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2025-01-05

冠攣縮とノルアドレナリン

  • つい先日,敗血性ショックに一過性ST上昇(下壁誘導)が合併し治療に難渋した症例を経験しました.緊急冠動脈造影で右冠動脈に高度狭窄(初回造影)を認めましたが,再造影時には狭窄は概ね消失していました.
  • しかしICU帰室後もST上昇を繰り返しました.大量補液と抗菌薬に加えて,ノルアドレナリンやステロイド,鎮静薬を併用し,2~3日で嵐は過ぎ去りました.そこで冠攣縮とノルアドレナリンに関して調べてみました.

📗 冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドラインのノルアドレナリン記載(以下の2点のみ)
  • 冠攣縮発作は冠動脈平滑筋受容体に作動するさまざまな刺激によって誘発されるが,自律神経機能の異常による刺激もそれに含まれる.ノルアドレナリンなどの血管収縮性神経伝達物質の遊離という直接作用のほか,交感神経系を介する血小板活性化によって,強力な冠動脈収縮作用を有するセロトニンの遊離も生じる.(7ページ)
  • 冠攣縮が遷延し,血圧低下や心原性ショック,重症不整脈,心停止などの危険な状態が起こりうることである.このような場合,硝酸薬(ニトログリセリンまたは硝酸イソソルビド)の冠動脈内注入により,すみやかに冠攣縮を解除する必要がある.また,血圧低下に対しては,昇圧薬(ノルアドレナリン)の投与も必要となる.(22ページ)

📘 冠攣縮誘発アセチルコリン負荷試験時にショックを呈した4例J Cardiol 2007;49:41–7
  • 冠攣縮解除目的で硝酸薬の投与をショック時に行うとかえって血行動態悪化に拍車をかける可能性があり血圧上昇が先決と思われる.
  • 冠動脈の拡張作用と血圧上昇作用を有するノルアドレナリンの大動脈内投与が必須と考える
  • その投与方法としてはノルアドレナリン1 mlを生理食塩水100 mlに溶解し,1 mlが10 μgの濃度に調整しショック時に大動脈内に3-5 ml注入することが推奨される.
  • 血圧上昇を認めた後に,硝酸薬を少量から冠動脈内投与するほうが安全と思われる.

📙 ノルエピネフリンの冠動脈径に対する影響(ChatGPTの回答:英語の日本語訳) 
  • ノルエピネフリン (NE) はノルアドレナリンとしても知られ、さまざまなアドレナリン受容体との相互作用を通じて冠動脈の直径に影響を与え、受容体のサブタイプと血管の状況に応じて血管拡張または血管収縮を引き起こします。
  • β₂アドレナリン受容体を介した血管拡張:単離されたヒト冠状動脈および小動脈において、NEは主に平滑筋にあるβ₂アドレナリン受容体の活性化を通じて血管拡張を引き起こします。この効果は内皮および一酸化窒素合成とは無関係です。研究により、この拡張はβ₂受容体遮断薬によって阻害できることが示されており、この反応を媒介するβ₂アドレナリン受容体が重要な役割を果たしていることを示しています。(Circulation 2002;106:550-5
  • α₂アドレナリン受容体を介した血管収縮:逆に、NEはα₂アドレナリン受容体を刺激することで冠動脈の血管収縮を引き起こす可能性があります。血管造影検査で冠動脈が正常な人では、α₂アドレナリン受容体の選択的活性化により冠動脈の血流と動脈径の両方が減少することが観察されています。これは、α₂アドレナリン受容体を介した血管収縮が冠動脈の血管緊張の調節に重要な役割を果たしていることを示唆しています。(Circulation 1992;86:1116-24

(投稿者 川崎)

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