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2025-07-18

日本内科学会 第248回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題64 Gitelman症候群と診断した反復性低K血症と低Mg血症の1例
  • 本症はNa-Cl共輸送体(SLC12A3遺伝子)の変異に起因し、遠位尿細管でのNaおよびCl再吸収障害をきたす疾患である。類似疾患のBartter症候群との鑑別が必要であるが、本症は低Mg血症や低Ca尿症を伴うことが特徴である。軽度の脱水や胃腸症状を契機に重篤な電解質異常を反復するため、KおよびMg補充に加え、適切な水分電解質摂取を含む生活指導が重要である。

演題69 Pantoeaによるカテーテル関連血流感染の1例
  • カテ先培養と血液培養の結果でPantoea sp.が検出された。薬剤感受性結果から抗生剤をCTRXに変更し、その後症状の再燃なく、抗生剤を2週間投与したため退院となった。グラム陰性桿菌であるパンテアはカテーテル関連血流感染の原因菌として非常に珍しい。

演題102 ピサ症候群を呈した抗凝固療法中尾状核出血の1例
  • 右へ傾くピサ症候と左への体幹のねじれを呈し、右上肢固縮と姿勢時振戦、軽度の右下肢単麻痺も認めた。ピサ症候は立位や座位時に増強、仰向けになると正中に戻り、腰曲がりはなかった。頭部CTで左尾状核に直径1.5cmの血腫、左側脳室へ穿破を認め責任病巣と判断した。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-09-24

竹筎温胆湯

去痰・解鬱・抗炎症・健脾(胃腸機能を高める)の作用があり、臨床では、感冒・インフルエンザ・気管支炎・肺炎などで、咳・黄痰が残っている場合に用いられる。また、COPD・肺気腫・気管支拡張症など呼吸器に慢性炎症をもっている人が風邪を引いたときにもよいとされる。

効能又は効果
インフルエンザ、風邪、肺炎などの回復期に熱が長びいたり、また平熱になっても、気分がさっぱりせず、せきや痰が多くて安眠が出来ないもの

使用目標=証
比較的体力の低下した人で、感冒などで発熱が長びき、あるいは解熱後、咳が出て痰が多く、不眠を訴える場合に用いる。
1)精神不安、心悸亢進などを伴う場合。
2)季肋下部に軽度の抵抗・圧痛を認める場合(胸脇苦満)。

構成生薬と薬能
チクジョ:熱を冷ます(清熱)
バクモンドウ:肺を潤す(滋陰)
キキョウ、ハンゲ、チンピ:止咳・去痰
オウレン:熱を冷ます(清熱・鎮静
ブクリョウ:気を補う(安神・補気)
ニンジン、カンゾウ、ショウキョウ:気を補い、胃腸機能を高める(補気)
サイコ、キジツ、コウブシ:肝の失調を整える(疏肝・清熱)

(投稿者 小森)

2019-10-24

忘備録:循環器疾患の漢方

状態漢方薬
器質的心疾患のない胸痛(心臓神経症)桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
または
半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
冠攣縮性狭心症の補助療法木防已湯(モクボウイトウ)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
心不全や浮腫などの水滞状態五苓散(ゴレイサン)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
閉塞性動脈疾患(冷え性)の補助療法桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
3包(7.5g)毎食前(2週間)
※参考)北村 順先生.続・循環器医が知っておくべき漢方薬(文光堂)

🍶 おまけ
  • 悪酔い予防には黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)1-2包(2.5-5.0g)飲酒前屯用,二日酔いには五苓散(ゴレイサン)2-3包(5.0-7.5g)飲酒後屯用がいいようです.投稿者はまだ試していませんが・・・

👺 関連投稿

(投稿者 川崎)

2019-06-03

尿管結石の疼痛管理(特に水分)

Mindsガイドラインライブラリからの要約
  • 第1選択 ➜ NSAIDs(腎機能低下例では要注意,アスピリン喘息例では禁忌)
  • 第2選択の鎮痛薬 ➜ モルヒネ製剤,ペンタジンなど(臭化ブチルスコポラミンは補助的)
  • 芍薬甘草湯は即効性がありNSAIDsよりも鎮痛効果に優れるという報告あり(下図)
  • 排石促進薬(尿管拡張作用) ➜ カルシウム拮抗薬(ニカルジピン)やα1遮断薬
  • 薬剤抵抗性 ➜ 尿管ステント留置や腎瘻造設,ESWLやTULによる砕石治療

👻 補液や水分摂取について 
  • ガイドラインの記載 ➜ 「疼痛管理の一環として輸液を行う場合,強制大量輸液で鎮痛薬の使用量の減少や排石率が増すことはない」
  • 知人の泌尿器科専門医の意見 ➜ 「悪いことはない.むしろ感染のリスクを減らすと思う」
  • 西横浜国際病院 ➜ 「大きさが5mm以下の結石については、鎮痛剤で痛みをコントロールしながら水分摂取を積極的に行うことにより比較的速やかに自然排石が可能」

尿管結石疝痛発作25例  芍薬甘草湯(2包=5g) vs ロキソプロフェン(60mg)

💫 マラソン愛好家の先輩医師の意見
  • 「マラソン中に足がつったときにも芍薬甘草湯はすぐに効くよ!」

(投稿者 川崎)

2019-03-28

防風通聖散

防風通聖散は、体力の充実した卒中体質者の便秘や肥満症、動悸や肩こりなどの高血圧随伴症状に使用される。皮下脂肪だけでなく内臓脂肪を燃やし、生活習慣病の発病を防ぐとともに、基礎代謝量を上げる。

・肥満を伴う高血圧症患者の体重、BMIの低下が認められた。(多施設共同無作為群間比較試験)
Azushima K, et al. Atherosclerosis. 2015, 240, p.297

・耐糖能異常を有する肥満女性患者のウエスト周囲径、BMIを低下させ、腹部内臓脂肪を減少させた。
・HOMA-IRを改善し、インスリンAUC120を低下させた。
Yoshida T, et al. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2004, 31, p.614

・内臓脂肪型肥満の代謝異常マウスの体重、摂食量、拡張期血圧を低下させた。
Azushima K, et al. PLOS ONE. 2013, 8(10), p.1

・MSG肥満マウスの体重増加が抑制された。
Yoshida T, et al. Int J Obes. 1995, 19, p.717

(投稿者 小森)

2019-03-07

柴胡加竜骨牡蛎湯 サイコカリュウコツボレイトウ

【配合生薬】
  • 柴胡(サイコ),半夏(ハンゲ),桂皮(ケイヒ),茯苓(ブクリョウ),黄芩(オウゴン),大棗(タイソウ),人参(ニンジン),牡蛎(ボレイ),竜骨(リュウコツ),生姜(ショウキョウ)

【効能・効果】
  • 体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症
  • 高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘


(投稿者 川崎)

2018-12-27

腎仙散(ジンセンサン)

  • 抗菌生薬 ウワウルシ を配合した生薬で,利尿・鎮痛・抗菌・抗炎症の4作用を有する
  • 効能/効果は腎炎,ネフローゼ,腎盂炎,膀胱炎,ムクミ,尿利減少(文言そのまま)
  • 処方箋なく薬局で購入できます(アマゾンなら1週間分21包でおよそ1500円 ➜ コチラ


📢 漢方関連の投稿

(投稿者 川崎)

2018-09-24

陀羅尼助丸 だらにすけがん

  • 奈良吉野~大峰山系に伝わる1300年にも及ぶ歴史を有する日本の漢方(和漢)
  • 主原料はキハダ(ミカン科落葉性高木)の樹皮を乾燥した生薬(オウバク)など
  • 万能(?)の苦味健胃薬で効能は下痢,食欲不振,胃弱,食べ過ぎ,二日酔など

(株式会社藤井利三郎薬房 フジイ陀羅尼助丸

👴 由来は開祖である行者尊が陀羅尼経(だらにきょう)を唱えながらオウバクを煮詰めたため(諸説あり)

漢方に関連した過去の投稿

(投稿者 川崎)

2018-08-25

原因不明の腹痛には・・・

器質的障害を認めない下腹部愁訴(過敏性腸症候群IBSを含む)には大建中湯を考慮 👴

第90回日本消化器病学会総会ランチョンセミナー
  • 対象はIBS便秘型16症例(男性7例,平均44歳)
  • 方法は大建中湯15g/日を分3で4~8週間投与
  • 自覚症状の改善(腹痛81%,腹部膨満感69%)
  • 腹部単純X線写真の大腸ガス量が有意に減少
  • 大腸通過時間検査(TCTT)は有意に短縮(下図)

(投稿者 川崎)

2018-07-03

補中益気湯

【効能・効果】
消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:
夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症


  • 生命活動の根源的なエネルギーである「気」が不足した「気虚」に用いられる
  • 胃腸の消化・吸収機能を整えて「気」を生み出し、抵抗力を高める
  • 気力がわかない、だるくて疲れが取れないといった人から、胃腸虚弱、かぜ、寝汗など、また病後・産後で体力が落ちている時や夏バテによる食欲不振にも用いられる


こむら返りに対し5~15分後に効果を示す芍薬甘草湯や、感冒に対し1~2日後に効果を示す葛根湯などと比較すると、即効性に欠ける薬剤である。臨床試験においては、4週間以上の投与により有効性が認められている。


【参考】
補中益気湯インタビューフォーム

(投稿者 小森)

2018-01-05

麦門冬湯 ばくもんどうとう

(ツムラ漢方麦門冬湯エキス顆粒 添付文書より)

💊 処方箋なしの店頭購入やアマゾンなどのネット購入も可能です

(投稿者 川崎)

2017-02-06

抑肝散(よくかんさん)

漢方では「肝気」=「高ぶり」と考え,それを抑制する生薬である(肝疾患薬ではない)
神経症,不眠症,小児の夜泣きや癇癪など虚弱体質で神経が興奮する状態に有用
小児・成人いずれにも処方できるが,甘草を含むため偽アルドステロン症には要注意

認知症の周辺症状(behavioral and psychological symptoms of dementia, BPSDの改善にも有用
 ⇒ ランダム化比較試験で幻覚や不安,興奮などを有意に改善(J Clin Psychiatry 2010;66:248-252.)

(投稿者 川崎)

2016-10-17

麻黄湯(マオウトウ)

発汗作用があり,体の熱・腫れ・痛みを発散する.病気の初期で体力が十分ある場合に適する
(例:慢性疾患のない健常者で,カゼの初期段階かつ寒気や発熱,関節痛などがあるとき)

配合生薬:麻黄(マオウ),桂皮(ケイヒ),杏仁(キョウニン),甘草(カンゾウ)
 ⇒ 甘草を含むため大量服用で偽アルドステロン症や低カリウム血症によるミオパチーを生じることがある

 おまけ 
 麻黄湯はインフルエンザの治療にも有効であるという報告がある