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2023-04-27

今週の一枚 🎯 巨大と言われる小波

検診の心電図で異常を指摘された症例  問題  心電図異常とは?



(投稿者 川崎)

2021-05-04

内頸静脈:凹 ➜ 凸 ➜ 凹

息切れが辛くて受診した症例

🐶 解説
  • 内頸静脈の周期的な陥凹が額下まで観察可 ➜ 中心静脈圧の高度上昇
  • 深吸気止めで内頸静脈の拍動は陥凹から隆起に変化 ➜ ランチシ徴候
  • 深吸気の息止め終了後には内頸静脈拍動は隆起から陥凹に戻っている
  • ちなみに外頸静脈の怒張は深吸気止めの終了後に拍動が出現している

🐷 おまけ発言
  • 内頸静脈の収縮期陽性波(巨大v波あるいはcv merger)を意味するランチシ徴候(ランチージ徴候)は高度の三尖弁逆流を示唆します.よって本例の呼吸負荷による内頸静脈の反応(凹 ➜ 凸)は,肺高血圧が容易に(さらに)上昇する病態が考えられます.肺高血圧の増悪は負荷心エコー図の専売特許ではありません.
  • 内頸静脈の巨大v波にも関わらず,三尖弁逆流がほとんど観察されない症例も少なからず経験します(特に開心術後症例).その理由は不明ですが,stiff LA syndromeが背後にあるためと思っています.開心術中に切開された心房がコンプライアンスを失うことは想像に難くありません.右房も含むためstiff RA syndromeまたはstiff atrial syndromeと呼ぶ方が正確かもしれません.

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(投稿者 川崎)

2021-02-15

簡易定性法 プラス Part 2

息切れの増悪で来院した症例

🐸 所見の解説
  • 鎖骨上〜頸部中央に内頸静脈の規則正しい陥凹 ➜ 心不全+洞調律
  • 拍動はおそらく二峰性でx谷>y谷 ➜ 心不全あるが超重症ではない
  • 深吸気で内頸静脈の隆起が出現している ➜ クスマウル徴候が陽性
  • 深吸気中には耳下まで内頸静脈の陽性拍動が出現 ➜ ランチシ徴候
  • 耳垂に約45度の皺が存在(フランク徴候)➜ 虚血性心疾患の疑い

🐨 独り言
  • 本例には冠動脈バイパス術の既往があり,今回は慢性左心不全の増悪と診断しました.座位で内頸静脈の拍動が視認できるから(座位陽性),心不全は十分には代償されていないと判断するだけではちょっと寂しい気がします.ぜひ頸静脈の簡易定性法にフィジカルの知識をどんどんプラスしていってください( 簡易定性法 プラス).その応用はほぼ無限かも…
  • 深吸気で内頸静脈の拍動が出現することはあっても,陥凹が陽転化することは珍しいと思います.なお本ページではGiovanni Maria Lancisiが発見した(三尖弁逆流時に出現する)頸静脈の巨大v波(cv merger)をランチージ徴候と記載してきました.しかし本邦ではランチシと記載されることが多いようなので,今回から変更しようと思います.もっともイタリア人の発音ではランチーシと聞こえますが…

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(投稿者 川崎)

2023-02-23

今週の一枚 🎯 言うは易く行うは難し

労作時の息切れで来院した症例(端座位)

🐤 解説
  • 端座位の状態で頸部の下1/2に周期的は拍動(隆起)を認める
  • 陽性波 ➜ 頸動脈(コリガン脈)または頸静脈(ランチシ徴候
  • 頸部下端の用手的圧迫で同拍動は消失した ➜ 内頸静脈の拍動
  • 本例は最終的に慢性左心不全の増悪によるランチシ徴候と診断

 🐦 つぶやき
  • 頸部で陽性波を見た時,静脈性か動脈性かの鑑別が必要です.そのポイントとして,①触診による拍動の強さ,②呼吸性変動の有無,③脈触知を併用した時相判定,④圧迫による消失の有無,などが知られています.
  • しかしこの鑑別は"Easier said than done"(言うは易く行うは難し)と思っています.陽性波を示すほど高度に上昇した中心静脈圧の拍動はまるで動脈です(自験例).もちろん呼吸変動なんてありません.
  • 本ビデオでは圧迫で消失していますが,強く抑え込まないと消えてくれませんでした(3度撮り直し😅).時相の違いも僅かだし...動脈性なら収縮期 vs 静脈性(巨大v波/cv merger)ならⅡ音ピーク(収縮後期〜拡張早期)

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(投稿者 川崎)

2024-04-19

座位定性法:より深淵へ

息切れで来院した症例

👉 解説
  • 内頸静脈に陽性波(触診で静脈性:ランチシ徴候)
  • 拍動の上縁は顎下以上であるため定量評価は困難
  • 左上肢の挙上で陽性波の持続時間が延長している
  • 本例の最終診断は高度TRを伴った非代償性心不全

👍 追加コメント
  • 頸静脈の座位定性法は拍動上縁の位置から半定量的な評価も可能です.しかし本例のように内頸静脈の拍動上縁が顎下まで達している症例では,各種負荷に対する反応を上縁変化から判断することは困難です.
  • しかし位置の変化に時間の変化(例:短時間隆起→長時間隆起)も加味するとより深い評価が可能です.もっとも負荷前の所見から中心静脈圧は極めて上昇しているので,それで十分かもしれませんが...😅

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(投稿者 川崎)

2023-03-02

今週の一枚 🎯 頸静脈評価の思考プロセス

息使いが荒くなった症例

🐤 臨床現場
  • 呼吸は荒く外頸静脈を座位で視認 ➜ 中心静脈圧は上昇?
  • 呼気より吸気で外頸静脈の隆起が明瞭 ➜ 静脈圧は上昇!
  • よく見ると耳垂の下に拍動する部分がある(陥凹っぽい)
  • 深吸気を保持した後は拍動はより明瞭へ(おそらく隆起)
  • 僅かながら耳垂の拍動もあり(イヤウインクサイン陽性)
  • 最終的に内頸静脈のランチシ徴候を伴った心不全と判断

🔗 思考プロセス
  • 心音は頭で考えてもダメだと思っています.歌謡曲のイントロクイズと同様に,耳にした瞬間に反応できるまで聴き込むべきです(英語耳ならぬ心音耳👂の作成)
  • 一方,頸静脈に関しては本例の様にじっくり考える方がいいと思います(個人的な経験論).これは聴覚に比べて,視覚はあまりにも多くの情報を含むからです.
  • ただし匠の業を極めたフィジカルの達人であれば一見で判断できるかもしれませんが...😅 いずれにしても百聞は一見に如かず:多くの動画に接してください.

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(投稿者 川崎)

2021-08-13

オスラー名言の視覚版

心不全で入院中の症例:端座位 ➜ 前かがみ

🐷 解説
  • 端座位で右鎖骨上に内頸静脈の拍動をわずかに視認可(座位陽性)
  • 内頸静脈拍動は不規則(不整脈や呼吸性:本例では心室期外収縮)
  • 前かがみになると内頸静脈の拍動が増強(陽性波=ランチシ徴候
  • ビデオ後半で拍動視認の頻度が多い ➜ 心室期外収縮の増加を示唆

👂 臨床現場
  • 回診時に患者さんが「入院ベットに座って横にある台から物を取ろうとするとしんどくなる」と教えてくれました.実際にやってもらったのがこの動画です.まさしく前屈時呼吸困難症(bendopnea)です.
  • 患者さんから身体所見を教えてもらうことが少なくありません(自験例1自験例2自験例3自験例4).オスラーの名言 "Listen to your patient, he is telling you the diagnosis." のまさに視覚版です.

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(投稿者 川崎)

2024-10-10

今週の一枚 🎯

慢性心不全増悪で入院中の症例(座位)

👿 解説
  • 頸部に明瞭な拍動(陥凹ではなく隆起)を視認する
  • 下から上への緩徐な陽性波 ➜ 静脈性(ランチシ徴候)
  • 外頚より内頚静脈の拍動上縁が高い(内頚を信頼!)
  • 左上肢の挙上に伴い内頸静脈の拍動上縁は上昇
  • 耳垂に揺れはないがその背面には拍動あり(矢印)
  • 本例の心エコー図は重症の三尖弁逆流+肺高血圧

💀 広義の耳ウインクサイン
  • 狭義の winking earlobe sign といえば耳たぶの揺れが必要です(英語の文言通り).でも本例のように耳朶後方の皮膚面が拍動していれば広義の耳ウインクサインとしてもいいと思います.
  • 本例には明瞭な三尖弁逆流がありました.しかし三尖弁逆流がほとんどないにも関わらず,明瞭な内頸静脈の陽性波を認めることが少なからずあります.特に開心術後の症例に多く経験します.
  • 心臓病診断学の実際(吉川純一著)には,その機序として「心膜の閉鎖にからんだ三尖弁輪下降の制限」が提案されています.左心膜完全欠損でも同様の所見が観察されると記載されています.
  • 個人的には,静脈コンンプライアンスの低下あるいは静脈キャパシティーの限界を反映している症例も散見されるのではと思います.よってv波が容易に圧上昇につながるのではないのかな~😐

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(投稿者 川崎)

2022-03-18

鎖骨上のピコピコ

CTで悪性腫瘍の右心系転移が疑われた症例

🐳 巨大a波(Prominent or Giant a wave)
  • 右鎖骨の頭側(鎖骨上窩)に周期的に隆起する拍動を視認(前半矢印)
  • 手指で容易に圧迫され,時相は動脈拍動やⅠ音の直前 ➜ 頸静脈のa波
  • 深吸気時に右内頸静脈の拍動が出現(クスマウル徴候陽性:後半矢印)     
  • 心エコー図で三尖弁周囲に腫瘍を認め,三尖弁狭窄の病態が疑われた

💣 おまけ
  • ご本人に自覚症状はなく,心音にも特記すべき異常はありませんでした.また座位で頸静脈は視認できず,クスマウル徴候も陰性でした.
  • 同様のa波は不整脈(完全房室ブロック心室期外収縮)で有名です.この場合はCannon a waveと呼ばれます(キャノン音と要区別
  • 日常臨床では頸静脈の大きなa波は肥大型心筋症で視認することが多く,同疾患のフィジカル診断にも有用です(典型例
  • a波は本例のような三尖弁狭窄症など右房圧が上昇した病態で目立ちますが,日常臨床でお目にかかることは稀(他の自験例:心房中隔欠損
  • 頸部の陽性波と言えば一発診断可能なコリガン脈ランチシ徴候(巨大v波)ですが,個人的には地味なa波が大好きです 😊

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(投稿者 川崎)

2022-12-08

🎯 今週の一枚

収縮期雑音で循環器内科を紹介受診した症例(端座位)

🍙 解説
  • 頸部に周期的拍動あり ➜ 動脈性あるいは静脈性の判断が必要
  • 動脈性なら頸動脈のコリガン脈 ➜ 大動脈弁逆流(拡張期雑音
  • 静脈性なら頸静脈のランチシ徴候 ➜ 三尖弁逆流(収縮期雑音
  • 外頸静脈は見えず+左側にも拍動あり(矢印)➜ 動脈性を示唆
  • 本例の最終的な診断は大動脈弁逆流による頸動脈のコリガン脈

😗 余談
  • 頸静脈拍動は陥凹することが多いのですが,中心静脈圧が高度に上昇すると陽性波を形成することがあります(典型例).陽性波が動脈性か静脈性かは拍動の触診で鑑別できますが,なんとか視診のみで診断したいといつも思っています(本ページでは様々な方法で鑑別に挑戦しているので検索窓から探してみてください)
  • 本例のポイントは収縮期雑音として紹介受診した点です.臨床現場では,大動脈弁逆流例が拡張期雑音で紹介されてくることはむしろ稀だと思います.拡張期雑音はとても見逃しやすい音です.本例も大動脈弁狭窄はありませんが,相対的な大動脈弁狭窄によると思われる収縮期雑音が目立ちました(厳密には往復雑音でした)

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(投稿者 川崎)

2023-02-16

今週の一枚 🎯 拍動する怒張

心不全と診断され入院した症例

😄 解説
  • 臥床で外頸静脈が怒張している ➜ 中心静脈圧の上昇あり?
  • 吸気負荷で外頸静脈怒張は改善なし(クスマウル徴候陽性)
  • よく見ると👀怒張した外頸静脈に拍動あり(周期的な隆起)
  • 外頸静脈の下にある胸鎖乳突筋の拍動 ➜ 内頸静脈の拍動!
  • 端座位で内頸静脈の陽性波(ランチシ徴候/Lancisi's sign
  • 座位で吸気負荷 ➜ 内頸静脈の陽性波+外頸静脈の隆起出現

😃 コメント
  • プレゼンで多用されている表現「頸静脈の怒張」は,拍動や呼吸性変化を伴わないパンパンに張った状態と考られます.この表現は頸静脈にのみ適応されるべきです(実例).頸静脈が怒張するような病態では循環動態を保てません(生存困難).
  • 本例の外頸静脈は拍動していますが,今回は怒張と表現してもいいと思います.これは外頸静脈自らの拍動ではなくて,他の要因(内頸静脈の拍動)を反映しているに過ぎないからです.ただし怒張は仰臥位でのみで,座位は単なるクスマウル徴候です.

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(投稿者 川崎)

2021-11-29

視診による重症度診断:大動脈弁逆流

拡張期雑音を指摘され来院した症例(症状なし)

📡 視診にこだわった実況中継
  • 臥床で頸部の周期的な隆起があり,静脈性なら巨大v波(三尖弁逆流など)で動脈性ならコリガン脈(大動脈弁逆流)と考えられる.外頸静脈の拍動は臥床+枕ありで頸部中央であるため,明らかな中心静脈圧の上昇はなさそう.つまり静脈性の巨大v波(ランチシ徴候)は否定的.しかし端座位でその陽性波は,臥床よりも不明瞭になっている.コリガン脈であれば通常,重力による虚脱増強のため臥床より座位の方が分かりやすいことが多い(自験例).少し悩んだが肘部内側の反跳脈を確認して,最終的に大動脈弁逆流と視診フィジカル診断した.その後に行った触診では明らかに動脈性拍動で,心エコー図で中等度の大動脈弁逆流を確認した.

本例では体位と陽性波の関係で,フィジカル診断に迷いが生じました.触診あるいは呼吸負荷に対する反応,聴診の併用などで両者の鑑別(動脈性 vs 静脈性)は容易と考えられます.しかし脈に触れたい想いをぐっと我慢して,あくまでも視診にこだわってみました.本例はコリガン脈でありながら臥位でより明瞭であった理由は不明ですが,大動脈弁逆流の程度が一因であった可能性があります.重症であれば重力に抗して大きな陽性波が形成されますが,中等症ではそこまでの拍出量はないのかもしれません.大動脈弁狭窄ではフィジカルで重症度の診断技術が(ある程度)確立されています(過去の投稿).是非,大動脈弁逆流でも挑戦していきたいと思います.

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    (投稿者 川崎)

    2025-07-31

    今週の一枚 🎯 サロンパスにも負けず

    息切れで来院(座位)

    😋 解説
    • 首に貼られたシップで頚静脈評価は困難?
    • しかしよく見ると頚部の中央に明瞭な隆起
    • しかも耳垂直下まで陽性拍動を確認できる
    • その後の検査で非代償性心不全を確認した

    😎 現場実況
    • 本例はシップを見た瞬間に「これでは判定できないな」と安直に考えてしまい,頚部中央の明瞭な拍動に気が付くのに少し時間を要した.頚静脈拍動は用手的に圧迫できる弱い拍動であるが,最重症の陽性波(三尖弁逆流によるランチシ徴候が多い)はかなり力強い.実際に,本例も指で押さえてもなかなか消失しなかった.
    • 本例では動画の途中に大きな呼吸をしていることにも注目して欲しい(吸気負荷は未実施である).このように自発的な大きな呼吸も心不全所見の一つと考えられる(特にコロナ以降のマスク装着時).なお通常呼吸時に耳下まで達する陽性波を呈する頚静脈拍動は,深吸気負荷でさらに悪化することは少ないと思われる.
    • 本例は心電図で右脚ブロック+左軸偏位+ウェンケバッハ型2度房室ブロックであった(三枝ブロックならぬ四枝ブロック?😁).心電図検査後にもう一度,頚静脈拍動を見直したが,ウェンケバッハ型2度房室ブロックとは自信をもっては言えなかった(反省:同様の過去の経験).理論的にはほとんどすべての不整脈は,頚静脈+頚動脈所見(または橈骨動脈触知)で鑑別できるのだが…(匠の業

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    (投稿者 川崎)

    2023-08-19

    バンザイはダメでした 😓

    慢性左心不全の増悪が疑われる症例

    🐥 解説
    • 座位で頸部に内頸静脈の2峰性陥凹(中心静脈圧の高度上昇)
    • 吸気で内頸静脈の陥凹は隆起(ランチシ徴候)に変化(矢印)
    • 両側の上肢を挙上するとシャツの襟が頸部を隠してしまった
    • 慌てて襟元を覗いてみたがやはり頸静脈の拍動は確認できず

    🐤 コメント
    • 上肢挙上は吸気よりも強い負荷になることが少なくありません.吸気負荷は前負荷の増大が中心ですが,上肢挙上負荷は上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇)などが加わるためと思われます(過去の投稿).
    • 本例では吸気負荷で陽性波(巨大v波/cv merger)が出現したため,過剰負荷にならないか少しヒヤヒヤしながら上肢挙上を追加しました.しかし両手をバンザイしてもらったら服がせり上がって頸静脈が見えなくなりました.急いで服をずらしましたが頸静脈の拍動は確認できませんでした.
    • 単なる視界不良でなく,ペンバートン徴候(Pemberton's sign)と同様の機序が働いているのかもしれません.拡大した両側の頸静脈が万歳ポーズで圧迫された結果,頭部からの静脈還流が減少しそうです.顔面うっ血が生じないのは甲状腺腫大や縦隔腫瘍と異なり完全閉塞にならないため?

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    (投稿者 川崎)

    2023-09-15

    上肢挙上負荷は慎重に

    慢性心不全の増悪症例(体位は座位)

    👿 解説
    • 内頸静脈を視認(矢印)➜ 中心静脈圧は高度上昇
    • その拍動は陥凹波ではなく陽性波(ランチシ徴候)
    • 吸気負荷でも虚脱せず ➜ 広義クスマウル徴候陽性
    • 左上肢の挙上に伴い外頸静脈の明瞭な拍動が出現
    • 中心静脈圧の上昇程度:上肢挙上負荷>吸気負荷

    💀 独り言
    • 座位での頸静脈評価の問題点は軽度〜中等度の中心静脈圧の上昇を見逃す場合があることです(安静座位で視認すれば推定15 cmH2O以上).この見落としを防ぐオススメの手技が負荷頸静脈評価法です(45度座位も有用ですが実施困難)
    • 負荷頸静脈評価法で最も簡便な方法が,前負荷を増やす吸気負荷だと思います.同負荷は簡便に加えてとても安全です.安静時に内頸静脈が陽性拍動を呈している症例でも,負荷後に自覚症状が悪化した症例を経験したことはありません.
    • 左上肢挙上による頸静脈負荷法も診察室で簡便に追加できる負荷で重宝しています.しかし自覚症状が明らかに悪化する症例を稀ならず見かけ要注意です(症例1:動画中の音声に注目/症例2:ビデオでは少し分かりのですが顔が真っ赤に)

    🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

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    (投稿者 川崎)

    2021-07-09

    👴 歴史クイズ



    earlobe 耳朶 耳たぶ 耳垂
    (投稿者 川崎)

    2021-09-30

    🎯 今週の一枚

    便秘と急激な体重増加で消化器内科を受診した症例(座位で記録)



    (投稿者 川崎)

    2023-06-16

    左上肢挙上:

    前日にERで喘息と診断された咳嗽症例

    😈 解説
    • 座位で右頸部に内頸静脈の拍動(陥凹)あり(凹矢印)
    • 咳嗽が強いため吸気負荷の代わりに左上肢の挙上負荷
    • 負荷後は頸部陥凹が(おそらく)隆起に変化(凸矢印)
    • 心音で明瞭なギャロップを確認して急性心不全と診断

    👾 コメント
    • 深吸気止めで内頸静脈の陥凹が隆起に変化(ランチシ徴候)する症例は散見されます(自験例).本例の主訴は咳嗽であり呼吸負荷が難しいため(多くは咳き込む),代わりに左上肢負荷を行いました.もちろん肝頸静脈逆流(Hepatojugular reflux test)も施行可能ですが,臥床になるためやはり患者さんは咳き込んだと思います.
    • 本例は前日の救急外来で喘息による咳嗽と診断されていました.重症喘息例の頸静脈拍動の代わりに陥没呼吸を認めることがあります(自験例).重症COPDでは下位肋間に内方陥凹(フーバー徴候)を認めます(自験例).もちろん肺疾患を合併した心不全症例もありますが(自験例),安易な咳喘息の診断は慎む必要があります.

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    (投稿者 川崎)

    2021-10-25

    👥 動脈と静脈の共演

    横になると苦しいと訴える症例の頸部(端座位で呼吸調整なし)

    😐 解説
    • 外頸静脈上縁の上下運動が明瞭 ➜ 外頸静脈で中心静脈圧の測定が可能
    • その拍動上縁は鎖骨上(Tシャツの丸首内)➜ 中心静脈はおそらく上昇
    • その拍動にばらつきあり ➜ 呼吸性変動に加えて不整脈(心房細動)?
    • 内側に一瞬で上方まで伝わる鋭い隆起あり ➜ 動脈性(コリガン脈)?
    • 動脈拍動の直後に上方に向かう外頸静脈隆起 ➜ v波(ランチシ徴候)?
    • 短い先行RR(動画内の★)では,動脈拍動は小さく静脈拍動は大きい
    • 本例は複数弁の中等度逆流と心房細動による非代償性の心不全でした

    😋 追加コメント
    • 駆出性雑音は先行RR時間に応じて音量がすることが知られています(短いと小さく長いと大きい).一方,逆流性雑音の音量は,先行RR時間には(ほとんど)影響を受けません.本例では,この先行RR時間が血行動体に及ぼす影響を,頸静脈と頸動脈の視認を通じて確認できた面白い症例だと思われます.
    • 頸静脈と頸動脈の共演は本コンテンツでも何度か触れてきました(例:自験例1自験例2).ただし診察室でその共演に気がつくことは意外に稀かもしれません.僕はいつも主役(目立つ方)に気が取られてしまいます.スマホに記録した動画を後で確認して,その共演に気がつく次第です…単に修行不足😅

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    (投稿者 川崎)

    2025-02-21

    😊 素敵な紹介 パート2

    なんとなく元気がない慢性心不全例(座位)

    💁 ランチシ徴候(三尖弁逆流)
    • 頚部の中央に明瞭な拍動(隆起)あり
    • 容易に圧迫されるため動脈でなく静脈
    • 心エコー図で高度の三尖弁逆流を確認
    • 推定される肺動脈収縮期圧は50 mmHg
    • 整脈かと思ったが心電図では心房細動
    • 最終的に心不全(PEF)の増悪と診断

     📧 共通言語「座位で頚静脈が見える」
    • 本例もかかりつけ医からの紹介がとても素敵であった(前回の素敵な紹介).「足に浮腫はないけど,首がピコピコしています」と...👍
    • 頚静脈の座位定性法が広がると,心不全の診断をより迅速に行うことができます.無料アプリ「シンプル頚静脈©」を是非ご活用ください
    • 病院やクリニック,救急隊,施設職員だけでなく,心不全患者さんやその家族にもこの表現が共通言語として広がることを願っています.

    (無料画像から作成)

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    (投稿者 川崎)