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2026-11-07

緘黙かんもく Mutism

👀 カンファレンスにて...
  • 先日、男性が腹痛を訴えて救急外来を受診されました。男性からの発語はなく、問診などに対する返答はすべて付き添いの叔母でした。どうやらその男性が会話可能なのは叔母のみであることが分かりました。こういう状況を医学用語で緘黙(かんもく)と呼ぶことを初期研修医から教えてもらいました。その時のカンファレンスに参加していた指導医は誰も知りませんでした😅

  • 概要:話す能力はあるのに、学校など特定の場面で一貫して話せない。通常は家庭では話せる
  • 原因:DSM-5で不安症群に分類。反抗やわがままではなく、強い不安により話せなくなっている
  • 疫学:国内の大規模調査では小学生の約0.15%。2〜5歳での発症が多く、女児にやや多い傾向
  • 分類:特定の場面で話せない場面緘黙と、家庭を含む全場面で話せない全緘黙の2型に分かれる
  • 背景:不安の強い気質が基盤にある。二言語環境や自閉スペクトラム症、言語発達の遅れも関与
  • 症状:筆談や身振りが使える例から、全く反応できない例まで。体が固まる緘動を伴うことも
  • 診断:家庭と学校での発話の差を確認。1か月以上持続し、言語の知識不足では説明できない
  • 鑑別:自閉スペクトラム症、言語症、吃音、難聴などと区別。成人発症では器質疾患も考える
  • 治療:刺激フェイディングなど段階的な行動療法が中心。重症例や年長児ではSSRIの併用も検討
  • 支援:話すことを強いず、筆談など代替手段を保障。家庭・学校・医療が連携し早期介入する
  • 予後:早期介入ほど予後良好。未治療では成人まで残り、社交不安症や不登校につながりうる


(投稿者 川崎)

2026-11-06

ホスト・メモ No.3&4

  • 定期開催しているウェブ講義「フィジカル広場✨LIVE」の要約です。 
  • 「明日から使える4つのポイント」を中心にA4一枚にまとめています。
  • 商業目的を除き院内勉強会や後輩指導などでご自由にご利用ください。


😎 ホスト・メモの一覧 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2026-11-05

今週の一枚 🎯

労作時の息切れと心雑音で紹介受診

😦 解説
  • 心室中隔の基部から中部に肥大あり
  • 僧帽弁が収縮期に前方運動している
  • 両者から閉塞性肥大型心筋症を疑う
  • (不自然な乳頭筋の付着部位も合致)
  • よく見ると下側壁に壁運動低下あり
  • 冠動脈造影ではその灌流血管に狭窄
  • 冠動脈バイパス+心筋切除術を実施

😶 臨床現場
  • 非対称性中隔肥大(ASH: asymmetric septal hypertrophy)と僧帽弁収縮期前方運動(SAM: systolic anterior motion)がそろえば、閉塞性肥大型心筋症を考えます。
  • 肥大型心筋症では、本例のように僧帽弁複合体(mitral valve apparatus:弁尖・弁輪・腱索・乳頭筋)の異常を伴うことも稀ではありません(Circulation 1992;85:1651-60)。
  • 受診契機となった「労作時の息切れ+心雑音」は閉塞性肥大型心筋症で説明できますが、偏在性の左室壁運動異常もあり、当初から冠動脈疾患の合併を疑っていました。
  • 目立つ(稀な?)所見(SAM+ASH)にはつい目を奪われがちですが、たまたま合併しているありふれた疾患を見逃さないことの大切さを、改めて実感した症例でした。

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-11-04

ネガティブ・ケイパビリティ Negative Capabilities(NC)

  • 概要:答えの出ない事態に耐える力。性急に帳尻を合わせず、宙ぶらりんを持ちこたえる能力。
  • 由来:詩人キーツがシェイクスピアに見出した「負の力」。精神分析医ビオンが臨床に広めた。
  • 対比:迅速・的確な問題解決力(ポジティブ・ケイパビリティ)は急性期医療では欠かせない。
  • 必要:この力がないと、解決できない問題から目を背けるか、躍起になって燃え尽きてしまう。
  • 応用:苦情を訴える患者の話を、なだめずただ聴くと場が収まる。正論で遮ると火に油を注ぐ。
  • 問題:職場研修は問題解決力の育成に偏りがち。心理的安全性のある組織づくりは管理者の責任。
  • 姿勢:結論を焦らず、わからなさに耐えて考え続ける。処理する力ととどまる力を使い分ける。

ネガティブ・ケイパビリティと病院総合診療医
(投稿者 川崎)

2026-11-03

心音関連:第30回日本心不全学会学術集会より

📢 心音を演題名に含む発表(5演題)

[SP7-3] 心音・心電AI解析による心負荷指数の多様な臨床シーンへの応用 (関東中央病院 循環器センター)
  • AMI社の心音計(Cardio-EGG)は、心音・心電データの深層学習による波形解析から弁膜症に加えて心負荷指数(BNP 100 pg/mL超の推定を目標に開発)を算出する。慢性期では一部を除きBNPとの相関は良好で、急性期にはBNPでは捉えきれない臨床変化にも追随した。BNP/ANPを補う指標となる可能性があるが、各シーンでのサブ解析とメカニズム解明が今後の課題である。

[LB1-6] 心音・心電ベースAI「eBNP」モデルからの心不全予後予測の検討 (神戸大学大学院医学系研究科 循環器内科学分野)
  • Cardio-EGGの心音・心電情報から血中BNP値を推定するAIモデル(Estimated BNP:eBNP)について、心エコーとCardio-EGGを同時記録した488例でeBNP重症度を5段階に分類し、全死亡または心不全入院を主要評価項目として検討した。eBNP重症度の追加によりC-indexは0.692から0.749に向上し、非侵襲的リスク層別化により専門施設への迅速な紹介につながる可能性が示された。

[O22-3] 心音図由来心疾患指数を用いた心不全リスク評価の可能性:BNPとの関連解析  (加治木温泉病院)
  • 遠隔医療支援システム「クラウド超診」に実装された心疾患指数(BNP関連情報および心エコー所見のAS・MR・ARを学習)が、BNPに反映される心血管負荷を捉えうるかを検討した。心疾患指数は、年齢や腎機能の影響を受けるBNPの解釈を補完し、BNPに反映される心血管負荷を捉えるデジタルバイオマーカーとなる可能性が示唆された。

[MO4-5] 心音・心電由来心負荷指数のBNP/hANP関連と透析評価  (関東中央病院 循環器病センター)
  • 同日に心音図とBNPまたはhANPを測定した外来患者129例(平均76歳、男性72%、BNP中央値38.1 pg/mL、hANP中央値54.1 pg/mL)で、心負荷指数はBNP(r=0.575)およびhANP(r=0.473)と相関した。心不全患者の心負荷評価や、透析患者の体液・除水評価の補助指標となる可能性がある。

[MO25-7] 心臓血管外科術後における心音図検査装置を活用した心不全管理の有用性  (関東中央病院 リハビリテーション室)
  • 心音図検査装置AMI-SSS01シリーズ(心音計)の心負荷評価を術後心不全管理に用いた症例報告。80歳代女性、急性心筋梗塞(LVEF 26%、NT-proBNP 21,790 pg/mL)に対し待機的CABG(LITA-LAD、SVG-OM)を施行。POD32に心不全を発症し、POD83に自宅退院した。心音計は心エコーを補い、ベッドサイドで非侵襲的かつ頻回に心機能を客観視できるデバイスとなりうる。

💓 心音を抄録に含む発表(上記演題を除く5演題)
  • [JS7-1] CIEDs遠隔モニタリングによる心不全再入院予防 ―遠隔モニタリングデータを活用した看護介入と多職種連携― (埼玉医科大学国際医療センター)
  • [JS7-2] Ⅲ音と活動量の遠隔モニタリングによる心不全関連イベントの早期予測 (A-wave株式会社/大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科)
  • [SY4-2] 聴診DX:心不全デジタルバイオマーカーの開発と社会実装 (AMI株式会社/加治木温泉病院 循環器内科)
  • [SY7-2] 植込み型心臓デバイスにおける遠隔モニタリングの現状と課題 (埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科)
  • [O6-4] BNP分布に対する年齢・腎機能・Hbの影響:リアルワールドデータを用いた検討 (加治木温泉病院)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-11-02

論文 🏆

  • 心臓聴診の基本は5点とされています(聴診の順番は心基部からでも心尖部からでもOK)。しかし5点をしっかり聴診していると時間がかかります。そこで2点に絞ったシンプル聴診法
  • 心音図と心エコー図を同時期に行った1000余のレポート比較を行い、弁膜症の診断では、心尖部+2LSBまたは心尖部+3LSBは、5点聴診法と比較して非劣性であることを示しました。

Highlights
  • Two-site auscultation was noninferior to five-site auscultation for detecting VHD.
  • Performance was preserved at the apex and the second or third left sternal border.
  • Differences in sensitivity and specificity were within the −3% noninferiority margin.
  • Apex-containing site pairs consistently achieved the highest sensitivity.
  • Prospective validation with conventional stethoscopes in primary care is needed.

👉 追加コメント
  • 筆頭著者の林先生が当院の初期研修医時代にまとめられた研究です(その後、循環器内科を専攻😊)
  • 2LSBと3LSBはⅡ音肺動脈成分の亢進の判定に必須、心尖部はⅢ音やⅣ音の聴診に必須のため好都合
  • 5点中、2点の全ての組み合わせも調べましたが、心尖部+2LSBまたは心尖部+3LSBの診断能がベスト
  • 弁膜症以外の雑音を生じる病態(大動脈弁硬化やHOCM、人工弁、CHDなど)を含めても結果は不変

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-11-01

ホスト・メモ No.1&2

  • 定期開催しているウェブ講義「フィジカル広場✨LIVE」の要約です。 
  • 「明日から使える4つのポイント」を中心にA4一枚にまとめています。
  • 商業目的を除き院内勉強会や後輩指導などでご自由にご利用ください。


😎 ホスト・メモの一覧 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2026-10-31

先天性好中球減少症 Congenital Neutropenia

  • 概要:好中球の数または機能の先天異常で、乳幼児期から細菌や真菌の感染を反復する疾患群。
  • 減少:重症先天性好中球減少症は骨髄の成熟障害による。一部は骨髄異形成や白血病へと移行。
  • 周期:周期性好中球減少症は約三週ごとに減少。単回採血では見逃しうるため連続測定が必要。
  • 接着:白血球接着不全症は好中球が血管外に出られず、臍帯脱落遅延や膿のない感染を呈する。
  • 殺菌:慢性肉芽腫症は活性酸素の産生障害による。ブドウ球菌やアスペルギルスに感染しやすい。
  • 顆粒:チェディアック・東症候群や好中球二次顆粒欠損症など、顆粒の異常による病型もある。
  • 症状:乳児期から皮膚膿瘍、肺炎、肝膿瘍、歯肉炎を反復する。ウイルス感染は比較的少ない。
  • 検査:好中球数推移と骨髄像を確認。活性酸素産生能や表面抗原を測定し、遺伝子検査で確定。
  • 治療:好中球減少には刺激因子製剤、慢性肉芽腫症には予防内服。根治療法は造血幹細胞移植。


(投稿者 川崎)

2026-10-30

性交時の副症状と神経バランス

🍥 勃起と射精のメカニズム
  • 勃起:副交感神経の働きで、陰茎海綿体に血液が充満して生じる
  • 切替:オーガズム直前、交感神経(下腹神経Th10-L2)が優位へ
  • 移送:精管・精嚢・前立腺の平滑筋が蠕動し、精液を後部尿道へ
  • 連動:交感神経で膀胱出口の括約筋が締まり、膀胱への逆流防止
  • 反射:精液が後部尿道に達すると、陰部神経(S2-4)の仙髄反射
  • 射出:球海綿体筋などが約0.8秒間隔で収縮し、精液を体外へ射出
  • 弛緩:射精後は交感神経でらせん動脈が収縮し海綿体洞の内圧低下
  • 還流:白膜による静脈圧迫が解け、血液が静脈へ流出し元の状態へ
  • 要点:勃起は副交感、射精は交感(陰部神経=体性神経も一部関与)

🐰 性交に関連する症状
  • 頭痛:オーガズム時の雷鳴頭痛では、くも膜下出血やRCVSを除外
  • 一過性全健忘:性交時の内頸静脈逆流で、海馬がうっ滞するため?
  • 胸痛:心筋酸素需要の急増で冠攣縮や狭窄による狭心症・心筋梗塞
  • 不整脈:カテコラミンサージで、洞頻脈・期外収縮・PSVT・AFなど
  • 精液アレルギー:女性がPSAに対するIgE抗体で即時型反応ありえる
  • 気管支攣縮:性交の労作・情動や精液アレルギー他で誘発ありえる

(投稿者 浅野/川崎)

2026-10-29

今週の一枚 🎯

大動脈弁置換術後の症例

😦 解説
  • 胸骨正中にある切開痕(いわゆるジッパー瘢痕)は開心術後に合致
  • よく見ると左傍胸骨部に小さい瘢痕(下図矢印)と隆起(下図〇)
  • 本例は原因不明の失神に対しループレコーダー植込み後(下図参考)
  • 3年が経過し失神の再発はなし/電池寿命のため近日中に抜去予定


😶 植込み型ループレコーダー vs MRI
  • 国内で利用できる主要な植込み型ループレコーダー(Implantable loop recorder: ILR)は基本的に「条件付きMRI対応(MR Conditional)」で、ペースメーカ/ICDのような設定変更(MRIモード)は不要です。ただしこれはMRI撮影では機械が壊れないという意味で、不整脈の記録が全く影響を受けないという意味ではありません。MRIによるノイズが不整脈として誤記録されたり、本来の重要なエピソードが上書きされる可能性があるため、当院では検査前後でデバイスをインテロゲートして、保存エピソードを確認するようにしています。

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-10-28

CTRCD(cancer therapy-related cardiac dysfunction)
がん治療関連心機能障害

  • がん治療関連心機能障害:抗がん剤や放射線治療による心機能障害
  • 2022年ESCガイドラインで症候性(心不全)と無症候性に分けて定義
  • 無症候性はLVEF低下に加え、GLS低下やバイオマーカー上昇も評価
  • LVEF<40%は重症、40〜49%は中等症、≥50%でGLS低下等は軽症
  • 原因はアントラサイクリン(不可逆的)、抗HER2薬(可逆的)など
  • 治療前のリスク評価と、心エコー・トロポニン等による定期監視が重要
  • 中等症以上はACE阻害薬/ARB・β遮断薬を開始し、腫瘍医と協議


- イマチニブによる心毒性のメカニズム -
チロシンキナーゼ阻害薬イマチニブは ABL キナーゼを阻害することによって小胞体膜貫通型キナーゼ PERK の活性亢進 を促して ER ストレスを悪化させ,心筋細胞を傷害する方向に働く.

(投稿者 川崎)

2026-10-27

エレキソルト

  • キリンが明治大学宮下研究室と共同開発した「減塩サポート食器」
  • 微弱電流(0.1〜0.5mA)で減塩食の塩味を約1.5倍に感じさせる
  • 電流で食品中のナトリウムイオンを舌に集め塩味を増強する仕組み
  • 製品はスプーン(24,750円)とカップ(26,950円)、強度は3段階
  • 医療機器ではなく、ペースメーカ装着者と18歳未満は使用不可
  • 心疾患・てんかん等の発作性疾患・妊娠中の方なども使用対象外
  • CES Innovation Awards 2025受賞、2026年にアジア展開を予定

参考)DX Magazine/BCN+R、他

減塩食の塩味・うま味を増強するデバイス “エレキソルト”

(投稿者 川崎)

2026-10-26

循環器フィジカル - 100本ノック -


循環器領域の身体所見を学習するために作成された無料アプリ「循環器フィジカル -100本ノック-」の動画版です.2026年4月から循環器Physical Examination講習会の公式SNSに毎週金曜日にアップしています.こちらのコンテンツにも2週分ずつまとめてアップします.

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(投稿者 川崎)

2026-10-25

肺リンパ脈管筋腫症 Lymphangioleiomyomatosis(LAM)

  • 平滑筋様のLAM細胞が肺・リンパ系で増殖し肺に多発嚢胞を形成
  • TSC1/TSC2遺伝子異常によるmTOR経路の活性化が病態の中心
  • 結節性硬化症に伴うTSC-LAMと孤発性LAMに分類(指定難病89)
  • 主に妊娠可能年齢の女性に発症し、平均発症年齢は30歳台中頃
  • 症状は労作時呼吸困難・反復性気胸・乳び胸水・血痰などが多い
  • 胸部CTの両肺びまん性薄壁嚢胞と血清VEGF-D高値が診断に有用
  • 治療はシロリムス(mTOR阻害薬)、進行例は在宅酸素・肺移植



(投稿者 川崎)

2026-10-24

軽症高額該当(通称、軽症者特例)

  • 「軽症高額該当」とは指定難病医療費助成の特例で、診断基準を満たすが重症度分類を満たさない「軽症者」でも、医療費が高額なら支給認定される制度のこと
  • 基準は33,330円超が3か月以上:申請月以前12か月以内に、指定難病の医療費総額(10割分)が33,330円を超える月が3か月以上(3割負担で窓口約1万円)
  • 算定のポイント:指定難病分のみ計上し、介護保険サービス費は含むが、入院時食事・生活療養費、文書料、保険外診療は除外。助成内容は通常承認と同じ
  • 別制度「高額かつ長期」とは認定済みで、医療費総額(10割分)が5万円を超える月が12か月に6回以上ある場合、自己負担上限額が軽減(一般所得Ⅰ以上)

(投稿者 川崎)

2026-10-23

夢叶う3 Dreams come true 3

  • 心不全マネジメントでは負荷を併用した頚静脈の座位定性法が有用です
  • そこで5-ステップで学ぶ無料アプリ「シンプル頚静脈」を2024年に公開
  • そのアプリがヨーロッパの心不全専門誌に掲載(2025 Aug;12:3193-4)
  • 今回、アメリカの総合内科誌にも掲載(Am J Med 2026 Nov;139:e334)

😎 独り言
  • 本邦の心不全ガイドライン(2025.3更新)への収載が一つ目の「夢叶う」で,欧州の専門誌へのアプリ掲載が二つ目の「夢叶う」でした.
  • 今回の米国進出が三つ目の「夢叶う」になりました.そしていつか,海外のガイドライン(ACC/AHAとESC)への収載…これが最終目標😃

(投稿者 川崎)

2026-10-22

今週の一枚 🎯

体動困難でERに搬入された高齢男性

👀 解説
  • 心電図の胸部誘導で上に凸の軽度ST上昇
  • ベッドサイド心エコーで壁運動異常なし
  • 採血で慢性腎臓病の悪化あり(eGFR 11)
  • 補正後Ca 16.0 mg/dl(基準値:8.8-10.1)
  • 骨粗鬆症でエルデカルシトールを内服中
  • 最終診断は脱水および薬剤性の高Ca血症

👉 復習:高Ca血症 → QT短縮(一見,ST上昇様)

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-10-21

Katayama fever 片山熱

  • 住血吸虫の初感染で生じる急性住血吸虫症で、全身性の過敏な反応が本態
  • 名称は日本住血吸虫症の流行地だった広島県の片山地方(福山市)に由来
  • 流行地の淡水曝露から2~8週後、虫体の成熟・産卵期に免疫複合体反応
  • 発熱・蕁麻疹・乾性咳嗽・下痢・肝脾腫を呈し、著明な好酸球増多が特徴
  • 初期は虫卵・抗体ともに陰性が多く、曝露歴と好酸球増多で臨床的に疑う
  • 確定は虫卵検出だが初期には陰性が多く、抗体陽転やPCRなどで補完する
  • 治療はプラジカンテル(6~8週後に再投与)+過敏反応にステロイド併用
  • 放置で慢性化し、門脈圧亢進症や虫卵塞栓による肺高血圧症の原因となる


ウガンダで実習をしていた24歳のオランダ人医学生
(投稿者 川崎)

2026-10-20

BEAMSビームス

  • 日本子ども虐待医学会による医療機関向け虐待対応啓発プログラム
  • 虐待を疑った際に医療者が取るべき対応をオンライン講義で学習
  • beamの意味は《光の束》の他に《屋根の梁》や《心からの笑顔》
  • 令和3年度の厚労省臨床研修指導GLの中に受講が望まれると明記
  • 受講者を役割に応じて3つのステージに分類している(下図参照)
  • 日本子ども虐待医学会でBEAMSの詳細の確認や受講の申込が可能

ビームス:医療機関向けの虐待対応プログラム

(投稿者 川崎)

2026-10-19

日本初の聴診器


  • 中央の写真にある木製の筒が本物です。隣にある透明の筒は、内部構造がわかるように作られたレプリカです。これは出島和蘭商館跡にもありました。
  • 書籍の下にあるレプリカは実際に手に取ることができ、持ってみると思ったより重みあり。実際に心音を聴診してみたかったのですが一人なので断念

(投稿者 川崎)

2026-10-18

ラングフルート(Lung Flute®)

  • 呼気で低周波の音波を発生させ排痰を促す電源不要の携帯型医療機器
  • 長さ約37cmのプラスチック管内のリードが、呼気で振動して音を出す
  • 16~22Hz・110~115dBの音波が気管支を伝わり分泌物を振動・流動化
  • 用途は主に2つ:COPD・慢性気管支炎の排痰促進と検査用の喀痰誘発
  • 結核菌検査の喀痰誘発で高張食塩水吸入法と遜色ない効果(国内研究)
  • 結核を疑う患者に対し排痰を促し培養検査等を実施した場合は44点(※) 

引用)Clin Transl Med 2014;3:29、他

- 製品紹介動画 -

(投稿者 川崎)

2026-10-17

ハプトグロビン Haptoglobin

  • 某医師「ハプトグロビンって何をしてるんだっけ?」
  • 生成AI「血中に遊離したHbを捕まえる蛋白質です」
  • 某医師「そうそう、確か溶血時の指標だったよね?」
  • 生成AI「はい、特に血管内溶血では重要な指標です」
  • 某医師「えっと、溶血性貧血で高くなるんだっけ?」
  • 生成AI「その逆です。ハプトグロビンは低下します」

👿 ハプトグロビン(Hp)
  • 主に肝臓で合成される血漿タンパク質で血漿中に放出された遊離Hbに結合
  • ヘモグロビンとの複合体は主にマクロファージに取り込まれ,処理される
  • 血管内溶血では遊離ヘモグロビンと結合・消費により血中濃度が低下する
  • ただし血管外溶血でも低下することがあり溶血部位をHp値だけで判定不可
  • 溶血を疑う時はLDHや間接ビリルビン,網赤血球数,Hb他と合わせて評価
  • 溶血性貧血に加え重度の肝障害による産生低下や先天性欠損でも低値を示す
  • 急性期タンパク質でもあり感染症や炎症では血中濃度が上昇することがある

ヘモグロビンの腎血漿クリアランス (モルモット)
ハプトグロビン(Hp)が存在すると、遊離HbはHb-Hp複合体内に隔離され長期間循環中に留まります。一方、遊離ヘモグロビンは血漿中で容易に二量体に解離し、腎尿細管への鉄沈着(茶色)とヘモグロビン尿症につながります。これは対照動物またはHpが投与され、HbがHb-Hp複合体内に隔離されたままの場合には観察されません。

(投稿者 川崎)

2026-10-16

ミティキュア・ダニ舌下錠

  • ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療薬(鳥居薬品)
  • ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの抽出物を含む(添付文書)
  • 皮膚反応又は特異的IgE抗体でダニアレルギー性鼻炎の確定診断要
  • 1週間は3,300JAUを1日1回1錠、2週目以降10,000JAUを1日1回1錠
  • 舌下で1分間保持した後に飲み込む(5分間はうがいや飲食を回避)
  • 1年以上投与しても治療効果が得られなかった場合は継続を要判断
  • 投与医師は前もって講習(e-learning)を受けて登録する必要あり
  • 名前(MitiCure)の由来はダニ(mite)を治癒(cure)の造語です
  • 類似薬はアシテア(塩野義)、スギ花粉はシダキュア(鳥居薬品)

- 各薬剤の治療経過は概ね良好 -
(投稿者 川崎)

2026-10-15

今週の一枚 🎯

不整脈で入院中の高齢者が数日前から頚部痛を自覚


(投稿者 川崎)

2026-10-14

馬鈴薯肝ばれいしょかん Potato liver

  • 肝臓の表面に大小不揃いの粗大な結節が突出し,ジャガイモのような肉眼像を呈する病態
  • 古い表現で現在の形態学的分類における大結節性肝硬変(macronodular cirrhosis)と共通
  • 不規則な結節(数mm~数cm)が生じ線維性隔壁で肝正常構造が改築され肝表面に凹凸
  • 馬鈴薯肝(potato liver)という形態に特異的な治療法はなく、肝硬変に対する治療を行う

- 馬鈴薯肝を呈した44歳女性 -

(投稿者 川崎)

2026-10-13

長期収載品の選定療養

  • 患者さん「前回から,薬局での支払いが増えました」
  • 担当医師「えっ?  Aさんのお薬は変えていませんが」
  • 患者さん「6月から薬のルールが変わったそうです」
  • 担当医師「薬のルール?  変わった?  何だろう??」

🏁長期収載品の選定療養
  • 後発品(ジェネリック)がある先発品を患者が自分の希望で選んだ場合、通常の自己負担とは別に「特別の料金」がかかる制度
  • 2024年10月に始まり、2026年6月からその水準が変更された(患者負担が先発品と後発品の価格差の1/4から1/2へ上げられた)
  • たとえば価格差が1,000円なら、これまでの追加負担は250円(+消費税)であったが、2026年6月からは500円(+消費税)
  • 対象となる薬は、後発品の発売から「5年以上」または「置換率50%以上」が基本的な条件(具体的な対象医薬品リスト)
  • もちろん医療上の必要性がある場合には、処方箋の「変更不可(医療上必要)」にチェックして対応するという使い分けになる

【窓口での案内チラシ】

(投稿者 川崎)

2026-10-12

循環器フィジカル - 100本ノック -


循環器領域の身体所見を学習するために作成された無料アプリ「循環器フィジカル -100本ノック-」の動画版です.2026年4月から循環器Physical Examination講習会の公式SNSに毎週金曜日にアップしています.こちらのコンテンツにも2週分ずつまとめてアップします.

👻「フィジカルノック」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-10-11

医療安全管理部門等が把握すべき重大事象:A類型とB類型

💣 3つの類型
  • A類型:患者への影響度が大きく、確実に回避する手段が普及している事象
  • B類型:患者への影響度が大きく、回避可能性は事象により異なる事象
  • C類型:患者への影響度が比較的小さい事象

重大事象の定義:A類型とB類型
(投稿者 川崎)

2026-10-10

頚静脈波形のy谷

  • 先日、身体所見のセッションで本物の匠の先生の講演を聞きました。自分の講演と重なったため、一部しか視聴できませんでしたが、とても深い解説でした。
  • 忘れないためにもここに記録しておきます。頚静脈波形の復習 ➜ v波≒右房への流入、y下降≒右室への流入(その他の詳細は以前の投稿を参照してください)

🚨 正常例でy下降が小さい2つの機序
  1. 正常では右房v波圧は2〜3 mmHgと低く、三尖弁開放時のRA圧(v波)−RV圧較差が小さい。 よってy下降は小さい
  2. 右房のバッファー効果。正常の右房は伸び縮みしやすいため、容量変化に伴う圧変化が乏しい。よってy下降が小さい。

🚩 右房圧(v波)が高いにもかかわらずy下降が減弱消失する場合
  • 拡張早期からの右室流入障害の存在 → 三尖弁狭窄・肥大型心筋症・心タンポナーデ (※右房圧の上昇した心膜液貯留例でy下降があれば心タンポナーデが否定できる)

(投稿者 川崎)

2026-10-09

心房性クリック Atrial click

💁 論文抄録のAI訳
  •  32例の心房性クリック症例を提示し、その臨床像と考えられる成因について検討した。「心房性」クリックとは、心房収縮期に低周波成分を伴わずに記録される鋭い音(snappy sound)と定義した(Figure 1)。振幅の大きい第Ⅳ音の高周波成分(Figure 2)は除外した。
  • 基礎疾患は多彩であり(Table 1)、心房性クリックを有する症例に共通する特異的な臨床像は、いずれの疾患単位においても認められなかった。
  • 心房性クリックは胸骨左縁第3肋間で最もよく記録され(Figure 8)、P波開始後130msec(時点)に出現した。第Ⅳ音との一致は32例中13例に認められたが、そのタイミングは一定せず、両者が完全に同時に生じることはなかった。
  • 心房性クリックは、ごく僅かな心膜摩擦音を伴って存在することがあり、自然経過により、あるいは薬理学的な介入や呼吸により、摩擦音へと変化することがあった。さらに、活動性心膜炎の摩擦音に続いて心房性クリックが出現する例、あるいはその逆の例もみられた。心腔内心音図では、心房性クリックが心腔内で見出されることは稀であった。収縮中期〜後期クリックとは対照的に、心房性クリックは心膜起源であると考えられた。

 
😑 独り言
  • クリックと言えば僧帽弁逸脱の収縮期クリックです(自験例).体位でかなり変化するため油断はできません(過去の投稿).されにクリックは(稀ながら)拡張期にも出現することがあります(自験例).そして今回,心房性クリックとは…The click (plot) thickens(謎はますます深まる)

(投稿者 川崎)

2026-10-08

今週の一枚 🎯 あれ? 😐いつもと違う

ふらつきと息切れで来院(座位)

😦 解説
  • 座位で右の鎖骨上窩に拍動あり
  • 頚部の正中にも隆起(前頸静脈)
  • よく見ると拍動は大きさが変動
  • 稀に隆起が大きくなる(矢印)
  • キャノンa波(大砲A波)疑い
  • ECGで3度房室ブロックを確認

😶 臨床現場
  • 本例は近医クリニックで徐脈を指摘されて、当科を紹介受診したご高齢の方です。症状はなく、何度か行った長時間心電図記録で最大の心室静止は2-3秒であったため、経過観察中でした。
  • 今回の受診も、3ヵ月毎の定期受診でした。直前に行っていたハートノート(1週間型のホルター心電図)の結果に問題がないことを確認後に、患者さんに診察室へ入ってもらいました。
  • しかし入室から椅子に座られる間に、以前にはなかった頚部の拍動に気が付きました。その後、ご本人から、1週間前からふらつき・数日前から息切れがあることを教えてもらいました。
  • 完全房室ブロックだけならcannon a waveを認めるのみです。本例はその後、徐脈による心不全を合併したため、座位で内頚静脈の拍動が陽性になったと思われました。症状にも合致

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-10-07

🏆 論文

  • 当院初期研修医の大野先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
  • 左室駆出率が保持された非代償性心不全(HFpEF)を呈した70代後半の患者
  • 冠動脈CT検査では右バルサルバ洞から起始する単一の冠動脈と思われました
  • CAGで右冠動脈から良好な側副血行路を介した左冠動脈の逆行性灌流を確認
  • 教訓:先天性LMCA閉鎖症は典型的な狭心痛を伴わない高齢者にもあり得る

🚀 独り言
  • 実はLMTの先天性閉塞は数年前にも経験したことがあったため(40代男性/その症例の論文 → コチラ)、本例の診断は比較的スムーズでした。
  • 本例を再び論文化した理由は、その年齢でしょうか。本疾患は小児~壮年に多く、検索範囲では最高は70代の3例でした(本例は78歳で最高齢)

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(投稿者 川崎)

2026-10-06

論文 🏆

  • 当院初期研修医の山中先生が循環器内科で経験された症例が出版
  • 完全房室ブロックを生じた3日後に気胸を発症したCOPD症例です
  • 心疾患の発症後に呼吸様式が変化して気胸を生じる可能性を言及

- 来院時の心電図と胸部X線 -

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(投稿者 川崎)

2026-10-05

血液循環説:そして、ハーヴェイへ

  • 現在では、心臓から出た血液が体を一周して心臓にもどってくるという血液循環は誰もが知る事実です。ただしこの常識を1628年にイギリスのウィリアム・ハーヴェイが『動物の心臓ならびに血液の運動に関する解剖学的研究』で証明するまでには、長い葛藤がありました。
  • 最近、私の元上司の、またその上司の先生からお借りした書籍『心臓とこころ:文化と科学が明かす「ハート」の歴史』(ヴィンセント・M・フィゲレド著、坪子理美訳)にその詳細が記載されていました。血液循環説で大きな役割を果たした3人の人物を取り上げました。

ガレノス(Galenus, 129年頃~216年頃)― 1400年続いた「医学の権威」
  • ローマ帝国時代のギリシャ人医師。当時は人体解剖が禁じられていたため、サルやブタなどの動物解剖を行い、それまでは「空気が流れている」と考えられていた動脈の中に血液が流れていることを示した。
  • 膨大な著作を残し、その体系は中世ヨーロッパやイスラム世界で約1400年間、絶対的な権威となった。しかし血液は肝臓で作られ、全身で消費されると考えた(循環という概念はなかった)。また血液は右心室から左心室へ、心室中隔の「目に見えない小孔」を通って移動すると考えた。

アンドレアス・ヴェサリウス(Andreas Vesalius, 1514~1564年)― 近代解剖学の父
  • ブリュッセル生まれの医師で、20代でイタリアのパドヴァ大学の解剖学教授となる。当時の講義は、教授がガレノスの本を読み、助手が解剖するのが普通だったが、ヴェサリウスは自ら解剖した。1543年、全7巻の解剖書『人体の構造について(De humani corporis fabrica)』を出版。
  • ガレノスの記載に約200か所の誤りがあることを、人体の観察にもとづいて指摘した。1555年の第2版では、心室中隔の小孔についても「見つけることができない」と疑問を呈した。晩年はスペイン王の侍医を務め、エルサレム巡礼の帰路、ギリシャのザキントス島で亡くなった。
ミカエル・セルヴェトゥス(Michael Servetus / ミゲル・セルベト, 1511年頃~1553年)― 肺循環を記し、火刑に処された人
  • スペイン・アラゴン地方出身の医師かつ神学者であった。パリで医学を修め、ヴェサリウスと同じ解剖学者ヨハン・ヴィンター・フォン・アンダーナッハに師事した。血液は右心室から心室中隔を通るのではなく、肺を通って空気と混ざり、左心へ戻ると記した。
  • この記述は、医学書ではなく神学書『キリスト教の復元』の中にあった。セルヴェトゥスは三位一体(父・子・聖霊を唯一の神とする教義)を否定したため、カトリックおよびプロテスタントの双方から異端とされ、1553年10月27日、自著とともに火刑に処された。

(投稿者 川崎)

2026-10-04

心音クイズ:Q5

心音の無料ゲーム「心音マイスター」より


💫 解説
  • 馬の駆ける音に似ているためギャロップ(奔馬調)と呼ばれている
  • その本体はS3やS4を伴う頻脈(聴診だけでS3かS4かの鑑別は困難)
  • 非代償性の心不全を示唆し、本例も後に重篤な心不全と診断された

😐 ギャロップについて
  • Ⅲ音とⅣ音は共に低調音であるため、心尖部で聴診器のベル(小さいほう)を用いて聴取する。騒がしい救急室での認識は必ずしも容易ではないが、診断的な意義が高い。
  • 過剰音がS3だけなら心室性ギャロップ、S4だけなら心房性ギャロップと言う。S3とS4が共存した四部調律(本例)や、S3とS4が重なった重合奔馬調という病態もある。

(投稿者 川崎)

2026-10-03

4q欠損症候群 4q deletion syndrome

  • 4番染色体長腕(4q)の部分欠失により生じる先天性染色体異常症候群
  • 別名は4番染色体長腕部分モノソミーやWolf-Hirschhorn症候群など
  • 頻度は1/50,000人程度で女児:男児=2:1(ただし未診断例が多い)
  • 欠失の範囲・部位により重症度・表現型が多彩:例、遠位部は心疾患
  • 主な所見は特徴的顔貌・先天性心疾患・精神運動発達遅滞など(下図)
  • アレイCGHやFISH法で微細欠失を検出し、核型分析と併用し確定診断
  • 治療は対症療法が中心で、心奇形には外科的修復、発達遅滞には療育


- 患者の臨床所見 -
a:上向きの眼瞼裂、広い鼻梁、前向きの鼻孔、広い鼻翼、滑らかな人中、滑らかな鼻唇溝、薄い唇、水平な口角、広い眉毛。b:耳介後転、下顎後退症、長いまつげ。c:高口蓋。d:犬歯の無形成と下顎の中切歯と左側切歯の癒合。e:母斑と乳頭の間隔が広い。f:背側後弯症と過前弯症。g:親指の近位埋没。h:陰核肥大(AI訳)

👻 初報問題

(投稿者 川崎)

2026-10-02

プレアルブミンの深堀:ATTR関連

  • 先日,カンファレンスでATTR心アミロイドーシスに関し,プレアルブミン(=TTR)について混乱がありました。AIと一緒に整理してみたので忘備録として下記にアップしておきます.
  • なおTTRは血中では主にホモ4量体として存在し、T4やビタミンAの輸送を担います。4量体が単量体に解離し、単量体がミスフォールドして、オリゴマーを経てアミロイド線維として沈着します。

👺 プレアルブミン値 vs 診断
  • ATTRwtの診断時TTR中央値は23 mg/dLで、正常下限付近(基準18–45 mg/dL)にとどまった(Circ Heart Fail 2018)。別の米国研究(45例)では、ATTRwt患者のTTRは対照と差がなかった(Circ Heart Fail 2018)。
  • 診断は、骨シンチとM蛋白の除外による非生検診断アルゴリズムが基本であり、血中TTRはその項目に含まれない(Circulation 2016)。

👹 プレアルブミン値 vs 予後
  • 生検で確定したATTRwtでは、診断時の血中TTRが低いほど生存期間が短く、独立した予後予測因子であった。経時的なTTR低下は心機能の悪化と対応していた。TTR <18 mg/dLの群では生存期間中央値2.8年、≥18 mg/dLの群では4.1年であった(HR 2.3)(Circ Heart Fail 2018)。
  • タファミジスを導入したATTRwt 169例では、ベースラインTTRが低いほど死亡リスクが高く(<18 mg/dLで高リスク)、導入30日後のTTR上昇幅が小さいほど(<7.5 mg/dL)心不全入院が多かった。両者がともに低値(ベースライン<18 mg/dLかつ上昇幅<7.5 mg/dL)の群でイベント率が最も高かった(Eur J Heart Fail 2026)。

👿プレアルブミン値 vs 薬力学的指標(基本:安定化薬で↑、サイレンサーで↓)
  • タファミジス:実臨床のATTR-CM 72例では、血中TTRが21.8から29.3 mg/dLへ34.5%上昇した(JACC CardioOncol 2021)。ATTR-ACTの事後解析では、80 mgで1か月時点に平均36.3%上昇し、30か月まで持続した。早期上昇が5 mg/dL大きいごとに全死亡のオッズは45.0%低下したが、TTR上昇の機序と臨床的意義はなお不明確とされている(Cardiol Ther 2026)。
  • アコラミジス:ATTRibute-CMでは第28日までに平均9.1 mg/dL上昇し、30か月まで維持された。早期上昇が5 mg/dL大きいごとに死亡オッズは31.6%低く、この関連はバリアントの有無、NYHA分類、NACステージ、ベースラインTTRで補正後も独立していた(J Am Coll Cardiol 2025)。
  • サイレンサー(ブトリシランなど):肝でのTTR産生を抑制するため、血中TTRは大きく低下する。HELIOS-Aでは3週以内に低下し、18か月後の定常状態で平均81.0%(トラフ)低下した。血清ビタミンAもTTRと並行して低下した(Amyloid 2023)。

(投稿者 川崎)

2026-10-01

今週の一枚 🎯

他院から転院してきた難治性心不全例

💘 解説
  • 心拡大と両側の胸水貯留は心不全に矛盾せず
  • よく見ると心陰影の中に人工構造物(拡大図)
  • これは Corvia® Atrial Shunt システム(IASD®)
  • 医原性に心房中隔シャント作成(下のCT参照)
  • おまけ:この心房シャントは条件付きMR対応


👂 心房シャントデバイス
  • IASD(Interatrial Shunt Device)は、左房(LA)から右房(RA)へと血流を導く経カテーテル的心房中隔デバイスのこと。HFpEF/HFmrEFでは運動時に左房圧が上昇しやすく、これが呼吸困難や運動耐容能低下の主因となります。そこで心房中隔に恒久的な交通孔を作成し、LA圧をRAへ逃がすことで、労作時のうっ血を軽減することを狙ったデバイス。欧州連合(EU)では販売されていますが,米国内での商業的流通は認められていません(現時点ではおそらく)。本邦でも未承認で現在,治験中(jRCT1080224934)だそうです。

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(投稿者 川崎)

2026-09-30

第74回日本心臓病学会学術集会より(出島メッセ長崎)

📢 心音を演題名に含む発表(2演題)

演題O-23-5 AI心音図計“超聴診器”を用いた非心臓手術術前心疾患スクリーニング(鳥取大学医学部附属病院 循環器内科)
  • 超聴診器は心音図解析から心雑音指数、心負荷指数を算出し、それらを総合した心疾患指数によって心疾患リスクを評価する。非心臓手術のため麻酔科術前スクリーニング外来655例中28例(4.3%)が循環器内科紹介基準に該当した。全例で心臓エコー検査が施行され、重症弁膜症2例(未指摘1例)、中等症弁膜症6例(未指摘5例)、慢性心不全1例を認め、術前介入またはフォローアップが施行された。持続性心房細動を10例(未指摘1例)に認め、軽度以下弁膜症のみの症例は15例認めた。

演題S16-5 8秒の心音図で右室容積を推定する新規指標(心雑音エネルギー指数:Cardiac Murmur Energy Index)の開発(済生会宇都宮病院 小児科)
  • AI心音図(超聴診器)を用いて拡張期雑音を記録し、当該領域のRMS音圧値を算出した。これを基準音圧比から平均dB値に変換し、雑音持続時間との積により面積積分値を算出し、新規指標「心雑音エネルギー指数(Cardiac Murmur Energy Index:CMEI)」と定義した。心臓MRIにより右室拡張末期容積指数(RVEDVI)を測定し、CMEIとの相関を解析した。CMEIはRVEDVIと強い正の相関を示した(r=0.85)。

💓 心音を抄録に含む発表(上記演題を除く7演題)
  • 演題[O-4-1] 冠動脈疾患の診断に対するⅣ音の臨床的意義 (松下記念病院 循環器内科)
  • 演題[PE2-2] 労作時呼吸困難の増悪を認めた肺動脈性肺高血圧患者 (高知高須病院 循環器内科)
  • 演題[PE3-1] 僧帽弁逆流におけるⅡ音分裂の臨床的意義 (医療法人社団 倫生会 みどり病院 循環器内科)
  • 演題[O-24-5] 弁膜症の診断に対する2点聴診法の有用性 (松下記念病院 循環器内科)
  • 演題[C-12-6] 特異的な聴診所見を呈したbileaflet mitral valve prolapseの一例 (倫生会 みどり病院 検査科)
  • 演題[P-1-22] 透析導入時の体液除水前後に超聴診器・心負荷評価を用いて観察した1例 (公立学校共済組合 関東中央病院 循環器センター・検査科)
  • 演題[C-16-6] 心不全モニタリング指標であるHeartLogicインデックスを活用した多職種による早期介入が有用であった一例 (順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-09-29

循環器フィジカル - 100本ノック -


循環器領域の身体所見を学習するために作成された無料アプリ「循環器フィジカル -100本ノック-」の動画版です.2026年4月から循環器Physical Examination講習会の公式SNSに毎週金曜日にアップしています.こちらのコンテンツにも2週分ずつまとめてアップします.

👻「フィジカルノック」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-09-28

フィジカル広場✨Podcast

  • ベッドサイドの診断技術を、身体所見の達人に教わる「フィジカル広場✨LIVE」の音声版です。
  • 視診・触診・聴診のコツを、耳から学ぶとういう、新たな試みです。無料かつながら学習可能


🎧 フィジカル広場Podcast  ▶︎ Spotify ▶︎ Apple Podcasts ▶︎ Amazon Music

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-09-27

Grad-CAMとLIME

  • ディープラーニングによる診断AIの判断基準はブラックボックス
  • この不透明さを可視化する代表的な2つの方法がGrad-CAMとLIME
  • Grad-CAM とは Gradient-weighted Class Activation Mappingの略
  • LIME とは Local Interpretable Model-Agnostic Explanationsの略

Grad-CAMとLIMEの大まかな比較
Grad-CAM LIME
得意なデータ 画像・動画 表形式データ・画像・テキスト何でも
モデルへの要件 内部(勾配)にアクセス可能なこと 出力さえ得られればよい
出力 ヒートマップ(粗い) 特徴量ごとの寄与度
弱点 局在精度が低い 結果が不安定


Grad-CAM:AIが心房細動と判定する時の注視部位


LIME:心電図診断時の注視部位

(投稿者 川崎)