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2024-06-14

血清ACE活性の上昇

😗 ACEの復習
  • ACE(angiotensin-converting enzyme)はCl-およびZn2+依存性のカルボキシペプチダーゼで,アンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへの変換の触媒に関与する.炎症促進作用のある強力な血管拡張物質ブラジキニンやその他のタキキキニン(サブスタンスP他)なども不活性化する.
  • ACE活性の亢進は主に肉芽腫性疾患など単球系細胞株の刺激を伴う病態で報告されている.肺病変の有無にかかわらずサルコイドーシスはこれらの疾患の中で最も頻度が高い.しかし他の肉芽腫性疾患(感染性あるいは非感染性いずれも含む)や非肉芽腫性疾患でも増加する可能性がある.

💥 ACE濃度が上昇する病態(サルコイドーシス以外)
  • 新生児や未熟児(その原因は出産後の肺毛細血管の発達が原因と思われる)
  • 多くの非感染性の播種性肉芽腫性疾患(マクロファージや単球などが産生)
  • 肉芽腫性疾患を生じる多岐にわたる感染症(非感染性肉芽腫性疾患と同様) 
  • 石綿肺(アスベストーシス)(内皮細胞およびマクロファージの両方が原因)
  • サルコイド様病変の類上皮細胞肉芽腫(サルコイドーシスと同等ではない)
  • ゴーシェ病(常染色体劣性遺伝性疾患で最も一般的なライソゾーム蓄積病)

😕 その他
  • アジソン病,α1-アンチトリプシン欠乏症,アミロイドーシス,ブラウ症候群,ディジョージ症候群,糖尿病,胆汁うっ滞,慢性疲労症候群,扁平苔癬,多発性硬化症,乾癬でも上昇した症例の報告あり


(投稿者 川崎)

2023-03-10

論文 🏆 黄視症 Xanthopsia

  • 当院の初期研修医である春名先生が循環器内科で経験した症例が出版(少し前😅)
  • 心不全で入院 ➜ ジギタリス中毒(7.3 ng/mL)が判明 ➜ 追加問診で黄視症を確認
  • ポイントは視力や視野の異常はなく網膜電図( electroretinography: ERG)で異常

上段は入院時(ERGの反応低下)・下段は回復1月後(すべて正常化)

😀 おまけ
  • 本例は下腿浮腫に対して他院でジギタリスが0.25 mg/日が処方されていました.腎機能障害はなかったようですが,当院搬入時のeGFRは33.5 mL/min/1.73 m2でした(その後に53.6まで回復).
  • 問診で入院直前にバイクによる数回の自損事故を起こしていたことが判明しました.当初はジギタリス中毒による不整脈(特に徐脈:入院時40 bpm)を考えましたが,入院後に不整脈は検出せず.
  • よくよく聞いていくと,道路横の歩道ブロックが見えにくくなりバイクでぶつかっていたことが分かりました.これは夕方に顕著で信号色も不明瞭だったようです.そこから黄視症に辿り着きました.
  • ジゴキシン関連黄視症はジギタリス効果を発見したWitheringが200年以上前に報告しています().強烈な黄色で知られる画家ゴッホなど多くの人に影響を与えたと考えられているようです().

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-03-06

時間外の病理検体

先日,休日の夜間に採取した検体の取り扱いに少し困ったので当院の病理検査室に確認しました

  • 休日であっても日中は検査室の担当者がいるため提出可能
  • 夜間(平日・休日ともに)は検体により対応が異なる
    1. 細胞診など湿潤固定する検体 ➜ 冷蔵保存となるため提出可能
    2. 組織診などホルマリン固定する検体 ➜ 常温でホルマリン保存し翌日の日中に提出
    3. 消化器系の病理検体(胆汁・膵液等)➜ 夜間でも提出可能

(投稿者 川角/川崎)

2022-12-09

メラス(MELAS)の診断

医局での会話 💨
  • 他科の専攻医 「先生,心臓の質問いいですか?」
  • 循環器専門医 「おぅ,なんでも聞いてくれ」
  • 他科の専攻医 「メラスってどうやって診断するんですか?」
  • 循環器専門医 「乳酸が高くて,あとは遺伝子だけど…汗」

  • Mitochondrial myopathy, Encephalopathy, Lactic Acidosis and Stroke-like episodes
  • 邦名はミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群
  • 多彩なミトコンドリア病の一つでMELASは最多(日本の741例中31.4%)
  • 診断の流れ:疑う ➜ 障害臓器を同定 ➜ ミトコンドリア機能異常の証明
  • 血液の乳酸やピルビン酸は常に高値とは限らず(髄液のみが高値例あり)

- ミトコンドリア病診断のためのフローチャート -

診断特異度が高いミトコンドリア機能異常の証明
病理検査
  • 骨格筋病理における酵素活性低下又は赤色ぼろ線維(ゴモリ・トリクローム変法染色におけるragged-red fiber:RRF)、高SDH活性血管(コハク酸脱水素酵素におけるstrongly SDH-reactive blood vessel:SSV)、シトクロームc酸化酵素欠損線維、電子顕微鏡によるミトコンドリア病理学的異常 
  • 骨格筋以外でも症状のある臓器野細胞・組織のミトコンドリア病理異常
  • 核の遺伝子変異の場合は、培養細胞などでミトファジーの変化や融合・分裂の異常を確認

酵素活性・生化学検査
  • 罹患組織や培養細胞を用いた酵素活性測定で、電子伝達系、ピルビン酸代謝関連 及びTCAサイクル関連酵素、脂質代謝系関連酵素などの活性低下(組織:正常の20%以下、培養細胞:正常の30%以下)
  • ミトコンドリアDNAの転写、翻訳の低下

DNA検査
  • 病因的と報告されている、又は証明されたミトコンドリアDNAの質的異常である欠失・重複、点変異(MITOMAP:http://www.mitomap.org/ などを参照)や量的異常である欠乏状態(正常の20%以下)
  • 又は、ミトコンドリア関連分子をコードする核遺伝子の病的変異

参考)難病情報センター ミトコンドリア病(指定難病21)

💁 ミトコンドリアの過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2022-10-05

セルブロック Cell-blocks

  • 細胞検体を様々な方法(下表)で固形化した後,パラフィン等で包埋し作製した細胞診標本
  • 組織構築の判断や特殊染色(免疫染色など)の追加も容易で通常の細胞診標本よりも優れる
  • 問題は作製に器具や試薬等を要すなど手間とコストがかかり,微量検体には使用できない等



実例 💙 心嚢液細胞診
 a:細胞診標本 ➜ 大型細胞集塊が出現していたが重積が著しく詳細な観察は困難
 b~d:セルブロック標本(+免疫染色) ➜ 腺管構造が明瞭で最終的に腺癌と判定

(投稿者 川崎)

2019-09-18

デーレ小体 Döhle bodies

  • 梢血塗抹標本で好中球に認める直径1〜2μmの卵円形また紡錘形の青味斑点
  • 正確な組成は不明(成熟が遅れた細胞質中にリボゾームが残留と推測:引用
  • 先天性血小板減少症メイ・ヘグリン(May-Hegglin)異常症に出現することあり
  • 後天性では重症感染症や火傷,骨髄異形成症候群などでも出現する(引用
  • その名前はドイツの病理学者 Karl Gottfried Paul Döhle (1855-1928)に由来


関連投稿 😡

(投稿者 川崎)