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2026-07-05

irAEアイアールエーイー:immune-related adverse events

  • 免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)は,免疫チェックポイント分子またはそのリガンドに結合し,免疫抑制シグナルの伝達を阻害することで抗腫瘍効果を示す.
  • 2014 年に抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるニボルマブが悪性黒色腫に対して承認されて以降,種々のICIが開発されたが,免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれる副作用を生じることがある.
  • 代表的な irAE は皮膚障害,腎機能障害,血液障害(血小板減少性紫斑病,溶血性貧血,赤芽球癆, 無顆粒球症),間質性肺炎,筋炎,ギランバレー症候群,脳髄膜炎,1型糖尿病,甲状腺機能障害



(投稿者 川崎)

2026-06-28

肺がん治療:トルバプタン

  • 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は,アルギニンバソプレシン(AVP)の分泌過剰により水利尿不全を惹起し低Na血症を呈する
  • SIADHの原因は,異所性のAVP産生腫瘍と下垂体後葉由来のAVP分泌亢進に分けられる.前者は84%が肺癌で,その内の94%が肺小細胞癌
  • 肺小細胞癌の7~39%にSIADHが合併する.また様々な方法で肺小細胞癌株を刺激すると,実際にAVP産生が増加することが確認されている


😑 独り言
  • 肺小細胞肺癌(SCLC)の治療にサムスカ(トルバプタン)と聞いて、一瞬ピンときませんでした。でもSIADHと言われて、成程と思いました。肺小細胞癌にSIADHを合併する機序としては,「腫瘍細胞からの異所性AVP産生」に加えて、「腫瘍に伴う胸腔内圧上昇や上大静脈の狭窄により左房還流量が減少し,圧受容体を介してAVP産生が促進」や「抗癌剤や脳転移によりAVP産生ニューロンが直接刺激される」などが考えられているようです(肺癌 2018;58:132-137).

(投稿者 川崎)

2026-06-16

メタロ・バランス Metallo-balance

👥 先日の外来で…
  • 患者さん 「こんど近所でメタロバランスします」
  • 担当医師 「メタロ…バランス…何ですかそれ?」
  • 患者さん 「血液でする癌健診みたいらしいです」
  • 看護師長 「そういえば**医院でもやってたわ」

💁 メタロ・バランス がんリスク検査
  • 血液中の亜鉛など17種の微量元素濃度を測定し、健常人とがん症例のデータから、統計学的手法を用いて現在がんであるリスクを評価
  • 早期がんリスクにも対応した新しいタイプの検査(認知症のリスクも可)。採血のみの簡便な検査で、事前準備も一般的な採血と同じ
  • 対応がん:男性6種類=大腸・胃・肺・すい臓・肝臓・前立腺、女性9種類=大腸・胃・肺・すい臓・肝臓・乳・子宮頸・子宮体・卵巣

(投稿者 川崎)

2026-06-14

SPIKES:悪い知らせの告知法

👀 SPIKES
  • がん告知・予後告知の場面で用いられる構造化コミュニケーション技法
  • 本プロトコルは6段階で構成されており(下表)、SPIKESはその頭文字
  • 米MDアンダーソンがんセンターのWalter Baileらが2000年に提唱(※)
  • 癌以外の予後不良の伝達・治療中止の説明・ICUでの家族面談にも応用
  • 医学教育(OSCE)でも使用され、患者満足と医師ストレス軽減で有効


(投稿者 川崎)

2026-05-16

アジュバント vs ネオアジュバント

  • アジュバント(adjuvant)とネオアジュバント(neo-adjuvant)を生成AI(ChatGPT)にまとめてもらいました。表および画像で作成してくださいと頼みました。ただしいつも通り”ChatGPT can make mistakes. Check important info.”です。

アジュバントとネオアジュバントの違い
比較項目 アジュバント療法
(Adjuvant Therapy)
ネオアジュバント療法
(Neoadjuvant Therapy)
治療の時期 🩺 診断
⬇
🔪 手術
⬇
💊 アジュバント療法
手術のあとに追加治療
🩺 診断
⬇
💊 ネオアジュバント療法
⬇
🔪 手術
手術の前に治療
主な目的 🎯
再発予防
画像では見えない
微小ながん細胞を減らす
📉
腫瘍縮小
手術しやすくする
臓器温存を目指す
期待される効果 📈
生存率向上
再発率低下
✂️
切除率向上
臓器温存の可能性UP
治療効果の評価 🔍
手術後なので
腫瘍を直接評価しにくい
🧪
画像・病理で
縮小効果を評価しやすい
注意点 ⚠️ 手術後で体力低下していることがある
⚠️ 治療効果を直接確認しにくい
⚠️ 治療中に病状進行する可能性
⚠️ 手術時期を逃す場合がある
代表例 🎗️ ➜ 💊
乳がん術後化学療法
🧫 ➜ 💊
大腸がん術後補助療法
💊 ➜ 🔪
食道がん術前化学療法
💊 ➜ 🎗️
乳がん術前化学療法
キーワード 術後補助療法
再発予防が中心
術前補助療法
腫瘍縮小が中心


(投稿者 川崎)

2026-04-04

HAD(入院関連機能障害)

  • HADはhospitalization-associated disabilityの略で、入院に関連して生じる機能障害のこと
  • 入院中の安静臥床を原因とする廃用症候群で、老年症候群(geriatric syndrome)のひとつ
  • 例1:心不全や癌で入院中の安静や不動で、ADL障害や身体機能低下/認知・精神機能低下
  • 例2:高齢者が肺炎で入院し抗菌薬の点滴で治癒したが、歩行に介助を要するようになった


- HAD を呈した患者と非 HAD の特徴 -
(HADリスク=痩せた高齢者で認知機能や立位バランスが悪い)

(投稿者 川崎)

2026-03-28

チャールソン併存疾患指数 Charlson Comorbidity Index

  • さまざまな併存疾患を持つ患者の死亡率(10年生存率)を予測するモデル
  • 米国の疫学などを研究する医師 Mary E. Charlson らが1987年に開発(※)
  • オリジナルは計19のカテゴリーを考慮(追試結果に基づいて何度か修正)
  • スコアがゼロの場合は併存疾患なく,スコアが高いほど予測死亡率が高い
  • 判断基準の一例:0=低い、1~2=中等度、3~4=高い、≧5=とても高い  
  • 医師にとっては原疾患をどの程度積極的に治療するか決定するのに役立つ

🍃 チャールソン併存疾患指数(の一例)
  • 1点 ➜ 心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管疾患、脳血管疾患、認知症、慢性肺疾患、リウマチ性疾患、消化性潰瘍、肝疾患(軽症の場合)、糖尿病(コントロールされている場合) 
  • 2点 ➜ 片麻痺または対麻痺、腎疾患、悪性腫瘍(局所性の場合)、糖尿病(コントロールされていない場合)、白血病、リンパ腫
  • 3点 ➜ 肝疾患(中等症/重症の場合)
  • 6個 ➜ エイズ、悪性腫瘍(転移性腫瘍の場合)
  • 追加ポイント ➜ 50~59歳 +1ポイント、60~69歳 +2ポイント、70~79歳 +3ポイント、80歳以上 +4ポイント


(投稿者 川崎)

2025-12-03

バゼックス症候群 Bazex syndrome

  • 先日,治療目的で当院に転院してきた患者さんがBazex症候群を患っておられました.初めて耳にする病態だったので調べてみました.

💫 バゼックス症候群
  • 悪性腫瘍に伴い四肢末端などに角化性紅斑を呈するデルマドローム
  • (デルマドローム=他の臓器疾患の存在を示唆する皮疹や皮膚疾患)
  • 由来はフランスの皮膚科医 A Bazex(Br J Dermatol 1980;103:301-6)
  • 鼻部・耳介・四肢末端部などから始まる乾癬様過角化性紅斑を呈す
  • 40歳以上の男性に多く,咽頭・喉頭・肺・食道・肺などの悪性腫瘍
  • 類似の病態はLeser-Trelat徴候や悪性黒色表皮腫,後天性魚鱗癬など
  • 機序は腫瘍関連物質へのアレルギー,交差反応,サイトカイン作用?
  • 皮疹の外用薬による治療は無効(悪性腫瘍の治療で皮疹は軽快する)


3月前から搔痒性皮疹が出現した77歳男性(その後に肺癌が判明)

(投稿者 川崎)

2025-11-09

免疫染色:CK7とCK20

  • 臓器毎に上皮細胞のサイトケラチン(cytokeratin;CK)は異なる
  • 特にがんではCK(主にCK7とCK20)の発現性で原発巣が推察可能
  • 例:大腸癌はCK7陰性+CK20陽性、肺腺癌はCK7陽性+CK20陰性
  • よって近年の病理では免疫組織化学(免疫染色)は欠かせない手法


鑑別診断の目安

CK7

陽性

陰性

CK20

陽性

尿路上皮癌

卵巣がん(粘液性)

膵癌

胆道癌

結腸がん

直腸がん


陰性

肺腺癌

乳がん

卵巣癌(漿液性)

甲状腺がん

扁平上皮癌

肝細胞癌

前立腺がん

淡明細胞型腎細胞がん

参考)医学書院、ほか

(投稿者 川崎)

2025-10-25

膵 腺房せんぼう 細胞癌 (Acinar cell carcinoma: ACC)

  • 膵臓の腺房細胞を発生母地とする稀な悪性膵外分泌腫瘍
  • 発生頻度は全膵腫瘍の1%程度(90%以上が膵管腺がん)
  • 男性に多く平均50~70代と膵管癌に比べやや若年に好発
  • 非特異的な症状が多く体重減少・腹痛・嘔気などがある
  • 膵管癌より柔らかく膵頭部に生じても黄疸を生じにくい
  • 発見時には腫瘍の径が大きく遠隔転移を伴う症例が多い
  • 切除不能なら薬物(専用治療はなく通常の膵がんに準ず)


📍 他の希少膵がん
  • 腺扁平上皮がん ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.7%で10万人当たり約0.1人
  • 粘液がん ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.4%で10万人当たり約0.07人の頻度
  • 髄様がん ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.001%で10万人当たり約0.001人未満
  • 退形成がん ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.2%で10万人当たり約0.02人
  • 充実性偽乳頭状腫瘍 ➜ 膵悪性腫瘍全体の約0.05%で10万人当たり約0.02人


(投稿者 川崎)

2025-08-12

TRACP-5b(トラップ ファイブ ビー)

  • 略語 tartrate-resistant acid phosphatase(骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)の略
  • 分類 TRACPのうち骨由来のアイソザイム成分は 5a(マクロファージ)と 5b(破骨細胞)
  • 実際 血清0.5mlを要し2~4日で判明(目安:男性170~590 mU/dL,女性120~420 mU/dL)
  • 意義 破骨細胞による骨吸収で血中に放出されるため破骨細胞の数や骨吸収活性などを反映
  • 特徴 他指標と比べ血清であるため腎機能の影響を受けにくく日内変動や食事による影響も小
  • 適応 代謝性骨疾患および骨転移(肺癌,乳癌,前立腺癌に限る)の診断補助(判断料144点)
  • 再検 6月以内に1回に限り算定(治療方針を変更した際には変更後6月以内に1回に限り算定)

参考)WEB総合検査案内,他

 
(投稿者 川崎)

2025-06-21

前心不全に対する心保護薬

腫瘍内科から「前心不全に対する心保護薬」について相談を受ける機会が増加してきました.癌治療の進歩にエビデンスが追い付いていない領域ですが,ガイドラインの関連記載をアップしておきます.

📗 日本臨床腫瘍学会 Oncocardiology ガイドライン - 総説

📙 日本循環器学会/日本心不全学会 心不全診療ガイドライン

💁 化学療法に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-27

キャノンボール転移 Cannonball metastases

  • 両肺に境界明瞭で大きく丸い外観を呈した転移形態
  • 肺の豊富な血管床では腫瘍の塞栓が生じやすいため
  • 肺転移が著しく進行するとしばしば原発が診断困難
  • 診断時には病気は進行し治癒不能・予後不良が多い
  • 腎細胞癌はキャノンボール転移の最多の原因の一つ
  • 他は絨毛癌や黒色腫,精巣腫瘍,骨肉腫,甲状腺癌


- 急速に進行した縦隔絨毛癌(矢印)の18歳男性 -

🎾 おまけ
  • AIによるCannonballの概要 ➜「キャノンボール」にはいくつかの意味があり,具体的には,球形の砲弾・高速で威力のあるテニスのサーブ・特急列車・非公式の自動車レースなどを指します.また抱え型飛び込みや無駄な時間を使ったりする状況を表すスラングとしても使われます.
  • 個人的には『キャノンボール』(英題:The Cannonball run)という,市販車でどれだけ速くアメリカを横断できるかを競う非公認レースの映画を思い出します(1981年公開:公式トレーラー).なお当院で経験した症例の原発は,剖検で下肢の血管肉腫であることが判明しました.

👉 転移に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-24

終末期予後予測:PaPスコア & PPI

PaPスコア(Palliative Prognosis Score:計算ページ)
  • 月単位の中期的な生命予後を予測するためのスケール(客観性にやや欠ける)
  • イタリアの医師 Pirovano らが開発(J Pain Symptom Manage 1999;17:231-9)
  • 臨床予後、活動・症状、白血球(多い=悪)、リンパ球(低%=悪)から算出
  • 判断の目安は9点以上を21日以下(週単位)、5.5点以下を30日以上(月単位)

PPI(Palliative Prognostic Index:計算ページ)
  • 日本で開発された短期的な予後(週単位)を予測する指標で血液検査が不要
  • 聖隷ホスピスの Morita らによって報告(Support Care Cancer 1999;7:128-33)
  • 経口摂取量(TPN=0点)、浮腫、安静時呼吸困難、せん妄の合計得点から算出
  • 6.5点以上なら21日以下(週単位)、3.5点以下なら42日以上(月単位)と判断

💁 緩和 に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右下から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-04-16

クールボアジェ徴候  Courvoisier's sign

  • 無痛性の胆嚢腫大を体表面から触知する状態
  • 胆管がんや膵臓がん,乳頭部がんなどで出現
  • 発見はスイスの外科医 Courvoisier (1843–1918)
  • Courvoisierの発音(フランス語)は コチラ へ

膵癌によるクールボアジェ徴候
(StatPearls; Contributed by S Bhimji, MD)

(投稿者 川崎)

2024-12-12

今週の一枚 🎯

心不全でフォロー中の男性(他科でホルモン治療中)


(投稿者 川崎)

2024-12-11

Huヒュー, Yoヨー, Riリー抗体 (Anti-Hu, Yo, Ri)

  • 概略 いずれも神経細胞抗原を認識する特異的な自己抗体である
  • 意義 傍腫瘍性神経症候群を疑ったときに測定(血清または髄液)
  • 背景 同症候群の60%以上では神経症状出現時に腫瘍は未発見!
  • 類似 他は抗CV2/CRMP-5抗体,抗Ma2抗体,抗amphiphysin抗体
  • 対応 傍腫瘍性ニューロパチーを疑い原発巣を検索してその治療



😐 おまけ
  • 抗体の名前がユニークです(初めて聞いた時はすべて中国の方が発見したの?と思いました).どうやら初めて報告された患者さんの名前(初めの二文字)に由来しているようです(例:HuはHullさん,YoはYoungさん).
  • 傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurologic syndrome: PNS)に対する特異的自己抗体は2種類の命名法があるそうです.1つは前述の名前で,もう1つは免疫組織学的染色の抗体(例:ANNA=抗核神経抗体).(参考)

(投稿者 川崎)

2024-09-26

今週の一枚 🎯 を予想しよう

数日前より大きなげっぷをするようになった症例:どんな画像?



(投稿者 川崎)

2024-08-31

2ヒット仮説 Two-hit hypothesis

  • ほとんどの腫瘍抑制遺伝子は表現型の変化を引き起こすため,がん発生には突然変異などで両方の対立遺伝子が不活性化される必要があるという仮説.
  • 米国のがん専門医 Alfred George Knudson, Jr.(1922–2016)が1971年に提唱(※)したため,Knudson hypothesis(クヌードソン仮説)とも呼ばれる.
  • 最近ではがん以外にも多くの疾患で2ヒット仮説の関与が疑われています(例えば拡張型心筋症や周産期心筋症など:Circulation 2021;143:1852-62)


(投稿者 川崎)

2024-05-03

サイトカイン放出症候群 Cytokine release syndrome (CRS)

  • 概略 抗体医薬品に関連して生じた大量のサイトカインによる生体への過剰な反応
  • 機序 炎症性サイトカインの増加,Tリンパ球・マクロファージ・内皮細胞の活性化
  • 時期 投与翌日~14日(~数週間)に発生(ただし残存腫瘍や投与医薬品で異なる)
  • 重症 サイトカインストームあるいはサイトカインストーム症候群と呼ばれている
  • 症状 発熱・悪心・悪寒・筋肉痛から,呼吸困難・ショック・多臓器不全・DICほか
  • 治療 アセトアミノフェン,トシリズマブ(IL-6抑制),副腎皮質ステロイドなど


- Day 45にサイトカイン放出症候群を生じた肺腺癌の72歳男性 -

💁 サイトカインに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)