TdP

感染症に対して抗菌薬を開始した数日後にモニターアラームが鳴った
その時に記録されたモニター心電図とその後に行った12誘導心電図

トルサードドポアント　🐾

• torsade[s] de pointes（仏語）＝twisting of the peaks（英語）＝倒錯性心室頻拍（邦名）
• QRS軸がねじれた多型性心室頻拍で臨床現場ではトルサードやTdPなどと呼ばれている
• 原因は電解質異常（低Mgや低Kほか），QT延長（薬剤性，先天性），アルコール依存など
• 自然停止することが多いが，動悸や失神，突然死の原因になるため早急の対応が必要

本例では薬剤性のQT延長に伴うトルサードドポアントが疑われた（下図は発症前の心電図）

過去の関連投稿

• トルサードドポアントとMg
• QT延長症候群（Long QT syndrome, LQTS）

（投稿者　川崎）

不整脈時にはMgも意識しよう！

トルサード・ド・ポアント例でマグネシウム濃度が1.3 mg/dLでした（基準値1.8～2.6）

• 電解質異常に関連する致死性の頻脈性不整脈といえば低カリウム血症が有名ですが，低マグネシウム血症も忘れるわけにはいきません．実際に臨床現場ではTdP型心室頻拍に対してマグネシウム1～2gを緩徐に静注することあり（保険上の適用はないがガイドラインには記載）
• 低マグネシウム血症による心室性不整脈の機序は不明な点が多いようですが，①低Mg血症が腎尿細管のイオンチャネルを介して低カリウム血症を惹起，②心筋細胞内のMg濃度が低下すると遅延整流外向きK電流が増加し感受性が上昇などが想定（心臓 2015;47:50-4）

👿 トルサードに関する過去の投稿は コチラ

（投稿者　川崎）

VTではあるが…

• ふらつきと動悸を訴えて来院した症例の心電図所見

• もちろん心室頻拍であると思われるが，その後半は波形が変化
• その心拍数は前半が150 bpmで，後半にほぼ300 bpmへと倍増

👴 独り言

• 心室頻拍の心拍数は通常120～250bpmであり，前半はやはり心室頻拍
• 心室粗動（心拍数は毎分250～300回）も考慮すべき ➜ 自験例はコチラ
• トルサードドポアントや短時間の心室細動も否定できないが・・・

モニター波形の関連投稿

1. モニター心電図クイズ
2. モニター
3. TdP
4. 心電図クイズ

（投稿者　川崎）

トルサードドポアントとMg

 http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

 

※ただし当院のケースは必ずしも持続あるいは反復症例ではなかった点に要注意

（投稿者　川崎）

モニター

• 難治性心不全に対してNPPV（非侵襲的陽圧換気）中であった症例のモニター

• トルサードドポアント（TdP）あるいは心室細動（VF or V-fib）と考えられる
• 本例は自然停止せず完全な細動波に移行（もちろん徐細動施行）
• VFの心電図定義は意外に難（如いて言えばPもQRSもTも認識不能）

👴 関連モニター投稿

• 症例1
• 症例2

（投稿者　川崎）

モニター心電図クイズ

• 心不全で入院中の症例で記録された心電図モニター波形

• 一見，致死性不整脈のトルサードドポアント（TdP: torsade[s] de pointes）
• しかしよく見るとR波の鋭いスパイクが規則正しく出現（下図の赤矢印）
• 最終的にこのモニター波形はアーチファクトによる偽性TdPと判断した

👴 良くあるのは「歯磨き中」や「痒くてモニター周囲を掻いていた」などだよ

（投稿者　川崎）

今週の一枚 🎯

気分不良で来院した症例

👀 解説

• V4-6誘導でST部分が低下している
• 下壁誘導もST部分の低下が目立つ
• よく見るとaVRでST部分が上昇！
• エコーはびまん性高度壁運動低下
• カテ室に移動してまずIABPを挿入
• その後の造影では主幹部の亜閉塞

💣 追加

• 本例のアンギオを注意して見てみると、僅かながら右冠動脈への側副血行路が確認できる（右冠動脈は#2で閉塞していた）．
• 緊急PCIで左冠動脈の血行再建には成功したが，ICUではTdP（トルサードドポアント／倒錯型心室頻拍）やVF（心室細動）

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ（PC版なら画面右の分類からも選択可）

（投稿者　川崎）

新シリーズ：大晦日の心電図クイズ

• 急性左心不全に対してICUでECUM中の維持透析症例
• 多発転移の担癌状態で虚血性心疾患の合併も疑われる

🗿 T波交互脈 T wave alternans (TWA)

• 定義　形態の異なるT波が1拍ごとに交互に出現する現象（ミクロレベルも含む）
• 初報　チェコの生理学者Hering？ (Munchen Med Wchenshr 1908;4:1417-21）
• 機序　心筋細動の活動持続時間（action potential duration; APD）の交互現象
• 原因　冠動脈疾患，自律神経異常，ペーシング，低体温，薬剤性，電解質異常など
• 意義　心臓突然死に対する感度と陰性的中率が高い（ただしエビデンスは不十分）

参考）心臓 2016;48:377-83

本例はトルサードドポアントが頻発したが電解質補正やリドカイン持続投与で対応できた

👶 おまけ

• T波交互脈（T波オルタナンス）と言えば，スペクトル法あるいはタイムドメイン法などの特殊な解析法を用いた微小レベルのマイクロボルトTWA（Microvolt-TWA: M-TWA）を意味することが多い．本例のように通常の12誘導心電図でT波の交互脈が肉眼的に確認できる症例は極めて稀と考えられる．今年見た中で最も印象的な心電図でした．

（投稿者　川崎）