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2024-06-04

劇症型溶血性レンサ球菌感染症 STSS: streptococcal toxic shock syndrome

  • 通常は小児に急性咽頭炎などを引き起こすA群溶連菌による重篤な病態の一つ
  • 主にA群溶血性レンサ球菌(S. pyogenes [ピオゲネス] /別名,化膿レンサ球菌)
  • STSSは子供から大人まで広範囲の年齢層に発症(特に30歳以上の大人に多い)
  • 免疫不全などの重篤な基礎疾患がなくても突然発病する例がある点に注意する
  • 初期の症状は四肢の疼痛・腫脹,筋肉痛,発熱・悪寒,血圧の低下,下痢など
  • 発症数十時間以内には軟部組織壊死,腎不全,ARDS,DIC,MOF,ショックへ
  • 診断は通常無菌部(血液、脳脊髄液、胸水、腹水など)から上記細菌の検出
  • 治療はPC系(+CLDM,免疫グロブリン),広範囲病巣(菌の生息部位)切除
  • 2023年の報告数は本邦で941人と統計以降の最多(本年も3/17で既に517人)
  • 今までは毎年100-200名が確認されて,約30%が死亡する致死率の高い感染症
  • 全数報告対象(5類感染症)で診断医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出

2023-06-15

今週の一枚 🎯

南アジアから帰国後に水溶性下痢が続く症例の便

💦 解説
  • 中央に円形のオーシスト(接合子嚢・成熟卵嚢子)
  • 赤痢アメーバEntamoeba histolytica)は認めず
  • 一般採血は正常(白血球数およびCRPは正常範囲内)
  • PCR検査でサイクロスポーラであることを確認した
  • 本例は1週間のST合剤の内服で症状は改善・消失した

💧 サイクロスポーラ症(Cyclosporiasis)
  • 原虫 Cyclospora cayetanensis で汚染された食品または水を介した糞口感染により発症する(潜伏期間は約1週間).
  • リスクは流行地域への渡航やAIDSのような細胞性免疫が低下した宿主で,ヒトからヒトへ直接的な伝播の可能性は低い.
  • 我が国では食品汚染に関するデータはない.診断は便中のオーシスト鏡検やDNA検出で,第1選択の治療はST合剤である.


👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2022-09-17

スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス Staphylococcus lugdunensis

👿 臨床現場
  • 発熱例で血液培養からグラム陽性が検出され S. lugdunensis と同定
  • 本例は最終的に大動脈弁の感染性心内膜炎(弁輪部膿瘍あり)と診断

👾 S. lugdunensis
  • グラム陽性球菌でコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase negative staphylococci: CNS)に分類される
  • 1988年に報告され,最初の菌株を分離したフランスの施設があるリヨンのラテン名 Lugdunum から命名
  • 皮膚常在で S. aureus(黄色ブドウ球菌)や S. epidermidis(皮膚ブドウ球菌)より弱毒と考えられていた
  • しかし S. lugdunensis の病原性は高く,近年は他のCNSとは区別され臨床的には S. aureus と同等に扱う


💁 感染性心内膜炎に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-01-01

恒例の元旦からグラム染色クイズ

下痢と血便で受診した中年男性の便グラム染色




(投稿者 川崎/臨床検査技術室)

2021-05-21

スコーン・ペック・ハム・スペース

👽 ピクニックではなくて細菌のグループ分けです
  • グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus: GPC)➜ SSCoNE(スコーン)
  • グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod: GNR)➜ PEK(ペック),HaM(ハム),SPACE(スペース)

SSCoNE(スコーン)
  1. Streptococcus(ストレプトコッカス レンサ球菌) 属
  2. Staphylococcus aureus(スタフィロコッカス アウレウス 黄色ブドウ球菌)
  3. Coagulase-Negative Staphylococcus コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)属
  4. Enterococcus (エンテロコッカス 腸球菌)属

PEK(ペック):腸内細菌で尿路感染症の3大起因菌
  1. Proteus mirabilis(プロテウス ミラビリス)
  2. Escherichia coli(エシュリキア コリ/大腸菌)​ 
  3. Klebsiella pneumoniae(クレブシエラ ニューモニエ/肺炎桿菌)​ 

HaM(ハム):小児の中耳炎や副鼻腔炎,成人の肺炎
  1. Haemophilus influenzae(ヘモフィルス インフルエンザ)
  2. Moraxella catarrhalis(モラクセラ カタラーリス)

SPACE(スペース):院内で発症する感染症の起因菌
  1. Serratia marcescens(セラチア マルセッセンス)
  2. Pseudomonas aeruginosa(シュードモナス エルギノーサ/緑膿菌)
  3. Acinetobacter baumannii(アシネトバクター バウマニ)
  4. Citrobacter freundii(シトロバクター フロインディ) 
  5. Enterobacter cloacae(エンテロバクター クロアカ)

 👾 おまけ 
  • 単純に記憶してもすぐに忘れます.でも実際の細菌をグラム染色で見ると覚えやすいかも.そんな時には「ゲーム🎮 グラム染色-30」を是非,ご利用ください.

(投稿者 川崎)

2021-04-12

旅行者下痢とコレラ

💧 市中感染性下痢症
  • 細菌 ➜ カンピロバクター属,ウェルシュ菌,サルモネラ属,腸炎ビブリオ,下痢原性大腸菌など(夏季に多い)
  • ウイルス ➜ ノロウイルスとロタウイルスなど(冬季に多い)

💦 旅行者下痢症
  • 細菌性(約8割)➜ 下痢原性大腸菌,カンピロバクター属が多い.他にジアルジア,赤痢菌,コレラ菌,チフス菌,パラチフスA菌など
  • 寄生虫性(約1割)
  • ウイルス性(約1割)


👾 コレラ(Cholera) 
  • 原因 汽水域に棲息している細菌 Vibrio cholerae によるコレラ毒素
  • 特徴 急性炎症反応を生じることなく上皮細胞の吸収分泌機構を破綻
  • 経路 水や食物を介した糞口感染から成立(宿主となるのはヒトのみ)
  • 潜伏 数時間から5日間(通常は1~3日位)で突然の大量下痢で発症
  • 疫学 本邦で年10例程(多くはフィリピン,インド,タイの海外渡航)
  • 症状 1日10㍑~の下痢(腹痛や悪心,嘔吐は比較的軽度で発熱は稀)
  • 便性 “米のとぎ汁様”の白色〜灰白色の水様便で,甘くて生臭いにおい
  • 治療 大量補液+ニューキノロン系抗菌薬(耐性ならアジスロマイシン)


 😐 独り言
  • コレラは有名な病気だけど意外に診断方法は知られていないと思います.グラム染色ではコンマ状の湾曲したグラム陰性桿菌で,流れ星様の運動を認めると報告されていますが,検鏡による診断は困難なようです.通常は下記の様な特殊培地で培養して診断します(概ね24時間で推定可能).当院の細菌検査室では10年以上,コレラ菌は検出されていないようです.

(投稿者 川崎)

2021-01-01

恒例の元旦からグラム染色クイズ

右下肢痛と発熱で緊急搬入された症例の患部組織




(投稿者 川崎)

2020-11-06

グラム染色クイズ

胆管炎が疑われる症例の血培のグラム染色(強拡大=1000倍)


(投稿者 川崎)

2020-10-11

実体顕微鏡:個性的なカビ

👿 アスペルギルス(Aspergillus)属は種によって個性が強い
  • A:アスペルギルス・フラバス(A. flavus)➜ 特有の緑色を呈し発がん物質を産生
  • B:アスペルギルス・フミガタス(A. fumigatus)➜ アスペルギルス症の主な原因菌

👽 おまけ
  • 当院での検出頻度はアスペルギルス・ニガーA. niger)が約8割で,残りはフラバスとフミガタスが1割ずつです.真菌(カビ・酵母)は通常の寒天培地(Agar medium)では発育が悪いため,栄養たっぷりのポテト・デキストロース寒天培地(PDA)で培養します.

🉐 関連投稿(アスペルギルス編)

(投稿者 川崎)

2020-10-01

🎯 今週の一枚:想定される菌種は?

感染症を疑う症例の好気性血液培養ボトル(採取翌日)



(投稿者 川崎)

2020-09-16

グラム染色クイズ

腎盂腎炎が疑われる症例の尿グラム染色(強拡大=1000倍)



(投稿者 川崎)

2020-09-04

久しぶりのグラム染色です

腎盂腎炎が遷延した症例の血液培養グラム染色(強拡大)

🔍 解説
  • 大きなグラム陽性菌であり,酵母真菌が疑われる(=カンジタ感染症)
  • 当院のカンジタは約80%がアルビカンスで,残りの多くがグラブラータ
  • 菌糸が目立たないためグラブラータが疑われるが鑑別には培養が必要
  • 本例は最終的にカンジタ・クルーセイ(Candida krusei)と診断された

😋 カンジタ・クルーセイC. krusei
  • カンジタ属の数%と稀で,一回り大きい「長粒米」のような形態が特徴.標準的な抗真菌剤であるフルコナゾール(FLCZ)に耐性があるため,ミカファンギン(MCFG)あるいはアムホテシリンB脂質製剤(L-AMB)で加療する.
  • カカオ豆からチョコレート🍩を作る過程で,クルーセイによる発酵が苦味の除去に活躍している様です().クルーセイはお酒🍶の匂いがする点でもユニークな真菌(個人的には酒粕の匂いと思います).ちなみに他のカンジタの匂いはパン生地🍞

🚫 おまけ
  • 血液培養で真菌が検出されたら,眼科コンサルトを忘れずに.真菌性眼内炎は重度の視力障害や失明などに繋がります().

👿グラム染色の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2020-06-24

ゲーム 🎮 グラム染色-30 GS-30

  • 当院のERカンファレンスでは感染症ならグラム染色所見と培養結果,抗菌薬選択の根拠が問われます
  • コロナ禍でカンファレンスが行われない間に,若手が各自自習できる簡単なゲームを開発しました
  • 代表的な細菌のグラム染色計30問を1問30秒で回答 ➜ 獲得点から解釈能力を格付け(四段で合格)


(スマホ仕様ですがタブレットやデスクトップにも対応/現在の閲覧がウェブ版なら右欄にリンクあり)

🉐 関連投稿(ゲーム編)

(投稿者 川崎)

2020-05-24

グラム染色クイズ

随時尿のグラム染色(左は弱拡大/右は強拡大) 




(投稿者 川崎)

2020-04-09

連鎖桿菌!

肺炎が疑われる症例の膿性痰のグラム染色(強拡大:1000倍)

🔬 解説
  • グラム陰性の桿菌を多数認めるが,連鎖球菌の如く連なっている(連鎖桿菌!)
  • 喀痰なので緑膿菌あるいはクレブシエラを考慮(基本:前者は細く後者は太い)
  • 菌体周囲がムコイド物質で覆われていることにも注目(共に産生することあり)
  • 最終的に培養でムコイド産生型の緑膿菌P. aeruginosaであることが確認された


👴 おまけ
  • 連鎖桿菌は聞きなれない言葉ですが,現場では桿菌の連鎖に稀ながら遭遇します.本例では菌体周囲のムコイドが糊の役目をはたして連鎖?
  • 抗菌薬が開始されたため細菌がうまく分裂できずに伸展化あるいは形態を維持できずに球体化することがあることは知っておきたい

(投稿者 川崎)

2020-03-24

ナイスな1日❗

本日検鏡した検体は2症例でいずれも膿性痰の強拡大




(投稿者 川崎)

2020-03-04

グラムならぬギムザ染色

前日から発熱しERに搬入されたショック症例の末血ギムザ染色(強拡大:✖1000倍)





(投稿者 川崎)

2020-02-01

グラム染色クイズ

尿道カテーテル留置+抗菌薬投与中の高齢者の尿グラム染色(強拡大)





(投稿者 川崎)

2020-01-14

グラム染色クイズ

持続する発熱で来院し肝膿瘍と診断された症例のドレナージ液のグラム染色(強拡大)





(投稿者 川崎)

2020-01-10

感染症クイズ

  • 尿路系の炎症が疑われる高齢者の無染色尿標本
  • 残尿感や掻痒感,排尿時痛などの自覚症状なし





(投稿者 江後/川崎)