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2024-05-31

e-casebook「心不全のフィジカル」

  • 先日,e-casebookで「心不全のフィジカル」についてお話をさせていただきました.心不全症例が呈する様々な身体所見の中から,頚静脈の座位定性法に特化した内容です.
  • 目標は心不全の共通言語として「座位で頚静脈が見えます」の普及です.本人~家族,救急隊員,訪看スタッフ,診療所,病院の各間で,より迅速かつ円滑な対応が望めます.
  • 登録(無料)が必要ですが,よろしければご覧ください(視聴サイト).貴重な機会なので新アプリ「シンプル頚静脈」も作成し,講演中に公開しました(QRコードを提示).


e-casebook(© Heart Organization.Co.,Ltd.)は、循環器内科(Cardiology)・整形外科(Orthopedics)・脳神経外科・内科(NS , Neuro)・消化器外科・内科(GI Surgery , GI)をはじめとするいろいろな分野の医師が知⾒を深める支援をしています。トップレベル医師による⼿術・手技、レクチャーなど実践的な内容で専門医が学べるライブ・ビデオ配信サービス「e-casebook LIVE」やDICOM画像をもとにWeb上で症例検討ができるディスカッションプラットフォーム「e-casebook FORUM」を運営しています。(e-casebook HPより文言そのまま)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-05-30

今週の一枚 🎯

激しい咳嗽直後から胸背部痛を訴える男性

👿 解説
  • 右第6,7肋骨の連続性が保たれていない(下図左矢印)
  • 肋骨撮影なら離断が明瞭(下図中央:緑丸は疼痛部位)
  • 胸部CTでも骨連続性は消失し最終的に肋骨骨折と診断
  • 疼痛は軽度で鎮痛薬で対応(バストバンドは使用せず)

😶 独り言
  • 実は本症例では胸部X線で骨折が見逃されていた.胸部X線で肋骨は明瞭に描出されるが(特に背面),側胸部に近い部位では角度の関係で判定が難しくなる.
  • そんな時には痛み部位をマークした肋骨撮影を行いたい.もっとも本例では画像検査前に圧痛点を確定できなかった.その原因として介達痛などが考えられる.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-05-29

UPSユーピーエス電源

  • 最近は多くの病院がBCP対策チームを持っていると思われます.当院が存在する大阪でも南海トラフ地震への対策は必須です(30年以内に発生する確率が70-80%:国土交通省気象庁).その対策会議中にしばしば耳にする用語 UPS電源 なども,すこしずつ医療現場に定着してきたように思います.

  • UPS(Uninterruptible Power Supply)=無停電電源装置
  • 医療機器が接続されるコンセントは停電への対応が必要
  • 医用コンセントは JIS の細かい規定あり(下記の4種類)

:一般的な商用電源
:一般非常電源(40秒で回復)と特別非常電源(10秒で回復)
:瞬時特別非常電源で交流無停電電源装置(UPS)
:上記以外(非接地配線方式用など)または以前の非常電源


(投稿者 川崎)

2024-05-28

HELT-E₂S₂スコア

  • 本邦で開発された非弁膜症性心房細動の脳梗塞発症率を予測するスコア
  • 弘前大学の循環器内科医 Okumura らが提唱(Circ J 2021;85:1254-62
  • 下記の6項目の合算で判定(高値ほどリスクは上昇:下図のA・Bを参照)
  • C-統計量(ROC曲線下面積)はCHADS2やCHA2DS2-VAScより有意に高値

  1. ➜ 高血圧 +1点
  2. E ➜ 年齢75~84歳 +1点
  3. L ➜ 低体重(BMI<18.5)+1点
  4. T ➜ 持続性/永続性心房細動 +1点
  5. E2 ➜ 年齢≧85歳 +2点
  6. S2 ➜ 脳卒中の既往 +2点


(投稿者 川崎)

2024-05-27

頚静脈波曲線と三尖弁逆流:覚書

  • TRの頚静脈波曲線はLancisiが初記載(De Motu Cordis et Anetlryslnatibus. Roma,1728)
  • 軽症はx谷浅化+v波増高(共に早期出現),中等症は収縮期波(s波),重症は心室化
  • ただし頚静脈波曲線のTRパターンは心房細動ならTRがなくても30%以上に出現(下図)
  • 開心術後の症例では三尖弁逆流が存在しなくても通常的に三尖弁逆流パターンが出現
  • 原因として心膜の影響?(左心膜完全欠損例では典型的な三尖弁逆流パターンが出現)
  • 術後の心室中隔奇異性運動や右房(切開に伴うコンプライアンス低下)なども関与?

参考)循環器フィジカルイグザミネーションの実際(文光堂),他

- AF例の頚静脈波曲線 -

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(投稿者 川崎)

2024-05-26

第137回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
1-9 ペースメーカ留置時に偶発的に採取した心筋片より診断に至った心アミロイドーシスの一例
  • 経静脈PM植込み時にポケットから採取した脂肪とリード先端より偶発的に採取できた心筋を提出し,病理検査で心筋組織にアミロイド沈着を認めた。伝導障害例や高齢者では生検の実施が困難な場合があり,我々は経静脈PMの植込み時に低侵襲でアミロイド沈着を証明できた症例を経験したので報告する。

3-21 右腋窩-右外腸骨動脈バイパスにより心不全の改善を認めたCoral reef aortaの1例
  • 主に腎動脈上の腹部大動脈に起こる限局性,珊瑚状の石灰化及び狭窄病変が特徴的であるCoral reef aortaは,難治性高血圧,臓器・下肢虚血を呈する。後負荷増大による心不全をきたしExtra-anatomical bypassが奏功した症例を報告する。

3-28 右総腸骨動脈の慢性完全閉塞病変に対して0.035 CROSSLEADを用いて秒でwire crossできた一例
  • CTO病変にCROSSLEADを“秒”で通過させることに成功。0.035 CROSSLEADは従来の0.035ワイヤーと異なりトルクレスポンスも良く操作性にも優れているため,このようなCTO病変 治療における1stワイヤーとなり得ると思われた。

6-19 Ehlers-Danlos 症候群に合併した特発性尺骨動脈瘤破裂の1例
  • エコーでは,右尺骨動脈瘤を認めた。しかし,造影剤アレルギーの既往があり,TEAは困難と判断し,経過観察となっていた。翌週に,急激に右前腕の腫脹,尺骨側の神経障害を認めた。エコーで,同部位の破裂を認め,緊急手術となった。術中所見は,血管壁は破綻しており,尺骨動脈の中枢側および末梢側を同定して結紮。

6-35 心膜外脂肪壊死の一例
  • 数日前からの上下肢浮腫と深吸気時胸痛を主訴に前医を受診,両側胸水貯留を指摘され当院へ紹介。入院加療とするも,約1週間で症状は自然軽快し心嚢水と胸水も減少したため,第9病日より外来フォローとした。その後も症状は再燃せず,2か月後のCTでは楕円形腫瘤と心膜肥厚は消失。心膜外脂肪壊死は急性の胸痛を呈するが,保存的治療で自然軽快する良性疾患である。腹膜垂炎等と同様の機序による脂肪壊死が病因とされている。胸痛をきたす疾患の一つとして考慮すべきと思われた。


👻 当院からの発表
  • 3-7 頸静脈所見が診断に有用であった心房頻拍の1例(循環器内科 林 寛人ほか:優秀賞,写真中央)
  • 4-6 身体所見が診断に有用であった急性大動脈弁逆流の1例(循環器内科 髙林彩香ほか)
  • 6-1 急性心筋梗塞を契機に診断された心アミロイドーシスの1例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • 6-2 身体所見から形態学的診断に迫ることができた右室流出路狭窄を有する両室肥大型心筋症の1例(循環器内科 川崎達也ほか)

すべて英語論文化(1つは掲載済,2つは投稿中,もう1つは投稿準備中)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-05-25

ホーン・ヤールのスケール Hoehn and Yahr scale

  • パーキンソン病の進行度を評価するスケール(基本的に徐々に進行する疾患)
  • 米国の脳神経内科医 Hoehn MMとYahr MDが作成(Neurology 1967;17:427-42
  • 手 ➜ 同側の足 ➜ 対側の手 ➜ 対側の足というN字型進行が多い(足発症あり)
  • 0~5度の6段階で評価(下表)し3度以上が難病医療費助成制度の対象になる


ホーン・ヤールの重症度分類 
0度 パーキンソニズムなし
1度 一側性パーキンソニズム
2度 両側性パーキンソニズム
3度 軽~中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害(姿勢保持障害)あり。日常生活に介助不要
4度 高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能
5度 介助なしにはベッド又は車椅子生活


💁 パーキンソンに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-24

頸静脈の立位負荷

弁膜症で開心術の既往がある症例


(投稿者 川崎)

2024-05-23

今週の一枚 🎯

発熱+右季肋部痛の高齢者

👿 解説
  • 胆嚢結石はあったが胆嚢炎の所見なし
  • CRPは25で血培からエンテロバクター
  • 広域抗菌薬を継続したがほぼ改善なし
  • フォローCTで腹部大動脈の径の拡大?
  • 造影で腹部大動脈の左側に血管外造影
  • 最終診断は感染性腹部大動脈瘤の破裂
  • 緊急手術が可能な高次医療機関に転送

💣 コメント
  • 本例は転院後に緊急ステント留置で治療が行われました.感染部位に異物(本例では金属ステント)は禁忌に近いと思っていました.ただし手術リスクが高い症例(本例では慢性閉塞性肺疾患 COPDなど)がある場合はステント治療も選択肢になるようです(最近のNEJMのケースレポート).もちろん長期(しばしば生涯)に渡る抗菌薬の投与が必要になります.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-05-22

障害年金

  • 現役世代が病気やけが他で生活や仕事などが困難になった場合に受け取ることができる年金
  • 診断時に国民年金に加入なら障害基礎年金,厚生年金に加入なら障害厚生年金が請求できる
  • 障害基礎年金や障害厚生年金(障害等級1級・2級に限る)の受給者は国民年金保険料が免除


📌 年金の復習
  • 日本では20歳以上のすべての国民が公的年金への加入を義務づけられている.自営業や主婦,学生などは国民年金に加入して,サラリーマンや公務員などは厚生年金に加入

👓 障害の目安
  • 1級 単独で日常生活をほぼできないの障害で,入院や在宅介護を必要とし活動の範囲がベッドの周辺に限られる
  • 2級 必ずしも助けは不要でも日常生活は極めて困難で,労働収入は不可で活動範囲が病院内・家屋内に限られる
  • 3級 日常生活にはほとんど支障はないが,労働が困難あるいは著しい制限を加えることを必要とするような状態


支給される障害年金の額(年額/令和5年度)


💁 制度に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右欄からも選択可能

(投稿者 川崎)

2024-05-21

用語:Genetics and Epigenetics

  • genetics 【名】遺伝学、遺伝的特徴(dʒənétiks/ジェネティクス/音声
  • epigenetics 【名】エピジェネティックス,後成的遺伝学,後生学(èpidʒinétiks/エピジネティクス/音声

🌎 ウィキペディアより
  • エピジェネティクス(英語: epigenetics)とは、一般的には「DNA塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化を研究する学問領域」である。ただし、歴史的な用法や研究者による定義の違いもあり、その内容は必ずしも一致したものではない。(一部省略)
  • 一般的にエピジェネティクスとは、下記のリッグス(1996年)の定義のように理解されている。しかしながら、いくつかの定義あるいは説明が存在し、結果として、何を意味するべきかについては議論がある。
    • 「遺伝物質からはじまり最終的な生物を形づくるすべての制御された過程」(ウォディントン, 1942年) 
    • 「同一遺伝子型の細胞が異なる表現型を細胞分裂を越えて維持していること」の説明(Nanney, 1958年)
    • 「複雑な生物の発育中における遺伝子活性の時間的·空間的制御機構の研究」(ホリデー, 1990年)
    • DNA配列の変化では説明できない体細胞分裂および/または減数分裂に伴う遺伝子機能における遺伝的な変化の研究」(リッグス, 1996年)
    • 「変化した活性状態を記録・信号伝達または継続させるような染色体領域の構造適応」(バード, 2007年)
    • 「エピジェネテックな形質とは、DNA塩基配列の変更を伴わない染色体の変化に起因する安定した遺伝性の表現型を示すもの」(Bergerら, 2009年)

💁 用語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-20

バーター症候群 Bartter syndrome

  • 概略 低K血症,代謝性アルカローシスなどを呈す先天性尿細管機能障害を伴う症候群
  • 名前 米国の内分泌医 Frederic Crosby Bartter らの初報(Am J Med 1962;33:811-28
  • 機序 ヘンレ上行脚のNaCl輸送に携わる遺伝子の異常など(常染色体潜性[劣性]遺伝)
  • 鑑別 ギテルマン症候群(低マグネシウム血症と低カルシウム尿症を伴う:下表参照)
  • 頻度 Bartter症候群はおよそ1/100万(一方,Gitelman症候群の有病率は1/4万人程度)
  • 発症 新生児期に発症する重症型(新生児型)と乳幼児期に発見される軽症型(古典型)
  • 症状 電解質異常(脱力感や筋症状),多飲・多尿,末期腎不全,成長障害,難聴など
  • 治療 カリウム補正が大切(K補給 80~300mEq/日やスピロノラクトン 50~500mg/日)


Bartter 症候群(BS)/ Gitelman 症候群(GS)の分類と特徴

(投稿者 川崎)

2024-05-19

M B T Iエムビーティーアイ

  • MBTIとはユングのタイプ論をもとにした国際規格に基づいた性格検査
  • Myers–Briggs Type Indicator(マイヤーズ=ブリッグス・タイプ指標)
  • 米キャサリン C ブリッグスと娘イザベル B マイヤーズが1962年に完成
  • 外向型・内向型,感覚型・直観型,思考型・感情型,判断型・認知型
  • 目的は個々の性格診断ではなく自身の心を理解する座標軸としての使用
  • 実際の判定サイト例 ココ(ただし日本MBTI協会によると正確ではない)

- 16分類の具体的内容 -
Jake Beech, Wiki)

(投稿者 川崎 ← ISFJでした😑)

2024-05-18

Q熱 Q fever

  • 概略 リケッチアの一種である Coxiella burnetii による人獣共通の感染症
  • 由来 1935年に豪州の屠畜場の作業者間で流行した不明熱(Query fever)
  • 経路 家畜やペット(特に猫)の出産で胎盤に感染している C.burnetii 吸入
  • 潜伏 一般的には2~3週間でインフルエンザ様症状(感染量が多いと短縮)
  • 症状 高熱や頭痛,筋肉痛,倦怠感など非特異的(2~10%に心内膜炎あり)
  • 診断 血液から病原体分離,PCR法で遺伝子検出,ペア血清(≧4倍)など
  • 慢性 回復後しばらくして倦怠感・不眠・関節痛などが数月~数年持続あり
  • 治療 テトラサイクリン系抗菌薬を2~3週間(予防大切:特に動物出産時)
  • 予後 基本的に良好(ただし肺炎型や肝炎型があり約1割が慢性Q熱に移行)
  • 法律 感染症法の4類感染症に分類(診断した医師は直ちに保健所に届け出)



(投稿者 川崎)

2024-05-17

心音クイズ(Q1・Q2)

  • 持田製薬さんと心音クイズを作成しました(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏).初回は重要心雑音の2症例で,6領域の実際の心音+ポイントとなる2領域の心音図です.基本的な解説に加えて,一歩踏み込んだコメントを心がけました.
  • 今後も3ヵ月毎に2症例ずつアップする予定です(次回は2024年7月).無料なのでよろしければ是非ご覧ください(次回以降は簡単な登録が必要になるようですがコストは掛かりません).予定は1年ですが好評なら延長されるかな...😁


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(投稿者 川崎)

2024-05-16

今週の一枚 🎯

3週前より下腿浮腫と体重増加(直近10日で10㎏)を訴える高齢男性
2週前のかかりつけ医で施行した採血や胸部X線に特記すべき異常なし

👽 解説
  • 頚部や鼠径部のリンパ節が腫脹していた
  • CTでは大腿静脈をリンパ節が圧迫(*)
  • LDHは513 U/Lと増加,CRPは0.42 mg/dL
  • 頚部LNの生検でリンパ腫(DLBCL)診断
  • 本例にB症状(発熱・盗汗・体重↓)なし

💀 独り言
  • 下腿浮腫の鑑別診断は日常臨床で頻出です.両側なら心不全・腎不全・肝硬変・ネフローゼ・低栄養状態など,片側なら深部静脈血栓症・蜂窩織炎・骨盤内腫瘍などでしょうか.本例は意外なところに答えがありました.今後は両側鼠径にリンパ節の累々とした腫脹がないかも見るようにします.

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(投稿者 川崎)

2024-05-15

思春期ブロッカー Puberty blockers (PBs)

  • 性別違和(gender dysphoria)に対し処方される二次性徴抑制剤(一時停止ボタン?)
  • 実際にはリュープリン(リュープロレリン酢酸塩)を使用(例えば4週毎に皮下注射)
  • 効能・効果は子宮筋腫,子宮内膜症,中枢性思春期早発症,閉経前乳癌,前立腺癌
  • 性ホルモン治療(gender-affirming hormones: GAHs)移行前の苦痛緩和と時間的猶予
  • トランスジェンダーやノンバイナリーでうつ病および自殺傾向の低い確率と関連する
  • ただし骨量減少に加えて,成長障害や知能への悪影響など未解決の問題も少なくない


💁 性別に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-14

ハプログループ Haplogroup

PubMed検索:1993年頃から使われ4,000編以上の論文がヒット

👥 ハプログループ(Haplogroup)
  • haploid=(名)単数体・半数性(形)単数体の・1倍体の・半数性の
  • ハプログループは単一の一塩基多型 (SNP) 変異を持つ類似集団のこと
  • ミトコンドリアDNAは母系由来なので祖先のルーツを辿ることも可能

(投稿者 川崎)

2024-05-13

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2024-05-12

冠動脈:生理の整理

冠微小循環障害CMD: coronary microvascular dysfunction)
  • 心外膜血管より多くの血流を担う微小循環の障害で様々な病態に関与(下図)

冠血流予備能CFR: coronary flow reserve)
  • 最大冠血流量(薬剤投与時など)を安静時冠血流量で除した値で2.0以上が正常

冠微小血管抵抗指標IMR: index of microvascular resistance)
  • 最大充血時(薬剤投与時など)の冠内圧を冠血流量で除した値で25以下が正常

- さまざまな心血管疾患における CMD の役割 -

(投稿者 川崎)

2024-05-11

分化症候群 Differentiation syndrome (DS)

  • 急性前骨髄球性白血病(APML)へのオールトランスレチノイン酸 (ATRA) 療法の合併症
  • レチノイン酸症候群(Retinoic acid syndrome: RAS)とも呼ばれる(近年はDSが優勢)
  • 頻度はATRAやヒ素で治療されている患者の2~27%(治療開始から数週間以内に発生)
  • 発熱や5 kg以上の体重増加,末梢浮腫,低血圧,急性腎不全,間質性肺浸潤などで発現
  • 原因不明(APML細胞におけるサイトカイン分泌の変化とATRAによる接着分子の分化?)
  • 治療は(早期に認識し)ATRAまたはヒ素の中止+コルチコステロイド投与の組み合わせ

2024-05-10

💊 スタチンの選択

Drぷー(@Dr_ppooohh)先生のコメント(2024年3月26日午後8:02
  • 下がるからロスバスタチン一択で開始
  • 副作用で継続できなかったらアトルバスタチンへ変更
  • それも副作用で継続できなかったら泣きながらピタバスタチンにしてます()


💁 スタチンに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-09

今週の一枚 🎯 有名も役立たず?

息切れ症例の心尖拍動

😐 偽ブロードベント徴候(Pseudo Broadbent's sign)
  • 臥床(20度ヘッドアップ)で心尖部拍動を視認(矢印)
  • 拍動は陥凹で時相は収縮期(背後のモニター音に注目)
  • 最終的に本例は心房中隔欠損による心不全と診断した

😕 独り言
  • 心尖拍動の収縮期陥凹は,収縮性心膜炎で出現する所見(ブロードベント徴候/Broadbent sign)として有名です.しかし本例ではクスマウル徴候や心膜ノック音はありませんでした(フリードライヒ徴候は微妙に陽性?)
  • ベットサイド心エコー図では右心系の拡大が少し目立ちましたが,明らかなシャント疾患を検出できませんでした.その後にハイエンド機で再検して,心房間のシャントを認めたため心房中隔欠損による心不全と診断しました.
  • この収縮期陥凹(systolic retraction)は,様々な病態で認めます(自験例1自験例2).収縮性心膜炎で欠くことも多く,個人的には臨床現場であまり役立たない所見(感度も特異度もともに低い)と思っています.

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(投稿者 川崎)

2024-05-08

ENT,ESS

  • 先日のERでのタイムトライアル(申し送り)で「ENT, ESS」って記載がありました.略語は便利ですが,ERではあまり通じない略語でした.TPOを考えて使いたい 😁 TPOって死語?(Time・Place・Occasion)

  • ENTはEar+Nose+Throatで耳鼻科医はENT doctor(耳鼻咽喉科医師,otorhinolaryngologist)
  • ESSはEndoscopic Sinus Surgery(内視鏡下鼻副鼻腔手術)で,副鼻腔炎(蓄膿)などで行う
  • 概略は外鼻孔経由に篩骨洞および副鼻腔の自然口を開大して,洞の通気と排泄の改善を図る
  • ESSが慢性副鼻腔炎に導入されてから約30年以上で,現在は世界的なゴールドスタンダード
  • 経鼻経由で下垂体腫瘍,眼窩疾患や頭蓋底疾患などbeyond the sinusに適応が広がっている
  • ただしENT科の医療事故は鼻領域が2割程度でESS関連がその半数以上(複視や視力障害など)


👃 鼻に関連する過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 川崎)

2024-05-07

若葉マーク(初心者)や紅葉マーク(高齢者)だけではありません

身体障がい者マーク
  • 肢体不自由であることを理由に免許に条件を付されている運転手が車に表示するマーク(努力義務:所轄は警察庁交通局交通企画課)

聴覚障がい者マーク
  • 聴覚障がいであることを理由に免許に条件を付されている運転手が車に表示するマーク(義務:所轄は警察庁交通局交通企画課)


(投稿者 川崎)

2024-05-06

最近の耳学問 👂

  • 「太った?」の簡単な確認はベルトサイン(穴が一つずれた)や指輪サイン(抜けにくくなった)
  • ミルリノン(医薬品添付文書)は左心不全の治療薬であるが右心機能もサポート
  • 血清hCG(Human chorionic gonadotropin/ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が2000以上(+超音波検査で胎嚢なし)なら異所性妊娠を考慮
  • 閉塞性肥大型心筋症の頸動脈所見 spike and dome pattern は dart and dome pattern とも称される(ダーツ矢のdart)
  • 心尖部の血栓が疑われるときはコンパウンドをオフにする(空間コンパウンドは多方向の超音波を合成する画像処理で,デフォルトはオンが多い)
  • Eclipsed MRとは,(左室駆出率が保たれた患者で明らかな誘因なく)一過性にごく短時間生じる急性の機能性僧帽弁逆流(eclipseは日蝕や月蝕の蝕)
  • 感染性心内膜炎の7-8割に貧血を認める(ただしエビデンスとして確認できず...😂)
  • サッケード(saccade)とは高速な眼球運動のことで,物体を網膜中心窩で捉えることに寄与(適切なフィードバックがあるため視界はブレない)
  • 近代哲学の祖であるドイツのカント(1724-1804)は夏も冬も朝4時55分に起きていた(どうでもいいことですが投稿者も全く同じだったので...😅)

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-05

冠状静脈洞口部閉鎖 CSOA

  • 冠状静脈洞口部閉鎖(coronary sinus orifice atresia: CSOA)は,冠静脈洞(coronary sinus: CS)が右房に開口しない状態である.冠静脈血流のうっ滞を回避する必要があるためCSOAが単独で存在することは稀
  • 通常はunroofed coronary sinus(URCS)や左上大静脈遺残(persistent left superior vena cava: PLSVC),心房中隔欠損症(atrial septal defect: ASD),冠動静脈瘻など代替となる静脈還流路を合併する.
  • 冠動脈の血流量は心拍出量の約5%であり,PLSVC非合併例ではCSのシャント血流は臨床的にあまり問題にならない.またPLSVC,ASD,卵円孔開存など他の合併奇形がなければシャント修復も必要ではない.


💁 冠静脈洞に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-04

氷水保存してないですが…

📞 電話中継
  • 医師 「ID **の方の残血で追加をお願いします」
  • 技師 「わかりました.項目は何ですか?」
  • 医師 「BNPです」
  • 技師 「検体を冷蔵保存していませんが...」
  • 医師 「別に構いませんよ」
  • 技師 「NT-proBNPではダメですか?」
  • 医師 「腎機能が悪いので無理です」
  • 技師 「でも,値が...」
  • 医師 「コメントに常温保存2時間後測定とでも加えておいてください」
  • 技師 「・・・」

💀 BNPは基本冷蔵保存
  • BNPは血中プロテアーゼによる分解を受け易いため,EDTAなどで処理された検体を採血後速やかに冷蔵保存(当院では氷水保存)する必要があります.
  • プロテアーゼ(protease)とは,蛋白質をポリペプチドやアミノ酸へ分解するときの触媒酵素の総称で,ペプチド配列を認識(ただし一部は非選択性)
  • EDTA(エチレンジアミン四酢酸:ethylenediaminetetraacetic acid)はCaイオンとキレート結合し除去(凝固抑制)+プロテアーゼ活性抑制効果あり
  • しかし下図のように減弱することを理解すれば凡その目安にはなると思います.採血をやり直す患者さん負担と天秤にかけて判断すればいいと思います.



BNP値の変化(● 室温保存,○ 4℃保存)
🉐 BNPに関連する過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 川崎)

2024-05-03

サイトカイン放出症候群 Cytokine release syndrome (CRS)

  • 概略 抗体医薬品に関連して生じた大量のサイトカインによる生体への過剰な反応
  • 機序 炎症性サイトカインの増加,Tリンパ球・マクロファージ・内皮細胞の活性化
  • 時期 投与翌日~14日(~数週間)に発生(ただし残存腫瘍や投与医薬品で異なる)
  • 重症 サイトカインストームあるいはサイトカインストーム症候群と呼ばれている
  • 症状 発熱・悪心・悪寒・筋肉痛から,呼吸困難・ショック・多臓器不全・DICほか
  • 治療 アセトアミノフェン,トシリズマブ(IL-6抑制),副腎皮質ステロイドなど


- Day 45にサイトカイン放出症候群を生じた肺腺癌の72歳男性 -

💁 サイトカインに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-02

今週の一枚 🎯

右心カテーテルで意外な疾患が判明した症例

👿 カテ後に身体所見を確認

👾 臨床現場
  • 本例はⅡ音の肺動脈成分が亢進していたため肺高血圧が疑われた.しかし右心カテーテル検査で肺高血圧はなかった.右室の内圧は想定外のdip and plateauを示していた.
  • その後に身体所見を見直すと収縮性心膜炎の軽症〜中等症に合致する所見(重症度分類).明瞭なⅡ音の肺動脈成分は,肺動脈弁領域に限局したノック音であったようだ.
  • いつもながら収縮性心膜炎は一筋縄ではいかない.本例は利尿薬等で安定したため心膜剥離は未施行.ちなみに本例には心尖の収縮期陥凹(ブロードベント徴候)はなし.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-05-01

オーソライズド・ジェネリック医薬品(AG: Authorized Generic)

  • ジェネリック医薬品(GE:Generic DrugsまたはGenerics)は先発医薬品と同じ有効成分で品質・効果・安全性が同等な薬剤
  • AGとは先発医薬品と外観・成分・添加物などが同一のGEのこと(我が国では2013年にAG制度を導入/特許期間中にも上市可能)
  • GEへの潜在的なネガティブイメージに対応することはできるが,すべてのジェネリック医薬品にAGが対応しているわけではない

💊 オーソライズド・ジェネリック医薬品(AG)の分類
  • AG-1 ➜ 同一の原料・添加物・製法・製造工場・製造技術を用いて製造(ラベル変更のみで,生物学的同等性試験は不要)
  • AG-2 ➜ 発医薬品と同じ原料・添加物・製法であるが,製造工場・製造技術が異なる(生物学的同等性試験の承認が必要)
  • AG-3 ➜ 発医薬品と添加物・製法は同じであるが,原料・製造工場・製造技術は違う(生物学的同等性試験の承認が必要)



(投稿者 川崎)