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2026-09-15

悪性水腫菌(Clostridium septicum)

  • グラム陽性の芽胞形成偏性嫌気性桿菌で土壌中などに広く分布している
  • 牛や馬など家畜の創傷感染症「悪性水腫」の原因菌として同定された菌
  • α毒素による壊死性筋炎から急速かつ進行性の菌血症性ショックに陥る
  • 誘因は好中球減少や大腸癌による腸管粘膜バリアの破綻(8割が癌合併)
  • 診断は血液培養・グラム染色、CTでの軟部組織ガス像評価(下の写真)
  • 治療は緊急外科的デブリードマンと広域抗菌薬(+悪性腫瘍への対応)
  • 生存率は C. septicum 菌血症で50%,ガス壊疽合併例では21%まで低下


大腸癌穿孔を伴う悪性水腫菌によるガス壊疽例(来院16時間で死亡)
(投稿者 川崎)

2026-09-05

壊死性筋膜炎の「三つの過ぎ」

😖 「痛すぎ」

  • 概要 pain out of proportion(POOP)が壊死性筋膜炎の診断上、最も重要な所見
  • 実際 所見の乏しさに比して耐えがたい激痛,蜂窩織炎と異なり発赤を超えて痛む
  • 注意 血管血栓形成に伴う皮下神経障害により,進行すると疼痛が消失し麻痺する



💣 「バイタル悪すぎ」

  • 概要 重症化すれば発熱・頻脈・敗血症性ショック・多臓器不全に至りうる
  • 実際 入院時に発熱を認めるのは25〜40%のみで,必ずしも高頻度ではない
  • 注意 初期は元気そうに見えることも多く,これが早期診断を妨げる一因



⏱ 「進行早すぎ」

  • 概要 感染は急速に進行し(分単位・時単位),外科的緊急疾患として扱われる
  • 実際 文献上は数時間で急速拡大、24〜48時間で紫色変色・水疱形成との記載
  • 注意 発症から24時間を超えた遅い外科的介入は死亡率上昇の独立した危険因子


(作成 生成AI/投稿者 川崎)

2026-08-28

Mural endocarditis 壁在性心内膜炎

  • 感染性心内膜炎 (IE)のうち、疣腫が弁ではなく心腔壁に形成される稀な病型
  • スペインのIE前向きにレジストリでは3676件中27件(0.7%)がmural IE (MIE)
  • MIEは若年(中央値59歳)、移植、血液透析、カテーテル由来、カンジダと関連
  • 病変部位は右心房が最多51.9%(ただし過去の文献では左心室が最多で47.2%)
  • 最多は黄色ブドウ球菌で(50%)、全身合併症は多かったが、死亡率は同程度

- 壁在性心内膜炎を呈した52歳男性 -
発熱と倦怠感を主訴に来院。全収縮期雑音があり、経胸壁心エコー検査で僧帽弁逸脱と左心房後壁への逆流ジェットが認められた。いずれの弁にも明らかな疣腫は認められなかった。血液培養検査ではStreptococcus mitis/oralisが陽性であった。経食道心エコー検査では、僧帽弁逆流ジェットに曝される左心房後壁のみに疣腫が認められた。


(投稿者 川崎)

2026-08-27

今週の一枚 🎯

舌の腫脹で救急外来に搬入された高齢者

🔎 解説
  • 舌は腫大し舌根に白苔と腫瘤病変あり
  • 採血は白血球9200/μl,CRP 8.76mg/dl
  • 造影CTで明らかな膿瘍を疑う所見なし
  • 右側の顎下腺に一致して石灰化(赤丸)
  • その周囲には僅かに浮腫様の変化あり
  • 本症例の最終診断は急性の右顎下腺炎

👅 追加情報
  • 耳鼻咽喉科をコンサルト:舌腫脹+右口腔底のワルトン管の走行に沿った腫脹+ワルトン管開口部から排膿あり→ワルトン管開口部から洗浄+抗菌薬(2週間予定)
  • ワルトン管(Wharton's duct)とは顎下腺管で,顎下腺から分泌された唾液を口腔内へ導く導管(排泄管).およそ5cm程度の長さで,唾石症の好発部位でもある.
  • なお洗浄液の培養からKlebsiella pneumoniae(過粘稠性株,String test+)を検出→眼内炎および膿瘍の全身検索も追加するが,特記すべき異常所見はなかった.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-08-26

7D:院内の発熱

👀 見逃されやすい院内発熱の7原因
  • Drug (薬剤熱): 新規薬剤によるアレルギー性の発熱
  • Device (デバイス関連感染): 留置デバイスに関連する感染症
  • DVT (深部静脈血栓症/肺塞栓症): 血栓自体または血栓に伴う炎症反応
  • CDI (Clostridioides difficile感染症、旧称CD腸炎): 抗菌薬投与→偽膜性腸炎
  • Decubitus (褥瘡): 褥瘡部の感染・炎症
  • CPPD (偽痛風、ピロリン酸カルシウム結晶沈着症):非感染性の関節炎
  • Debris (胆泥・無石性胆嚢炎): 絶食が続く患者などで胆汁うっ滞→胆嚢炎


🙊 おまけ
  • Deep abscess (深部膿瘍) や Adrenal Deficiency (副腎不全)、COVID-19/インフルエンザを加えて、8D・9D・10Dなどとも言うそうです(引用)

💁 語呂合わせに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2026-08-24

薬剤性無菌性髄膜炎 Drug-induced aseptic meningitis(DIAM)

📚 薬剤性髄膜炎(総論)

  • 概要 特定の薬剤投与により生じる無菌性(非感染性)の髄膜炎
  • 実際 頭痛・発熱・項部硬直を呈するが髄液糖は正常,培養陰性
  • 原因 IVIGとNSAIDsが二大原因薬剤,他は抗菌薬・ワクチン他
  • 頻度 329症例でIVIG 29.8%,NSAIDs 13.8%,抗菌薬 11.0%
  • 経過 被疑薬中止で96%が完全回復ないし軽微な後遺症にとどまる



💊 NSAIDs誘発性髄膜炎

  • 概要 NSAIDs内服後に生じる無菌性髄膜炎,イブプロフェンが最多
  • 実際 発熱・頭痛・項部硬直を呈し細菌性に類似するが糖は正常
  • 背景 SLEなどの自己免疫性結合組織疾患を背景に生じやすい
  • 特徴 36例中61%が自己免疫疾患合併,61%が再発の既往あり
  • 関連 構造の異なる他のNSAIDsでも再燃しうる交差反応性あり
  • 治療 中止のみで数日以内に回復,以後はNSAIDs全般を避ける



💉 免疫グロブリン(IVIG)誘発性髄膜炎

  • 概要 IVIGを投与した24〜72時間以内に生じる無菌性の髄膜炎
  • 実際 激しい頭痛・項部硬直・羞明・発熱を呈し多くは自然軽快
  • 背景 最大の危険因子は片頭痛の既往(免疫複合体性過敏反応)
  • 頻度 既往ありで発症率50%,既往なしで4%と大きな差がある
  • 因子 高用量投与・急速輸注・自己免疫疾患合併などが危険因子
  • 対策 緩徐輸注・十分な補液・前投薬で予防,反復例は皮下製剤



(投稿者 川崎)

2026-08-21

📌 項部こうぶ硬直(または 頸部けいぶ硬直) Neck stiffness

  • 概要 髄膜が刺激された状態で出現する身体所見の一つ
  • 実際 頚部の屈曲で抵抗があれば陽性(主観的な判定)
  • 原因 脊髄くも膜下腔に存在する炎症や出血,腫瘍など

👿 追加コメント
  • 項部硬直の客観的な判定方法として,項部硬直では「頚部を自動的な屈曲時に顎を胸に付けることができない」あるいは「仰臥位で頭部を8 cm以上,挙上できない」
  • 他所見も参考:Kernig徴候(仰臥位で股・膝関節を屈曲から膝を伸展させると抵抗)やBrudzinski徴候(仰臥位+下腿伸展から頚部屈曲で両側の股・膝関節が屈曲)
  • 髄膜炎例では,仰臥位から座位になる時,髄膜の牽引による疼痛誘発を回避するため,両手を体の後方につくことがある(Amoss徴候≒tripod徴候,Hoyne徴候)
  • 小児で膝を完全に伸ばした座位(長座位)で頚部前屈の角度を測定すると髄膜炎群は平均 31度±11度 vs 非髄膜炎群は45度超(Arch Dis Child 1993 Feb;68(2):215-8)
  • 髄膜刺激では,特に前屈が制限される.一方、筋骨格系疾患(頚椎症やクラウンドデンス症候群など)では、前屈だけでなく回旋・伸展など複数方向で抵抗が出る.


(投稿者 川崎)

2026-08-09

第55回(2020年)理学療法士国家試験


腱反射が亢進する疾患はどれか.







判定


😐 解説
  • 腱反射が亢進するのは上位運動ニューロン(錐体路)障害で、選択肢の中では多発性硬化症のみが該当する。多発性硬化症は中枢神経の脱髄疾患で錐体路が障害されるため腱反射亢進・病的反射陽性を呈する。
  • 多発性筋炎は筋自体の炎症性疾患、Guillain-Barré症候群は末梢神経の脱髄性疾患、尿毒症性ニューロパチーは末梢神経障害、Duchenne型筋ジストロフィーは筋線維の変性疾患で、いずれも腱反射は減弱

(投稿者 川崎)

2026-08-05

LLMNSS

  • Listeria、Legionella、Mycobacterium、Nocardia、Salmonella、Staphylococcus aureusをまとめた語呂合わせ
  • 共通点は、マクロファージ内で生存・増殖できる(細胞内寄生性)、あるいはそれに準じた性質を持つこと
  • 細胞性免疫(macrophage・T細胞機能)が低下した患者で重症化しやすく、βラクタム系の効果が乏しい
  • 感染防御にはTh1細胞・IFN-γによるマクロファージ活性化を主体とする細胞性免疫が重要になってくる

細胞性免疫低下で注意すべき病原体(LLMNSS)
菌 特徴
Listeria monocytogenes 細胞内寄生菌の代表格。ステロイド使用者、高齢者、妊婦で重症化
Legionella マクロファージ内で増殖。細胞性免疫低下患者(ステロイド、TNF-α阻害薬使用者など)でリスク上昇
Mycobacterium(結核・非結核性抗酸菌) 古典的な細胞内寄生菌。Th1/マクロファージ系の破綻で顕在化
Nocardia 弱毒だがマクロファージ内で生存可能。ステロイド長期使用、臓器移植後などで日和見感染
Salmonella(特に非チフス性) 細胞内寄生性。細胞性免疫低下(HIV、鎌状赤血球症など)で反復菌血症をきたす
Staphylococcus aureus 典型的な細胞内寄生菌ではない。好中球機能異常(CGDなど)で重症感染を起こす代表菌


(投稿者 川崎)

2026-08-01

液性免疫と細胞性免疫

  • 今一度、頭を整理するため液性免疫と細胞性免疫をAIにまとめてもらいました
  • 下の表はClaude Sonnet 5、図はChatGPT-5.5による生成(重要情報は要確認)

液性免疫
Humoral immunity
細胞性免疫
Cell-mediated immunity
主役となる細胞 ナイーブB細胞 → 形質細胞(抗体産生)、記憶B細胞 ヘルパーT細胞(CD4、主にTh1)、細胞傷害性T細胞(CD8)、マクロファージ・NK細胞との連携
抗原認識の様式 B細胞受容体(BCR)が抗原の立体構造を直接認識(抗原提示を介さなくても認識可能) T細胞受容体(TCR)がMHC(HLA)上に提示されたペプチドを認識(CD8はMHCクラスⅠ、CD4はクラスⅡを介する)
エフェクター機構 抗体による中和、オプソニン化(貪食促進)、補体古典経路の活性化 パーフォリン/グランザイムによる標的細胞のアポトーシス誘導、Fasリガンド経路、IFN-γによるマクロファージ活性化
主な標的 細胞外の病原体・毒素(莢膜を持つ細菌、一部の寄生虫など) 細胞内寄生体(結核菌、リステリアなど)、ウイルス感染細胞、腫瘍細胞
誘導に関わる主なサイトカイン Th2・Tfh由来のIL-4、IL-5、IL-21(クラススイッチ組換えを促進) Th1由来のIFN-γ、IL-2(マクロファージ・キラーT細胞の活性化を促進)
臨床的な評価法 血清抗体価測定(ワクチン後の抗体獲得評価など)、免疫グロブリン定量 ツベルクリン反応、IGRA(インターフェロンγ遊離試験)
代表的な疾患・病態 液性免疫不全(無ガンマグロブリン血症)による反復性肺炎球菌感染、破傷風毒素への抗体応答 臓器移植拒絶反応、AIDSにおけるCD4減少に伴う日和見感染(結核、ニューモシスチス肺炎など)、腫瘍免疫



(投稿者 川崎)

2026-07-08

蜂窩織炎と炎症反応

  • 先日、炎症反応(白血球数やCRP)が正常である下腿の蜂窩織炎の症例を経験しました。発症直後ではなくて、下腿の発赤や腫脹、熱感、圧痛(ケルススの四徴候)はしっかりありました。 
  • 個人的には「蜂窩織炎の診断がどうなんだろ~」と思っていました。しかしその後、別の指導医の先生から、論文上は炎症反応が目立たない蜂窩織炎は意外に少なくないことを教えてもらいました。
  • 蜂窩織炎の症例で白血球増多とCRP上昇の頻度は、各々34~50%および77~97%だそうです(Neth J Med 2017;75:366-78、Int J Dermatol 2010;49:1012-7、J Infect 2005;51:383-9)
  • 逆に蜂窩織炎で入院した259人中30.5%が誤診で、正しくはうっ滞性皮膚炎やうっ滞性潰瘍、痛風、心不全、非特異的浮腫、深部静脈血栓症だったようです(JAMA Dermatol 2017;153:141-6)

- 蜂窩織炎:白血球数(A)、赤沈(B)、C反応性蛋白(C)、プロカルシトニン(D)と体温との相関 -

(投稿者 川崎)

2026-06-26

COXコックス:1 vs 2

  • シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase:COX)が遊離したアラキドン酸を酸化させてprostaglandins(PG)G2が形成される
  • その後に産生される各種PGsは,局所で増加した発痛物質ブラジキニンの痛覚受容体感受性の閾値を低下させ疼痛を増悪させる
  • NSAIDsはCOXの疎水性チャネルを封鎖することでアラキドン酸が酵素活性部位に結合することを防ぎ,抗炎症,鎮痛効果を発揮
  • COX-1は多くの細胞に構成的に発現し,胃粘膜,血管内皮,血小板および腎臓における組織保護作用を有するPGsの生合成に関与
  • 一方, COX-2は通常は細胞内にはほとんど存在しないが, 関節リウマチなど炎症組織において炎症関連細胞に著明に発現する


- NSAIDs & COX1 & COX2 -


(投稿者 川崎)

2026-06-21

Faget’s Sign ファジェ徴候

  • 通常では体温が1度上がるごとに脈拍は10 bpmほど増加
  • ファジェ徴候とはこの体温と脈拍の関係が乖離した状態
  • 本邦では比較的徐脈と呼ばれることが多い(過去の投稿)
  • 由来はフランスの医師 Jean-Charles Faget (1818-1884)
  • ファジェは黄熱病の患者について1859年に報告した(※)
  • 通常のウイルスや細菌による感染症とは異なることが多い
  • 例:ブルセラ、クラミジア、レジオネラ、腸チフス、黄熱

(投稿者 川崎)

2026-06-17

黄熱おうねつ Yellow Fever

  • 黄熱はサル、ヒトおよび蚊を宿主とし、蚊によって媒介される疾患
  • ヒトが感染すると致命率は高いが(20%)、回復すると終生免疫
  • 現在でもアフリカ、南米などで地域的流行が発生し、旅行者が罹患
  • 患者数は南米とアフリカを合わせて年間約20万人といわれている
  • 潜伏期は3~6日で、発熱が突然出現する(インフルエンザに類似)
  • 頭痛、悪心・嘔吐、結膜充血、蛋白尿などが続き1~3日で回復する
  • 重症では相対的徐脈、黄疸・出血・蛋白尿(古典的三徴)、せん妄
  • 診断は血液ウイルス分離やPCR遺伝子検出、ペア血清、IgM抗体
  • 治療は対症療法のみ(弱毒生ワクチン接種による予防が最も重要)


黄熱リスク国・地域へ入国する10日前までに黄熱の予防接種

😶 おまけ
  • Yellow Feverという病名は、17〜18世紀のカリブ海・中南米での大流行の際、黄疸+発熱を呈して死亡した患者に由来するのだそうです。
  • 日本語の黄熱はこの直訳です。スペイン語はfiebre amarilla、ポルトガル語はfebre amarelaで、共に黄色い熱を意味(生成AI:Claude)

(投稿者 川崎)

2026-05-26

Selective decontamination of digestivetract:SDD 選択的消化管内殺菌法

  • 重症患者の院内感染(内因性+外因性)を最小限に抑える予防戦略
  • 吸収されない経口および腸内抗生物質と非経口抗生物質を使用する
  • 口腔咽頭および腸管の好気性グラム陰性微生物やMSSA、酵母など
  • 60件以上のランダム化比較試験(RCT)で死亡率低下(NNTは約18)
  • 集中治療医学でエビデンスがあるにも関わらず普及率は極めて低い
  • 参考:ICU感染症の原因は、一次内因性>二次内因性>外因性の順

選択的消化管除菌戦略:経口摂取(通常のSDD)+口腔咽頭に局所適用(SODともいう)

(投稿者 川崎)

2026-05-24

鼻疽びそ・ 類鼻疽るいびそ

  • 鼻疽は鼻疽菌 (Burkholderia mallei) が感染することによって起こる人獣共通感染症。おもに馬やロバに感染するが、ときにヒトにも感染する。 
  • 類鼻疽は類鼻疽菌 (Burkholderia pseudomallei)によって起こる人獣共通感染症。土壌や池の水など環境中から菌が分離されることがある。
  • いずれも東南アジア、アフリカ、中東地域などの熱帯・亜熱帯地域に分布し、自然感染の例がこれらの地域において散発的に発生している。
  • 鼻疽菌、類鼻疽菌、ともに感染症法にて4類感染症に分類されているため、診断後直ちに最寄りの保健所に届出を行う義務がある。 
  • 鼻疽は致死的感染~数年の潜伏感染など多彩。急性例では1~14日間の潜伏期を経て創部や鼻粘膜の感染およびリンパ節炎など。
  • 類鼻疽は、急性・慢性,局所性・全身性、顕性・不顕性の形態があり、菌血症・急性敗血症型、肺型、局所型、不顕性型に4分類
  • 採血では白血球数増加+核の左方移動を伴うが特徴的な生化学的所見はなし。確定は血液、喀痰、穿刺検体などの培養による同定
  • 治療は抗菌薬(特に鼻疽では早期の抗菌薬投与が必要)。利用可能なワクチンない。鼻疽菌、類鼻疽菌は生物兵器のリスクあり


類鼻疽(melioidosis、メロイドーシス)の発生率

(投稿者 川崎)

2026-04-25

キャサヌル森林病 Kyasanur forest disease

  • 概要 フラビウイルス科のキャサヌル森林病ウイルスによる感染症
  • 経路 主にマダニとげっ歯類で感染環が維持→刺咬によりヒト感染
  • 症状 潜伏期間は3~12日で、発熱や頭痛、筋肉痛、咳嗽を生じる
  • 経過 約40%に出血性肺水腫→一部は寛解後に髄膜炎や脳炎を発症
  • 予後 致死率は3~5%であるが、基本的に後遺症を残すことはない
  • 診断 血液や髄液のPCR、IgM抗体の検出、ペア血清による判定など
  • 地域 インドの南西部が主な流行地で、年間400~500人が発症する
  • 治療 有効な抗ウイルス薬は未開発で対症療法(予防では刺咬回避)



👿 おまけ
  • キャサリヌス森林という名称は、この病気が1957年3月にインドのカルナータカ州キャサヌール森林地帯にあるカッティナケレ村で初めて報告されたためだそうです。当時はサルの間で流行したため、地元ではサル病(monkey disease)またはサル熱(monkey fever)としても知られているようです。
  • サル痘(Monkeypox)は、差別的表現を避けるため最近、エムポックス(Mpox)に改称されました。地域差別や偏見を避けるため、WHOは病名への地名使用を控えるよう勧告しています。キャサヌル森林病という病名が消えるのも近いかも…ちなみに本邦では、同疾患は4類感染症に指定されています。

(投稿者 川崎)

2026-04-23

今週の一枚 🎯

温泉に行った後に発熱と咳嗽が続く若者

👾 解説
  • 採血でCRP 16 mg/dL, CK 970 U/Lであった.Na値は正常範囲内であったが,温泉後の発熱などから,レジオネラ肺炎を強く疑った.しかし迅速尿中レジオネラ抗原は陰性であった.咽頭ぬぐい液のパネル検査を追加したところ,マイコプラズマPCR陽性が判明した.他のインフルエンザ・コロナ・百日咳.アデノ・RS・パラインフルエンザなどはすべて陰性.マクロライド感受性マイコプラズマであったため,アジスロマイシンの点滴で加療した.

😊 独り言
  • 病歴聴取(to obtain a thorough history)と身体所見(to perform a physical examination)が臨床推論において重要であることは言うまでもありません.本例の初期対応にあたった研修医らはこの点,とてもしっかりしていました.最終診断はレジオネラ肺炎ではありませんでしたが,逆にこのような体験を共有することも重要と思われます.なおCK上昇の原因は頻回な咳嗽?

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 林/川崎)

2026-04-08

多形滲出性紅斑 Erythema exsudativum multiforme

  • 丸く隆起した紅い皮疹が四肢に対称性に出現する皮膚疾患
  • 狭い範囲に皮膚病変が限局する軽症型は稀ではない (下図)
  • 原因は多様:ウイルス、細菌、真菌による感染や薬剤など
  • 原因不明の多形滲出性紅斑は春~夏にかけ若い女性に多い
  • 多形滲出性紅斑は皮膚所見の視診で診断できる症例が多い
  • 軽症例では皮膚にステロイド軟膏+痒みに抗ヒスタミン薬
  • 病変が皮膚や粘膜、眼、内蔵に病変が及ぶと重症型に分類
  • スティーヴンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症(※)

引用)日本臨床皮膚科医会、ほか
(投稿者 川崎)

2026-03-21

ボツリヌス菌 Clostridium botulinum

  • グラム陽性の偏性嫌気性桿菌で産生毒素が極めて致死的な神経麻痺を起こす
  • 同菌が産生する物質である神経毒素はその抗原性でA~Gの7型に分類される
  • 人を含む多くの脊椎動物が罹患し種族と毒素型は関連(人は主にA,B,E型)
  • 日本は1951年に北海道で「いずし」によるE型ボツリヌス中毒が初めて報告
  • 2004年までに計177件(患者541名、死者116名)の食餌性ボツリヌス中毒
  • 発生するボツリヌス中毒の原因菌型はその地域の土壌に分布する菌型と一致
  • 感染経路は毒素または多量の芽胞の食品、飲料水等への混入,または噴霧他
  • 潜伏期間は暴露された毒素量や芽胞量によるが、通常、数時間~48時間ほど
  • 入院期間は治療の開始時期や治療法により異なる(長期では数ヵ月におよぶ)
  • 症状は便秘や嘔気、嚥下困難、尿閉、口渇、複視、呼吸困難、歩行障害など
  • 診断は患者の血清および食品、飲料水などの毒素検査を行う(PCR法など)
  • 治療は呼吸管理(人工呼吸器)と共に速やかな抗毒素療法(抗生物質は無効)


- ボツリヌス菌の神経毒素の作用機序 -
神経毒素は血流にのって末梢神経前膜へ結合し、細胞内へ侵入、シナプス小胞とシナプス前膜のdocking/fusion complexの構造タンパク質を切断し、神経伝達物質(アセチルコリン)の放出を阻害する。


(投稿者 川崎)