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2024-01-03

🍺 アルコール疾患と臓器移植

🍶 肝臓移植
  • 非ウイルス性肝硬変に対する肝移植は有用と考えられる.アルコールの場合,肝移植後の再飲酒が問題となる.本邦におけるアルコール性肝硬変に対する肝移植後の解析では22.9%に再飲酒を認め,移植前禁酒期間が18ヶ月未満であることが再飲酒のリスク因子であった.そのため,アルコール性肝硬変の脳死登録には申請時に18ヶ月以上の禁酒を医療機関が確認していることが必要である(『肝硬変診療ガイドライン』2020年11月追補内容).日本のほとんどの施設では、生体肝移植の場合6か月が条件(慶應義塾大学病院KOMPAS). 

🍷 心臓移植  絶対的除外条件(2016年版心臓移植に関する提言)
  • 肝臓,腎臓の不可逆的機能障害
  • 活動性感染症(サイトメガロウイルス感染症を含む)
  • 肺高血圧症(肺血管抵抗が血管拡張薬を使用しても6 Wood単位以上)
  • 薬物依存症(アルコール性心筋疾患を含む)
  • 悪性腫瘍
  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体陽性

💁 移植に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-02-04

ペースメーカ関連の診療報酬(令和4年度/2022年度〜)

当院でもペースメーカの遠隔モニタリングを行なっています.先日,そのコストを尋ねられてとっさに答えられなかったため調べてみました.
  • 厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間、遠隔モニタリングを用いて療養上必要な指導を行った場合は、遠隔モニタリング加算として、それぞれ260点(ペースメーカー)又は480点(植込型除細動器又は両室ペーシング機能付き植込型除細動器)に当該期間の月数(当該指導を行った月に限り、11月を限度とする)を乗じて得た点数を、所定点数に加算する。(厚生労働省の令和4年度診療報酬改定より) 

💗 診療報酬
  • 体外ペースメーキング術 ➜ 3,770点
  • ペースメーカー移植術(経静脈電極)➜ 9,520点
  • リードレスペースメーカー ➜ 9,520点
  • ペースメーカー交換術 ➜ 4,000点
  • 植込型心電図記録計移植術 ➜ 1,260点
  • 植込型心電図記録計摘出術 ➜ 840点
  • 両心室ペースメーカー移植術(経静脈電極)➜  31,510点
  • 両心室ペースメーカー交換術(経静脈電極)➜  5,000点
  • 植込型除細動器移植術(経静脈リード)➜ 31,510点
  • 植込型除細動器移植術(皮下植込型リード)➜  24,310点
  • 植込型除細動器交換術 ➜ 7,200点
  • 両室ペーシング機能付き植込型除細動器移植術(経静脈電極)➜ 35,200点
  • 両室ペーシング機能付き植込型除細動器交換術(経静脈電極)➜ 7,200点



💕 技術料(指導管理料)
  • ペースメーカー ➜ 300点
  • 植込型除細動器又は両室ペーシング機能付き植込型除細動器 ➜ 520点
注:月1回算定/移植3月以内は140点(除細動器は31,510点)加算

💁 ペースメーカの過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-02-04

心臓移植の手技

  • カンファレンスで心臓移植の手技が話題になりました.あまりなじみがない領域なので調べてみました.
  • 以下の図と文章は,日本循環器学会などの2016年版「心臓移植に関する提言」からの引用・参考です.

- 心臓摘出手技- 
  • 上大静脈・奇静脈,下大静脈,大動脈,肺動脈幹を十分剥離しU字縫合(図 14a)
  • ヘパリン(4~5 mg/kg)を投与し,奇静脈・上大静脈・下大静脈を離断(図 14b)
  • カニュー レから4℃心保存液を注入し心臓が停止した のを確認後,心臓を摘出(図 14c)
  • 3重イレウスバックに入った心保存液中に漬け心停止液注入用のカニューレ抜去(図 14d)

- 心臓移植法 -

  • 以前は biatrial technique (両心房法)が中心であった(図15a)
  • 近年は bicaval technique(上下大静脈法)が行われている(図15b)
  • 日本では北村らが開発した modified bicaval technique が70%(図15c)

👉 移植に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2021-09-07

植込み型ループレコーダー Implantable loop recorder: ILR

  • 前胸部の心臓近くの皮下(心電図のV3-4辺り)に差し込む様に植込む小さなデバイス(下図)
  • 様々な検査でも原因不明の失神の約2/3は植込み型ループレコーダーで診断可(ガイドライン)
  • 基本的に1.5テスラ及び3テスラMRIが植込み当日から可能(前もってデータの読み出しが理想)
  • 償還価格は標準型が394,000円で特殊型(植込みツール+心房細動アルゴリズム)は451,000円


💰 診療報酬(令和2年4月1日施行)
  • 植込型心電図記録計移植術 1,260点
  • 植込型心電図記録計摘出術 840点
  • 体外ペースメーキング術 3,370点
  • ペースメーカー移植術(経静脈電極の場合)9,520点
  • ペースメーカー交換術 4,000点
  • 両心室ペースメーカー移植術(経静脈電極の場合)31,510点
  • 両心室ペースメーカー交換術(経静脈電極の場合)5,000点
  • 植込型除細動器移植術(経静脈リードを用いるもの)31,510点

💁 ペースメーカの関連投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-01-13

循環器学会専門医試験問題より

😅 独り言
  • 先日の出題「心拍出量のFick法」のページに記載されていた問題です.全く分からなかったので,適当に答えたら(もちろん)間違っていました.
  • 薬理作用を考えたら「なるほど…」の選択肢です.反省を込めてここにアップします.当院採用の肺高血圧の治療薬はココ(2022年時点ですが…)


【問題】特発性肺動脈性肺高血圧症の臨床診断で Macitentan と Sildenafil で初期併用療法を行ったとこ ろ,急激な肺うっ血をきたした.最も可能性が高い診断はどれか.







判定


😐 解説:正解 a
  • 肺静脈閉塞性疾患(PVOD)はまれで,診断も治療も難しい難病である.有病率は人口100万人あたり2名以下で,2年以内で死亡する例も多い.肺毛細血管腫症(PCH)とはその異同が議論されている.特発性,遺伝性,薬剤性のほか膠原病と関連しても発生する.
  • PVOD/PCHでは,肺胞中隔から小葉間中隔の微小な肺静脈で狭窄や閉塞が起こる.この抵抗に逆らって血液を流すために右室は高圧を出すが,やがて耐え切れずに右心不全となり,死に至る.確実な診断には肺生検が必要だが,リスクが高いので現実に行われることはあまりない.肺動脈性肺高血圧症(PAH)の診断基準に合致するが,肺拡散能が低下していたり,運動時に極端に低酸素になったり,肺のHRCTで小葉中心性のすりガラス陰影が見られたり,縦隔リンパ節の腫大や小葉中隔壁肥厚が見られたりする場合に,臨床的に診断することが多い.
  • 主病態は肺細静脈の閉塞であり,しかもその閉塞は線維性であるので,平滑筋細胞に働きかけるPAH特異的治療薬は,普通に使えば無効か有害である.肺細動脈を拡張させれば血流は増えるが肺細静脈が閉塞しているのでその手前の肺胞で水腫が起こりうる.しかし,わが国では脳死肺移植は希望者登録をしてから3年以上の待期期間があるのが一般で,移植を待つ間に死亡する例も多い.そこで,肺血管抵抗を少しでも下げて右室の負荷を軽減しようと,PAH特異的治療薬をあえてPVOD/PCHの患者に試みることもある.これには相当な技術と経験が必要で,しかも決して移植に代わる治療とはならない.


(投稿者 川崎)

2017-12-06

心拍数と心臓自律神経

心臓は自律神経で常にコントロールされている
  • 交感神経=アクセル ➜ 心拍数増加
  • 迷走神経(副交感神経)=ブレーキ ➜ 心拍数減少

運動に対する心臓自律神経の反応と心拍数
1.安静時:交感神経より迷走神経が優位(常にブレーキオン)
2.運動中:
  • 開始直後に迷走神経の速やかな活動低下 (ブレーキオフ)➜ 心拍数の速やかな上昇
  • 少し遅れて交感神経の活動亢進(アクセルオン) ➜ 心拍数のさらなる上昇
3.運動後:交感神経と迷走神経の活動が緩やかに定常状態へ回復


移植心では心臓自律神経のコントロールが消失する
  • 安静時の心拍数上昇(ブレーキオフがないため)
  • 運動開始後の心拍数上昇が遅延(副腎髄質から分泌されるアドレナリン依存)

(Circulation. 1989;79:76-82/移植心では心拍数の揺らぎ消失にも注目)

※ただし移植心の心臓自律神経はゆっくりではあるが再生すると思われる(J Cardiol. 2012;59:220-4)

(投稿者 川崎)

2025-03-21

医科診療報酬点数

👥 夜8時半にようやくシャントPTAが終わって...
  • 専門医A 「エコーでVAIVTができると楽だね」
  • 専門医B 「そうです.それで12万ですからね」
  • 専門医A 「高っ! ペースメーカって数万だよ」
  • 専門医C 「でも3ヵ月で2回までですけどね…」

📪 医科診療報酬点数(令和6年)
  • 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 ➜ 12000点
  • ペースメーカ ➜ 経静脈電極移植術9520点,リードレス移植術9520点,交換術4000点
  • 経皮的冠動脈ステント留置術 ➜ 急性心筋梗塞34380点,不安定狭心症24380点,その他21680点
  • 心臓カテーテル法による諸検査 ➜ 左心4000点,右心3600点
  • 冠動脈、大動脈バイパス移植術 ➜ 吻合80160点,吻合以上89250点
  • 経カテーテル弁置換術 ➜ 経皮的39060点,経心尖61530点
  • 弁輪拡大術を伴う大動脈弁置換術 ➜ 157840点
  • 経皮的カテーテル心筋焼灼術 ➜ 心房中隔・心外膜アプローチ40760点,その他34370点
  • 下大静脈フィルター ➜ 留置10160点,除去6490点
  • オープン型ステントグラフト内挿術 ➜ 弓部大動脈114510点,下行大動脈89250点


    😑 独り言
    • 手技料に関しては皆,いろいろな想いがあると思います.循環器内科医なら,「なんでペースメーカ植込みよりシャントPTA(VAIVT)の方が高いの?」って思うかもしれません.逆に心臓外科医は,「循内の経皮的な手技料,高すぎだろう!」って怒っているかも…
    • 手技の難しさ(学ぶのに要する時間)やリスク(術者のストレスを含む),効果(予後改善など)が,手技料に総合的に反映されていることが大切です.例えば下大静脈フィルター植込みの手技料は10160点と高めですが,比較的簡単かつ安全で臨床効果は微妙?

    👉 診療報酬に関するの過去の投稿は コチラ

    (投稿者 川崎)

    2025-07-25

    眼類天疱瘡がんるいてんぽうそう Ocular Pemphigoid

    👀 角膜の復習
    • 角膜は上皮・実質・内皮の3層によって構成されている
    • それらの層はいずれも血管を必要としない特殊な構造
    • 角膜上皮は角膜周辺の輪部に存在する幹細胞から供給
    • 徐々に中心へ向かって進行し最終的には表面から脱落
    • 幹細胞から分裂して脱落するまでかかる時間は数週間
    • 角膜移植後半年で上皮はホスト由来上皮に入れ替わる


    🔎 眼類天疱瘡
    • 概要 抗結膜基底膜抗体によって結膜に障害を生じる慢性疾患
    • 分類 類天疱瘡の1種(天疱瘡は別で抗デスモグレイン自己抗体)
    • 所見 癒着,睫毛乱生,角結膜炎,血管新生,混濁,角化など
    • 疫学 頻度は1~5万人に1人で60歳以上に多く女性優位(2:1)
    • 治療 人工涙,局所抗炎症薬,内反睫毛抜去,免疫抑制薬など
    • 予後 皮膚の類天疱瘡より不良(最終的には角膜移植:下図)

    参考)In: StatPearls,他

    - 眼類天疱瘡の角膜移植 -

    💁 天疱瘡に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)

    2020-09-08

    更生医療

    自立支援医療制度とは心身の障害を除去・軽減するための医療について医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度で以下の3つから構成
    1. 精神通院医療 ➜ 精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で通院による精神医療を継続的に要する者
    2. 更生医療 ➜ 身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者でその障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
    3. 育成医療 ➜ 身体に障害を有する児童でその障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)

    特に内科医は厚生医療の内部障害に関与することが多い(対象障害と治療例は以下)
    1. 視覚障害 ➜ 白内障の水晶体摘出手術,網膜剥離手術,角膜混濁の角膜移植術
    2. 聴覚障害 ➜ 鼓膜穿孔閉鎖術,外耳性難聴の形成術
    3. 言語障害 ➜ 外傷性又は手術後に生じる発音構語障害 → 形成術 唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴う者であって鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者 → 歯科矯正
    4. 肢体不自由 ➜ 関節拘縮や関節硬直の形成術・人工関節置換術等
    5. 内部障害
      • 心臓 ➜ 先天性疾患に対する手術,ペースメーカ植込み術
      • 腎臓 ➜ 人工透析療法,腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
      • 肝臓 ➜  肝臓移植術(抗免疫療法を含む) 
      • 小腸 ➜ 小腸機能障害の中心静脈栄養法
      • 免疫 ➜  HIVによる免疫機能障害の抗HIV療法や感染症に対する治療

    👀 おまけ 実施主体は市町村であるため詳細は居住地により少し異なるようです.例えば大阪市では自己負担費は原則1割で,世帯の市町村民税額(所得割)が235,000円以上の場合は原則対象外になります(※).

    (投稿者 川崎)

    2025-08-02

    着用型心臓除細動器(WCD: wearable cardioverter-defibrillator)

    • 着用型ベスト内に接触型心電図電極と除細動パッドを有し有線で致死的不整脈に対して除細動を行う医療機器
    • 体表面から行うがICD(植え込み型除細動器)に劣らぬ診断感度,特異度でわが国でも2014年1月から保険適用
    • 使用例は急性虚血ならびに急性心不全のICD の一次予防の適応が確定するまでの期間,突然死予防を目的など
    • 非虚血性心筋症の報告は限定的:心筋炎後心筋症,たこつぼ心筋症,産褥後心筋症,拡張型心筋症の急性期など
    • 心移植待機例,ICD適応であるが感染でデバイス抜去後や他疾患の治療を優先すべき症例などにおいても要考慮
    • わが国ではWCDの使用は短期(3ヵ月間)が原則としているが,長期使用については,今後も検討が必要である



    📍 WCDの使用を考慮する病態
    • 左室駆出率35%以下で、NYHAクラス II もしくはクラス III の心不全症状を有する急性心筋梗塞発症後40日以内の症例
    • 左室駆出率35%以下で、NYHA クラス II もしくはクラス III の心不全症状を有する冠動脈バイパス後または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後 90 日以内の症例
    • 左室駆出率35%以下で、非虚血性急性心不全発症後90日以内の症例
    • 心移植待機条件を満たす非可逆性重症心不全症例
    • ICDの適応があるが、他の身体的状況により直ちに手術を行えない症例
    • ICDによる心臓突然死二次予防を考慮するが、臨床経過観察や予防治療の効果判定が優先される症例
    • 感染等の理由で一時的にICDを抜去する症例


    🔦 おまけ
    • WCDの保険償還には植込み型除細動器(ICD)施設基準を満たす必要あり
    • つまり年に電気生理学的検査≧50例,開心術など≧30例,PM移植術≧10例
    • 関連医療従事者(医師およびメディカルスタッフ)がメーカー研修を受講
     
    (投稿者 川崎)

    2020-03-08

    ダノン病 Danon disease

    • 原因 リソソーム膜のLAMP-2(ランプ・ツー)蛋白の欠損/X連鎖優性遺伝または孤発性
    • 命名 米国の神経内科医であるMoris J. Danonらの初報に由来(Neurology 1981;31:51-7)
    • 機序 骨格筋の筋線維内に自己貪食空胞が出現するため自己貪食(オートファジー)の疑い
    • 症状 男性=心肥大(肥大型心筋症様)と骨格筋障害,知的遅滞/女性=保因者〜心肥大
    • 疫学 世界で70家系と稀(本邦では比較的多い)/発症の多くは男性10代〜,女性30代〜
    • 治療 心筋障害が予後決定因子であるため心臓移植(他の症状や合併症は対症療法が主体)
    • 予後 心臓移植を行わないと男女ともに発症年齢に関係なく心不全出現から約2年で死亡




    (投稿者 川崎)

    2019-03-16

    慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)

    CAEBV=chronic active EB virus infection
    • EBウイルスに潜伏感染したTリンパ球やNK細胞の増殖による難治性疾患
    • 免疫学的異常を背景としたリンパ増殖性疾患で高サイトカイン血症を伴う
    • 英国の癌研究者Rickinsonが提唱した観念(Immunol Today 1986;7:13-4)

    (EBER=EBV encoded RNA/日内会誌 2012;101:2298-300)

    • 頻度 本邦では約100名/年(東アジアの小児~若年に多い)
    • 原因 現時点では不明(何らかの遺伝学的背景の関与あり?)
    • 症状 発熱,リンパ節腫脹,肝脾腫,肝逸脱酵素上昇,発疹など
    • 診断 上記症状が3月以上持続+EBV量の増加(➜ 厚労省基準)
    • 指標 末梢血中EBV-DNAコピー数が病勢や治療の判定に有用
    • 合併 血球貪食症候群,悪性リンパ腫,多臓器不全など
    • 治療 造血幹細胞移植・臍帯血移植+時に化学療法併用

    (投稿者 川崎)

    2021-12-15

    門脈肺高血圧症 PoPH: portopulmonary hypertension

    • 門脈圧亢進症に伴う肺高血圧症で,ニース分類の第1群(肺動脈性肺高血圧症/PAH)
    • 組織所見は血管内膜や中膜平滑筋の肥厚,血管内腔の叢状病変,壊死や微小血栓など
    • 診断は肺高血圧(平均圧≧25 mmHg)+門脈圧亢進の証明(例:肝静脈楔入圧測定)
    • PoPHは必ずしも肝機能障害を示すとは限らないが,肝硬変例に合併する頻度が最多
    • 頻度はPAH全体の10%以下,門脈圧亢進症患者の2~6%.肝臓移植の対象症例の5%程度
    • 治療は肝臓移植やPAH特異的治療薬(ただしランダム化比較試験ではPoPHは通常除外)
    • 予後不良で未治療なら5年生存率は14%であり,54%の患者が診断から1年以内に死亡


    👽 追記
    • 肝疾患によるシャント出現や全身血管拡張で高心拍出状態が生じ,肺動脈内膜肥厚や肺動脈のリモデリングに至る機序が推定されている.肝代謝の低下による腸肝循環の代謝物質(セロトニンなど)が肺循環に流入して肺血管が収縮することも一因.
    • 肺動静脈拡張から重度の低酸素を主徴とする肝肺症候群(HPS; hepatopulmonary syndrome)とは逆の病態と考えられる.ただし稀ながらHPSからPoPHへの移行例や,HPSとPoPHの病態がオーバーラップした症例も報告されている.


    🉐 関連投稿
    1. 肺静脈閉鎖症 PVOD: Pulmonary veno-occlusive disease
    2. 右心負荷を来す稀な病態
    3. 急性PTE ➜ CTEPH
    4. 骨髄増殖性疾患 vs シーテフ(CTEPH)
    5. Ⅱ音の肺動脈成分

    (投稿者 川崎)

    2021-02-06

    肺静脈閉鎖症 PVOD: Pulmonary veno-occlusive disease

    • 概要 肺静脈が主たる病変(内膜肥厚や線維化等による閉塞)を呈す疾患
    • 疫学 極めて稀で本邦では100人ほど/喫煙男性に多く全年代に生じうる
    • 鑑別 肺動脈性肺高血圧症PAHや肺毛細管腫症PCH(病理組織を要する)
    • 原因 現時点では不明(ほとんどが孤発性だが家族内発症の報告もある)
    • 症状 非特異的(PAHと類似:労作時の息切れや咳嗽,胸痛,失神など)
    • 治療 選択的肺血管拡張薬などによる対症療法で根本的治療は肺移植のみ
    • 予後 治療抵抗性で極めて不良(肺移植なしでは診断2年以内に概ね死亡)

    参考)難病情報センター 指定難病87,他

    肺の動脈・毛細血管・静脈すべてに影響するが病変の首座は静脈

    高解像度CT所見で小葉間隔壁の肥厚や粒状影,スリガラス様影(ground glass opacity)など

    (投稿者 川崎)

    2024-04-06

    まだら症 Piebaldism

    • 概略 明確な腹側正中線パターンの孤立した先天性白皮症とポリオーシス(白毛)
    • 原因 メラノサイトの遊走と発達に影響を与える遺伝子異常(常染色体顕性[優性])
    • 部位 先天性の白い前髪,額の三角形の脱色素斑,散在する正常色素斑と脱色素斑
    • 治療 美容の目的で皮膚移植,細胞移植,カモフラージュ技術,染毛剤の使用など


    Piebaldism(まだら症)の5歳の子供

    💁 白斑に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)

    2025-03-08

    死体遺棄罪・死体損壊等罪

    • 刑法第190条「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者」を、死体損壊等の罪で処罰する
    • 死体遺棄罪・死体損壊等罪には、3年以下の懲役(罰金の規定はなく刑事裁判で有罪になればかならず懲役が選択される重罪)
    • 近い行為として挙げられるのが刑法第189条に定められている「墳墓発掘罪」や「墳墓発掘死体損壊等罪」(2年以下の懲役)


    医師でも死体にメスを入れる行為は上記の死体損壊罪にあたったが,1949年に死体解剖保存法が制定され仕組みが整備された(死体損壊の違法性の阻却).以下の行為が該当すると思われる.
    •  (a)病理解剖:「死体の解剖に関し相当の学識技能を有する医師、歯科医師その他の者であって、厚生労働大臣が適当と認定したものが解剖する場合」(2条1項1号)。病因解明を目的とする解剖を想定している。原則として、遺族の承諾が必要であるため(7条)、「承諾解剖」といわれることもある。
    • (b)系統解剖:医学・歯学に関する大学・大学学部の「解剖学、病理学又は法医学の教授又は准教授が解剖する場合」(同2号)であり、遺族から提供された死体(献体)、引き取り手のいない死体(12条、13条)について「身体の正常な構造を明らかにするための解剖」(10条)。(a)と対応させる意味で「正常解剖」と呼ばれることもある。献体法(医学及び歯学の教育のための献体に関する法律)は、これを「医学又は歯学の教育として行われる身体の正常な構造を明らかにするための解剖」として、この呼称を用いている(2条)。
    • (c)行政解剖:行政機関の行う死因究明のための解剖監察医が死因を明らかにするために行う解剖(同3号、8条)、食品衛生法・検疫法による解剖(同5号、6号)。
    • (d)司法解剖:警察・検察・裁判所が行う解剖。刑事訴訟法、「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」による解剖による解剖(同4号、7号)。 法律に規定のない行為であっても、違法性が阻却されることはある。海上への散骨は墓埋法に、組織移植は臓器移植法に、いずれも明文で規定されていないが、これが違法であって死体損壊罪を成立させるものとは考えられてはいない。

    死体解剖についても,死体解剖保存法の規定する上記(a)~(d)以外の解剖であっても許されるものがある.サージカルトレーニング(遺体を用いた手術手技の研修,cadaver training)はその例である.


    😐 おまけ
    • 死後の処置(いわゆるエンゼルケア)は主に看護師が行っていますが,医師や看護師以外でも問題はないようです.死体損壊罪(刑法190条)に対しては,仮にエンゼルケア中に死体に傷をつけたとしても,意図的ではないので「損壊行為」には当たらないと考えられるためだそうです.


    (投稿者 川崎)

    2024-01-30

    橋中心髄鞘崩壊症(Central pontine myelinolysis, CPM)

    • 概要 脳橋底部に生じる対称性かつ非炎症性の脱髄病変によって生じる一連の病態
    • 初報 米国の腦神経内科医 アダムスら(AMA Arch Neurol Psychiatry 1959;81:154-72)
    • 頻度 三次病院への神経科入院例の0.4%~0.56%,内科系病院への入院全体の0.06%
    • 症状 構音・嚥下障害,痙性四肢麻痺,痙攣,閉じ込め症候群,意識障害,死亡など
    • 併存 アルコール依存や肝移植後,集中治療室に入室する重篤な疾患,栄養失調など
    • 疫学 30〜50歳に多く男性優位(51.8%~77.0%),23%~48.2%が肝移植を受けている
    • 原因 低Na血症の急速な補正(ただし高Na、低K、低Pなど全ての電解質異常で発生)
    • 診断 脳MRIのT2強調・FLAIRで高信号,T1強調で低信号(拡散強調の診断能は不明)
    • 予防 緩徐なNa補正(例: Na<120 mmol/Lなら1時間で0.5未満,1日12未満の補正)
    • 治療 デキサメタゾンや血漿交換,免疫グロブリンが有効であったという報告がある
    • 予後 1980年代は死亡率90%~,現在は33%~50%と少し改善(24%~39%は完全回復) 


    💀 おまけ
    • 近年では橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis, CPM)に橋外髄鞘崩壊症(extrapontine myelinolysis, EPM)を加えて,浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome: ODS)と呼ばれることが多いようです.頻度はCPMが40%~56%,EPMが13%~35%,混合型が23%~31%です.橋外では小脳白質が33%~55%,大脳基底核(特に線条体)が34%,他に視床または海馬の髄鞘溶解として出現するようです.



    - 橋外性および橋中心性浸透圧性脱髄症候群を呈した35歳男性 -

    (投稿者 川崎)

    2023-06-07

    嚢胞性線維症 Cystic fibrosis

    • 原因 cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)遺伝子の変異
    • 機序 気道、腸管、膵胆管、汗管、輸精管の上皮膜/粘膜を介するCl-と水の輸送障害
    • 疫学 白人では最も一般的な遺伝性疾患で発生率は1:3200(本邦では稀で100人未満)
    • 症状 胎便性イレウス(生直後),消化吸収不良,呼吸器感染,胆汁うっ滞型肝硬変
    • 診断 Sweat test(汗中の塩化物イオン)高値:例60mmol/L以上,CFTR遺伝子の変異
    • 治療 対処療法(呼吸器感染症対策や栄養コントロール)を生涯継続,肺移植や肝移植
    • 予後 平均生存期間は約20年(ただし症例数の多い欧米では新しい治療法で改善予想)


    嚢胞性線維症の思春期の少女の胸部CT(引用)
    気管支拡張症 (矢印) と粘液詰まり (❇︎)

    (投稿者 川崎)

    2023-05-06

    ハーラー症候群 Hurler syndrome

    • 概要 ムコ多糖症Ⅰ型の一つで最重症型(他の型はシャイエ症候群で緩徐に進行)
    • 原因 α-L-iduronidase の先天的な欠損による常染色体の潜性(劣性)遺伝性疾患
    • 由来 独の小児科医Hurlerの1919年の報告(実は1917年にHunterが報告すみ:※)
    • 疫学 ムコ多糖症Ⅰ型の発症は約10万人に1人と報告(本邦では約70症例が報告)
    • 特徴 特異的顔貌,精神運達障害,肝脾腫,眼耳の疾患,関節拘縮,ヘルニア他
    • 診断 尿中ウロン酸測定(1次検査),血中α-L-イズロニダーゼ活性測定(確定)
    • 治療 酵素補充療法や造血細胞移植(進行は完全には止められない)+対症療法
    • 予後 病初期に診断して治療を開始することができた症例では予後は比較的良好


    (a,b)生後6ヵ月のハーラー症候群男児,(c)ハーラー症候群の4歳少女,(d)3歳のHurler-Scheie症候群の男児,(e)4歳のHurler-Scheie症候群の男児

    (投稿者 川崎)

    2023-10-15

    左室二腔症 Double Chambered Left Ventricle (DCLV)

    • 左心室が中隔または筋バンドによって主室と副室の二つ分けられた特徴を有する先天奇形
    • 右心二腔症(DCRV)は先天性心疾患の0.5~2.0%であるがDCLVはもっと稀(0.04~0.42%?)
    • 鑑別すべき疾患は左室瘤(線維化と広い頚部),左室憩室(狭い頚部),嚢胞(交通なし)
    • DCLVの副室は繊維化を伴わないが,必ずしも収縮性があるわけではないことに注意が必要
    • 症状は無症状〜致死性不整脈で,治療も個別化(経過観察〜副室の外科的切除や心臓移植)

       参考)Egypt Heart J 2023;75:15

    左室二腔症 (DCLV) の29歳男性のMRI(C, Fで遅延造影なしに注目)

    💁 先天性心疾患に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)