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2025-07-18

日本内科学会 第248回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題64 Gitelman症候群と診断した反復性低K血症と低Mg血症の1例
  • 本症はNa-Cl共輸送体(SLC12A3遺伝子)の変異に起因し、遠位尿細管でのNaおよびCl再吸収障害をきたす疾患である。類似疾患のBartter症候群との鑑別が必要であるが、本症は低Mg血症や低Ca尿症を伴うことが特徴である。軽度の脱水や胃腸症状を契機に重篤な電解質異常を反復するため、KおよびMg補充に加え、適切な水分電解質摂取を含む生活指導が重要である。

演題69 Pantoeaによるカテーテル関連血流感染の1例
  • カテ先培養と血液培養の結果でPantoea sp.が検出された。薬剤感受性結果から抗生剤をCTRXに変更し、その後症状の再燃なく、抗生剤を2週間投与したため退院となった。グラム陰性桿菌であるパンテアはカテーテル関連血流感染の原因菌として非常に珍しい。

演題102 ピサ症候群を呈した抗凝固療法中尾状核出血の1例
  • 右へ傾くピサ症候と左への体幹のねじれを呈し、右上肢固縮と姿勢時振戦、軽度の右下肢単麻痺も認めた。ピサ症候は立位や座位時に増強、仰向けになると正中に戻り、腰曲がりはなかった。頭部CTで左尾状核に直径1.5cmの血腫、左側脳室へ穿破を認め責任病巣と判断した。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-07-13

第139回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
2-12 クレアチニンキナーゼ欠損症を合併したST上昇型急性心筋梗塞の一例
  • 右冠動脈(RCA)#2 閉塞を認め,経皮的冠動脈形成術を施行した(total ischemic time 144分)。術後,高感度トロポニンI(hs-TnI)の上昇は認めたが,クレアチニンキナーゼ(CK)の上昇は認めなかった(peak CK[IU/L]/CK-MB[IU/L]/hs-TnI[pg/mL])=169/5/16863)。

2-16 自己免疫性心筋症の関与が示唆された虚血性心筋症の一例
  • 心臓MRI検査では冠血流支配領域に一致しない壁運動低下を認めた。さらに血液検査や心筋病理において,自己免疫性心筋症を疑う所見が得られ,至適薬物療法にも関わらず心機能は進行性に低下を認めた。

7-31 irAEによる洞不全症候群に対して心房リードレスペースメーカ植え込みを行った1例
  • ペースメーカ感染を認め全身麻酔下に経皮的リード抜去術を施行,全システム抜去術に成功した。元々のペースメーカ設定はAAIR⇔DDDR,60ppmであったが,累積心室ペーシング率が1%未満であったため心房リードレスペースメーカ(Abbott社製Aveir AR)の植込みを選択,右心耳基部に留置しAAI60ppmの設定とし た。

8-27 シトステロール血症の病原性変異の網羅的文献検索と早発性冠動脈硬化症
  • シトステロール血症はABCG5/G8遺伝子の病原性変異により発症する疾患で血中シトステロール高値に加えLDL-C高値,アキレス腱肥厚を伴い,家族性高コレステロール血症との鑑別を要する。


👻 当院からの発表
  • 2-10 冠動脈ステントで誘発されたコーニス症候群の1例(循環器内科 角本拓也ほか)
  • 4-16 心電図変化が気胸部位の推定に有用であった1例(循環器内科 江上 晟ほか)
  • 8-24 シンプル頚静脈©:負荷頚静脈法の学習アプリ(循環器内科 川﨑達也ほか)

江上先生は優秀賞ゲット & すべて英語論文として発表前に出版 👏

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(投稿者 川崎)

2025-05-13

第11回日本心筋症研究会より

😀 個人的に気になった報告

SY4-3 肥大型心筋症のエレクトリカルストームに対する最終戦略:体外放射線治療
  • 単極カテーテルアブレーション(RFCA)後の再発性心室頻拍(VT)に対し、2015年に初めて心臓定位放射線治療(Cardiac-SBRT)の臨床報告が発表 され、新たな治療アプローチとして注目されている。2017~2024年の225人を対象としたレビューではSBRT後のVT再発が90%、ICDショックが91%減少した。一方で完全寛解はまれであり、6か月間の生存例のうちVT再発が30%認められた。有害事象は軽症なものが大多数を占めており、心機能低下例は報告されていない。

YIA-2 がん治療関連心機能障害(CTRCD)発症予測における新規心エコー指標 Myocardial Work Index(MWI)の意義
  • MWIは左室心筋仕事量を解析する新しい心エコー指標でCTRCDの発症予測の一助となる可能性がある。(追記:3つの心尖ビューにおける標準的な全体的縦方向歪みGLS分析+収縮期カフ血圧+大動脈弁および僧帽弁の開閉のタイミングからソフトウェアで計算)

P1-6 プレセニリン2欠損心筋細胞の超微形態学的解析
  • プレセニリン2(PS2)は、小胞体(ER)のミトコンドリア関連膜に存在する蛋白分解酵素の触媒蛋白である。PSEN2遺伝子変異は家族性アルツハイマー病の原因となるが拡張型心筋症の発症にも関与する。

P2-4 重症大動脈弁狭窄症を合併した閉塞性肥大型心筋症に対する治療戦略
  • 大動脈弁狭窄症と閉塞性肥大型心筋症は一定数で併発することが知られている。両疾患が合併した症例に対し大動脈弁狭窄症に対して経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI:Transcatheter Aortic Valve Implantation)を施行した後に、左室流出路閉塞の増悪による収縮期僧帽弁前方運動から僧帽弁逆流が増悪し、血行動態が破綻する症例があり、"Suicide left ventricle”として知られている。

P3-7 解釈の誤りにより診断が遅れ治療機会を逸した女性心ファブリー病の一例
  • 心筋生検では核の腫大・不正化、空胞変性を高度に認め、電顕でzebra body を確認し Fabry 病を疑った。αガラクトシダーゼ活性は正常で、遺伝子解析(GLA エクソン・IVS4 含むイントロン)も異常なく、心 Fabry 病は否定的と判断。10年後に本人の了承を得てLyso-Gb3を測定したところ 13.9ng/mL(cut off<2)と高値で Fabry 病の可能性が極めて高いと判明した。

P4-3 ピロリン酸シンチ陽性ATTR心アミロイドーシス probable診断連続20症例の腹壁脂肪吸引生検アミロイド陽性率
  • 従来15%とされているよりもはるかに高い80%ものアミロイド陽性率を認めた(全てTTR免疫染色でも陽性)。


💁 参加記
  • 今回は山形県の天童市での開催でした(同研究会への参加は初めてです).空港から天童市へのアクセスが良くありませんでしたが(なんと公共交通機関なし),とても落ち着いたきれいな街でした.
  • (個人的に好きな)将棋の街で,至る所で将棋の駒のオブジェを目にしました.会場の天童ホテルの横に水車生そば(鳥中華の発祥の店)や広重美術館(東海道五十三次を展示中)もあり楽しめます.
  • 全体的に少しこじんまりした会でしたが,心筋症に特化しているだけあって,尖がった濃い演題が多かったように感じました.僕も「肥大型心筋症の身体所見:その頻度と臨床的意義」を発表しました.

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(投稿者 川崎)

2024-12-15

日本内科学会 第246回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題101 肝硬変に生じたパスツレラ症の1例
  • パスツレラ症は代表的な人獣共通感染症であり,Pasteurella multocidaはヒトを除く哺乳類の口腔内常在菌で,イヌでは75%,ネコではほぼ100%に常在するとされる.免疫能の低下した症例で重症化しやすい.

演題179 Burkholderia属菌によるCepacia症候群の1例
  • Burkholderia属菌は特に嚢胞線維症に致死的な呼吸器感染症を起こす菌として報告され,Cepacia症候群と呼ばれる急性に進行する菌血症を伴う壊死性肺炎は致死率が非常に高く臨床的に問題となる.

演題218 溺水により運動後急性腎不全(ALPE)を発症した 1 例
  • 溺水後の急性腎障害は溺水患者の43%に発生した報告もあり,原因は低酸素による尿細管障害,横紋筋融解症,多臓器不全による全身性炎症反応等が考えられる.

演題234 COVID-19肺炎の経過中にセフトリアキソン脳症が疑われた腹膜透析患者の1例
  • 抗菌薬投与中に意識障害,不随意運動を認めた際には,抗菌薬関連脳症を疑い抗菌薬の中止または変更が必要である.原因薬剤の診断のためには,血中濃度を測定しておくことが望ましい.


👻 当院からの発表
  • 演題35 左鎖骨下静脈経由の二腔ペースメーカ植込み後に両側気胸を生じた1例(総合診療科 國延拓也先生 🎉 すでに論文化してPubMedに収載
  • 演題210 腰椎神経根症による脱神経性筋障害を高CPK血症とともに呈し,炎症性筋疾患との鑑別を要した1例(膠原病・リウマチ内科 正木 暁先生)

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(投稿者 川崎)

2024-12-08

第138回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
B-15 遷延する高度徐脈・低血圧をきたし,蜂蜜中毒と診断した一例
  • 蜂蜜中毒はトルコを中心に世界各地で報告されており, 有毒成分Grayanotoxinが原因である. コリン作動性の症状を呈するのに加え, 低血圧やショック, 徐脈, 完全房室ブロックなどが起こり得る. 本症例ではアトロピンの静脈注射を行い, 数分後速やかに循環動態が改善した.

D-3 Micra植込み後ダンシングに対し、経皮的抜去を行った一例
  • 右大腿静脈からMicaデリバリー用シースを挿入し、ダブルスネアテクニックにてMicra本体を2本のスネアで固定しながらデリバリーシース内に格納後、デリバリーシースごと抜去した。

発表ではありませんが…
  • 今回は10時過ぎからコーヒーブレイクセミナーが4会場,15時過ぎからアフタヌーンセミナーが6会場で実施されていました(近畿地方会では初の試み?).いずれも飲み物と和菓子あるいは洋菓子が二つほど入った紙袋がもらえました.もちろんお昼にはランチョンセミナーが7会場でありました.すべて完食したので大満足(でも食べ過ぎ😅)


👻 当院からの発表
  • B-25 拡張期奇異性血流を呈したATTR心アミロイドーシスの1例(循環器内科 西機恵実ほか)
  • B-38 負荷頚静脈評価法:心不全症例のリスク判定(循環器内科 川崎達也ほか)
  • D-25 収縮性駆出性雑音を呈した動脈管開存症の1例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • D-27 発作性心房細動を契機にPH crisisを生じた心房中隔欠損症の一成人例(循環器内科 川俣博史ほか)
  • I-9 心室頻拍の起源が診断契機になった心臓限局性サルコイドーシスの1例(循環器内科 積木勇人ほか)

すべて論文化(4編英語:掲載済1,採択1,投稿中2,作成中1)

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(投稿者 川崎)

2024-05-26

第137回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
1-9 ペースメーカ留置時に偶発的に採取した心筋片より診断に至った心アミロイドーシスの一例
  • 経静脈PM植込み時にポケットから採取した脂肪とリード先端より偶発的に採取できた心筋を提出し,病理検査で心筋組織にアミロイド沈着を認めた。伝導障害例や高齢者では生検の実施が困難な場合があり,我々は経静脈PMの植込み時に低侵襲でアミロイド沈着を証明できた症例を経験したので報告する。

3-21 右腋窩-右外腸骨動脈バイパスにより心不全の改善を認めたCoral reef aortaの1例
  • 主に腎動脈上の腹部大動脈に起こる限局性,珊瑚状の石灰化及び狭窄病変が特徴的であるCoral reef aortaは,難治性高血圧,臓器・下肢虚血を呈する。後負荷増大による心不全をきたしExtra-anatomical bypassが奏功した症例を報告する。

3-28 右総腸骨動脈の慢性完全閉塞病変に対して0.035 CROSSLEADを用いて秒でwire crossできた一例
  • CTO病変にCROSSLEADを“秒”で通過させることに成功。0.035 CROSSLEADは従来の0.035ワイヤーと異なりトルクレスポンスも良く操作性にも優れているため,このようなCTO病変 治療における1stワイヤーとなり得ると思われた。

6-19 Ehlers-Danlos 症候群に合併した特発性尺骨動脈瘤破裂の1例
  • エコーでは,右尺骨動脈瘤を認めた。しかし,造影剤アレルギーの既往があり,TEAは困難と判断し,経過観察となっていた。翌週に,急激に右前腕の腫脹,尺骨側の神経障害を認めた。エコーで,同部位の破裂を認め,緊急手術となった。術中所見は,血管壁は破綻しており,尺骨動脈の中枢側および末梢側を同定して結紮。

6-35 心膜外脂肪壊死の一例
  • 数日前からの上下肢浮腫と深吸気時胸痛を主訴に前医を受診,両側胸水貯留を指摘され当院へ紹介。入院加療とするも,約1週間で症状は自然軽快し心嚢水と胸水も減少したため,第9病日より外来フォローとした。その後も症状は再燃せず,2か月後のCTでは楕円形腫瘤と心膜肥厚は消失。心膜外脂肪壊死は急性の胸痛を呈するが,保存的治療で自然軽快する良性疾患である。腹膜垂炎等と同様の機序による脂肪壊死が病因とされている。胸痛をきたす疾患の一つとして考慮すべきと思われた。


👻 当院からの発表
  • 3-7 頸静脈所見が診断に有用であった心房頻拍の1例(循環器内科 林 寛人ほか:優秀賞,写真中央)
  • 4-6 身体所見が診断に有用であった急性大動脈弁逆流の1例(循環器内科 髙林彩香ほか)
  • 6-1 急性心筋梗塞を契機に診断された心アミロイドーシスの1例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • 6-2 身体所見から形態学的診断に迫ることができた右室流出路狭窄を有する両室肥大型心筋症の1例(循環器内科 川崎達也ほか)

すべて英語論文化(1つは掲載済,2つは投稿中,もう1つは投稿準備中)

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(投稿者 川崎)

2024-04-05

FACP

Fellow of the American College of Physicians の略称で,毎年春に開催される ACP の年次総会において Convocation Ceremony で称号が授与される.本邦のFACPメンバーは コチラ から確認可能.

📚 ACP(American College of Physicians:米国内科学会)
  • フィラデルフィアに拠点を置く,成人の診断,治療,ケアを専門とする内科医の全国組織.会員数161,000人の米国最大の医療専門組織であり,米国医師会に次いで2番目に大きい医師グループ
  • 医学誌 Annals of Internal Medicine を発行している.ACP の日本支部は .もう一つの ACP(Advance Care Planning/アドバンス・ケア・プランニング)に関する過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-31

循環器関連学会:略語集

  • ESC (European Society of Cardiology) ➜ 欧州心臓病学会
  • AHA (American Heart Association) ➜ アメリカ心臓協会
  • ACC (American College of Cardiology) ➜ 米国心臓病学会
  • WHF (World Heart Federation) ➜ 世界心臓連盟
  • APSC (Asian Pacific Society of Cardiology) ➜ アジア太平洋心臓病学会
  • JCC (Japanese College of Cardiology) ➜ 日本心臓病学会
  • JCS (Japanese Circulation Society) ➜ 日本循環器学会
  • OCC (Oriental Congress of Cardiology) ➜ 东方心脏病学会议
  • KSC (Korean Society of Cardiology) ➜ 대한심장학회(大韓民国循環器学会)
  • TSOC (Taiwan Society of Cardiology) ➜ 中華民國心臓學會
  • CSC (Chinese Society of Cardiology) ➜ 中华医学会心血管病学分会
  • GW-ICC (Great Wall International Congress of Cardiology) ➜ 长城心脏病学大会

🉐 略語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-19

日本内科学会 第243回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題14 痙攣発作にて発症したMOG抗体関連疾患(MOGAD)の1例
  • 自己免疫性脳炎の診断でステロイドパルス療法および抗てんかん薬投与を行った。血液・髄液検査にて抗MOG抗体陽性が判明しMOG抗体関連疾患と診断した。成人発症のMOG抗体関連疾患は視神経炎や脊髄炎として発症することが多い。

演題37 急激な経過で死亡したpheochromocytoma multisystem crisis(PMC)の1例
  • 来院時は不穏状態で,体温38.5℃・血圧200/110mmHg・心拍数142/分・SpO2 70%(カヌラ2L/分)で末梢冷感著明であった。腹部CTで長径7cm大の左副腎腫瘍を認め褐色細胞腫の合併が疑われた。著しい低左心機能を原因とした肺水腫であったためECMO/IABPを導入し血管拡張薬やα遮断薬を開始したが,5時間後に再度心停止となり永眠された。PMCは多臓器不全や精神症状,血圧異常など多彩な症状を示し,急性期での診断は困難である。

演題57 Eight-and-a-half症候群を呈しMRI拡散強調像は偽陰性であった橋梗塞の1例
  • One-and-a-half症候群に末梢性顔面神経(VII)麻痺を合併するものをeight-and-a-half症候群と呼ぶ。本例は左MLF(medial longitudinal fasciculus:内側縦束)症候群と左側方注視麻痺を認め,左one-and-a-half症候群であった。さらに左末梢性顔面神経麻痺も認め,eight-and-a-half症候群を呈しており,病巣は左橋下部被蓋の傍正中部と局在診断した。

演題139 glomus腫瘍の1例
  • 症例は50歳代,女性。卵巣腫瘍術前の胸腹部造影CTにて胃前庭部に18mmの濃染される粘膜下腫瘍を認めた。上部消化管内視鏡検査では胃前庭部大弯に20mmの粘膜下腫瘍(SMT)を認めた。glomus腫瘍は四肢末端に存在し体温や血流調節に寄与しているとされるglomus体に由来する非上皮性腫瘍である。glomus腫瘍は胃の間葉系腫瘍の約1%と稀である。

演題191 児にFemoral Facial Syndromeを認めた2型糖尿病合併妊娠の1例
  • 第2病日に選択的帝王切開術施行。児は口唇口蓋裂,大腿骨・腓骨欠損、四肢拘縮・短縮を認めFemoral Facial Syndrome (FFS)が疑われた。FFSは大腿骨低形成や眼瞼斜列上・上唇の菲薄化・小顎症等特徴的な顔貌を呈する疾患で,本邦では数例しか報告されていない。


👻 当院からの発表
  • 演題228 膿胸治療中にバンコマイシン関連円柱腎症を来した1例(腎臓内科 野一色陽菜先生)

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(投稿者 川崎)

2023-12-17

第136回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
4-17 心筋梗塞後のVT/VF stormに対してPurkinje systemのde-networkingが有効であった一例
  • 心筋梗塞後の VT/VF storm は重大な合併症である。Purkinje-related triggerを標的とするアブレーションの有効性が報告されてきたが,新たな手法としてPurkinje de-networkingが注目されている。VT中に先行するPurkinje電位を認め,左脚後枝末梢及び前枝領域のde-networkingを図りnon-inducibleで終了したが再発。再治療時にleft septal fascicle領域のde-networkingを追加することでstormからの離脱と救命に成功。

5-21 血行再建を施行された夏型・冬型心筋梗塞の背景因子・予後比較
  • 夏型MIはplaque erosion,冬型MIはplaque ruptureが多いことが示唆されている。しかし今回の単施設での検討では,夏型(6~8月)MIに比して冬型(12~2月)MIでは STEMI患者やLMT病変の割合が多かったが,予後に差は認めなかった。

6-9 Marshall静脈へエタノールアブレーションが奏効した僧帽弁輪旋回型心房頻拍の一例
  • 僧帽弁輪旋回型心房頻拍と診断し,僧帽弁輪峡部に対する線状焼灼およびMarshall静脈(VOM)の走行に沿って内膜を焼灼中に心房頻拍の停止を得た。しかし,4ヶ月後に心房頻拍が再発したため再CAを行った。前回と同じ VOM を介した僧帽弁輪旋回型心房頻拍と診断された。心内膜側からの通電では永続的なブロックが難しいと判断し,エタノールアブレーションを行った。エタノールをVOMに注入したところ頻拍周期が延長を伴って停止し,僧帽弁輪峡部のブロックを得た。(補足)マーシャル静脈は冠静脈洞から分岐し左肺静脈と左心耳の間の心外膜側を斜走する静脈で,心房細動の発生や維持に関与することがある。

7-7 金属アレルギーを有する労作性狭心症患者に対して,proBIO coatingを有するOrsiro stentで治療し得た1例
  • RCAに高度狭窄病変を認めたが,金属アレルギーの申告があったため,薬物治療を優先する方針とした。後日実施した金属アレルギー検査ではニッケルで陽性,ステントではXienceで陽性が確認された。最終的に本症例では金属イオン溶出を抑制し得るproBIO coatingを有するOrsiroステントで治療を実施した。(補足)このproBIO coatingはステントの金属表面と周辺血管組織との間に起こる炎症の一因とされる金属イオンの溶出を抑制することで再狭窄を減らしているそうです。

8-6 Wolf-Ohtsuka法術後に両心房血栓を認めた一例
  • ヘパリンの持続投与を開始したが,腫瘤のサイズに変化はなく,右房内血栓も縮小しなかったため,開心術による摘除を行った。摘除した腫瘤の病理所見は血栓であった。術後,ヘパリン持続点滴,ワルファリン内服を開始したが,血栓の再発を認めた。ワルファリンのコントロールを強化したところ,血栓は消失した。Wolf-Ohtsuka 法術後に血栓を認めることは稀である。(補足)ウルフ‐オオツカ法は胸腔鏡下左心耳閉鎖術で5mmから10mm程度の穴を胸の壁に4ヶ所開けるだけで傷もほとんど目立たず,手術に用いられる自動吻合器代も6万円とWatchmanに比べるとかなり安価(引用

8-25 最北端の非専門医によるVMTスコアを用いた心不全管理の有用性(市立稚内病院)
  • 常勤の循環器内科医では対応しきれず,非専門医が大半の心不全患者を管理しているため,非専門医でも心不全の診断・治療方針の決定ができる指標が必要である。そこで村山,岩野らが考案した心エコー図のドプラ機能を使うことなくB modeのみで左室充満圧を推定できるVMTスコアを活用し心不全の診断・治療方針の決定に寄与している。(補足)VMT(visually assessed time difference between the mitral valve and tricuspid valve opening)スコアは断層心エコー法を用いて評価した左右の房室弁開放時相差の視覚的評価に基づいたスコアリング法。

👻 当院からの発表
  • 3-1 肥大型心筋症の予後とⅣ音(循環器内科 川﨑達也ほか)
  • 3-29 心不全患者のリスク層別化:各種負荷に対する頸静脈所見(循環器内科 野口理希ほか)
  • 7-14 身体診察が特徴的であったトランスサイレチン型心アミロイドーシスの1例(循環器内科 平野達大ほか)
  • 8-4 身体所見を契機に診断に至った静脈洞型心房中隔欠損症の1例(循環器内科 大江彩佳ほか)

すべて英語論文化(2つは掲載済,1つは投稿中,もう1つは投稿待)

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(投稿者 川崎)

2023-12-10

日本内科学会 第242回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題53 慢性心不全の治療中に急性腎障害が契機となり発症したセフェピム脳症の1例
  • 抗生剤をセフェピムに変更したが,投与開始3日後より意識障害及び左上肢有意の四肢ミオクローヌスを認めた。セファロスポリン系抗生剤の中でもセフェピムによる中枢神経障害は比較的頻度が高い。

演題62 代謝物の血中濃度の変化を経時的に追えた銀杏中毒の1例
  • 朝に約20個と昼に約50個食べた。翌0時30分頃から嘔気あり、トイレに行く際に浮動性めまいがあった。その後嘔吐3回と下痢2回程認めたが、その他腹部症状やけいれん症状はなかった。入院時の血清及び尿からメチルピリドキシン(MPN)が検出され銀杏中毒と確定診断した。

演題63 呼吸機能検査後に気胸を発症した1例
  • 定期受診時,胸部X線写真では軽度の線維化を認めていたが,気胸は指摘できなかった.呼吸機能検査を施行したところ,右胸痛及び呼吸困難を自覚し,酸素飽和度も低下した.聴診上,右肺音の減弱を認め,胸部X線写真で,右2度気胸を認めた.胸腔ドレナージを行い,当科緊急入院とした.改善に乏しく,第8病日に胸腔鏡下ブラ切除術を施行した.以降は気胸の再発はなく経過している.

演題102 茶葉の生食健康法で徐脈を来したと思われる1例
  • 24時間ホルター心電図検査では平均心拍数47/分、最小心拍数37/分で間欠的2~3度房室ブロックを認めた。茶葉の生食をやめたところ労作時息切れ症状消失した。24時間ホルター心電図でも平均心拍73/分、最小心拍数47/分で房室ブロックも消失していた。茶葉に含まれるテアニンは交感神経系を抑制し、血圧降下作用や脈拍低下作用があることが知られている。潜在的房室伝導機能低下症例においては、茶葉の生食によりテアニン摂取量が増大し、徐脈を誘発する可能性があり注意が必要と考えられた。

演題103 コロナ禍に何度も発熱で来院し最終的にPFAPA症候群が疑われた1例
  • 発熱に随伴する症状には咽頭痛と関節痛が毎回あり、ほか有熱時の口内炎、軽い腹痛、頭痛が見られることがあった。家族性地中海熱あるいはPFAPA症候群が鑑別に挙げられ、コルヒチンの内服を開始した。PFAPAは、周期性発熱(Periodic Fever)、リンパ節炎(Adenitis)、咽頭炎(Pharyngitis)、アフタ症(Aphthosis)の略語で、幼少期、通常は5歳より前に発症する。慢性の経過をたどるが、予後良好で経過とともに症状が改善する傾向にある。


👻 当院からの発表
  • 演題111 身体所見が診断の手がかりになった静脈洞型心房中隔欠損症の1例(循環器内科 大江 彩佳先生)
  • 演題169 失語・記銘力障害で発症したMOG抗体関連疾患(MOGARD)による皮質脳炎の1例(脳神経内科 竹田 みゆき先生)

😊 上記のうち1編は英語論文として現在投稿中です

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(投稿者 川崎)

2023-09-03

日本内科学会 第241回近畿地方会より

😐 個人的に気になった報告

演題7 落下胃石腸閉塞で発症し残存胃石に対してコーラ溶解療法が奏効した1例
  • 胃石腸閉塞では従来は早期の開腹手術による胃石の回収が治療の第1選択とされていたが、Ladasらの報告以降、コーラによる溶解療法の有用性が多数報告されている。

演題30 心房細動に対するカテーテルアブレーション後の肺静脈狭窄に対し経皮的ステント留置術を行った1例
  • カテーテルアブレーション後の肺静脈狭窄による肺うっ血が原因となり,血痰を認めたと考えられたため、左下肺静脈に対し経皮的肺静脈ステント留置術を実施した.高周波カテーテルアブレーション後の肺静脈狭窄の頻度は1%程度とされ,3~5ヵ月程度経過した後に徐々に発症することが多い.

演題43 Dual Energy CTを用いて電撃型脂肪塞栓症を疑い、V-A ECMOによる早期の集学的治療で良好な転帰を辿った超高齢者の1例
  • 左大腿骨転子部骨折に伴う電撃型脂肪塞栓症を強く疑いV-A ECMOを導入した。造影CTで肺動脈に造影欠損を認めなかったが,脂肪塞栓症の肺病変で胸部造影CTに異常を認めることは非常に稀である。本例ではDual Energy CTで浸潤影に一致して血流低下を認めた。

演題81 術後にHungry bone syndromeとともに腎機能悪化を認めた原発性副甲状腺機能亢進症の一例
  • 原発性副甲状腺機能亢進症と診断し副甲状腺摘出術を施行したが、術後より血清Ca低下に対した。活性型ビタミンD3製剤やカルシウム製剤の投与を行うとともに、十分な補液を継続したところ血圧と腎機能は徐々に改善。副甲状腺摘除術後はHungry bone syndromeとともに、血中PTH濃度の変化に伴う腎機能の変化にも注意する必要がある。

演題125 肝機能障害を伴わない門脈体循環短絡症の1例
  • 門脈体循環短絡症は門脈血流が体循環系に流れ込み、肝代謝が行われず高アンモニア血症となり多彩な神経症状を呈する疾患であり、猪瀬型肝性脳症ともよばれる。肝機能障害を背景とせずに発症する場合もあり、意識障害の鑑別の際には念頭に置く必要がある。

演題164 セフトリアキソンナトリウムによる薬剤性腎障害が疑われた症例
  • CTRX 2g/日の投与を開始したが腎機能低下が急速に進行した。尿細管マーカーの上昇および尿中好酸球を検出したため、CTRXによる薬剤性腎障害を疑った。同剤は中止し、メチルプレドニゾロン250mg/日×3日間、および後療法としてプレドニゾロン30mg/日の内服治療を行った。腎機能は著明に改善した。CTRXによるリンパ球刺激試験(DLST)を行ったが陽性所見は認めなかった。


👻 当院からの発表
  • 演題42 たこつぼ心筋症が急性冠症候群によって誘発されたと考えられる1例(循環器内科 西川 晶生先生)

😇 循環器内科の張本先生が座長でした

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(投稿者 川崎)

2023-07-16

第135回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
3-5 心房細動アブレーション時に喉頭痙攣と思われる換気障害を経験した2例
  • i-gel™を使用した際に,喉頭痙攣と考えられる換気障害を2例経験した.鎮静剤をさらに投与し,深鎮静にすることで換気することができた.

3-24 頸静脈波形が診断に有用であった心タンポナーデの一例
  • Beckの3徴は頸静脈怒張のみであったが,頸静脈波形でy谷の消失を認め心タンポナーデと診断.(投稿者追記:y谷は健常者でも浅いことがあるので要注意)

5-39 線維化した深部中隔起源の心室頻拍に対してケミカルアブレーションを施行した1例
  • 左室,右室,大動脈から焼灼するも消失しない深部起源のPVC/VTに対して中隔枝を選択しエタノール注入が有効であった症例.

7-22 急性前壁心筋梗塞治療後に,造影剤脳症を合併した1例
  • PCI施行2時間後に右半身麻痺,半側空間無視,失語を認めた.頭部CTにて左半球優位に脳溝の広範な高吸収像を認め,頭部MRIでは有意所見を認めず.第3病日より麻痺,失語は徐々に改善し,翌日には 神経学的異常所見は消失した.経過順調で第14病日に独歩退院した.造影剤使用後に神経症状を呈する合併症として造影剤脳症があり,脳血管造影後の報告が多い.

7-24 難治性下肢皮膚潰瘍の治療経過中に診断に至ったウェルナー症候群の一例
  • 患者は糖尿病の罹病期間に見合わない動脈硬化を呈し,難治性下肢皮膚潰瘍,早老性毛髪変化,鳥様顔貌などウェルナー症候群の主要徴候に合致する身体所見を有していた.遺伝子検査でウェルナー症候群と確定.

7-34 下大静脈フィルター関連静脈血栓症に対して血栓吸引療法とSling techniqueを用いて抜去に 成功した一例
  • 充満する下大静脈フィルターに対して血栓吸引療法を行いその後Sling techniqueにて下大静脈フィルターを無事抜去.(投稿者追記:Radifocus guidewireなどをフィルター間に通し先端をスネア―で確保して回収するテクニック)

👻 当院からの発表
  • 2-2 急性冠症候群誘発のたこつぼ心筋症と考えられた1例(循環器内科 西川 晶ほか)
  • 3-21 S. lugdunensisによる大動脈弁輪部膿瘍を伴った感染性心内膜炎の1例(循環器内科 野口理希ほか)
  • 4-22 負荷を併用した簡易定性法による内頸静脈評価と肥大型心筋症の予後(循環器内科 川﨑達也ほか)
  • 5-11 薬剤性の体液貯留で左室流出路狭窄を生じたと考えられた1例(循環器内科 間瀬泰我ほか)

症例報告はすべて英語論文化(1つは出版済,1つは採択済,もう1つは投稿中)

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(投稿者 川崎)

2023-06-25

日本内科学会 第240回近畿地方会より

😐 個人的に気になった報告

演題28 急性期脳梗塞の原因としてcarotid webを認めた1例
  • Carotid webとは頸部内頸動脈起始部後壁にできる棚状構造物で,その本態は線維筋性異形成と考えられている.Carotid webは潜在性脳梗塞の1.6%,さらに60歳未満に限れば4.5%に認められると報告されている.

演題87 たこ焼き摂取後に発症した経口ダニアナフィラキシーの1例
  • パンケーキ症候群と呼ばれる経口ダニアナフィラキシー.アナフィラキシーの原因は食物が最も多いため間違われることもあり,正しい診断のためには本疾患を念頭に置いて丁寧に問診することが重要

演題100 慢性疼痛の症状緩和に対して仮想現実技術を用いた脳再プログラミング療法が著効した2例
  • mediVR社製のmediVRカグラのガイド下脳再プログラミング療法は薬物療法が奏功しない慢性疼痛患者の症状緩和に有用である可能性が示唆された(今回,mediVRカグラに関する演題が他に2つあり)

演題103 耳管通気中に脳空気塞栓症を来した1例
  • 左耳の聴力低下で来院.左鼓膜に陥凹が認められたため,耳管通気処置を施行した後に意識消失し眼球上転, 全身の痙攣を認めた.直ちに心肺蘇生を開始.数分で心拍再開したが酸素化安定せず,挿管し人工呼吸器にて管理となった.静脈に空気が流入し体循環に入ったためと考えられている.

演題116 炭火処理に従事した未成年者に発症した急性好酸球性肺炎の1例
  • 週3回, 炭火焼肉店で非常勤勤務.狭小空間で,使用済みの炭火を処理する作業に従事した.確定診断にチャレンジテストを要するが,患者はリスクを背負ってまで負荷試験を希望されず(元々,この勤務を辞めるつもりであった)

演題120 Geleophysic dysplasia(幸福顔貌骨異形成症)に合併した肺高血圧症の1例
  • リソソーム貯蔵障害に類似した進行性の疾患である多幸小人症で,低身長・短い手足・進行性の関節制限および拘縮・特徴的な顔貌・進行性の心弁膜症・皮膚の肥厚が特徴である(知性は正常)(引用).Geleophysic dysplasiaは稀少疾患であるが, 肺高血圧症の合併の報告はさらに少ない.

👻 当院からの発表
  • 演題121 Staphylococcus lugdunensisによる感染性心内膜炎の1例(循環器内科 野口理希先生)

😇 とてもナイスな発表でした

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(投稿者 川崎)

2023-03-06

日本内科学会 第239回近畿地方会より

😐 個人的に気になった報告

演題5 上部消化管内視鏡検査を契機に診断されたCowden症候群の1例
  • Cowden症候群は、様々な臓器に過誤腫性病変が多発する常染色体優性遺伝形式をとる疾患であり、PTENと呼ばれるがん抑制遺伝子の病的バリアントが原因とされる。乳癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、大腸癌、腎細胞癌などの悪性腫瘍を高率に合併する。

演題15 著明な低脂血症で発症した後天性LCAT欠損症の1例
  • HDL-C9mg/dL、LDL-C5mg/dLと著明低値を認めた。LCAT欠損症は、コレステロールのエステル化に重要な酵素であるLCATの欠損や活性低下により、脂質代謝障害を来す稀な疾患である。

演題88 心不全を契機に診断された中性脂肪蓄積心筋血管症の1例
  • 中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)は非常に珍しい症例でありPNPLA2遺伝子ホモ型変異を伴うものを原発性、遺伝的原因が不明なものを特発性と分類する。

演題94 99mTc製剤によりアナフィラキシーショックに至った1例
  • 6分間のアデノシン持続静注及び99mTc製剤静注の数分後に顔面、前胸部、両上肢の紅潮及び掻痒感を伴う膨疹を認めた。ステロイド点滴で症状は速やかに軽快し、アデノシンによるアレルギー反応と考えた。予定通り3時間後に2回目の99mTc製剤静注を行った所、全身の膨疹・紅斑、気分不良、冷汗、胸部不快感が出現し、収縮期血圧70mmHgまで低下した。

演題115 移動盲腸により腸重積を来した1例
  • 移動盲腸は胎生期に右側結腸が後腹膜に固定されない発生異常であり、発生率は10-20%程度である。便通異常や腹痛など症状出現時は薬物療法や外科的治療を行う。

演題217 ニューマトセルの破裂で緊張性気胸・膿胸になった1例
  • 膿気胸(pyopneumothorax)=胸部CTでは肺内外にniveauを伴う嚢胞性病変。内部に感染を伴う場合、気胸・膿胸などの合併症のリスクがあり、縦隔偏位を伴う緊張性気胸になれば、致死的になることも留意が必要である。

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(投稿者 川崎)

2022-12-13

日本内科学会 第238回近畿地方会より

😐 個人的に気になった報告

演題38 経口避妊薬が原因と考えられた急性膵炎の1例
  • 入院時の血液検査にてTGが4633 mg/dlと高値であった。その原因として患者が服薬していた経口避妊薬であるドロスピレノン・エチニルエストラジオールが疑われた。

演題52 Sick dayに家族がSGLT2阻害薬を内服させ、正常血糖ケトーシスを発症した1例
  • 本症例では高度な慢性便秘により食事摂取量が低下している状況下(+認知症)でSGLT2阻害薬を内服したことにより正常血糖ケトーシスを発症したと考えられた。

演題146 発熱患者における血液ガスを用いた入院判断
  • Lac<2 , pO2<65 , 3.3<K<4.4 の3条件のうち、ひとつでも満たさない患者は入院と判断されており、感度90%、特異度83%であった。

演題181 左房拡張障害を呈した食道裂孔ヘルニアの1例
  • 食道裂孔ヘルニアによる左房拡張障害が肺動脈圧の上昇に寄与し、結果として心不全症状を来したと考えられた。

演題195 バイアスを意識し診断し得た憩室出血、真性多血症の1例
  • 認知要因は「また同じ憩室出血だろう」という利用可能性バイアス,血小板増多を精査しなかった検索に対する満足,血小板増多がAvWSを合併しうることを知らないという医療情報不足と考えられた.


👻 当院からの発表
  • 演題56 メトホルミン内服中に腎後性腎不全による乳酸アシドーシスを来した1例(糖尿病・内分泌内科 堀内萌生先生)
  • 演題62 アルコール性ケトアシドーシスを契機に発見された緩徐進行1型糖尿病の症例(糖尿病・内分泌内科 山本慎大先生)
  • 演題207 非髄膜炎菌性Waterhouse-Friderichsen症候群疑いの1例(総合診療科 間瀬泰我先生)

😇 みんなの発表とてもナイスだったそうです(今回は循環器地方会と同日のため参加できず)

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(投稿者 川崎)

2022-12-12

第134回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
A-8 MINOCA による心室中隔穿孔だったことが剖検で確認できた一例
  • MINOCA=Myocardial Infarction With Nonobstructive Coronary Arteries.剖検では,穿孔部位を支配する心外膜冠動脈に閉塞は認めず,微小血管へのヘモジデリン沈着と周囲の繊維化を認めたことから,微小血管閉塞による心筋梗塞の確定診断に至った.

G-36 特発性左房解離の一例
  • 経食道心エコー図にて P2 flail に伴う重 症 MR,さらに左心耳入口部下縁に接して中隔側左 房壁に幅約2cmの膜状構造物を認めた。同構造物と 左房壁との間隙は無エコー域で心室心周期に一致す る可動性を認め左房解離と診断した。

H-28 診断に苦慮した Valsalva 洞破裂の一例
  • Valsalva 洞破裂は通常連続性雑音を呈するとされている。今回,頻脈もあったため汎収縮期雑音と誤認したが心音図では拡張期雑音であり,その後の精査で Valsalva 洞破裂と 診断した。

H-35 急性心筋梗塞治療後のフォローアップ中に Dressler 症候群を疑う心膜炎を発症した一例
  • 経胸壁心臓超音波検査で心嚢水は極少量であったものの,造影 CT で造影効果を伴う心膜肥厚を認め,心筋梗塞後急性心膜炎の疑いで緊急入院となった。

J-29 ペースメーカ感染を起こし局所麻酔下で経皮的リード抜去術を行いリードレスペースメーカ植込術を行った1例
  • 全身麻酔は高リスクであったものの開胸術後であり心タンポナーデのリスクは低いと判断し,局所麻酔下で経皮的リード抜去術を施行した。高齢であり菌血症にも至っていなかったため一期的にリードレスペースメーカ植え込みを施行した。


👻 当院からの発表
  • F-17 甲状腺機能亢進症の治療のみで軽快した肺高血圧症の1例(循環器内科 熊田早紀子ほか)
  • I-5 急性心筋梗塞を発症したWellens症候群の1例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • I-25 心雑音を契機に発見された未破裂右バルサルバ洞動脈瘤の1例(循環器内科 野口理希ほか)
  • 特別セッション3 Physical Examinationを学ぶ『聴診で分かること』(循環器内科 川﨑達也)

症例報告の3演題中2演題は英語論文として報告済み(残る1例も準備中です)

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(投稿者 川崎)

2022-06-21

第133回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
T3-26 心房細動に対するカテーテルアブレーション後,難治性下痢をきたした一例
  • カテーテルアブレーションによる難治性下痢の発症頻度は0.025-0.04%と非常に少ない.原因としてカテーテルアブレーションによる食道迷走神経障害が示唆された.

T4-10 周産期心筋症による心不全加療に対しカベルゴリンが著効した一例
  • カベルゴリンの効能・効果はパーキンソン病,乳汁漏出症,高プロラクチン血性排卵障害,高プロラクチン血性下垂体腺腫(外科的処置を必要としない場合に限る),産褥性乳汁分泌抑制.

T5-10 Raphel cord の剥落により急性大動脈弁閉鎖不全症を来した大動脈二尖弁の1例
  • Valsalva 洞に付着していたと思われる Raphel cord(索状構造物)が内膜ごと剥がれ,左室内に脱落した状態となったことが原因と考えられた.


👻 当院からの発表
  • T3-3 外傷性気胸を契機に急性心筋梗塞を発症した1例(循環器内科 梶健太郎ほか)
  • T4-4 SARS-CoV-2 ワクチン接種後に収縮性心膜炎を生じた1例(循環器内科  中西雄紀ほか)
  • T4-31 簡易定性法を用いた内頸静脈評価による肥大型心筋症の予後予測(循環器内科 川﨑達也ほか)

中西先生は優秀賞をゲット 🎉 症例報告の2演題は英語論文を作成済み

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(投稿者 川崎)

2022-04-20

第119回日本内科学会講演会

😊 当院初期研修医が「医学生・研修医の日本内科学会ことはじめ」で発表
  • 演題 265 意識障害を呈する患者の身体所見から神経精神ループス(NPSLE)を疑い,ステロイドパルス療法が奏効した1例(総合診療科 土橋 哉仁先生)
  • 演題 268 子宮内膜癌を合併し多量の胸腹水を伴ったSLEの一例(総合診療科 河野 泰己先生)
  • 演題 352 多発筋膿瘍と亜急性の経過で進行する髄膜炎を認めた1例(総合診療科 熊田 早紀子先生)
  • 演題 371 貧血を伴う前立腺癌の背景に寒冷凝集素症を発見した一例(総合診療科 梶 健太郎先生)

😀 個人的感想
  • いずれも複雑な病態の症例でしたがとても良い発表でした 🎉
  • 山根先生をはじめ指導医の先生方も本当にお疲れ様でした 👍 

💁 “学会”に関連する過去の投稿 ➜ コチラ(ウェブ版なら右欄からも選択可能)

(投稿者 川崎)

2022-03-14

日本内科学会 第235回近畿地方会より

演題2 病理解剖を行ったLemmel症候群の1例
  • 腹部単純CTで十二指腸に憩室を認め、胆管閉塞となる原因が他にないことから、十二指腸憩室による閉塞性黄疸(Lemmel症候群)と考えられた。病理解剖で十二指腸下行脚に炎症を伴う4cm径の憩室があり胆管が直接圧排されていた。

演題16 茹でた野菜を摂取し続けた結果壊血病に至った1例
  • 造影CTでは両下肢の筋肉内出血を認めたが凝固検査や血小板数は正常であった。偏食歴から壊血病を疑い、ビタミンCを投与したところ症状は速やかに改善した。

演題18 眉墨施術が契機と考えられるサルコイドーシスの1例
  • 刺青を契機とするサルコイドーシスを発症することがある。色素異物へのサルコイド反応、金属へのIV型アレルギー反応等の肉芽腫形成機序が推測されている。

演題55 緑内障に対して処方されたアセタゾラミドで低心拍出症候群を来たした1例
  • アセタゾラミドは緑内障治療薬に対して眼科領域で広く使用されているが、背景に心機能低下がある場合、低心拍出症候群を呈する可能性があり注意を必要とする。

演題81 若年男性のLofgren症候群の1例
  • Lofgren症候群は多発関節炎、結節性紅斑、両側肺門リンパ節腫脹を三徴とする急性サルコイドーシスの一種で、予後は比較的良好とされている。

演題121 気道感染を繰り返したGood症候群の1例
  • Good症候群は胸腺腫に低γグロブリン血症を合併する比較的稀な症候群である。胸腺腫摘出術によっても改善が見られないことも多く、IVIGを施行することで感染症発症を抑制するとされている。
演題212 繰り返す意識消失で発症した過粘稠症候群の1例
  • 過粘稠症候群はIgM型のM蛋白血症で起こることが多いとされているが、本症例ではIgGが5,000 mg/dL。血漿交換を3回施行しIgGは2,000 mg/dL程にまで低下し、意識消失発作も出現しなくなった。

👻 当院からの発表
  • 演題202 SARS-CoV-2に対する鼻咽頭ぬぐい液の採取時に心肺停止を生じた1例(循環器内科 中西雄紀先生:下写真)
  • 演題225 血糖コントロールとCOVID-19罹患後の重症化についての検討(糖尿病・内分泌内科 塩田晃史先生)

😇 みんなの発表とてもナイスでした

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)