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2025-08-27

ツッカーカンドル器官 Organ of Zuckerkandl

👽 Zuckerkandl器官
  • ヒトの胎児や新生児で認めるクロム親和細胞の集団
  • 大動脈の分岐部または下腸間膜動脈の起始部に存在
  • 由来はハンガリーの病理医 Zuckerkandl E (1849–1910)
  • 胎児循環系にカテコールアミンを分泌(血圧の調節)
  • 副腎髄質の発達に伴い1歳半~退化(春期以後なし)
  • パラガングリオーマまたは褐色細胞腫の発生源となる

参考)内科 2015;116:500,他

- パラガングリオーマ(傍神経節腫/髄外褐色細胞腫)を発症した39歳男性 -

(投稿者 川崎)

2025-08-10

脆弱ぜいじゃくX症候群 Fragile X Syndrome 

  • 概要 脆弱X随伴振戦/失調症候群を伴うトリプレットリピート病のひとつ
  • 原因 X染色体長腕末端のFMR1遺伝子の3塩基(CGG)繰り返し配列の延長
  • 機序 神経細胞の核内に凝集体が形成され機能障害に至ると推測されている
  • 症状 男性は発達障害や重度の知的障害,自閉症スペクトラム(女性は軽度)
  • 関連 脆弱X症候群関連疾患は50歳~進行性の小脳失調やパーキンソンなど
  • 身体 細長い顔,大耳介,巨大睾丸,関節過伸展,扁平足、僧帽弁逸脱など
  • 治療 根本的な治療法を開発中(現時点では個々の病態に対する対症療法)
  • 予後 発症後は進行性(本邦は100人未満? 自閉症とされている例が多い?)

参考)難病情報センター,他

脆弱X症候群の顔面特徴(細長い顔,突出する耳と額)

(投稿者 川崎)

2025-07-27

カルマン症候群 Kallmann syndrome

  • 概要 嗅覚低下と低ゴナドトロピン性性腺機能低下の合併した症候群
  • 形式 X連鎖潜性,常染色体顕性・潜性遺伝などのさまざまなパターン
  • 原因 視床下部ゴナドトロピン放出ホルモン(LHRH)ニューロン障害
  • 命名 ドイツ系米国人 Franz Josef Kallmann(1897–1965)の初報()  
  • 疫学 男性で約1万人に1人,女性で5万人に1人で男性優位に発症する
  • 症状 女児で14歳,男児で15歳まで二次性徴の欠落または不完全発現
  • 合併 無嗅症や低嗅症,腎形成異常,難聴、口唇口蓋裂など(下表)
  • 治療 性ホルモン補充(挙児に至る例あり),一部で自然に軽快例あり



(投稿者 川崎)

2025-07-20

LADA & LADY

  • LADA: latent autoimmune diabetes in adults(主に海外で使用,典型例は35才以降)
  • LADY: latent autoimmune diabetes in youth(小児を含む若年者に発症したLADA)
  • SPIDDM: slowly progressive insulin-dependent diabetes mellitus(緩徐進行1型糖尿病)


👺 LADAの定義(以下のすべてを満たす)
  • 35歳以降の発症
  • 既知の膵島関連自己抗体のいずれかが陽性
  • 糖尿病の診断後6ヶ月以降にインスリン治療が必要


💁 自己免疫性糖尿病に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-06-04

陥没乳頭 Inverted Nipple

  • 定義 正常では外側に突き出ている乳首が,内側に引っ込んだ状態
  • 頻度 男女ともに発症し女性の10~20%,87%両側,50%家族性
  • 分類 先天性と後天性,仮性と真性,グレード1-3(線維化程度)
  • 精査 陥没乳頭が分泌物,乳頭拡張症,悪性腫瘍を伴う場合に必要
  • 治療 吸引装置や外科的な手術(フックを用いて挙上など),ほか


- 乳房膿瘍を生じた陥没乳頭の3歳男児 -

💁 乳房に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-14

みずぼうそう(水疱瘡)と帯状ヘルペス

😀 復習
  • 水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)は初感染で水痘を発症する
  • 神経節に潜伏し免疫低下などで再活性化すると帯状疱疹(帯状疱疹の再発は<6%)

😗 英語
  • 水痘帯状疱疹ウイルス ➜ varicella-zoster virus(発音:べリチェラ...)
  • 水痘 ➜ chickenpox(発音
  • 帯状疱疹 ➜ shingles(発音)または herpes zoster(発音:ハーピーズ...)

💁 帯状疱疹に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-07

DORV: Double Outlet Right Ventricle(両大血管右室起始症)

  • 先日,知人から「DORVの症例で…」と相談を受けました.DORVと聞いてすぐに病態が思い浮かばなかったので調べてみました.ちなみにDOLV(両大血管左室起始症)もありますが,さらに稀なようです

両大血管右室起始症DORV
  • 定義:大動脈と肺動脈の一方が完全に右心室起始+他方が50%以上が右心室起始+後方大血管の半月弁と房室弁の間に筋性組織(心室漏斗部鄒壁)が存在
  • 分類:大血管の位置関係により正常大血管型(後方の大動脈が心室中隔に騎乗するタイプ)と大血管転位型(後方の肺動脈が心室中隔に騎乗するタイプ)
  • 細分:心室中隔欠損孔の位置で4分類(下図):大動脈弁下型心室中隔欠損,肺動脈弁下型心室中隔欠損,両大血管型心室中隔欠損, 遠隔型心室中隔欠損
  • 疫学:先天性心疾患の約1%(出生約10,000人に1人)で特定遺伝子異常との関連は報告されていないが18トリソミー症例では出現頻度が比較的頻度が高い
  • 症状:右室流出路に狭窄がない場合は高肺血流による心不全症状が主体,右室流出路~肺動脈に狭窄を伴う場合はファロー四徴症に類似し多彩なチアノーゼ
  • 治療:解剖に応じ乳児期に心内修復術(心内導管で心室内血流転換術)や新生児期~乳児期前半のBTシャント手術,1歳前後の右室流出路拡大形成術など


- DORVのVSD(下図のd)による4分類 -

👉 先天性心疾患に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-05

アトピー性皮膚炎: TARCターク & EASIイーエーエスアイ

TARC: Thymus and Activation-Regulated Chemokine
  • アトピー性皮膚炎の重症度を反映する血液検査(皮膚の内部に潜む炎症の把握も可能)
  • TARCは白血球遊走を誘導するケモカインの一種でIgE産生や好酸球産生を活性化させる
  • 基準値(pg/mL):成人<450,小児は6~12ヵ月<1367,1~2歳<998,2歳~<743

EASI: Eczema Area and Severity Index
  • アトピー性皮膚炎の重症度判定スコア:0(無病)~72(最大病変)(計算ページ
  • 4部位(頭頸部・体幹・上肢・下肢)の重症度(紅斑・浮腫/丘疹・搔破痕・苔癬化)
  • 乾癬のスコアリングシステムの乾癬面積重症度指数(PASI)を1998年に改良(論文

💁 アトピーに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-03

DOHaDドーハッド仮説

  • Developmental Origins of Health and Disease(健康と病気の発生起源説や胎児期起源仮説)
  • 胎児期や乳児期の環境が,将来の健康や病気のリスクに大きな影響を与えるという考え方
  • 英国のDJP Barkerらが疫学的調査を元に1980年代に提唱した(Lancet 1989;2(8663):577-80
  • 例えば妊娠中の母体の栄養状態が悪いと生まれた子供が将来,肥満や糖尿病になりやすい
  • 想定される機序は胎児期の環境がエピジェネティック変化を引き起こし将来の健康に影響
  • 具体的には子宮内環境によってDNAメチル化やヒストン修飾,非コードRNAが変化してくる

- 低出生体重児のリスク因子とDOHaD仮説のイメージ -

(投稿者 川崎)

2025-04-26

APSGNまたはPSAGN:溶連菌感染後急性糸球体腎炎

  • acute poststreptococcal (or poststreptococcal acute) glomerulonephritis
  • A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)の感染を契機に発症する急性糸球体腎炎
  • 類似病態はIgA血管炎や紫斑病性腎炎(Henoch-Schönlein purpura nephritis)
  • 急激に発症する血尿や蛋白尿,高血圧,eGFRの低下,Na・水の貯留を示す
  • 典型例では先行感染から1~3週後に浮腫・血尿・高血圧の三徴が出現する
  • 機序は感染後に可溶性免疫複合体が生じ糸球体基底膜に捕らえられるため
  • 3~10歳の小児に多く(男性優位)先進国では抗生物質の使用で頻度は減少
  • 鑑別は急性発症型慢性GNや慢性GN急性増悪、急速進行性GN、良性反復性血尿
  • 安静臥床や保温などの対症療法で小児は約90%,成人は50~80%が治癒する
  • 薬剤は腎毒性の少ないペニシリンやCa拮抗薬など(原則,ステロイドなし)

(投稿者 川崎)

2025-04-20

ヒト・メタニューモウイルス Human metapneumovirus: hMPV

  • 2001年に発見された新しいウイルスで呼吸器感染症の5~10%を占める
  • 13.35kbのマイナス鎖のssRNAで150~600nm大の多形性もしくは球形
  • 赤血球凝集能を欠いてRSウイルス(RSV)と同じニューモウイルス亜科
  • 診断は鼻咽頭スワブで遺伝子増幅のRT-PCR法でが一番感度が高い方法
  • 呼吸器感染症の児は1~2歳が最も多い(平均の年齢は2歳6ヵ月である)
  • 潜伏期間は4~6日と推測されウイルス排泄は発症後1~2週間持続する
  • 喘鳴を伴う気管支炎が38%と一番多く,他の病態は上気道炎や肺炎など
  • 合併症として急性中耳炎や気管支喘息増悪,熱性痙攣,急性胃腸炎など
  • 血液検査では特異的な変化なし(白血球数やCRPは他のウイルスと同じ)
  • 特異的な治療法はない(発熱は平均4.7日,喘鳴は平均5.3日で治まる)



👉 ウイルスに関するの過去の投稿は コチラ(PC版なら右下の欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-03-09

レット症候群 Rett syndrome

  • 概要 神経系発達障害を主体とした重度かつ進行性のX連鎖性疾患(ほとんどが女児)
  • 命名 ウィーンの小児神経科医である Andreas Rett が1966年に報告した疾患(
  • 原因 80~90%にXq28に連鎖するMECP2遺伝子の変異(他はCDKL5やFOXG1の変異)
  • 疫学 出生女児10,000人当たり約1例の頻度(男児は出生前または乳児期早期に死亡)
  • 症状 乳児期早期に外界への反応の欠如、筋緊張低下,その後に手の常同運動など
  • 治療 根本的治療法ななく対症療法(理学療法,療育,薬剤療法,側弯などは手術)
  • 予後 全身進行性で生命予後は感染症や誤嚥,QT延長の不整脈などの合併症による

参考)難病情報センター,他

- Rett症候群の経過 -

- レット症候群の2 -

(投稿者 川崎)

2024-12-17

吸啜きゅうてつ反射

  • 口に入ってきたものを強く吸う新生児の反射で吸着後の口腔内は陰圧(平均-64±45 mmHg)
  • 舌の蠕動運動ではなく舌後方の上下運動によって口腔内の吸引圧を変化させている(下図)
  • 唇に乳首などが触れると首を回す探索反射吸啜反射嚥下反射を合わせて哺乳反射という

- 吸啜のメカニズム -
看護roo!

💁 難解漢字に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-12-14

アレルギーマーチ The allergy march

  • アレルギーの行進という意味で,親から遺伝によってアレルギーになりやすい体質を受け継いだ子どもが,乳幼児期にまずアトピー性皮膚炎や湿疹を起こし,年齢と共に気管支喘息やアレルギー性鼻炎にもなるなど,次から次へとアレルギーが症状を変えて進展していく様子を行進にたとえて呼んだもの. 


アレルギーマーチ
アレルギー 2017;66:190-203/Allegy & Clinical Immunology News 1989;1:71-31)

👉 アレルギーに関するの過去の投稿は コチラ(PC版なら右下欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2024-11-13

側弯症の検診

  • 実施方法の多くは前屈テストによる視認法(下図)
  • 本邦の側弯症検診は学校保健法に基づき1979年開始
  • 意義は未確立でイギリスやカナダなどでは現在中止
  • 側弯症頻度は1-2%で程度はCobb角で判定(下図C)



(投稿者 川崎)

2024-11-03

ネマリンミオパチー  Nemaline myopathy

  • 概略 筋線維内に桿状体様構造物(ネマリン小体)をもつ稀な先天性ミオパチー(筋疾患)
  • 病因 遺伝子異常(ACTA1, NEB, TPM2, TPM3, TNNT1, CFL2, KBTBD13, RYR1, SEPN1など)
  • 疫学 人種や民族,性別に関係なく5万人におよそ1人の頻度(本邦の患者数は約1,000人)
  • 症状 顔面筋を含む全身の筋緊張低下(フロッピーインファント),高口蓋,呼吸障害など
  • 分類 乳児期早期に死亡する乳児重症型,緩徐進行性の良性先天型,ならびに成人発症型
  • 治療 根本的な治療法はない(必要に応じリハビリ/呼吸障害や側弯に対する治療など)
  • 予後 乳児重症型は呼吸障害の程度によって規定され,良性先天型の予後は一般的に良好


先天性ネマリンミオパチーに関連した拡張型心筋症の1剖検例

(投稿者 川崎)

2024-11-02

ポイツ・ジェガーズ症候群 Peutz-Jeghers Syndrome

  • 食道以外の全消化管の過誤腫性ポリポーシスと皮膚・粘膜の色素斑を特徴とする症候群
  • STK11 遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントが原因で常染色体優性(顕性)遺伝形式
  • 小腸ポリープが好発し出血や腸重積(8歳頃~検査して10〜15mm以上なら内視鏡的切除)
  • 消化管や乳房,膵,子宮,卵巣,肺,精巣などに悪性腫瘍が発生するため定期検査が要
  • 名称は蘭内科医 Peutz J (1886–1957) の初報と米内科医 Jeghers HJ (1904–1990) の体系化

ポイツ・ジェガーズ症候群の身体的特徴

Peutz-Jeghers Syndromeの診断フローチャート

(投稿者 川崎)

2024-09-13

進行性骨化性線維異形成症 Fibrodysplasia ossificans progressiva: FOP

  • 別名 ストーンマン症候群,Stone Man Syndrome(おそらく現在では非推奨)
  • 概要 全身の骨格筋や筋膜,腱,靱帯などの線維性組織が進行性に骨化する
  • 初報 1692年にGuy Patinが木になった“turned to wood” 若者として報告(
  • 原因 BMP typeIの受容体ACVR1の変異で常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる
  • 疫学 乳児期〜学童期に初発/本邦では80人ほど(有病率は200万人に約1人)
  • 症状 軟部組織の腫脹,関節の拘縮,呼吸障害など(平滑筋と心筋は骨化なし)
  • 治療 対症療法(ステロイドやNSAIDs,ビスフォスフォネートなどの試みあり)
  • 予後 徐々に悪化し40歳以上ではほぼ全介助(50歳代以降の生存者も少数確認)

参考)難病情報センター,他

10歳のパキスタン人男児
(左腕に腫瘤があり肩の外転が35度の角度に制限)

2024-08-18

乾癬 かんせん vs 湿疹  psoriasis vs eczema

  • 非専門家にとって乾癬と湿疹の鑑別は容易ではありませんが,ざっくりとした違いを下の表まとめてみました.
  • もっともAI 研究(Sensors (Basel) 2023;23:7295)では,皮膚画像から96%の精度で鑑別できるようですが...😯


Psoriasis 乾癬 Eczema 湿疹
疫学 大人>子供 子供
部位 肘や膝,臀部〜腰,頭皮 膝や肘の内側など皮膚の折り目
掻痒 軽い 激しい
外観 赤いうろこ状の隆起 乾燥,発赤,ひび割れ
境界 明瞭 不明瞭
代表 尋常性乾癬 アトピー性皮膚炎
参考)American Academy of Dermatology Association,他




(投稿者 川崎)

2024-08-11

低ホスファターゼ症 Hypophosphatasia (HPP)

  • 概要 血清アルカリホスファターゼ(ALP)値の低下を特徴とする骨系統疾患
  • 原因 組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)の欠損または活性低下
  • 症状 くる病様変化,骨変形,四肢短縮,高Ca血症、乳歯の早期喪失(下図)他
  • 診断 主症状1つ以上と血清ALP値低値があれば遺伝子検査で病原性変異を確認
  • 疫学 本邦では100人未満?(ただし成人型など軽症型での未診断例が多い?)
  • 治療 重症例に対してアルカリホスファターゼ酵素補充薬やビタミンB6の投与
  • 予後 成人型などの軽症型は良好,酵素補充療法なければ重症型は不良(下表)



5歳4か月保隙装置および口腔内写真

(投稿者 川崎)