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2023-09-30

薬剤性腎障害 Drug-induced renal injury

📗 分類
  1. 直接型 ➜ 用量依存性に発症頻度が増加
  2. 過敏型 ➜ 用量非依存性でアレルギー機序が関与
  3. その他 ➜ 免疫学的機序を介した糸球体障害(微小変化型、膜性腎症)、腎血流低下、血管障害、閉塞性腎症など

📘 機序
  • 尿細管障害(急性尿細管壊死)➜ アミノグリコシド系、セファロスポリンなど
  • アレルギー機序(急性間質性腎炎)➜ メチシリン、NSAIDs、ST合剤など
  • 腎血流障害 ➜ NSAIDs、ACE阻害薬、造影剤、シクロスポリンなど
  • 血管障害 ➜ シクロスポリン、溶血性尿毒症症候群など
  • 尿細管閉塞 ➜ メトトレキセート、サルファ剤、化学療法時の高尿酸血症など
  • 尿細管機能異常 ➜ Fanconi症候群、尿細管性アシドーシス、リチウムなど
  • 免疫機序 ➜ 微少変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、血管炎など


🐾 豆知識
  • アレルギー機序が関与した薬剤性腎障害(急性間質性腎炎)では尿中の好酸球が増加

👤 実例Sysmex Journal Web 2020;21:46-52
  • 54才女性が1週間前から続く39度の発熱を主訴に入院した.前医で解熱鎮痛薬アセトアミ ノフェンと抗菌薬クラリスロマイシンとガレノキサシンが投与されていた. 
  • 尿細胞診は入院日の検査で好酸球増多はなかったが第2病日に14%に増加した.腹部エコーとCT検査で両腎に腫大を認めガリウムシンチグラフィで両側腎に集積を示した.
  • 腎生検所見では糸球体には異常なく,間質全体に高度の細胞浸潤があり好酸球も散在していた.薬剤性間質性腎炎と診断した.
  • Crは2.44 mg/dL まで上昇したが,上記薬物の中止とプレドニソロン30 mgの内服で,2月後に正常化した.ちなみに3剤のLST(リンパ球刺激試験)はいずれも陰性.

💁 尿検査に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-29

片頭痛の忘備録

先日のモーニングカンファレンスを担当された当院 脳神経内科 部長の滋賀先生のレクチャーがとても良かったので一部をメモしておきます.研修医の参加者が少なめだったのはちょっと残念でしたが...😑

  • 頭痛の有病率は全人口の40%で,片頭痛は全人口の8.4%を占めている
  • 片頭痛の男女比は1:4で小児~成人に発症することが多く半数に家族歴
  • 片頭痛は疾病負荷(DALY)が大きく神経疾患では脳卒中に続いて2番目
  • 片頭痛は前兆あり,前兆なし,慢性(月15回以上が3ヵ月以上)に分類
  • 様々な誘因が知られているが(ストレスや月経,におい,酒)雨もある
  • 筋緊張性頭痛で多い肩こりを伴うことが少なくなく,両側性頭痛も散見
  • 片頭痛や群発頭痛で仕事を休むことはあるが,筋緊張性頭痛で欠勤は稀

🉐 片頭痛 vs 群発頭痛 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-28

今週の一枚 🎯

左室のびまん性壁運動低下を認める2症例の心臓MR(造影)

💟 解説
  • 症例Aは下壁に遅延造影(=線維化/下図Aの矢印)
  • 心内膜側が造影されているため虚血性心疾患の疑い
  • 実際のカテーテル検査では完全閉塞を含む3枝病変

  • 症例Bは心室中隔に遅延造影が陽性(下図Bの矢頭)
  • 造影部位は心筋中層であるため拡張型心筋症の疑い
  • 実際のカテーテル検査では冠動脈に狭窄病変はなし



💞 追加コメント
  • 大動脈から派生する冠動脈は心筋の外側を走行するので,心筋の内膜側が虚血にさらされやすくなります.よって内膜側から進展する遅延造影を認めたら虚血性心疾患を疑います(貫壁性梗塞なら全層性の造影).この遅延造影領域が心筋壁厚の50%以下ならば心筋バイアビリティ(生存能)は保たれていると考えられます(N Engl J Med 2000;343:1445-53
  • 拡張型心筋症(DCM)の遅延造影は通常,冠動脈走行に一致しない分布です.やや特異的な所見として中隔中層の線維化(遅延造影)があり約30%の症例に認めます.同所見を伴うDCMは遅延造影を認めない症例に比して心事故の頻度が高く,薬物治療によるリバースリモデリング(心機能改善)も少ないことが知られています(日内会誌 2016;105:2041-7

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-09-27

4種類のカルベジロール

  • カルベジロール(先発品アーチスト©)には4種類の剤型があります(錠1.25mg、錠2.5mg、錠10mg、錠20mg).日常臨床で多用されているベータ遮断薬(厳密にはαβ遮断薬)の一つですが,厳密には各々の剤型で効能(適応疾患)が異なります.
  • 先日,心不全の病名がないためカルベジロール錠1.25mgが査定された症例の相談を受けました(効能の知識が曖昧でうまく答えられませんでした😢).全剤型で「年齢、症状により適宜増減する」と記載されていますが,各効能をまとめておきます. 

📤 疾患から剤型
  • 本態性高血圧症(軽症~中等症)、腎実質性高血圧症 ➜ 10mg、20mg
  • 狭心症 ➜ 10mg、20mg
  • 慢性心不全 ➜ 1.25mg、2.5mg、10mg
  • 頻 脈性心房細動 ➜ 2.5mg、10mg、20mg

📥 剤型から疾患
  • 1.25mg ➜ 虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
  • 2.5mg ➜ 虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全、頻脈性心房細動
  • 10mg ➜ 本態性高血圧症(軽症〜中等症)、腎実質性高血圧症、狭心症、虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全、頻脈性心房細動
  • 20mg ➜ 本態性高血圧症(軽症〜中等症)、腎実質性高血圧症、狭心症、頻脈性心房細動

(投稿者 川崎)

2023-09-26

心電図マイスターへの道 ①

二方向性心室頻拍
  • 1拍毎にQRS波の軸が180°変化する心室頻拍で,多形性心室頻拍の一種.カテコラミン誘発多形性心室頻拍(Catecholaminergic Polymorphic Ventricular Tachycardia: CPVT)に対する特異度は高いが,その出現率は必ずしも高くない(感度は50%程度).

等頻度房室解離
  • 房室解離(洞結節からの興奮伝導が伝わる前に房室結節が興奮)のうち,P波とQRS波の周期がほぼ同じ状態(P波がQRS波の前後に出没).英名は isorhythmic atrioventricular dissociation で,房室弁の閉鎖時に心房収縮が生じるため心房圧上昇(cannon a wave)と血圧低下を来たし得る.

顕性WPW症候群
  • A型(最多)はV1誘導のデルタ波は陽性で波形はR型(R>S)=ケント束は左房-左室.B型はV1誘導のデルタ波は陽性で波形はrS型(R<S)=ケント束は右房-右室.C型(稀)はV1誘導でデルタ波は陰性で波形はQS型(Rなし)=ケント束は中隔.
  • Ⅱ,Ⅲ,aVF誘導でΔ波がすべて陽性ならケント束は弁輪の前壁,すべて陰性なら弁輪の後壁,不一致なら弁輪の側壁に存在(例:デルタ波がV1誘導で陽性かつ波形はrS型,下壁誘導で全て陰性なら,ケント付着部位は三尖弁輪の後壁)
  • デルタ波の極性は(最も早いQRS)の開始点から20 msの地点で判定

心房粗動
  • 三尖弁輪を反時計方向に旋回する通常型(common type,約90%)と時計方向に旋回する非通常型(uncommon type)がある.心房粗動の約9割は通常型でV1誘導ではF波がP波(陽性)のように見える.一方,非通常型ではV1では陰性P波のようにみえる.(※この分類はWellsの分類で,最近では前者を通常型反時計回り(common type AFL),後者を通常型時計回り(reverse common type AFL)とする.この場合の非通常型(uncommon type AFL)は三尖弁輪以外を旋回する心房粗動)
  • P波が陽性か陰性か分かりにくいときは,他誘導で明瞭なP波を見つけて,その時相で判断すればよい


💁 心電図マイスターに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-25

第102回(2013)看護師国家試験より

問題 心音の聴取部位を図に示す。肺動脈弁領域の聴診部位はどれか。ただし、点線は心臓を示す。

 
 
 
 
 

判定

😉 聴診部位(覚え方は ➜ コチラ
  1. 第2肋間胸骨右縁(2RSB)は大動脈弁領域
  2. 第2肋間胸骨左縁(2LSB)は肺動脈弁領域
  3. 第3肋間胸骨左縁(3LSB)はErb領域
  4. 第4肋間胸骨左縁(4LSB)は三尖弁領域
  5. 心尖部は僧帽弁領域

😳 独り言
  • 上記領域は単なる命名で個人差もあるから特にこだわる必要はないと思うけど、肺動脈領域とErb領域がごっちゃになっている方も少なくないのでは...
  • 聴診順は ① ➜ ⑤ でも ⑤ ➜ ① でもどちらでもOKです。心尖部に多い重要音(過剰音やランブル)をすぐ聞きたいか後に取っておきたいかの違いかな

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(投稿者 川崎)

2023-09-24

ヘンダーソンの14の基本的欲求

  • The Nature of Nursing (1966) で挙げられた人の基本的欲求と基本的看護の構成要素
  • アメリカの看護師かつ教育者である Virginia Avenel Henderson(1897-1996)が提唱
  • 看護の指導者として フローレンス・ナイチンゲール に次いで有名だそうです(
  • 看護師は患者の欲求を判断する時,下記14項目を考慮する必要があると教育される

ヘンダーソンの14の基本的ニードWiki
  1. 正常に呼吸する
  2. 適切に飲食する
  3. あらゆる排泄経路から排泄する
  4. 身体の位置を動かし、またよい姿勢を保持する(歩く、座る、寝る、これらのうちのあるものを他のものへ換える)
  5. 睡眠と休息をとる
  6. 適当な衣類を選び、着脱する
  7. 衣類の調節と環境の調整により、体温を生理的範囲内に維持する
  8. 身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
  9. 環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
  10. 自分の感情、欲求、恐怖あるいは“気分”を表現して他者とのコミュニケーションをもつ
  11. 自分の信仰に従って礼拝する
  12. 達成感をもたらすような仕事をする
  13. 遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
  14. “正常”な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる

💁 看護に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-09-23

リカンベント Recumbent bicycle

  • recumbent【形】仰向けの,横向けの,臥位の,横臥の
  • 背もたれ付きシートに坐り足を前方に向け行う屈伸運動
  • 脚力の伝達効率が安定しているため長時間の運動も可能
  • 通常の自転車に比べ前面投影が小さく空気抵抗が少ない
  • セミリカンベント型自転車エルゴメータはリハでも多用
自転車エルゴメータ(左)やリカンベント(中央・右)を用いた有酸素運動

(投稿者 川崎)

2023-09-22

心雑音の性状(quality, character)

👤 篠山重威先生が25年ほど前にまとめられた心雑音の日本語表現
  • rumbling(遠雷様,輪転様)
  • blowing(吸気性)
  • machinary(機械様)
  • musical(音楽的)
  • rustling, rippling(流水様,さらさら)
  • grating(すり砕くような,きしるような)
  • rasping(やすりをかけような)
  • sawing(鋸をひくような,曳鋸性)
  • pouring(液水性)
  • scratching(爬くような)
  • whistling(吹鳴性)
  • harsh(荒い,ざらざらした)
  • soft(やわらかい)


- 種々の心雑音の典型的な形 -

(投稿者 川崎)

2023-09-21

今週の一枚 🎯

変動する左側腹部痛(NRS 6-10)を訴える若い男性

🔍 左尿管結石による疝痛発作
  • COPEの疝痛パターンNRSで5~10)は尿路結石を示唆
  • 本例は身体所見で左側の肋骨脊椎角(CVA)叩打痛も陽性
  • 随時尿検査では尿潜血および尿沈渣赤血球はいずれも陽性
  • 無晶リン酸も "3+" で検出(ただし検出=異常ではない)
  • 本例は左腎盂の拡大があり膀胱尿管移行部に5 mmの結石

👿 無晶性リン酸塩 
  • アルカリ性あるいは中性で認める無色かつ無晶性(結晶のように原子や分子が規則正しい配列をとらない)、無粒状の個体
  • 鏡検では無晶性尿酸塩と区別することはできないが、無晶性リン酸塩は無晶性尿酸塩と異なり60度に加熱しても溶解しない
  • 健常者にも出現し単独での病的意義はないが(単に尿アルカリ化を示唆)、頻回な燐酸塩尿例では尿路結石が多い(引用
  • 一般に尿沈渣の結晶は尿路結石の成分の推定に役立つことあり(ただし結石成分と尿沈渣が一致しないことも稀ではない)

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(投稿者 積木/川崎)

2023-09-20

医療福祉連携士

  • 2010年に始まった日本医療マネジメント学会の認定制度
  • 目標は地域の医療~福祉の切れ目のない連携を図ること
  • 資格は会員+講習会+他の国家資格などの実務経験(
  • 全国に約600名の有資格者(2023年7月4日の時点? 引用

💁 連携に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-19

壊疽性膿皮症 Pyoderma gangrenosum

  • 概要 慢性に経過し繰り返す蚕蝕性の皮膚潰瘍を特徴とする疾患
  • 病態 活性化好中球が重要な役割を果たす好中球性皮膚症の一つ
  • 疫学 頻度は3-10人/100万人・年で20~60歳に好発しやや女性優位
  • 誘因 採血針など微細な刺激,外傷,術後(乳房再建術後など)他
  • 合併 炎症性腸疾患(最多はUC),関節リウマチ,血液疾患など
  • 採血 CRPや赤沈亢進,末梢白血球・好中球数増多,時にANCA陽性
  • 診断 統一された壊疽性膿皮症の診断基準は存在しない(下表参照)
  • 分類 潰瘍型(最多),膿疱型,水疱型,増殖型,ストーマ周囲型
  • 鑑別 血行障害,血栓性,悪性腫瘍,血管炎,感染による皮膚潰瘍
  • 治療 創部安静+創傷管理,原疾患治療,PSL,シクロスポリンなど


壊疽性膿皮症の診断

インフリキシマブが奏効した壊疽性膿皮症の1例

💣 皮膚潰瘍に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-18

ビンビン来ます

心電図異常(ST-T変化)で受診した高齢者

👻 解説
  • 胸骨頸切痕の上部に規則的に隆起する明瞭な拍動あり
  • 手指で圧迫できず(指先まで拍動がビンビン伝わる)
  • 呼吸負荷を追加しても拍動上縁の変動は観察できない
  • 本例には心電図変化を説明する明らかな心疾患はなし
  • 拍動は加齢に伴う動脈蛇行と判断(=偽コリガン脈

💚 追加コメント
  • 頸静脈の評価は左側の鎖骨上〜頸部で行いますが,前頸静脈(Anterior jugular vein)が目立つ症例もあるので注意が必要です
  • 頸動脈の拍動が明瞭ならコリガン脈ですが通常は頸部側面に認めます.前頸部のみなら動脈蛇行による偽コリガン脈かも(自験例

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(投稿者 川崎)

2023-09-17

ドラベ症候群 Dravet syndrome

  • 概要 てんかん性脳症の1つで1歳未満に発症し全身強直〜半身性間代発作を繰返す
  • 由来 フランスの小児精神科の女医 Charlotte Dravet の初報(Vie Med 1978;8: 543–8)
  • 原因 多くにSCN1A遺伝子ヘテロ変異(他に微小欠失やSCN1B・2A、GABRG2の変異)
  • 疫学 出生2~4万人に1人で本邦では3000例(ただし成人例での未診断例も少なくない)
  • 症状 全身けいれん発作、焦点性発作、ミオクロニー発作、非定型欠神発作などの反復
  • 合併 極めて高率に知的障がい、運動失調、発達障がい(成人期の自立した生活は稀)
  • 脳波 背景活動の徐波化、広汎性多棘徐波、多焦点性棘波などが年齢に伴って消長する
  • 治療 バルプロ酸、クロバザム、スチリペントール、臭化剤、トピラマート,ケトン食
  • 予後 完全に治癒することはなく思春期までの死亡率は約10%(突然死や急性脳症など)

参考)難病情報センター,他

- ドラベ症候群(Dravet syndrome)患者の臨床的特徴 -

(投稿者 川崎)

2023-09-16

遺憾(いかん)

  • 先日,病院で正式文書として遺憾とういう用語を使用する機会がありました.政治家が用いる表現としてしばしば耳にしますが,意味が少し曖昧でした.ポイントは謝罪の意味を伴わないということでしょうか.英訳は通常 regret になります.
  • 「憾」という難しい漢字の意味はうらみや心残りです.遺憾の他には,憾怨(かんえん:憎く思うこと,恨むこと),憾悔(かんかい:ひどく残念がること,残念に思うこと),憾恚(かんい:腹を立てて恨むこと)などの熟語があります.
  • 日本政府では批判的意見を示す際に8段階の外交表現(プロトコル)が用いられており、「懸念」「深く懸念」「憂慮」「深く憂慮」「遺憾」「極めて遺憾」「非難」「断固非難」の順に強いニュアンスとなようです(ウィキペディアより).

📚 各辞書の「遺憾」の定義無料検索 - Soraで検索)
  • 広辞苑 思い通りにいかず心残りなこと。残念。気の毒。
  • 大辞林 思っているようにならなくて心残りであること。残念な,そのさま。
  • 大辞泉 期待したようにならず、心残りであること。残念に思うこと。また、そのさま。
  • 新辞林 思っているようにならなくて残念なこと。
  • 日本国語大辞典 思い通りにいかないで、心残りなこと。残念。
  • 学研国語大辞典 〔希望通りにならないで〕心残りなこと。残念なこと。気の毒。
  • 明鏡国語辞典 思いどおりにならなくて、心残りなこと。残念。事柄が不首尾で、到底容認できるものではないさま。よくない。まずい。
  • 新明解国語辞典 十分な結果が得られず、心残りがする様子。
  • 学研漢和大字典 思いどおりでなく心のこりでくやしい。残念である。▽憾(うらみ)をのこすの意。

(投稿者 川崎)

2023-09-15

上肢挙上負荷は慎重に

慢性心不全の増悪症例(体位は座位)

👿 解説
  • 内頸静脈を視認(矢印)➜ 中心静脈圧は高度上昇
  • その拍動は陥凹波ではなく陽性波(ランチシ徴候)
  • 吸気負荷でも虚脱せず ➜ 広義クスマウル徴候陽性
  • 左上肢の挙上に伴い外頸静脈の明瞭な拍動が出現
  • 中心静脈圧の上昇程度:上肢挙上負荷>吸気負荷

💀 独り言
  • 座位での頸静脈評価の問題点は軽度〜中等度の中心静脈圧の上昇を見逃す場合があることです(安静座位で視認すれば推定15 cmH2O以上).この見落としを防ぐオススメの手技が負荷頸静脈評価法です(45度座位も有用ですが実施困難)
  • 負荷頸静脈評価法で最も簡便な方法が,前負荷を増やす吸気負荷だと思います.同負荷は簡便に加えてとても安全です.安静時に内頸静脈が陽性拍動を呈している症例でも,負荷後に自覚症状が悪化した症例を経験したことはありません.
  • 左上肢挙上による頸静脈負荷法も診察室で簡便に追加できる負荷で重宝しています.しかし自覚症状が明らかに悪化する症例を稀ならず見かけ要注意です(症例1:動画中の音声に注目/症例2:ビデオでは少し分かりのですが顔が真っ赤に)

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

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(投稿者 川崎)

2023-09-14

今週の一枚 🎯

前日から持続する上腹部痛例の胃カメラ像

🐟 解説
  • 胃幽門輪近くに胃壁に突き刺さった虫様異物あり
  • 採血は軽度の炎症反応のみ(WBC 9500、CRP 0.74)
  • 異物は鉗子で除去(下図):胃アニサキスと診断
  • 食事指導とプロトンポンプ阻害薬の処方後に帰宅

📷 おまけ
  • 世間では(医療現場でも?)胃カメラと言われていますが、正式には上部消化管内視鏡です。これは当時(1950年代~70年代)には本当に小さなカメラがついていて検査後に現像していたからです。その後に光ファイバーを介したリアルタイムの観察が可能になりました。もっとも最近では半導体素子(CCD=超小型カメラ)+電気ケーブルが主流なので、胃カメラという表現もあながち間違いとは言えない気がします😊
  • 同様に大腸ファイバーの正式名称は下部消化管内視鏡検査です。私の育った環境では大腸カメラと言うことはあまりありませんでしたが、CF(colon fiberscopy)はいまだに使用されているかと思います。しかし正しくはCS(colonoscopy)と表記するそうです。これはファイバーを使わずに、CCDを用いた電子スコープだからだそうです😶

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(投稿者 川崎)

2023-09-13

デブリードマン Debridement

  • 概略 残存組織の治癒力を高めるために障害された組織を除去すること
  • 方法 外科的、機械的、化学的、自己消化、ウジ虫(マゴット)療法他
  • 由来 フランス語の切開 Débridement から(英語発音に要注意:ココ

徹底したデブリードマンを行った症例

(投稿者 川崎)

2023-09-12

クリグラー・ナジャー症候群 Crigler–Najjar syndrome

  • 概念 グルクロン酸抱合の障害に起因して非抱合型ビリルビンの血中濃度が増加した先天的疾患
  • 名称 米小児科医 Crigler とレバノン系米小児科医 Najjar(AMA Am J Dis Child 1952;83:259-60
  • 原因 常染色体劣性(潜性)遺伝によるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)活性欠損や低下
  • 病型 血清Bil値が30-50 mg/dlがtype I,6-20 mg/dlがtype II,1-5 mg/dlならGilbert症候群(GS)
  • 疫学 type 1は1,000万人に約1人,Type 2は100万人に約1人,Gilbert症候群は全人口の3.0-8.6%
  • 症状 核黄疸による筋緊張低下,傾眠,後弓反張,けいれん他で,慢性化すれば筋緊張亢進など
  • 治療 type 1は光線療法を継続し肝移植,type 2やGSは新生児期の光線療法のみでその後は不要
  • 予後 type 1は予後不良であるが,それ以外の予後は良い(20 mg/dl未満でほとんど異常なし)


ビリルビンクリアランスの遺伝性疾患に関与するトランスポーターと酵素の概略図
略語:Alb, アルブミン; BCRP, 乳がん耐性タンパク質; BMG, ビリルビン モノグルクロニド; BDG, ビリルビン ジグルクロニド; GST, グルタチオン-S-トランスフェラーゼ; MRP, 多剤耐性関連タンパク質; OATP, 有機アニオン輸送タンパク質; UCB, 非抱合型ビリルビン; UGT, ウリジン二リン酸グルクロノシルトランスフェラーゼ

(投稿者 川崎)

2023-09-11

🏆 論文

  • 当院初期研修医の間瀬先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
  • 薬剤性体液貯留による過収縮から流出路狭窄を伴う心不全を生じた症例です
  • LVOTの改善にはベータ遮断薬ですが,著明な全身浮腫もあり躊躇しました
  • トルバプタンは効果なし ➜ 最終的には利尿薬の調整で徐々に改善しました

🚀 告白
  • 本例では身体所見から心不全であることは容易に診断できました(推定の中心静脈圧は18 cmH2O).しかし心エコー図のレポートを見てびっくり 😳 なんと左室流出路狭窄が記載されているではありませんか.
  • 改めて身体所見を取り直すと頸動脈拍動はスパイク&ドームで,座位から立位で音量が増加する収縮期雑音でした.超反省 😰 その後は(主治医ではなかったのですが)毎日聴診してエコー(連日計測)と対比

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-09-10

今更ですが...

  • 発症6時間以内の症例では心電図のaVRとV1誘導の変化がタコツボ心筋症(下図の赤)と急性前壁壁梗塞(下図の青)の鑑別に役立つ(変化していれば前壁梗塞)

😁 独り言
  • 類似の心電図変化には「急性肺塞栓症ではIII誘導とV1誘導に陰性T波を認めるが(88%),急性冠症候群では稀(1%)」という報告があります(Am J Cardiol 2007;99:817-21).いずれも横浜市立大学附属市民総合医療センターの小菅雅美先生です.個人的にはこのようにシンプルで実用的な心電図指標が大好きです.

💁 心電図に関する過去の投稿 ➜ コチラ
たこつぼ 鑑別 蛸壺 MI 心筋梗塞 急性心筋梗塞
(投稿者 川崎)

2023-09-09

双角子宮(bicornuate uterus)ほか

  • 子宮体部が左右の2つに分かれている子宮形態異常の一つ
  • 通常は症状はなく健診や妊娠,他の病気を契機に偶然発見
  • 他の異常には中隔子宮,単角子宮,重複子宮など(下図)
  • これらの子宮形態異常は1676例中3.2%の症例で認められた
  • 習慣流産,子宮内の胎児死亡,早産,骨盤位の原因になる
  • しかし異常でも78%で出産可能で,手術メリットは未確立


さまざまな子宮形態異常

💁 子宮に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-08

手抜きではありません 😤

倦怠感を訴える高齢男性(体位は座位)

😀 解説
  • 端座位で心尖拍動は左乳輪の左外側へ偏位 ➜ 心拡大の疑い
  • 心尖拍動は2肋間で観察でき長い隆起時間 ➜ 心肥大の疑い
  • 吸気保持で心尖拍動はより明瞭に(通常は吸気時に不明瞭)
  • 心エコー図で遠心性肥大あり ➜ 最終診断は慢性の左心不全

😑 自白
  • 最近は心不全が疑われる症例では,頸静脈評価はほとんど座位でのみ行っています.もちろん脱水を疑う症例では臥位で拍動消失を確認しますが...
  • 同様に心尖拍動も座位でのみ確認しています.もちろん肥大型心筋症が疑われる症例では臥位や左側臥位でダブルインパルスを探しにいきますが...
  • 実は腹部大動脈瘤を確認するための初診時の腹部触診も座位で済ませることが増えてきました.背中とお腹を両側の手掌で挟み込むようにして...
  • なんでも簡略化することが良いとは思っていません.しかし時間をかける身体所見の評価は必要な症例のみでいいのではと感じる今日この頃です

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-09-07

今週の一枚 🎯

不安定狭心症が疑われる症例
左(黒線)が来院時で右(茶線)が1年前




(投稿者 川崎)

2023-09-06

胆囊ドレナージ

😓 先日のカンファレンスで...
  • 非専門医としてあまりにも多くの略語に打ちのめされそうになりました.でもそれではいけないので一度,整理してみました.

  • 中等症以上の急性胆囊炎で,何らかの理由で早期手術治療を行えない手術リスクの高い症例では,標準的ドレナージ法として経皮経肝胆囊ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage;PTGBD)が推奨されている
  • カテーテルを留置しない簡便なドレナージ法である経皮経肝胆囊穿刺吸引法(percutaneous transhepatic gallbladder aspiration;PTGBA)はベッドサイドでも行える手技的に容易なドレナージ法であるが,濃縮胆汁や膿性胆汁ではドレナージが十分でない
  • 近年,新たな代替治療法としてERCP下に経乳頭的に行う内視鏡的経乳頭的胆囊ドレナージ(endoscopic transpapillary gallbladder drainage;ETGBD),および 超音波内視鏡下に行うEUS下胆囊ドレナージ(EUS-guided gallbladder drainage;EUS-GBD)も報告されている.
  • ETGBD には経鼻胆囊ドレナージ(endoscopic naso-gallbladder drainage;ENGBD)と内視鏡的胆囊ステント留置術(endoscopic gallbladder stenting;EGBS)があり,特に凝固異常,抗血栓薬服用,腹水貯留,解剖学的に PTGBD が困難な例などに有用である.


経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)

経皮経肝胆囊穿刺吸引法(PTGBA)
 

 経鼻胆囊ドレナージ(ENGBD)

内視鏡的経乳頭的胆囊ドレナージ(EGBS)

超音波内視鏡下胆囊ドレナージ(EUS-GBD)

💁 略語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-05

脂肪塞栓症候群 Fatembolism syndrome: FES

  • 病態 骨髄や脂肪組織の脂肪滴が体循環に流入して生じた微小循環障害
  • 誘因 長管骨や骨盤の骨折を伴う外傷,整形外科術後,熱傷,膵炎など
  • 機序 脂肪球による直接的な末梢組織損傷および全身性炎症反応の惹起
  • 症状 三徴は呼吸不全,点状出血,中枢神経症状(特異的な症状はない)
  • 画像 胸部X線で吹雪様陰影(下図右B),造影CTで肺塞栓症の所見なし
  • 治療 原疾患の治療+対症療法(輸液や酸素投与,人工呼吸器,ECMO)
  • 頻度 重篤な交通外傷の90%,複雑骨折では10~20%(受傷24~48時間後)
  • 予後 死亡率10%/受傷後短時間で呼吸・意識障害の電撃型は33.3~50%


左大腿骨頸部骨折後に脂肪塞栓症候群を発症した78歳女性
(身体所見は入院4日後/胸部画像のA・C・Dは入院時,Bは4日後)

💣 塞栓に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-04

電紋 Lichtenberg figure

  • 落雷直撃で体表を這う沿面放電による皮膚の樹枝状所見(下図)
  • 英名は分岐放電を研究した独の物理学者 リヒテンベルク に由来
  • 機序は体表面の放電で血管透過性が亢進して血液の血管外漏出
  • 落雷は雷雲と地表の間に2百万V/m以上の電圧差の形成時に発生
  • 本体は数ns以内に最高値3万Aに達して,約40nで半減する衝撃波
  • 世界中で100万人あたり0.2〜1.7人/年間の頻度で雷撃死が発生
  • 発生頻度は女性よりも男性が5倍ほど多く,好発年齢は10〜29歳
  • 雷撃症の瞳孔散大や対光反射消失は予後と無関係で蘇生が必要
  • 雷撃症の死亡率は10〜30%で生存者でも約70%に重大な合併症


左即腹部の電紋(リヒテンベルク図形)

雷撃症による皮膚病変のイメージ図
線状熱傷(左):点状熱傷(中, 矢印):樹枝状電紋(右)

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(投稿者 川崎)

2023-09-03

日本内科学会 第241回近畿地方会より

😐 個人的に気になった報告

演題7 落下胃石腸閉塞で発症し残存胃石に対してコーラ溶解療法が奏効した1例
  • 胃石腸閉塞では従来は早期の開腹手術による胃石の回収が治療の第1選択とされていたが、Ladasらの報告以降、コーラによる溶解療法の有用性が多数報告されている。

演題30 心房細動に対するカテーテルアブレーション後の肺静脈狭窄に対し経皮的ステント留置術を行った1例
  • カテーテルアブレーション後の肺静脈狭窄による肺うっ血が原因となり,血痰を認めたと考えられたため、左下肺静脈に対し経皮的肺静脈ステント留置術を実施した.高周波カテーテルアブレーション後の肺静脈狭窄の頻度は1%程度とされ,3~5ヵ月程度経過した後に徐々に発症することが多い.

演題43 Dual Energy CTを用いて電撃型脂肪塞栓症を疑い、V-A ECMOによる早期の集学的治療で良好な転帰を辿った超高齢者の1例
  • 左大腿骨転子部骨折に伴う電撃型脂肪塞栓症を強く疑いV-A ECMOを導入した。造影CTで肺動脈に造影欠損を認めなかったが,脂肪塞栓症の肺病変で胸部造影CTに異常を認めることは非常に稀である。本例ではDual Energy CTで浸潤影に一致して血流低下を認めた。

演題81 術後にHungry bone syndromeとともに腎機能悪化を認めた原発性副甲状腺機能亢進症の一例
  • 原発性副甲状腺機能亢進症と診断し副甲状腺摘出術を施行したが、術後より血清Ca低下に対した。活性型ビタミンD3製剤やカルシウム製剤の投与を行うとともに、十分な補液を継続したところ血圧と腎機能は徐々に改善。副甲状腺摘除術後はHungry bone syndromeとともに、血中PTH濃度の変化に伴う腎機能の変化にも注意する必要がある。

演題125 肝機能障害を伴わない門脈体循環短絡症の1例
  • 門脈体循環短絡症は門脈血流が体循環系に流れ込み、肝代謝が行われず高アンモニア血症となり多彩な神経症状を呈する疾患であり、猪瀬型肝性脳症ともよばれる。肝機能障害を背景とせずに発症する場合もあり、意識障害の鑑別の際には念頭に置く必要がある。

演題164 セフトリアキソンナトリウムによる薬剤性腎障害が疑われた症例
  • CTRX 2g/日の投与を開始したが腎機能低下が急速に進行した。尿細管マーカーの上昇および尿中好酸球を検出したため、CTRXによる薬剤性腎障害を疑った。同剤は中止し、メチルプレドニゾロン250mg/日×3日間、および後療法としてプレドニゾロン30mg/日の内服治療を行った。腎機能は著明に改善した。CTRXによるリンパ球刺激試験(DLST)を行ったが陽性所見は認めなかった。


👻 当院からの発表
  • 演題42 たこつぼ心筋症が急性冠症候群によって誘発されたと考えられる1例(循環器内科 西川 晶生先生)

😇 循環器内科の張本先生が座長でした

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-09-02

メラビアンの法則  Mehrabian's rule

  • 行動が他人に及ぼす影響は言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%であるという考え
  • 米国の心理学者 Albert Mehrabian (1939〜) が提唱(1971 Silent messages, California)
  • 3Vの法則(言語=Verbal,聴覚=Vocal,視覚=Visual)や 7-38-55のルール ともいう
  • 情報伝達は「見た目や喋り方が重要」と誤解されることがあるが,これは正確ではない
  • メラビアンも「話者が態度や感情を伝えていない」ときには当てはまらないと言及(


(投稿者 川崎)

2023-09-01

トリロジー Evo シリーズ

  • 院内のみならず在宅にも対応した人工呼吸器で,医療従事者から介助者へのスムーズな移行
  • 体重2.5kg〜の子供にも使用でき車椅子やスタンドへ取り付け可能でバッテリは最大15時間
  • Evo O2トリロジーは低フロー酸素に加えて高圧酸素にも対応(21~100%の酸素が設定可能)



💁 人工呼吸に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)