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2025-03-09

レット症候群 Rett syndrome

  • 概要 神経系発達障害を主体とした重度かつ進行性のX連鎖性疾患(ほとんどが女児)
  • 命名 ウィーンの小児神経科医である Andreas Rett が1966年に報告した疾患(
  • 原因 80~90%にXq28に連鎖するMECP2遺伝子の変異(他はCDKL5やFOXG1の変異)
  • 疫学 出生女児10,000人当たり約1例の頻度(男児は出生前または乳児期早期に死亡)
  • 症状 乳児期早期に外界への反応の欠如、筋緊張低下,その後に手の常同運動など
  • 治療 根本的治療法ななく対症療法(理学療法,療育,薬剤療法,側弯などは手術)
  • 予後 全身進行性で生命予後は感染症や誤嚥,QT延長の不整脈などの合併症による

参考)難病情報センター,他

- Rett症候群の経過 -

- レット症候群の2 -

(投稿者 川崎)

2025-03-08

死体遺棄罪・死体損壊等罪

  • 刑法第190条「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者」を、死体損壊等の罪で処罰する
  • 死体遺棄罪・死体損壊等罪には、3年以下の懲役(罰金の規定はなく刑事裁判で有罪になればかならず懲役が選択される重罪)
  • 近い行為として挙げられるのが刑法第189条に定められている「墳墓発掘罪」や「墳墓発掘死体損壊等罪」(2年以下の懲役)


医師でも死体にメスを入れる行為は上記の死体損壊罪にあたったが,1949年に死体解剖保存法が制定され仕組みが整備された(死体損壊の違法性の阻却).以下の行為が該当すると思われる.
  •  (a)病理解剖:「死体の解剖に関し相当の学識技能を有する医師、歯科医師その他の者であって、厚生労働大臣が適当と認定したものが解剖する場合」(2条1項1号)。病因解明を目的とする解剖を想定している。原則として、遺族の承諾が必要であるため(7条)、「承諾解剖」といわれることもある。
  • (b)系統解剖:医学・歯学に関する大学・大学学部の「解剖学、病理学又は法医学の教授又は准教授が解剖する場合」(同2号)であり、遺族から提供された死体(献体)、引き取り手のいない死体(12条、13条)について「身体の正常な構造を明らかにするための解剖」(10条)。(a)と対応させる意味で「正常解剖」と呼ばれることもある。献体法(医学及び歯学の教育のための献体に関する法律)は、これを「医学又は歯学の教育として行われる身体の正常な構造を明らかにするための解剖」として、この呼称を用いている(2条)。
  • (c)行政解剖:行政機関の行う死因究明のための解剖監察医が死因を明らかにするために行う解剖(同3号、8条)、食品衛生法・検疫法による解剖(同5号、6号)。
  • (d)司法解剖:警察・検察・裁判所が行う解剖。刑事訴訟法、「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」による解剖による解剖(同4号、7号)。 法律に規定のない行為であっても、違法性が阻却されることはある。海上への散骨は墓埋法に、組織移植は臓器移植法に、いずれも明文で規定されていないが、これが違法であって死体損壊罪を成立させるものとは考えられてはいない。

死体解剖についても,死体解剖保存法の規定する上記(a)~(d)以外の解剖であっても許されるものがある.サージカルトレーニング(遺体を用いた手術手技の研修,cadaver training)はその例である.


😐 おまけ
  • 死後の処置(いわゆるエンゼルケア)は主に看護師が行っていますが,医師や看護師以外でも問題はないようです.死体損壊罪(刑法190条)に対しては,仮にエンゼルケア中に死体に傷をつけたとしても,意図的ではないので「損壊行為」には当たらないと考えられるためだそうです.


(投稿者 川崎)

2025-03-07

ホフマン症候群 Hoffmann syndrome

  • 概略 甲状腺機能低下でミオパチー(筋疾患)を伴った状態
  • 名称 独の神経内科医である Johann Hoffmann (1857–1919)
  • 症状 運動不耐性,筋肉疲労やけいれん,筋肉痛,筋弛緩遅延
  • 特徴 深部腱反射の遅延(特にアキレス腱反射の弛緩相の遅延
  • 検査 筋電図は正常,神経障害性,筋障害性,混合型などが有
  • 採血 血清CKは正常~上昇(もちろんT3・T4低下+TSH上昇)
  • 治療 甲状腺ホルモン補充(予後良好で筋肥大は約3月で改善)

ホフマン症候群の一例2019 Shiro MATSUBARA
① 甲状腺機能低下症の患者に筋の仮性肥大が見られたが、筋力は軽度に低下していた。
② 筋生検では筋線維横径の異常な大小不同、一部の線維の変性、および間質の開大が見られた。

(投稿者 川崎)

2025-03-06

今週の一枚 🎯

心雑音で来院した症例

👀 解説
  • 安静では指先に特記すべき所見なし
  • 圧迫時の爪床の中部~遠位部に注目
  • 白色とピンク色の色調変化に気づく
  • 最終診断は二尖弁の大動脈弁逆流症

👂 独り言
  • 心音(特にⅢ音やⅣ音などの低調音)は,何度も聴いて耳に覚え込まします.視覚も同じです.何度も見ていると僅かな変化にも気が付きます.
  • この動画はそういった眼の練習に最適と思われます.本例は中等度の大動脈弁逆流ですが,中等度以上なら,ほぼクインケ徴候は観察できます.
  • 本コンテンツには大動脈弁逆流例の爪床変化が多くアップされています(コチラから).爪圧迫以外の描出ワザも是非,マスターしてください.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-03-05

クリマトラキ©

🕕 早朝のICUで... 
  • 内科系医師「Aさんの具合はどう? 確か昨日,気切したんだよね」
  • ICU 看護師「順調です.今日にでも,クリマトラキにできそうです」

👃 クリマトラキ
  • 気管切開患者用人工鼻で吸入ガスを加温・加湿するために使用される
  • 一般的名称は人工鼻,販売名はクリマベント,製品名はクリマトラキ
  • クリマトラキ,クリマトラキP,クリマトラキPバルブ付などがある
  • 人工鼻(heat and moisture exchanger, HME)は24時間ごとに要交換


👉 医療機器に関するの過去の投稿は コチラ(PC版なら右欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-03-04

第99回(2010)看護師国家試験より 

問題 死亡後、硬直が始まる時間はどれか。

 
 
 
 

判定

📐 死後硬直(Rigor mortis)
  • 20℃前後では通常,死後2~3時間で顎や首から始まり,12時間ほどで大関節、末梢関節などの全身に及ぶ(硬直のピーク).青壮年者で経過が速く,老人や小児では遅い.
  • 機序は,好気的な代謝は停止するが、嫌気的な代謝は継続して行われるためである.つまり筋肉中に乳酸が溜まりpHが低下して、ミオシンとアクチンが強く結合し硬くなる.
  • 死後30~40時間程度で徐々に硬直は解け始め(緩解/目安は夏は2日で冬は4日),死後90時間後には完全に解ける.これはプロテアーゼにより筋源繊維が切断されるため.

参考)Wikipedia

- 死後の変化 -
💫 国家試験に関連した過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-03-03

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-03-02

眼科用マイクロジアテルミー

  • 先日,眼科から循環器内科に「ICD(植込み型除細動器)を有する症例の白内障術前コンサルト」がありました

👀 眼科用マイクロジアテルミー
  • ジアテルミー(diathermy)とは日本語では透熱療法と訳され,高周波電磁流や電気を用いて,体の組織に熱を発生させる治療法
  • 眼科手術で,患部組織を凝固・止血する装置である.白内障だけでなく,網膜剥離術や緑内障術,など広範囲な手術に適応できる
  • 禁忌・禁止:埋め込み型ペースメーカー及び埋め込み型除細動器を使用している患者にコアギュレーション機能を使用しないこと


(製造販売企業:有限会社田川電気研究所)

😑 コメント
  • 本症例の手術は他の理由で中止になりましたが,今後の対策は必要です.ガイドライン中のジアテルミーに関する記載は一ヵ所で,「マイクロ波ジアテルミーの使用は避ける」のみです(P 14).ペースメーカの誤認に加えて,ジアテルミー自体が心室細動を誘発した症例報告もあり(J Innov Card Rhythm Manag 2021;12:4410–2).
  • 内視鏡ジアテルミーなどは比較的安全と考えられているようですが(Endoscopy 1998;30:544-7),やはりペースメーカを植込んでいる症例ではジアテルミーの使用は避けた方がよさそうです.(おまけ:歯科領域の超音波スケーラーも同様にペースメーカ禁忌とされていますが,実際には使用されていることが多いと思われます ➜ 過去の投稿

(投稿者 川崎)

2025-03-01

腎臓リハビリテーション

透析時運動指導等加算の算定要件の概要令和4年度
  • 人工腎臓を実施している患者に対して、当該指導を開始した日から起算して90日を限度として、75点を加算する。
  • 研修を受講した医師、理学療法士、作業療法士、看護師が血液透析中に連続20分以上実施した場合に算定できる。
  • 医師が診療録が必要で、1人当たりの患者数は1回15人程度(看護師は1回5人程度)を上限(入院患者は20人、8人)
  • 指導等に当たっては、日本腎臓リハビリテーション学会「腎臓リハビリテーションガイドライン」等を参照すること
  • 室内に心電図モニター、経皮的動脈血酸素飽和度、血圧計を有し,救命に必要な器具及びエルゴメータも望まれる
  • 当該加算を算定した日は、疾患別リハビリテーション料は別に算定できない(例:介護保険のリハビリテーション)


😐 追加コメント
  • 当院でも2025年1月から(遅ればせながら)算定を開始しました.しかし腎リハはあくまでも加算であり,従来のリハビリテーション料とは概念が全く異なるようです.よって心臓リハビリテーションなど既に疾患別リハビリテーションが算定可能な場合は,そちらを優先したほうがいいそうです.あくまでも疾患別リハビリテーションを算定できない施設や症例を対象に算定する事を想定しているようです.

(投稿者 川崎)