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2017-09-30

Crackles 断続性ラ音

断続性ラ音(ラッセル音)の目安
  • early crackles=coarse crackles ⇒ 気道病変=気管支炎、気管支拡張症
  • late crackles=fine cracles ⇒ 肺間質病変=肺線維症や異型(非定型)肺炎
  • holy inspiratory crackles ⇒ 心不全やARDS(両側が多い),肺炎(片側が多い)

※以前にもよく似た投稿がありました ⇒ Crackleの分類

(投稿者 川崎)

2017-09-29

アメナメビル

アメナリーフ(商品名:アメナメビル)は2017年7月に承認された抗ヘルペスウイルス薬
ヒトヘルペスウイルスの一つである水痘・帯状疱疹ウイルスに対してDNAの増殖を抑制

最大の特徴は主に肝代謝(腎機能に応じた容量調整不要)かつ1日1回7日間

従来の抗ヘルペスウイルス薬は腎排泄であるためCcrに応じた容量調整が必要+服用回数が多い
  • アシクロビル(商品名:ゾビラックスやアシビルなど) 1日5回7日間まで
  • バラシクロビル(商品名:バルトレックス) 1日3回7日間まで
  • ファムシクロビル(商品名:ファムビル) 1日3回7日間まで

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

足背に感染を生じた症例の壊疽部分をグラム染色

連鎖球菌を認め,培養でB群溶血性連鎖球菌(GBS,ストレプトコッカス・アガラクティエ)が確認された
壊死性筋膜炎の起炎菌としてはA群溶血性連鎖球菌(GAS, Streptococcus pyogenes)が有名であるが,稀にGBSでも生じる(抄録2症例

(投稿者 川崎)

Sweet症候群

発熱・末梢好中球増加・好中球浸潤性紅斑を三徴とする病態
英国の皮膚科医SWEET RDが初報(Br J Dermatol. 1964;76:349-356
別名はSweet病,好中球性皮膚症,Gomm-Button disease(患者2人の名)
Orphanet J Rare Dis. 2007;2:34.より:a,左肩;b,左腕;c,左手)

  • 分類 古典的,悪性疾患関連(白血病やMDSなど),薬剤性(G-CSFなど)
  • 疫学 30~50歳の女性に多い
  • 病因 不明(多因子関与の疑い/誘因は上気道炎や炎症性腸疾患,妊娠など)
  • 治療 ステロイド全身投与(局所病変にはステロイド軟膏),ヨウ化カリウム,コルヒチン

(投稿者 川崎)

2017-09-28

ヘパリン 1mg

ヘパリン1mg=125単位 (ヘパリンインタビューフォーム2016年1月改訂版ニプロより)

ヘパリンの投与量は単位(U or units)で表記されることが多いが心臓外科領域ではmgで表記することもある
実例 After systemic heparinization 3 mg/kg (全身を3mg/kgでヘパリン化した後:50kgなら18,750単位)

ヘパリン要約
  • 1916年に発見された分子量5,000~20,000の血液凝固阻止物質
  • ATⅢと特異的に結合してトロンビンや活性型X因子などを阻害
  • 生体内では肝臓で生成されるためheparinと命名(hepato=肝の)
  • 効果発現:静脈内投与では速やか/皮下投与では20分~60分
  • 生物学的半減期:100単位/kgで1時間/200単位/kgで1.5時間
  • 分布:上皮細胞やマクロファージと結合/腎排泄(3~4時間で40%)
参考:医薬品インタビューフォーム - ヘパリン(持田製薬)

(投稿者 川崎)

心電図の発明

オランダの医師ウィレム・アイントホーフェン(Willem Einthoven, 1860-1927)が1903年に心電図を発明
当時の心電計は重さ350kgで塩水バケツに手足をいれてⅠ,Ⅱ,Ⅲ誘導を記録(Annalen der Physik. 1903; 317: 1059)


※アイントホーフェンは心電図学の父と呼ばれ,1942年にノーベル生理学・医学賞を単独受賞している

(投稿者 川崎)

創傷処理 vs 創傷処置

  • 創傷処理:傷を縫合すること(例:5cmまでの処理なら1250点と高額)
  • 創傷処置:傷を消毒すること(例:100cm2までの処置は45点で低額)

消毒だけで縫合していない擦過傷を創傷処理と記載すると不正請求になるから要注意

(投稿者 川崎)

2017-09-27

脳脊髄液

帯状疱疹に対して抗ウイルス薬が投与された後の意識障害では,アシクロビル脳症ヘルペス脳炎の鑑別が必要
アシクロビル濃度は特殊施設で測定可能であるが判明までにとても時間がかかり急性期の診断には利用できない

細菌性髄膜炎を除外するため髄液検査を行なうが,その結果からもある程度は推定可能と思われる
当院で経験したアシクロビル脳症の髄液は初圧105mmCSF,細胞数1/mm3,蛋白質85mg/dL,糖151mg/dL

細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014-細菌性髄膜炎の検査|ガイドライン|日本神経学会より)

(投稿者 川崎)

ST合剤が有効だった症例

下腹部痛を主訴にクリニックを受診した中年男性
レボフロキサシンの内服は無効で病院を紹介受診

病歴と直腸診から急性前立腺炎と診断(PSAは未測定)
グラム染色では陰性桿菌が疑われたが培養されず

セフトリアキソンは有効であったが肝機能障害で中止
その後ST合剤に変更して治癒を継続し治癒した

ST合剤(商品名:バクタ,バクトラミン,ダイフェンなど)
  • サルファメソキサゾール(SMX or SMZ)とトリメトプリム(TMP)を5対1の比率で含む抗菌薬の合剤
  • 共に葉酸合成を阻害して抗菌作用 ⇒ 腸内細菌の葉酸合成も阻害するため葉酸欠乏の副作用あり
  • 消化管からの吸収が良好でバイオアベイラビリティが高く,各臓器への移行性も良好(特に前立腺
  • ニューモシスチス肺炎,原虫,トキソプラズマ以外にも尿路系の感染では考慮ただし高K血症に注意

(投稿者 川崎)

2017-09-26

第25回バイリンガルカンファレンスより

薬剤の英語発音は慣れが必要
  • アシクロビル acyclovir 【eisáiklouvìər】 エィサァィクロォゥヴィア 実際の発音コチラ
  • バラシクロビル valacyclovir 【vɑ́ləsáiklouvìər or vɑ́leisáiklouvìər】 ヴァラサァィクロォゥヴィア or ヴァルエィサァィクロォゥヴィア 実際の発音コチラ or コチラ

(投稿者 川崎)

J波症候群

2010年にAntzelevitchらが提唱した観念(Heart Rhythm. 2010;7:549-558

定義 再分極異常によるJ波(下図の矢頭)を含めたST上昇などの心電図異常+心室細動

分類 先天性(早期再分極症候群&ブルガダ症候群)と後天性(ST上昇型の急性虚血&低体温時のオズボーン波)

(投稿者 川崎)

2017-09-25

MLF症候群

MLF=medial longitudinal fasciculus=内側縦束
  • 傍正中部背側にある線維で下部脳橋の外転神経核と中脳の動眼神経核を連絡
  • 眼球の水平運動(特に内転)に重要で障害時には複視や共同偏視(特に両側障害)
  • 原因は多発性硬化症が多いが,脳血管障害,脳幹部腫瘍でも出現することがある
(Takuma-saより一部改編)


MLF症候群は核間性眼筋麻痺や失調性眼振と呼ばれることがある
分かりやすい症例報告 ⇒ 千葉医学.1980;56:147-150

(投稿者 川崎)

2017-09-24

逆流性食道炎の重症度分類

世界基準は内視鏡によるロサンゼルス(LA)分類である(1994年の第10回世界消化器病会議で発表)
本邦ではLA分類にGrade N(粘膜正常)とGrade M(粘膜発赤)を加えた改訂LA分類を用いることが多い

(投稿者 川崎)

2017-09-23

オレンジ色の尿

肺炎が疑われた症例で,肺炎球菌やレジオネラの尿中抗原を調べるため尿を採取した
尿がオレンジ色であったためグラム染色を追加したが好中球や細菌は認められなった

尿検体を無染色で検鏡すると塩類を疑う淡い構造物が観察された(右下写真・200倍)

本例には肝胆道系疾患や腎障害,横紋筋融解,溶血などを疑う所見はなく,塩類(特に無晶性尿酸塩)による着色が疑われた

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「胸痛」

胸痛のレッドフラッグと重篤な疾患の診断
  1. 胸痛 ⇒ 心筋梗塞
  2. 失神または失神寸前の状態 ⇒ 不整脈・大動脈弁狭窄肥大型心筋症
  3. 息切れ ⇒ 不整脈・心筋梗塞・肺塞栓症
パニック発作でもこれらの警告症状のすべてが起こり得るが,より重篤な病態を除外した後に考慮すること

参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

追加コメント
肥大型心筋症はⅣ音,大動脈弁狭窄は収縮期駆出性雑音が特徴的.聴診でその存在を予想してから心エコー図で確認するとカッコいい!

(投稿者 川崎)

2017-09-22

尿の定性沈渣後検体でもグラム染色可能

尿定性沈渣で亜硝酸2+,白血球3+,細菌100であった症例
尿路系の感染症と診断され抗菌薬を処方されていた(ST合剤)

尿沈渣は染色(当院ではラボステインS)後に細菌の有無を目視
細菌の有無は確認できるがすべて青く染まり菌種の推定は困難

せっかくなら菌種を絞り込むためグラム染色を行っておきたい
ラボステインSで染色された尿沈渣でもグラム染色は十分可能
実際やってみると莢膜を有するGNRでクレブシエラと考えられた

グラム染色のコストは61点(610円) ⇒ 詳細は コチラ から

(投稿者 川崎)

腎機能低下時の初期投与量の決定

Giusti-Hayton法を利用することができる(読み方はおそらくジュスティ-ヘイトン)
Giusti DL and Hayton WL. Drug Intel Clin Pharm 1973;7:382–387

使い方
投与補正係数(R)=1ー尿中未変化体排泄率×(1ー当該症例のCCr/120)
  • 投与間隔はそのままで1回投与量を減量するなら常用量をR倍にする
  • 1回投与量はそのままで投与間隔を延長するなら通常投与間隔を1/Rにする

具体例
CCr=20ml/minの症例にジギタリスを投与する場合
ジギタリス尿中未変化体排泄率=0.7 ⇒ R=0.42
  • 標準投与量0.125mg/日を0.42倍して0.05mg/日
  • あるいは24時間を0.42で割って57時間(2~3日に1回)

※本法は初期投与量の設定であり,その後に血中濃度を参考に容量調整が必要です

(投稿者 川崎)

2017-09-21

下肢動脈エコー

下肢動脈エコーは閉塞性動脈硬化症の評価(特にスクリーニングや治療効果判定)にとても有用

ポイント
正常でも末梢に行くほど最高血流速度は低下するが,狭窄がなければ三相性波形(収縮期順行波+拡張早期の小さい逆行波+拡張後期の小さい順行波)は変化しない

(投稿者 川崎)

パーフリンジェンス C. perfringens

血液培養で嫌気ボトルのみから菌が検出されれば嫌気性菌を疑う
その時は菌をぬぐった綿棒をHK寒天培地(下図の左)に差し込む


写真のように数時間以内に空気の泡(培地面=赤矢印,綿棒周囲=緑カッコ,寒天内=青矢頭)を認めればクロストリディアム・パーフリンジェンス Clostridium perfringens と診断できる.パーフリンジェンスはグラム陽性桿菌で別名ガス壊疸菌と呼ばれるほどガス産生能力が高い(嵐の発酵)

(投稿者 川崎)

2017-09-20

心電図クイズ


心房細動 3度房室ブロック 完全房室ブロック 心室調律 補充調律 

(投稿者 川崎)

EFAST イーファスト

迅速簡易超音波検査 FAST (Focused Assessment with Sonography for Trauma) は外傷症例の初期評価に必須
  • FASTは液体貯留(=出血)の検出に有用であるが外傷時に合併しやすい気胸は診断できない
  • 外傷性気胸はPTD (preventable trauma death) である緊張性気胸へ進展することがある
  • よって最近ではFASTに気胸の評価を加えたEFAST (Extended FAST) が広がりつつある

超音波による外傷性気胸の診断=感度46.5-100%,特異度93.8-100%,陽性的中率87.0-100%,陰性的中率90.9-100%
実際の判定方法 ⇒ 外傷性気胸の超音波診断 −FASTからEFASTへ−.日救急医会誌.2012;23:131-141

(投稿者 川崎)

2017-09-19

POT(ポット)

POT=proximal optimization technique
主に分岐部へのステンティング時に使用されるバルーンテクニックの一つ

  • 本幹へステント留置後に太短いバルーンでステント基部側(proximal)~分岐部を後拡張
  • 本幹ステントの側枝入口部への圧着改善および側枝入口部のステント開大を目的とした手技
  • POT後は側枝へのワイヤー挿入や側枝へのステント留置(Tステントなど)がより容易になる

分かりやすいスライド ⇒ OCT and POT (Nicolas Foin, MSc, PhD)

(投稿者 川崎)

外科手術の値段

※もちろん1点=10円です

(投稿者 川崎)

2017-09-18

プロテインZ欠乏症

プロテインZ=ビタミンK依存性蛋白でZ依存性プロテアーゼインヒビター(ZPI)と複合体を形成
この複合体は主としてリン脂質表面で第Xa因子を不活化することにより抗凝固作用を発揮する

  • 意義 血栓症,再発性流産あるいは胎児死亡に関連する可能性がある
  • 診断 専門検査室でのプロテインZ,ZPI,プロテインZ自己抗体の定量
  • 治療 欠乏症に対する抗凝固薬での治療または予防の適応は不明

(投稿者 川崎)

2017-09-17

第217回内科学会近畿地方会より 

【演題10】 自動運転時のめまいが主訴のBow hunter症候群の1例
頸部回転に伴い椎骨動脈が圧排され脳底動脈の循環不全を生じる病態

【演題19】 陰茎発育不良を契機に発見されたKallmann症候群の1例
先天性の嗅覚低下と低ゴナドトロピン性性腺機能低下を伴う遺伝性疾患

【演題38】 長期の心不全管理にてポリファーマシーに陥った1例
1日あたり20種類64錠(過去の投稿:薬剤多剤服用に対する診療報酬

【演題107】 Swyer-James syndromeの1例
胸部X線で一側または一葉の透過性亢進(幼少時の感染による気腫性変化の疑い)

【演題141】 FT3のみ偽性高値を示す見かけ上のSITSHの1例
Syndrome of inappropriate sercretion of TSH(不適切TSH分泌症候群)

(投稿者 川崎)

BLPAR ブルパー

BLPAR = β-lactamase producing ampicillin resistant β-lactamase産生によりABPC耐性を示すHaemophilus influenzaeインフルエンザ菌
耐性菌を有さないH. influenzaeはBLNAS = β-lactamase nonproducing ampicillin susceptible

BLNAR = β-lactamase nonproducing ampicillin resistant β-lactamase非産生のABPC耐性を示すH. influenzae
  • ftsI 遺伝子上にAsn526Lys 変異⇒low-BLNAR
  • Asn526Lys とSer385Thr 変異⇒BLNAR(セフェム系薬の感受性も低下)

最近ではβ-lactamaseを産生しftsI 遺伝子変異も併せ持つBLPACRも増加
BLPACR = β-lactamase producingamoxicillin clavulanic acid resistant


(投稿者 川崎)

2017-09-16

松下金曜会 「不眠」

不眠のレッドフラッグと重篤な疾患の診断
  1. ひどいいびき,無呼吸,日中の傾眠 ⇒ 閉塞性あるいは中枢性睡眠時無呼吸
  2. 自殺念慮または殺人念慮 ⇒ 重度の精神疾患(うつ病,双極性障害,精神病)
  3. 夜間の胸痛または胸部圧迫感 ⇒ 不安定狭心症
  4. 夜間呼吸困難 ⇒ 喘息,COPD,心不全,未診断の睡眠時無呼吸症候群
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-09-15

気管吸引キット(喀痰容器)

喀痰が自己喀出できない症例では気管吸引キット(喀痰容器)を用いることが多い.


通常は容器部分(左図の赤丸)から喀痰のグラム染色を行うが,喀痰の肉眼的評価法(ミラー・ジョーンズ分類)に注意する必要がある.


容器内の喀痰に膿性部分が少ないようなら,気管吸引キットのチューブ部分を見てみる(例:左図の青四角).良質な膿性痰がチューブこびり付いていることが少なくない.

(投稿者 川崎)

カーテン徴候 Curtain sign

発声時に軟口蓋と口蓋垂,喉頭後壁が健側に牽引される病態のこと
迷走神経および舌咽神経の障害による一側性の咽頭筋麻痺を示唆


原因は脳卒中,ウイルス感染,神経血管圧迫,鼻脳ムコール症,特発性など
カーテン徴候が陽性なら同時に嚥下障害や嗄声を伴っていることが多い
ムーコル
(投稿者 川崎)

2017-09-14

グラム・クレアチニン

尿蛋白/クレアチニン比の俗称で,随時尿蛋白濃度(mg/dL)を尿クレアチニン濃度(mg/dL)で除した値
正常値は0.15g/g・Cr未満で,腎機能低下や腎炎,多発性嚢胞腎,高血圧,多発性,移植腎などで上昇
畜尿で求めた1日尿蛋白排泄量と良好な相関を示し,慢性腎臓病CKDの定義および重症度分類にも採用

CKD 診療の概念の基本 「CKD 診療ガイド2012」より

(投稿者 川崎)

2017-09-13

PRES プレス

Posterior reversible encephalopathy syndromeの略で日本語名は可逆性後部白質脳症症候群
1996年にHincheyらによって提唱された新たな疾患概念(N Engl J Med 1996;334:494-500
  • 症状 急性発症の頭痛,意識障害,痙攣発作,視力障害
  • 誘引 重症高血圧,子癇,薬剤性,腎障害,肝不全,膠原病,頭部外傷,悪性疾患など
  • 原因 血管内皮細胞障害や血液脳関門破綻,血圧上昇による脳浮腫(?)
  • 画像 MIRで後頭葉を中心にT2,FLAIR,ADCでいずれもhigh(DWIではiso)

可逆性脳血管攣縮症候群 reversible cerebral vasoconstriction syndrome (RCVS) と類似する部分も少なくない

(投稿者 川崎)

2017-09-12

SAA vs CRP

SAA=serum amyloid protein A (血清アミロイドA蛋白)は急性炎症蛋白の一つ
慢性炎症性疾患に合併する2次性アミロイドーシスの沈着蛋白AAの血清前駆体として命名

概してCRPより鋭敏な指標で,CRPの5~10倍の値をとる(正常値は<8.0μg/mL)
  • CRPより変動幅が大きく,病勢の低下後は速やかに回復
  • ウイルス感染や拒絶反応などCRPの反応しにくい病態でも上昇
  • ステロイド内服の影響はCRPよりSAAの方が小さい
  • 感染症以外にも,悪性腫瘍や自己免疫疾患,組織壊死などで上昇

参考資料 栄研化学株式会社 による 「血清アミロイドA蛋白(SM)」

(投稿者 川崎)

Psoas sign

腹腔内の炎症(特に虫垂炎)による疼痛が腸腰筋の進展時に誘発される所見
発音注意 psoas 腰筋【sóuəs ソウァス】/腸腰筋 iliopsoas【イリオソウァス】


(Psoas Sign by MDforAllより)
方法
  • 臥位の患者の右大腿を検者が手で押さて,患者が右股関節を屈曲
  • 左側臥位で伸展した患者の右下肢を,検者が他動的に背側へ進展

判定

(投稿者 川崎)

2017-09-11

聴打診 auscultatory percussion

聴診と打診を組み合わせて身体所見をとる方法
auscultatory 【ɔːskəltéɪtəri】 (形容詞)聴診の
percussion 【pərkʌ́ʃən】 (名詞)打診,衝突,打楽器

適応疾患と方法
  1. 大腿骨頸部骨折 ⇒ 恥骨結合部分に聴診器を当てて左右の膝蓋骨を指で軽くたたく
  2. 慢性硬膜下血腫 ⇒ 額中央に聴診器を当てて額の左右を指で軽くたたく
  3. 胸水貯留 ⇒ 坐位で中腋窩線に聴診器を当てて椎体や胸骨を順に指で軽くたたく

判定方法
  • 左右差がある場合,音量が低下している方が患側

(投稿者 川崎)

POUND パウンド

片頭痛 migrane の診断に重要な問診項目
  1. Pulsatile =拍動性
  2. hOurs =4~72時間の持続
  3. Unilateral =片側性
  4. Nausea =吐き気
  5. Disabling =日常生活に支障

片頭痛である確からしさ
  • 4~5点 ⇒ 92%
  • 3点 ⇒ 64%
  • 2点以下 ⇒ 17%


(投稿者 川崎)

2017-09-10

細菌トリビア

  • 細菌は概ね20分前後で2個に分裂する
  • 1個が24時間後には4兆X10億個に増加
  • 突然変異による耐性菌の頻度は約10万個に1個

(投稿者 川崎)

2017-09-09

松下金曜会 「腹痛」

腹痛のレッドフラッグと考慮すること
  1. 無胆汁便・紅茶色の尿 ⇒ 胆道閉鎖
  2. 便秘 ⇒ 腸閉塞・高カルシウム血症
  3. 嘔吐前の腹痛・臍周囲の疼痛が右下に移動 ⇒ 虫垂炎
  4. 血便・黒色便・吐血 ⇒ 消化管出血
  5. 発熱 ⇒ 虫垂炎・胆管炎・胆嚢炎・憩室炎
  6. 突発性,神経欠損,移動性,裂ける感じ ⇒ 大動脈解離
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

門脈ガスvs 胆道気腫

一見よく似た画像所見であるが両者の鑑別は重要
  • 門脈ガス(portal venous gas)は腸管壊死や嫌気性菌による敗血症など重篤な病態を示唆
  • 胆道気腫(pneumobilia)は病的(例:胆道ドレナージ,胆嚢炎,胆石)だけでなく生理的にもあり

肝臓内では門脈と胆管の流れは正反対であるため,ガスの分布で両者の鑑別がある程度可能
胆道気腫は肝門部に目立つ/肝臓表面(1~2cm)までガスがあれば門脈ガスをまずは疑う

😊 分かりやすいページ ⇒ 画像診断まとめ

(投稿者 川崎)

2017-09-08

HES

HES=hypereosinophilic syndrome,日本語名は好酸球増加症候群
骨髄での好酸球の増殖により持続的に末梢血好酸球増加をきたす疾患群の総称

Chusidらの診断3項目
  1. 6ヵ月以上続く好酸球増加(1,500 μl以上)
  2. 好酸球浸潤による臓器症状
  3. 寄生虫感染やアレルギーなどの明らかな好酸球増加を来たす基礎疾患の除外

WHO分類による診断の必須項目
  1. 持続する末梢血好酸球数≧1.5×109/L(=1,500 μl以上)
  2. 骨髄での好酸球増加
  3. 末梢血及び骨髄中の骨髄芽球< 20%

臨床症状


(投稿者 川崎)

クインケ徴候 Quincke's sign

爪床で小動脈の拍動が確認できる状態(色調が心拍にあわせて変化/爪先を軽く圧迫すると観察しやすい)
正常では観察できないが,大動脈弁閉鎖不全症や動脈管開存症など速脈・大脈時に出現することがある



おまけ
  • 命名は発見者のドイツ人医師Heinrich Irenaeus Quincke(1842–1922)による
  • Quinckeは診断および治療としての腰椎穿刺法も確立したことで知られている
  • 大動脈弁逆流症では頭部の前後の揺れ(ミュッセ徴候)や口蓋垂の拍動(ミュラー徴候)を認めることがある

(投稿者 川崎)

2017-09-07

ムコイドのstring test

粘稠性の有無を推定する方法の1つで遺伝子検査よりも簡便
string 【発音stríŋ】 ひも(糸より太くロープより細い)
培養コロニーを釣菌して5mm以上に伸展したら陽性=ムコイド産生菌が疑われる


(投稿者 川崎)

2017-09-06

Jaw claudication

顎跛行=咀嚼時の咬筋の痛み=巨細胞性動脈炎(旧名,側頭動脈炎)の代表的症状のひとつ
同疾患の19例中3例(15.8%)に出現(Intern Med 2011;50:1679-1682

咬筋(masseter muscle)=咀嚼筋の一つで三叉神経の枝である咬筋神経が支配
CC BY-SA 2.1 jphide terms
顎関節顎関節症,顎関節の関節リウマチ,重症筋無力症,耳下腺腫瘍,アミロイドーシス,外頸動脈の閉塞または狭窄でも出現することがある(Postgrad Med 1983;73:177-83

(投稿者 川崎)

2017-09-05

緊張性気胸 Tension pneumothorax

気胸側の一方弁作用による胸腔内圧の上昇⇒患側の肺虚脱かつ横隔膜低位,健側への縦隔偏位⇒静脈還流障害による心拍出量の低下
ERでの迅速な対応で回避できる死亡原因の一つであるため,緊張性気胸が強く疑われたら胸部X線による確診を待たずに穿刺・ドレナージ
  • 症状 増悪する呼吸困難感,意識レベルの低下,失神
  • バイタル 低血圧,頻脈,ショック,酸素飽和度の低下,チアノ-ゼ
  • 身体所見 頸静脈怒張,気胸側で鼓音増強(打診)と呼吸音消失,皮下気腫,心尖拍動の中央への移動
  • 対応 胸骨中線上の第2or3肋間にサーフロー針で穿刺(18G以上×数本)/ドレナージなら第4or5肋間の中腋窩線前方

(投稿者 川崎)

Splinter hemorrhage

爪下に出現する線状の小出血で通常は痛みを伴わない
splinter=【発音splíntər】=裂片・~を裂く・裂ける


1920年に感染性心内膜炎の症例で最初に報告(Horder T, et al. BMI 1920;2:301-311

細菌性の感染性心内膜炎の19.5%に出現(Arch Intern Med 1965;115:730-735)するが,同疾患以外(強皮症,旋毛虫症,全身性エリテマトーデス,関節リウマチ,乾癬性爪,抗リン脂質症候群,外傷,爪白癬,血管炎,僧帽弁狭窄症,髄膜炎菌感染症など)の様々な病態で生じる点にも注意

おまけ 感染性心内膜炎で出現するRoth(ロート)斑やOsler結節は疫学的反応による

(投稿者 川崎)

2017-09-04

ARDS

ARDS = acute respiratory distress syndrome(急性呼吸窮迫症候群) 
N Engl J Medに掲載されたPerspective (2017;377:507-509)より

  • ARDSの病態は,聴診器を1816年に発明したLaennecが1821年に報告
  • 当初はAdult respiratory distress syndromeの略であった
  • ARDSはPao2/FIo2≦200,acute lung injuryは≦300を目安にする
  • 原因は敗血症,誤嚥,肺炎,多発外傷など(心不全が共存することもある)
  • この25年で死亡率が60%から25%まで低下した
  • ステロイドやサーファクタントの有用性は証明されていない
  • Lung-protective strategyが基本(low pressure & low tidal volume)
  • low tival volumeの目安は予想体重あたり6ml(通常は実体重あたり12ml)

(投稿者 川崎)

2017-09-03

解離性障害 Dissociative disorders

  • 自分が自分であるという自我同一性(知覚や思考,記憶,行動)が障害されている状態
  • 苦痛を緩和する防御反応であるがトラウマがなくても生じる(自閉症スペクトラムと関連?)
  • 解離性健忘,解離性遁(とん)走,解離性同一性障害,離人症,解離性てんかんなどに分類
  • 有効な治療薬はなく,安心できる環境の整備や信頼関係の確立,自己表現の機会提供など

2017-09-02

プレセデックスと徐脈・低血圧

一般名 デクスメデトミジン塩酸塩 Dexmedetomidine Hydrochloride

効能効果
  • 集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静
  • 局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静

プレセデックスは呼吸抑制作用が軽微であり臨床現場でで汎用されている
しかし末梢血管のα2受容体を介した循環器系の副作用に注意が必要である


(投稿者 川崎)

プレALB

プレアルブミンはアルブミンより早期に変化するため栄養状態の鋭敏な指標
基準値22.0~40.0 mg/dL / 半減期1.9日(アルブミンの半減期は21日)
  • 低値 栄養摂取不足,吸収不良症候群,肝細胞障害(合成能低下)
  • 高値 甲状腺機能亢進症,高カロリー輸液,妊娠後期,腎不全,ネフローゼ(漏出以上に産生亢進)

おまけ プレアルブミンの正式名はトランスサイレチン(TTR)でアルブミンの前駆物質ではないョ

(投稿者 川崎)

2017-09-01

Streptococcus agalactiae

B群連鎖球菌(Group B Streptococcus : GBS)の別名でストレプトコッカス・アガラクティエと読む
A群溶血性連鎖球菌(GAS)や肺炎球菌とともに臨床で注意すべきグラム陽性の連鎖球菌 ⇒ 去の記載

膣内に常在することがある細菌
  • 経腟分娩時に新生児感染=敗血症,髄膜炎,肺炎など(全妊婦に対して妊娠35~37週に膣・直腸検査がガイドラインで推奨)
  • 妊婦感染=膀胱炎や羊膜炎,子宮内膜炎,死産など

腸や咽頭,膀胱にも常在することがある

治療 アレルギーがない場合は原則ペニシリン系の抗菌薬を選択(ただしペニシリン低感受性GBSの報告あり)

(投稿者 川崎)