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2024-05-05

冠状静脈洞口部閉鎖 CSOA

  • 冠状静脈洞口部閉鎖(coronary sinus orifice atresia: CSOA)は,冠静脈洞(coronary sinus: CS)が右房に開口しない状態である.冠静脈血流のうっ滞を回避する必要があるためCSOAが単独で存在することは稀
  • 通常はunroofed coronary sinus(URCS)や左上大静脈遺残(persistent left superior vena cava: PLSVC),心房中隔欠損症(atrial septal defect: ASD),冠動静脈瘻など代替となる静脈還流路を合併する.
  • 冠動脈の血流量は心拍出量の約5%であり,PLSVC非合併例ではCSのシャント血流は臨床的にあまり問題にならない.またPLSVC,ASD,卵円孔開存など他の合併奇形がなければシャント修復も必要ではない.


💁 冠静脈洞に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2026-03-07

成人 PAPVR 👥 新生児 TAPVR

  • 成人を対象とする循環器内科ではPAPVR(partial anomalous pulmonary venous return;部分肺静脈還流異常症)を稀に経験します.特に心エコー図で冠静脈洞の拡大を認めた時に思い出したい3疾患の一つです.他はPLSVC(Persistent left superior vena cava;左上大静脈遺残)とCS-ASD([unroofed] coronary sinus atrial septal defect;冠静脈洞型心房中隔欠損症)です.
  • 先日,いつも人工心肺を対応しているCEさんに,小児心臓外科領域ではTAPVR(total anomalous pulmonary venous return;総肺静脈還流異常)と言えば,新生児緊急手術の代表疾患(ほぼ唯一?)だということを教えてもらいました.PAPVRは日常臨床で口にする略語ですが,TAPVRと聞いてあまりピンと来ませんでした.少し反省を込めて本ブログでまとめておきます.

💜 総肺静脈還流異常[症] PAPVR
  • 全肺静脈が左心房以外の体静脈系に異常に還流する先天性心疾患
  • TAPVRの別名はTAPVDまたはTAPVC (TAPV drainage or connection)
  • 全先天性心疾患の1.5~3%の発生頻度で男女比は1.7~2.1:1程度
  • Darling分類:肺静脈還流が上心臓型~50%,傍心臓型~30%(下図)
  • 新生児の多呼吸で100%酸素でも酸素飽和度が上昇しない時に疑う
  • 緊急外科手術が唯一の治療法(肺静脈低形成や術後再狭窄は不良)
  • ただし下心臓型TAPVRでは静脈管ステント留置なども可能(下図)


- TAPVR 総肺静脈還流異常の分類 -

- TAPVRに対し静脈管ステント留置を行った日齢7の新生児 -

(投稿者 川崎)

2023-11-28

心電図マイスターへの道 ③

上室期外収縮 PAC の起源
  • P波:V1陰性=右房起源:下壁誘導が上方なら上大静脈,下方なら冠静脈洞
  • P波:V1陽性=左房起源:I&L誘導が陽性なら右肺静脈(下壁誘導が上方なら上肺静脈,下方なら下肺静脈),I&L誘導が陰性なら左肺静脈(下壁誘導が上方なら上肺静脈,下方なら下肺静脈)

心室期外収縮 PVC の起源
  • 右脚ブロック(左室起源):I・L・5・6陽性+下壁陽性なら左室弁輪前壁・流出路,I・L・5・6陽性+下壁陰性なら左室弁輪後壁・下壁,I・L・5・6陰性+下壁陽性なら左室前壁心尖近傍,I・L・5・6陰性+下壁陰性なら左室心尖部
  • 左脚ブロック(右室起源):I・L・5・6陽性+下壁陽性なら右室弁輪前壁・流出路,I・L・5・6陽性+下壁陰性なら右室弁輪後壁・下壁,I・L・5・6陰性+下壁陽性なら右室前壁心尖近傍,I・L・5・6陰性+下壁陰性なら右室心尖部
  • 右室起源の大まかなルール:下壁誘導ですべて陽性=流出路,すべて陰性=心尖部,ばらばら=中隔

ペーシングの位置
  • V1でQSなら右室ペーシング,V1でRsなら両室ペーシング
  • 右室心尖部なら胸部誘導は基本,negative concordance (例えば全てQS)で上方軸
  • 下壁誘導で全て陽性なら右室上部ペーシング,すべて陰性なら右室下壁あるいは心尖部ペーシング,一定しなければ中隔ペーシング
  • 左室心尖部のペーシングなら,V1が陽性で,V2-6はすべて陰性(例:QS).ただし両心室の心尖部は近いため,心拡大や回転によって,右室心尖部ペーシングでも同様の所見になり得る.

2枝ブロック
  • 右脚ブロック+左軸偏位:右脚と左脚前枝のブロック
  • 右脚ブロック+右軸偏位:右脚と左脚後枝のブロック
  • (広義には左脚ブロック:左脚前枝と左脚後枝のブロック)

3枝ブロック
  • 右脚ブロック+左軸偏位+1度房室ブロック
  • 右脚ブロック+右軸偏位+1度房室ブロック
  • 左脚ブロック+1度房室ブロック

Lown分類
  • Grade 0=心室性期外収縮なし,Grade 1=散発性(<30個/時間),Grade 2=散発性(>30個/時間),Grade 3=多形性(多源性),Grade 4a=2連発,Grade 4b=3連発,Grade 5=RonT
  • 急性心筋梗塞症例で心室細動への移行率から作成された分類であることに注意が必要

ケント束の追記
  • デルタ波が下壁誘導で陰性+II誘導でQSなら心外膜(冠静脈洞 CSや中心静脈 MCV)のケント束
  • C型WPWなら前中隔,中中隔,後中隔に分類できる.Δ波から1mmの極性で判断:目安は下壁誘導ですべて陽性なら前中隔,すべて陰性なら後中隔,不定なら中中隔
  • Ⅲ誘導でR波高さは前中隔>中中隔>後中隔の順に大きい
  • Jemes線維は心房から房室結節下部を連結,Mahaim線維はatrio-fascicular/ventricular pathway,nodo-fascicular/ventricular pathway,fasciculo-ventricular pathwayの総称
  • デルタ波が目立たないなら左室側壁(伝わるまでに時間を要しその間に通常伝導が生じる)のケント束,マハイム線維,Fasciculoventricular pathway(purkinje組織から隣接する心筋に接続している副伝導路)
  • 束枝—心室副伝導路(Fasciculo-ventricular pathway)ではWPW patternを呈するが基本的に頻拍は来さないため治療対象ではない

心室頻拍 VT
  • 4特徴:①房室解離,②すべての胸部誘導で陰性波(negative concordant:自験例),③胸部誘導でRS(またはrS)波形がありR開始~S谷≧100ms,④特徴的な波形(RBBBならV1で前半のRが大きい(taller left rabit ear)+V6でR<S,LBBBならRS波の下行(前半)部分にノッチ
  • 左軸偏位やQRS幅>160ms,左脚ブロック+右軸偏位,RBBBでV1で単相性,aVRでQ波なし,なども心室頻拍を示唆
  • wide QRS tachycardiaの鑑別はVT,SVT,偽性心室調律


💁 心電図マイスターに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-02-22

マーシャル静脈へのエタノール注入

  • 概略 AFの肺静脈隔離時に追加するケミカルアブレーション
  • 背景 マーシャル静脈には神経支配がありAFトリガーになる
  • 対象 初回アブレーションの持続性心房細動 AF 患者350名
  • 方法 アブレーション単独とエタノール併用を無作為に割当
  • 評価 術後6ヵ月と12ヵ月のAF or 30秒超の心房頻拍の有無
  • 手技 エタノール注入を試みた185名中155名に成功(83.7%)
  • 予後 不整脈無はエタノール49.2%,アブレーション単独38%
  • 有害 エタノール注入に関する有害事象に群間の有意差なし


Marshall静脈への化学的アブレーション法が有用であった持続性AF例

👽 おまけ
  • マーシャル静脈は左上大静脈の遺残で周囲にはマーシャル筋束が存在している
  • 同静脈は冠静脈洞から左房後側壁で分岐し左肺静脈と左心耳間の心外膜側を斜走
  • 成人の20~30%はマーシャル静脈が造影されない(一読をお薦め ➜ 月の裏側
  • 名前の由来は初報の英国の外科医 John Marshall (R Soc Lond 1850;140:133–170)
  • 現時点では保険外診療で倫理委員会への申請要+病院の自己負担あり(約5万)

Public Domain: マーシャル静脈は上図のoblique vein of the left atrium)

(投稿者 川崎)

2023-12-17

第136回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
4-17 心筋梗塞後のVT/VF stormに対してPurkinje systemのde-networkingが有効であった一例
  • 心筋梗塞後の VT/VF storm は重大な合併症である。Purkinje-related triggerを標的とするアブレーションの有効性が報告されてきたが,新たな手法としてPurkinje de-networkingが注目されている。VT中に先行するPurkinje電位を認め,左脚後枝末梢及び前枝領域のde-networkingを図りnon-inducibleで終了したが再発。再治療時にleft septal fascicle領域のde-networkingを追加することでstormからの離脱と救命に成功。

5-21 血行再建を施行された夏型・冬型心筋梗塞の背景因子・予後比較
  • 夏型MIはplaque erosion,冬型MIはplaque ruptureが多いことが示唆されている。しかし今回の単施設での検討では,夏型(6~8月)MIに比して冬型(12~2月)MIでは STEMI患者やLMT病変の割合が多かったが,予後に差は認めなかった。

6-9 Marshall静脈へエタノールアブレーションが奏効した僧帽弁輪旋回型心房頻拍の一例
  • 僧帽弁輪旋回型心房頻拍と診断し,僧帽弁輪峡部に対する線状焼灼およびMarshall静脈(VOM)の走行に沿って内膜を焼灼中に心房頻拍の停止を得た。しかし,4ヶ月後に心房頻拍が再発したため再CAを行った。前回と同じ VOM を介した僧帽弁輪旋回型心房頻拍と診断された。心内膜側からの通電では永続的なブロックが難しいと判断し,エタノールアブレーションを行った。エタノールをVOMに注入したところ頻拍周期が延長を伴って停止し,僧帽弁輪峡部のブロックを得た。(補足)マーシャル静脈は冠静脈洞から分岐し左肺静脈と左心耳の間の心外膜側を斜走する静脈で,心房細動の発生や維持に関与することがある。

7-7 金属アレルギーを有する労作性狭心症患者に対して,proBIO coatingを有するOrsiro stentで治療し得た1例
  • RCAに高度狭窄病変を認めたが,金属アレルギーの申告があったため,薬物治療を優先する方針とした。後日実施した金属アレルギー検査ではニッケルで陽性,ステントではXienceで陽性が確認された。最終的に本症例では金属イオン溶出を抑制し得るproBIO coatingを有するOrsiroステントで治療を実施した。(補足)このproBIO coatingはステントの金属表面と周辺血管組織との間に起こる炎症の一因とされる金属イオンの溶出を抑制することで再狭窄を減らしているそうです。

8-6 Wolf-Ohtsuka法術後に両心房血栓を認めた一例
  • ヘパリンの持続投与を開始したが,腫瘤のサイズに変化はなく,右房内血栓も縮小しなかったため,開心術による摘除を行った。摘除した腫瘤の病理所見は血栓であった。術後,ヘパリン持続点滴,ワルファリン内服を開始したが,血栓の再発を認めた。ワルファリンのコントロールを強化したところ,血栓は消失した。Wolf-Ohtsuka 法術後に血栓を認めることは稀である。(補足)ウルフ‐オオツカ法は胸腔鏡下左心耳閉鎖術で5mmから10mm程度の穴を胸の壁に4ヶ所開けるだけで傷もほとんど目立たず,手術に用いられる自動吻合器代も6万円とWatchmanに比べるとかなり安価(引用

8-25 最北端の非専門医によるVMTスコアを用いた心不全管理の有用性(市立稚内病院)
  • 常勤の循環器内科医では対応しきれず,非専門医が大半の心不全患者を管理しているため,非専門医でも心不全の診断・治療方針の決定ができる指標が必要である。そこで村山,岩野らが考案した心エコー図のドプラ機能を使うことなくB modeのみで左室充満圧を推定できるVMTスコアを活用し心不全の診断・治療方針の決定に寄与している。(補足)VMT(visually assessed time difference between the mitral valve and tricuspid valve opening)スコアは断層心エコー法を用いて評価した左右の房室弁開放時相差の視覚的評価に基づいたスコアリング法。

👻 当院からの発表
  • 3-1 肥大型心筋症の予後とⅣ音(循環器内科 川﨑達也ほか)
  • 3-29 心不全患者のリスク層別化:各種負荷に対する頸静脈所見(循環器内科 野口理希ほか)
  • 7-14 身体診察が特徴的であったトランスサイレチン型心アミロイドーシスの1例(循環器内科 平野達大ほか)
  • 8-4 身体所見を契機に診断に至った静脈洞型心房中隔欠損症の1例(循環器内科 大江彩佳ほか)

すべて英語論文化(2つは掲載済,1つは投稿中,もう1つは投稿待)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-10-27

心臓内の正常異型(normal variant)の部位

  1. キアリ網(Chiari network)➜ 胎生期の遺残構造物で下大静脈付近に付着し右房内を浮遊
  2. ユースタキオ(ユースタキウス)弁(Eustachian valve)➜ 胎生期の遺残構造物で下大静脈開口部付近に付着
  3. テベシゥス弁(Thebesian or Thebesius valve)➜ 胎生期の遺残構造物で冠静脈洞開口部付近に付着
  4. 分界稜(Crista terminalis)➜ 心外膜面の分界溝に対応する心内膜面の構造物で右房の天井に存在


🚗 下(足側)から順にETCって並べると覚えやすいかも... 😅

(投稿者 川崎)

2024-01-13

バッハマン束 Bachmann’s bundle

  • 心臓の刺激伝導系の一部で,洞房結節から延びた3本の結節間路の一つである前結節間路から枝分かれして左心房へと向かう(上図)
  • 左右の心房間を交通する筋束にはバッハマン束(79%)以外に冠静脈洞や卵円孔(稀)があり,洞調律時の心房間興奮伝搬の一部を担う
  • Purkinje束ほど明確な組織ではなくバッハマン束の伝導障害を起こすこともあるが,体表心電図で左房拡大との鑑別は難しい
  • ドイツ系アメリカ人の医師 Jean George Bachmann (1877-1959)(下図) によって発見された(Am J Physiol 1916;41:309-20


💁 刺激伝導系に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-07-13

第139回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
2-12 クレアチニンキナーゼ欠損症を合併したST上昇型急性心筋梗塞の一例
  • 右冠動脈(RCA)#2 閉塞を認め,経皮的冠動脈形成術を施行した(total ischemic time 144分)。術後,高感度トロポニンI(hs-TnI)の上昇は認めたが,クレアチニンキナーゼ(CK)の上昇は認めなかった(peak CK[IU/L]/CK-MB[IU/L]/hs-TnI[pg/mL])=169/5/16863)。

2-16 自己免疫性心筋症の関与が示唆された虚血性心筋症の一例
  • 心臓MRI検査では冠血流支配領域に一致しない壁運動低下を認めた。さらに血液検査や心筋病理において,自己免疫性心筋症を疑う所見が得られ,至適薬物療法にも関わらず心機能は進行性に低下を認めた。

7-31 irAEによる洞不全症候群に対して心房リードレスペースメーカ植え込みを行った1例
  • ペースメーカ感染を認め全身麻酔下に経皮的リード抜去術を施行,全システム抜去術に成功した。元々のペースメーカ設定はAAIR⇔DDDR,60ppmであったが,累積心室ペーシング率が1%未満であったため心房リードレスペースメーカ(Abbott社製Aveir AR)の植込みを選択,右心耳基部に留置しAAI60ppmの設定とし た。

8-27 シトステロール血症の病原性変異の網羅的文献検索と早発性冠動脈硬化症
  • シトステロール血症はABCG5/G8遺伝子の病原性変異により発症する疾患で血中シトステロール高値に加えLDL-C高値,アキレス腱肥厚を伴い,家族性高コレステロール血症との鑑別を要する。


👻 当院からの発表
  • 2-10 冠動脈ステントで誘発されたコーニス症候群の1例(循環器内科 角本拓也ほか)
  • 4-16 心電図変化が気胸部位の推定に有用であった1例(循環器内科 江上 晟ほか)
  • 8-24 シンプル頚静脈©:負荷頚静脈法の学習アプリ(循環器内科 川﨑達也ほか)

江上先生は優秀賞ゲット & すべて英語論文として発表前に出版 👏

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)