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2025-09-14

把握対象疾患

👀 先日のカンファレンスで…
  • カルバペネム耐性緑膿菌(カルバペネマーゼ陰性)の届け出が議論されました.届け出を要する感染症(1類~5類)も更新されているため再度まとめておきます.
  • 届け出を要する耐性菌は下記の赤文字です.ちなみに薬剤耐性緑膿菌感染症は定点把握対象疾患ですが,当院は現在定点医療機関ではないため届け出は不要でした.


👺 全数把握対象疾患(全ての医療機関から報告される疾患)
一類感染症
エボラ出血熱,クリミア・コンゴ出血熱,痘そう(天然痘),南米出血熱,マールブルグ病,ラッサ熱,ペスト

二類感染症
急性灰白髄炎(ポリオ),結核,ジフテリア,重症急性呼吸器症候群(SARS),中東呼吸器症候群(MERS),鳥インフルエンザ(H5N1),鳥インフルエンザ(H7N9)

三類感染症
コレラ,腸管出血性大腸菌感染症,細菌性赤痢,腸チフス・パラチフス

四類感染症
E型肝炎,A型肝炎,エキノコックス症,エムポックス(サル痘),黄熱,オウム病,回帰熱,Q熱,コクシジオイデス症,ジカウイルス感染症,ダニ媒介脳炎,炭疽,つつが虫病,鳥インフルエンザ,ボツリヌス症,マラリア,野兎症,ライム病,リフトバレー熱,類鼻疽,レジオネラ症,ウエストナイル熱,狂犬病,重症熱性血小板減少症候群(SFTS),チクングニア熱,デング熱,日本紅斑熱,日本脳炎,ハンタウイルス肺症候群,ブルセラ症,レプトスピラ症,ロッキー山紅斑熱

五類感染症
アメーバ赤痢,ウイルス性肝炎(A型・E型を除く),カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症,急性脳炎クリプトスポリジウム症,クロイツフェルト・ヤコブ病,劇症型溶血性レンサ球菌感染症,後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS),ジアルジア症,侵襲性インフルエンザ菌感染症,侵襲性髄膜炎菌感染症,侵襲性肺炎球菌感染症,先天性風しん症候群(CRS),梅毒,播種性クリプトコックス症,破傷風,バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症バンコマイシン耐性腸球菌感染症,百日咳,風しん,麻しん,薬剤耐性アシネトバクター感染症

👹 定点把握対象疾患(定点医療機関<指定医療機関>より報告される疾患)
RSウイルス感染症,咽頭結膜熱(プール熱),A群溶血性レンサ球菌咽頭炎,感染性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルス等),水痘,手足口病,伝染性紅斑,突発性発しん,ヘルパンギーナ,流行性耳下腺炎,インフルエンザ,新型コロナウイルス感染症,急性呼吸器感染症,急性出血性結膜炎,流行性角結膜炎,クラミジア肺炎(オウム病を除く),細菌性髄膜炎(髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌を原因として同定された場合を除く),マイコプラズマ肺炎,無菌性髄膜炎,性器クラミジア感染症,性器ヘルペスウイルス感染症,尖圭コンジローマ,淋菌感染症,ペニシリン耐性肺炎球菌感染症メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症薬剤耐性緑膿菌感染症

(投稿者 川崎)

2025-09-13

CTの3段階読影

🚑 救急CTで見逃しを防ぐためにDIRECT研究会などが推奨する読影法
  1. 臨床推論に基づく疾患の検索・否定
  2. チェックリストを利用した重要病態の有無の確認
  3. 「画像推論」に基づく,想定外病態の拾い上げ


 💫 追記
  • 先日のモーニングカンファレンスで当院の(若いがとても優秀な)放射線科の先生は「①疑い,②見落とし,③臓器毎」と説明していました.また「個人的には②から始めている」とも言っておられました.  

(投稿者 川﨑)

2025-09-12

頚静脈波形

  • 頚静脈拍動と中心静脈圧、ドプラ波形の関連を概説する論文(Ther Adv Pulm Crit Care Med 2025 Jul 16;20:29768675251359700)を眼にしました。
  • 頚静脈の波形の分かりやすいイラストがあったのでアップしておきます。なお図の説明文はAIによる自動翻訳を活用(説明文中の引用論文は割愛)

頸静脈拍動(JVP)および頸静脈血流速度(JVFV)の生理学
(A) 心電図(ECG)、心音図(PCG)、および右心房圧(PRA)の時間的関係を示す。PCG の SX は心音を表す。PRA または JVP の上昇波は本文で説明される a波、c波、v波 である。下降波は x下降、x′下降、y下降 と呼ばれる。IC は等容収縮ノッチを示す。灰色で塗られた領域は JVFV を表し、s波(収縮期) および d波(拡張期) を含む。図解は心周期における右心の変化を示し、RA は右心房、RV は右心室を意味する。 (B) JVP の波形記録は19世紀半ばに初めて発表され、12 世紀末から20世紀初頭にかけて Mackenzie によりさらに詳細に発展した。JVP の陽性波は、その解剖学的・生理学的な起源に基づいて命名され、a波は右心房、c波は総頸動脈、v波は右心室 を反映するとされた。Mackenzie はまた、三尖弁逆流症における JVP の病的変化を記載しており、初期には a(心房型) から v(心室型) へと移行することを示した。疾患の初期段階では、顕著な v波 は心房細動(すなわち「心房性」)により生じる。心房収縮が失われることで右心房がうっ血し、右心房圧(PRA)が収縮後期に上昇するため、機能している三尖弁(TV)が心基部方向へ戻る際に高い v波が発生するためである。しかし疾患が進行すると、v波はさらに顕著になり、収縮期の早期に出現するようになる。これは逆流性の血液量が機能不全の三尖弁から逆流するためであり、いわゆる「心室型 v波優位」と呼ばれる。 同様の進行は、肺高血圧患者において Ranganathan と Sivaciyan によって内頸静脈(IJV)ドプラ超音波で記録された JVFV でも報告されており、以下で述べる。(C) JVFV は 装着型ドプラ超音波 によって測定され、これについても以下で記載する。

Sivaciyan と Ranganathan が提唱した頸静脈血流速度(JVFV)の分類システムの模式図
詳細は本文を参照のこと。ここおよび図1において、右心房方向への JVFV は y軸の下向きに、頭部方向への血流速度は y軸の上向きに示されている。 仰臥位では、最上段のパターン(s > d)が正常であり、持続的な逆行性 a波は認められない。大きな逆行性 a波および v波は、単相性拡張期パターン(ここでは表示されていない)で観察されることがある。 逆行性収縮期速度(最下段のパターン)は、臨床的に重要な**三尖弁逆流(TR)**を示す典型的な所見であるが、房室解離において心房収縮が閉じた三尖弁に対して生じる場合にもみられる。この場合、逆行性収縮期速度は不規則である。 略語: RA = 右心房 RV = 右心室 TAPSE = 三尖弁輪収縮期移動量(tricuspid annular plane systolic excursion)

😇 おまけ

上記論文では当院で行った頚静脈の臨床研究を4編も引用してもらいました 😊 謝謝
  1. Kasai K, Kawasaki T, Hashimoto S, Inami S, Shindo A, Shiraishi H, Matoba S. Response of Jugular Venous Pressure to Exercise in Patients With Heart Failure and Its Prognostic Usefulness. Am J Cardiol 2020;125:1524-1528 ➜ 日本語の解説
  2. Shako D, Kawasaki T, Kasai K, Sato Y, Honda S, Sakai C, Harimoto K, Shiraishi H, Matoba S. Jugular Venous Pressure Response to Inspiration for Risk Assessment of Heart Failure. Am J Cardiol 2022;170:71-75 ➜ 日本語の解説
  3. Kasai K, Kawasaki T, Hashimoto S, Kanehiro C, Yabu S, Shindo A, Matoba S. Jugular Venous Pressure and Kussmaul's Sign as Predictors of Outcome in Heart Failure. Int Heart J 2023;64:1088-1094 ➜ 日本語の解説
  4. Noguchi M, Kasai K, Honda S, Sakai C, Harimoto K, Kawasaki T. Jugular Venous Response for Risk Stratification in Heart Failure. Cureus 2024;16:e58423 日本語の解説

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(投稿者 川崎)

2025-09-11

今週の一枚 🎯

重症感染症でICUに入院した超高齢者

💙 解説
  • QRS波の後にP波が観察される(V1誘導に注目)
  • よく見るとPがQRS波に少しずつ追いついている
  • 房室解離であるが等頻度房室解離と考えられた
  • 最終的にPがQRSを追い越し通常の伝導が回復

💣 等頻度房室解離(isorhythmic atrioventricular dissociation)
  • P波とQRSにはつながりが無く心室は房室接合部からの刺激で収縮する房室解離のうち,洞結節の興奮発生頻度と房室接合部の興奮発生頻度がほぼ等しい状態
  • 房室解離が出現する原因として,①洞調律が遅くなった状態,②下位中枢の興奮発生機能が亢進した状態,③両方が組み合わされた状態が考えられます(引用
  • 房室解離は可逆性ですが,心房収縮が無効になり血行動態が悪化することがあります.本例でも感染性ショックが遷延 → 炎症の鎮静化に伴い房室解離も消失

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-09-10

FNH:Focal Nodular Hyperplasia 限局性結節性過形成

  • 特徴 組織学的に正常もしくはほぼ正常に見える肝細胞より構成される結節
  • 病理 中心性瘢痕と放射状に広がる線維性結合織(内部は動脈と胆管の増生)
  • 画像 ドプラで中心→辺縁の車軸状動脈性血管構築(spoke wheel pattern)
  • 疫学 良性肝腫瘍性病変では肝血管腫の次に高頻度で比較的若い女性に多い
  • 原因 局所的な動脈血流の異常に伴う過形成性変化が成因と考えられている
  • 鑑別 肝細胞癌(fibrolamellar含),肝腺腫,血管筋脂肪腫,肝血管腫など


- 健診で発見された肝限局性結節性過形成(FNH)の1例 -



(投稿者 川崎)

2025-09-09

化膿性脊椎炎の起炎菌

台湾の三次医療機関での12年間の検討(計414例)

本邦の二次医療機関での11年の検討(計48例)

⚡ 化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis)の復習
  • 発症は10万人に対し年2~6人(米国)
  • 平均67.8歳で基礎疾患合併59%(本邦)
  • CTガイド下生検およびMRI推奨(米国)
  • 抗菌薬の投与期間は長い(6週間~)
  • 神経的異常所見や脊椎不安定なら手術
  • 最終的に手術に至るのは全体の10~20%
  • ≒Vertebral osteomyelitis(椎体骨髄炎)

参考)J Spine Res 2021;12:4-9,他

🚑 椎体に関する過去の報告 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-09-08

Gerhardt sign ゲルハルト徴候

  • 大動脈弁逆流で出現する左上腹部の拍動(脾臓の収縮期拍動)
  • 命名はドイツの医師 Carl JAC Gerhardt(1833-1902)に由来
  • ただし脾臓の動脈性拍動の初報は Nicolaes Tulp (1594–1674)
  • ザイラー徴候とも呼ばれている(Am Heart J 1928;3:447-53

 

😐 コメント
  • 上記の動画はローゼンバッハ徴候(大動脈弁逆流による肝拍動)でリンクした動画と同じものです.脈圧の開大(大脈)に伴う肝拍動と脾臓拍動は基本的に同じ現象ですが,ネット上に動画としてはほとんど検索しません.綺麗な動画が記録できたらぜひアップをお願いします(投稿者も努力します) 

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(投稿者 川崎)

2025-09-07

Wickham's Striae ウィッカム線条

  • 扁平苔癬の病変の表面に認める白い線条あるいはドット
  • 典型的には口腔粘膜に出現し,顕微鏡的では過顆粒症
  • 仏の医師 Louis Frédéric Wickham (1861–1913) が初報(

- Wickham線条を伴う口唇炎 -
(a)網状線条,(b)放射状線条,(c)年輪状線条,(d)複数の青灰色の点(矢印)
(投稿者 川崎)

2025-09-06

頸静脈孔 Jugular foramen

  • 頚静脈所見は心不全診療の肝です(関連投稿).よってjugularというキーワードを登録し,関連論文が出版されたらすべてお知らせが入るようPubMedに登録しています.先日,jugular foramenという用語に眼が留まりました.何のことかすぐにイメージできなかったので調べてみました.

💀 頸静脈孔(Jugular foramen)
  • 頸静脈孔は,側頭骨と後頭骨で囲まれてできた孔 (foramen)で,頭蓋内から見るとダンベル型を呈する (図1A).
  • 前方部は神経部 (pars nervosa)と呼ばれ下位脳神経が走り,後方部は静脈部(pars venosa)と呼ばれ頸静脈球が存在
  • 頭蓋外から見ると,外側部は乳様突起,後方部は頸静脈突起 (jugular process),内側部は後頭顆(occipital condyle) で囲まれている(図1B).
🚑 頚静脈 vs 頸静脈コチラ

(投稿者 川崎)

2025-09-05

WAVE 経尿道的水蒸気治療

  • Water Vapor Energyの略で,前立腺肥大に対する低侵襲外科的治療(2022年9月に本邦保険収載).Rezum™システム(ボストン・サイエンティフィック)を用い経尿道的に前立腺の中心領域に専用針で103℃の水蒸気を噴霧し組織を壊死
  • 従来の手術が適切でない症例に対してのみ保険適用:①全身状態不良のため合併症リスクが高い,②抗血小板薬・抗凝固薬内服により術中出血リスクが高い,③高齢もしくは認知機能障害のため術後せん妄,身体機能低下リスクが高い,など
  •  

- Rezum™システム -

🚑 前立腺に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-09-04

今週の一枚 🎯

上腹部痛と動悸を訴えるショックバイタルの超高齢者(認知症あり)


👺 偽性 Smaller SMV sign
  • 通常では上腸間膜静脈(SMV)が上腸間膜動脈(SMA)よりも大きい
  • 本例ではSMVの方が小さい(Smaller SMV sign/スモーラーSMV徴候)
  • 同サインを認めればSMAの閉塞(血栓症や塞栓症,解離など)を疑う
  • しかし本例ではSMA周囲の脂肪織濃度の上昇はなくDダイマーも陰性
  • 最終診断は発作性の頻脈性心房細動(+脱水など)による循環虚脱

👹 独り言
  • グーグルおよびGoogleScholarの検索では"pseudo smaller SMV sign"や"pseudo smaller superior mesenteric vein sign"は何もヒットしませんでした.
  • しかし本例の様に循環虚脱を生じている症例ではsmaller SMV signが偽陽性になることは容易に想像できると思われますのでここにアップしておきます.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-09-03

トリプタン感覚

  • トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)に出現する特有の副作用で、頚部や胸部,咽頭,肩の絞扼感~圧迫感,痛み,息苦しさなどがある。通常は服用後20~30分で出現し、10分から数時間で自然に消失することが多い。 食道平滑筋の運動亢進や肺動脈に対する影響、骨格筋のエ ネルギー代謝の異常、痛感受性の増加などが原因と考えられている。


👺 トリプタンの問題点
  1. ノンレスポンダー ➜ 頻度は約10–30%でブランド変更やNSAIDsを併用
  2. トリプタン感覚 ➜  心電図変化なく心臓や脳の有害事象にも関連せず
  3. 血管収縮作用 ➜ 心疾患や脳血管障害、未コントロール高血圧で禁忌


🚑 片頭痛 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

 
(投稿者 川崎)

2025-09-02

Burch-Wartofsky ポイントスケール(BWPS)

  • 甲状腺クリーゼの可能性および重症度を評価するための簡便な臨床の診断ツール
  • 米医師BurchとWartofskyが提唱(Endocrinol Metab Clin North Am 1993;22:263-77
  • 項目:体温調節障害,心血管系,消化器系,中枢神経系,増悪因子(計算ページ
  • 判定:45点以上=確定,25~44点=切迫甲状腺クリーゼ,25点未満=可能性は低い

 本甲状腺学会の甲状腺クリーゼ診断基準(第2版)-

🚑 クリーゼに関する過去の投稿 ➜ コチラ

 
(投稿者 川崎)

2025-09-01

フィジカルクイズ(No. 19 & 20)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-08-31

Martorell's ulcer マルトレル潰瘍

  • 概要 高血圧(拡張期?)に関連した下肢の痛みを伴う難治性潰瘍
  • 原因 高血圧性下肢潰瘍、高血圧性潰瘍、壊死性血管性皮膚炎など
  • 由来 スペインの血管外科医 Martorell(Angiology 1950;1:133-140
  • 症状 疼痛の強い単一または複数の病変(主に下腿前外側部に出現)
  • 疫学 高血圧のコントロール不良な中年(50~70歳)の女性に多い
  • 原因 内側動脈の小細動脈の閉塞により引き起こされる虚血性病変
  • 鑑別 カルシフィラキシス壊疽性膿皮症塞栓症、末梢動脈疾患
  • 治療 Ca遮断薬やACE阻害剤、プロスタグランジンE(PGE1)など
  • 予後 他の病因による潰瘍より強い痛みを伴い治療への反応は不良


- マルトレル潰瘍の1例 -

(投稿者 川崎)

2025-08-30

論文 🏆

  • 近隣クリニックから当院へ紹介例が論文になりました
  • 労作時の動悸がありマスター負荷で2:1伝導ブロック
  • 心エコー図や運動負荷タリウム、ホルターに問題なし
  • その後に目薬(β遮断薬含む)の使用(片眼)が判明
  • 目薬の中止後は安定するも1年後に完全房室ブロック
  • なんと今度は両眼に点眼 → 中止後にブロックは消失
  • その後に眼科で閉塞 隅角ぐうかく緑内障に対して手術を実施

- 3度房室ブロックが出現時の心電図 -

😀 知識の整理
  • ベータ遮断薬を含む点眼薬の全身的な影響は,正常な心血管機能を有する個人では極めて軽微で無視できる.
  • しかし房室ブロックを呈した243症例の検討では,その内12症例でβ遮断薬を含む点眼薬を処方されていた.
  • 点眼薬の中止後この12例中7例では洞調律が回復したが,5例では最終的にペースメーカ植込み術を要した.
💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-08-29

🏆 論文

  • 当院循環器内科の症例報告が出版されました🎉
  • 動悸で来院されて最終的に肥大型心筋症と診断
  • 通常の心エコー図で心尖のポーチは検出されず
  • ハンドグリップ負荷も特に異常所見は出現せず
  • ただし運動負荷後では奇異性ジェットフロー
  • 心臓MRで明らかな心尖部ポーチは描出できず

🙈 本例の抄録です
  • An early diastolic flow from the apex toward the base of the left ventricle-known as diastolic paradoxical jet flow-is associated with adverse cardiovascular events in patients with hypertrophic cardiomyopathy. This subtle flow, indicative of a concealed apical pouch, can be unmasked by exercise stress echocardiography even when no pouch is visualized on cardiac magnetic resonance imaging.
  • 左室心尖部から心室基部に向かう拡張期早期血流(拡張期奇異性ジェットフロー)は、肥大型心筋症患者における心血管イベントの有害事象と関連している。この微細な血流は、心尖部ポーチの存在を示唆しており、心臓磁気共鳴画像検査でポーチが描出されない場合でも、運動負荷心エコー検査で検出できる可能性がある。(AIの自動翻訳)

💫「Paradoxic Jet Flow: PJF(奇異性血流)」の過去の投稿は コチラ

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-08-28

今週の一枚 🎯 教育ビデオ

僧帽弁逆流症(Mitral regurgitation: MR)の一例

🎶 解説
  • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
  • 雑音の音量は漸増や漸減に欠く箱型(長方形)
  • Ⅰ音とⅡ音は心雑音に埋没するため認識が困難
  • 僧帽弁逆流,三尖弁逆流,心室中隔欠損の3疾患

🎵 コメント
  • フィジカルの巨匠からのアドバイス(過去の投稿)を元に作成した,心音図をなぞりながら音を聴く教育ビデオです(版権放棄かつ利用時の引用記載も不要)
  • 最初は「実際の心音と心音図上の線の動きをあわせるのが大変だな~」と思いましたが,パワーポイントを用いてやってみると意外に簡単に作成できました.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-08-27

ツッカーカンドル器官 Organ of Zuckerkandl

👽 Zuckerkandl器官
  • ヒトの胎児や新生児で認めるクロム親和細胞の集団
  • 大動脈の分岐部または下腸間膜動脈の起始部に存在
  • 由来はハンガリーの病理医 Zuckerkandl E (1849–1910)
  • 胎児循環系にカテコールアミンを分泌(血圧の調節)
  • 副腎髄質の発達に伴い1歳半~退化(春期以後なし)
  • パラガングリオーマまたは褐色細胞腫の発生源となる

参考)内科 2015;116:500,他

- パラガングリオーマ(傍神経節腫/髄外褐色細胞腫)を発症した39歳男性 -

(投稿者 川崎)

2025-08-26

脳疾患 vs ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体薬

  • 先日のカンファでアテローム性脳梗塞の再発かつスタチン不耐の症例を議論しました.LDL-C管理にはPCSK9阻害薬が考えられますが,適応に関する知識に曖昧な部分があったのでまとめました. 
  •  本邦ではレパーサ®(一般名:エボロクマブ)と レクビオ®(一般名:インクリシラン)が使用可能です.各々の「効能又は効果」および「それに関する注意点」は以下のように共通していました.

📍 効能又は効果
  • 家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症
  • ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。
    • 心血管イベントの発現リスクが高い
    • HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又は HMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない
📌 効能又は効果に関連する注意
  • 〈HMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない場合〉本剤は以下に示す患者に使用すること
    • 副作用の既往等によりHMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が 困難な患者
    • HMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が禁忌とされる患者

😑 独り言
  • 効能又は効果の「以下のいずれも満たす場合に限る」という点からは,今回の症例にはPCSK9阻害薬の保険適応はなさそうです.ただしシステマティック・レビュー(Cochrane Database Syst Rev 2020;10:CD011748)ではPCSK9阻害薬の有意な脳卒中予防効果が示され,脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕でもその使用は(ある程度)推奨されているようです(8ページ参照:推奨度A~B,エビデンスレベル高~中).

💉 PCSK9阻害薬に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-25

Rosenbach sign ローゼンバッハ徴候

  • 大動脈弁逆流症で出現する右上腹部の拍動(肝臓の収縮期拍動)
  • 由来はドイツの医師Ottomar Ernst Felix Rosenbach(1851–1907)
  • 報告はÜber arterielle Leberpulsation. 1878:4:498-500(コレ?
  • 甲状腺機能亢進で出現する閉眼時の眼瞼の微細な震えも同名徴候

 

😁 おまけ
  • 個人的には甲状腺クリーゼの若者で肝拍動を視診できたことがあります.もちろんこれもローゼンバッハ徴候(Rosenbach sign)と呼んでいい? 

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(投稿者 川崎)

2025-08-24

エルドハイム・チェスター病 Erdheim-Chester disease:ECD

  • 概要 異常に増殖した組織球系細胞が多臓器(特に骨)に浸潤する稀な疾患
  • 名称 米国の病理学者Chester Wとオーストリアの病理学者Erdheim J(
  • 症状 骨病変をほぼ必発し尿崩症や眼球突出,黄色板腫,中枢神経症状など
  • 疫学 世界で650〜1,000例程度の報告/40〜80代に多く男女比は3:1程度
  • 原因 未だに解明されていない(癌遺伝子のBRAFやNRASの変異と関連?)
  • 診断 組織(CD68陽性&CD1a陰性が必須)+CT,MRI,PETで臓器浸潤?
  • 治療 未確立(IFNが第1選択?ステロイドや分子標的薬BRAF酵素阻害剤?)
  • 予後 32ヵ月内に60%死亡~5年生存率は約68%(中枢神経系浸潤は不良)


エルドハイム・チェスター病の主な特徴
 
(投稿者 川崎)

2025-08-23

  RMPアール・エム・ピー

  • Risk Management Planの略で,邦名では医薬品リスク管理計画と呼ばれている
  • 3つの要素で構成:安全性検討事項、医薬品安全性監視計画、リスク最小化計画
  • 開発~承認審査~製造販売後の全てでベネフィットとリスクを評価(厚生労働省)
  • 2013年4月以降に申請される全ての新医薬品とバイオ後続品にRMPの策定が必要


 
(投稿者 川崎)

2025-08-22

口腔扁平苔癬 OLP:Oral Lichen Planus

  • 概略 口腔粘膜に網状や斑状の白色病変と軽度角化異常を伴う慢性炎症性病変
  • 症状 びらんや潰瘍を伴う紅斑性病変を生じると不快症状や接触痛などが起こる
  • 鑑別 口腔粘膜の病変(特に白板症や初期口腔癌、他のびらん性疾患は必須)
  • 疫学 一般人口の 1.27%(男0.96%、女1.57%) で人種差や地域差はない
  • 治療 通常は難治性で長期間を要する(ステロイド剤の局所療法など:下図)
  • 病因 不明:発症誘因や増悪因子が想定できる症例では取り除くと改善あり


- 口腔扁平苔癬(OLP)の臨床像 -

(投稿者 川崎)

2025-08-21

今週の一枚 🎯 教育ビデオ

大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis: AS)の一例

🎶 解説
  • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
  • 雑音は漸増・漸減型(ダイアモンド型 or 菱形)
  • よってⅠ音とⅡ音を聴取できる(特にⅡ音!)
  • 例えば大動脈弁狭窄症やHCMの左室流出路狭窄

🎵 コメント
  • フィジカルの巨匠から以下のような内容のメールをいただきました.「講習会では心音図が心音と一緒に動画として提示される.でも聴衆はとてもそれを目で追えない.心音図をなぞりながら音を聴かせるという風にすればとても理解しやすい.」
  • 「心音図は必ずしも実物でなくて絵でもいいですよ」とも言われましたが,せっかくなので実物を使用してみました.本動画は教育用として作成したので,商業目的を除いてご自由にご活用ください(版権放棄かつ利用時の謝辞記載も不要です)

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(投稿者 川崎)

2025-08-20

情報ごみの処理

  • 病院ではペーパレス化が進んでいますが,どうしても個人情報を含む紙が残ります.そんな時は裁断しますが,ホチキスなどを事前に外す必要があります.大学の医局名簿などは書籍の形態をとっているため業務用シュレッダーでも対応が困難です.先日,秘書さんに相談すると溶解処理するといって回収してくれました.なお焼却処分も可能ですが環境的に対する悪影響の懸念があります.

㊙ 機密文書の溶解処理
  • 化学的な溶解によって機密文書を完全に廃棄する方法
  • 情報ごみを箱に入れるだけ(ダンボール1箱~2,000円)
  • クリップ取外し不要,情報漏洩リスク低,環境に優しい
  • ただ業者に一任するため信頼できる業者を選ぶ必要あり

溶解処理の一例日本郵便

🚑 ゴミに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-19

待機的虫垂切除術 Interval appendectomy

  • 急性虫垂炎の治療法のひとつで,抗菌薬による炎症の鎮静化後に待機的に実施される虫垂切除術
  • 利点は手術法選択,癌スクリーニング,合併症低下に加え日程調整,医療費削減,早期社会復帰
  • 炎症が比較的軽度で、穿孔や膿瘍などの合併症を伴わない単純性虫垂炎に実施されることが多い
  • しかし近年では複雑性虫垂炎に対してもInterval appendectomy戦略が有効の報告あり(下図表)


🚑 虫垂炎に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-18

フィジカルクイズ(No. 17 & 18)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



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(投稿者 川崎)

2025-08-17

デコイ細胞 Decoy cell

  • decoy(猟に使う)おとり,(人を罠に掛けるための)サクラ,(軍事用の)放出おとり/発音《動》dikɔ́i 《名》díːkɔi
  • 大きく均一な好塩基性の封入体の核を持つ尿中脱落細胞で, 悪性細胞と紛らわしい良性細胞という意味でおとり細胞と命名
  • 1970年代にポリオーマウイルスとの関連が明らかになり,特にBKウイルスの再活性化の鋭敏な指標として利用されている 
  • ただしdecoy cellはアデノウイルスやCMVなど他のウイルス感染によっても,尿中(尿沈渣中)に出現する可能性がある


 
(投稿者 川崎)

2025-08-16

医療機関別MDC分析

  • DPC(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類包括評価)データのMDC(Major Diagnostic Category:主要診断群)コードを用いた分析
  • MDCは下記の18分野に分類され(その下には傷病名506種類,診断群分類3248分類がある),医療資源の適正配分の計画策定に向けた分析を可能にする

  1. 神経系疾患
  2. 眼科系疾患
  3. 耳鼻咽喉科系疾患
  4. 呼吸器系疾患
  5. 循環器系疾患
  6. 消化器系疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患
  7. 筋骨格系疾患
  8. 皮膚・皮下組織の疾患
  9. 乳房の疾患
  10. 内分泌・栄養・代謝に関する疾患
  11. 腎・尿路系疾患及び男性生殖器系疾患
  12. 女性生殖器系疾患及び産褥期疾患・異常妊娠分娩
  13. 血液・造血器・免疫臓器の疾患
  14. 新生児疾患、先天性奇形
  15. 小児疾患
  16. 外傷・熱傷・中毒
  17. 精神疾患
  18. その他

- 釧路医療圏医療機関のMDC分析 -
 
(投稿者 川崎)

2025-08-15

Ⅳ音の深堀

心電図異常を指摘された無症候例

😎 解説
  • 漸増・漸減する収縮期の駆出性雑音あり
  • 前収縮期(拡張後期)に大きな過剰心音
  • 低調成分が主体であるためS4(赤四角)
  • 本例の最終診断は閉塞性肥大型心筋症

😛 追加コメント
  • 洞調律の肥大型心筋症では肥大部位にかかわらずS4を高頻度(約70%)に認める(Circ J  2023;87:1068-74)。
  • なおS4の生じる前提として、心室コンプライアンスの低下あるいは拡張末期圧の上昇に対する心房機能の亢進が必須
  • 増高した心室流入血流が硬い心室を振動させてS4が発生(Tavel ME. Year Book Medical Publishers;1971:44-63)
  • この振動はA波として触知でき(下図),抬起性拍動と合わせて二峰性心尖拍動(double apical impulse)と呼ばれる.
  • なお心房細動ではⅣ音(第4音)は記録されない.また洞調律であっても心房機能が低下すればS4は減弱~消失(


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(投稿者 川崎)

2025-08-14

今週の一枚 🎯

前日からの胸痛を訴える若者(突然発症で吸気時に増悪/気胸の既往歴あり)



(投稿者 川崎)

2025-08-13

医療アライアンスとケアミックス病院

  • 先日の会議でアライアンスケアミックスというタイトルの議題がありました.なんとなくぼんやりとしか理解していなかった用語だったので調べてみました.

🚁 アライアンス(alliance)
  • 同盟や提携を意味し,航空会社によるエアライン・アライアンスが有名である.共同で運用することで,各航空会社はより効率的な運航と幅広い路線展開を実現できる.
  • 医療アライアンスとは医療機関間での連携を意味する新しい概念で定型的な枠組みはない.各医療機関が地域医療分析を共有し医療ニーズに応えるため連携を進める.
  • 医療アライアンスを構築するのに重要となってくるのは人財である.現状と地域の医療ニーズを把握し,医療アライアンスの構築のために力を尽くせる人財を育成する.


🍭 ケアミックス病院(Caremix hospital)
  • その定義(厚生労働省)は一般病床と療養型病床または精神病床の混合型であるが,一般病床を有していた病院が療養型病床や精神病床に変わりケアミックス病院として展開されていることが多い.
  • 急性期病棟+回復期リハビリテーション病棟+療養病棟,急性期病棟+地域包括ケア病棟+療養病棟+緩和ケア病棟,回復期リハビリテーション病棟+療養病棟など(訪問看護や介護施設の併設あり)
  • 一般病床と療養型病床など複数の病床機能を備えていても病床数の割合でケアミックス病院にならないこともある(例:一般病床≧80%以上なら急性期病院,療養病床≧80%以上なら療養型病院になる)


(投稿者 川崎)

2025-08-12

TRACP-5b(トラップ ファイブ ビー)

  • 略語 tartrate-resistant acid phosphatase(骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)の略
  • 分類 TRACPのうち骨由来のアイソザイム成分は 5a(マクロファージ)と 5b(破骨細胞)
  • 実際 血清0.5mlを要し2~4日で判明(目安:男性170~590 mU/dL,女性120~420 mU/dL)
  • 意義 破骨細胞による骨吸収で血中に放出されるため破骨細胞の数や骨吸収活性などを反映
  • 特徴 他指標と比べ血清であるため腎機能の影響を受けにくく日内変動や食事による影響も小
  • 適応 代謝性骨疾患および骨転移(肺癌,乳癌,前立腺癌に限る)の診断補助(判断料144点)
  • 再検 6月以内に1回に限り算定(治療方針を変更した際には変更後6月以内に1回に限り算定)

参考)WEB総合検査案内,他

 
(投稿者 川崎)

2025-08-11

Ⅲ音の深堀

息切れを主訴に受診した症例

😎 解説
  • 心尖部に拡張早期の大きな過剰音を認める
  • S2の約140ms後に出現する低調音(四角)
  • これらの特徴はS3(Ⅲ音/第3音)に合致
  • 本例は最終的に拡張型心筋症と診断された
😛 追加コメント
  • Ⅲ音の機序として,左室充満圧(≒左房圧)の上昇による左室急速流入速度の増大とその突然の停止が推察されている(Jpn Heart J 1976;17:150-62
  • その圧変化は心尖拍動図の急速流入(RF: rapid filling)波として触知することができる(下図参照:上図よりS3が小さいのは心尖に圧端子を置くため)
  • 本例では減弱したS1にも注目(通常は心尖部側でS1>S2).左室収縮力が低下すると左室圧の上昇が緩徐でS1が減弱(Am J Cardiol 1971;28:140-9


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(投稿者 川崎)

2025-08-10

脆弱ぜいじゃくX症候群 Fragile X Syndrome 

  • 概要 脆弱X随伴振戦/失調症候群を伴うトリプレットリピート病のひとつ
  • 原因 X染色体長腕末端のFMR1遺伝子の3塩基(CGG)繰り返し配列の延長
  • 機序 神経細胞の核内に凝集体が形成され機能障害に至ると推測されている
  • 症状 男性は発達障害や重度の知的障害,自閉症スペクトラム(女性は軽度)
  • 関連 脆弱X症候群関連疾患は50歳~進行性の小脳失調やパーキンソンなど
  • 身体 細長い顔,大耳介,巨大睾丸,関節過伸展,扁平足、僧帽弁逸脱など
  • 治療 根本的な治療法を開発中(現時点では個々の病態に対する対症療法)
  • 予後 発症後は進行性(本邦は100人未満? 自閉症とされている例が多い?)

参考)難病情報センター,他

脆弱X症候群の顔面特徴(細長い顔,突出する耳と額)

(投稿者 川崎)

2025-08-09

日々勉強

  • 指導医師 「あの患者さん,ひどい便秘みたいだね」
  • 看護学生 「高齢者は嵌入便が多いって聞きました」
  • 指導医師 「かんにゅう…べん…どんな漢字? 😢」

嵌入便
  • 肛門手前にかたい便が溜まってしまった状態
  • 高齢者に多く嵌入便を自力で出すことは困難
  • 手袋とグリセリンなどの潤滑剤で摘便をする


😐 追記
  • 欧米では fecal impaction(FI)と定義されている,俗にいう糞詰まりの状態です.本邦では同様な状態は宿便,糞便充塞,糞便塞栓,嵌入便などと呼ばれていますが,統一した医学用語はないそうです.


(投稿者 川崎)

2025-08-08

OTC類似薬

OTC:Over The Counter
  • 医薬品は医師の処方箋が必要なものと不要なOTC医薬品(=市販薬)に大別される
  • OTC類似薬はOTC医薬品と効果やリスク他が似ているが原則処方箋を要する医薬品

😑 追加コメント
  • OTC医薬品は公的医療保険の適用対象となるため自己負担は1~3割程度で済みます.しかし近年医療費削減のため,これらのOTC類似薬を保険適用から外す検討が進められています(例:医療用医薬品として処方されるロキソニンとOTC医薬品として販売されるロキソニンSの成分はほぼ同じ).OTC類似薬を保険除外することで1兆円ほどの医療費が削減できると算定されていますが,健康被害や患者負担が増加するなどの懸念があるようです.
 
(投稿者 川崎)

2025-08-07

今週の一枚 🎯

労作時の息切れで来院した症例(座位)


🐝 解説
  • 右頚部腫瘍(30年著変なし)
  • 安静座位で頚静脈は視認せず
  • 深吸気負荷後も頚静脈は陰性
  • 心音は明瞭なギャロップあり
  • BNPは著増(>1000 pg/ml)
  • 心エコー図で左室駆出率18%

🐙 頚静脈の座位定性の弱点

身体所見は診断特異度は高いのですが,感度が少し劣るという共通した問題点があります(評価者のばらつきもですが😑).一方,頚静脈の座位定性(シンプル頚静脈)は感度も特異度も臨床的には十分すぎるくらい高いと思われます.ただし特定の病態では役立たないと感じることもあるので,以下に列記してみます.

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(投稿者 川崎)

2025-08-06

マイオカイン Myokines

  • 骨格筋から分泌される生理活性物質の総称のこと
  • ギリシャ語 myo(筋)とkine(作動物質)の造語
  • 例えばサイトカインの1つ interleukin-6(IL-6)
  • IL-6は筋収縮で分泌され骨格筋の糖取り込み促進
  • 他のマイオカインは生理作用が不明なものが多い
  • 脂肪燃焼や動脈硬化抑制,代謝改善,免疫向上?
  • 創薬の新たなターゲット候補でも期待されている

- マイオカインの概念 -
バソプレッシン
💁 生理活性物質に関する過去の投稿 ➜ コチラ
 
(投稿者 川崎)

2025-08-05

👂 最近の耳学問

  • P2Y12受容体拮抗薬(阻害薬)➜ ADP(アデノシン二リン酸)の受容体であるP2Y12受容体を阻害することで抗血小板作用を示す薬剤(チエノピリジン系:第1世代,チクロピジン;第2世代,クロピドグレル;第3世代:プラスグレル/非チエノピリジン系,チカグレロル)
  • 対側性変化(reciprocal changes)➜ 急性心筋梗塞例の心電図でST上昇を示す誘導と鏡像関係にある誘導のST低下に対する用語として統一された(ミラーイメージは使用しない).同様に心臓周囲の用語も心膜に統一(心膜液貯留や心膜ドレナージなど/今後は心嚢は使用しない)
  • rVCSS ➜ Revised Venous Clinical Severity Scoreの略で,邦名は改訂静脈臨床重症度スコア.静脈不全を反映し,例えばrVCSS≧3点では日常生活が著しく妨げられると判断でき静脈ステントを考慮(適正使用指針).具体的な評価方法はココ
  • three noes IE ➜ 右心系単独の感染性心内膜炎(IE: infective endocarditis)のうち①静注薬物使用者,②心臓デバイス関連,③先天性心疾患(心室中隔欠損症,ファロー四徴症,僧帽弁弁膜症,大動脈弁弁膜症など)のいずれも認めない症例で,右心系IEの約16%を占めるという報告あり

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-04

フィジカルクイズ(No. 15 & 16)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



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