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2025-06-11

ACSのDダイマー

  • 救急現場ではDダイマーを血栓との関係で測定することが少なくありません.例えば肺血栓塞栓症や深部静脈血栓症,急性大動脈解離を疑うときです.一方,脳梗塞が疑われる症例で測定することは稀で,実際にあまり役に立たないようです(過去の投稿).
  • 今回,カンファレンス中にACS(急性冠症候群)でDダイマー測定の意義が議論になりました.循環器内科医の直観では,疾患特異性に欠けるため役立つとは思えません.ただ指導医として自信をもって説明することができなかったため,調べてみました.

📒 Clin Biochem 2022;104:22-29
  • ACS疑い患者3,557名の後ろ向き研究では,Dダイマーは再発性心筋梗塞および全死亡率に関する独立した予後予測情報を提供する可能性を示したが,Dダイマー値は95パーセンタイルを超える場合を除き,診断性能を向上させるものではなかった.

📕 Blood Coagul Fibrinolysis 2006;17:621-4
  • ACSを呈し心筋酵素が正常で救急外来を受診した124名の患者では,D-ダイマー検査はカテーテル検査所見と有意に関連した.

📒 Cardiol Res 2018;9:17–21
  • ACSが疑われる75名の検討では,Dダイマー測定は心筋梗塞と不安定狭心症を区別するための高感度かつ比較的高い特異度を持つマーカーとして適切であると考えられた.

📕 Am Heart J 2000;140:379-84
  • 急性胸痛を呈する連続257名の検討では,D-ダイマー値>500 μg/Lは心筋梗塞の独立した診断価値を有し,心電図および病歴の診断感度を73%から92%に上昇させた.

📒 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)
  • 初期診断に記載されているバイオマーカ―は,クレアチンキナーゼ(CK),クレアチンキナーゼMB分画(CK-MB),ミオグロビン,AST(GOT),LDH,H-FABP,心筋トロポニンT,心筋トロポニンI,ミオシン軽鎖ミオグロビンで,Dダイマーの記載は見当たりませんでした

💁 Dダイマーに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

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