branch area pacing (LBBAP) =左脚領域ペーシング
  • cardiac resynchronization therapy (CRT) =心臓再同期療法

🌎 国際多施設共同研究
  • 背景 従来の両室ペーシング (BiV-CRT) による心臓再同期療法 (CRT) ではQRS幅が広く不応例あり
  • 目的 左脚領域ペーシング (LBBAP、右室リードの代替) と冠状静ペーシングの組み合わせを検討
  • 対象 CRT適応のある非連続患者(LBBAまたは冠静脈)リードの追加はQRS波と植込み医師の裁量
  • 結果 LOT-CRTは112例中91例(81%)で成功してBiV-CRTと比較してより優れた電気的な再同期性

(投稿者 川崎)

2025-10-12

PIMSRA:ピー・アイ・エム・エス・アール・エー

  • 閉塞性肥大型心筋症 (HOCM) に対する侵襲度の小さい新たな治療
  • Percutaneous Intramyocardial Septal Radiofrequency Ablationの略
  • 邦名は心エコーガイド下経皮的心筋内中隔高周波アブレーション
  • 中国のLiwen Liuらが開発(J Am Coll Cardiol 2018;72:1898-1909
  • 15例6ヵ月間で患者の最大圧較差が88 mmHgから11 mmHgへ減少
  • 心室中隔壁は25 mmから14 mm、BNPは924 pg/mlから137 pg/ml
  • 手術に関連した脚ブロックや完全房室ブロックは発生しなかった

- PIMSRAのイメージ -


(投稿者 川崎)

2025-09-20

レオポルド触診法 Leopold's Maneuvers

  • 触診で胎位や胎向,胎勢などを確認する方法(下図)
  • 独の産婦人科医 CG Leopold が1894年に開発(
  • 特別な器具は不要で現在でも妊娠健診時に広く活用

- レオポルド触診法の実際 -
  1. 両手掌をわずかに曲げて小指側を子宮底に当て子宮底の高さ、胎児の状態を観察
  2. 子宮底より両手を下方に移動し、左右の手を交互に動かし胎位、胎向、胎動、羊水量などを観察
  3. 右手の母指とほかの4指で恥骨結合上の胎児に触れ胎児の先進部分を確認
  4. 両手掌をわずかに曲げて左右の下腹部に当て、骨盤入口面方向へ静かに圧入し胎児の先進部、移動性、骨盤内侵入状況を観察

(投稿者 川崎)

2025-05-29

今週の一枚 🎯

- 開心術後例の定期エコー -

😊 解説
  • 僧帽弁レベルの短軸層が描出されている
  • 拡張期に僧帽弁の中央が解放していない
  • 中央が離れず(矢印)∞ の形をしている
  • 本症例は僧帽弁へのアルフィエリ縫合

💁 追加コメント
  • Alfieri Stitch(アルフィエリ縫合)は僧帽弁逆流の前尖と後尖の中央付近を縫合する手術です.イタリアの心臓外科医 Alfieri が開発し,経皮的僧帽弁クリップ術 MitraClip® の元祖になります.
  • MitraClip®後の心エコー図に比べて,僧帽弁中央の異物が小さいことや,その背部に出現するアコースティックシャドウ(音響陰影)が少ないことで鑑別することが可能ではないかと思われます.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-04-13

パルスフィールドアブレーション Pulsed Field Ablation

  • 日本メドトロニック株式会社のPulseSelect™システムが2024年5月に薬事承認を取得
  • 既存のカテーテルアブレーションは主に高周波電流あるいは冷却剤を用いて行われる
  • ともに心臓組織の変性に加えて周囲の食道や横隔神経,肺静脈などの損傷リスクあり
  • 本法のアブレーションは電気の力を利用:電極周囲に電場(パルスフィールド)形成
  • 細胞膜に小孔が開き細胞膜の透過性が過度に進むことで細胞死(不可逆的電気穿孔)
  • 細胞死の電場強度が組織毎に異なることを利用して心筋組織のみ細胞死を引き起こす


- パルスフィールドアブレーションのイメージ -

- パルスフィールドアブレーションの効果比較 -

(投稿者 川崎)

2025-03-21

医科診療報酬点数

👥 夜8時半にようやくシャントPTAが終わって...
  • 専門医A 「エコーでVAIVTができると楽だね」
  • 専門医B 「そうです.それで12万ですからね」
  • 専門医A 「高っ! ペースメーカって数万だよ」
  • 専門医C 「でも3ヵ月で2回までですけどね…」

📪 医科診療報酬点数(令和6年)
  • 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 ➜ 12000点
  • ペースメーカ ➜ 経静脈電極移植術9520点,リードレス移植術9520点,交換術4000点
  • 経皮的冠動脈ステント留置術 ➜ 急性心筋梗塞34380点,不安定狭心症24380点,その他21680点
  • 心臓カテーテル法による諸検査 ➜ 左心4000点,右心3600点
  • 冠動脈、大動脈バイパス移植術 ➜ 吻合80160点,吻合以上89250点
  • 経カテーテル弁置換術 ➜ 経皮的39060点,経心尖61530点
  • 弁輪拡大術を伴う大動脈弁置換術 ➜ 157840点
  • 経皮的カテーテル心筋焼灼術 ➜ 心房中隔・心外膜アプローチ40760点,その他34370点
  • 下大静脈フィルター ➜ 留置10160点,除去6490点
  • オープン型ステントグラフト内挿術 ➜ 弓部大動脈114510点,下行大動脈89250点


    😑 独り言
    • 手技料に関しては皆,いろいろな想いがあると思います.循環器内科医なら,「なんでペースメーカ植込みよりシャントPTA(VAIVT)の方が高いの?」って思うかもしれません.逆に心臓外科医は,「循内の経皮的な手技料,高すぎだろう!」って怒っているかも…
    • 手技の難しさ(学ぶのに要する時間)やリスク(術者のストレスを含む),効果(予後改善など)が,手技料に総合的に反映されていることが大切です.例えば下大静脈フィルター植込みの手技料は10160点と高めですが,比較的簡単かつ安全で臨床効果は微妙

    👉 診療報酬に関するの過去の投稿は コチラ

    (投稿者 川崎)

    2025-02-22

    マーシャル静脈へのエタノール注入

    • 概略 AFの肺静脈隔離時に追加するケミカルアブレーション
    • 背景 マーシャル静脈には神経支配がありAFトリガーになる
    • 対象 初回アブレーションの持続性心房細動 AF 患者350名
    • 方法 アブレーション単独とエタノール併用を無作為に割当
    • 評価 術後6ヵ月と12ヵ月のAF or 30秒超の心房頻拍の有無
    • 手技 エタノール注入を試みた185名中155名に成功(83.7%)
    • 予後 不整脈無はエタノール49.2%,アブレーション単独38%
    • 有害 エタノール注入に関する有害事象に群間の有意差なし


    Marshall静脈への化学的アブレーション法が有用であった持続性AF例

    👽 おまけ
    • マーシャル静脈は左上大静脈の遺残で周囲にはマーシャル筋束が存在している
    • 同静脈は冠静脈洞から左房後側壁で分岐し左肺静脈と左心耳間の心外膜側を斜走
    • 成人の20~30%はマーシャル静脈が造影されない(一読をお薦め ➜ 月の裏側
    • 名前の由来は初報の英国の外科医 John Marshall (R Soc Lond 1850;140:133–170)
    • 現時点では保険外診療で倫理委員会への申請要+病院の自己負担あり(約5万)

    Public Domain: マーシャル静脈は上図のoblique vein of the left atrium)

    (投稿者 川崎)

    2025-02-04

    心臓移植の手技

    • カンファレンスで心臓移植の手技が話題になりました.あまりなじみがない領域なので調べてみました.
    • 以下の図と文章は,日本循環器学会などの2016年版「心臓移植に関する提言」からの引用・参考です.

    - 心臓摘出手技- 
    • 上大静脈・奇静脈,下大静脈,大動脈,肺動脈幹を十分剥離しU字縫合(図 14a)
    • ヘパリン(4~5 mg/kg)を投与し,奇静脈・上大静脈・下大静脈を離断(図 14b)
    • カニュー レから4℃心保存液を注入し心臓が停止した のを確認後,心臓を摘出(図 14c)
    • 3重イレウスバックに入った心保存液中に漬け心停止液注入用のカニューレ抜去(図 14d)

    - 心臓移植法 -

    • 以前は biatrial technique (両心房法)が中心であった(図15a)
    • 近年は bicaval technique(上下大静脈法)が行われている(図15b)
    • 日本では北村らが開発した modified bicaval technique が70%(図15c)

    👉 移植に関するの過去の投稿は コチラ

    (投稿者 川崎)

    2025-02-02

    シャント血管マッサージ

    • 透析をはじめようとした際,シャント音が弱い,聞こえないなど,シャントの流れが悪くなっていた場合には,即座にシャント部をマッサージすることで回復することがある.穿刺予定部を手でしっかり揉む,さするなどしてあげる.
    • シャント作製後 3ヵ月以上たっていれば吻合部を揉んでも差し支えないので,穿刺部とともに吻合部もマッサージする.局部静脈に細い針でヘパリン化生食やウロキナーゼを注入してから揉むのが効果的であるが,難しい場合でも,揉むだけで血流が回復することも多い.



    シャント血管マッサージを禁忌とする患者
    • シャント作成後2週間未満
    • 新シャント穿刺3回目以内
    • 狭窄部位に痛みや腫脹がある
    • シャントに瘤がある
    • 人工血管を用いたシャント
    • シャントステントのエッジ部分に狭窄がある
    • ステロイド長期投与
    • 80歳以上
    • 皮膚が薄く,内出血や表皮剝離のリスクがある
    • 心房中隔欠損,心室中隔欠損がある

    引用)透析会誌 2018;51:305-11(元:腎と透析 2013;74:84‒6)

    (投稿者 川崎)

    2025-01-26

    星状神経節ブロック (SGB) vs 冠攣縮 

    ⭐ Stellate Ganglion Block: SGB
    • 星状神経節は節後線維を心臓に投射し冠血流調節に大きく関与
    • SGBは交感神経の過緊張を抑制するため連日SGBが悪循環を断つ
    • SGBは血小板凝集抑制効果もあり冠攣縮の予防に有効な可能性
    • 冠攣縮性狭心症に対してSGBが有効であった報告はほぼ左側SGB
    • 完全内臓逆位を伴っていた症例では右側のSGBが有効の報告あり
    • エルゴメトリンによる冠攣縮の誘発前に左SGBで発作を抑制した
    • ただし冠攣縮誘発後にSGBを施行しても攣縮寛解作用はなかった


    星状神経節ブロックが著効した難治性冠攣縮の41歳男性

    📙 ガイドラインの記載(P50と図18)
    • 難治性・重症冠攣縮性狭心症に対して,星状神経節ブロック ・ 胸部交感神経節切除術を考慮してもよい(いずれもわが国では保険適用外).推奨クラス IIb,エビデンスレベル C


    👉 冠攣縮に関するの過去の投稿は コチラ

    (投稿者 川崎)

    2024-11-27

    左脚領域ペーシングの予後

    • 近年,左脚領域ペーシング(LBBAP)が臨床現場に普及しつつあります.本邦から同手法を右室心尖ペーシング(RVAP)およびヒス束ペーシング(HBP)と比較検討した論文が出版されたのでアップしておきます. 

    • 対象 徐脈でペースメーカを植込んだ日本人424人を後向きに解析
    • 手技 成功率はLBBAP群の方がHBP群よりも高い(94.9%と81.5%)
    • 経過 閾値上昇>1VはLBBAP群でなし,HBP群9.4%,RVAP群5.1%
    • 予後 心不全入院の累積発生率はLBBAP群で有意に低率(下図参照)
    • 関連 予後不良因子は高齢,右室ペーシング割合,EF<50%,RVAP
    • 結語 RVAPやHBPと比較してLBBAPは徐脈患者のペーシングに有用


    ペーシング方法と予後(右図はペーシング率>20%の症例)

    👉 ペースメーカに関するの過去の投稿は コチラ

    (投稿者 川崎)

    2023-12-16

    ボタンホール穿刺 Buttonhole Cannulation

    • 概略 皮膚表面〜シャント血管壁間に作成された固定穿刺ルート(=ボタンホールトンネル)
    • 手法 同一箇所を複数回通常穿刺して作成(下図)し,以後は先端とエッジが鈍な針を利用
    • 利点 疼痛緩和,穿刺ミス回避,シャントの寿命延長,ストレスと時間の軽減,綺麗な外観
    • 欠点 通常穿刺に比べシャント関連感染症が多い(ただし痂皮除去や消毒徹底で予防は可能)


    簡易ボタンホールの作成方法

    健全なボタンホールと感染を生じたボタンホール

    💁 透析に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)

    2022-10-25

    SGLT2阻害薬の術前中止
    Preoperative Cessation of SGLT2i

    👿 背景
    • アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)は予定手術の前にSGLT2阻害薬の中止を推奨しています()。
    • 具体的にはカナグリフロジン(インボカナ、ヤンセン)、ダパグリフロジン(フォシーガ、アストラゼネカ)、エンパグリフロジン(ジャディアンス、ベーリンガーインゲルハイム、イーライリリー)は手術予定日の少なくとも3日前に、エルツグリフロジン(ステグラトロ、メルク)は手術予定日の少なくとも4日前に中止。 
    • そして先日、米国心臓病学会誌(JACC)にもそのことが掲載されました(#️)。その原文とDeepL翻訳ツールで抽出したの日本語訳(一部修正)を掲載します(赤文字部分はこちらで追加)。今後は造影剤検査前のメトホルミンのように,PCIやアブレーション前にルーチンで中止することになりそうでしょうか...

    Quick Takes
    • Sodium-glucose co-transporter 2 (SGLT2)-inhibitors are increasingly being prescribed by cardiovascular clinical teams for patients with heart failure with and without diabetes mellitus.
    • The cardiovascular teams should be aware of recent Food and Drug Administration (FDA) advisory warnings for increased incidence of euglycemic diabetic ketoacidosis when SGLT2-inhibitors medications are continued prior to non-cardiac surgeries.
    • These warnings have stated that continuing SLGT2-inhibitors preoperatively can lead to poor patient outcomes and increased hospital length of stay.
    • When caring for patients being referred for surgery it is important to advise patients to stop their SGLT2-inhibitors 3-4 days prior to surgery to minimize the risk of postoperative ketoacidosis and urinary tract infections.

    クイック・テイクス
    • 糖尿病の有無にかかわらず、心不全患者に対してSodium-glucose co-transporter 2(SGLT2)阻害薬を処方する心血管系診療チームが増えてきている。
    • 心血管系チームは、非心臓手術の前にSGLT2阻害薬を継続投与すると、正常血糖ケトアシドーシスの発生率が増加するという最近の食品医薬品局(FDA)の勧告的警告に注意する必要がある。
    • これらの警告は、SLGT2阻害剤を術前に継続投与すると、患者の予後不良や入院期間の延長につながる可能性があることを述べています。
    • 手術を受ける患者さんをケアする際には、術後のケトアシドーシスや尿路感染症のリスクを最小限に抑えるために、手術の3~4日前にSGLT2阻害薬の服用を中止するよう患者さんにアドバイスすることが重要です。

    (投稿者 川崎)

    2022-09-23

    皮下輸液法

    緩和医療で用いられることが多い手技ですが,通常の日常臨床でも利用することがあるのでまとめておきます.以下の文言と図は 終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン(2013年版) からの抜粋です.

    👀 皮下輸液の実施法
    • 1mL/分の滴下速度(1.5L/日まで,刺入部が 2 カ所の場合は 3.0L/日まで)
    • 500mL/h の投与速度を超えない
    • 1~4 日毎に注射針,チューブを交換する
    • 刺入部の浮腫,発赤,痛み,感染,液漏れなどを観察する

    👌 皮下投与が可能な薬剤
    • 等張液(生理食塩液※,5%ブドウ糖液,1,3 号液,各種リンゲル液)
    • ビタミン類※(C,B1,B2,B6,B12,K,葉酸,ニコチン酸)
    • 抗菌薬(βラクタム系,モノバクタム系,クリンダマイシン,アミノグリコシド系)
    • 抗精神病薬(ハロペリドール),ベンゾジアゼピン系(ミダゾラム,ジアゼパム)
    • 麻薬類(モルヒネ※,ペンタゾシン※)
    • 抗コリン薬(ブスコパンなど),メトクロプラミド
    • 抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン※,ジフェンヒドラミン)
    • ステロイド,インスリン※,ヘパリン※,トラネキサム酸,リドカイン,フロセミドなど

    ※添付文書上,皮下投与が可能なもの。
    その他は経験的に使用されており,安全であることを保証する論文はない。

    🚫 皮下投与が不可である薬剤
    • 上記以外の抗菌薬,パミドロネート,ジゴキシン,フェニトイン,ジアゼパムなど

    (投稿者 川崎)

    2021-09-07

    植込み型ループレコーダー Implantable loop recorder: ILR

    • 前胸部の心臓近くの皮下(心電図のV3-4辺り)に差し込む様に植込む小さなデバイス(下図)
    • 様々な検査でも原因不明の失神の約2/3は植込み型ループレコーダーで診断可(ガイドライン
    • 基本的に1.5テスラ及び3テスラMRIが植込み当日から可能(前もってデータの読み出しが理想)
    • 償還価格は標準型が394,000円で特殊型(植込みツール+心房細動アルゴリズム)は451,000円


    💰 診療報酬(令和2年4月1日施行)
    • 植込型心電図記録計移植術 1,260点
    • 植込型心電図記録計摘出術 840点
    • 体外ペースメーキング術 3,370点
    • ペースメーカー移植術(経静脈電極の場合)9,520点
    • ペースメーカー交換術 4,000点
    • 両心室ペースメーカー移植術(経静脈電極の場合)31,510点
    • 両心室ペースメーカー交換術(経静脈電極の場合)5,000点
    • 植込型除細動器移植術(経静脈リードを用いるもの)31,510点

    💁 ペースメーカの関連投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

    (投稿者 川崎)