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2026-09-10

今週の一枚 🎯

食事中にピアスを飲み込んだ若い男性

💋 解説
  • 胃内に棒状の金属性異物の疑い
  • 腹腔内に遊離ガスは認められず
  • 緊急上部内視鏡を行い異物除去
  • 脱落した唇ピアスの一部だった

👂 追加コメント
  • はじめは,「どうやって食事中にピアスなんて飲み込んだんだろう?」と思いましたが,耳のピアスではなくて,口のピアスでした.
  • 唇ピアス vs 耳たぶピアスの脱落率を直接比較した論文は見つかりませんでしたが,リップピアスの方が落下しやすいと思われます.
  • その理由は,口の物理的な負荷の多さ(会話や食事など)に加え,装着による歯肉退縮(Dent Traumatol 2006;22:7-13)など?

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-08-27

今週の一枚 🎯

舌の腫脹で救急外来に搬入された高齢者

🔎 解説
  • 舌は腫大し舌根に白苔と腫瘤病変あり
  • 採血は白血球9200/μl,CRP 8.76mg/dl
  • 造影CTで明らかな膿瘍を疑う所見なし
  • 右側の顎下腺に一致して石灰化(赤丸)
  • その周囲には僅かに浮腫様の変化あり
  • 本症例の最終診断は急性の右顎下腺炎

👅 追加情報
  • 耳鼻咽喉科をコンサルト:舌腫脹+右口腔底のワルトン管の走行に沿った腫脹+ワルトン管開口部から排膿あり→ワルトン管開口部から洗浄+抗菌薬(2週間予定)
  • ワルトン管(Wharton's duct)とは顎下腺管で,顎下腺から分泌された唾液を口腔内へ導く導管(排泄管).およそ5cm程度の長さで,唾石症の好発部位でもある.
  • なお洗浄液の培養からKlebsiella pneumoniae(過粘稠性株,String test+)を検出→眼内炎および膿瘍の全身検索も追加するが,特記すべき異常所見はなかった.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-02-10

ガマ腫 🐸 Ranula

  • 舌下腺導管が閉塞し舌下腺からの唾液が周囲間隙に漏出した貯留嚢胞
  • その命名はガマガエルが喉を膨らませた姿に似ていることに由来する
  • 10~20歳代に好発する疾患で, 組織学的には上皮細胞を欠く偽嚢胞
  • 口腔底限局の舌下型,顎下進展の顎下型,口腔底〜顎下の舌下顎下型
  • 治療は開窓術,嚢胞摘出術,舌下腺摘出術などの手術に加え硬化療法

参考)口咽科 2023;36:59-64,他

口腔底の腫脹を生じたガマ腫の12歳女性
OK-432(ピシバニール®)高濃度注入法で消失

(投稿者 川崎)

2026-01-24

唾石症 Sialolithiasis

  • 解剖 唾液腺は大唾液腺(耳下腺,顎下腺,舌下腺)と小唾液腺で構成
  • 原因 脱落上皮,迷入異物,細菌などの周囲にカルシウムが沈着し形成
  • 部位 9割以上は顎下腺に発生(ただし最新の欧米報告では耳下腺が最多)
  • 疫学 77例の検討では30代が最多(4~74歳)で男42例,女34例(※)
  • 症状 唾液疝痛と呼ばれる食事時の疼痛(顎)や腫脹などを引き起こす
  • 診断 CT,超音波検査,唾液腺造影は高感度(臨床診断が不確実な場合)
  • X線 顎下腺唾石の90%は放射線不透過性なため単純X線は正確ではない
  • 治療 局所麻酔による口内摘出術,5mm以上や癒着症例は全身麻酔手術

参考)日耳鼻 2022;125:1405-8,他

- 耳下腺腫脹と疼痛,開口障害を訴える60歳女性 -


(投稿者 川崎)

2025-12-22

習慣性顎関節脱臼に対する顎関節自己血注入療法
Autologous Blood Injection for the Treatment of Recurrent Temporomandibular Joint Dislocation

  • 顎関節脱臼とは下顎頭が下顎窩の関節運動範囲外にはずれ復位しない状態
  • 初報はドイツの歯科医(?)であるSchultz(Dtsch Stomatol 1973;23:94-8)
  • 例:上関節腔2 ml,関節包周囲1 ml の計3 ml(日口外誌 2003;49:409-11)
  • 自己血注入療法後はチンキャップなどで顎外固定をすることが多い(下図)
  • 機序は関節腔や周囲に生じた肉芽組織が器質化し下顎頭の前方滑走を抑制
  • 顎関節の滑膜同士や周囲軟組織の癒着による下顎頭の運動障害も脱臼抑制


- 顎関節自己血注入療法の実例 -

- おまけ:顎関節脱臼に対する徒手整復 -
(Fauquier ENT)

(投稿者 川崎)

2025-12-13

海綿静脈洞血栓症 Cavernous Sinus Thrombosis (CST)

  • 概略 海綿静脈洞内血栓で神経症候を呈した病態
  • 機序 静脈洞の炎症波及による血栓形成でうっ滞
  • 原因 感染性と非感染性があり感染の波及が多い
  • 症状 患側の眼窩周囲浮腫,眼球突出,結膜浮腫
  • 神経 眼筋麻痺,顔面感覚障害(Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ)
  • 合併 髄膜炎,下垂体機能不全,内頸動脈血栓他
  • 治療 早期の抗菌薬と抗凝固療法+原疾患の治療
  • 予後 致死率は約30%で50%以上が後遺症を残す


齲歯で海綿静脈洞血栓症とLemierre症候群を合併した54歳女性

(投稿者 川崎)

2025-11-07

人中じんちゅう Philtrum

  • 鼻中央~唇上部の垂直溝で多くの哺乳類が有する
  • (おそらく)医学用語(ガイドラインや論文記載)
  • 口から水分を運び鼻を湿潤?(嗅覚機能に有利?)
  • 胚発達期に鼻隆起と上顎突起が出会う場所に形成
  • 融合が不完全なら口唇口蓋裂で人中形成術が必要

(投稿者 川崎)

2025-10-13

フィジカルクイズ(No. 25 & 26)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-09-07

Wickham's Striae ウィッカム線条

  • 扁平苔癬の病変の表面に認める白い線条あるいはドット
  • 典型的には口腔粘膜に出現し,顕微鏡的では過顆粒症
  • 仏の医師 Louis Frédéric Wickham (1861–1913) が初報(#)

- Wickham線条を伴う口唇炎 -
(a)網状線条,(b)放射状線条,(c)年輪状線条,(d)複数の青灰色の点(矢印)
(投稿者 川崎)

2025-08-22

口腔扁平苔癬 OLP:Oral Lichen Planus

  • 概略 口腔粘膜に網状や斑状の白色病変と軽度角化異常を伴う慢性炎症性病変
  • 症状 びらんや潰瘍を伴う紅斑性病変を生じると不快症状や接触痛などが起こる
  • 鑑別 口腔粘膜の病変(特に白板症や初期口腔癌、他のびらん性疾患は必須)
  • 疫学 一般人口の 1.27%(男0.96%、女1.57%) で人種差や地域差はない
  • 治療 通常は難治性で長期間を要する(ステロイド剤の局所療法など:下図)
  • 病因 不明:発症誘因や増悪因子が想定できる症例では取り除くと改善あり


- 口腔扁平苔癬(OLP)の臨床像 -

(投稿者 川崎)

2025-03-19

口腔内セネストパチー(口腔異常感症)

  • 奇異な表現で訴えられる,多彩で変動する口腔内の異物感や違和感である
  • 口腔内の不快感を訴えるが実際に異物はないと理解はしていることが多い
  • ネバネバ,ベタベタ,ヒリヒリ,乾燥,味覚異常,異物感,知覚過敏など
  • 精神科よりも歯科や耳鼻咽喉科など身体科を受診することが圧倒的に多い
  • 舌痛症(口腔灼熱症候群)と重複する症状も多く明瞭な分類が困難である
  • 訴えを傾聴し安易に否定しない/難治性で向精神薬等の有効率は50%以下
  • 全身に異常感覚が拡大する場合や,精神症状が強い場合は精神科と連携要
  • 特に高齢者では認知機能や精神状態、口腔癌など器質的疾患の確認を要す


(投稿者 川崎)

2024-11-04

唾液腺型高アミラーゼ血症 Salivary hyperamylasemia

  • 血液検査で予想外に血清アミラーゼが高値であったが,P型(膵臓型)ではなくてS型(唾液型)で一安心した経験は誰もがあると思います.
  • P型アイソザイムの上昇は膵疾患と考えられますが,S型アイソザイムの上昇には様々な原因があるようです(ガム噛みや強いストレスなど).
  • 下表以外にも摂食障害(特に神経性過食症)などが知られています.中には酸味嗜好(ココ)や特発性(ココ)という報告も見つけました. 

 高アミラーゼ血症診断のフローチャート

👉 アミラーゼに関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2024-07-31

Hot potato voice ホット ポテト ボイス

  • 概略:熱いジャガイモを口に入れて食べている人のような話し方の例え
  • 別名:くぐもった声,モゴモゴした声,potato in mouth,muffled voice
  • 原因:リンパ腫瘤,扁桃周囲膿瘍,喉頭蓋炎,異物,扁桃周囲膿瘍など

- 実例:扁桃周囲膿瘍 -

💁 声に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-01-06

ハッチンソンの三徴 Hutchinson's triad

  • 概要 先天梅毒の晩期(生後約2年〜)に出現してくる3つの所見
  • 三徴 実質性角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯(桑実状臼歯)
  • 由来 英外科医ハッチンソン(1828-1913)(Archives of Surgery 1889)
  • 関連 顔面帯状疱疹のハッチンソン徴候も同じHutchinson卿が報告


💁 梅毒に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-18

口腔白板症 Oral leukoplakia

  • 口腔内の臨床的に摩擦によって除去できない白色の板状病変
  • 【発音】lùːkoupléikiə/ルーコウプレイキア【音声】こちら
  • 病理は上皮性異形成の有無によらず他疾患には分類されない
  • 歯肉や舌縁に多く,次いで頬粘膜、口蓋、口唇、口底に認める
  • 男女比は 1.2:1で初診平均年齢は59.7歳(50~70代が80.8%)
  • 前がん病変と考えられるが癌化率は0.1%~36%とばらつき有
  • 512例中13例が癌化した検討では癌化までの平均期間は39ヵ月
  • 対処法は外科的全切除,レーザー治療(蒸散),経過観察など


  • 1日20本喫煙の55歳女性患者が3ヵ月前から舌の腹側に白板症を認め受診
  • 病理所見は中等度および重度の舌底異形成の病巣を有する扁平上皮粘膜
  • その後3ヵ月で病変増大し生検で高悪性度の上皮内異形成→レーザー蒸散

👅 下に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-07-08

Geographic tongue 地図状舌

  • 概略 原因不明の口腔内の良性慢性再発性炎症性疾患
  • 初報 1831年に Rayer が移動する舌の発赤として報告
  • 経過 病変が数日~週間持続し消失,別の場所に出現
  • 部位 通常舌側面と背面(唇や頬粘膜,口腔底もあり)
  • 疫学 小児期に発症(約1%~2.5%)で最多は20歳代
  • 電顕 紅斑部下の状乳頭の消失+舌白部下の壊死細胞
  • 症状 無症状~灼熱感,味覚障害,熱や酸の過敏など
  • 治療 無症状なら通常不要(口腔衛生かつ刺激物回避)
  • 鑑別 紅板症,扁平苔癬,カンジダ症,口内炎,白板 


 37歳女性の地理的舌(灼熱感は6ヵ月後に消失)

👅 舌に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-07-07

体のフタ:軟口蓋と喉頭蓋

(Wiki)



(投稿者 川崎)

2022-12-26

タンジール病 Tangier disease

  • 先日,Twitterで印象的な咽頭所見を見かけました.一度見たら決して忘れない身体所見です.臨床現場でまだ経験したことはありませんが,将来困らないように調べてみました.
(そのツイッター/オリジナルはココ)

🧡 タンジール病(Tangier disease)
  • HDLコレステロールとアポリポタンパクA-I濃度が著しい低値を示す常染色体劣性遺伝疾患
  • アメリカ東海岸のバージニア州タンジール島で初めて発見されたことから名付けられた病気
  • 原因はATP binding cassette transporter A1(ABCA1)の遺伝子異常で稀(日本で10家系程度)
  • HDL-Cが10mg/dL未満で,鑑別疾患にはLCAT欠損症や二次性低HDLコレステロール血症など
  • オレンジ色の咽頭扁桃腫大(上図)、肝脾腫、角膜混濁、末梢神経障害,若年性冠動脈疾患
  • 遺伝子治療などの根本的な治療はまだない(合併する動脈硬化性疾患の予防・治療が中心)

参考)難病情報センター タンジール病(指定難病261)


🉐 オレンジに関する過去の投稿 ➜ コチラ

※ 心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2022-01-08

バートンの線 Burton’s Line

  • 鉛中毒(lead poisoning)で出現することがある歯根〜歯茎の青紫線
  • 機序は口腔内細菌が放出する硫黄イオンと鉛が反応して生じる硫化鉛
  • 由来は英国の医師 Burton による初報(Med Chir Trans 1840;23:63–79)



👾 なんでも調査隊
  • バートンの線(Burton's Line)の報告は今から180年以上前で,日本は江戸時代後期(天保11年)で徳川家慶の頃です.しかしこの身体所見は画像診断が発達した現代でも,臨床的に有用です.鉛中毒の症状が非特異的(3大症状:胃腸症状・筋骨格症状・神経症状)であるためです.
  • 鉛中毒自体の歴史は古く,紀元前2世紀のギリシャの生物学者・医師である Nicander の報告まで遡るようです.彼は鉛中毒が腹痛や麻痺の原因になることをすでに報告しています(引用).ベートベンの聴力障害はワインに関連した鉛中毒説もあります(Laryngoscope 2013;123:2854-8)

💁 鉛に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-12-11

👄 開口障害と指縦三横指

  • 開口障害は顎関節症の主要症状(他の症状は顎関節や咀嚼筋の疼痛,関節音・雑音,顎運動異常など)
  • 原因は先天性,外傷性(脱臼や骨折),炎症性,腫瘍,顎関節強直症,咀嚼筋障害,全身疾患関連など
  • 鑑別は頭蓋内病変,隣接臓器の疾患,筋骨格系,心臓・血管系,神経系(破傷風など),精神疾患など
  • 診断目安は下図:無痛最大開口域<25mm,強制最大開口<50mm(開口測定器がなければ<指3横指) 
参考)顎関節症治療の指針 2018(図を含む)など

💁 顎関節の関連投稿は コチラ

(投稿者 川崎)