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2026-09-15

悪性水腫菌(Clostridium septicum)

  • グラム陽性の芽胞形成偏性嫌気性桿菌で土壌中などに広く分布している
  • 牛や馬など家畜の創傷感染症「悪性水腫」の原因菌として同定された菌
  • α毒素による壊死性筋炎から急速かつ進行性の菌血症性ショックに陥る
  • 誘因は好中球減少や大腸癌による腸管粘膜バリアの破綻(8割が癌合併)
  • 診断は血液培養・グラム染色、CTでの軟部組織ガス像評価(下の写真)
  • 治療は緊急外科的デブリードマンと広域抗菌薬(+悪性腫瘍への対応)
  • 生存率は C. septicum 菌血症で50%,ガス壊疽合併例では21%まで低下


大腸癌穿孔を伴う悪性水腫菌によるガス壊疽例(来院16時間で死亡)
(投稿者 川崎)

2026-09-13

グロームス腫瘍(グロムス腫瘍)  glomus tumor

  • グロムス体(皮膚の動静脈吻合で体温調節・血圧制御に関与)由来の良性腫瘍
  • 1812年にWoodが初めて記載し、1924年にMassonがグロムス体由来を確立した
  • glomusはラテン語で「糸くずの玉」や「毛糸玉」、「小さな球体」を意味する
  • 全軟部腫瘍の2%未満で、手指の爪下に好発し「爪下グロムス腫瘍」と呼ばれる
  • 三徴は疼痛・限局性圧痛・寒冷過敏性で駆血で疼痛消失(Hildreth's sign、※)
  • ダーモスコピーや超音波、MRIが病変の局在把握に有用で確定診断は病理組織
  • 鑑別診断は血管腫、静脈奇形、外骨腫、粘液嚢腫、悪性黒色腫、神経腫など
  • 治療は経爪的アプローチによる外科的完全切除で、完全摘出後の再発は少ない

引用)Eplasty 2008;8:e48、他

- 薬指のglomus腫瘍を有する44歳女性 -
3か月前から爪の変色、痛み、冷感の増強を訴えて来院。術前の爪の状態(左)、爪甲除去後の病変(中央上)、爪母からの腫瘍切除(中央下)、および術後2年経過した軽度の爪の変形を示す画像(右)。

(投稿者 川崎)

2026-09-05

壊死性筋膜炎の「三つの過ぎ」

😖 「痛すぎ」

  • 概要 pain out of proportion(POOP)が壊死性筋膜炎の診断上、最も重要な所見
  • 実際 所見の乏しさに比して耐えがたい激痛,蜂窩織炎と異なり発赤を超えて痛む
  • 注意 血管血栓形成に伴う皮下神経障害により,進行すると疼痛が消失し麻痺する



💣 「バイタル悪すぎ」

  • 概要 重症化すれば発熱・頻脈・敗血症性ショック・多臓器不全に至りうる
  • 実際 入院時に発熱を認めるのは25〜40%のみで,必ずしも高頻度ではない
  • 注意 初期は元気そうに見えることも多く,これが早期診断を妨げる一因



⏱ 「進行早すぎ」

  • 概要 感染は急速に進行し(分単位・時単位),外科的緊急疾患として扱われる
  • 実際 文献上は数時間で急速拡大、24〜48時間で紫色変色・水疱形成との記載
  • 注意 発症から24時間を超えた遅い外科的介入は死亡率上昇の独立した危険因子


(作成 生成AI/投稿者 川崎)

2026-08-29

クローブス症候群 CLOVES syndrome

  • PIK3CA遺伝子変異により四肢や体幹に奇形や過成長を伴う疾患で,PIK3CA-Related Overgrowth Spectrumの一つ
  • Congenital Lipomatous Overgrowth,Vascular malformations,Epidermal nevi,Scoliosis/Skeletal/Spinal anomalies の頭文字
  • 米国のJulie C SappらがCLOVE syndromeとして報告(Am J Med Genet A . 2007 Dec 15;143A(24):2944-58)し,後にSの追加(※)
  •  鑑別すべき疾患はProteus 症候群,Parkes Weber 症候群, Klippel-Trenaunay 症候群(KTS)など(確定は遺伝子検査)
  • これまでの報告は200例未満で,推定発症率は100万分のと非常に少な く,男女差や人種差はないと考えられている
  • PI3K/AKT/mTOR経路の下流mTORを阻害する分子標的薬であるシロリムスが難治性脈管奇形に対して有効という報告あり

- CLOVES症候群の特徴的な身体的所見 -

図1. 両側の躯幹に及ぶ大きな脂肪性腫瘤。左右に分布し、その一部は毛細血管奇形(ポートワイン母斑)に覆われている(A)。両手は左右非対称に幅広く過成長しており、指間腔が拡大している(B)。また、主に左第3・第4指を侵す巨指症を認める(C)。パネルDの写真は、特徴的な幅広の足と「サンダルギャップ(sandal-gap)」変形を示している。(AI訳)

(投稿者 川崎)

2026-07-22

ボクサー骨折 Boxer’s Fracture

  • パンチ動作に関連し生じた骨折で環指や小指の中手骨に多い
  • 特に先端の太い骨頭の根本の細くなった部分(頚部)に発生
  • 若年の男性でスポーツや喧嘩、肉体労働に従事する人に多い


- 職場での口論で机を叩きボクサー骨折を生じた56歳男性 -

(投稿者 川崎)

2026-05-29

Waddell's Sign ワデル徴候

  • 腰痛患者で手術後の予後不良例を予想する方法。近年では心因性(あるいは不適切な非器質性腰痛)を検出するために用いられることが多い。
  • スコットランドの整形外科医 Gordon Waddell (1943–2017)が提唱した8つの臨床的身体所見から成る(Spine (Phila Pa 1976) . 1980;5:117-25)
  • 表在性圧痛、非解剖学的圧痛、軸方向荷重、寛骨臼回旋、注意散漫下肢挙上不一致、局所的な感覚障害、局所的な筋力低下、過剰反応から判定
  • 器質的な原因を排除するものではなく、レビューでは「詐病との関連性に関する主張を裏付ける証拠はほとんどない」という否定的意見もある。

参考)StatPearls [Internet].、他

Waddell's Signの実際

(投稿者 川崎)

2026-05-02

🦴 ハバース管とフォルクマン管

  • 骨は外側の密度が高い緻密骨と内側の網目状になっている海綿骨に大別
  • 緻密骨は骨単位(オステオン)という構造の集まり(バームクーヘン様)
  • 骨単位の中心にはハバース管が通り(骨の長軸方向)、中に血管や神経
  • 一方、フォルクマン管はハバース管同士を横方向に連絡している(下図)

イメージと覚え方

 
💀 なんでも調査隊
(投稿者 川崎)

2026-04-22

ダーメンコルセット

  • 軟性体幹装具のひとつで、主として脊椎の支持および固定に使用
  • 効果機序:椎体は前方1/3に荷重が集中するため体幹前屈を制限
  • ダーメンはドイツ語のDamenに由来(女性・婦人Dameの複数形)
  • 元は中世に女性がウェストを細く見せるため使用したコルセット
  • 現在では性別を問わず腰椎・胸椎装具の一般名として用いられる

(投稿者 川崎)

2026-03-31

可塑かそ性 Plasticity

可塑性は医学でもしばしば遭遇する用語です。以下に論文タイトルの例を挙げます。
  • 大林茂. 脳科学とリハビリテーション医学をつなぐ 「脳可塑性」 の探究. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 2025;62:589-95.
  • 林卓杜, 工藤崇, 高橋智. 宇宙環境がもたらす骨格筋可塑性への影響. Journal of Japanese Biochemical Society 2022;94:910-5.
  • 南敏明, 伊藤誠二. 痛みの可塑性. 生物物理 2001;41:15-9.
でも可塑性の意味を問われるとうまく説明できない気がしたので調べてみました。

  • 可塑性とは物体に強い外力を加えた際、元に戻らずに変形を維持する性質のこと(対義語は弾性、elasticity)
  • 医学では脳や神経の可塑性(損傷後に起こるネットワークの構造的,機能的な変化)で用いられることが多い
  • 神経学的な代償とは,脳の可塑的性質を利用して,発症以前とは異なる状態で機能を改善することを意味(下図)

(投稿者 川崎)

2026-03-12

今週の一枚 🎯

中年女性の術前レントゲン

👀 頚肋けいろく(Cervical Rib)
  • 頚椎の横突起が先天的に過剰発達した状態(矢印)
  • 人口の約0.5~1%に発生して第7頸椎への付着が多い
  • 形状や付着部位は様々(片側性または両側性あり)
  • 多くの症例では症状なし(X線写真などで偶然発見)
  • 局所的な疼痛や周囲構造を圧迫時には介入が必要



👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-01-22

今週の一枚 🎯

2日前より発熱と咽頭~後頚部痛を訴える若い女性


(投稿者 川崎)

2026-01-21

ホーキンステスト(Hawkins test)
ホーキンス・ケネディテスト(Hawkins-Kennedy test)

  • 概略 肩峰下インピンジメント(棘上筋腱の損傷)の有無を判定する方法
  • 初報 カナダの医師 Hawkins と Kennedy(Am J Sports Med 1980;8:151-8) 
  • 方法 肩関節外転90度+肘関節90度の屈曲位で肩甲骨を受動的に素早く内旋
  • 判定 痛みが出現なら陽性(感度74% [57–85%],特異度57% [46–67%])(※)

- ホーキンステストの実際 -
(投稿者 川崎)

2026-01-15

今週の一枚 🎯

高齢者:足趾の痺れ→腰痛と発熱

😈 化膿性椎間板炎
  • X線:腰椎骨棘著明 ➜ DISH?(下記参照)
  • CT:L4/5椎間板の周囲に脂肪織濃度の上昇
  • MRI:同椎間板腔に液貯留かつ前方に連続
  • 高度の変形性変化+両側の外側陥凹狭小化
  • ドレナージ液から黄色ブドウ球菌(MSSA)

😐 DISH(ディッシュ)
  • 脊椎および脊椎外に特徴的な骨増殖(骨化) を呈する変性疾患
  • びまん性特発性骨増殖症 Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis
  • 糖尿病,高血圧,肥満,呼吸器疾患などと合併することが多い
  • 本邦での頻度は6~12%(70歳以上の男性に限定すると約50%)
  • 機序は解明されていないが骨形成障害の疑い(遺伝的な要因?)


👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-12-24

ROSA(ロザ) 人工膝関節置換術支援ロボット

🔔 人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty; TKA)
  • 従来のガイド法による手技では3度以上のずれが19-24%に発生
  • ナビゲーションで下肢アライメントや靱帯バランスの精度向上
  • ロボット支援手術で骨切りの制御が追加されより正確かつ安全
  • ROSA®は RObotic Surgical Assistantの略(Zimmer Biomet社)
  • ROSA の主な特徴は100以上の既存のモデルから3Dモデル形成
  • その仮想3Dモデルで骨切りラインやインプラントサイズを設定
  • ROSA を用いた人工関節手術は2020年4月から本邦で保険収載


- 従来のガイド手技 -



- ロボット支援 -

(投稿者 川崎)

2025-11-22

胸郭出口症候群 Thoracic outlet syndrome: TOS

  • 腕神経叢と鎖骨下動静脈が胸郭出口付近で圧迫されて生じる病態の総称
  • 頚肋や鎖骨,第一肋骨,前斜角筋,中斜角筋,小胸筋などで圧迫・牽引
  • 神経性,動脈性,静脈性に分類され,その頻度は神経性が圧倒的に多い
  • 神経性なら痛みや脱力,知覚異常、静脈性は腫れ,動脈性は冷感・疼痛
  • 原因は外傷や反復的な腕の動き,腫瘍,妊娠,頸肋などの解剖学的変異
  • 治療はNSIADs,頸肋切除,第一肋骨切除,斜角筋切離,血行再建術ほか
  • 明確な診断基準はなし(画像診断や神経伝導検査、症状を誘発する負荷)


鎖骨骨折後の血栓閉塞による胸郭出口症候群の59歳男性

(投稿者 川崎)

2025-11-10

フィジカルクイズ(No. 29 & 30)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-10-23

今週の一枚 🎯

真夏に体動困難でERに搬入された高齢者


(投稿者 川崎)

2025-09-16

脊髄刺激療法 Spinal cord stimulation:SCS

  • 硬膜外腔から脊髄に電気刺激を与え疼痛緩和+血流改善
  • 1968年に米メドトロニックが発売(世界で100万人以上)
  • 本邦では1992年に難治性慢性疼痛に対し保険適応で急増
  • 例:脊柱管狭窄症,幻肢痛,帯状疱疹後,バージャー病
  • 患者さん自身で電源のオン・オフや刺激の強さを調整可
  • 機序は下行性抑制系の賦活や上行性脳幹疼痛の抑制など?

 - 電極の留置例とイラスト -


😑 目安
  • ジアテルミ(温熱療法)および磁気共鳴装置(MRI)は禁忌(ただしMRI対応デバイスを使用時は設定変更後に可)
  • 放射線検査は可能,放射線治療は電源オフ後に実施(ただし緊急時は可能).基本的に家電や携帯電話は問題なし


(投稿者 川崎)

2025-09-09

化膿性脊椎炎の起炎菌

台湾の三次医療機関での12年間の検討(計414例)

本邦の二次医療機関での11年の検討(計48例)

⚡ 化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis)の復習
  • 発症は10万人に対し年2~6人(米国)
  • 平均67.8歳で基礎疾患合併59%(本邦)
  • CTガイド下生検およびMRI推奨(米国)
  • 抗菌薬の投与期間は長い(6週間~)
  • 神経的異常所見や脊椎不安定なら手術
  • 最終的に手術に至るのは全体の10~20%
  • ≒Vertebral osteomyelitis(椎体骨髄炎)

参考)J Spine Res 2021;12:4-9,他

🚑 椎体に関する過去の報告 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-31

Martorell's ulcer マルトレル潰瘍

  • 概要 高血圧(拡張期?)に関連した下肢の痛みを伴う難治性潰瘍
  • 原因 高血圧性下肢潰瘍、高血圧性潰瘍、壊死性血管性皮膚炎など
  • 由来 スペインの血管外科医 Martorell(Angiology 1950;1:133-140)
  • 症状 疼痛の強い単一または複数の病変(主に下腿前外側部に出現)
  • 疫学 高血圧のコントロール不良な中年(50~70歳)の女性に多い
  • 原因 内側動脈の小細動脈の閉塞により引き起こされる虚血性病変
  • 鑑別 カルシフィラキシス、壊疽性膿皮症、塞栓症、末梢動脈疾患
  • 治療 Ca遮断薬やACE阻害剤、プロスタグランジンE(PGE1)など
  • 予後 他の病因による潰瘍より強い痛みを伴い治療への反応は不良


- マルトレル潰瘍の1例 -

(投稿者 川崎)