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2025-03-26

不整脈原性心筋症 ACM: arrhythmogenic cardiomyopathy

  • 電気的不安定性を引き起こしやすい顕著な「非虚血性」の心筋瘢痕化を特徴とする心筋疾患
  • 不整脈性右室心筋症(ARVC)+左側変異体の不整脈性左室心筋症(ALVC)+両室性(ABVC)
  • 心筋の遅延造影LGE(瘢痕)のリング状パターンはALVCの診断的特徴として認識されている 


- 不整脈性心筋症に関連する遺伝子型と表現型の関係 -
不整脈性右室心筋症 (ARVC),不整脈性左室心筋症 (ALVC),両室性不整脈性心筋症 (BiVAC)
(Appl Clin Genet 2023;16:181–203)
DSP PKP
(投稿者 川崎)

2019-09-20

不整脈 warm-up & cool-down

定義 👶
  1. warm-up現象 ➜ 不整脈の発症時に心拍数が少しずつ速くなること
  2. cool-down現象 ➜ 不整脈の停止時に徐々に心拍数が遅くなること

  • 不整脈の発生機序:リエントリー,自動能の亢進,激発活動(triggered activity)
  • warm-up現象やcool-down現象は自動能亢進による不整脈に多くβ遮断薬が効きやすい

おまけ 👼 Ashman現象
  • 正常心筋細胞の不応期は先行する心周期に依存するため,先行RR間隔が長いほどand/orそれに続く連結期が短いほど変行伝導を生じやすい(≒右脚ブロック波形になりやすい).命名は米国の医師Richard Ashman(1890-1969)らによる初報(Am Heart J 1947;34:366-73)に依る.

アッシュマン現象
(投稿者 川崎)

2020-08-01

プロカインアミド(アミサリン®)

😕 きっかけ

【効能・効果】(添付文書)
  • 期外収縮(上室性、心室性)
  • 発作性頻拍(上室性、心室性)
  • 手術及び麻酔に伴う不整脈
  • 新鮮心房細動
  • 心房粗動(静注のみ)
  • 陳旧性心房細動

【禁忌】(添付文書)
  1. 刺激伝導障害(房室ブロック、洞房ブロック、脚ブロック等)のある患者[刺激伝導抑制作用により、これらの障害がさらに悪化するおそれがある。]
  2. 重篤なうっ血性心不全のある患者[不整脈(心室頻拍、心室細動等)が発現又は増悪するおそれが極めて高い。]
  3. モキシフロキサシン塩酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、アミオダロン塩酸塩(注射剤)、トレミフェンクエン酸塩を投与中の患者(「相互作用」の項参照)
  4. 重症筋無力症の患者[筋力低下が亢進するおそれがある。]
  5. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

😉 おまけ
  • ベテラン上司に,「昔はキシロカインとアミサリンしか不整脈の薬がなかった」と聞きました.アミサリンは全身性エリテマトーデス(SLE)様症状の出現に注意することも教えてもらいました.

(投稿者 川崎)

2019-02-13

持続性心室頻拍の停止法


👴 突然だけど・・・
持続性心室頻拍の停止のためのオノアクトはやはり不適と思う.上記のガイドラインで言及なく,下記の添付文書の禁忌に含まれるリスクがあり,一方で効能・効果に含まれていないため.ただしElectrical storm(incessant VT例を含む)に対するオノアクトの追加は有用である報告はある(Circ J 2010;74:856-63).

オノアクト(注射用ランジオロール塩酸)➜ 添付文書
〔禁忌〕
〈共通〉
  1. 心原性ショックの患者
  2. 糖尿病性ケトアシドーシス,代謝性アシドーシスのある患者
  3. 房室ブロック(Ⅱ度以上),洞不全症候群など徐脈性不整脈患者
  4. 肺高血圧症による右心不全のある患者
  5. 未治療の褐色細胞腫の患者
  6. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
〈手術時・手術後の頻脈性不整脈に対する緊急処置〉
  1. うっ血性心不全のある患者

〔効能・効果〕
  1. 手術時の下記の頻脈性不整脈に対する緊急処置:心房細動,心房粗動,洞性頻脈
  2. 手術後の循環動態監視下における下記の頻脈性不整脈に対する緊急処置:心房細動,心房粗動,洞性頻脈
  3. 心機能低下例における下記の頻脈性不整脈:心房細動,心房粗動

(投稿者 川崎/張本)

2024-10-24

今週の一枚 🎯 頻脈は止めたいが...

動悸を訴える症例(モニター音に注目)

😎 解説
  • 座位で鎖骨上に周期の短い陥凹(外頚静脈)
  • モニター音と拍動が一致(陥凹は多分 x谷)
  • 吸気負荷で静脈膨隆(クスマウル徴候陽性)
  • 突然生じた動悸が約2週間持続していた様子
  • 本例の最終診断は頻脈の持続による心不全
😑 独り言
  • PSVTなど頻脈性不整脈を停止すること自体はそれほど難しいことはありません.しかし本例のように頻脈誘発性心筋症などから心不全に至った例には注意が必要です.徐脈化に伴い血行動態が破綻することがあります(ショックに陥った自験例あり).
  • よって本例のように中心静脈圧の上昇が疑われる症例(座位で頚静脈視認あるいはクスマウル徴候陽性など)では不整脈の停止よりも心不全加療が優先されると思われます.もちろん類似した頻脈の心房粗動などでは左房血栓の有無の検索も重要です.
  • 頚静脈拍動から各種不整脈の診断は可能です(a波=P波,x谷=収縮期など:過去の報告).ただし頻脈時にはフロック・サインを除き不整脈の鑑別は容易ではありません.むしろ中心静脈圧上昇の有無に注視してもいいように個人的には思っています 😐

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👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-08-25

人工呼吸器からの離脱:SAT&SBT

自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial: SAT)
  • 鎮静薬を中止または減量し、自発的に覚醒が得られるか評価する試験。観察時間は30分から4時間程度を目安とする。

➜ 開始基準 (以下の状態でないこと)
  1. 興奮状態が持続し、鎮静薬の投与量が増加している
  2. 筋弛緩薬を使用している
  3. 24時間以内の新たな不整脈や心筋虚血の徴候
  4. 痙攣、アルコール離脱症状のため鎮静薬を持続投与中
  5. 頭蓋内圧の上昇
  6. 医師の判断

➜ 成功基準(以下をともにクリア)
  1. 鎮静スケール(RASS):-1~0で口頭指示で開眼や動作が容易に可能である。
  2. 鎮静薬を中止して30分以上過ぎても、以下が生じない:興奮状態・持続的な不安状態・鎮痛薬を投与しても痛みをコントロールできない・頻呼吸(呼吸数≧35 回/分 5 分間以上)・SpO2<90%が持続し対応が必要・新たな不整脈

自発呼吸トライアル(Spontaneous Breathing Trial :SBT)
  • 人工呼吸による補助がない状態に患者が耐えられるかどうか確認するための試験。人工呼吸器設定をCPAPまたは、Tピースに変更し、30 分から2時間観察する。

➜ 開始基準(原疾患の改善を認め、以下をすべてクリアした場合)
  1. FIO2≦0.5 かつ PEEP≦8cmH2O のもとで SpO2>90%
  2. 急性の心筋虚血、重篤な不整脈がない・心拍数≦140 bpm・昇圧薬の使用について少量は容認(DOA ≦ 5μg/kg/min、DOB ≦ 5μg/kg/min、NAD ≦ 0.05μg/kg/min)
  3. 1回換気量>5ml/kg・分時換気量<15L/分・Rapid shallow breathing index(1分間の呼吸回数/1回換気量[L])<105回/min/L・呼吸性アシドーシスがない(pH>7.25)
  4. 呼吸補助筋の過剰な使用がない・シーソー呼吸(奇異性呼吸)がない
  5. 発熱がない・重篤な電解質異常を認めない・重篤な貧血を認めない・重篤な体液過剰を認めない

➜ 成功基準(以下をともにクリア)
  1. 呼吸数<30 回/分
  2. 開始前と比べて明らかな低下がない(たとえば SpO2≧94%、PaO2≧70mmHg)
  3. 心拍数<140bpm、新たな不整脈や心筋虚血の徴候を認めない
  4. 過度の血圧上昇を認めない
  5. 以下の呼吸促迫の徴候を認めない(SBT前の状態と比較する):呼吸補助筋の過剰な使用がない・シーソー呼吸(奇異性呼吸)・冷汗・重度の呼吸困難感、不安感、不穏状態


- 全体の流れ -

💁 人工呼吸に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-11-26

不整脈原性右室心筋症
ARVC: arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy

  • 病態 右室の拡大と機能低下および右室起源の心室不整脈を特徴とする心筋症
  • 初報 Frank Rらによる4症例の仏語論文(Arch Mal Coeur Vaiss 1978;71:963-72)
  • 原因 デスモゾーム関連遺伝子やリアノジン受容体(RyR2)遺伝子の異常など
  • 疫学 頻度は数千人に一人で,診断の平均年齢は30歳(30〜50%に家族歴あり)
  • 症状 不整脈症状(動悸や低血圧など)と右室不全症状(浮腫や食思不振など)
  • 検査 心電図(特にV1〜V3)でイプシロン波(下図b)が特徴的(約30%に出現)
  • 画像 エコーやMR,CT,アンギオで右室拡大と機能低下(特にMRIの脂肪線維化)
  • 生検 心室中隔からの心内膜生検では診断は困難(右室自由壁は手技的に困難)
  • 診断 初期病態を診断するため従来基準を2010年に改定(複雑:ココの表2参照)
  • 治療 心不全+不整脈(アミオダロンやソタロールなど,ICD,アブレーション)
  • 予後 追跡6年目の生存率は72%以上で死亡率は5%未満(治療法で大きく異なる)


典型例の各種画像所見

🉐 心筋症に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-06-04

心不全の増悪因子:FAILURE

  • Forgot medication:薬の服用忘れ
  • Arrhythmia/Anemia:不整脈や貧血
  • Infections/Ischemia/Infarction:感染,虚血,梗塞
  • Lifestyle:塩分過剰摂取やストレス
  • Upregulation of cardiac output:甲状腺疾患や妊娠
  • Rheumatic valve or other valvular diseases/Renal failure:弁疾患あるいは腎不全
  • Embolism:肺塞栓など

🚜 ガイドラインに記載されている心不全の増悪因子(82ページの表50)
  1. 急性冠症候群
  2. 頻脈性不整脈(心房細動,心房粗動,心室頻拍など)
  3. 徐脈性不整脈(完全房室ブロック,洞不全症候群など)
  4. 感染症(肺炎,感染症心内膜炎,敗血症など)
  5. アドヒアランス不良(塩分制限,水分制限,服薬遵守などがで きない)
  6. 急性肺血栓塞栓症
  7. 慢性閉塞性肺疾患の急性増悪
  8. 薬剤(NSAIDs,陰性変力作用のある薬剤,癌化学療法など)
  9. 過度のストレス
  10. 過労
  11. 血圧の過剰な上昇
  12. ホルモン,代謝異常(甲状腺機能亢進・低下,副腎機能低下, 周産期心筋症など)
  13. 機械的合併症(心破裂,急性僧帽弁閉鎖不全症,胸部外傷, 急性大動脈解離など)

🙆 循環器疾患の語呂合わせ(英語ですが…)➜ List of cardiology mnemonics

💁「語呂合わせ」に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2019-10-19

心電図クイズ

  • 突然の動悸を自覚してERを受診した妊娠中期の女性 




ATP
(投稿者 川崎)

2023-01-13

Na vs K:抗不整脈薬

🐥 ざっくり言って...
  • 抗不整脈薬は基本的にNaチャネル遮断とKチャネル遮断の組み合わせ
  • そこにスパイス(Caチャネルやβ受容体)が加わり多彩になっている

💛 Naチャネル遮断薬
  • 純粋な強い遮断薬はピルジカイニドのみ (サンリズム©)
  • 脱分極の立ち上がり(0相の角度)を緩徐にする(下図)
  • 予後改善効果はなく心不全例や低左心機能例では避ける

💚 Kチャネル遮断薬
  • 純粋な遮断薬はニフェカラントのみ(シンビット©)
  • 陰性変力作用はほぼない(心不全症例にも使用可能)
  • 活動電位持続時間を延長させるためQT延長に要注意


🉐 不整脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-02

着用型心臓除細動器(WCD: wearable cardioverter-defibrillator)

  • 着用型ベスト内に接触型心電図電極と除細動パッドを有し有線で致死的不整脈に対して除細動を行う医療機器
  • 体表面から行うがICD(植え込み型除細動器)に劣らぬ診断感度,特異度でわが国でも2014年1月から保険適用
  • 使用例は急性虚血ならびに急性心不全のICD の一次予防の適応が確定するまでの期間,突然死予防を目的など
  • 非虚血性心筋症の報告は限定的:心筋炎後心筋症,たこつぼ心筋症,産褥後心筋症,拡張型心筋症の急性期など
  • 心移植待機例,ICD適応であるが感染でデバイス抜去後や他疾患の治療を優先すべき症例などにおいても要考慮
  • わが国ではWCDの使用は短期(3ヵ月間)が原則としているが,長期使用については,今後も検討が必要である



📍 WCDの使用を考慮する病態
  • 左室駆出率35%以下で、NYHAクラス II もしくはクラス III の心不全症状を有する急性心筋梗塞発症後40日以内の症例
  • 左室駆出率35%以下で、NYHA クラス II もしくはクラス III の心不全症状を有する冠動脈バイパス後または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後 90 日以内の症例
  • 左室駆出率35%以下で、非虚血性急性心不全発症後90日以内の症例
  • 心移植待機条件を満たす非可逆性重症心不全症例
  • ICDの適応があるが、他の身体的状況により直ちに手術を行えない症例
  • ICDによる心臓突然死二次予防を考慮するが、臨床経過観察や予防治療の効果判定が優先される症例
  • 感染等の理由で一時的にICDを抜去する症例


🔦 おまけ
  • WCDの保険償還には植込み型除細動器(ICD)施設基準を満たす必要あり
  • つまり年に電気生理学的検査≧50例,開心術など≧30例,PM移植術≧10例
  • 関連医療従事者(医師およびメディカルスタッフ)がメーカー研修を受講
 
(投稿者 川崎)

2021-08-20

頸動脈の抬起性隆起 Carotid heave

突然発症した動悸でER室に搬入された高齢者

🍘 解説
  • 心電図を装着する前に頸部の明瞭な拍動に気がついた(なにはともあれ,まずココを見たい)
  • 触診で拍動が動脈であることを確認 ➜ 血圧が保たれる規則正しい頻脈 ➜ PSVTやAFL,PAT?
  • 心電図で逆行性P波を認め発作性上室頻拍(paroxysmal supraventricular tachycardia; PSVT)
  • バルサルバ負荷は無効であったが修正バルサルバ負荷で洞調律に回復し,自覚症状も消失した
  • 内頸静脈は視認せず(治療後は少し陥凹?)/外頸静脈は視認できるが中心静脈圧の上昇なし

🍙 臨床現場
  • 頸部拍動の性状がコリガン脈っぽいことを気にしながら治療を開始しました.不整脈の停止後にも大脈・速脈が続くため,「大動脈弁逆流や甲状腺機能亢進が合併した上室性不整脈かも…」と思いました.しかし本例は不整脈以外に特記すべき異常所見はなく,最終的に加齢に伴う動脈蛇行による偽コリガン脈と考えられました.

🉐 ヒトはいろんなところが拍動します
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(投稿者 川崎)

2023-05-08

低体温と不整脈

🐶 動物実験
  • 血液希釈されていない犬を20°Cまで急冷すると50%が心停止に至った
  • 26°Cに冷却した犬の心室筋ではVFやVTは冷却よりも再加温中に頻繁
  • 21°C猫で通常量強心剤(アドレナリン他)が心室性不整脈を全例誘発

👴 ヒトデータ
  • 深部体温が16.9°C~29°Cの偶発的低体温19例では7人がVF, 2人は心静止
  • 日本の60人の検討では深部体温>26°CでVF を発症した患者はいなかった
  • 低体温療法中に低カリウム血症+QTc間隔延長なら平均34.7°CでVTが発症


低体温時の一般的な電気生理学的所見
洞調律 房室伝導 心室脱分極 心室再分極 不整脈
軽度〜中等度
(>30度)
不変〜低下 不変〜低下 短縮〜不変〜延長 延長 心房細動,心室期外収縮,心室頻拍
高度
(<30度)
停止まで延長 延長〜停止 遅延〜不変 延長,消失 心房細動,心室細動,心静止

🍧 低体温に伴う様々な変化
  • 電解質 ➜ 寒冷利尿による喪失と細胞内移動により低下するため,低Ca血症,低K血症,低Mg血症,低P血症を認める.逆に復温期では高カリウム血症に注意
  • 凝固系 ➜ 35°C以下では血小板機能低下や血小板数の減少が認められる.33°C以下では凝固に関わる酵素活性の低下から出血傾向となる. 
  • 免疫系 ➜ 白血球の遊走能・貪食能および炎症性サイトカイン産生・反応の低下が生じる.また感染時に白血球数やCRPが必ずしも上昇しない
  • 耐糖能 ➜ 低体温ではインスリンの感受性が低下し,膵細胞からのインスリン分泌ならびに糖代謝も低下するため高血糖が助長される.

💁 低体温に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2026-07-04

第141回日本循環器学会近畿地方会より

😗 個人的に気になった報告
 
1-15 海外留学生の未修復心室中隔欠損に伴う肺動脈性肺高血圧の一例
  • 症例はネパール出身の20歳代女性。未修復心室中隔欠損に伴う肺動脈性肺高血圧と診断した。患者はネパールの高地出身であり,慢性的な低酸素環境が肺血流増大による左心容量負荷の進行を抑制した可能性が考えられた。(投稿者追記:その解釈は興味深いが…)。

5-26 Arrhythmic mitral valve prolapseが疑われた1例
  • 症例は67歳男性。8年前の健診で心雑音を指摘され,他院で僧帽弁逸脱症(MVP),僧帽弁閉鎖不全症と診断された。6年前に心停止を起こしECPRで蘇生,ICD植え込みとなっていた。(投稿者追記:不整脈性MVPとは、他の不整脈基質がない状態で、僧帽弁輪離開の有無にかかわらずMVPと複雑な心室性不整脈が共存する病態)

6-14 Sense B noiseによるS-ICD不適切作動の1例
  • 症例は77歳男性。6年前に冠攣縮性狭心症を背景とした心室細動の診断で,皮下植込み型除細動器(S-ICD)の植込みを行った。昼食後に仰向けになり休んでいたところ,ショック作動があったが、エピソード記録では,不規則なアーチファクト様のノイズがみられ,オーバーセンシングによって心室細動と認識しショックが送出されていた。(投稿者追記:センスBノイズは、S-ICDシステムの問題に起因する、非生理的な信号過剰感知による不適切なショックの原因)


😀 当院からの発表
  • 2-13 高齢で診断された先天性左冠動脈閉鎖症の一例(循環器内科 大野貴都ほか)
  • 3-14 バレーボールの指導者に発症したPaget–Schroetter症候群の一例(循環器内科 足立沙瑛子ほか)
  • 4-20 通り抜け現象(ウォームアップ狭心症) を呈した冠動脈疾患の2症例(循環器内科 林 寛人ほか)
  • 7-1  運動誘発性のparadoxical jet flowを検出した心尖部肥大型心筋症の一例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • 7-6 低調成分を主体とする大動脈駆出音を伴った左脚ブロックの1例(循環器内科 川﨑達也ほか)

4編は発表前に英語論文化(2編は出版済,2編は投稿中) 👏

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2022-04-09

不整脈時にはMgも意識しよう!

トルサード・ド・ポアント例でマグネシウム濃度が1.3 mg/dLでした(基準値1.8~2.6)

  • 電解質異常に関連する致死性の頻脈性不整脈といえば低カリウム血症が有名ですが,低マグネシウム血症も忘れるわけにはいきません.実際に臨床現場ではTdP型心室頻拍に対してマグネシウム1~2gを緩徐に静注することあり(保険上の適用はないがガイドラインには記載)
  • 低マグネシウム血症による心室性不整脈の機序は不明な点が多いようですが,①低Mg血症が腎尿細管のイオンチャネルを介して低カリウム血症を惹起,②心筋細胞内のMg濃度が低下すると遅延整流外向きK電流が増加し感受性が上昇などが想定(心臓 2015;47:50-4)

👿 トルサードに関する過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2026-09-16

大動脈僧帽弁カーテン Aortomitral curtain

  • 大動脈弁と僧帽弁の間をつなぐ線維性の膜状構造(心臓の線維骨格の一部) 
  • 具体的には大動脈弁左冠尖・無冠尖と僧帽弁前尖の間をつなぐ組織(下図)
  • 別名は僧帽弁大動脈間膜様部(intervalvular fibrosa)やaortomitral continuity
  • 感染性心内膜炎で弁輪周囲膿瘍あるいは偽性瘤を形成しやすい部位として重要
  • 外科的には大動脈弁と僧帽弁の同時再建(Commando手術など)で操作必要
  • 不整脈領域では心室期外収縮や心室頻拍など心室性不整脈の基盤となりうる
  • 石灰化しやすくTAVR(経カテーテル大動脈弁置換術)では穿孔のリスク部位


大動脈僧帽弁カーテンのシェーマ

(投稿者 川崎)

2018-10-19

偶発性低体温症 Accidental Hypothermia

  • 低体温症=通常は深部体温が35℃未満 (👴 ➜ 発熱アラカルト)
  • 偶発性低体温症=意図的な低体温(脳保護など)を除く低体温症


特に30℃未満では致死性不整脈が出現しやすいから愛護的な対応が必要(不要な侵襲行為は回避).心室細動時など致死性不整脈時には少なくとも1回は電気的カルディオバージョンを試みるが,復温するまでは回復する可能性は少ないため心肺蘇生を継続して深部体温が30~32℃になるまで待つ.四肢の復温を優先させると血液分布異常性ショックを生じることがあるため要注意(Rewarming shock).復温の目安は0.5~2.0℃/hrで,深部体温が30℃を越えれば補液量を増やしておきたい.

😊 関連投稿

(投稿者)

2019-01-02

徐脈性不整脈に対する薬物療法

  1. アトロピン ➜ 緊急時には0.5 mgを静注(総投与量は3 mgまで)/経口では1.5~3.0 mg/日
  2. 交感神経作動薬 ➜ イソプロテレノール(プロタノール注®)0.01~0.03 μg/kg/分の持続点滴/アドレナリン(2~10 μg/分)やドパミン(2~10 μg/kg/分)も可能/経口ならプロタノールS® 45~60 mg/日(分3~4)など
  3. その他 ➜ 内服のテオフィリン200~400 mg/日やシロスタゾール200 mg/日

  • 有症候性ならペースメーカ植込み術の適応であり,薬物療法はあくまでも"つなぎ"であることを認識しておくことが大切
  • 薬物療法では微妙な心拍数のコントロールが困難,効果が不確実,動悸や心臓外臓器への副作用なども問題になる
ペースメーカー

(投稿者 川崎)

2026-03-06

Bayés Syndrome ベイズ症候群

  • 心房間ブロック(P波持続時間>120ms)を特徴とする一連の病態
  • 由来はスペインの循環器内科医 Bayes de Luna の1979年の報告(#)
  • 第1度〜第3度に分類され、心房性不整脈(特に心房細動)と関連
  • 原因は炎症性、心アミロイドーシス、リンパ腫、電解質異常など
  • 治療は抗線維化薬、抗不整脈薬、抗凝固薬,心房再同期療法など


- 動悸を訴えるBayés症候群の76歳女性 -
図1 . II、III、VF誘導でP±が出現し、持続時間が120ミリ秒を超える進行性心房間ブロックの典型的な例。P波が増幅されると、3誘導におけるP波の始まりと終わりがより鮮明に見える。

図2 .心房活性化の図。(A) 正常な状況、(B) 部分的心房間ブロック、(C) 高度心房間ブロック(本文参照)。VFのP波はVF誘導のP波を示し、FPのPループは前額面のPループを示す。



(投稿者 川崎)

2023-03-10

論文 🏆 黄視症 Xanthopsia

  • 当院の初期研修医である春名先生が循環器内科で経験した症例が出版(少し前😅)
  • 心不全で入院 ➜ ジギタリス中毒(7.3 ng/mL)が判明 ➜ 追加問診で黄視症を確認
  • ポイントは視力や視野の異常はなく網膜電図( electroretinography: ERG)で異常

上段は入院時(ERGの反応低下)・下段は回復1月後(すべて正常化)

😀 おまけ
  • 本例は下腿浮腫に対して他院でジギタリスが0.25 mg/日が処方されていました.腎機能障害はなかったようですが,当院搬入時のeGFRは33.5 mL/min/1.73 m2でした(その後に53.6まで回復).
  • 問診で入院直前にバイクによる数回の自損事故を起こしていたことが判明しました.当初はジギタリス中毒による不整脈(特に徐脈:入院時40 bpm)を考えましたが,入院後に不整脈は検出せず.
  • よくよく聞いていくと,道路横の歩道ブロックが見えにくくなりバイクでぶつかっていたことが分かりました.これは夕方に顕著で信号色も不明瞭だったようです.そこから黄視症に辿り着きました.
  • ジゴキシン関連黄視症はジギタリス効果を発見したWitheringが200年以上前に報告しています(※).強烈な黄色で知られる画家ゴッホなど多くの人に影響を与えたと考えられているようです(#).

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

※ 心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)