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2025-08-10

脆弱ぜいじゃくX症候群 Fragile X Syndrome 

  • 概要 脆弱X随伴振戦/失調症候群を伴うトリプレットリピート病のひとつ
  • 原因 X染色体長腕末端のFMR1遺伝子の3塩基(CGG)繰り返し配列の延長
  • 機序 神経細胞の核内に凝集体が形成され機能障害に至ると推測されている
  • 症状 男性は発達障害や重度の知的障害,自閉症スペクトラム(女性は軽度)
  • 関連 脆弱X症候群関連疾患は50歳~進行性の小脳失調やパーキンソンなど
  • 身体 細長い顔,大耳介,巨大睾丸,関節過伸展,扁平足、僧帽弁逸脱など
  • 治療 根本的な治療法を開発中(現時点では個々の病態に対する対症療法)
  • 予後 発症後は進行性(本邦は100人未満? 自閉症とされている例が多い?)

参考)難病情報センター,他

脆弱X症候群の顔面特徴(細長い顔,突出する耳と額)

(投稿者 川崎)

2025-07-28

リンカーン徴候 Lincoln sign

  • 大動脈弁逆流症による大脈のため膝窩動脈が過度に拍動して下肢が周期的に動く現象
  • 同疾患で頭部が心拍に一致し前後にゆれるド・ミュッセ徴候(de Musset sign)の足版
  • 命名はこの所見を示した第16代アメリカ合衆国の大統領 Abraham Lincoln(1809-1865)
  • 1863年にガードナーが有名な写真 ビッグフット を撮影し左足のぼやけを指摘(下図)
  • ジャーナリストのブルックスが膝窩動脈の拍動で脚が僅かに動いた可能性を提唱した
  • 1961年医師ゴードンが身体的特徴からリンカーンはマルファン症候群であったと推測
  • 1964年シュワルツは彼のマルファン症候群の特徴に関する更なる系譜学的証拠を提示


左足先のみピントがぼけている点に注目

💀 追加コメント
  • リンカーンがマルファン症候群であったかどうかは今もって不明だそうです(DNAは未公表).著名な遺伝学者ビクター・マキュージックは、その確率を50:50としています(Nature 1991;352:279-81).ちなみに彼は暗殺された初めての米大統領です.
  • 本徴候は膝をうまく組んで(体側の膝の真上に膝窩動脈),下肢の力を抜くよう指導など,一定の条件を満たさないと出現しないと予想します.以前に大動脈弁逆流での足背動脈のコリガン脈を記録したことがありますが,とても微妙な所見でした(ココ
  • 骨シンチグラフィにもリンカーン徴候と呼ばれる所見があるようです.下顎骨への核種の取り込みが過剰に亢進した(まるで黒ひげ)状態で,SAPHO症候群や骨パジェット病,悪性腫瘍転移,薬剤性顎骨壊死,副甲状腺機能亢進症などで認めるようです.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-07-27

カルマン症候群 Kallmann syndrome

  • 概要 嗅覚低下と低ゴナドトロピン性性腺機能低下の合併した症候群
  • 形式 X連鎖潜性,常染色体顕性・潜性遺伝などのさまざまなパターン
  • 原因 視床下部ゴナドトロピン放出ホルモン(LHRH)ニューロン障害
  • 命名 ドイツ系米国人 Franz Josef Kallmann(1897–1965)の初報()  
  • 疫学 男性で約1万人に1人,女性で5万人に1人で男性優位に発症する
  • 症状 女児で14歳,男児で15歳まで二次性徴の欠落または不完全発現
  • 合併 無嗅症や低嗅症,腎形成異常,難聴、口唇口蓋裂など(下表)
  • 治療 性ホルモン補充(挙児に至る例あり),一部で自然に軽快例あり



(投稿者 川崎)

2025-07-18

日本内科学会 第248回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題64 Gitelman症候群と診断した反復性低K血症と低Mg血症の1例
  • 本症はNa-Cl共輸送体(SLC12A3遺伝子)の変異に起因し、遠位尿細管でのNaおよびCl再吸収障害をきたす疾患である。類似疾患のBartter症候群との鑑別が必要であるが、本症は低Mg血症や低Ca尿症を伴うことが特徴である。軽度の脱水や胃腸症状を契機に重篤な電解質異常を反復するため、KおよびMg補充に加え、適切な水分電解質摂取を含む生活指導が重要である。

演題69 Pantoeaによるカテーテル関連血流感染の1例
  • カテ先培養と血液培養の結果でPantoea sp.が検出された。薬剤感受性結果から抗生剤をCTRXに変更し、その後症状の再燃なく、抗生剤を2週間投与したため退院となった。グラム陰性桿菌であるパンテアはカテーテル関連血流感染の原因菌として非常に珍しい。

演題102 ピサ症候群を呈した抗凝固療法中尾状核出血の1例
  • 右へ傾くピサ症候と左への体幹のねじれを呈し、右上肢固縮と姿勢時振戦、軽度の右下肢単麻痺も認めた。ピサ症候は立位や座位時に増強、仰向けになると正中に戻り、腰曲がりはなかった。頭部CTで左尾状核に直径1.5cmの血腫、左側脳室へ穿破を認め責任病巣と判断した。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-05-25

オリゴジェニック遺伝 Oligogenic inheritance

📗 単一遺伝子遺伝
  • 一つの遺伝子の変異によって病気が発症する遺伝形式のこと
  • 例:嚢胞性線維症(CFTR変異)やハンチントン病(HTT変異)

📘 二遺伝子遺伝
  • 二つの異なる遺伝子が協力し一つの表現型を決定する遺伝形式
  • 単一の遺伝子変異では発症しない病気が二つの変異で発症する
  • 例:遺伝性難聴(GJB2とGJB6という二つの異なる遺伝子が関与)

📙 三遺伝子遺伝
  • 三つの異なる遺伝子が協力して一つの表現型を決定する遺伝形式
  • それぞれの遺伝子が独自の役割を持ち補完し合い最終的な表現型
  • 例:バルデ-ビードル症候群(BBS1、BBS2、BBS6が関与して発症)


📚 オリゴジェニック遺伝
  • 少数の遺伝子のレアバリアントの組み合わせによって発症する病態
  • 例:先天性心疾患(MYH7、MKL2、NKX2-5などの遺伝子が相互作用)

参考)ミネルバクリニック、ほか

💁 遺伝に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右下らんから選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-04-01

双生児:一卵性 vs 二卵性

🍊 先日の診察室で...
  • 事務員P「私、双子で一卵性なんです」
  • 某医師T「一卵性? 遺伝子調べたの?」
  • 事務員P「そんな検査はしていません」
  • 某医師T「じゃ、実は二卵性かもよ」
  • 事務員P「でも妹とソックリなんです」

🍋 おさらい
  • 一卵性(identical twins)は1つの卵子と1つの精子が受精後2つに分かれて生まれるため(ほぼ)100%同じ遺伝子情報を有する(もちろん性別や血液型は同じ)。一方、二卵性(non-identical twins)は2つの卵子がそれぞれ別の精子と受精して生まれるため、遺伝的には平均50%が同じ(性別や血液型は同じことも異なることもある)。
  • 一卵性と二卵性の鑑別には生後にDNA検査を行う必要がある(一卵性だと思っていたが二卵性だったということが少なくない)。胎盤が1つなら一卵性(一絨毛膜二羊膜または一絨毛膜一羊膜)で2つなら二卵性(二絨毛膜二羊膜)が多いが、一卵性でも2胎盤(二絨毛膜二羊膜)や二卵性でも2つの胎盤がくっついて1つに見えることがある。 
  •  双胎の頻度は全妊娠の1-2%を占め、3分の1は一卵性で3分の2は二卵性である。一卵性双胎の頻度は全人種でおおむね同様で、母体年齢によって変動しないが体外受精(IVF妊娠)では2-3倍高いと考えられる。二卵性双胎の頻度は白人女性より黒人女性で高く、さらに母体年齢や妊娠方法によって増加する(排卵誘発により約20%増加)。

🍍 おまけ
  • 同一DNAを有する一卵性双生児でも、指紋や虹彩、掌紋(手のひらにある紋様)、顔、耳の形などで鑑別できるようです()。人間は両者の差をなんとなく分かるようですが、近年ではAIを使った鑑別がとても進んでいるそうです(

指紋による分類例(aとbが一卵性でcは他人/d~fは細部抽出)
(投稿者 川崎)

2025-03-29

レフェトフ症候群  Refetoff syndrome

  • 概要 甲状腺ホルモンに対する標的臓器の反応性が減弱した病態
  • 原因 主に甲状腺ホルモン受容体βの異常(常染色体顕性遺伝)
  • 命名 米国の小児科医 Samuel Refetoff らが1967年に報告(論文
  • 疫学 日本では100名未満:大部分が家族性で散発例は10~15%
  • 症状 甲状腺腫と軽度の頻脈以外の症状を示さない症例が多い
  • 契機 FT4とFT3の上昇にもかかわらずTSHが上昇または正常内
  • 診断 TRH負荷試験では正常反応でT3抑制試験ではTSHの抑制
  • 治療 甲状腺ホルモンの高値で代償され治療不要な症例が多い
  • 予後 頻脈のある患者は注意(心房細動で若年脳梗塞の報告有)

参考)難病情報センター,他

- 甲状腺ホルモン不応症の31歳女性 -

👉 甲状腺に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-03-09

レット症候群 Rett syndrome

  • 概要 神経系発達障害を主体とした重度かつ進行性のX連鎖性疾患(ほとんどが女児)
  • 命名 ウィーンの小児神経科医である Andreas Rett が1966年に報告した疾患(
  • 原因 80~90%にXq28に連鎖するMECP2遺伝子の変異(他はCDKL5やFOXG1の変異)
  • 疫学 出生女児10,000人当たり約1例の頻度(男児は出生前または乳児期早期に死亡)
  • 症状 乳児期早期に外界への反応の欠如、筋緊張低下,その後に手の常同運動など
  • 治療 根本的治療法ななく対症療法(理学療法,療育,薬剤療法,側弯などは手術)
  • 予後 全身進行性で生命予後は感染症や誤嚥,QT延長の不整脈などの合併症による

参考)難病情報センター,他

- Rett症候群の経過 -

- レット症候群の2 -

(投稿者 川崎)

2025-02-09

「私の血液型はオモテO型,ウラB型」

💫 ABO血液型の亜型
  • オモテ検査(赤血球と抗A,抗Bとの凝集反応)とウラ検査(血清中の抗A,抗Bの有無)が一致せず
  • 抗体試薬やレクチンへの凝集反応,不規則抗体,糖転移酵素活性,分泌型唾液中の型物質などで分類
  • 本邦で多い亜型はBm型(オモテ検査O型でウラ検査B型)とABm型(オモテ検査A型,ウラ検査AB型)
  • 遺伝子解析で多くの亜型はエキソン6/7変異(ただBm型やABm型はエンハンサー領域を含む欠失他)


<質問19>
  • B型の亜型、Bm型についてABO式血液型の1つに「Bm」という血液型がありますが、この血液型の人が輸血を必要とする場合、苦もなく手配できるものなのでしょうか?たとえば、Bmの血液型を持つ人にRh+Bの血液を輸血した場合はどうなりますか?また、この血液型の人は日本人中に何%程度存在するんでしょうか?データがあれば是非教えてください。

<回答> 
  • ABO式血液型で、赤血球表面のA抗原やB抗原の、主として量的な差と各種抗体やレクチンに対する反応性の違いにより、亜型(subgroup)として分類されるタイプが存在することが知られております。
  • 手元にある文献を調べてみましたが、日本人での頻度に関しては、A2の頻度はA型中の0.16%(A型)、AB型中の1.07%(A2B型)となっております。A2を除くAの亜型の頻度は0.021%で、Bの亜型はこの約10倍ということですので、0.2%ぐらいということになるでしょうか。日本人の亜型の中で一番多いのは、Bm型とのことですので、頻度はA2よりやや多いことを前提にして、0.16~0.2%の間と推測されます。
  • 輸血を受ける場合は、B型の血液を輸血して問題はありません。Bm型血球は抗Aや抗Bの試薬で凝集しないのに、Bm型の人の血清はA型血球を凝集し、いわゆる「血液型検査のおもて・うら試験不一致」をきたすので、血液型判定上は問題となります。しかし、輸血をする上では、Bm型だからといってBm型を入れる必要はなく、交差試験を行って問題のない血液、つまり、B型の血液を輸血して何の問題も生じません。日本人ではB型の頻度は約20%ですので、B型の供血者をさがすのに苦労することはまずあり得ません。


💁 血液型に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-12-27

Ehlers–Danlos syndrome エーラス・ダンロス症候群

エーラスダンロス症候群に関する論文が先日,出版されました(Med Genet 2024 Dec 3;36:225-234).図鑑のような体裁で臨床医にはとても分かりやすいと感じました.本ページでも取り上げておきます(全文がネットで読めます)

💚 抄録訳
  • 単一遺伝子性エーラスダンロス症候群(EDS)は、関節過可動性、皮膚過伸展性および/または脆弱性、および全身組織脆弱性を臨床的に特徴とする遺伝性結合組織疾患のグループです。現在、単一遺伝子性EDSタイプの診断を確定するためのゴールドスタンダードは、大規模並列シーケンシングによる遺伝子パネル検査です。遺伝子検査の可能性は大きく進歩しているものの、病歴、家族歴、身体検査を含む徹底した臨床評価が診断プロセスにおいて依然として重要であるため、私たちは、単一遺伝子性EDSタイプの臨床的特徴(の組み合わせ)をテキストと写真で報告し、臨床診断に役立てることを目指しています。さらに、分子診断が不可能な場合でも、臨床診断によって管理と監視を導くことができます。



- 骨格筋の特徴 -



- 皮膚の特徴 -



- その他の臨床的特徴 -

💙 命名までの遍歴
  • エーラス・ダンロス症候群という名称は,オランダの皮膚科医 Edvard Laurits Ehlers (1863-1937) とフランスの皮膚科医 Henri-Alexandre Danlos (1844-1912) に由来しています.しかしヒポクラテスは紀元前400年にこの疾患の特徴に言及し,van Meek'ren が1682年に医学的記述を残しています.1892年には Tschernogubow が発表していますが,ロシア語だったためか西ヨーロッパではほとんど見過ごされたようです.そして1901年と1908年にそれぞれ影響を受けた患者を記述した Ehlers と Danlos にちなんで,1936年に Weber がこの疾患を Ehlers–Danlos syndrome(EDS)と命名したようです.


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👉 エーラス・ダンロス症候群に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2024-11-23

ミトコンドリア心筋症 Mitochondrial cardiomyopathy

  • DNAの遺伝子異常などで筋症状,脳症状,心症状を主症候とする疾患
  • ミトコンドリア(全てでない)の構造異常でエネルギー産生効率低下
  • 正常と変異の比率は個体間や組織間で異なるためさまざまな表現型
  • 心病変を合併するミトコンドリア病は約10,000〜15,000人に1人発症
  • 形態は心伝導障害,拡張型心筋症(28.9%),肥大型心筋症(46.7%)


💥 シンチグラフィの特徴MIBI/BMIPP mismatch pattern
  • 99mTc-MIBIの取り込みは減少(特に重症例)
  • 99mTc-MIBIウォッシュアウト率は増加する
  • 対照的に123I-BMIPPの取り込みは増加する

核種の集積がBMIPP>MIBIとなる所見(BMIPP/MIBIミスマッチ)は虚血性心疾患とは真逆です.MIBIの取り込みの減少はミトコンドリア呼吸鎖によって生じるミトコンドリア膜電位の低下を反映し,BMIPP/99mTc-MIBI の不一致はトリグリセリド プールの増大によって生じている可能性が提唱されています.



👉 シンチグラフィに関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2024-11-03

ネマリンミオパチー  Nemaline myopathy

  • 概略 筋線維内に桿状体様構造物(ネマリン小体)をもつ稀な先天性ミオパチー(筋疾患)
  • 病因 遺伝子異常(ACTA1, NEB, TPM2, TPM3, TNNT1, CFL2, KBTBD13, RYR1, SEPN1など)
  • 疫学 人種や民族,性別に関係なく5万人におよそ1人の頻度(本邦の患者数は約1,000人)
  • 症状 顔面筋を含む全身の筋緊張低下(フロッピーインファント),高口蓋,呼吸障害など
  • 分類 乳児期早期に死亡する乳児重症型,緩徐進行性の良性先天型,ならびに成人発症型
  • 治療 根本的な治療法はない(必要に応じリハビリ/呼吸障害や側弯に対する治療など)
  • 予後 乳児重症型は呼吸障害の程度によって規定され,良性先天型の予後は一般的に良好


先天性ネマリンミオパチーに関連した拡張型心筋症の1剖検例

(投稿者 川崎)

2024-11-02

ポイツ・ジェガーズ症候群 Peutz-Jeghers Syndrome

  • 食道以外の全消化管の過誤腫性ポリポーシスと皮膚・粘膜の色素斑を特徴とする症候群
  • STK11 遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントが原因で常染色体優性(顕性)遺伝形式
  • 小腸ポリープが好発し出血や腸重積(8歳頃~検査して10〜15mm以上なら内視鏡的切除)
  • 消化管や乳房,膵,子宮,卵巣,肺,精巣などに悪性腫瘍が発生するため定期検査が要
  • 名称は蘭内科医 Peutz J (1886–1957) の初報と米内科医 Jeghers HJ (1904–1990) の体系化

ポイツ・ジェガーズ症候群の身体的特徴

Peutz-Jeghers Syndromeの診断フローチャート

(投稿者 川崎)

2024-10-25

オルガネラ Organelle

  • 細胞内部で分化した機能形態を有する構造の総称(細胞小器官)
  • 核やミトコンドリア,小胞体,ゴルジ体,リソソーム他が相当
  • 固有タンパク質を構造内に隔離濃縮することで独自機能を発揮
  • オルガネラの発達は真核細胞と原核細胞を区別する特徴的所見
  • ドイツの動物学者 Möbius(1825–1908)が1884年に初めて使用
  • 各オルガネラは近接性や異質性,双方向性などの制御下にある
  • そのコミュニケーション変化は多くの疾患の発生と関連(下図)


- オルガネラ間コミュニケーションの目的 -

(投稿者 川崎)

2024-09-24

Combined hyperlipidemia 複合高脂血症

  • 別名はmixed hyperlipidemia,multiple-type hyperlipoproteinemia,混合型高脂血症,複合型脂質異常症.循環器学会用語集には表題のcombined hyperlipidemia(複合高脂血症)のみ収載され,日本医学会医学用語辞典には家族性複合型高脂血症(familial combined hyperlipidemia)のみ収載
  • 米医師Goldsteinらが心筋梗塞患者の家計調査(J Clin Invest 1973;52:1544-68)から見出した遺伝性高リボ蛋白血症で,心筋梗塞の10~20%と思われる.同じ家系でも高コレステロール血症や高トリグリセリド血症,高コレステロール血症兼高トリグリセリド血症など多彩な高リボ蛋白像を示す. 
  • 欧米では人口の1%が家族性複合型高脂血症(Familial Combined Hyperlipidemia: FCHL)で,65歳以下で心筋梗塞を発症した症例では10~20%と推定されている.本邦の正確な頻度は不明であるが,65歳以下で心筋梗塞を発症した149名中32%が複合高脂血症で,一般人では188名中4.53%であった.



(投稿者 川崎)

2024-09-13

進行性骨化性線維異形成症 Fibrodysplasia ossificans progressiva: FOP

  • 別名 ストーンマン症候群,Stone Man Syndrome(おそらく現在では非推奨)
  • 概要 全身の骨格筋や筋膜,腱,靱帯などの線維性組織が進行性に骨化する
  • 初報 1692年にGuy Patinが木になった“turned to wood” 若者として報告(
  • 原因 BMP typeIの受容体ACVR1の変異で常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる
  • 疫学 乳児期〜学童期に初発/本邦では80人ほど(有病率は200万人に約1人)
  • 症状 軟部組織の腫脹,関節の拘縮,呼吸障害など(平滑筋と心筋は骨化なし)
  • 治療 対症療法(ステロイドやNSAIDs,ビスフォスフォネートなどの試みあり)
  • 予後 徐々に悪化し40歳以上ではほぼ全介助(50歳代以降の生存者も少数確認)

参考)難病情報センター,他

10歳のパキスタン人男児
(左腕に腫瘤があり肩の外転が35度の角度に制限)

2024-08-31

2ヒット仮説 Two-hit hypothesis

  • ほとんどの腫瘍抑制遺伝子は表現型の変化を引き起こすため,がん発生には突然変異などで両方の対立遺伝子が不活性化される必要があるという仮説.
  • 米国のがん専門医 Alfred George Knudson, Jr.(1922–2016)が1971年に提唱()したため,Knudson hypothesis(クヌードソン仮説)とも呼ばれる.
  • 最近ではがん以外にも多くの疾患で2ヒット仮説の関与が疑われています(例えば拡張型心筋症や周産期心筋症など:Circulation 2021;143:1852-62


(投稿者 川崎)

2024-08-21

HCMの遺伝子検査:保険収載

  • HCM患者の約60%が常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式に従う家族歴
  • そのうち40~60%でサルコメア構成蛋白をコードする遺伝子に変異あり
  • HCMに対する遺伝学的検査が2022年に保険収載(下記の実際を参照)
  • ただし同一変異を有す患者間でも臨床病型や経過は異なることが多い
  • 原因変異から臨床経過を正確に予測することは現時点では困難である

💰 保険収載されている肥大型心筋症の遺伝検査の実際詳細
  • 実施施設 国立循環器病研究センター
  • 保険点数 5,000点
  • 検体採取 血液 5 mL(EDTA採血管)

💁 遺伝子検査に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-06-11

表皮水疱症 Epidermolysis bullosa

  • 概略 わずかな外力によって水疱形成を反復する一群の疾患
  • 疫学 男女ほぼ同数で5歳未満が最多(発症は約9割が<1歳)
  • 機序 基底細胞やヘミデスモゾームの脆弱化(単純型)など
  • 原因 常染色体の優性(顕性)遺伝または劣性(潜性)遺伝
  • 診断 病歴と身体所見,病理学的所見(光顕・電顕)による
  • 病型 単純,接合部,優性・劣性栄養障害,キンドラー症候群
  • 症状 四肢末梢や大関節部などに軽微な外力で水疱やびらん
  • 合併 皮膚がん,食道・幽門狭窄,関節拘縮,成長遅延など
  • 治療 根治療法はなく対症療法(それも病型により異なる)
  • 予後 生後間もなく死亡例〜普通の社会生活可能まで多様


手足の局所的な皮膚病変から粘膜・内臓の水疱形成まで多様

(投稿者 川崎)

2024-05-21

用語:Genetics and Epigenetics

  • genetics 【名】遺伝学、遺伝的特徴(dʒənétiks/ジェネティクス/音声
  • epigenetics 【名】エピジェネティックス,後成的遺伝学,後生学(èpidʒinétiks/エピジネティクス/音声

🌎 ウィキペディアより
  • エピジェネティクス(英語: epigenetics)とは、一般的には「DNA塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化を研究する学問領域」である。ただし、歴史的な用法や研究者による定義の違いもあり、その内容は必ずしも一致したものではない。(一部省略)
  • 一般的にエピジェネティクスとは、下記のリッグス(1996年)の定義のように理解されている。しかしながら、いくつかの定義あるいは説明が存在し、結果として、何を意味するべきかについては議論がある。
    • 「遺伝物質からはじまり最終的な生物を形づくるすべての制御された過程」(ウォディントン, 1942年) 
    • 「同一遺伝子型の細胞が異なる表現型を細胞分裂を越えて維持していること」の説明(Nanney, 1958年)
    • 「複雑な生物の発育中における遺伝子活性の時間的·空間的制御機構の研究」(ホリデー, 1990年)
    • DNA配列の変化では説明できない体細胞分裂および/または減数分裂に伴う遺伝子機能における遺伝的な変化の研究」(リッグス, 1996年)
    • 「変化した活性状態を記録・信号伝達または継続させるような染色体領域の構造適応」(バード, 2007年)
    • 「エピジェネテックな形質とは、DNA塩基配列の変更を伴わない染色体の変化に起因する安定した遺伝性の表現型を示すもの」(Bergerら, 2009年)

💁 用語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)