このブログを検索

ラベル 心電塾 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 心電塾 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025-09-11

今週の一枚 🎯

重症感染症でICUに入院した超高齢者

💙 解説
  • QRS波の後にP波が観察される(V1誘導に注目)
  • よく見るとPがQRS波に少しずつ追いついている
  • 房室解離であるが等頻度房室解離と考えられた
  • 最終的にPがQRSを追い越し通常の伝導が回復

💣 等頻度房室解離(isorhythmic atrioventricular dissociation)
  • P波とQRSにはつながりが無く心室は房室接合部からの刺激で収縮する房室解離のうち,洞結節の興奮発生頻度と房室接合部の興奮発生頻度がほぼ等しい状態
  • 房室解離が出現する原因として,①洞調律が遅くなった状態,②下位中枢の興奮発生機能が亢進した状態,③両方が組み合わされた状態が考えられます(引用
  • 房室解離は可逆性ですが,心房収縮が無効になり血行動態が悪化することがあります.本例でも感染性ショックが遷延 → 炎症の鎮静化に伴い房室解離も消失

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-08-30

論文 🏆

  • 近隣クリニックから当院へ紹介例が論文になりました
  • 労作時の動悸がありマスター負荷で2:1伝導ブロック
  • 心エコー図や運動負荷タリウム、ホルターに問題なし
  • その後に目薬(β遮断薬含む)の使用(片眼)が判明
  • 目薬の中止後は安定するも1年後に完全房室ブロック
  • なんと今度は両眼に点眼 → 中止後にブロックは消失
  • その後に眼科で閉塞 隅角ぐうかく緑内障に対して手術を実施

- 3度房室ブロックが出現時の心電図 -

😀 知識の整理
  • ベータ遮断薬を含む点眼薬の全身的な影響は,正常な心血管機能を有する個人では極めて軽微で無視できる.
  • しかし房室ブロックを呈した243症例の検討では,その内12症例でβ遮断薬を含む点眼薬を処方されていた.
  • 点眼薬の中止後この12例中7例では洞調律が回復したが,5例では最終的にペースメーカ植込み術を要した.
💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-08-05

👂 最近の耳学問

  • P2Y12受容体拮抗薬(阻害薬)➜ ADP(アデノシン二リン酸)の受容体であるP2Y12受容体を阻害することで抗血小板作用を示す薬剤(チエノピリジン系:第1世代,チクロピジン;第2世代,クロピドグレル;第3世代:プラスグレル/非チエノピリジン系,チカグレロル)
  • 対側性変化(reciprocal changes)➜ 急性心筋梗塞例の心電図でST上昇を示す誘導と鏡像関係にある誘導のST低下に対する用語として統一された(ミラーイメージは使用しない).同様に心臓周囲の用語も心膜に統一(心膜液貯留や心膜ドレナージなど/今後は心嚢は使用しない)
  • rVCSS ➜ Revised Venous Clinical Severity Scoreの略で,邦名は改訂静脈臨床重症度スコア.静脈不全を反映し,例えばrVCSS≧3点では日常生活が著しく妨げられると判断でき静脈ステントを考慮(適正使用指針).具体的な評価方法はココ
  • three noes IE ➜ 右心系単独の感染性心内膜炎(IE: infective endocarditis)のうち①静注薬物使用者,②心臓デバイス関連,③先天性心疾患(心室中隔欠損症,ファロー四徴症,僧帽弁弁膜症,大動脈弁弁膜症など)のいずれも認めない症例で,右心系IEの約16%を占めるという報告あり

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-06-26

今週の一枚 🎯

胸やけが持続する症例茶は来院時緑は数年前



(投稿者 川崎)

2025-06-12

今週の一枚 🎯

気分不良で来院した症例


2025-06-01

👂 最近の耳学問

  • ジルベール症候群は肝臓がビリルビンを処理する能力が部分的に欠如している軽度の遺伝性疾患である.特別な治療は通常不要であるが,絶食やその他のストレスでビリルビン値が上昇しやすい.
  • NHKやNTTなど,主にアルファベット3文字からなる頭字語略語は三文字頭字語(さんもじとうじご)または三文字略語(さんもじりゃくご)と呼ばれている.英語ではthree-letter acronymまたはthree-letter abbreviationと呼ばれているが,それらにもTLAという三文字頭字語がある(😄自己整合語).
  • 閉塞性肥大型心筋症の心室中隔心筋切除術を考案したのは米国の心臓外科医 Andrew Glenn Morrow (1922–1982) である.その後,彼自身も閉塞性肥大型心筋症を発症したが,心室中隔心筋切除術を拒否し60歳という若さで自宅で突然死した(J Am Coll Cardiol 2016;67:2900-3).
  • ヘモリンド舌下錠といういぼ痔用の市販薬小林製薬のHP)がある.(※消化器の外科部長と内科部長に確認したら,病院では痔核で急性期以外に内服薬を出したことはないと言われました...😐)
  • 大動脈弁狭窄と閉塞性肥大型心筋症を合併した症例では,TAVIによる大動脈弁狭窄の解除を先行させると流出路圧較差が激増して血行動態が破綻することがある.このような病態をsuicide LV(左室の自殺)と呼ぶ.(*左室流出路狭窄が明らかでない症例がAS解除後に致命的な圧較差を生じた場合 [TAVIやSAVRで術後合併症の一つ] も含むようです)
  • 心電図でP波が著増した状態(目安は>5 ㎜)をHimalayan P waves(ヒマラヤP波)と呼ぶ.(拘束性心筋症でP波が著増した症例:Turk Kardiyol Dern Ars 2025;53:217-8

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-17

🏆 論文

  • 当院の初期研修医の江上先生が循環器内科で経験した症例報告が出版🎉
  • 主訴は安静時の胸部違和感で身体所見や心電図(),胸部X線は正常
  • 心エコーも正常 ➜ 運動負荷Tl心筋シンチとホルター心電図を予約した
  • 検査当日,負荷前の問診で「数日前から強い息切れがある」ことが判明
  • 心電図()ではST-T変化はないが,負荷は中止して循環器外来を受診
  • 頚静脈所見に異常はなかったが左胸部で呼吸音と音声振盪の減弱を確認
  • 画像で左側気胸 ➜ 心電図を見直すと気胸部位の誘導でR波減高(矢印)
  • 左側にトロッカーを挿入して気胸は改善 ➜ 直後の心電図も改善(
  • 退院後に行った冠動脈CTは正常,ホルターで発作性心房細動が判明した

🙈 本論文の考察より
  • 気胸による心電図異常所見の発生率は,自然気胸を呈した57人の青年のうち21%で,心エコー検査で異常所見を示した患者は4%のみであった.
  • 気胸は電気軸の変化やST部分の変化,T波の異常,不整脈などの心電図変化を引き起こすが,これらの変化は気胸の重症度や部位によって異なる.
  • 自然気胸連続40人の心電図解析では,左気胸ではV2からV6誘導のQRS振幅が有意に減少し,右気胸ではV5およびV6誘導のQRS振幅が増大した.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-04-03

今週の一枚 🎯

数分間の意識消失を生じた超高齢者

😐 解説
  • 来院時の心電図は徐脈+心房細動+ST-T部分の変化
  • 意識清明で神経学的異常なく頭部CTも特記所見なし
  • 高Mg血症(16.3 mg/dl)が判明(基準値:1.8-2.4)
  • 他の電解質はPが軽度上昇(5.1 md/dl)以外は正常
  • 腎機能は軽度の低下(Cr 1.1 md/dl)で肝機能は正常
  • カルチコールの静脈内緩徐投与と緊急血液透析で対応
  • 最終的に高Mg血症+糞便イレウス+誤嚥性肺炎と診断
  • 意識障害の原因は過剰な緩下剤による高Mg血症の疑い

💁 高Mg血症と心電図
  • 軽度~中等度の高マグネシウム血症ではPR間隔やQT間隔の延長、QRS波の拡大
  • 高度では伝導障害から心停止(一部は顕著なST部分の上昇とT波の増加も観察)
  • その原因としてマグネシウムイオンによる Na+/K+-ATPase 活性の機能的阻害

💫 マグネシウムに関する過去の投稿 ➜ コチラ

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-03-25

論文🏆ウェレンス症候群の亜型

  • 当院循環器内科の張本先生が経験された症例が出版されました
  • 30分の胸痛発作の9時間後に来院されました(来院時は無症状)
  • 心電図で軽度のST上昇とT波終末部陰転化(下図矢頭、要比較)
  • 高感度トロポニンTは0.165ng/mLで心エコーで壁運動異常なし
  • 緊急カテーテル検査で右冠動脈中間部に高度狭窄を認めPCI施行
  • 術後経過は順調でクレアチンキナーゼ上昇はありませんでした


😀 追加コメント
  • 前下行枝の近位部の高度狭窄で、心電図記録時には症状がないにもかかわらず、ST上昇とT波終末部の陰転化を示すウェレンス症候群(Wellens' syndrome)という病態はよく知られています。緊急の対応(PCIなど)を必要とします。
  • 本例はウェレンス症候群の右冠動脈版(亜型)と考えられるのではないかと思われます。類似の報告がないため論文にしてみました。心電図の変化は軽微ですが、元来下壁梗塞の心電図変化は、前壁梗塞ほど派手ではありませんし...

🎉「論文」の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-01-30

今週の一枚 🎯

胸痛で来院した中年男性


(投稿者 川崎)

2025-01-08

MCG マルチファンクションカーディオグラム

  • MultiFunction CardioGram の略で多機能心電図心疾患解析システムのこと
  • 通常の12誘導心電図を4万人のマッチングして心臓の状態をAI解析する技術
  • 心電図を周波数帯に細分解し166の微細なポイントの分布の違いを比較評価
  • アメリカのFDA認可の診断技術であるが本邦では現時点で保険非適用である
  • 検査時間は約10分(ネットで速やかに判定)で健診やクリニックで一部活用


- 70%以上の冠動脈狭窄例でMCGとストレス心筋灌流の比較 -

👉 AI(人工知能)に関するの過去の投稿は コチラ(PC版なら右下欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2024-12-25

🏆 論文

  • 当院の初期研修医の積木先生が循環器内科で経験した症例がPubMedに収載🎉
  • 心室頻拍で搬入/回復後の心電図・心エコー図・心臓CTには異常なしと判断
  • VT起源(右室前壁周囲)に注目してCTを見直すと限局性の壁運動異常が判明
  • その後の精査(MRIやPET)で心臓限局性サルコイドーシスと診断されました

🙈 心エコー図
  • CTで限局性の右室自由壁の異常(上図2A)が判明してから心エコー図を再検すると,同部位に加えて左室心尖部にも異常があることが判明(上図2C)
  • 救急室で行うベッドサイドエコーは大変有用ですが,描出力という点に関しては生理検査室に設置されているハイエンド機に少し分があると思います.
  • 持続性VTからの回復直後は内因性カテコラミンが出ていると思われます.その時のエコーでは微妙な壁運動異常がマスクされてしまう可能性があります.
  • もちろんエコーは術者の技量に依存する検査です.VT症例を目の前にしたスタッフがテンバらずに内因性カテコラミンの放出を自制することも大切 😓

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-12-24

嚥下性失神 Swallow syncope

  • 慢性心不全で長年フォローしている患者さんが定期受診の時に,不意に「先日,失神したんですよ」と笑いながら言いました.その時の状況をお聞きすると食事中に一瞬生じたようです.循環器疾患は長年安定しています.
  • 窒息という感じではなかったのですが,高齢者で嚥下機能も心配です.そこで耳鼻咽喉科をコンサルトしたら,嚥下性失神(疑)と診断されました.少量ずつよく噛んで食べるなどの食事指導も行ってくれました 😊 感謝

🍚 嚥下性失神(Swallow syncope)
  • 嚥下という特定の動作で誘発される神経調節性失神のひとつ
  • 食道の拡張や収縮による食道壁の緊張が迷走神経反射を誘発
  • 機序は徐脈や心停止,血圧低下,両者の合併から失神に至る
  • 基礎疾患は食道疾患(痙攣やヘルニア,癌)や心筋梗塞など
  • 治療は食事指導(難治性ならペースメーカ植込み術を検討) 


嚥下性失神が生じたパーキンソン病の73歳女性
  • 頸部食道をバルーン拡張するとP波が消失し5.9 秒の静止と意識消失
  • 引き続いてバルーン拡張を解除するとP波が出現し洞調律へ復帰した

(投稿者 川崎)

2024-10-12

👴 歴史クイズ

CC BY 4.0



(投稿者 川崎)

2024-09-21

LVサミット LV summit

  • 左室最上部(left ventricular summit)で特発性心室不整脈の好発部位(下図の上)
  • 大心静脈遠位交通枝の枝で記録した心内局所電位が心室不整脈中の最早期興奮部位
  • 心電図は下方軸,非特異的脚ブロック,I誘導陰性,aVRよりaVLでQS大(下図の下)
  • 右室流出路や大動脈冠尖,左室流出路,大心静脈–前室間静脈内からアブレーション
  • ただしアブレーションの成功率は必ずしも高くない(例:14症例中10症例 [71%])


- LVサミットの場所と実際の12誘導心電図 -

(投稿者 川崎)

2024-09-05

今週の一枚 🎯 偶然の美

術前のスクリーニング心電図がちょっと面白い?



(投稿者 川崎)

2024-06-28

サンプル心音

💓 つぶやき
  • 先日,TV業界の方から心音のデータ提供の依頼がありました(TBSの健康カプセル!ゲンキの時間 😄).
  • サンプルとして,正常・期外収縮・心房細動の3パターンの心音(心電図と心音図付き)を用意しました.
  • 何か役に立つかもしれないのでネットに置いておきます.ご自由にお使いください(商業目的を除き版権放棄)

正常(Normal)

期外収縮(PVC)

心房細動(AF)

👻 心音の高みを目指す方へ
  • 正常サンプル ➜ Ⅰ音よりⅡ音の方が大きいので心基部での記録
  • 期外収縮サンプル ➜ Ⅰ音がⅡ音より大きく心尖部での記録.期外収縮および代償性休止期後のⅠ音の音量変化に注目
  • 心房細動例 ➜ 先行するRR間隔によってⅠ音の変化に注目(心音図).ただしこの程度のRR間隔の揺らぎでは音の変化として認識することは困難

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-06-20

今週の一枚 🎯 漏斗胸:V1 ≒ aVR

検診で心電図異常を指摘された男性(無症状)

👶 解説
  • 前胸部に陥凹があり漏斗胸と判断
  • 心窩部に周期的陥凹もあり(矢印)
  • 橈骨動脈の拍動と一致し右室拍動
  • 本例は無症状で心エコー図も正常

😃 追加コメント
  • 漏斗胸では胸郭の前後径が小さくなり,右心系の異常がなくても明瞭な右室拍動をしばしば経験します(他の自験例:コチラ).三尖弁や僧帽弁の逆流を伴うこともありますが,本例くらいの漏斗胸で問題になることは少ないと思います.
  • 本例の受診契機は心電図異常でした.漏斗胸26例の手術前後での心電図検討:術後にII誘導のP振幅とV1のP陰性振幅が減少,平均QRS幅の減少,Sokolow-Lyon指数の減少,V4-V6のJ波が増加(J Electrocardiol 2016;49:174-81)   
  • 漏斗胸の心電図にはもっとピンポイント判定法があるようです.それはV1の陰性P+Qrパターン+陰性T波です(北海道医報 第1249号).V1電極がaVRと同じ角度になるからだそうです(なるほど&何事もその道の匠はすごい😳)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-02-08

今週の一枚 🎯

肢誘導のノイズの原因は?

⛯ 交流ハム(AC hum)
  • 下記の拡大図で400 msの間に24回の波を観察可能
  • これは60 Hzで交流の周波数に合致(当院は大阪)
  • フィルタでハムが設定されていないことにも注目
  • (参考:フィルタはハム・筋電・ドリフトの3種)
  • 検者がハムフィルターを入れなかった理由は不明

⛯ アーチファクト(人工雑音)
  • 被験者自体の生体電気活動として心電や脈波,筋電,眼球運動,発汗などがあります(例えば脳波記録時の心臓電気活動はアーチファクトになり得えます)
  • 交流障害(ハム)の主な原因は,電磁誘導や静電誘導,漏れ電流です.その混入経路には他の電気機器の併用やベットの不十分はアースなどが考えられます
  • 日本では静岡県の富士川の東は50Hz,西は60Hzだけど,こんな国は世界では稀だそうです(理由:明治時代の発電機の導入が東京は独製,大阪は米国製)
👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-12-28

今週の一枚 🎯

早朝に一般病棟にいるとモニターがアラーム音を発した



(投稿者 川崎)