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2016-12-31

クリニカルシナリオ CS

急性心不全症例に対して,収縮期血圧から病態を分類し治療方針を決定する方法

クリニカルシナリオ(CS)で覚えておくべきことは
  • CS1なら血圧を下げる(例:ミオコール口腔内スプレー ⇒ 二トロール静注 ⇒ ペルジピン静注利尿薬は原則不要
  • 心電図でST上昇や著明なST低下がないことを確認しCS4(心筋梗塞や不安定狭心症)を除外しておく



(投稿者 川崎)

EHEC

Enterohemorrhagic Escherichia coliの略で,腸管出血性大腸菌のこと
  • ベロ毒素を産生する病原性大腸菌の一種で,代表的な血清型としてO157が知られている
  • 症状は無症状~腹痛・水様便・血便~致死的と様々で乳幼児や高齢者が重症化しやすい
  • 感染後に溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome, HUS)を発症することがある

国立感染症研究所のページに詳細が記載されています

(投稿者 川崎)

2016-12-30

グラム染色クイズ

CRPが10mg/dlを下回らない症例の尿グラム染色です.診断は?


白血球に貪食された酵母 ⇒ 真菌による尿路感染症 ⇒ 抗真菌薬の投与を考慮

(投稿者 川崎)

空の巣(からのす)症候群 Empty-nest syndrome

子育てが終わった中年女性にしばしば認められる抑うつ症状のこと
子供が家を巣立っていった喪失感が一因であるためこう呼ばれる

子育てを生きがいとしてきた内交的な性格の専業主婦に多い
症状には頭痛や肩こり,胸部症状,食欲低下,不眠などがある

(投稿者 川崎)

2016-12-29

デルタ心拍数20ルール+α

体温1℃上昇に対して心拍数が毎分20回以上増加する場合は細菌感染症を疑う
ウイルスなど非細菌性の感染症ならば,通常ΔHR/ΔBPは10程度と考えられる

逆に心拍数が体温に比して不自然に低いとき
 例 超高齢男性がふらつきで来院し,体温39.1度,心拍数80回/分

教科書的には特殊な感染症が有名であるが...
 オウム病,レジオネラ,サルモネラ,ブルセラ,腸チフス,髄膜炎など

まずは内服薬を確認すべし(ベータ遮断薬,ジギタリス,ヘルベッサー,ワソラン他)
 上記の症例はヘルベッサーの徐放剤(100mg)を内服していた

(投稿者 川崎)

2016-12-28

キャッスルマン病

キャッスルマン病(Castleman's disease)は非常に稀なリンパ増殖性疾患

腫大したリンパ節で過剰に産生されたサイトカイン(IL-6)がその本体と考えられる
症状はリンパ節腫脹に加えて,肝脾腫,貧血、発熱,食欲不振,体重減少,発疹など

詳しくは コチラ

キャッスルマン病と診断された症例の中に,血清IgG4高値およびIgG4陽性形質細胞の組織浸潤または腫瘤形成を特徴とする疾患群(IgG4関連多臓器リンパ増殖症候群)があることが分かってきた.シェーグレン症候群や悪性リンパ腫,自己免疫性膵炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症などの一部も含まれるようである. (難病情報センターより)

(投稿者 川崎)

2016-12-27

ノロウイルス2

救急外来でよく
患者「友人がノロと診断されたらしくて・・・」

この一幕にいつも疑問を感じています。あなたの友人はおじいちゃんばかりなのでしょうか?
保険適応は3歳未満、65歳以上の方のみです。

ちなみに他のウイルス性腸炎としては、ロタウイルス : 乳幼児に多く認められ、下痢便が白色。腸管アデノウイルス : 乳幼児に多く、夏場でも見られる。症状としては比較的軽症の事が多い。
厚生労働省曰

主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度!
(投稿者 國枝)

発表

國枝的発表時のお作法

①対象者分析(適切な難易度を!)
②ゴールを(何が伝えたいのか?)
③あらすじ作成(導入・展開・まとめ・閉講の時間配分)

を考えてからスライド作り開始しております。

おまけ
発表後の討論時はスライドは一覧にしておくと、質問し易くて良いですよ!
(投稿者 國枝)

敗血症性ショック

いろんな定義が存在しているが,日本救急医学会では以下のように記載

臓器障害または臓器灌流異常をともなう敗血症(重症敗血症)のうち,適切な輸液負荷を行っても低血圧が持続する状態。臓器灌流異常に基づく乳酸アシドーシス,乏尿,意識混濁などをともなう。低血圧は,収縮期血圧が90mmHg未満,あるいは通常よりも40mmHg以上の低下で診断されるが,強心剤や昇圧剤を使用している場合は必ずしも低血圧を呈していなくてもよい(ACCP/SCCM Consensus Conference, 1992)。

【おまけ】
 ショック指数(SI = HR/sBP)は本来,外傷や出血症例における出血量を推定する式
 敗血症の症例ではSIが正常値(0.5-0.7)でも「ショックではない」と言えないことがある

(投稿者 川崎)

第17回 松下バイリンガルカンファレンスより

今回は座長編
  • ~先生,すいませんが時間が過ぎています ⇒ Excuse me, Dr. **. Your time is up.
  • 残念ながら時間がなくなってきました ⇒ Unfortunately, we have little time left.
  • 次の質問に行きます ⇒ Let's move on to the next question.

(投稿者 川崎)

2016-12-26

CMZの使い方

CMZ=Cefmetazole=セフメタゾール(商品名セフメタゾン)
第2世代セフェム系であるが,セフォチアムCTMと異なり嫌気性菌に有効

尿路感染症でグラム染色で腸内細菌が検出され以下のようにESBLが疑われる時はいい適応
  • 前もって抗菌薬が投与されていた時
  • 過去にもESBLが検出されている時

※ただしESBLが疑われ敗血症など重篤な病態の時は初めからカルバペネム系を考慮すべし

(投稿者 川崎)

2016-12-25

尿中の亜硝酸塩

尿中に存在する硝酸塩が大腸菌などにより亜硝酸塩に還元されることがある
よって尿中に亜硝酸塩が存在しているときは尿路感染症が示唆される

【尿中白血球と亜硝酸塩の尿路感染症に対する診断能を518検体で検討】
 両者が陽性 ⇒ 尿中細菌培養の陽性的中率49.8%,陰性的中率95.6%
  (つまり両者が陰性なら高い確率で尿路系の感染症を否定できる)

尿中亜硝酸塩の感度が必ずしも高くない理由
  1. 一部の細菌は硝酸塩を亜硝酸塩に還元しない(腸球菌や緑膿菌など)
  2. 亜硝酸塩に還元するには時間を要する(膀胱内で約4時間)
  3. ビタミンCの過剰摂取(ビタミンCは強い還元作用を有している)
  4. 食事から硝酸塩の摂取不足(野菜不足や極端なダイエットなど)

(投稿者 川崎)

不適当なグラム染色標本

グラム染色標本では観察に適しない部位をしばしば見かける


白血球に貪食されているグラム陽性菌(ブドウ球菌?)を疑うが以下の問題点がある
  • 細菌の色調が濃く明瞭に観察できない ⇒ 検体を固定前に薄く伸ばす
  • 全体的に黄色い構造物が目立つ ⇒ ピクリン酸(脱色液)を早く洗い流す

(投稿者 川崎)

2016-12-24

急性下痢 小腸型 vs 大腸型

持続期間が2週間以内であれば急性下痢症,4週間以上であれば慢性下痢症
急性下痢はその病態に応じて小腸型と大腸型に分類できる(ただし混合型もある)
  • 小腸型:微生物やその毒素による小腸からの分泌物の増加
  • 大腸型:微生物やその毒素により腸管粘膜が破壊される

小腸型 大腸型
便の性状 水溶性 粘血便
便の頻度/量 大量 少量/頻回
嘔吐 多い 少ない
腹痛 軽い 強い(しぶり腹)
発熱 微熱 高熱
代表例 ウイルス性腸炎,コレラ菌 赤痢菌,サルモネラ菌
基本的な戦略 対症療法 抗菌薬投与

(投稿者 川崎)

2016-12-23

BRAT diet

下痢や嘔吐など急性胃腸炎時に推奨される食事パターン
バナナ、ライス、アップルソース、トーストの頭文字
いずれの食品も食物繊維が少なく消化しやすい


もちろん短期間ならBRAT dietよりも絶食+水分補給(スポーツ飲料やOS-1など)

(投稿者 川崎)

2016-12-22

β-ラクタム系抗生物質とは 

  • βラクタム環を中核とする抗生物質(右図参照)
  • 細胞壁合成に必要な酵素と結合して不活性化
  • ペニシリン系,セフェム系,カルバペネム系など

(投稿者 川崎)

CRE・・・クレアチニンではありません

Carbapenem-resistant enterobacteriaceaeの略で邦名はカルバペネム耐性腸内細菌
β-ラクタム系抗生物質を分解する酵素カルバペネマーゼを産生する腸内細菌の総称
常在菌(腸内細菌の1%未満)でるが,宿主の免疫低下に応じて発病することがある

 ⇒ 国立感染性研究所の関連ページに移動

(投稿者 川崎)

2016-12-21

ラムゼイ・ハント症候群

Ramsay Hunt Syndrome,耳性帯状疱疹(じせいたいじょうほうしん)

耳介,外耳道,頸部,後頭部の帯状疱疹で,顔面神経麻痺や内耳神経症状(難聴、耳鳴り、眩暈)を伴う
初発症状は耳周囲や耳後部の違和感や鈍痛で,その数日後に紅斑を伴った小水疱が出現してくる

単純ヘルペスウイルスの再活性化による顔面麻痺(ベル麻痺)とは異なり,重症化したり後遺症が残りやすい

(投稿者 川崎)

BLNAR(ブルナー)

βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌のこと
BLNAR = β-lactamase negative ampicillin resistance

インフルエンザ菌の約10%はβラクタマーゼを産生することが知られている
しかしβラクタマーゼ阻害薬を配合したペニシリン系抗菌薬は有効であった
BLNARはβラクタマーゼを産生しないがペニシリン結合タンパクが変異したためアンピシリン耐性

  参考文献 モダンメディア 53 巻7 号2007[耐性菌シリーズ]
(投稿者 川崎)

2016-12-20

B型肝炎ウイルスの疑陽性ほか

「B型肝炎について(一般的なQ&A)」(厚生労働省) より一部抜粋

詳Q9:各種のB型肝炎ウイルス検査では偽陽性がありますか?
現在認可を受けて市販されている各種のHBV(B型肝炎ウイルス)検査の試薬を用いた場合、「正しい意味での偽陽性反応」はほとんどないと言ってよいでしょう。

詳Q10:各種のB型肝炎ウイルス検査では偽陰性がありますか?
現在認可を受けて市販されている各種のHBV(B型肝炎ウイルス)検査の試薬を用いた場合、「正しい意味での偽陰性反応」はほとんどないといってよいでしょう。

詳Q11:感染後どのくらいの期間が経てば、HBs抗原検査でウイルスに感染したことが分かりますか?
HBs抗原検査法の感度にもよりますが、ヒトでの解析結果をもとにした外国からの報告によれば、感染後約59日経てばHBs抗原検査でウイルスに感染したことが分かるとされています(Shreiber G B他、N. Engl. J. Med. 1996)。

詳Q12:感染後どのくらいの期間が経てば、B型肝炎ウイルス遺伝子(HBV DNA)検査でウイルスに感染していることが分かりますか?
ヒトでの解析結果をもとにした外国からの報告によれば、感染後、約34日経てばHBV DNA検査でウイルスに感染したことが分かるとされています(Shreiber G B他、N. Engl. J. Med. 1996)。

(投稿者 川崎)

ノロウイルス

今更ですが周りでかなり流行っているようなので・・・
  • 潜伏期間 24~48時間
  • 主な症状 嘔気・嘔吐>下痢・腹痛,発熱
  • 持続期間 1~3日
 おまけ  ロタウイルスは下痢が主症状で1~2週間と長引く
ノロ
(投稿者 川崎)

2016-12-19

妊娠反応

当院で採用している尿の定性検査は『ゴナスティックW』
  • 尿中のヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を検出
  • hCG = human chorionic gonadotropin
  • hCGが25 IU/L以上のときに陽性と診断される

妊娠して10日~2週間で判定可(つまり妊娠3週後半~4週)
※妊娠週数は最終月経開始日を0週0日として数える
(つまり妊娠0週や1週は実際には妊娠していないことになる)

(投稿者 川崎)

胃捻転 Gastric volvulus

新生児や乳児ではしばしば認められるが,大人では非常に珍しい病態

捻転した胃軸の形態から,長軸捻転と短軸捻転に分類
症状の出現パターンから,急性・慢性・間欠性(反復性)に分類

分かりやすい画像 ⇒ BMJ Case Rep 2012 Nov 28;2012

 おまけ  胃捻転は大型犬でよくある病態のようです

(投稿者 川崎)

2016-12-18

足根管症候群

  • 足根管(そっこんかん, tarsal tunnel)とは足根骨と屈筋支帯により形成されるトンネル
  • 足根管症候群とは足根管を通る脛骨神経が圧迫され損傷され症状が出現した状態
  • 足根管より末梢の脛骨神経支配領域に障害が出現:痛みや痺れ,母趾球の萎縮など

足根管の中には,脛骨神経・長母趾屈筋腱・長趾屈筋腱・後脛骨筋腱・後脛骨動脈・後脛骨静脈が通っている

関連病態手根管症候群肘部管症候群

(投稿者 川崎)

抗菌薬のPK/PD理論

PKPharmacokinetics=薬物動態
 投与した抗菌薬の体内動態(血中や組織内濃度)のこと

PDPharmacodynamics=薬力学
 臓器や患部に到達した抗菌薬が有する抗菌活性のこと

 ⇒ 抗菌薬はこのPK/PD理論に基づき一回投与量と投与回数が決められる

詳しく知りたい方は コチラ を見てください

(投稿者 川崎)

2016-12-17

双球菌?

喀痰のグラム染色で双球菌を認めた.予想される細菌名は?


グラム陽性の双球菌 ⇒ 痰=肺炎球菌,尿=双球菌とならないように
連鎖球菌が途中でちぎれて2個のペア(双球菌様)になることは珍しくない
ブドウ球菌は肺炎球菌よりも少し大きくてまん丸,モラクセラはグラム陰性

(投稿者 川崎)

2016-12-16

3-OHBA

尿中 ⇒ 直接ケトン体を測定する(非分画)
血中 ⇒ ケトン体の分画である3-ヒドロキシ酪酸(3-OHBA)を測定

ケトン体=3-ヒドロキシ酪酸(3-OHBA)+アセト酢酸(AcAc)+アセトン
 3-OHBA=3-hydroxybenzoic acid/benzoic=安息香の
 アセト酢酸と3-ヒドロキシ酪酸は酸性であるためアシドーシスになる

アセトンは健常人の血中にはほとんど認められない揮発物質
産生時には呼気中にケトン臭(甘酸っぱい匂い)として観察される
糖尿病性ケトアシドーシス時のクスマウル呼吸は深呼吸だが頻呼吸ではない

(投稿者 川崎)

舌のクローバー状収縮

筋緊張性ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)で認められる初発症状の一つ
舌をハンマーで軽く叩くと収縮が継続してあたかもクローバー状に見える所見
その他にも手を握ると開きにくいなどの筋症状(例,吊革を放せずに電車を降りられない)

NEJMの動画が分かりやすいです → Myotonia with Percussion of the Tongue

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「足関節および足の疼痛」

足関節および足の疼痛のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 発熱,潰瘍,皮膚発赤,熱感 ⇒ 蜂巣炎・敗血性関節炎
  2. 体重を支えられないほどの外傷歴 ⇒ 骨折
  3. 最近,活発に活動した後に体重を支えられないほどの疼痛と腫脹 ⇒ 圧迫(疲労?)骨折
  4. 受傷直後または評価中に4歩歩けない ⇒ 足関節骨折
  5. 足のしびれ,脱力 ⇒ 神経損傷を伴う骨折
  6. 足関節の背部を撃たれたまたは蹴られた感じ(プチっという音) ⇒ アキレス腱断裂
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2016-12-15

緩徐進行1型糖尿病

SPIDDM = Slowly Progressive Insulin-dependent (Type 1) Diabetes Mellitus

 診断基準 (以下の2項目をいずれも認めること)
  • 経過のどこかの時点でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体もしくは膵島細胞抗体(ICA)が陽性
  • 糖尿病の発症もしくは診断時にはケトーシスやケトアシドーシスはなく緊急インスリン療法は不必要

詳細は 「糖尿病 2013;56(8):590-597」 で確認して下さい

(投稿者 川崎)

球菌は必ずしも”まん丸”じゃない

喀痰のグラム染色でグラム陽性菌を3ペア認めた.疑われる細菌名は?(確定には培養が必要)


(投稿者 川崎)

2016-12-14

低K血症 (松下心電塾より)

高K血症では心電図のT波が増高する(テント状T波)
低K血症ではT波の低下だけでなくてU波の増高が特徴的
 ⇒ 平低T波に増高U波が加わり一見QT延長に見える


本症例の血清カリウムは1.7mEq/Lであった(上記の赤矢印がU波と考えられる)

(投稿者 川崎)

2016-12-13

Ai (オートプシー・イメージング)

Autopsy imaging (Ai)=オートプシー・イメージング=死亡時画像診断

オートプシー・イメージング学会で推奨されているAiの実施対象症例
【1】小児死亡全例(14歳以下)
 診療の有無、死亡場所を問わない

【2】外因死およびその疑いがあるもの
 1.不慮の事故
 2.自殺
 3.他殺
 4.不慮の事故、自殺、他殺のいずれであるか死亡に至った原因が不詳の外因死
 5.外因による傷害の続発症、あるいは後遺障害による死亡

【3】診療行為に関連した死亡
 該当施設として死因究明にAiが必要と判断したもの

【4】死因が明らかでない死亡
 救急搬送、通院治療、老人施設、在宅介護等で死因不詳のものを含む
 病死か外因死か不明の場合

【5】その他
 1.医師が死亡診断書(死体検案書)の作成あるいは医学の発展のために必要と判断した場合
 2.遺族が死因究明を望んだ場合
 3.身元が明らかでない者の死亡

(投稿者 川崎)

2016-12-12

中心性頸髄損傷

中心性頸髄損傷とは,外傷性頸髄不全損傷のうち脊髄中心部(灰白質あるいは白質内層)が主に損傷された病態
  • 下肢よりも上肢に強い運動障害や感覚障害を生じる
  • 脱臼や骨折を伴わない非骨傷性頸髄損傷に多い
  • 中年以降に比較的軽微な受傷機転で発症しやすい

詳細は 「総説 中心性頸髄損傷の病態と治療」 (千葉医学 2010;86:167-173) で確認して下さい

(投稿者 川崎)

2016-12-11

SSRI と SNRI

SSRI selective serotonin reuptake inhibitor
選択的セロトニン再取り込み阻害薬
SNRI serotonin and norepinephrine reuptake inhibitor
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬

SSRIは脳内でセロトニン濃度のみを高め,SNRIはセロトニン濃度だけでなくノルアドレナリン濃度も高める
いずれも抗うつ薬であるが,SNRIはSSRIで改善がない場合(いずれも稀にセロトニン症候群を引き起こす)

(投稿者 川崎)

PSSP, PISP, and PRSP

肺炎球菌のペニシリンMIC(minimum inhibitory concentration,最小発育阻止濃度)による分類
  • PSSP = penicillin-sensitive S. pneumoniae(ペニシリン感受性肺炎球菌)
  • PISP = penicillin-intermediate resistant S. pneumoniae(ペニシリン中等度耐性肺炎球菌)
  • PRSP = penicillin-resistant S. pneumoniae(ペニシリン耐性肺炎球菌)

※この分類は髄膜炎には有用だが肺炎には必ずしも当てはまらないという意見もある.ペニシリン注射薬では高い病巣内の抗菌薬濃度が得られるためPISPやPRSPの大部分が治療可能であるためだ.

 復習 
肺炎球菌(S. pneumoniae)は健常者の口腔などに存在することももあるが通常は無症状
繁殖すれば,乳幼児の化膿性髄膜炎や小児の中耳炎・肺炎,高齢者の肺炎などを引き起こす

(投稿者 川崎)

2016-12-10

バトソン静脈叢

Batson venous plexus (Batson veins)
椎体の周囲および脊柱管内に存在する静脈ネットワーク


弁構造がないためうっ滞しやすく,血流方向は容易に逆転する
 ⇒ フィルターである肝や肺を通過せず静脈血が椎体に到達するため感染や転移の経路

(投稿者 川崎)

カマグと腎不全

酸化マグネシウム(Magnesium Oxide, MgO)は緩下+制酸
  • 緩下:難吸収性の炭酸塩となり水分を引き込み腸管内容物を軟化
  • 制酸:胃酸との中和反応による(MgO+2HCl→MgCl2+H2O)

慎重投与(添付文書は ココ
 腎障害のある患者では高Mg血症(筋力低下,悪心,腱反射低下,呼吸抑制,意識障害,不整脈など)に至ることがある

腎不全症例で緩下剤による排便コントロール必要時は麻子仁丸(ツムラ126)を考慮

(投稿者 川崎)

2016-12-09

松下金曜会 「筋力低下」

筋力低下のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 急速に進行する麻痺 ⇒ 虚血性脳卒中,ボツリヌス中毒,ギラン・バレー症候群など
  2. 甲状腺機能亢進症の症状あるいは既往 ⇒ 甲状腺中毒性周期性麻痺
  3. 1日以内に自然消失した片側不全麻痺 ⇒ 一過性脳虚血発作
  4. 四肢不全麻痺を伴うダニ接触 ⇒ ダニ麻痺
  5. 不全対麻痺を伴う電気痛 ⇒ 横断脊髄炎,脊髄圧迫
  6. 発熱の病歴または注射薬使用歴 ⇒ 硬膜外膿瘍
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2016-12-08

混合感染

腎盂腎炎が疑われる症例に対して尿のグラム染色をおこなった.その診断と対処は?

 

多数のグラム陰性桿菌とグラム陽性球菌,および両者の貪食像
  • グラム陰性菌(ピンク)は腸内細菌(大腸菌など)と考えられる ⇒ 第三セフェム
  • グラム陽性菌(ブルー)は双球菌であるため腸球菌が疑われる ⇒ ペニシリン系

腸球菌は基本的にセフェム系は無効で,多剤耐性菌も少なくない(例,エンテロコッカス・フェシウム)
エンドトキシンショックを防ぐため第三セフェムで治療を開始して,腸球菌の感受性を待ってもいい

(投稿者 川崎)

2016-12-07

緩下剤と大腸メラノーシス

大腸メラノーシスとはアントラキニン系大腸刺激性下剤を長期にわたって飲み続けた結果、大腸を粘膜側から見た場合に通常よりも色は黒っぽく、ヒョウ柄になった状態のコトを言う。

アントラキニン系緩下剤は長期に使用すべきでなく、やむを得ない時に1週間以内の使用にとどめ、塩類下剤に切り替えることが望ましい。

アントラキニン系緩下剤はセンナ、ダイオウであり商品名はアジャスト、アローゼン、プルゼニド、大建中湯、セチロなどがある。

(投稿者 吉武)

心電図:満腹テスト (松下心電塾より)

ブルガダ症候群に対する心電図検査でリスク層別化に有用
Full Stomach Testとも呼ばれている

方法
  1. 空腹時または非満腹時に12誘導心電図を記録
  2. 20分で満腹になるまで食べる+食後にソーダ
  3. その後30分以内に12誘導心電図を記録

V1-2誘導でcoved型のST上昇が出現すれば陽性(ハイリスク)
その機序として満腹による迷走神経の亢進が考えられている

詳細は こちら にあります

(投稿者 川崎)

2016-12-06

PMX

PMX = polymyxin B-immobilized fiber column
  • 東レが開発した世界初の血中エンドトキシン除去向け血液浄化用浄化器
  • カラムの内部にエンドトキシン吸着担体となるポリミキシンB固定化繊維
  • 敗血症性ショックの症例に対して保険適用を受けている国内唯一の医療機器

商品のカタログは ココ です

(投稿者 川崎)

2016-12-05

呼吸不全のおさらい 1型 vs 2型

定義
  • 室内気で呼吸時の動脈血酸素分圧≦60Torr

原因
  • 肺胞低換気(例,薬剤による呼吸中枢抑制やギランバレー症候群)
  • 換気血流不均衡(例,肺血栓塞栓症や気道疾患)
  • シャント(例,先天性心疾患や肝肺症候群)
  • 拡散障害(例,間質性肺炎や無気肺)
  • 吸入気酸素分圧の低下(例,高地登山)

分類
  • 1型=PaCO2≦45Torr以下⇒A-aDO2は開大⇒酸素投与
  • 2型=PaCO2>45Torr以上⇒A-aDO2は正常⇒原則として人工換気
(投稿者 川崎)

2016-12-04

第214回内科学会近畿地方会

個人的に印象深かった症例

 演題45:ビール中毒(連日2Lで食事僅か)による低Na血症(110mEq/L)
 演題143:感冒後の横紋筋融解と高CK血症(なんと143万U/Lまで上昇)
 演題174:パレコウイルス3型による流行性筋痛症(CKはやはり低く238U/L)

(投稿者 川崎)

2016-12-03

酵母のグラム染色

酵母(イースト,yeast)は細菌ではない
  • 酵母=核膜に包まれた核がある=真核生物(例,植物や動物)
  • 細菌=核膜に包まれた核がない=原核生物(例,放線菌、ラン藻)

酵母はグラム陽性でとても大きく,球菌や桿菌の分類は行わない
カンジダなどの酵母は口腔内常在菌であるため通常は病原性を持たない

(投稿者 川崎)

気胸

聴診
患側で呼吸音の減弱に加えて声音振盪の減弱も有用.「ひと~っ,ひと~っ」と繰り返してもらい,音の響きの左右差を確認する.

胸部X線
通常の深吸気像のみでなく深呼気像も撮影したい.深呼気の方が肺実質に空気が少ないため胸膜腔の空気量(気胸部分)が目立ち診断しやすい.

(投稿者 川崎)

2016-12-02

パックマン?

 
グラム陽性の桿菌は少ない
  • クロストリジウム
  • コリネバクテリウム
  • リステリア
  • バチルスなど

右写真のグラム陽性の大型桿菌は血液培養から検出されたバチルスである

バチルス属は炭疽菌を除き毒性は低く,水中や土壌に普遍的に存在する

健常者とことなり免疫不全や担癌状態の症例では病原性を有することがある

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「病歴聴取の機微」

  • たとえ急いでいても,そんなそぶりは見せない
  • 患者に会う前に数分間カルテに眼を通す
  • 既にある書式と同じ順番で情報を集める必要はない
  • 混乱した場合はそれを認める
  • 経過から外れた話をそのまま放置しない
  • 不安要因を突き止める
  • 信頼するが検証する
  • 直感を信じる
  • 思慮深く利用すれば「沈黙は金」
  • 優れた病歴聴取は「一石二鳥」

 ※機微(きび)とは表面からだけでは知ることのできない微妙なことがらのようです

参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2016-12-01

パレコウイルスによる成人筋痛症?

当院の経験例
  • 若い母親で子供が感冒後に本人も発熱
  • その後に四肢の近位筋の筋力低下と筋痛
  • アセトアミノフェン服用後は症状が少し改善
  • 腱反射の低下はなく,CK値も正常である

 ポイント 
 腱反射やCK値よりギラン・バレー症候群や通常のウイルス感染症に合併した筋炎は否定的
 アセトアミノフェンによる一過性の改善は,筋膜炎による痛みのため見かけ上の筋力低下?

パレコウイルス3型による成人流行性筋痛症は2012年に山形県のグループが世界で初めて報告
子供を介して発症し,発熱・咽頭痛・筋痛・筋力低下が出現するがCKがあまり上昇しないようだ

(投稿者 川崎)

大動脈弁狭窄

収縮期(Ⅰ音~Ⅱ音)に漸増し漸減する雑音で,とても聴取しやすい雑音の1つ
雑音後のⅡ音の有無で重症度の推測が可能(重症ではⅡ音が不明瞭になる)

  • 中等度の大動脈弁狭窄
  •   Ⅱ音が明瞭 (ト・ザ~・ドゥ  ト・ザ~・ドゥ)
  • 高度の大動脈弁狭窄
  •   Ⅱ音が不明瞭 (ト・ザ~  ト・ザ~)

(投稿者 川崎)