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2023-08-31

今週の一枚 🎯

ペースメーカ外来を定期受診した症例



(投稿者 川崎)

2023-08-30

化膿性汗腺炎 Hidradenitis suppurativa

  • 概要 毛包の慢性・炎症性・再発性・消耗性皮膚疾患で生活の質を著しく障害
  • 発症 思春期以降アポクリン腺の多い部位(腋窩や鼠径,肛門性器部,臀部)
  • 所見 結節や瘻孔,萎縮性・網状・肥厚性・ケロイド様瘢痕,分泌物,悪臭
  • 疫学 男女比1:3で,頻度は欧州で1~4%,米国で 0.1~0.2%,韓国で0.06%
  • 原因 汗腺の感染症ではなくて,自然免疫の活性化を背景にした病態の疑い
  • 遺伝 30~40%は家族性の常染色体優性(顕性)遺伝(家族性化膿性汗腺炎)
  • 併存 脊椎関節症,SAPHO,壊疽性膿皮症,毛包閉塞性疾患,Crohn病など
  • 鑑別 Crohn病による皮膚症状,悪性腫瘍,毛包炎やせつなどの細菌感染症
  • 病期 Hurley分類:病期 I(単発),病期II(瘻孔や瘢痕),病期III(広範囲)
  • 治療 外用薬,抗菌薬,モノクローナル抗体製剤,外科的切除,レーザーなど


化膿性汗腺炎:ハーレーステージ I ( A )、ハーレーステージ II ( B )、ハーレーステージ III ( C )

(投稿者 川崎)

2023-08-29

ブルガダ症候群:Naチャネル遮断薬負荷試験

💁 確認事項
  • ブルガダ症候群の診断は12誘導心電図所見からのみなされ、症状の有無を問わない
  • 2 mm以上のST上昇とそれに続く陰性T波を示せばタイプ1心電図(コブド型ST上昇)
  • 陰性T波を欠けばサドルバック型でSTトラフが≧1 mmならタイプ2、未満はタイプ3
  • 高位肋間を含む自然発生・発熱・負荷後タイプ1心電図ならブルガダ症候群と診断
  • ブルガダ症候群は有症候性ブルガダ症候群と無症候性ブルガダ症候群に分類できる
  • 非タイプ1(タイプ2およびタイプ3)心電図の場合はブルガダ症候群と診断されない

ブルガダ心電図を認めた場合の検査フローチャート

💊 薬物負荷の実際
  • Vaughan-Williams(ヴォーン・ウィリアムズ)分類のIa群チャネル遮断薬(一般名プロカインアミド、商品名アミサリンム®)またはIc群のNaチャネル遮断薬(例:一般名ピルジカイニド、商品名サンリズム®、1 mg/kgを10分で静注/一般名フレカイニド、商品名タンボコール®、2 mg/kgを10分で静注)などが用いられる.


(投稿者 川崎)

2023-08-28

瓜三つ:ハイムリック・ハイムリッヒ・ハインリッヒ

👥 ハイムリック
  • 異物で窒息した患者を救命する応急処置.患者の後ろから手を腹部に当て突き上げるようにし横隔膜を圧迫(下図はオリジナル論文より).由来は米国の胸部外科医 Henry Judah Heimlich(1920-2016)の報告(Emergency Medicine 1974;154-5).
  • 論文タイトルの "Pop Goes the Cafe" ってなかなか素敵(超意訳:このテクニックを使えばカフェでも喉に詰まっていた物がポンって飛び出てくるから助けられるって感じ?)

👥 ハイムリッヒ
  • ハイムリックの別名.ドイツ語風の読み方と思われる.父方の祖父はハンガリー系ユダヤ人移民,母方の祖父はロシア出身のユダヤ人である(引用).本人は米国生まれの米国育ちであるため,英語風のハイムリックが正しいと思われる.

👤 ハインリッヒ
  • 重大事故1つの背後に29の軽微な事故,300のヒヤリ・ハットが存在するという理論(過去の投稿).米国の保険会社社員である Herbert William Heinrich(1886-1962)が1931年に提唱した.

(投稿者 川崎)

2023-08-27

Twiddle muff 認知症マフ 

  • twiddle【動】もてあそぶ 【名】ひねり/muff【名】マフ(女性用の円筒状の手袋)
  • 内外のリボンやボタンなど触わることで(認知症の患者さんが)安心感を得られる

💎 独り言
  • 先日,看護師さんに教えてもらいました.シンプルですが臨床現場では役立ちそうな気がします.ミトンを含めた身体拘束の代わりとして大いに期待できそうです.
  • 2023年8月19日時点では PubMed で ”Twiddle muff” は一件も検出できません.Google scholar でもヒット数は一桁.今後の有用性の報告を楽しみにしています 😄

💁 認知症に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-26

ヒストプラスマ症 Histoplasmosis

  • 概略 世界中(特に熱帯,亜熱帯,温帯地域)で認める真菌症の一つ(本邦では稀)
  • 原因 ヒトは主にカプスラーツム型とズボアジ型(土壌真菌でコウモリ等の糞で発育)
  • 経路 菌糸状発育で形成された分生子を吸入して肺へ感染(感染組織内で酵母状発育)
  • 病型 急性・慢性肺ヒストプラスマ症,全身性ヒストプラスマ症,眼ヒストプラスマ症
  • 症状 急性ならインフルエンザ様症状を呈し自然治癒/慢性では結核に似た臨床経過
  • 診断 喀痰,膿,生検材料よりH. capsulatumの分離あるいは免疫学的診断,PCR法など
  • 治療 イミダゾール系の抗真菌剤あるいはアムフォテリシンB(患者の隔離は要さない)


AIDSに合併した播種性ヒストプラスマ症の48歳タイ人男性

(投稿者 川崎)

2023-08-25

人工呼吸器からの離脱:SAT&SBT

自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial: SAT)
  • 鎮静薬を中止または減量し、自発的に覚醒が得られるか評価する試験。観察時間は30分から4時間程度を目安とする。

➜ 開始基準 (以下の状態でないこと)
  1. 興奮状態が持続し、鎮静薬の投与量が増加している
  2. 筋弛緩薬を使用している
  3. 24時間以内の新たな不整脈や心筋虚血の徴候
  4. 痙攣、アルコール離脱症状のため鎮静薬を持続投与中
  5. 頭蓋内圧の上昇
  6. 医師の判断

➜ 成功基準(以下をともにクリア)
  1. 鎮静スケール(RASS):-1~0で口頭指示で開眼や動作が容易に可能である。
  2. 鎮静薬を中止して30分以上過ぎても、以下が生じない:興奮状態・持続的な不安状態・鎮痛薬を投与しても痛みをコントロールできない・頻呼吸(呼吸数≧35 回/分 5 分間以上)・SpO2<90%が持続し対応が必要・新たな不整脈

自発呼吸トライアル(Spontaneous Breathing Trial :SBT)
  • 人工呼吸による補助がない状態に患者が耐えられるかどうか確認するための試験。人工呼吸器設定をCPAPまたは、Tピースに変更し、30 分から2時間観察する。

➜ 開始基準(原疾患の改善を認め、以下をすべてクリアした場合)
  1. FIO2≦0.5 かつ PEEP≦8cmH2O のもとで SpO2>90%
  2. 急性の心筋虚血、重篤な不整脈がない・心拍数≦140 bpm・昇圧薬の使用について少量は容認(DOA ≦ 5μg/kg/min、DOB ≦ 5μg/kg/min、NAD ≦ 0.05μg/kg/min)
  3. 1回換気量>5ml/kg・分時換気量<15L/分・Rapid shallow breathing index(1分間の呼吸回数/1回換気量[L])<105回/min/L・呼吸性アシドーシスがない(pH>7.25)
  4. 呼吸補助筋の過剰な使用がない・シーソー呼吸(奇異性呼吸)がない
  5. 発熱がない・重篤な電解質異常を認めない・重篤な貧血を認めない・重篤な体液過剰を認めない

➜ 成功基準(以下をともにクリア)
  1. 呼吸数<30 回/分
  2. 開始前と比べて明らかな低下がない(たとえば SpO2≧94%、PaO2≧70mmHg)
  3. 心拍数<140bpm、新たな不整脈や心筋虚血の徴候を認めない
  4. 過度の血圧上昇を認めない
  5. 以下の呼吸促迫の徴候を認めない(SBT前の状態と比較する):呼吸補助筋の過剰な使用がない・シーソー呼吸(奇異性呼吸)・冷汗・重度の呼吸困難感、不安感、不穏状態


- 全体の流れ -

💁 人工呼吸に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-24

今週の一枚 🎯

転倒症例の頭部CT




(投稿者 川崎)

2023-08-23

脳出血のCT変化

  1. 発症直後-亜急性期(〜1週間)➜ 発症直後から高吸収(24〜48時間で最大)+発症数時間から周囲に浮腫が生じ低吸収(数日で最大)
  2. 吸収期(1週間〜2,3ヵ月)➜ 血腫の辺縁から高吸収領域の低吸収化+血腫吸収によるmass effect(脳組織の圧迫・変位)の消失
  3. 瘢痕期 ➜ 壊死組織が貪食排除され液化空洞を形成(空洞内部は脳脊髄液と同等の低吸収値で血腫の最大サイズより空洞は縮小する)


ー 左基底核出血の47歳男性の経時的CT変化(赤色は血腫周囲の浮腫)ー

💁 脳出血に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-22

ワーラー変性 Wallerian degeneration

  • ワーラー変性とは神経損傷後に二次性に生じる軸索変性と脱髄現象
  • イギリスの神経生理学者 Augustus Volney Waller (1816-1870) に由来
  • 通常,中枢神経系では末梢神経に比してワーラー変性は緩徐に進行
  • 例:脳血管障害の発症1ヵ月以降にDWIやFLAIRで高信号出現(下図)
  • 推定機序は軸索細胞内の電解質濃度変化が変性の促進をきたすため


左大脳に多形膠芽腫を有する61歳女性のMRI T2-WI経過
A〜Dは術後0, 8, 16, 34ヵ月で同側間脳でワーラー変性が進行(矢印)

(投稿者 川崎)

2023-08-21

🏆 論文:心アミのフィジカル

  • 当院初期研修医の平野先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
  • 身体所見が診断契機になったトランスサイレチン型心アミロイドーシスです
  • このATTR型は高齢者に多く簡便なマーカーがないため診断が遅れがちです
  • 本例は著明肥大にも関わらずⅣ音(S4)なし+ポパイ徴候が診断契機でした

非外傷性の上腕二頭筋腱断裂(ポパイ徴候)がら15年後にATTR型心アミロイドーシスと診断された70歳男性

😀 追加コメント
  • 本例の左室駆出率は55%で左室はびまん性に肥厚し(15 mm程度),左室心筋重量係数は111.9 g/ms2(基準: 56〜92 ms2)でした.ドプラ指標はE/A 2.66,E/e' 32.0とグレードⅢの高度拡張障害でした.しかし通常なら存在が予想されるⅣ音を聴取せず,心音図でも記録されませんでした.
  • 心臓アミロイドでは肥大があるのにⅣ音を欠くことは従来から論文に記載されてきました(Am J Cardiol 2000;86:244-6Clin Cardiol 2021;44:322-31).しかしこれらはエキスパートオピニオンです.友人のフィジカル巨匠が実データを現在投稿中と聞いています(出版がとても楽しみです 😄)
  • 心アミ症例でⅣ音(S4)を欠く機序は心房へのアミロイド沈着と考えられます.本例でもピロリン酸が両心室のみならず両心房に集積していました(下図).以前の投稿「問題硬い左室+Ⅳ音なし=?」はいつも頭の片隅に置いておきたい事です.なお肥大型心筋症の心房の辛抱も忘れずに 😁


👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-08-20

心外膜下心室瘤 Subepicardial aneurysm

  • 心室瘤は真性心室瘤と仮性心室瘤に分類されるが仮性心室瘤の特殊な型が心外膜下心室瘤
  • 心外膜下心室瘤は高頻度に心破裂を起こす可能性があるため早期発見・外科的治療が重要

  • 真性心室瘤 ➜ 菲薄化した心筋壁の全層が心内圧により伸展し,本来の心室腔より収縮期にも拡張期にも外方に突出する膨隆部が存在し,膨隆部は壁運動消失ないし奇異性壁運動を呈する.
  • 仮性心室瘤 ➜ 心破裂の際に癒着した心膜と心外膜との間に血液が流出し,限局性の血腫を形成した後に徐々に血腫が吸収されて生じ,瘤壁は心外膜と血腫で構成され心筋は含まれない.
  • 心外膜下心室瘤 ➜ 梗塞部心筋の不完全破裂,もしくは心筋内に解離が生じ,破裂を防ぐ形で残存した心筋および心膜が,徐々に外方に突出して形成されるものである.

仮性心室瘤の診断基準(以下の3条件を全て満たす)
  1. 心室瘤の頸部における心筋の突然の途絶
  2. 心室瘤の頸部が瘤の径より小さい
  3. 心室瘤の壁に心筋組織,心外膜組織,心膜組織が存在するか否かは問わない


仮(偽)性心室瘤 (pseudoaneurysm or false aneurysm) と真性心室瘤 (true ventricular aneurysm) のシェーマ

😄 おまけ
  • 仮性心室瘤(Subepicardial aneurysm)は米国の医師(病理学?)のEpsteinらが提唱した観念です(Am J Med 1983;75:639-44).読み方はエスタインでいいと思われます.ちなみにエスタイン奇形の由来 Wilhelm Ebstein (1836-1912)で別人で"p"ではなくて"b"です
  • 先天性心疾患であるEbstein's anomalyは循環器学会用語集ではエスタイン奇形(””でなくて””)です.一方,エプスタイン奇形と同じ意味であるEbstein's diseaseはエスタイン病と記載されています.これは聴診のErbと同じく謎かもです(過去の投稿:Erbの謎).

(投稿者 川崎)

2023-08-19

バンザイはダメでした 😓

慢性左心不全の増悪が疑われる症例

🐥 解説
  • 座位で頸部に内頸静脈の2峰性陥凹(中心静脈圧の高度上昇)
  • 吸気で内頸静脈の陥凹は隆起(ランチシ徴候)に変化(矢印)
  • 両側の上肢を挙上するとシャツの襟が頸部を隠してしまった
  • 慌てて襟元を覗いてみたがやはり頸静脈の拍動は確認できず

🐤 コメント
  • 上肢挙上は吸気よりも強い負荷になることが少なくありません.吸気負荷は前負荷の増大が中心ですが,上肢挙上負荷は上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇)などが加わるためと思われます(過去の投稿).
  • 本例では吸気負荷で陽性波(巨大v波/cv merger)が出現したため,過剰負荷にならないか少しヒヤヒヤしながら上肢挙上を追加しました.しかし両手をバンザイしてもらったら服がせり上がって頸静脈が見えなくなりました.急いで服をずらしましたが頸静脈の拍動は確認できませんでした.
  • 単なる視界不良でなく,ペンバートン徴候(Pemberton's sign)と同様の機序が働いているのかもしれません.拡大した両側の頸静脈が万歳ポーズで圧迫された結果,頭部からの静脈還流が減少しそうです.顔面うっ血が生じないのは甲状腺腫大や縦隔腫瘍と異なり完全閉塞にならないため?

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(投稿者 川崎)

2023-08-18

口腔白板症 Oral leukoplakia

  • 口腔内の臨床的に摩擦によって除去できない白色の板状病変
  • 【発音】lùːkoupléikiə/ルーコウプレイキア【音声】こちら
  • 病理は上皮性異形成の有無によらず他疾患には分類されない
  • 歯肉や舌縁に多く,次いで頬粘膜、口蓋、口唇、口底に認める
  • 男女比は 1.2:1で初診平均年齢は59.7歳(50~70代が80.8%)
  • 前がん病変と考えられるが癌化率は0.1%~36%とばらつき有
  • 512例中13例が癌化した検討では癌化までの平均期間は39ヵ月
  • 対処法は外科的全切除,レーザー治療(蒸散),経過観察など


  • 1日20本喫煙の55歳女性患者が3ヵ月前から舌の腹側に白板症を認め受診
  • 病理所見は中等度および重度の舌底異形成の病巣を有する扁平上皮粘膜
  • その後3ヵ月で病変増大し生検で高悪性度の上皮内異形成→レーザー蒸散

👅 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-17

今週の一枚 🎯 フロッグサイン

数日前から動悸が続く症例(体位は座位)

🐸 解説
  • 座位で頸静脈は視認しないが吸気後には出現(矢印)
  • 拍動はとても早い(まるでハチドリの羽ばたきの様)
  • 最終診断は心房頻拍(2:1伝導)による心不全の増悪
  • DCを予定したがジギタリス点滴で洞調律に回復した

🐝 独り言
  • 頸静脈の早い拍動としては,房室結節回帰性頻拍(AVNRT)のフロッグサイン(frog sign)が有名です.フロッグサインの拍動は140回/分前後の周期ですが,本例は240回/分程度で一見静止している様にみえます(勝手に命名:ハチドリ徴候/Hummingbird sign).
  • このハチドリサインは頻脈誘発性の非代償性心不全になれば,吸気負荷を行わなくても観察できる様になります(自験例).一方,フロッグサインは心不全を伴わなくても観察できることが多いと思います.心拍数がそれほど早くないので拍動自体が大きくなるためでしょうか...
  • 進行性核上性麻痺(PSP)では中脳被蓋が萎縮するため,そのMRI像をハミングバード徴候と言うそうです(下図).頸静脈Hummingbird signの命名は,あまりにも素早い翼の羽ばたき(ホバリング中は約3,000回/分)からなので,厳密には被ってはいないと思いますが...😅

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-08-16

‘Reverse-Namaskar’ sign 逆ナマスカー徴候

  • Namaskar(ナマスカー)はインドの典型的な挨拶方法
  • 通常は前腕を胸の前で組み手掌を向かい合わせにする
  • 逆ナマスカー徴候は背中で手掌を合わせる動作(下図)
  • エーラス・ダンロス症候群などの関節の過伸展で陽性
  • 日本風なら”後ろの人にもお礼”サインでしょうか?😉

Ehlers-Danlos Syndrome (EDS) と考えられる65歳女性

(投稿者 川崎)

2023-08-15

大動脈解離診断リスク スコア Aortic Dissection Detection Risk Score: ADD-RS

  • ADD-RSのオリジナルはAHA/ACCガイドラインCirculation 2010;121:e266-369)➜ 以下の各項目で一つでも該当すれば1点として3項目の合計点を算出(0~3点)

  1. 背景:マルファン症候群など結合組織病・大動脈弁疾患・胸部大動脈瘤・大動脈の手術歴
  2. 症状:突然発症・激痛・引き裂くような痛み 
  3. 所見:脈拍欠損あるいは血圧左右差(>20 mmHg)・局所的な神経学的異常・拡張期逆流性雑音・低血圧やショック

  • その後にDダイマーとの組合せに進化(Circulation 2018;137:250-8)➜ 上記スコア(ADD-RS)が0~1点かつDダイマーが500 ng/mL未満なら急性大動脈解離の除外(CT省略可),ADD-RSが2~3点ならCT検査(Dダイマー測定不要)



💘 大動脈解離に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 積木/川崎)

2023-08-14

これもフィジカル:虚血顔 

  • 先日の研究会でフィジカルの匠から教えてもらった論文です。その師匠は「コロナリー顔」と言っていました😊
  • 先日報告された胸部X線から糖尿病予測(Nat Commun 2023;14:4039)など、AIの進歩はとても楽しみです

  • デジタルカメラ(2000万画素以上)による顔の正面像、60度像、頭頂像を撮影
  • ディープラーニングアルゴリズムによる冠動脈狭窄(50%以上)の検出能を検証
  • アルゴリズムは感度0.80、特異度0.54、AUC 0.730(95%信頼区間 0.699-0.761)
  • AUCはDiamond-ForresterモデルやCADコンソーシアム臨床スコアより高値(下図)


  • AIが用いた判定基準()は理解不能ですが、下図のように示されるとなるほどかもしれません。
  • 耳垂皺(earlobe crease、フランク徴候)が含まれていて一安心(外耳道毛はないようですが…😒)




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(投稿者 川崎)

2023-08-13

de Winter’s ECG pattern デ ウィンター心電図パターン

👻 デ ウィンター心電図
  • オランダの心臓病専門医デ ウィンターらがレターで報告(N Engl J Med 2008;359:2071-3
  • de Winter パターンは前下行枝近位部の閉塞による前壁AMIで出現(頻度は前壁梗塞の約2%)

👽 心電図の特徴
  1. 前胸部誘導の高い対称的なT波
  2. 前胸部誘導で上向きのST低下(1-3 mm)
  3. 前胸部誘導でST上昇の欠如
  4. 通常はR波の増高不良
  5. QRS幅の延長なし
  6. 多くはaVRでST上昇(1-2 mm)

心停止で搬入された40歳男性・蘇生後にデ ウィンター心電図パターンのAMIと診断

👶 独り言
  • Wellens症候群と同様,de Winter波形も臨床現場で市民権を獲得しつつあるかもしれません.右側〜前胸部ST低下+T波増高は後壁梗塞に類似しますが,R波の増高はないようなので鑑別可でしょうか...もっともベッドサイド・エコーですぐに分かりますが
  • 前壁梗塞なのにどうしてST上昇が生じないかは不明ですが,心内膜伝導遅延を伴うプルキンエ線維の変異+虚血性ATP欠乏によるサルコレンマのATP感受性カリウム(KATP)チャネルの活性化低下などが推測されているようです(Circ Res 2000;87:837-9

💁 心電図に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-12

腎外腎盂 Extrarenal pelvis

  • 腎盂が外側へ突出した状態で病的な意義はない
  • 水腎症との鑑別は腎杯や尿管に拡張がないこと
  • 頻度は不明であるが人口の最大10%と推定(
  • 基本は無症状(感染や結石形成などの報告あり)

腎外腎盂 extrarenal pelvis の CT像(矢印)

小腎杯が集まり大腎杯 ➜ 大腎杯が合流し腎盂 ➜ 腎盂は尿管に移行

💁 腎盂に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-11

耐震 vs 免震

  • 耐震 ➜ 地震による建物倒壊を防ぐ(例:筋かいや耐力壁の利用)
  • 制振 ➜ 建物への揺れを減らす(例:壁や柱の接合部にダンパー)
  • 免震 ➜ 建物へ揺れを伝えない(例:地面と建物の間に積層ゴム)

😎 独り言
  • 医療者従事者も病院の建て替えなどの時に耳にするかもしれません.すべて装備が理想ですがコスト上昇につながります.健常者が多い棟(医局や検診部門など)は耐震のみで,入院棟は耐震+免震などにすることが多いようです.

(投稿者 川崎)

2023-08-10

今週の一枚 🎯 上肢挙上で中心静脈圧 ⏫

自覚症状が悪化した心不全症例(体位は座位)

🐦 解説
  • 外頸静脈を視認可能 ➜ その上縁は頸部中央あたり
  • 上下変動があるため中心静脈圧は上昇と判断可能
  • 内頸静脈も鎖骨上窩で僅かに陥凹を認めると判断
  • 左上肢挙上で外頸静脈の拍動上縁は5cm程アップ
  • 慢性左心不全の増悪と考えて内服調整を行なった

 🐤 診察室中継
  • 上肢挙上のみでも中心静脈圧って結構(5cm水柱くらい)上がるんだと思いながら頸部を見ていました.その後に患者さんの顔を見たら真っ赤になっていたので驚きました(ビデオでは少し分かりにくいと思いますが...).
  • 上肢挙上のみで明瞭な息切れが出現した症例(動画中の音声に注目!)を経験したこともあります.この様な強い反応は,吸気負荷ではあまり経験したことがありません.理由は不明ですが機序は過去に考察(ココ

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-08-09

機能性神経障害 Functional neurological disorders: FND

  • 神経系の疾患または他の器質的問題では説明できない神経学的症状(しびれや歩行障害など)を生じた状態で,かつてはヒステリーなどとも呼ばれた.
  • 除外診断や精神科的原因・心理学的特徴から診断するのではなく,神経症候(陽性徴候:下図)を元に検査は最低限でなるべく早期に積極診断すべき
  • 運動感覚障害を呈す例で脊椎・脳MRI,脳脊髄液検査,SPECT,PET,脳波など過剰検査を行い,異常がないことからFNDの疑いと診断するのもではない



(投稿者 川崎)

2023-08-08

アナフィラキシー:検査所見

  • アナフィラキシーは迅速治療を行うために発症時診断は臨床診断基準に基づいて行う
  • ただし確定診断の補助として血漿トリプターゼあるいはヒスタミン増加の確認は有用
  • トリプターゼは肥満細胞内に存在しアレルゲンとIgE受容体の架橋形成で細胞外放出
  • いずれも発症直後と基準となる発症前あるいは回復後の2時点での測定が必要である

👺 実際の解釈
  • トリプターゼは発症後15分から3時間の採取血液で,基準値から141%以上,あるいは絶対値として15—25μg/ml 以上の増加であれば免疫グロブリンIgE介在性アナフィラキシーの可能性が高い。基準値は発症前か発症後2時間以降の値とする。ただし,トリプターゼは心筋梗塞,外傷,窒息状態でも増加する。また,小児や低血圧がない場合はトリプターゼが正常値であることが多い。
  • 血漿ヒスタミンは,発症後15—30分で基準値に戻るので,血液検査で増加をとらえるには発症から5—10分以内の採血が必要である。しかし,ヒスタミンの代謝産物であるN-メチルヒスタミンは,発症後30—60分で尿中に排出され,数時間は検出が可能である


💁 アナフィラキシーに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-07

🏆 論文:HCMのフィジカル意義

  • 肥大型心筋症は多くのユニークな身体所見が知られています
  • 本研究では HCM 症例で身体所見の臨床的意義を検討しました
  • 診断能は臥位の頸静脈a波+Ⅳ音聴診で特異度94%、感度57%
  • Ⅳ音の消失が死亡または入院の増加に繋がることも示しました
典型例(論文の動画 ➜ コチラから下スクロール)

😎 独自路線
  • 肥大型心筋症は心室の肥大が特徴的ですが,フィジカルでは心房が主役です.これは硬い心室に血液を無理やり押し込んでいる心房の頑張り(心房の辛抱)です.この頑張りが続かなくなったとき(例:Ⅳ音の消失)が運動耐容能の低下や心血管事故の増加(本論文)に関係することは理にかなっています.
  • 身体所見から肥大型心筋症を疑い,その後に画像検査で確認する臨床スタイルは,充分に可能で楽しいと思います.「忙しい新患外来でそんなめんどくさいことできないよ~」という意見にも大いに同意しますが...😅 いずれにしても遅ればせながらライフワークの1つが形になって本当に良かったです.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-08-06

頚動脈狭窄症

狭窄評価のフローチャート(プラーク占有率は目視での評価)

💊 抗血小板療法
  • 無症候性頚動脈狭窄症に対する脳梗塞一次予防の抗血小板療法のエビデンスは十分でない.脳卒中治療ガイドライン 2015(追補 2017)では「中等度以上の無症候性頚動脈狭窄症に対して総合的な判断のうえで抗血小板療法を考慮してもよい」と記載されている.
  • 症候性頚動脈狭窄に対する抗血小板療法は必須であり,アスピリン,クロピドグレル,シロスタゾールが使用される.特に脳梗塞急性期には抗血小板薬2剤併用療法を考慮してもよいが,長期に継続すると出血性合併症のリスクがあるため単剤に減量する必要がある.


(投稿者 川崎)

2023-08-05

前頭隆起 Frontal bossing

  • 前額部の突出を意味する身体所見で栄養障害や代謝障害,ホルモン異常,血液障害などのに関連する.
  • 原因は先端巨大症,くる病,軟骨無形成症,クルーゾン症候群,基底細胞母斑症候群,先天梅毒など.

頭蓋形成不全を患う9歳の男児

(投稿者 川崎)

2023-08-04

心臓MR:心筋炎

  • 心臓MRIを用いた心筋炎の診断能は2018年改訂版LLC()では感度87.5%,特異度96.2%下図
  • ただし心臓MRIを読影する際には虚血性心筋症や非炎症性心筋疾患の存在を除外しておく必要あり
  • 発症後2~3週間以内に心臓MRIを施行することが望ましい(劇症型心筋炎は発症4週間は浮腫残存)
  • 遅延造影は心外膜側,斑状,中層で異常増強を示し,その部位は心基部から中部の下側壁が多い
  • 好酸球性心筋炎では全周性の内膜下パターンで,劇症型心筋炎では非劇症型と比較してびまん性


- 2018年改訂版 Lake Louise Criteria -


💁 心筋炎に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-03

今週の一枚 🎯 やはり外頸静脈は要注意

慢性心不全症例が下腿浮腫で来院(体位は座位)

🐤 解説
  • 外頸静脈は膨隆して呼吸性変動はなし ➜ まさに怒張
  • 頭部を上下左右に動かしてもらったが怒張は変化なし
  • 内頸静脈は視認せず吸気時(クスマウル徴候)も陰性
  • 胸部X線やBNP値を確認したが以前の所見と変化なし
  • 下腿痛でNSAIDsを多用していたことが判明(Na貯留)
  • 現行の内服薬は変更せずに鎮痛薬少し控えるよう依頼

🐦 独り言
  • 当ホームページでは「頸静脈の怒張なし」の乱用に以前から警笛を鳴らしています(過去の投稿) .「頸静脈の怒張」とは呼吸性などの変動が消失した状態を意味するため,「頸静脈の怒張なし」は「中心静脈圧がめちゃくちゃ上昇してるわけではない」を表します.またこの怒張は外頸静脈には稀に出現しますが,内頸静脈には出現しないはずです(血行動態が破綻して死亡)
  • 本例で外頸静脈が怒張していた理由は不明です(圧迫する腫瘤等もなし).しかし先日,頸静脈膨隆の原因が「重複した内頸静脈の一方が瘤化」であった症例報告をたまたま眼にしました(J Surg Case Rep 2023;2023:rjad366).中にはこういう患者さんもおられるのかもしれません.もっとも今回の動画の患者さんは初診だったため,以前から存在したか否かは不明です.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-08-02

ケルススの四徴候

  • 古代ローマ時代の医学者ケルスス(Aulus Cornelius Celsus: 紀元前25年頃 - 紀元後50年頃)が記述した炎症に伴う4つの所見(発赤・腫脹・熱感・疼痛).
  • ローマ帝国時代のギリシャの医学者ガレノス(αληνός:129年頃 - 200年頃)が提唱した機能障害を4徴に加えてガレノスの五徴候と呼ばれることもある.

- 炎症の五徴候 -

(投稿者 川崎)

2023-08-01

冠動脈のAHA分類

  • 冠動脈の解剖は半世紀ほど前に提唱されたAHA分類が現在も用いられています.先日のカンファ中に各専門医の定義が微妙に異なっていることが判明しました.日常で困ることはない程度の差異でしたが,今一度オリジナルの定義()を見直してみました.バイプレーンなどを駆使する現在のアンギオから見ると#7と#8の厳密な定義などには少し歴史を感じさせられます.

解剖学的シェーマ

😊 大まかな定義
  • #1:右冠動脈の起始部から鋭縁部までを2等分した近位部
  • #2:右冠動脈の起始部から鋭縁部までを2等分した遠位部
  • #3:右冠動脈鋭縁部から後下行枝まで
  • #4:後下行枝(poster descending branch: PD)+房室結節枝(atrioventricular node branch: AV)
  • #5:左冠動脈の起始部から左前下行枝と左回旋枝の分岐部まで
  • #6:左前下行枝の起始部から第一中隔枝まで
  • #7:第一中隔枝からRAO viewで角度が付く部位まで(不明瞭なら第一中隔枝以遠を2等分した近位部:必ずしも第ニ対角枝とは一致しない)
  • #8:#7以遠
  • #9:第一対角枝(first diagonal branch: D1)
  • #10:第ニ対角枝(second diagonal branch: D2)
  • #11:左回旋枝の起始部から鈍角枝(obtuse marginal branch: OM)まで
  • #12:鈍角枝(obtuse marginal branch: OM)
  • #13:鈍角枝から後側壁枝まで
  • #14:後側壁枝(posterior lateral branch: PL)
  • #15:後下行枝(posterior descending branch: PD)

オリジナルの定義

💁 冠動脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)