👍 ポイント
- 中等度ASと中等度ARが共存した病態(MAVD)では,単独の中等症ASや中等症ARと比較して,有害事象の発生が有意に高い.
- MAVD患者は重症AS患者と同等の転帰であるが,(一見)駆出率は保たれているため症状について注意深く観察する必要がある.
👌 ガイドラインの文言:大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症(ASR)
- 単独のASまたはARにおいては,重症度分類に基づいた手術適応基準が各ガイドラインにおいて提唱されているのに対して,ASRに関する研究は少なく治療ガイドラインは明らかにされていない.このため,より重症な弁膜症の治療ガイドラインに基づいた管理および治療方針の決定が行われていると想定される.しかし,ASRは単独ASまたは単独ARとは異なる臨床経過をたどる可能性がある.過去の研究によれば,ASとARがともに中等症のASRであっても,その予後は重症ASと変わらないと報告されている680-682).ASRの特徴であるASによる圧負荷とARによる容量負荷が,中等度であっても複合的に予後へ影響する病態を生じるためと考えられる.ASRではASの圧負荷によって求心性肥大が生じ,ARの容量負荷によって遠心性肥大を生じるため,単独ASおよび単独ARに比較して心筋重量が増大する680-682).従来から心筋重量の増加は心疾患の予後と関連することが知られており,心筋重量の増大がASRの複合的な病態の重症度を反映している683,684).高度心肥大は左室拡張機能を低下させるが,ARによる容量負荷によって左室拡張期圧を急激に増加させ,心不全症状を顕性化させる685).ASRでは弁膜症の進行がなくても症状が認められるようになることがあり,弁疾患よりも拡張機能障害の進行が原因であると考えられる680-682).このように,従来のASもしくはARのガイドラインではASR患者の管理には不十分である.ASRでは弁膜症の重症度評価に加えて心筋重量や拡張機能評価を行い,中等症弁膜症ではなく重症ASに相当するより厳密な経過観察が推奨される.
引用)2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン(90ページ)
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(投稿者 川崎)
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