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2021-12-31

安易な検査は慎むべし

🧖 循環器内科の外来診察室での一コマ
  • 担当医師 「では次は採血を予約しておきますね」
  • 患者さん 「分かりました.ついでに血で調べて欲しいことがあるんですけど…」
  • 担当医師 「どうぞ.どんなことですか?」
  • 患者さん 「実は父がハンチントン舞踏病で亡くなっているんです.」
  • 担当医師 「ハンチントン? 今,何か症状があるのですか?」
  • 患者さん 「症状はありませんが採血で遺伝検査ができるって書いてあったんで…」

💥 ハンチントン病(Huntington's disease)
  • 遺伝検査自体は容易に可能:例えばSRLの外注検査「HTT遺伝子CAG反復配列解析」で血液(EDTA-2Na加) 5.0mlで判定(100点)
  • ただし常染色体優性遺伝で治療法のない進行性疾患(罹病期間10~20年)であるため,無症候例に対する検査には注意が必要! 



💢 遺伝子検査を行う場合の注意難病センター ハンチントン病より)
  1.  発症者については、本人又は保護者の同意を必要とする。
  2.  未発症者の遺伝子診断に際しては、所属機関の倫理委員会の承認を得て行う。また、以下の条件を満たすことを必要とする。
    • 被検者の年齢が20歳以上である。
    • 確実にハンチントン病の家系の一員である。
    • 本人または保護者が、ハンチントン病の遺伝について正確で十分な知識を有する。
    • 本人の自発的な申出がある。
    • 結果の告知方法はあらかじめ取り決めておき、陽性であった場合のサポート体制の見通しを明らかにしておく。

(投稿者 川崎)

2021-12-30

👴 歴史クイズ




(投稿者 川崎)

2021-12-29

😳 頼もしい初診医!

他院で診断がつかない右側腹部痛に対応した医師のカルテから
  1. アロディニアなし
  2. 繊維筋痛症の圧痛点は18カ所いずれも陰性
  3. ACNESは考慮するがカーネット徴候は陰性

👹 アロディニア
  • allodynia(名詞)異痛症【発音】æ̀loudíniːə,アロウディニーア,実際の音声
  • わずかな接触や軽微な圧迫,寒冷などの刺激が痛みとして認識される感覚異常
  • ギリシャ語で“allo”は“異なる”,“odynia”は“oduneや“odyne”の“痛み”を意味
  • 末梢神経損傷,帯状疱疹,糖尿病性神経障害,抗癌剤による副作用などで発生
  • 衣服による摩擦などの日常的な刺激で痛みを感じ,生活の質が大きく低下する
  • 非ステロイド性抗炎症薬は無効で,プレガバリンやガバペンチンが利用される


😗 頭の整理(逆に混乱?)
  • アロディニア(allodynia)➜ 閾値の低下:刺激と反応の様式が異なる
  • 痛覚過敏(hyperalgesia)➜ 反応の亢進:刺激と反応の様式は同じ
  • 異常痛症(hyperpathia)➜ 閾値の上昇+反応の亢進
  • 痛覚鈍麻(hypoalgesia)➜ 閾値の上昇+反応の低下

※感覚過敏はアロディニアと痛覚過敏を含むが特定できる場合はそちらを使用


(投稿者 川崎)

2021-12-28

ほうれん草のおひたし 🍴

🐸 知ってる人は知っているのですが知らなかったので...

新人の「ほう・れん・そう」👦 有名
  1. ほう ➜ 報告
  2. れん ➜ 連絡
  3. そう ➜ 相談

上司の「お・ひ・た・し」👴 初耳
  1. お ➜ 怒らない
  2. ひ ➜ 否定しない
  3. た ➜ 助けてあげる
  4. し ➜ 指示する

 🌿 菜っ葉シリーズ
  • 「こま・つ・な」➜ 困ったら・使える(できる)人に・投げる(上司らが仕事をすすめるコツ)
  • 「ちん・げん・さい」➜ 沈黙する・限界まで言わない・最後まで我慢する(部下が避けること)
  • 「き・く・な」➜ 気にせず休む・苦しいときは言う・なるべく無理しない(最悪を避けるため)

💁 ビジネスに関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-12-27

心不全治療薬


😄 近年,新たな3種類の治療薬が加わりました
推奨クラス 薬剤 病態
I SGLT2阻害薬 最適な薬物治療(最大量あるいは最大忍容量のβ遮断薬, ACE阻害薬 [またはARB] およびMRA)が導入されている にも関わらず症候性で,収縮能の低下した(LVEF≦40%) 慢性心不全患者に対し,心不全悪化および心血管死のリス ク低減を考慮してダパグリフロジンまたはエンパグリフロジンを投与する.
I ARNI ACE 阻害薬(またはARB),β遮断薬,MRAがすでに投 与されているHFrEFにおいて,症状を有する(または効果が不十分)場合,ACE阻害薬(またはARB)からの切替えを行う.
IIa ARNI ACE阻害薬(またはARB)未使用の入院中のHFrEFへの投与を考慮する.
or
利尿薬が投与されているNYHA心機能分類 II 度以上のHFmrEFにおいて,ACE阻害薬(またはARB)からの切替えを考慮する.
IIa イバブラジン 最適な薬物治療(最大量あるいは最大忍容量のβ遮断薬, ACE阻害薬[またはARB]およびMRA)にもかかわらず症候性で,洞調律かつ心拍数≧75拍/分のHFrEF(LVEF≦35%)患者において,心不全入院および心血管死のリスク低減に考慮する.
or
ACE阻害薬(またはARB)およびMRAを投与されているものの,洞調律で安静時心拍数≧75拍/分の症候性HFrEF(LVEF≦35%)患者であるがβ遮断薬に不耐容あるいは禁忌である患者において,心不全入院および心血管死のリスクを低減するために考慮する.
IIb ARNI HFpEFに対する投与を考慮してもよい.

😈 現在の基本薬は4剤に集約 (いわゆるFantastic four
  1. ARNI (アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
  2. BB(ベータ遮断薬)
  3. MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
  4. SGLT2 inhibitor(ナトリウム/グルコース共輸送体2阻害薬)

これらの4薬剤はすべて長期予後を改善することが証明されています.しかし心不全治療では,急性期の自覚症状を改善することも重要です(急性の心不全に使用する薬剤の推奨).

上記の素晴らしい4つ薬剤のなかでSGLT2阻害薬は急性心不全の治療にも有用であることが示されつつあります(例:Circ Heart Fail 2021;14:e007048.).これは注目すべきすごいこと!

(投稿者 川崎)

2021-12-26

近医からの紹介:病名「ストロフルス」

  • 病態 掻痒感がとても強い数mm〜1cmほどの漿液性丘疹
  • 疫学 小児(特に乳幼児)に多く,アレルギー体質と関連
  • 原因 虫刺され(ノミや蚊の唾液)に対するアレルギー?
  • 診断 特徴的な見た目と季節(夏に好発),年齢から判定
  • 治療 ステロイドの外用薬と抗ヒスタミン剤の内服薬など
  • 経過 1週間程度で治癒(掻爬時には膿痂疹などで1月要)


典型例の所見

😄 独り言
  • 面白い響きを有するストロフルスですが,その語源はギリシャ語のstróph(ねじれた紐)とラテン語のulus(ゴム)にあるようです(引用).
  • カタカナでは覚えにくいかもしれません.むしろ英語 strophulus の発音がストンとくるかも(strɑ́fjələs/ストゥラフャラス/音声

🉐 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-25

🌀 リール症候群 Reel Syndrome

  • ペースメーカーが平面(冠状面/前額面/coronal plane)で回転してリードが巻き取られた状態
  • 由来は英語のreel(巻き取る)で初報はスペインのCarnero-Varoら(Circulation 1999;100:e45-6
  • 回転が縦方向(つまり長軸方向)に回転する Twiddler's Syndrome の亜型と考えることもできる
  • この症候群も人名とは無関係で初報はカナダの外科医Baylissら(Can Med Assoc J 1968;99:371-3) 
  • 英語のtwiddle(ひねり・クルクル回す)の派生語twiddlerで神経質または無意識に操る人を意味



💁 ペースメーカに関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-12-24

PBLS & PALS

AHA(アメリカ心臓協会(AHA: American Heart Association)が米国小児科学会(AAP: American Academy of Pediatrics)などと協力して提唱している小児救命処置法

  • PBLS=Pediatric Basic Life Support(小児一次救命処置)
  • PALS=Pediatric Advanced Life Support(小児二次救命処置)

成人に対するBLS(Basic Life Support/一次救命処置)やALS(Advanced Life Support/二次救命処置)の小児版.ちなみにACLS(Advanced Cardiovascular Life Support/二次心肺蘇生法)はALSの一つ(かつ中心).
👶 小児の血圧低下の基準
  1. 新生児(日齢0~28日)➜ 60 mmHg未満
  2. 乳児(1~12ヵ月)➜ 70 mmHg未満
  3. 小児(1~10歳)➜ 70 mmHg+(2×年齢)未満
  4. 小児(10歳以上)➜ 90 mmHg未満

収縮期血圧が年齢正常値の5パーセントタイル未満で定義され覚えるのが大変そうに感じるかもしれないけど,概ね”70➕年齢✖️2”未満でOKだそうです 😉

関連投稿
  1. PAT: Pediatric Assessment Triangle 小児科三角形評価
  2. Sniffing position & Tripod position
  3. インフォームド・アセント Informed assent

(投稿者 川崎)

2021-12-23

🎯 今週の一枚

息切れで受診した在宅酸素中のCOPD症例

💣 解説
  • 腹式呼吸+ビア樽状胸郭はCOPDに合致(ただしフーバー徴候はなし)
  • 右季肋部〜心窩部(付箋の貼り付け部)に拍動あり ➜ 肝拍動の疑い
  • 拍動のパターンは収縮期に隆起(付箋よりも腹壁の方が分かりやすい)
  • 肝拍動は基本的に頸静脈拍動に類似 ➜ 巨大V波(三尖弁逆流)の疑い
  • 最終的にCOPDによる肺性心に関連した重症の三尖弁逆流と診断した

  • 身体所見は「頸静脈 ➜ 傍胸骨 ➜ 心尖拍動 ➜ 心音」と進めることが多いと思います.よって循環器外来では腹部はついつい忘れがちです(😯僕だけ?)しかしお腹の診察(特に初診時)はとても大切です.これは腹部大動脈瘤を見つけるチャンスだからです(自験例).外来で長年フォローしてる心疾患の患者さんが,腹部動脈瘤の破裂で死亡する悲劇は主治医として何が何でも回避!
  • 実際に肝拍動が診断にとても有用だったケースはあまり経験しません(収縮性心膜炎の自験例).その他の身体所見(頸静脈や心音など)で診断できることが多いからかもしれません.しかしフィジカルを愛する医療従事者としては,肝臓のアピールには是非,気がついてやりたいものです.とてもおしゃべりな心臓(心音・心雑音=心臓語)と違って,肝臓は沈黙の臓器なのですから…

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-12-22

プリンペラン®試験(メトクロプラミド投与試験)

  • 褐色細胞腫を疑う症例で行われる(かって行われた?)試験(同薬の添付文書では禁忌と記載)
  • 例:安静臥床30分後にメトクロプラミド5mgを投与し血圧・脈拍・血漿カテコールアミンを測定
  • 健常者と褐色細胞腫術前・術後例では術前例のみ血圧上昇とカテコールアミン増加が著明(
  • その機序はメトクロプラミド(プリンペラン®)の抗ドパミン作用(D2受容体拮抗薬)による

👹 褐色細胞腫クリーゼ発症の誘因
  • 日常生活 ➜ 前屈姿勢,運動,過食,飲酒,くしゃみ,排尿,排便,ストレス,喫煙,妊娠(子宮による圧迫)
  • 手技・検査 ➜ 腹部の触診,注腸検査,腫瘍生検,ヨード造影剤
  • 薬剤 ➜ メトクロプラミド(プリンペラン®),ドンペリドン(ナウゼリン®),グルカゴン,β遮断薬単独投与,三環系抗うつ薬
  • 治療 ➜ 化学療法(CVD療法),放射線療法(131I-MIBG内照射,外照射),カテーテル的動脈塞栓術(TAE)


👺 本試験を知っておく意義
  • 褐色細胞腫の症状は多彩で,著明な血圧上昇に伴う悪心や嘔吐で救急外来を受診されることがあります.そしてとりあえず投与したプリンペラン®で状態が急激に悪化することを元上司から教えていただきました.多臓器不全に陥りICU入室3時間後に死亡し,病理解剖で副腎外褐色細胞腫(傍神経節腫)であることが判明した恐怖の症例報告もあります(日集中医誌 2012;19:421-2).

💁 褐色細胞腫に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-21

急性後壁心筋梗塞 Acute Posterior Myocardial Infarction

胸痛で来院した高齢男性(松下心電塾の症例235

🙃 後壁を直接反映する誘導なし ➜ V1-3を後壁の鏡像と診る
  • V1-3誘導で高いR波 ➜ 異常Q波の鏡像(上下逆)
  • V1-3誘導でSTの低下 ➜ ST上昇の鏡像(上下逆)
  • V1-3誘導で高いT波 ➜ 陰性T波の鏡像(上下逆)
  • よってこの心電図は後壁の急性心筋梗塞と診断

😗 消えゆく後壁
  • 左心室は前壁や中隔,下壁,側壁,心尖部などに分類されます.かつては様々なモダリティーで下壁の一部(特に基部寄り)を後壁と呼んでいました.
  • しかし現在は心エコー図や核医学検査などでは基部下壁と称されます.後壁という言葉が今でも使われているのは心電図の世界ぐらいでしょうか...

💁 後壁に関する過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-20

心尖拍動:立ち位置は右 or 左?

労作時の息切れで来院した症例をベット右側から臥床で視診
(画面左側が患者頭側で,白タオルは乳房をカバーしている)

😗 解説
  • 接線方向で観察した心尖拍動が周期的に上方偏位
  • 心尖拍動は持続時間の長い抬起性 ➔ 心肥大の疑い
  • 拍動と胸骨正中は10cm以上離れている ➔ 心拡大
  • 心エコー図で弁膜症による遠心性肥大を確認した

🛏 独り言
  • 身体所見を臥床で評価するとき「ベットの右側から行うか左側から行うか」はちょっとした問題です.ただ心エコー図と同様にベットの右側からが主流派でしょうか?
  • 右側のメリットはなんといっても,右内頸静脈を観察しやすいことです.心尖拍動は逆サイドで少し遠くなりますが,接線方向の評価は意外に役立ちます(実例).
  • 一方,左側のメリットは何と言っても心尖拍動を目の前でくまなく観察できることです.本ページでアップしている心尖拍動の動画も多くが左側からの記録です.
  • 個人的にはまずベットの右側から身体所見を観察するようにしています.そして心尖拍動をより細かく観察したいときのみ患者さんに向きを変えてもらっています.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-12-19

サットン母斑 Sutton's nevus

  • 母斑細胞(ほくろ/黒子)の周囲に白斑(しろなまず/尋常性白斑)を生じた病変
  • メラニンへの自己免疫反応が波及した病態で小児〜青年の体幹や顔面,頸部に好発
  • 母斑が消失すると白斑も自然に消失するが,母斑の切除で白斑の消失が促進される
  • 由来は米国の皮膚科医 Sutton RL (1878–1952) の初報(J Cutan Dis 1916;34:797-800)

初診時(左)と中央の褐色小丘疹の切除5ヵ月後(右)

💁 皮膚に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-12-18

SII (Systemic immune inflammation index)
システミック・イミューン・インフラメイション・インデックス

  • 全身の免疫炎症に関する指標で好中球数✖️血小板数➗リンパ球数で算出
  • 中国のHuらによって考案された指標(Clin Cancer Res 2014;20:6212-22
  • 様々な病態(悪性疾患〜血栓症〜動脈硬化〜感染症)で予後と関連する
  • 類似指標:NLR (好中球数➗リンパ球数)やPLR (血小板数➗リンパ球数)
  • SIIやNLRはCOVID-19でも予後と関連(Front Immunol 2021;12:741061
  • 過去の投稿:血小板はもうひとつの白血球 (the other white cells) である


(投稿者 川崎)

2021-12-17

高エネルギー外傷

🚘 色々な定義があるようですが一つの目安 [オリジナル英語]
  1. 成人墜落>6m(3階の高さ)[adults: fall >20 feet (one story = 10 feet)]
  2. 小児墜落>3m(2階の高さ)or 身長の2~3倍 [children aged <10 feet or two to three times child’s height]
  3. 患者側のドア変形>30cmまたは車内変形>45cm [intrusion: >12 inches to the occupant site or >18 inches to any site]
  4. 車外放出(完全・不完全)[ejection (partial or complete) from automobile]
  5. 同乗者死亡 [death in same passenger compartment]
  6. 重症外傷に合致する車載記録 [vehicle telemetry data consistent with high risk of injury]
  7. 人 vs 車:飛ばされた・乗り上げられた・速度>32 km/時 [auto versus pedestrian/bicyclist thrown, run over, or with significant (>20 mph) impact]
  8. バイク事故>32 km/時 [motorcycle crash >20 mph]


💁 高エネルギー外傷に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-16

🎯 今週の一枚

労作と無関係の胸痛が主訴の中年男性



(投稿者 川崎)

2021-12-15

門脈肺高血圧症 PoPH: portopulmonary hypertension

  • 門脈圧亢進症に伴う肺高血圧症で,ニース分類の第1群(肺動脈性肺高血圧症/PAH)
  • 組織所見は血管内膜や中膜平滑筋の肥厚,血管内腔の叢状病変,壊死や微小血栓など
  • 診断は肺高血圧(平均圧≧25 mmHg)+門脈圧亢進の証明(例:肝静脈楔入圧測定)
  • PoPHは必ずしも肝機能障害を示すとは限らないが,肝硬変例に合併する頻度が最多
  • 頻度はPAH全体の10%以下,門脈圧亢進症患者の2~6%.肝臓移植の対象症例の5%程度
  • 治療は肝臓移植やPAH特異的治療薬(ただしランダム化比較試験ではPoPHは通常除外)
  • 予後不良で未治療なら5年生存率は14%であり,54%の患者が診断から1年以内に死亡


👽 追記
  • 肝疾患によるシャント出現や全身血管拡張で高心拍出状態が生じ,肺動脈内膜肥厚や肺動脈のリモデリングに至る機序が推定されている.肝代謝の低下による腸肝循環の代謝物質(セロトニンなど)が肺循環に流入して肺血管が収縮することも一因.
  • 肺動静脈拡張から重度の低酸素を主徴とする肝肺症候群(HPS; hepatopulmonary syndrome)とは逆の病態と考えられる.ただし稀ながらHPSからPoPHへの移行例や,HPSとPoPHの病態がオーバーラップした症例も報告されている.


🉐 関連投稿
  1. 肺静脈閉鎖症 PVOD: Pulmonary veno-occlusive disease
  2. 右心負荷を来す稀な病態
  3. 急性PTE ➜ CTEPH
  4. 骨髄増殖性疾患 vs シーテフ(CTEPH)
  5. Ⅱ音の肺動脈成分

(投稿者 川崎)

2021-12-14

中條・西村症候群 Nakajyo-Nishimura syndrome

  • 東北帝国大学の皮膚科泌尿器科教室の中條 敦先生が2症例を報告した(皮泌誌 1939;45:77-86)
  • そして和歌山県立医科大学の皮膚科医の西村長應先生らも2家系を報告(皮性誌 1950;60:136-41)
  • 幼小児期に手足の凍瘡様皮疹で発症し,その後に結節性紅斑様皮疹や発熱,筋炎症状を繰り返す
  • 2010年に欧米から相次いで報告されたJMP症候群()やCANDLE症候群()と同一と思われる
  • 和歌山や大阪を中心とする関西と東北〜関東地方に偏在して,症例数は本邦で100人未満と推定
  • 原因はPSMB8遺伝子変異で,蛋白質分解を担うプロテアソーム複合体の機能低下とIL-6の過剰産生
  • 特異的な治療法はない(ステロイド内服が行われるが長期内服による成長障害などの弊害も多い)


JMP症候群の2家系と身体的特徴


(投稿者 川崎)

2021-12-13

効果は抜群(小児科の先生談)

  • 令和2年10月からロタウイルス感染症の予防接種が定期接種化された
  • 対象は生後6週から14週6日までの乳児で,重症胃腸炎が予防できる
  • 接種後は少なくとも2年間は効果が持続し重症化を80-90%予防する
  • ただしワクチン接種から1~2週間は腸重積症リスクが通常より高まる

ワクチンは2種類あり効果は同様と考えられる

👶 生後2ヵ月で接種するワクチン
  1. 小児用肺炎球菌ワクチン
  2. B型肝炎
  3. ヒブワクチン
  4. ロタウイルスワクチン

💁 ワクチンに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-12

第132回日本循環器学会近畿地方会より

T1-19 ピロリン酸シンチが陰性であった肥大型心筋症歴のある野生型トランスサイレチン型アミロ イドーシスの一例
  • 病初期の場合などにピロリン酸シンチは偽陰性を呈することもあり,Apical sparingを認める肥大心では生検での診断を考慮することも重要と考えられた。

T2-5 COVID-19ワクチンにより心室細動が誘発されたと考えられたBrugada症候群の一例
  • 本症例ではワクチン接種後の発熱がVFの誘因となった可能性がある。ESCではBrugada症候群に対するCOVID-19ワクチン接種に際して,解熱薬の投与を推奨してい る。

T4-35 心臓MRI T1強調画像にて冠動脈にhighintensity plaque(HIP)を認めた左前下行枝慢性完全閉塞病変の一例
  • 心臓MRIによる冠動脈不安定プラークを検出する手法が注目を集めている。本症例でも術前の不安定プラークの予測に心臓MRIによる冠動脈HIPが有用であった。

T6-25 完全皮下植込み型除細動器リード脱落をきたしたReel症候群の1例
  • 透視下でS-ICDジェネレータ側面をリードが周回しており,上体を捻るような動きで再現性を持ってジェネレータにより電極リードが牽引される様子が観察され,Reel症候群と診断した。

T8-49 がん合併下肢末梢型深部静脈血栓症は,抗凝固療法なしで半数が悪化,そのうち約2割が中枢型に進展する
  • がん患者に合併する下肢末梢型DVTは,抗凝固療法導入・継続できない場合は8.3%が中枢型DVTに移行することが示された。

👻 当院からの発表
  • T1-6 吸気に対する頸静脈反応:心不全のリスク評価(循環器内科 車古大樹先生ほか)
  • T4-32 身体所見による肥大型心筋症の診断(循環器内科  川﨑達也ほか)
  • T5-2 ばち指が最終的に消失した肺癌を伴う狭心症の1例(循環器内科 土橋哉仁先生ほか)
  • T5-29 Becker徴候を記録できた大動脈弁閉鎖不全症の1例(循環器内科 車古大樹先生ほか)

みんなとてもよかったです 😇 4演題とも英語論文として投稿中あるいは採択後もいいね

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-12-11

👄 開口障害と指縦三横指

  • 開口障害は顎関節症の主要症状(他の症状は顎関節や咀嚼筋の疼痛,関節音・雑音,顎運動異常など)
  • 原因は先天性,外傷性(脱臼や骨折),炎症性,腫瘍,顎関節強直症,咀嚼筋障害,全身疾患関連など
  • 鑑別は頭蓋内病変,隣接臓器の疾患,筋骨格系,心臓・血管系,神経系(破傷風など),精神疾患など
  • 診断目安は下図:無痛最大開口域<25mm,強制最大開口<50mm(開口測定器がなければ<指3横指) 
参考)顎関節症治療の指針 2018(図を含む)など

💁 顎関節の関連投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-10

カーペンター分類 Carpentier 分類

僧帽弁逆流の成因による分類で,フランスの胸部外科医 Alain Frédéric Carpentier(1933〜)が考案した(J Thorac Cardiovasc Surg 1983;86:323-37).僧帽弁形成術に対する彼の歴史的な講演(いわゆる”French correction")で初めて提示されたが,40年以上が経過した現在でも臨床現場で使用されている(らしい).

  • Type I ➜ 弁の動きは正常(例:弁輪拡大や弁穿孔)
  • Type II ➜ 弁の過剰な動き(例:逸脱や乳頭筋断裂)
  • Type III ➜ 弁の可動性制限(例:加齢性やリウマチ性はⅢa,テザリングはⅢb)


💁 心臓血管外科の関連投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-12-09

🎯 今週の一枚

拡張期の心雑音を指摘され来院した症例



(投稿者 川崎)

2021-12-08

ロングフライト血栓症 Thrombosis after long-haul flights

  • 別名は旅行者血栓症やエコノミークラス症候群,ロングフライト症候群
  • haul【名詞・動詞】運送・運搬(する)【発音】 [US] hɔl(ホル・ホゥ)
  • その病態は,脱水と不動に起因する深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症
  • 飛行機内では低圧(約0.7気圧)低湿度(約20%前後)で脱水を惹起(
  • 機内で肺と皮膚から失われる水分は80cc/hr (ハワイまでに約720cc)(

健常者の実験:安静と下腿径

🛩 日本旅行医学会が提唱する7つの予防策
  1. 2-3時間ごとに歩く
  2. 座席に座ったままでかかとやつま先の上下運動と腹式呼吸を一時間毎に3-5分行う
  3. 水分をまめに摂取する(アルコールは脱水を助長するので避ける)
  4. ゆったりした服装 
  5. 足は組まない
  6. 睡眠薬は使用しない
  7. 座席は通路側に座る

💁 血栓に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-07

シルマーテスト Schirmer test

  • 涙量を調べて涙液分泌機能を評価する方法(ドライアイやシェーグレン症候群などで実施)
  • ドイツの眼科医 Otto Schirmer (1864-1918) が開発 (Arch Klin Exp Ophthalmol 1903;56:197)
  • 両眼の下瞼に専用の試験紙(1mm幅の目盛りの付いた短冊状濾紙)を置き湿った長さを測定
  • 5分間放置して10mm以上の場合は涙液分泌機能が正常で,5mm以下なら分泌量が低下と診断

Wikipedia

 👀 おまけ
  • シルマーテストは必ずしも涙液分泌機能を正確に反映しないため,他の検査(例:ローズベンガルテスト=染色液で眼表面の傷を染めてドライアイの重症度を判定)を併用することもあるようです.
  • しかしシルマーテストは簡便性にとてもすぐれている検査で,現在でもシェーグレン症候群の改訂診断基準(厚生労働省研究班・1999年)に含まれています(5分で5mm以下).

💁 眼科の関連投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-12-06

感心して感心される

冠動脈バイパス術後の慢性左心不全症例(端座位で呼吸調整なし)

💕 ただいま診察中
  • 左乳輪内側に周期的な陥凹あり ➜ 左室心尖の拍動で心拡大を積極的には疑わない
  • 心窩部の少し左にも周期的な陥凹があって吸気時により明瞭化 ➜ 右室拍動の疑い
  • 左乳輪内側の心尖拍動を見直すと呼吸性変動はない ➜ やはりこちらは左室を反映
  • スローモーション(0.2倍速)で左室心尖拍動に少し遅れて右室拍動が生じている

拍動の呼吸性変動として,吸気時の右心系への静脈還流増加が考えられます(リベロ・カルバイヨ徴候と同じ原理).しかし本例では吸気と拍動出現の時相がほぼ一致しているため,肺容積の増加に伴い右室がより胸壁に近づいているためと思います(リベロ・カルバイヨ徴候は吸気から少し遅れて出現).

左室心尖拍動に少し遅れる右室拍動は動画では分かりにくいかも知れません.しかし親指と人差し指を拍動部位に置けば,その拍動のズレは明瞭でした(触ってなんぼの法則).CRT(Cardiac Resynchronization Therapy=心臓再同期療法)でもVV delayの設定はLV firstとすることが少なくありません(過去の投稿).

このようなことを考えながら患者さんの胸壁を暫くの間じっと見つめていました.これらの所見に何か臨床的意義があるのかと問われると少し困りますが,身体所見は常に正直だな〜と感心します.(おまけ:1分ほど胸壁を凝視していたため,熱心な先生だなと患者さんに感心されました😅)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-12-05

日本内科学会 第234回近畿地方会より

演題69 BNP高値をきっかけに診断に至ったくも膜下出血の1例
  • BNPは循環器疾患の診断、治療、予後に対する重要性が確立されている。一方で、BNPは視床下部で産生されSAHでも上昇することが報告されている。よってBNP高値の患者の鑑別には頭部疾患も考慮すべき。

演題132 apo A-Vのコンパウンドヘテロが原因と考えられた著明な高TG血症の1例
  • 50歳時に血清TG値が10000mg/dLを超える著明高値であったため入院。先天的なapo A-Vの異常があるとアルコール多飲や高炭水化物・脂肪食、運動不足といった生活習慣が引き金となり高TG血症を発症する。

演題147 確定診断に肝生検が有用であったCaroli syndromeの1例
  • Caroli syndromeは肝内胆管の嚢胞状拡張を主病変とし、嚢胞腎などの腎病変を合併する稀な疾患。一般的に小児疾患とされているが今回は、高齢初発の反復性胆管炎の精査過程で発見されたCaroli syndromeの1例。

演題160 宗教上の理由で無輸血を希望した膵十二指腸動脈瘤破裂の1例
  • 動脈瘤破裂による特発性腹腔内出血が考えられた。今回は絶対的無輸血を希望するエホバの証人信者で,最終的には出血性ショックで死亡退院した。

演題184 入院後に急激な意識障害を呈したレプトスピラ症の1例
  • 近年水辺のレジャーに伴う感染報告が増加している。レプトスピラは通常の培養検査では検出できない。抗菌薬投与数時間後にみられた急激な状態悪化はJarisch‐Herxheimer反応の疑い。

演題189 画像上、壊死性筋膜炎と鑑別を要した壊血病症例
  • 下肢MRIで膝窩部の屈曲筋を中心としたT2強調高信号を認め筋膜炎が疑われたが、炎症反応の上昇や凝固異常はなし。病歴から壊血病が疑われたため血清ビタミンCを測定し感度以下を確認。アスコルビン酸600mg/日の補充を開始し汎血球減少及び下肢の紫斑と筋力低下は改善した。

👻 当院からの発表
  • 演題129 臨床診断に難渋し剖検により診断に至った原発性副甲状腺機能亢進症の1例(糖尿病・内分泌内科 吉岡 希先生ほか)
  • 演題139 芳香性健胃消化薬の大量摂取により重度の電解質異常が誘発された1例(糖尿病・内分泌内科 山本慎大先生ほか)
  • 演題168 右内頸静脈を介した医原性の胸管損傷が疑われた1例(循環器内科 河野泰己先生ほか)

みんな発表,とてもよかったよ 😇

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-12-04

PAT: Pediatric Assessment Triangle 小児科三角形評価

  • 小児救急で用いられる患児を評価するためのトリアージ法の一つ
  • 外観呼吸循環の視診と聴診から全身状態を系統的に迅速評価
  • 特殊な道具は不要であるため,小児科医以外でも簡便に判定可能

A ➜ Appearance(外観・見かけ)
B ➜ Work of Breathing(呼吸状態)
C ➜ Circulation to Skin(循環・皮膚色)

下記の1つでも異常がある場合はPAT異常として準緊急以上で対応

看護rooの無料画像から)

💁 トリアージに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-03

骨盤骨折:Young-Burgess分類

米国の整形外科医 Burgess らが報告(J Trauma 1990;30:848-56)した骨盤骨折の分類で,骨盤輪に及んだ外力の方向から以下の3つに分類(Ⅰ➜Ⅱ➜Ⅲの順に重症化/分類不能型はComplex force [複合外力] とする)
  1. Lateral compression = 側方圧迫型
  2. Anterior posterior compression(いわゆるOpen book)= 前方圧迫型
  3. Vertical shear = 垂直剪断型


💀 追記
  • 出血の多くは骨髄性あるいは静脈性で,動脈性は少ないようです(10%程度?).骨髄性あるいは静脈性出血は整復固定やシーツラッピングの対象(ただしLateral compressionでは行わない
  • 動脈性出血ではTAE(Transcatheter Arterial Embolization:経カテーテル動脈塞栓術)を行うこともありますが,Lateral compressionでTAEを要する症例はかなり稀のようです(数%?)
  • ただし上記 Burgess らの連続210例の検討()の総死亡率は8.6%で,その内訳は Lateral compressionの7.0%,Open bookの20.0%,Vertical shearの0%と側方圧迫型でも油断は禁物!

💁 骨盤の関連投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

ロールシャッハ・テスト Rorschach test

性格を評価する検査法のひとつで図柄に対する言語表現から分析を行う
スイスの精神科医ヘルマン・ロールシャッハ(1884-1922)が考案(
正誤問題ではないため,判定法の妥当性に関する批判が少なからずある

🎴 ロールシャッハ・カード
  • ほぼ左右対称の図版を持つカードで10枚から成る
  • 5枚が無彩色のカードで残る5枚が有彩色のカード
  • 各カードは約17cm x 24cmの大きさを持っている
  • 「何に見えますか?」と聞き自由に答えてもらう

(左は1枚目のカード・右は10枚目のカード:引用

💁 性格に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-02

レパーサ

  •  用法用量

  〈高コレステロール血症〉

   140mg2週間に1回又は420mg4週間に1回皮下投与する。

   420mg 4 週間に1 回皮下投与する際には、レパーサ皮下注420mg オートミニドーザーを使用すること。

  • コスト

薬品

レパーサ皮下注140mgペン

レパーサ皮下注420mg

オートミニドーザー

用法用量

2週に1

4週に1

薬価()

24,344/

47,274/

1年間の薬価()

632,944

614,562


  • 高コレステロール血症患者(FeFH患者を含む)を対象とした国内第Ⅲ相試験(20120122試験)
  〈有効性(抜粋)〉

(投稿者 小森)

🎯 今週の一枚

1m程の高さから体の左側を下に転落した症例



(投稿者 川崎)

2021-12-01

妊婦とケトン体

産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」でケトン体に関する記載は一箇所のみ(108ページ)です.以下に抜粋してみます(引用論文は削除).

「つわり」,すなわち,妊娠初期の悪心・嘔吐は半数以上にみられ,体重減少,脱水,電解質異常などを呈する「妊娠悪阻」は全妊婦の 0.5~2% に発症する.妊娠16週以降の発症例や妊娠後半まで症状が継続する場合は他疾患の可能性を考慮する.
  1. 「妊娠悪阻」の原因は分かっていないが,心身の安静と休養で症状を和らげ,食事や水分摂取を少量頻回にする.
  2. 皮膚や口腔内乾燥など脱水の理学的所見が認められる場合,5%以上の体重減少があり経口水分摂取ができない場合,尿中ケトン体強陽性が続く場合,などには輸液する.さらに体重減少が続く場合には脂肪製剤などで熱量付加も考慮する.

💁 ケトン体に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)