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2025-08-12

TRACP-5b(トラップ ファイブ ビー)

  • 略語 tartrate-resistant acid phosphatase(骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)の略
  • 分類 TRACPのうち骨由来のアイソザイム成分は 5a(マクロファージ)と 5b(破骨細胞)
  • 実際 血清0.5mlを要し2~4日で判明(目安:男性170~590 mU/dL,女性120~420 mU/dL)
  • 意義 破骨細胞による骨吸収で血中に放出されるため破骨細胞の数や骨吸収活性などを反映
  • 特徴 他指標と比べ血清であるため腎機能の影響を受けにくく日内変動や食事による影響も小
  • 適応 代謝性骨疾患および骨転移(肺癌,乳癌,前立腺癌に限る)の診断補助(判断料144点)
  • 再検 6月以内に1回に限り算定(治療方針を変更した際には変更後6月以内に1回に限り算定)

参考)WEB総合検査案内,他

 
(投稿者 川崎)

2025-06-21

前心不全に対する心保護薬

腫瘍内科から「前心不全に対する心保護薬」について相談を受ける機会が増加してきました.癌治療の進歩にエビデンスが追い付いていない領域ですが,ガイドラインの関連記載をアップしておきます.

📗 日本臨床腫瘍学会 Oncocardiology ガイドライン - 総説

📙 日本循環器学会/日本心不全学会 心不全診療ガイドライン

💁 化学療法に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-27

キャノンボール転移 Cannonball metastases

  • 両肺に境界明瞭で大きく丸い外観を呈した転移形態
  • 肺の豊富な血管床では腫瘍の塞栓が生じやすいため
  • 肺転移が著しく進行するとしばしば原発が診断困難
  • 診断時には病気は進行し治癒不能・予後不良が多い
  • 腎細胞癌はキャノンボール転移の最多の原因の一つ
  • 他は絨毛癌や黒色腫,精巣腫瘍,骨肉腫,甲状腺癌


- 急速に進行した縦隔絨毛癌(矢印)の18歳男性 -

🎾 おまけ
  • AIによるCannonballの概要 ➜「キャノンボール」にはいくつかの意味があり,具体的には,球形の砲弾・高速で威力のあるテニスのサーブ・特急列車・非公式の自動車レースなどを指します.また抱え型飛び込みや無駄な時間を使ったりする状況を表すスラングとしても使われます.
  • 個人的には『キャノンボール』(英題:The Cannonball run)という,市販車でどれだけ速くアメリカを横断できるかを競う非公認レースの映画を思い出します(1981年公開:公式トレーラー).なお当院で経験した症例の原発は,剖検で下肢の血管肉腫であることが判明しました.

👉 転移に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-24

終末期予後予測:PaPスコア & PPI

PaPスコア(Palliative Prognosis Score:計算ページ
  • 月単位の中期的な生命予後を予測するためのスケール(客観性にやや欠ける)
  • イタリアの医師 Pirovano らが開発(J Pain Symptom Manage 1999;17:231-9
  • 臨床予後、活動・症状、白血球(多い=悪)、リンパ球(低%=悪)から算出
  • 判断の目安は9点以上を21日以下(週単位)、5.5点以下を30日以上(月単位)

PPI(Palliative Prognostic Index:計算ページ
  • 日本で開発された短期的な予後(週単位)を予測する指標で血液検査が不要
  • 聖隷ホスピスの Morita らによって報告(Support Care Cancer 1999;7:128-33
  • 経口摂取量(TPN=0点)、浮腫、安静時呼吸困難、せん妄の合計得点から算出
  • 6.5点以上なら21日以下(週単位)、3.5点以下なら42日以上(月単位)と判断

💁 緩和 に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右下から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-04-16

クールボアジェ徴候  Courvoisier's sign

  • 無痛性の胆嚢腫大を体表面から触知する状態
  • 胆管がんや膵臓がん,乳頭部がんなどで出現
  • 発見はスイスの外科医 Courvoisier (1843–1918)
  • Courvoisierの発音(フランス語)は コチラ

膵癌によるクールボアジェ徴候
StatPearls; Contributed by S Bhimji, MD)

(投稿者 川崎)

2024-12-12

今週の一枚 🎯

心不全でフォロー中の男性(他科でホルモン治療中)


(投稿者 川崎)

2024-12-11

Huヒュー Yoヨー Riリー抗体 (Anti-Hu, Yo, Ri)

  • 概略 いずれも神経細胞抗原を認識する特異的な自己抗体である
  • 意義 傍腫瘍性神経症候群を疑ったときに測定(血清または髄液)
  • 背景 同症候群の60%以上では神経症状出現時に腫瘍は未発見!
  • 類似 他は抗CV2/CRMP-5抗体,抗Ma2抗体,抗amphiphysin抗体
  • 対応 傍腫瘍性ニューロパチーを疑い原発巣を検索してその治療



😐 おまけ
  • 抗体の名前がユニークです(初めて聞いた時はすべて中国の方が発見したの?と思いました).どうやら初めて報告された患者さんの名前(初めの二文字)に由来しているようです(例:HuはHullさん,YoはYoungさん).
  • 傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurologic syndrome: PNS)に対する特異的自己抗体は2種類の命名法があるそうです.1つは前述の名前で,もう1つは免疫組織学的染色の抗体(例:ANNA=抗核神経抗体).(参考

(投稿者 川崎)

2024-09-26

今週の一枚 🎯 を予想しよう

数日前より大きなげっぷをするようになった症例:どんな画像?



(投稿者 川崎)

2024-08-31

2ヒット仮説 Two-hit hypothesis

  • ほとんどの腫瘍抑制遺伝子は表現型の変化を引き起こすため,がん発生には突然変異などで両方の対立遺伝子が不活性化される必要があるという仮説.
  • 米国のがん専門医 Alfred George Knudson, Jr.(1922–2016)が1971年に提唱()したため,Knudson hypothesis(クヌードソン仮説)とも呼ばれる.
  • 最近ではがん以外にも多くの疾患で2ヒット仮説の関与が疑われています(例えば拡張型心筋症や周産期心筋症など:Circulation 2021;143:1852-62


(投稿者 川崎)

2024-05-03

サイトカイン放出症候群 Cytokine release syndrome (CRS)

  • 概略 抗体医薬品に関連して生じた大量のサイトカインによる生体への過剰な反応
  • 機序 炎症性サイトカインの増加,Tリンパ球・マクロファージ・内皮細胞の活性化
  • 時期 投与翌日~14日(~数週間)に発生(ただし残存腫瘍や投与医薬品で異なる)
  • 重症 サイトカインストームあるいはサイトカインストーム症候群と呼ばれている
  • 症状 発熱・悪心・悪寒・筋肉痛から,呼吸困難・ショック・多臓器不全・DICほか
  • 治療 アセトアミノフェン,トシリズマブ(IL-6抑制),副腎皮質ステロイドなど


- Day 45にサイトカイン放出症候群を生じた肺腺癌の72歳男性 -

💁 サイトカインに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-11-03

Winking owl sign 椎弓根消失像

  • 脊椎単純X線の正面像で椎弓根陰影が欠損した状態
  • 由来は瞬き (wink) したフクロウ (owl) に似るため
  • 別名は pedicle sign(pedicle=椎弓根,pédikəl)
  • 転移性の脊椎腫瘍で出現しやすい所見として有名
  • ただし感染症(結核など)や先天的低形成でも有

L1(右図中央)の右椎弓根陰影が不明瞭化

(投稿者 川崎)

2023-05-11

今週の一枚 🎯

他科で加療中の担癌症例(胸痛なし)



(投稿者 川崎)

2023-03-27

デスモイド腫瘍 Desmoid tumor

  • WHO分類で良性と悪性の中間に分類される軟部腫瘍
  • 局所的浸潤性は強いが遠隔転移を起こすことはない
  • 命名はギリシア語の”desmos”(腱のような)に由来
  • 筋線維芽細胞が主体である黄白色で硬い外観を示す
  • 好発は15~60歳(最多は40代)で女性は男性の2~3倍
  • 本邦での診断総数は2018年に173名,2019年に156名
  • 全体の90%前後が孤発性で四肢・体幹に多く見られる
  • 家族性腺腫性ポリポーシス合併例は大半が腹腔内発生
  • 治療は広範切除(無症状なら慎重な経過観察も可能)


様々なデスモイド腫瘍 (A/B, 肩領域;C,腹腔内;D,右傍脊柱筋群)

💁 軟部腫瘍に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-03-08

ドセタキセル(Docetaxel)と浮腫

👾 ドセタキセル(Docetaxel)
  • 概略 タキサン系抗がん剤で微小管に結合し有糸分裂を阻害(商品名:タキソテール他)
  • 適応 乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣・子宮体癌、食道癌、前立腺癌(DI

👿 注意点
  • 抗がん剤であるため脱毛・血球減少・嘔吐・アレルギーなどが生じ得るが,ドセタキセルには体液貯留という副作用あり.これはタキサン系薬剤による血管透過性の亢進による特徴的な有害事象で,四肢だけでなく体幹にも出現し胸水や腹水貯留を引き起こすこともある(引用).

👾 癌治療後の浮腫:リンパ節郭清後 and/orドセタキセル関連
  • 対象 5年内にドセタキセルの投与された乳がん43例
  • 除外 心機能障害例,肝機能障害例,深部静脈血栓例
  • 頻度 30.2%に下肢浮腫,投与4回目が最多(46.2%)


💁 乳がんに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-12-27

リンパ節腫脹の鑑別:CHICAGO

👽リンパ節腫脹を生じる一般的な原因の頭字語
Cancers(がん) 
  • 血液系悪性腫瘍:ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性・慢性白血病、ワルデンストレーム・マクログロブリン血症、多発性骨髄腫(稀)、全身性肥満細胞症
  • 転移性 "固形 "腫瘍:乳癌、肺癌、腎細胞癌、前立腺癌、その他

Hypersensitivity syndromes(過敏症症候群)
  • 血清病
  • 薬剤感受性:ジフェニルヒダントイン、カルバマゼピン、プリミドン、金、アロプリノール、インドメタシン、スルホンアミド、その他
  • シリコン反応
  • ワクチン関連
  • 移植片対宿主病

Infections(感染症)
  • ウイルス性:伝染性単核球症(Epstein-Barrウイルス)、サイトメガロウイルス、伝染性肝炎、ワクチン後リンパ節炎、アデノウイルス、帯状疱疹、HIV/AIDS、ヒトT-リンパトロピックウイルス1型
  • 細菌性:皮膚感染症(ブドウ球菌、連鎖球菌)、ネコひっかき病、甲状腺腫、メリオイデス症、結核、非定型抗酸菌症、原発性および続発性梅毒
  • クラミジア:性病性リンパ肉芽腫
  • 原虫性:トキソプラズマ症
  • 真菌症:ヒストプラスマ症、コクシジオイデス真菌症
  • リケッチア:ツツガムシ病
  • 寄生虫症:フィラリア症

Connective tissue diseases(結合組織病)
  • 関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、混合結合組織病、シェーグレン症候群

Atypical lymphoproliferative disorders(非定型リンパ増殖性疾患)
  • 血管毛包性(巨大)リンパ節過形成(キャッスルマン病)、異プロテイン血症を伴う血管免疫芽球性リンパ節症、血管中心性免疫増殖性疾患、リンパ腫様肉芽腫症、ヴェゲナー肉芽腫症

Granulomatous disorders(肉芽腫性疾患)
  • 結核、ヒストプラスマ症、マイコバクテリア感染症、クリプトコッカス、珪肺症、ベリリウム症、ネコひっかき病

Other unusual causes of lymphadenopathy(その他のリンパ節腫脹の異常な原因)
  • リンパ節の炎症性偽腫瘍、組織球性壊死性リンパ節炎(菊池リンパ節炎)、大量のリンパ節症を伴う洞組織球症(Rosai-Dorfman病)、洞の血管変化、胚中心部の進行性変化


😎 独り言
  • CHICAGOとうまくまとまっているけど,無理して覚えてもいつも使う環境でなければすぐに忘れます.もっとも毎日鑑別する環境なら覚えなくても勝手に身につきます.こういう語呂って時々見直して頭の整理をするのがいいのかな〜と思います.あとどうしても診断がつかない時の網羅的検索用 😙
  • 他にもALL AGES (age, location, length of time present, associated signs and symptoms, generalized lymphadenopathy, extranodal associations, splenomegaly and fever/年齢、部位、発症期間、関連徴候・症状、全身リンパ節腫脹、節外関連、脾臓腫脹、発熱)などもあります.

💁 語呂合わせに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-12-07

もしバナゲーム™ Go Wish Game™

  • 終末期に関する対話を促進する目的で開発された Go Wish Game™ の日本語版
  • Go Wish Game™は1999年に米国医師会を中心とした全米の調査()に基づく
  • 36枚のカード「どのようにケアして欲しいか」「自分にとって何が大事か」他
  • 一例:余命6カ月として5枚のカードを選び順位づけをしてその理由を話し合う
  • プレイを通じて参加者がAdvance Care Planning(ACP)を行う動機付けになる


一般社団法人iACP (アイ・エー・シー・ピー)が翻訳・制作・出版

💁 終末期に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-10-28

DWIBS ドゥイブス(背景抑制広範囲拡散強調画像)

  • DWIBS = Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background body signal suppression の略
  • 全身スクリーニングを目的として開発されたMRI撮影法(非造影)で検診分野などで活用されている
  • 検査時間も30分程と核医学より短く,DWIがあるためCTの形態診断に加えて腫瘍活性も判定可能
  • 東海大学の放射線科医であった高原太郎先生らによって開発された(Radiat Med 2004;22:275-82

中咽頭癌の頸部リンパ節転移の1例


(投稿者 川崎)

2022-10-18

トロアジェ徴候 Troisier's sign

  • 左鎖骨上のリンパ節(Virchow’s node)の腫脹で,腹腔内の悪性疾患(特に胃がん)を示唆する
  • 機序は腹腔リンパ液は胸管を介し左総頸動脈・鎖骨下動脈の合流部に注ぎ血液循環と混じるため
  • 由来は仏の病理学者 Troisier CE(1844-1919)の報告(Arch Gen Med 1889;1:129–38 & 297–309

消化器系腺癌の転移からトロアジェ徴候を示した1例

💁 癌の転移に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-11-04

B型肝炎ワクチン

  • 日本で2016年10月1日からB型肝炎ワクチン(HBワクチン)が遂に定期接種化
  • 世界初の実用がん予防ワクチンで多くの国で既に定期接種化(例外:イギリス)
  • 対象は2016年4月1日以降に誕生した0歳児で,定期接種は生後2,3,7~8ヵ月
  • HBキャリアの母親から生まれた児は 0,1,6カ月で接種を行う(下図を参照)
  • 対象外は自費(約6000円×3回)だが若者やリスク例は要考慮(効果は15年〜)


💁 ワクチンに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-10-04

リンパ節転移の新しい診断法: OSNA オスナー

  • OSNA=One-Step Nucleic acid Amplification=一つの工程で行う直接遺伝子増幅技術のこと
  • 確認:センチネル(見張り役)リンパ節=癌細胞が原発から遊離し最初に到達するリンパ節
  • 従来はセンチネルリンパ節生検(通常1から数個)の病理組織像から追加郭清の要否を決定
  • OSNA法では専用試薬でリンパ節を可溶化して,遠心分離後の上清から標的mRNAを検出する    
  • 専用の遺伝子増幅検出装置に遺伝子増幅試薬が自動で分注され高い簡便性を有す(下図参照)
  • 結果は標的mRNA量に応じてリンパ節転移を陰性(-)/ 陽性(+、++) などと定性判定
  • 大阪警察病院の病理医である辻本正彦先生らが開発した(Clin Cancer Res 2007;13:4807-16
  • 適応は画像診断でリンパ節転移が明らかでない乳癌,胃癌,大腸癌,非小細胞肺癌(2,400点)


OSNA オスナー 法の概略

(投稿者 川崎)