(投稿者 川崎)
このブログを検索
2025-10-28
飛蚊症 Floaters or Flying dots
- 概略 硝子体の混濁で視界に虫などが飛んでいるように見える病態
- 症状 水玉やハエ、黒いスス、糸くず、輪などが眼球と一緒に動く
- 原因 先天的あるいは生理的(加齢による離水や後部硝子体剥離)
- 病的 硝子体出血、ぶとう膜炎、網膜硝子体ジストロフィ、その他
- 治療 生理的飛蚊症(高齢者や強い近視症例に多い)では治療不要
- 検査 散瞳が必要(30分程の検査であるが瞳孔が戻るのに数時間)
- 正式 医学用語としては硝子体混濁(muscae volitantes)を使用
参考)公益社団法人 日本眼科医会、他
👀 独り言
- 飛蚊症は「ひふんしょう」と長年思っていました.「ひぶんしょう」だったとは 😅
- 気にしだすと常に見えるが、そのうちに忘れる(水晶体の濁りは変わらないのに)
(投稿者 川崎)
2025-10-27
フィジカルクイズ(No. 27 & 28)
- 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
- 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.
👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)
心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶
(投稿者 川崎)
2025-10-26
Misty mesentery(ミスティ・メセンテリー)
📢 CTレポートから
- 開心術前の体幹CT(単純)で「腸間膜リンパ節がやや目立ち,脂肪織の毛羽立ち,misty mesenteryの可能性が...」と記載されていました.
- その場にいた心臓血管外科医(卒後20年~)と循環器内科医(卒後30年~)はともに「misty mesentery」という用語を知りませんでした.
🚨 Misty mesentery
- 腸間膜脂肪織炎(mesenteric panniculitis:MP)に類似する腸間膜炎 -
A・B:急性膵炎を有する43歳男性の造影CT横断像(A)および冠状断像(B)。炎症に伴う腸間膜脂肪濃度の局所的上昇と軽度のリンパ節腫大(A、矢印)を認める。膵臓自体はCT上正常にみえるが、腹水(B、矢頭)および後腹膜腔内の液体貯留が認められ、腸間膜脂肪織炎以外の診断を強く示唆する。(AI訳)
C:急性虫垂炎を有する28歳女性の造影CT横断像。虫垂(矢印)の炎症に続発して、腸間膜脂肪濃度の局所的上昇を認める。(AI訳)
C:急性虫垂炎を有する28歳女性の造影CT横断像。虫垂(矢印)の炎症に続発して、腸間膜脂肪濃度の局所的上昇を認める。(AI訳)
(投稿者 川﨑)
2025-10-25
膵 腺房 細胞癌 (Acinar cell carcinoma: ACC)
- 膵臓の腺房細胞を発生母地とする稀な悪性膵外分泌腫瘍
- 発生頻度は全膵腫瘍の1%程度(90%以上が膵管腺がん)
- 男性に多く平均50~70代と膵管癌に比べやや若年に好発
- 非特異的な症状が多く体重減少・腹痛・嘔気などがある
- 膵管癌より柔らかく膵頭部に生じても黄疸を生じにくい
- 発見時には腫瘍の径が大きく遠隔転移を伴う症例が多い
- 切除不能なら薬物(専用治療はなく通常の膵がんに準ず)
📍 他の希少膵がん
- 腺扁平上皮がん ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.7%で10万人当たり約0.1人
- 粘液がん ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.4%で10万人当たり約0.07人の頻度
- 髄様がん ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.001%で10万人当たり約0.001人未満
- 退形成がん ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.2%で10万人当たり約0.02人
- 充実性偽乳頭状腫瘍 ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.05%で10万人当たり約0.02人
(投稿者 川崎)
2025-10-24
フィジカル忘備録
- 先日,循環器 Physical Examination 研究会が主催するフィジカル合宿に参加してきました。身体所見のマイスターたちが興味深い症例を持ち寄って議論するというとても充実した2日間でした(夜の宴会も😉)。ディスカッションの中で耳にした巨匠達の貴重な言葉をここに記録しておきます。聞き違いがあればすいません。
- 高心拍出状態での収縮期雑音はスクラッチ様(scratch murmur)
- 甲状腺雑音はバセドウ病で出現するが破壊性甲状腺では通常なし
- 破壊性甲状腺は症状で亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎へ大別可
- 甲状腺中毒では雑音の有無で方針(破壊性へのメルカゾール回避)
- 破壊性甲状腺炎ではサイログロブリンが病態と並行して増減する
- 傍胸骨で右室拍動は心機図でRF有、左房拍動は収縮後期にピーク
- シャイエ症候群(ムコ多糖症Ⅰ型の軽症)では沈着による弁膜症
- 重症の僧帽弁逆流(MR)は頚動脈の立ち上がりが早く持続が短い
- 重症MRでは駆出が早く済むから右脚ブロックがなくてもⅡ音分裂
- 純粋なMRでは重症でもランブルは稀(狭窄が多少でもあると出る)
- 4LSBで汎収縮期雑音でもTRとは言えない(MR雑音の伝播がある)
- 急性肺血栓塞栓の肺高血圧は40-50mmHgまで(それ以上なら虚脱)
- 一方、慢性やacute on chronicは70-80 mmHg以上可(例:CTEPH)
- 急性肺塞栓症で頚静脈陰性なのは発症時に体液量が多くないため?
- 心室からの駆出流波形と開始が合致する心音は駆出音と考えられる
心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶
(投稿者 川崎)
2025-10-23
今週の一枚 🎯
真夏に体動困難でERに搬入された高齢者
💘 化膿性脊椎炎・椎間板炎
- 体温が39℃で収縮期血圧<心拍数のショックバイタル
- 直前3日の飲水不足もあって当初は熱中症が疑われた
- しかし採血で高度炎症反応あり(例:CRP>20 mg/dl)
- 体幹CTでL4~L5前面に軟部影や脂肪織の毛羽立ちあり
- MRIでL4/5の椎間板やL5椎体にSTIR高信号あり(下図)
- なお本例は腸腰筋などに明らかな膿瘍形成はなかった
😐 追加コメント
- 本例には明らかな腰痛はありませんでした.熱源検索のCTでは,肺や腹部臓器,腎周囲などを確認しますが,整形外科領域は疎かになりやすいと思います.見落としを防ぐためにもCTの3段階読影です.
- 「臨床推論に基づく疾患の検索 ➜ 否定チェックリストを利用した重要病態の有無の確認 ➜ 画像推論に基づく想定外病態の拾い上げ」の順です.シンプルに言うと①疑い,②見落とし,③臓器毎です.
👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)
(投稿者 川崎)
2025-10-22
LOT -CRT:左脚領域ペーシング最適化心臓再同期療法
👻 LBBAP-optimized CRT (LOT-CRT)
- left bundle branch area pacing (LBBAP) =左脚領域ペーシング
- cardiac resynchronization therapy (CRT) =心臓再同期療法
🌎 国際多施設共同研究
- 背景 従来の両室ペーシング (BiV-CRT) による心臓再同期療法 (CRT) ではQRS幅が広く不応例あり
- 目的 左脚領域ペーシング (LBBAP、右室リードの代替) と冠状静ペーシングの組み合わせを検討
- 対象 CRT適応のある非連続患者(LBBAまたは冠静脈)リードの追加はQRS波と植込み医師の裁量
- 結果 LOT-CRTは112例中91例(81%)で成功してBiV-CRTと比較してより優れた電気的な再同期性
(投稿者 川崎)
2025-10-21
大動脈二尖弁の感染性心内膜炎は予後不良
- 対象 孤立性の感染性心内膜炎の連続患者728名
- 内訳 計123例(16.9%)が大動脈二尖弁(BAV)
- 予後 年齢や性別、合併症の指数で補正後に検討
- 期間 追跡の中央値は67.2ヵ月(IQR: 19~120)
- 生死 三尖弁(TAV)と比較しBAVで差なし(図)
- 合併 BAVで弁周囲または神経学的合併症が増加
💁 同論文の考察より(3段落目のAI翻訳/引用論文は割愛)
- 塞栓症のリスクは、疣贅の大きさ(>10 mm)および可動性と相関することが確立されている。本研究においては、BAV-IE(二尖の感染性心内膜炎)とTAV-IE(三尖の感染性心内膜炎)の間で、疣贅の長さおよび塞栓性イベントの頻度に有意差は認められなかった。しかし、主要な神経学的イベントの発生率は二尖弁患者で高く(それぞれ22% vs. 14%、p = 0.027)、主要な神経学的イベントの発生はBAVと独立して関連していた。 これまでの報告と同様に、BAV-IE患者ではTAV-IE患者よりも周弁合併症が多くみられた。
- この周弁病変に対する感受性の高さは十分には解明されておらず、我々は大動脈二尖弁に依存する異常な血流が大動脈基部に影響を及ぼしている可能性を推測している。より懸念される仮説として、感染性心内膜炎の進行過程の後期に弁周囲合併症が発生することを考慮すると、若年層であるこの集団では感染性心内膜炎が疑われず、診断および紹介が遅れる可能性があるという点が挙げられる。 さらに、膿瘍は通常、感染性心内膜炎の進行の後期に発生するため、診断前に投与された経験的抗菌薬治療が診断の遅れやBAV-IEにおける培養陰性率に関連した可能性もある。
🚑 感染性心内膜炎に関する過去の報告 ➜ コチラ
(投稿者 川崎)
2025-10-20
Ⅳ音とエコーA波:深堀
- 数年前ですが講演後に「肥大型心筋症で明瞭なⅣ音を認めるのに心エコー図のA波が低いのはどうしてですか?」と質問を受けました.残念ながらその場ではうまく答えることができませんでした.そのやり取りをWEBでご覧になっていた身体所見の巨匠から解説メールをいただきました.
- 先日,Ⅳ音とその機序に関してX(旧Twitter)に投稿を行いました(ココ).しかし私の理解および文章が不正確であったため,翌日に同じ巨匠から再度,解説メールをいただきました(とても反省).同じ過ちを繰り返さないためにも,忘備録として下記にまとめをアップしておきます.
💫 巨匠の指導内容の要約
- 左室拡張末期圧(EDP)上昇例の左室流入A波はすべて増高するわけではない。EDPが中等度以上に上昇すると心房機能は亢進しているにも拘わらずA波は減高する(いわゆる偽正常化)。この場合でも立派なⅣ音を聴取(HCMの大半はこのパターン)
- その原因は左室が硬すぎるあるいはEDPが高すぎるため心房機能は亢進しているのに左室側には少ししか流入できないためで、大半は肺静脈側に逆流している。実際このような例の肺静脈血流波形を記録するとA波が著明に増高している。
- 以上のことから、Ⅳ音が出現する病態は、左室流入A波増高・肺静脈血流A波正常と左室流入A波減高・肺静脈血流A波増高の2つがあり、後者の方がより進行した状態で予後不良と言える。
- 左室流入A波は小さくても、心房機能は亢進しているため左室圧A波は増大している(これが心尖拍動のA kickとして触れる)。すなわち、左室流入A波は小さくても左室を振動させるパワーとしては十分に働いている。
🔗 僧帽弁口血流速波形と違って心尖拍動のA波は偽正常化しにくい
- LVEDPが約20mmHgを超えると僧帽弁口血流速波形(MVF)は偽正常化し始めるが(下図左)、心尖拍動のA波率(A/H)は偽正常化せずLVEDPが30~35mmHgくらいまで増大し続ける(下図右)。
- A/Hは、それ以上の著明な上昇(LV-preA圧の中等度上昇も同時に伴う状態)になって初めて減高に向かう。この時点にまで至ればMVF-A波・PVF-A波ともに減高し、Ⅳ音も当然弱くなる。
- 肥大心や拡大心においてMVFが一見正常パターンで正常か偽正常かの判断に迷った時にACG-A波を触れるかあるいは記録したACGのA波増高を確認できたならばMVFが偽正常であると判断できる。
心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶
(投稿者 川崎)
登録:
コメント (Atom)






