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2019-05-31

アミオダロンと甲状腺機能

アミオダロン服用中の甲状腺機能に関する検討心臓 2013;45:1101-9)より
  • 対象 アミオダロンを1月以上処方されていた341名
  • 基準 1.0≦FT4<2.4ng/dL,1.0≦TSH<20.0μU/mL
  • 結果 機能低下(含む疑い)=10.4%、中毒症=5.2%
  • 余後 甲状腺中毒症を認めた状態で死亡した3症例あり


🐧 機序
  • アミオダロンの分子式はC25H29I2NO3・HClで100mg中に37.5mgヨードを含有 ➜ ヨード過剰摂取からWolff-Chaikoff現象のため甲状腺機能低下症を発症(Am J Med 1969;47:101-24
  • アミオダロンは末梢と下垂体でT4をT3へ転換する5´-脱ヨード酵素を阻害する ➜ 甲状腺機能低下症を発症(FEBS Lett 1999;450:35-8
  • 浅在性Basedow病や中毒性結節性甲状腺腫 ➜ アミオダロン内服でヨード誘発性の甲状腺ホルモン産生過剰 ➜ 甲状腺機能亢進症を発症(日内会誌 2010;99:776-85
  • アミオダロン自体に甲状腺細胞障害性がある(らしい) ➜ 破壊性甲状腺中毒症タイプの甲状腺機能亢進症を発症(日内会誌 2010;99:776-85

甲状腺の関連投稿 👀

(投稿者 古室・川崎)

ブスコパンの禁忌

  • 一般的名称はブチルスコポラミン臭化物製剤で,薬効分類名は鎮痙剤添付文書
禁忌 (次の患者には投与しないこと)
  1. 出血性大腸炎の患者[腸管出血性大腸菌(O157等)や赤痢菌等の重篤な細菌性下痢患者では、症状の悪化、治療期間の延長をきたすおそれがある。]
  2. 緑内障の患者[眼内圧を高め、症状を悪化させることがある。]
  3. 前立腺肥大による排尿障害のある患者[更に尿を出にくくすることがある。]
  4. 重篤な心疾患のある患者[心拍数を増加させ、症状を悪化させるおそれがある。]
  5. 麻痺性イレウスの患者[消化管運動を抑制し、症状を悪化させるおそれがある。]
  6. 本剤に対し過敏症の既往歴のある患者



原則禁忌 (次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)
  • 細菌性下痢患者[治療期間の延長をきたすおそれがある。]

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(投稿者 川崎)

2019-05-30

急性心不全に使用する薬剤の推奨

推奨クラス 薬剤 病態
Iループ利尿薬急性心不全における体液貯留に対する静注および経口投与
I硝酸薬急性心不全や慢性心不全の急性増悪時の肺うっ血に対する投与
Iジギタリス頻脈誘発性心不全における心房細動の心拍数コントロール目的での投与
Iランジオロール頻脈誘発性心不全における心房細動の心拍数コントロール目的での投与
IIaループ利尿薬1回静注に抵抗性のある場合の持続静脈内投与
IIaトルバプタンループ利尿薬をはじめとする他の利尿薬で効果不十分な場合の体液貯留に対しての投与(高ナトリウム血症を除く)
IIaトルバプタン低ナトリウム血症を伴う体液貯留に対しての投与
IIaミネラルコルチコイド受容体拮抗薬腎機能が保たれた低カリウム血症合併例に対する投与
IIaカルペリチド非代償性心不全患者での肺うっ血に対する投与
IIaカルペリチド難治性心不全患者での強心薬との併用投与
IIaドブタミンポンプ失調を有する肺うっ血患者への投与
IIaノルアドレナリン肺うっ血と同時に低血圧を呈する患者へのカテコラミン製剤との併用投与
IIaPDEIII阻害薬非虚血性のポンプ失調と肺うっ血に対する投与
IIbミネラルコルチコイド受容体拮抗薬ループ利尿薬による利尿効果減弱の場合の併用投与
IIbサイアザイド系利尿薬フロセミドによる利尿効果減弱の場合の併用投与
IIbニコランジル急性心不全や慢性心不全の急性増悪時の肺うっ血に対する投与
IIbドパミン尿量増加や腎保護効果を期待しての投与
IIbPDEIII阻害薬虚血性のポンプ失調と肺うっ血に対する投与
IIbPDEIII阻害薬心拍出量の高度低下に対してのドブタミンとの併用投与
IIIミネラルコルチコイド受容体拮抗薬腎機能障害,高カリウム血症合併例に対する投与
IIIカルペリチド重篤な低血圧,心原性ショック,急性右室梗塞,脱水症患者に対する投与
IIIカルシウム拮抗薬高血圧緊急症に対するニフェジピンの舌下投与
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)の表58より(2019年5月閲覧/記載順など一部改編)

👿 推奨クラス順に並べると頭が整理されて分かりやすいと思う

関連投稿

(投稿者 川崎)

2019-05-29

名言?

  • フランク・スターリングの法則(Frank–Starling law)=最終弛緩時の心筋長に正比例して次の心筋収縮力が決定される現象
  • ドイツの医師・生理学者であるOtto Frank (1865–1944) と英国の生理学者Ernest Henry Starling (1866–1927)が発見

このスターリングの言葉
  • "The heart can only pump out what comes back to it."(心臓は返ってきた血液のみを駆出できる)

本質はついている(?)が,あまりにも当たり前すぎて・・・😶

(投稿者 川崎)

2019-05-28

クイズ Who's Who?

(Line engraving by R. Ceracchi)


バルサルバ ヴァルサルバ
(投稿者 川崎)

2019-05-27

プロタノールの実際

プロタノール®(一般名はl-イソプレナリン塩酸塩)は用法・用量が大雑把にしか決められていない

用法・用量 (添付文書より原文そのまま)
(点滴静注)
l-イソプレナリン塩酸塩として0.2~1.0mgを等張溶液200~500mLに溶解し、心拍数又は心電図をモニターしながら注入する。徐脈型アダムス・ストークス症候群においては、心拍数を原則として毎分50~60に保つ。ショックないし低拍出量症候群においては、心拍数を原則として毎分110前後に保つようにする。
(緊急時)
急速な効果発現を必要とする時には、l-イソプレナリン塩酸塩として0.2mgを等張溶液20mLに溶解し、その2~20mLを静脈内(徐々に)、筋肉内又は皮下に注射する。心臓がまさに停止せんとする時には、l-イソプレナリン塩酸塩として0.02~0.2mgを心内に与えてもよい。なお、症状により適宜増量する。

当院での使用例
  1. プロタノールL注®1A(0.2mg)を生食100mlに溶解して50mlのシリンジポンプに装着
  2. 2mlを早送り後に6ml/Hで持続(目標:徐脈なら>50bpm,負荷なら心拍数20%上昇)
  3. 心拍数をモニターしながら12➜18➜24・・・と5分毎に増量(50ml/Hを超えることもある)

🉐 関連投稿

(投稿者 川崎)

2019-05-26

混合ワクチン

  1. 四種混合ワクチン(DPT-IPV)=ジフテリア(D)+百日せき(P)+破傷風(T)+ポリオ(IPV)
  2. 三種混合ワクチン(DPT)=ジフテリア(D)+百日せき(P)+破傷風(T)
  3. 二種混合ワクチン(DT)=ジフテリア(D)+破傷風(T)
    • D ➜ Diphtheria ディフティリィア difθíəriə 音声
    • P ➜ Pertussis パァタァーシィス pərtʌ'sis 音声
    • T ➜ Tetanus テェタァナァス tétənəs 音声
    • IPV ➜ Inactivated polio vaccine ポゥォリィオゥ póuliòu 音声

    👽 おまけ 麻疹・風疹混合ワクチン(MR)=麻疹(M)+風疹(R)
    • M ➜ Measles ミィーズゥズ míːzlz 音声
    • R ➜ Rubella ルゥベェーラァ ruːbélə 音声

    (投稿者 川崎)

    2019-05-25

    大腸癌の転移

    • 結腸=上腸間膜静脈および下腸間膜静脈 ➜ 門脈 ➜ 肝臓 ➜ 転移が多い
    • 中・下部直腸=内腸骨静脈 ➜ 下大静脈 ➜ 右室 ➜ 肺 ➜ 転移が多い


    😈 関連投稿

    (投稿者 川崎)

    2019-05-24

    敗血症・敗血症性ショック

    🌠 モーニングレクチャー(研修医早朝講義)より
    1. 感染症の疑い
    2.  ➜ qSOFA 2点以上あるいは敗血症の疑い
    3.  ➜ SOFA 2点以上あるいは急上昇
    4.  ➜ 敗血症と診断して培養+輸液+抗菌薬
    5.  ➜ 平均動脈圧低下(拡張期血圧+脈圧÷3≧65mmHgに昇圧薬要)かつ乳酸上昇
    6.  ➜ 敗血症性ショックと診断
    The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock. JAMA 2016;315:801-10(一部改編)

    その他モロモロ
    • 抗菌薬の投与が1時間遅れるごとに死亡リスクが7.6%上昇
    • 関節炎,蜂巣織炎,褥創感染は「あると思って」探す必要あり
    • 帰すとヤバい症例を見つける(”なんか変”という感覚が大切)

    (投稿者 川崎)

    2019-05-23

    groove膵炎

    groove(溝)領域とは、十二指腸下行脚と膵頭部および総胆管に囲まれた溝状の領域のことをいう。
    この領域に限局的に生じる特殊な膵炎の一型をgroove pancreatitisという。
    原因は不明であるが、十二指腸壁内の異所性膵組織や副膵管のドレナージ障害などとの関連が示唆されている。

    組織学的にはgroove領域に慢性炎症による浮腫、繊維化に加え、嚢胞が混在することもある。
    病変に接する十二指腸壁にはしばしば肥厚や嚢胞を伴う。

    (投稿者 田嶋)

    本日のERカンファから

    消化器内科の指導医が初期研修医へ
    • 「上手な絵を描くことは医師としてとても重要」
    • 「患者さんへの説明時にも信頼獲得に役立つ」
    と言いながらホワイト・ボードにさりげなく書いた絵


    😈 ホントに同感です

    類似投稿なにげない一言

    (投稿者 川崎)

    ギッテルマン症候群 Gitelman syndrome

    👪 難病情報センター より
    1. 低K血症,代謝性アルカローシス,低Mg血症,低Ca尿症を特徴とする遺伝性の尿細管疾患
    2. ギッテルマン症候群はサイアザイド感受性ナトリウム塩素イオン共輸送体遺伝子の変異が原因
    3. 特異的な治療法はなく電解質補充など対症療法が中心(一部の病型は末期腎不全に進行)
    4. 低K血症と代謝性アルカローシスを呈する先天性尿細管機能障害のバーター症候群と類似



    (投稿者 川崎)

    2019-05-21

    院内迅速対応システム RSS

    👴 RRS=Rapid Response Systemの用語確認 (日本院内救急検討委員会より)

    RRT (Rapid Response Team ➜ 日本語訳なし)
    • 医師を必ずしも含まず,起動された患者を評価し基本的な初期対応を行った上で、必要に応じて患者の院内トリアージや医師の緊急招請を行うチーム

    CCOT (Critical Care Outreach Team ➜ 日本語訳なし)
    • 集中ケアの訓練を受けた看護師らが主体となって,ICU退室患者と何らかの懸念のある入院患者を定期的に訪床して回り,起動基準に抵触する患者を早期発見することを目指した対応チーム

    MET (Medical Emergency Team ➜ 日本語訳なし)
    • 医師を1名以上含み,気管挿管などの二次救命処置をベッドサイドで開始できる能力を備えた対応チーム


    (投稿者 川崎)

    2019-05-20

    末期心不全の緩和ケア

    • 終末期心不全 ➜ 呼吸困難(60~88%),全身倦怠感(69~82%),疼痛(35~78%),抑うつ症状(入院症例の70%)(参考:急性・慢性心不全診療ガイドライン 2017年改訂版
    • 2018年の診療報酬改訂 ➜ 「緩和ケア診療加算」の対象に特定の要件を満たす「末期心不全」患者が追加/(1日につき390点)
    • 算定条件 ➜ 「緩和ケアチームのうちいずれか1人は専従。ただし、緩和ケアチームの診療患者数が1日15人以内の場合は、いずれも専任で差し支えない」

    末期心不全の定義 以下のア~ウまでの基準及びエ~カまでのいずれかに該当
    • ア) 心不全に対して適切な治療が実施されている。
    • イ) 器質的な心機能障害により、適切な治療にかかわらず、慢性的にNYHA重症度分類Ⅳ度の症状に該当し、頻回又は持続的に点滴薬物療法が必要な状態。
    • ウ) 過去1年以内に心不全による急変時の入院が2回以上。
    • エ) 左室駆出率が20%以下。
    • オ) 医学的に終末期であると判断される状態。
    • カ) エ又はオに掲げる状態に準ずる場合。

    (投稿者 川崎)

    2019-05-19

    グラム染色クイズ

    • 肺炎による慢性左心不全の増悪で入院した高齢者の喀痰(強拡大 X1000倍)




    (投稿者 川崎)

    2019-05-18

    漿液腫 Seroma

    • 結合織の被膜に覆われた清明無菌の液体貯留で別名は血清腫やセローマ
    • 人工血管周囲に発生する遅発性合併症として少しずつ認識されてきている
    • 吻合不全やグラフト感染症,術後液化血腫,感染性血腫などと鑑別が必要


    💂 人工血管からの血漿の漏出が本態で誘引は以下の3つ
    1. 人工血管の性質 ➔ ePTFEの構造破壊(血栓や内膜組織の形成など)
    2. 術者側の因子 ➔ グラフト屈曲,有機溶媒との接触,不必要な組織剥離
    3. 患者側の因子 ➔ 貧血,低タンパク,血清フィブリノーゲン値の低下など

    👸 治療方法
    • 人工血管の再置換術が最も確実(治癒率92%)
    • 温存法として穿刺吸引,切除ドレナージ,嚢胞摘出,人工血管にコラーゲン塗布やトロンビン塗布,馬心膜の巻き付けなど

    関連投稿脂肪吸引 Liposuction の合併症でも生じるようです

    (投稿者 川崎)

    2019-05-17

    キリプ分類 Killip class

    • 急性心筋梗塞の超急性期に行う身体所見に基づいた重症度分類で予後と関連
    • 提唱は米国の循環器内科医Thomas Killip IIIら(Am J Cardiol 1967;20:457-64

    クラス 重症度 所見
    Iポンプ失調なし肺野にラ音なくIII音を聴取しない
    II軽度~中等度の心不全全肺野の50%未満の範囲でラ音を聴取あるいは III音を聴取
    III重症心不全肺水腫があり全肺野の50%以上の範囲でラ音を聴取
    IV心原性ショック血圧90mmHg未満,尿量減少,チアノーゼ,冷たく湿った皮膚,意識障害を伴う

    👿 発表された当時(50年前)の発症30日後の死亡率はクラスIで6%,クラスIIで17%,クラスIIIで38%,クラスIVで81%であった.もちろん現在では予後は全てのクラスで改善しているが,重症度分類として今も多くの施設で使用されている.

    (投稿者 川崎)

    2019-05-16

    第37回 松下バイリンガルカンファレンスより

    専門用語から平易表現への言い換え
    • 嚥下障害 ➜ dysphagia ➜ to have difficulty (in) swallowing
    • 音声障害 ➜ dysphonia ➜ to have difficulty (in) speaking
    • 呼吸困難 ➜ dyspnea ➜ to have difficulty (in) breathing
    • 歩行障害 ➜ gait disorder or gait disturbance ➜ to have difficulty (in) walking

    うまい(微妙な)かわし方
    • それは症例によって異なる ➜ It depends on the patient.
    • それは状況によって異なる ➜ It depends on the situation.
    • それはタイミングによって異なる ➜ It depends on the timing.
    • 場合による/一概には言えない ➜ It depends.

    😸英語の勉強は "Never too late to start." & "Practice makes perfect!"

    (投稿者 川崎)

    2019-05-15

    専従 vs 専任

    厳密な定義
    • 専従 ⏩ その仕事以外は不可
    • 専任 ⏩ 他の仕事と兼務可能

    臨床上の定義
    • 専従 ⏩ 当該医療機関における就業時間の8割以上に従事
    • 専任 ⏩ 当該医療機関における就業時間の5割以上に従事


    (投稿者 川崎)

    2019-05-14

    Groove sign (溝サイン?)

    • 表在静脈にそって皮膚が陥凹する所見のこと(患肢の挙上でより明瞭化)
    • 好酸球性筋膜炎に特徴的(他に皮膚表面の凹凸=orange-peel-like appearance)
    • 頻度は好酸球性筋膜炎34人中18人(53%)(Rheumatology 2012;51:557-61


    👿 おまけ
    Groove signの機序は,表皮と真皮上層は真皮下層や血管周囲に比べて好酸球による線維化の影響を受けにくいためと考えられているようです.つまり表皮と真皮上層の可動性が残存するため,上肢の挙上などで末梢血管の血流が減ると内側から引っ張られて陥凹する.

    (投稿者 川崎)

    2019-05-13

    五苓散

    【効能・効果】
    口渇、尿量減少するものの次の諸症:
    浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病

    五苓散は、水チャネル(アクアポリン)調整作用による臓器・組織の水の偏在を正常化させ、水毒を改善する代表的処方である。
    最近では、高齢者の難治性心不全に対する五苓散の併用効果が注目されている。フロセミド+トルバプタンでも利尿効果が得られない症例においては、五苓散併用の有用性が期待される。考えられている機序は以下の通り。
    • 腎集合管主細胞のアクアポリン2タンパク質発現量を正常状態に回復させることによりトルバプタンのアクアポリン2に対する作用を安定化
    • 近位尿細管およびヘンレ下行脚のアクアポリン1阻害による利尿作用
    • 遠位尿細管におけるNaチャンネル阻害作用によりループ利尿薬の作用を増強
    • 腎集合管アクアポリン3・アクアポリン4阻害による利尿作用
    • 上記作用により利尿効果が増強した結果、毛細血管圧が低下し血漿浸透圧が上昇、間質から過剰な水が毛細血管内に戻る(浮腫の改善)、腎血漿量が増加し、利尿が増強して臓器・組織の水の偏在が正常化

    (投稿者 小森)

    オスラー名言集 William Osler Quotes

    • William Osler(1849-1919)はカナダ生まれの内科医かつ医学者である
    • 医学教育に情熱を持ち数々の名言や格言は100年後も受け継がれている


    The art of medicine is in observation.
    ➜ 医学の本質は観察である.

    Fifteen minutes at the bedside is better than three hours at the desk.
    ➜ 3時間の机での勉強よりもベッドサイドの15分が勝る.

    Medicine should begin with the patient, continue with the patient, and end with the patient.
    ➜ 医学は患者と共に始まり,患者と共にあり,患者と共に終わる.

    Listen to your patient, he is telling you the diagnosis.
    ➜ 患者の言葉に耳を傾けなさい.患者はあなたに診断を告げている.

    The good physician treats the disease; the great physician treats the patient who has the disease.
    ➜ 良き医師は病気を治療し,偉大な医師は患者を治療する.

    Medicine is a science of uncertainty and an art of probability.
    ➜ 医学は不確実の科学であり,確率の技術である.

    The practice of medicine is an art, based on science.
    ➜ 医学は科学に基づいたアートである.

    A man is as old as his arteries.
    ➜ 人は血管とともに老いる.
    個人的に共感する順です…👶

    🉐 関連投稿

    (投稿者 川崎)

    2019-05-12

    STSスコア

    • STS=The Society of Thoracic Surgeons=米国に本部を置く胸部外科医を中心とする学術団体
    • 同学会提唱のSTSスコアは成人心臓手術の死亡率や合併症発生率などのリスク評価法の一つ
    • 2002年~2006年のデータを元にオリジナル版を作成(Ann Thorac Surg 2009;88:S2-22 & S23-42
    • 定期的にアップデートされ現在の最終版は2018年版Ann Thorac Surg 2018;105:1411-8 & 1419-28
    • リスクモデルとして冠動脈バイパス術,外科的弁置換術・形成術,およびその組み合わせから選択
    • 近年はTAVI(経カテーテル的大動脈弁植込術)にも応用:高リスク>8%,中リスク4-8%,低リスク<4%

    項目 身長や体重,性別,人種,生活習慣,既往歴,内服薬,採血,NYHAなど40以上の因子
    結果 死亡率,腎不全,脳卒中,長期挿管,縦隔炎,再手術,長期入院などを同時に評価可能

    🔍 実際の計算 ➜ Online STS Risk Calculator


    👴 他のリスク評価方法にはEuroSCOREJapanSCOREがあるよ

    (投稿者 川崎)

    2019-05-11

    心エコー図のプチ負荷アラカルト

    Valsalva負荷
    • 前負荷の軽減で通常は左室流入血のE/Aは低下する.しかし同時に駆出血のTVIも大きく低下する場合,利尿薬単独で治療することは難しい.

    座位負荷
    • 仰臥位から立位になると500-800mlの血液が胸腔内から下肢や腹部内臓系に移動する.よって臥位から座位になると一回拍出量は8%程度低下する.

    下肢陽圧負荷
    • 人間の体内では総血液量の30%のみが有効血液量(stressed volume)として機能し,残りの70%は無効血液(unstressed volume)として主に腹部内臓の静脈系に蓄えられている.交感神経の興奮時には静脈血管のトーヌスが上昇し,最大800mlの血液がunstressed volumeからstressed volumeに瞬時に動員される(volume central shift).下肢陽圧負荷(leg positive pressure: LPP)でも同様のshiftを容易に誘発することができる.

    期外収縮
    • 期外収縮後の代償性休止期に心筋細胞内へのカルシウムイオンの流入が増加する.その結果,筋小胞体からのカルシウムイオンの放出が増加するため,次の収縮で心収縮性が高まる(Post-extrasystolic potentiation: PESP).つまりPESPは心筋細胞内のカルシウムハンドリング機構が健全であることを示す.

    シャント駆血
    • 駆血の有無による心拍出量の変化を計算すればシャント量とシャント率が計算できる.シャント量が2L/分以上あるいはシャント率が30%以上は高心拍出性心不全のリスクである.

    自然呼吸
    • 収縮性心膜炎では,胸腔内圧の変化が心膜内に伝播しないことによる心室間相互作用の増強が生じる.これは吸気時の心室中隔の左室側への偏位(septal bounce)として観察できる.

    参考)松本賢亮.心エコー2019;20:418-23 ⬅ とても面白くてオススメ

    生理学の関連投稿:いずれも砂川賢二先生関連 👀

    (投稿者 川崎)

    2019-05-10

    タケルダ配合錠

    タケルダ配合錠は、ランソプラゾール15mgを含む外層とアスピリン100mgを含む内核で構成される配合剤である。
    低用量アスピリンを長期服用しなければならない患者の胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制および利便性と服薬遵守率の向上を目的として開発された。
    薬品名の由来は、TAKEPRON+LDA(Low Dose Aspirin:低用量アスピリン)
    現在のところ、低用量アスピリンとPPIの合剤は本剤のみである。

    (投稿者 小森)

    生理的腹水と生理周期

    診断目的で腹腔鏡を受けた生理のある正常女性(症例数は棒グラフ下の数字)


    👴 呟き
    上図の矢印(ovulation=排卵)が近づくと腹水は増加して暫く持続するが,いずれにしても生理的腹水の量は少量と考えられる.ちなみにperitoneal fluid(腹腔液)が25mL以上貯溜したらascites(腹水)と呼ぶようです(Ther Adv Chronic Dis 2015;6:124-37).

    🉐 関連投稿

    (投稿者 川崎)

    2019-05-09

    椎骨

    頸椎7個
    胸椎12個
    腰椎5個
    仙椎5個
    尾椎4個

    第一頸椎⇒環椎 第二頸椎⇒軸椎
    腎動脈は第一~第二腰椎の高さで分岐する、血管内治療などで参考になる

    (投稿者 桝井)

    🎊 論文

    • 当院の初期研修医の先生が執筆した論文が2編同時に出版されました
    • いずれも指導医と一緒に当直中,当院のERで経験した症例報告です



    👴 注意深い観察力から生まれる症例報告は臨床能力を向上させるためにもとても大切です.これからも臨床での貴重な経験を世に問うことのできる医師であり続けてくださいネ.

    (投稿者 川崎)

    2019-05-08

    コプリック斑 Koplik Spots

    • 米国の小児科医Henry Koplik(1858–1927)が報告(Med Rec(NY) 1898;53:505–7)
    • 麻疹(はしか)の50〜70%の症例で出現(Nelson textbook of pediatrics. 18th ed. 2007;1331-7)
    • 発疹1~2日前に頬粘膜に出現する1mm程度の小さな白色点で麻疹に特徴的(発疹出現早期に消失)


    復習 麻疹は数日の発熱後に頭頸部→全身に鮮紅色扁平の発疹が出現する.不顕性感染はほとんどないためワクチン接種で免疫を得ることが大切である(2017年の投稿

    おまけ 麻疹の英語はmeaslesであるが発音は難しい【miː.zəlz ミィーズゥズ】実際の音声

    🉐 口腔内の関連投稿

    👾 本邦でも散発的に発生しているので拡散防止のため早期診断が必須!

    (投稿者 川崎)

    2019-05-07

    しびれとめまいの用語

    • しびれ:異常感覚、温痛覚異常、麻痺 の三種類がある
    • めまい:回旋性眼振、ふらつき    の二種類がある

    (投稿者 春名)

    ボルンホルム病 Bornholm disease

    • ウイルス(主にコクサッキーB群)によって生じる病態で,別名は流行性筋痛症
    • 発熱や頭痛などの感冒症状に続き四肢の筋肉痛が生じる(1週間程度で回復)
    • 名前の由来はバルト海にあるデンマーク領のボルンホルム島で流行したため
    • Hopkinsらの報告(Br Med J 1950;1:1230-2)以降に知られるようになった(と思う)
    • 初報は1872年ノルウェーのBambleでの集団発生であるためBamble病とも言う

    (赤色がボルンホルム島/Bornholm in Wiki

    🍎 当院で経験した症例は伝染性紅斑(リンゴ病=ヒトパルボウイルスB19感染症)後に筋肉痛を発症した成人例です.以前にパレコウイルス(3型)による同病態も経験しています(論文報告).当院では特殊なウイルスの同定はいつも大阪府立公衆衛生研究所(公衛研)にお願いしています. 🙏

    (投稿者 川崎)

    2019-05-06

    「医学生研修医の日本内科学会ことはじめ2019名古屋」より

    演題5 胃癌を合併し内視鏡治療が奏功したCronkhite-Canada症候群の1例(神鋼記念病院消化器内科)
    • クロンカイト・カナダ症候群は胃や大腸,小腸になどに多数のポリープが発生する非遺伝性疾患疾患.中年以降の男性に多く,胃癌や大腸癌を合併しやすい.

    演題211 TINU症候群の臨床経過から学んだこと(川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学)
    • TINU=tubulointerstitial nephritis and uveitis syndrome.間質性腎炎にぶどう膜炎を伴う 症候群で原因は解明されていない.分かりやすい症例報告 ➜ 日児腎誌 2007;20:31-34

    演題222 Dent病にネフローゼ症候群を合併した一例(千葉大学総合医療教育研修センター)
    • デント病はX染色体性の遺伝性疾患で出生時から近位尿細管性蛋白尿が持続する.経年的に高リン尿症と腎石灰化が進行し50歳前後に末期腎不全へと進行する.患者のほとんどは男性で推定患者数は400名.(参考:難病情報センター

    演題242 胸腺腫摘出5年後に診断されたGood症候群の1例(仙台厚生病院研修センター)
    • Goodらによる初報(J Lancet 1955;75:245-71)では胸腺腫+低γグロブリン血症であったが,現在は胸腺腫+易感染性と広義で捉えることが多い.

    演題356 健康な若年女性に発症し,Gianotti症候群を合併した横断性脊髄炎の1例(厚生中央病院総合内科)
    • ジアノッティ症候群とは乳幼児に多い病態で,EBウイルスなどのウイルス感染後に発疹を生じ数週間持続した後に自然に改善する.B型肝炎ウイルスの初感染により生じるジアノッティ病(発疹や肝機能障害など)とは異なる.

    (投稿者 川崎)

    2019-05-05

    グラム染色

    • 肺炎症例の喀痰のグラム染色(強拡大 x1000)

    • グラム陰性の短桿菌で最終的にインフルエンザ菌 Haemophilus influenzae と判明
    • 肺炎球菌と同様にヘモフィスルは好中球に貪食されずに散らばっていることが多い
    • ともに莢膜を有するためと考えられる(ヘモフィルスの莢膜は見えないことが多い)
    • 一般的に莢膜を有する細菌は貪食されにくいため殺菌されにくく病原性が強くなる

    👴 一読をおすすめ ➜ コチラ

    ヘモフィスル症例集

    (投稿者 川崎)

    2019-05-04

    GRACE スコア

    • 急性冠症候群(ACS)の慢性期予後(オリジナルは6ヵ月)を判定する指標の一つ
    • 米国の循環器内科医Goldbergらが提唱した方法(Am J Cardiol 2004;93:288-93

    以下の8つの因子から算出自動計算ページ
    1. 年齢
    2. 心拍数
    3. 収縮期血圧
    4. 初期血清クレアチニン
    5. Killip分類
    6. 心停止による入院
    7. 心筋バイオマーカーの上昇
    8. ST部分の偏位

    👻 大阪急性冠症候群研究会のデータでは生存退院時のGRACEスコア100点未満,101~120点,121~140点,141点以上の患者の長期死亡率(中央値3.9年)は各々2.0%,6.3%,11.8%,16.8%であった(Am J Cardiol 2013;111:457-64).

    (投稿者 川崎)

    2019-05-03

    SCLS 全身性毛細血管漏出症候群

    • SCLS=Systemic capillary leak syndrome
    • 血圧低下,低アルブミン血症,血液濃縮の三徴候を繰り返す病態
    • 米国の内科医Clarksonらが提唱(Am J Med 1960;29:193-216

    SCLS日内会誌 2016;105:92-8
    • 症状 発熱・嘔吐・下痢 ➜ 筋痛・脱力・血圧低下・全身浮腫 ➜ 約1週間で改善(下図
    • 機序 血管内皮障害による血管透過性の亢進(アポトーシスやサイトカイン関与の疑い)
    • 頻度 世界で200症例余,日本で約40例(ただし疾患の認識と共に症例数は経年的に増加)
    • 治療 対症療法(ステロイド?),近年免疫グロブリン大量静注療法が注目されている
    • 予後 5年生存率は70%と不良(免疫グロブリン大量静注療法による予後の改善に期待)


    😑 分かりにくいので症例報告の一読をオススメ

    (投稿者 川崎)

    2019-05-02

    脂肪吸引 Liposuction

    • 基本的に5mm以下の吸引器を脂肪組織に挿入して脂肪(平均5000ml/回)を吸引する比較的シンプルな手技
    • 局所麻酔で施行可能であるが,大量吸引時や使用機器,患者リスクなどに応じて全身麻酔や脊椎麻酔も使用


    合併症は全体で8.6~20% (Korean J Radiol 2015;16:1197-206Aesthet Surg J 2010;30:83-97)
    • 比較的高頻度 ➜ 輪郭変形(最多で20%),血清腫(seroma),色素沈着過度,非対称,肥厚性瘢痕
    • 重要または重篤 ➜ 皮膚壊死,感染症(蜂窩織炎など),壊死性筋膜炎,肺塞栓,死亡(0.02–0.25%)

    術後に蜂窩織炎を生じた1例

    (投稿者 川崎)

    2019-05-01

    胸部X線クイズ

    • 胸部不快感で来院した症例(左は通常像/右は反転像)


    👴 本例は胸部X線塾症例6からの引用です(胸部X線の学習にご利用ください)

    (投稿者 川崎)